JP5774349B2 - 偏光板の製造方法 - Google Patents
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Description
(B)塗工工程で塗布された紫外線硬化型接着剤面に偏光フィルムを重ねて加圧する貼合工程、
(C)偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して光学フィルムが貼合された積層体に対して、紫外線照射装置から紫外線を照射することにより、紫外線硬化型接着剤を硬化させる硬化工程、
(D)ポリクロメーターを用いて、上記硬化工程で照射される紫外線の照度を測定し、これに基づき、重合開始剤の吸収ピーク波長を含む所定の吸収波長域、たとえば当該吸収ピーク波長の−40nm〜+40nmの波長域内における紫外線照度の積分値を計測する計測工程、および
(E)設定された照度積分値(設定照度積分値)Yに対する、上記計測工程で得られた計測照度積分値Xと前記Yとの差の絶対値の割合が所定値以上となったとき、たとえば5%以上となったときに、上記の紫外線照射装置の出力を制御する制御工程。
偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、そのフィルムに入射する光のうち、ある方向の振動面を有する光を透過し、それと直交する振動面を有する光を吸収する性質を有するフィルムであり、典型的には、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している。偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリビニルアルコール系樹脂の原料となるポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルおよびこれと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。かかるポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、および染色後のホウ酸架橋処理を施すことによって、偏光フィルムが製造できる。二色性色素としては、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行なってもよいし、二色性色素による染色と同時に行なってもよいし、二色性色素による染色の後、たとえばホウ酸架橋処理中に行なってもよい。かくして製造され、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムが、偏光板の原料の一つとなる。
かかる偏光フィルムに、熱可塑性樹脂からなる光学フィルムを貼合し、偏光板を製造する。光学フィルムは、温度20℃でD線により測定される屈折率が1.4〜1.7の範囲にあることが好ましい。光学フィルムの屈折率は、JIS K 0062:1992「化学製品の屈折率測定方法」に準拠して測定される。光学フィルムがこの範囲の屈折率を有すれば、製造される偏光板を液晶パネルに組み込んだときの表示特性に優れたものとなる。同様な理由で光学フィルムの好ましい屈折率は、1.45〜1.67の範囲である。この光学フィルムは、そのヘーズ値が0.001〜3%程度の範囲にあることが、得られる偏光板のコントラストを向上させ、特に液晶パネルに組み込んで黒表示としたときに、輝度低下などの不具合を生じる可能性が少なくなることから、好ましい。ヘーズ値は、(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)で定義される値であって、JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠して測定される。
結晶性ポリオレフィン系樹脂〔nD(20℃)=1.46〜1.50程度〕、
ポリエステル系樹脂〔nD(20℃)=1.57〜1.66程度〕、
ポリカーボネート系樹脂〔nD(20℃)=1.57〜1.59程度〕、
アクリル系樹脂〔nD(20℃)=1.49〜1.51程度〕、
トリアセチルセルロース系樹脂〔nD(20℃)=1.48前後〕など。
以上のような偏光フィルムに光学フィルムを貼合するにあたり、まず光学フィルムの偏光フィルムへの貼合面に紫外線硬化型接着剤を塗布する。接着剤の厚さは通常、0.5〜5μmの範囲である。その厚さが0.5μmを下回ると、接着強度にムラを生じることがある。一方、その厚さが5μmを超えると、製造コストが増大するだけでなく、接着剤の種類によっては偏光板の色相に影響することもある。この範囲内で比較的厚め、たとえば3.5μm以上、とりわけ4μm以上とすれば、その厚さが多少変動しても、それに起因する気泡などの欠陥が現れにくくなるが、一方で、このように厚くすることはコストの増加につながりかねないので、可能な範囲で薄くすることが望まれる。これらの理由から、紫外線硬化型接着剤の好ましい厚さは、1〜4μm、さらには1.5〜3.5μmの範囲である。
本発明では、以上説明したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して熱可塑性樹脂からなる光学フィルムを貼合し、偏光板を製造する。この際、以下の(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の各工程を経る。
(B)塗工工程で塗布された紫外線硬化型接着剤面に偏光フィルムを重ねて加圧する貼合工程、
(C)偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して光学フィルムが貼合された積層体に対して、紫外線照射装置から紫外線を照射することにより、紫外線硬化型接着剤を硬化させる硬化工程、
(D)ポリクロメーターを用いて、上記硬化工程で照射される紫外線の照度を測定し、これに基づき、重合開始剤の吸収ピーク波長を含む所定の吸収波長域における紫外線照度の積分値を計測する計測工程、および
(E)設定された照度積分値(設定照度積分値)Yに対する、上記計測工程で得られた計測照度積分値Xと前記Yとの差の絶対値の割合が所定値以上となったとき、たとえば5%以上となったときに、上記の紫外線照射装置の出力を制御する制御工程。
塗工工程(A)では、光学フィルム2,3の偏光フィルム1への貼合面に紫外線硬化型接着剤が塗布される。ここで用いる塗工機としては、図1を参照して説明したグラビアロール11,13を用いる方式が挙げられる。グラビアロールを用いる塗工機には、たとえば、ダイレクトグラビアコーター、チャンバードクターコーター、オフセットグラビアコーター、グラビアロールを用いたキッスコーター、複数本のロールで構成されるリバースロールコーターなどがある。その他にも、円筒状のブレードを有し、塗布部に接着剤を供給してブレードで掻き落としつつ塗布するコンマコーター、スロットダイなどを応用して直接接着剤を供給するダイコーター、液溜めを作って、ナイフで余分な液を掻き落としつつ塗布するナイフコーターなど、種々の塗工機が利用できる。これらのうち、薄膜塗工であることやパスラインの自由度などを考慮すると、グラビアロールを用いる塗工機の中でも、ダイレクトグラビアコーター、チャンバードクターコーター、オフセットグラビアコーターなどが好ましく、またグラビアロール以外では、スロットダイを用いるダイコーターも好ましい。偏光板の広幅化に対応しやすいことや、液体で供給される接着剤の臭気を放出しにくいことから、チャンバードクターコーターがさらに好ましい。
塗工工程(A)を経た後、光学フィルム2,3のそれぞれ接着剤塗布面に、偏光フィルム1を重ねて加圧する貼合工程(B)が行なわれる。この工程の加圧には、公知の手段を用いることができるが、連続搬送しながらの加圧が可能であるという観点からは、図1に示すように、一対のニップロール20,21により挟む方式が好ましい。この場合、偏光フィルム1に光学フィルム2,3を重ね合わせるタイミングと、一対のニップロール20,21によって加圧するタイミングは、同じであることが望ましく、たとえ違っても、両者のタイミングの差は短いほうが好ましい。一対のニップロール20,21の組合せは、金属ロール/金属ロール、金属ロール/ゴムロール、ゴムロール/ゴムロールなど、いずれであってもよい。加圧時の圧力は、一対のニップロール20,21により挟む場合の線圧で150〜500N/cm程度とするのが好ましい。
偏光フィルム1に光学フィルム2,3を貼合した後、偏光フィルム1に紫外線硬化型接着剤を介して光学フィルムが貼合された積層体に対して、紫外線照射装置16から紫外線を照射し、紫外線硬化型接着剤を硬化させることにより偏光板4が製造される。紫外線は、光学フィルム2越しに照射される。
計測工程では、照度計17を用いて、硬化工程(C)で照射される紫外線の照度を測定し、これに基づき、重合開始剤の吸収ピーク波長を含む所定の吸収波長域における紫外線照度の積分値(計測照度積分値X)を計測する。照度計17は、ポリクロメーターにより220〜800nmの波長域において波長毎に分光し、波長毎の照度を計測する照度計であることができる。分光は、回折格子やプリズムなどにより行なうことができる。ポリクロメーターによる照度計を用いた照度測定は、1)広い波長範囲にわたって照度を測定でき、また、波長毎の測定感度が同じであるため、紫外線硬化型接着剤に用いる重合開始剤の種類の変更する場合であっても、照度計の変更を伴わない、2)照射される紫外光の照度を直接計測することができ、また、波長ごとの測定感度が同じであるため、所定の吸収波長域における紫外線照度の積分値を正確に計測できるなどの点で有利である。
本発明では、上で説明した計測工程(D)の結果に基づいて、硬化工程(C)における紫外線照射装置16の出力を制御する制御工程(E)が設けられる。すなわち、上記計測工程(D)で計測される照度の積分値は、紫外線照射装置が備えるランプの長期間使用による劣化や、紫外線照射装置に付設される部材の長期間使用による汚れによって徐々に低下する傾向にある。また、ランプからの紫外線の照度は、一般的に、紫外線照射開始から数十分で一応安定状態となるが、ランプの発熱などランプの点灯によるランプ環境の変化により徐々に低下する場合もある。このような照度低下は、所望の照度積分値(設定照度積分値Y)からのズレを生じさせる。また、特に紫外線照射初期においては、紫外線照射装置の電圧が安定せず、計測照度積分値Xが所望の照度積分値(設定照度積分値Y)より高くなったり低くなったりすることもある。このようなズレを修正するため、計測工程(D)において計測される計測照度積分値Xをもとに、紫外線照射装置16の出力を制御する。
(1)偏光フィルム1の両面にそれぞれ第一の光学フィルム2および第二の光学フィルム3を貼合した後の積層体に紫外線を照射する際、その積層体の第二の光学フィルム3側を照射用巻付けロール26の外周面に密着させながら、その積層体を挟んで巻付けロール26の反対側に配置された紫外線照射装置16から、積層体の第一の光学フィルム2側に紫外線を照射するようにした点。
(0)実験に用いた材料
この例では、第一の光学フィルム2として、厚さが60μm、幅が1490mmで、ロールから供給されるシクロオレフィン系樹脂からなる二軸配向性位相差フィルム「ゼオノア」〔日本ゼオン(株)から入手〕を用いた。第二の光学フィルム3として、厚さが75μm、幅が1490mmで、ロール状となるようにプロピレン系樹脂(融点=164℃)を単軸押出機により275℃の押出温度となるように溶融混練し、Tダイよりフィルム状に押出し、20℃に設定された冷却ロールに密着させることで冷却固化した後、カッター刃で両端部を除去し得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いた。偏光フィルム1と第一の光学フィルム2との接着に用いた接着剤、および偏光フィルム1と第二の光学フィルム3との接着に用いた接着剤は、いずれも、エポキシ化合物と光重合開始剤(吸収ピーク波長=290nm)を含み、実質的に溶剤を含まないエポキシ系紫外線硬化型接着剤である。
ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している厚さ25μmの偏光フィルム1、第一の光学フィルム2である上記シクロオレフィン系樹脂フィルム、および第二の光学フィルム3である上記プロピレン系樹脂フィルムを、それぞれ15m/分のライン速度で流れ方向が同じになるように供給した。上記シクロオレフィン系樹脂フィルム2の偏光フィルム1へ貼合される面には、グラビアロール11を備える第一の塗工機10〔富士機械(株)製の「マイクロチャンバードクター」〕を用いて、上記のエポキシ系紫外線硬化型接着剤を塗布した。また、上記プロピレン系樹脂フィルム3の偏光フィルム1へ貼合される面にも、グラビアロール13を備える第二の塗工機12〔同じく富士機械(株)製の「マイクロチャンバードクター」〕を用いて、上記のエポキシ系紫外線硬化型接着剤を塗布した。
接着剤が塗布されたシクロオレフィン系樹脂フィルム2およびプロピレン系樹脂フィルム3は、それぞれの接着剤塗布面を偏光フィルム1に重ね合わせ、貼合用ニップロール20,21により240N/cmの線圧で挟んだ。
ニップロール20,21を通過した後のシクロオレフィン系樹脂フィルム2/偏光フィルム1/プロピレン系樹脂フィルム3の積層体を、そのプロピレン系樹脂フィルム3側が、20℃に設定された照射用巻付けロール26の外周面に密着するように、かつ長手方向(搬送方向)に600Nの張力をかけながら、貼合前と同じライン速度15m/分で搬送し、照射用巻付けロール26に巻き掛けられた積層体に対し、シクロオレフィン系樹脂フィルム2側から紫外線照射装置16を用いて紫外線を照射した(硬化工程(C))。このとき、上記紫外線硬化型接着剤が含有する重合開始剤の吸収ピーク波長290nmの−30nm〜+40nmの波長域にわたる照度を積分するように設定されたポリクロメーターによる照度計17を用いて、紫外線照度の積分値を計測しながら紫外線を照射した(計測工程(D))。上記硬化工程(C)では、紫外線照射装置16として(株)GSユアサ製のものを用い、それが備える紫外線ランプである「EHAN1700NAL高圧水銀ランプ」2灯から紫外線を、1灯あたりの上記波長域における照度積分値が55mW/cm2となるように照射した。紫外線の積算光量は、2灯合わせて77mJ/cm2であった。こうして接着剤層を硬化させ、偏光フィルム1の片面にシクロオレフィン系樹脂フィルム2が、他面にはプロピレン系樹脂フィルム3が貼合された偏光板4を作製し、巻取りロール30に巻き取った。
実施例1において、制御工程(E)を設けることなく、すなわち、計測工程(D)で計測される計測照度積分値Xが設定照度積分値Yに比べて5%以上低下しても、紫外線照射装置16の出力を制御することなく紫外線照射を行なって偏光板を作製した。300分間操業したときの「照度のズレ」を表1に示した。
厚さが38μmで幅が1330mmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを第一の光学フィルム2として用い、厚さが60μmで幅が1330mmのシクロオレフィン系樹脂からなる二軸配向性位相差フィルム「ゼオノア」を第二の光学フィルム3として用い、紫外線硬化型接着剤としてエポキシ化合物と光重合開始剤(吸収ピーク波長=320nm)を含むエポキシ系紫外線硬化型接着剤を用いた。そして以下の点以外は、実施例1と同様にして、(A)塗工工程、(B)貼合工程、(C)硬化工程、(D)計測工程および制御工程(E)を実施し、偏光板を作製した。
(2)計測工程(D)において、重合開始剤の吸収ピーク波長320nmの−30nm〜+30nmの波長域にわたる照度を積分するように照度計17を設定した、および
(3)制御工程(E)において、計測照度積分値Xが、設定照度積分値Yに比べて5%以上低下している場合、すなわち(Y−X)≧10mW/cm2となった場合に、紫外線照射装置16を制御してその出力を1灯毎5W単位で増加させる出力調整を行なった。
[比較例2]
実施例2において、制御工程(E)を設けることなく、すなわち、計測工程(D)で計測される計測照度積分値Xが設定照度積分値Yに比べて5%以上低下しても、紫外線照射装置16の出力を制御することなく紫外線照射を行なって偏光板を作製した。300分間操業したときの「照度のズレ」を表1に示した。
得られた偏光板の任意の位置においてそれぞれ80mm(流れ方向)×全幅の短冊状に切り出し、その短冊をさらに、300〜400mm幅に切断して得られた複数の小片群を1サンプルとし、これらの小片群を60℃×90%RHに調整した恒温・恒湿器の中で、それぞれが接触することのない様に吊り下げ、500時間保持した。ライトボックス上で光を透過させながら、恒温・恒湿器中に入れていない偏光板と目視にて比較し、光抜けの有無を評価した。偏光板の任意の位置で切り出した4サンプルについてこのような脱色評価試験を実施し、4サンプルのすべてに光抜けが生じなかった場合を「OK」、4サンプルのうち1以上のサンプルで光抜けが生じた場合を「NG」とし、結果を表1の「脱色評価結果」の欄に示した。この欄の括弧内の数値は、4サンプルのうちの光抜けが生じたサンプル数を示している。
Claims (3)
- ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに重合開始剤を含む紫外線硬化型接着剤を介して、熱可塑性樹脂からなる光学フィルムを貼合し、偏光板を製造する方法であって、
(A)前記光学フィルムの偏光フィルムへの貼合面に前記紫外線硬化型接着剤を塗布する塗工工程、
(B)前記塗工工程で塗布された紫外線硬化型接着剤面に前記偏光フィルムを重ねて加圧する貼合工程、
(C)前記偏光フィルムに前記紫外線硬化型接着剤を介して前記光学フィルムが貼合された積層体に対して、紫外線照射装置から紫外線を照射することにより、前記紫外線硬化型接着剤を硬化させる硬化工程、
(D)ポリクロメーターを用いて、前記硬化工程で照射される紫外線の照度を測定し、これに基づき、前記重合開始剤の吸収ピーク波長を含む所定の吸収波長域における紫外線照度の積分値を計測する計測工程、および
(E)設定された照度積分値Yに対する、前記計測工程で得られた計測照度積分値Xと前記Yとの差の絶対値の割合が所定値以上となったときに、前記紫外線照射装置の出力を制御する制御工程、
を備え、
前記硬化工程中に前記計測工程を行う、偏光板の製造方法。 - 前記制御工程(E)において、設定された照度積分値Yに対する、前記計測工程で得られた計測照度積分値Xと前記Yとの差の絶対値の割合が5%以上となったときに、前記紫外線照射装置の出力を制御する、請求項1に記載の偏光板の製造方法。
- 前記計測工程(D)における前記重合開始剤の吸収ピーク波長を含む所定の吸収波長域が、前記吸収ピーク波長の−40nm〜+40nmの波長域内である請求項1または2に記載の偏光板の製造方法。
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