JP5770239B2 - バナジウムリン酸錯体二次電池 - Google Patents

バナジウムリン酸錯体二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、正極および負極の活物質としてバナジウムリン酸錯体を用いたバナジウムリン酸錯体二次電池に関する。
従来から、バナジウム二次電池としては硫酸バナジウム塩を活物質、電解液として硫酸を用いたバナジウム・レドックスフロー電池が実用化されている。
硫酸バナジウムを用いた電池では、活物質である硫酸バナジウム(V)塩が温度上昇や硫酸濃度の低下により脱水縮合反応を起こし、沈殿を生じることがあり、さらに電解液の温度が低下するとバナジウム(II)、バナジウム(III)およびバナジウム(IV)の塩が析出し易くなると言う問題があった。バナジウム塩が析出すると電池性能が低下するだけでなく、電池セル内に析出物が詰まり、電解液の流れを阻害し電池の運転も不可能になることがあった。
この問題を解決する方法として、例えば特許文献1には、バナジウム・レドックスフロー電池において、硫酸バナジウム塩の析出を防ぐため電解液中に硫酸アンモニウムとリン酸との混合系、またはリン酸アンモニウムを存在させる電池が提案されている。これにより電解液中のV5+の安定性が改善され、同時にV(II)、V(III)およびV(IV)の塩の析出も抑制できるとの記載がある。
特開2001−102080号公報
特許文献1の方法では、硫酸からなる電解液中にリン酸、リン酸アンモニウムを添加することで硫酸バナジウム塩の析出を抑制する効果は期待できるものの、硫酸系バナジウム電池の正極における酸化・還元反応では、必然的に酸素移動反応が起こるという問題がある。酸素移動反応が起きると電子移動の障害となり、電池の性能を低下させる原因になっていた。
ここで、一般に、バナジウム電池システムにおける正極と負極の反応は次式のように示すことができる。
上記(1)及び(2)式において、充電動作の時は右方向から左方向に反応が進行し、放電動作の時は左方向から右方向に反応が進行する。正極でのVO2 +はバナジウム5価で、VO2+はバナジウム4価である。上記(1)及び(2)式から明らかなように、従来の硫酸系バナジウム電池では、正極に酸素移動をともなう反応があり、電子移動のエネルギー障害となって、電池の充電と放電の効率が低下する原因となっていた。
また、電解液に硫酸を用いているため、取り扱いに高度な注意を必要とし、電解液漏れが生じた場合等に危険がともなうおそれもある。
また、レドックスフロー電池の態様ではなく、固体電池の態様とする場合においても、硫酸を用いることによる電池構成材料の腐食の問題や、電解液の液漏れ等による危険の防止を考慮する必要があった。
本発明者らは、これらの欠点を解消するため安全なバナジウム二次電池について鋭意研究した結果、電解液としてリン酸化合物を用いることで電解液漏れを生じた場合の安全性を向上させ、かつ、活物質としてバナジウムリン酸錯体(vanadium phosphato complexes)を用いることで正極で酸素移動反応が起こらない電池を得られることを見出し、本発明を完成した。
また、一般に、エネルギー密度に優れるとされるリチウムイオン二次電池は、過酷な充電により発火する恐れがあることは周知の事実であるところ、バナジウム二次電池では、発火の要素はほとんどなく、安全性に優れる。一方、電池の重量エネルギー密度の観点からは、一般的には、バナジウム二次電池はリチウムイオン二次電池には及ばないことから、バナジウム二次電池において、リチウムイオン二次電池の重量エネルギー密度に比肩しうる重量エネルギー密度に性能を向上させることが重要である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、活物質としてバナジウムリン酸錯体を用いることで、正極での反応において酸素移動を起こさせず電池の充放電の効率を良くするとともに、安全性の高いバナジウム二次電池を提供し、また、重量エネルギー密度に優れるバナジウム固体二次電池を提供することにある。
(固体電池の構成)
本発明のバナジウムリン酸錯体二次電池の一形態において、酸化・還元反応により酸化数が4価から5価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、電極内部の導電性を確保する導電性素材、を有する正極と、酸化・還元反応により酸化数が3価から2価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、電極内部の導電性を確保する導電性素材、を有する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレーターと、前記正極、前記負極、前記セパレーターが収容される容器と、を備える。
このバナジウムリン酸錯体二次電池によれば、一形態として、正極にバナジウム(IV)リン酸錯体/バナジウム(V)リン酸錯体、負極にバナジウム(III)リン酸錯体/バナジウム(II)リン酸錯体を用い、正極における反応で酸素移動を起こさせず、水素イオン移動のみの反応になるため、電子移動の障害を起こさせないので充放電効率を高めることができる。ここで、硫酸バナジウムを用いたバナジウム二次電池において、バナジウム(IV)/(V)とバナジウム(III)/(II)の酸化・還元反応では、化学量論的に、硫酸の介在が必須であり、活物質と硫酸の接触なしに反応は起こらない。一方、バナジウムリン酸錯体を用いたバナジウム二次電池においては、全ての酸化状態で、リン酸が1個配位しているため、バナジウム(IV)/(V)とバナジウム(III)/(II)の酸化還元反応において、水素イオンの移動だけで反応が進行することから、完全な固体電池の構成とすることができる。これは、バナジウムリン酸錯体を用いたバナジウム二次電池における、バナジウム(IV)/(V)とバナジウム(IV)/(III)/(II)の酸化還元反応においても、同様であり、水素イオンの移動だけで反応が進行することから、完全な固体電池の構成とすることができる。また、導電性素材により、電極内部における導電性が確保される。
(液体電池:負極のバナジウムの酸化数が3価から2価の間で増減する構成)
本発明のバナジウムリン酸錯体二次電池の一形態において、酸化・還元反応により酸化数が4価から5価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、を有する正極と、酸化・還元反応により酸化数が3価から2価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、を有する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレーターと、前記正極、前記負極、前記セパレーターが収容される容器と、を備える。
このバナジウムリン酸錯体二次電池によれば、一形態として、正極にバナジウム(IV)リン酸錯体/バナジウム(V)リン酸錯体、負極にバナジウム(III)リン酸錯体/バナジウム(II)リン酸錯体を用いることにより、正極における反応で酸素移動を起こさせず、水素イオン移動のみの反応になるため、電子移動の障害を起こさせないので充放電効率を高めることができ、かつ、電解液に硫酸を用いる必要がないので、電解液に硫酸を用いた硫酸バナジウム塩二次電池に比べ、はるかに安全である二次電池を得ることができる。
(液体電池:負極のバナジウムの酸化数が4価から2価の間で増減する構成)
本発明のバナジウムリン酸錯体二次電池の一形態において、酸化・還元反応により酸化数が4価から5価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、を有する正極と、酸化・還元反応により酸化数が4価から2価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、を有する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレーターと、前記正極、前記負極、前記セパレーターが収容される容器と、を備える。
このバナジウムリン酸錯体二次電池によれば、一形態として、正極と負極のいずれについても活物質としてバナジウム(IV)リン酸錯体を用いることができる。通常のバナジウム二次電池では、バナジウム(V)/(IV)とバナジウム(II)/(III)の酸化・還元反応を利用する。そのため、正極にバナジウム (IV)、負極にバナジウム (III)というように、正極と負極とでは異なった活物質を用いるところ、バナジウムリン酸錯体電池では、バナジウム(IV)リン酸錯体を正極と負極の双方に用いる構成とすることもできる。すなわち、正極と負極に用いる活物質が一種類の二次電池であることから、上述の酸素移動を起こさせず、充放電効率を高めることができ、かつ、安全であるということに加えて、電池の構造を簡略にできる等、極めて製造効率の高い二次電池を得ることができる。しかも、バナジウムリン酸錯体では、V(IV) →V(III) →V(II)の還元反応が迅速に起こることから、充放電曲線の解析においても、正極にバナジウム(IV)、負極にバナジウム(III)を用いた電池と比べても全く遜色のないバナジウム二次電池を得ることができる。なお、硫酸を用いたバナジウム二次電池では、バナジウム(III) →バナジウム(II)の反応が遅いことから、バナジウム(IV)を負極の活物質に用いることは実質的に意味がない。
(固体電池の一形態における電解液)
本発明のバナジウムリン酸錯体二次電池の一形態において、前記電解液は、電解質を含む導電性液体であって、前記液体は水もしくは非水溶媒、または水と非水溶媒の混合物である。
この形態によれば、電解質として、例えば、過塩素酸ナトリウムを挙げることができる。なお、導電性液体に水を使用できることにより、安全性の観点から、電解液に有機溶媒を使う場合と比べると安全性が飛躍的に向上し、これは本発明の電池の大きな利点であるといえる。これに対し、リチウムイオン電池では水を使う事は絶対にできない。
また、水の代わりに非水溶媒を使用することもできる。非水溶媒として、例えば、
4-Methyl-1,3-dioxolan-2-one (以下、「PC」と略記する)を挙げることができる。PCは難分解性の電解質も溶解することができ、電解液とすることができる。PCは粘度が高いため、粘度を下げるため炭酸ジエチル(DEC:Diethyl Carbonate)を混合して用いることもできる。他にも、例えば、炭酸エチレン(EC:1,3-Dioxolan-2-one, Ethylene Carbonate)、エチレングリコール、1−プロパノールを用いることができる。
さらに、PCと水を併用することもできる。電解質をPCに溶解した後、水を加えて電解液とすることもできるし、難分解性化合物を水に溶解した後、PCを加えて電解液とすることもできる。水を加えることにより、導電性は大幅に向上し、電池のエネルギー密度は300Wh/kg程度になるか、もしくはそれ以上の数値を示す。この値は従来のバナジウム二次電池では得られなかった数値であり、今までにない優れた性能を有する電池である。
(液体電池の一形態における電解液)
本発明のバナジウムリン酸錯体二次電池の一形態において、前記電解液は、リン酸化合物および非水溶媒を有する。
この形態によれば、前記の電解液として、リン酸化合物と非水溶媒の混合溶液を用いることができる。バナジウム(IV)リン酸錯体およびバナジウム(III)リン酸錯体は、水に対しては溶解度が極めて低いが、リン酸化合物溶液と非水溶媒との混合溶液には溶解しやすい。錯体の溶解度が下がり、錯体が析出しやすくなると、電解液に含まれる活物質である錯体の量が減少し、電池性能が低下する。非水溶媒を混合すると、錯体の溶解度が向上し、錯体が析出しにくくなる。そこで、電解液としてリン酸化合物溶液と非水溶媒との混合溶液を用いることで、上述の酸素移動を起こさせず、充放電効率を高めることができ、かつ、安全であるということに加えて、錯体が析出しにくいことから電池性能が下がりにくく、液体電池において、循環する電解液のつまりが生じにくい電池を得ることができる。また、電解液中の活物質である錯体の溶解度が高ければ、充電時に活物質である錯体中により多くの電子を蓄えることができ、電池性能の向上に資する。
本発明によれば、活物質としてバナジウムリン酸錯体を用いることで、正極での反応において酸素移動を起こさせず電池の充放電の効率を良くするとともに、安全性の高いバナジウム二次電池を得ることができる。また、重量エネルギー密度に優れるバナジウム固体二次電池を得ることができる。
バナジウム(IV)と(V)の酸化・還元反応におけるサイクリックボルタモグラム(電流−電位曲線)を示す図である。 硫酸バナジウム(III)とバナジウム(III)リン酸錯体(3Mリン酸水溶液)の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。 バナジウム(III)リン酸錯体(リン酸とエチレングリコール1:1溶液)および硫酸バナジウム(III)(硫酸水溶液)の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。 バナジウム(V)リン酸錯体の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。 硫酸バナジウム(IV)の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。 バナジウム(IV)リン酸錯体の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。 バナジウム(III)リン酸錯体とバナジウム(IV)リン酸錯体の混合溶液に硫酸または塩酸を加えた時の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。 バナジウム(IV)リン酸錯体に硫酸を加えた時の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。 バナジウム(III)リン酸錯体とバナジウム(II)リン酸錯体の酸化・還元反応におけるサイクリックボルタモグラムを示す図である。 バックグラウンドにおけるサイクリックボルタモグラムを示す図である。 掃引速度と酸化ピークの電流密度との関係を示す図である。 正極、負極ともにバナジウム(IV)リン酸錯体を用いたレドックス・フロー電池において、充電後の負極における溶液の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。 バナジウム錯体固体電池の放電曲線を示す図である。 リン酸ナトリウムのXRDスペクトルを示す図である。 V(III)リン酸錯体のXRDスペクトルを示す図である。 V(IV)リン酸錯体のXRDスペクトルを示す図である。 負極活物質のXRDスペクトルを示す図である。 正極活物質のXRDスペクトルを示す図である。 リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 バナジウム(III)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す図である。 バナジウム(IV)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す図である。 亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 次亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 充電後の負極側活物質のFT−IRスペクトルを示す図である。 充電後の正極側活物質のFT−IRスペクトルを示す図である。 短い充電時間における負極のFT−IRスペクトルを示す図である。 バナジウム(IV)/(IV)リン酸錯体レドックス・フロー二次電池における充電曲線を示す図である。 硫酸バナジウム(IV)/(IV)レドックス・フロー二次電池における充電曲線を示す図である。 満充電させたバナジウム(IV)/(IV)リン酸錯体レドックス・フロー二次電池における放電曲線を示す図である。 バナジウム(IV)/(IV)リン酸錯体固体二次電池における充電曲線を示す図である。 バナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池における充電曲線を示す図である。 満充電させたバナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池における放電曲線を示す図である。 電解液に過塩素酸ナトリウム水溶液を用いたバナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池について、満充電させた上でcut-off電圧3.2Vで繰り返し放電試験を行った場合の放電曲線を示す図である。 電解液に過塩素酸ナトリウム水溶液と非水溶媒との混合液を用いたバナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池について、満充電させた上でcut-off電圧3.2Vで繰り返し放電試験を行った場合の放電曲線を示す図である。 電解液に非水溶媒を用いたバナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池について、満充電させた上でcut-off電圧2.8Vで繰り返し放電試験を行った場合の放電曲線を示す図である。 電解液に非水溶媒を用いたバナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池について、満充電させた上でcut-off電圧3.5Vでの充電曲線を示す図である。
まず、本発明において活物質として用いるバナジウムリン酸錯体の酸化・還元反応について説明する。
上述のように、一般にバナジウム電池システムにおける正極と負極の反応は次式で示され、正極に酸素移動をともなう反応があり、電子移動のエネルギー障害となって、電池の充電と放電の効率を悪くするという欠点を有していた。
正極での酸素移動を伴わない反応系にすれば、この欠点を解消できる。そこで、本発明者らは酸素移動をともなわない反応系を見出す目的で各種リン酸バナジウム化合物を合成し、電気化学的性質を調べ、電池への利用の可能性について検討した結果、バナジウムリン酸錯体が従来のバナジウム電池にはない優れた特性を発揮できることを見出した。
バナジウムリン酸系におけるバナジウム電池の反応は、次の式で表される。
(3)式の反応の構造変化を示すと次のようになる。
上記、(3)および(5)式からも明らかなように、正極での反応には酸素移動は含まれておらず、水素イオン移動のみであるため、電子移動のエネルギー障害が起こることはない。
また、バナジウム(III)リン酸錯体の構造を示すと次のようになる。
一方、硫酸バナジウム系におけるバナジウム電池の反応は、次の式で表される。
上の(7)〜(9)式からも明らかなように、反応に硫酸が必然的に関与するため、硫酸なしに反応が起こることはなく、必ず媒体としての硫酸を必要とする。すなわち、電解液として硫酸が必要となる。
これに対し、上述の(3)〜(5)式から明らかなように、バナジウムリン酸系におけるバナジウム電池の反応では、水素イオンと電子の移動だけが生じ、反応を起こすための媒体を必要としない。すなわち、固体電池の構成において、必ずしも電子移動反応に関与する電解液を必要としない電池構成とすることができる。
さらに本発明で使用する電解液は硫酸を用いる必要がない。これは、取扱上の危険性も、硫酸を用いなければならない構成と比較してはるかに小さく、電解液漏れが生じた場合の危険性も小さい。硫酸を用いることによる人体に対する直接的な危険性や環境への影響も激減する。
バナジウムリン酸錯体の電気化学的な性質について説明する。本発明で使用するバナジウムリン酸錯体は、バナジウム5価の錯体としてバナジウム(V) リン酸錯体(VOPO4)と4価の錯体としてバナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)である。
バナジウム4価(VOHPO4)と5価(VOPO4)のレドックス反応に対するサイクリックボルタモグラム(電流−電位曲線)を図1に示す。電位を500mVから1100mVの範囲で、掃引速度は10mV/sから1000mV/sまで変化させて測定した結果である。掃引速度を10mV/sから1000mV/sまで変化させると、ピーク電流値は増加することが分かる。またバナジウム (IV)からバナジウム(V)への酸化反応で酸化電位は(+)側に移動し、バナジウム(V)からバナジウム(IV)への還元反応での還元電位は(−)側に移動する様子を示している。
この結果は硫酸中でのバナジウム(IV)/バナジウム(V)のサイクリックボルタモグラムと類似しているが、はるかに安定している。このことは、バナジウム(IV)とバナジウム(V)のリン酸錯体は硫酸塩よりも安定しているためと考えられる。
図2〜図8にバナジウム(V)、(IV)、(III) リン酸錯体および硫酸バナジウムの紫外・可視吸収スペクトルを示す。
図2に示すように、硫酸バナジウム(III)の吸収ピークは400nmと620nmにあるが、バナジウム(III)
リン酸錯体は440nmと670nmに吸収ピークを示す。このことを考えると、バナジウムリン酸錯体の紫外・可視吸収スペクトルは長波長側にシフトしており、錯体を形成していることを示している。同様に、図3のスペクトルからもバナジウムリン酸錯体の紫外・可視吸収スペクトルは長波長側にシフトしており、錯体を形成していることが確認できる。
バナジウムリン酸錯体の酸化数については、紫外・可視吸収スペクトルの吸収ピークの波長によって確認することができる。例えば、図4に示すように、紫外・可視吸収スペクトルに吸収ピークが見られない場合、酸化数が5価、すなわちバナジウム(V)リン酸錯体であることが確認できる。図5に示すように、硫酸バナジウム(IV)の吸収ピークは760nmにあるが(最大ピークはバナジウム(IV)の水和イオンと同じ)、バナジウムリン酸錯体の紫外・可視吸収スペクトルは800nmに吸収ピークを示し、バナジウムリン酸錯体の酸化数が4価であることが確認できる。同様に、図6においてもバナジウムリン酸錯体の紫外・可視吸収スペクトルが800nmに吸収ピークを示し、バナジウムリン酸錯体の酸化数が4価であることが確認できる。
紫外・可視吸収スペクトルから確認できるバナジウムリン酸錯体の安定性について、
図7に示すように、バナジウム(IV)とバナジウム(III)のリン酸錯体の混合物に、1.0M硫酸、もしくは1.0M塩酸を加えたところ、スペクトルに変化は見られないことが確認できる。すなわち、バナジウム(IV)と(III)のリン酸錯体は、硫酸と塩酸を加えても、構造に変化がなく非常に安定していることを確認できる。また、図8に示すように、バナジウム(IV)リン酸錯体に、1〜3Mの硫酸を加えたところ、スペクトルに変化が見られないことからも、バナジウムリン酸錯体が安定していることを確認できる。
すでに説明したように、硫酸系バナジウム電池の正極において(1)式で示したような酸素移動をともなう酸化・還元反応が起こる。すなわち、バナジウム(V)からバナジウム(IV)になる時はV−Oの化学結合が切れ、バナジウム(IV)からバナジウム(V)になる時は再びV−Oの結合が生成する反応である。このような酸素移動反応は電子移動反応にとって不利な要因になるので好ましくなく、できる限り酸素移動反応は起こさせないことが好ましい。その点、本発明で使用するバナジウムリン酸系では(3)式に示すように酸素移動反応をともなわないのである。(3)式および(5)式に示すように、電子移動にともなうのは水素イオンの移動だけである。バナジウムリン酸錯体におけるバナジウム(IV)/バナジウム(V)の電子移動の反応機構は図1で示すように極めて安定したサイクリックボルタモグラムであることを説明している。
さらに酸素移動について詳しく説明する。先にも述べたように、硫酸塩の場合、バナジウム(V)が還元されバナジウム(IV)になる時はV−Oの化学結合が切れ、バナジウム(IV)が酸化されバナジウム(V)になる時は再びV−Oの結合が生成する。このため、酸素がバナジウムと水の間を出入りすることになる。一方、リン酸錯体の場合、酸化還元にともなう酸素の出入りはなく、水素イオンだけが移動する。このことはバナジウム(IV)とバナジウム(V)の間の酸化・還元反応において、リン酸錯体の方が硫酸塩よりも速度論的にもはるかに有利であることを意味している。酸化・還元反応が速いと言うことは、充放電の際の時間軸に対しても有利であることを意味しているのである。
バナジウム3価(VPO4)と2価(VHPO4)のレドックス反応に対するサイクリックボルタモグラムを図9に示す。電位を−1100mVから500mVの範囲で、掃引速度は10mV/sから1000mV/sまで変化させて測定した結果である。図9において、バナジウム(III)/バナジウム(II)のサイクリックボルタモグラムは図1に示すバナジウム(IV)/バナジウム(V)の挙動と類似しているが、還元側のシグナルは異なっている。これは、図10に示すバックグラウンドのサイクリックボルタモグラムから分かるように−1000mV以下では溶媒である水の分解による影響が重なっているためである。
図1と図9の結果から、バナジウムリン酸系におけるIV/VとIII/IIの酸化・還元電位は硫酸系とほぼ同じであると見なすことができる。このことは活物質としてバナジウムリン酸錯体を用いることにより、硫酸バナジウムと同様あるいはそれ以上の性能を有するレドックスフロー電池や固体塩電池を作製することができることを示している。
バナジウム(IV) リン酸錯体/バナジウム(V) リン酸錯体間の電子移動反応を調べるため、掃引速度(V)と電流密度(ip)の関係を測定したところ、表1に示す結果が得られた。この結果をipを縦軸に、v1/2を横軸としたグラフにプロットしたものを図11のグラフに示す。図11のグラフよりipとv1/2は線形の関係にあり、電子移動反応は拡散律速であることが確認できる。すなわち、電子移動は拡散に比べて十分に速いといえる。
また、活物質として正極、負極のいずれについても4価のバナジウムリン酸錯体を使用することが可能である。通常、バナジウムリン酸錯体二次電池の構成としては、正極の活物質として4価のバナジウムリン酸錯体、負極の活物質として3価のバナジウムリン酸錯体を用いることが想定されるところ、正極と負極のいずれについても4価のバナジウムリン酸錯体を用い、正極と負極とで1種類の活物質を用いる構成とすることもできる。ここで、負極の活物質として4価のバナジウムリン酸錯体を使用できるのは、次の式に示すように、充電時、負極においてリン酸バナジウム錯体が(IV)→(III)→(II)と連続して還元反応が起こることを本発明者らが見出したことによる。
上の(10)〜(12)式から明らかなように、(11)と(12)が連続的に起こるため、負極の活物質として4価のバナジウムリン酸錯体を用いることができ、必ずしも3価のバナジウムリン酸錯体を用いる必要がない。正極と負極とで1種類の活物質を用いた電池構成とすることで、電池の製造工程の煩雑さを解消し、製造コストも低減できる。
また、図12に、正極、負極ともにバナジウム(IV)リン酸錯体を用いたレドックス・フロー電池において、充電後の負極における溶液の紫外・可視吸収スペクトルを示す。図12は、充電後、電位が1.5V以上あり、満充電に近い状態のスペクトルであるところ、バナジウム(IV)は、バナジウム(III)を経て、バナジウム(II)に還元されている筈であると考えられていたが、スペクトル測定の結果からバナジウム(III)リン酸錯体に特徴的な430nmと680nmに吸収ピークが見られ、負極液に含まれるバナジウムリン酸錯体は2価のバナジウム(II)リン酸錯体ではなく、3価のバナジウム(III)リン酸錯体であることが確認できた。これは、錯体は還元されているが、中心のバナジウム(III)は還元されておらず、一つの可能性としては、錯体を構成するリン酸が還元されると考えられる(リンの原子価が5から3、あるいは1に還元される)。
(固体電池の構成としての実施形態)
ここで、本発明の第1実施の形態に係る二次電池について説明する。本実施形態においては、容器の内部に、正極と負極とがセパレーターを介して対向して配置されたユニットを収容する。正極と負極は、充放電のためそれぞれ耐腐食性能を有する導電体を介して容器外にその一部又は全部が露出した端子に接続する。容器内における前記構成体の形態は特に限定されることはなく、配置方法についても積層や巻回など既存の各種手段を用いることができる。前記ユニットは、単一に用いることもできるし、複数用いることもできる。
正極と負極には、それぞれ正極用と負極用の活物質を支持させる。また、正極と負極のそれぞれに、活物質としてリン酸化合物を含む電解液を注液する。
正極に使用される活物質であるリン酸バナジウムは、酸化・還元反応により5価と4価の間で酸化数が増減するバナジウムリン酸錯体である。5価の錯体の具体例としては、バナジウム(V) リン酸錯体(VOPO4)が挙げられる。4価の錯体の具体例としては、バナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)を挙げることができる。正極では、これらのバナジウム錯体を導電性炭素素材に支持させる。
負極に使用される活物質であるバナジウムリン酸錯体は、酸化・還元反応により2価と3価の間で酸化数が増減するバナジウムリン酸錯体である。2価の錯体の具体例としてバナジウム(II) リン酸水素錯体(VHPO4)、3価の錯体の具体例としてバナジウム(III) リン酸錯体(VPO4)を挙げることができる。負極では、これらのバナジウム錯体を導電性の導電性炭素素材に支持させる。
導電性炭素素材は、炭素繊維フェルトを用いることができる。これに代えて、またはこれとともにグラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンブラック、グラフェンの少なくとも1つか、これらを組み合わせたものとバナジウムリン酸錯体を混合し、固形化したもの、または容器に充填したものも用いることができる。
支持方法としては、導電性炭素素材にバナジウムリン酸錯体のリン酸水溶液を含ませ、乾燥させることで導電性炭素素材にバナジウムリン酸錯体を支持させる方法を用いることができる。
本実施形態における電解液は、溶解した際にプラスイオンとマイナスイオンに解離する化合物、すなわち電解質を溶解した溶液であればよい。リン酸化合物の水溶液等も用いることはできるが、電解質として過塩素酸ナトリウムを溶解した溶液を好ましく用いることができる。溶媒としては、前述のように水もしくは非水溶媒、または水と非水溶媒との混合物を用いることができる。溶液における電解質の濃度は、3Mから飽和溶液を好ましく用いることができる。
本実施形態におけるセパレーターは、正極と負極とを隔てるとともに、電子の移動は妨げるがプロトン(H+)を通過させることができる材料を用いることができ、具体的には、イオン交換膜を好ましく用いることができる。
また、活物質と導電性炭素材料を混合し、固形化した電極を用いることもできる。具体的には、例えば、活物質と導電性炭素材料との混合物を金型に入れ、高圧でプレスすることでペレット状の電極を形成することもできる。ここで、セパレーター、電極を、水、あるいは上述の非水溶媒、例えば、エチレングリコール、プロピレンカーボネート、1−プロパノール等の導電性の溶液を用いることで導電性を確保することが好ましい。
正極・負極のそれぞれの導電性炭素素材は、充放電のため、導電体によって容器の外側に形成された端子と接続される。端子は正極用、負極用のものがそれぞれ容器外に一部が露出するように設けられ、これらを介して、電池と電池外部の機器を接続する。
なお、上述の通り、硫酸バナジウムを使用した電池は活物質の反応で必然的に硫酸の移動をともなうため完全な固体電池は原理的に不可能である。
一方、バナジウムリン酸系におけるバナジウム電池の反応では、水素イオンと電子の移動だけが生じる。よって、水素イオンと電子移動を起こすための電解液だけが必要で、活物質と反応を起こすための他の反応媒体を必要としないことから、固体電池の構成において、完全な固体電池の構成とすることができる。
(液体電池の構成としての一実施形態)
本発明の第2実施の形態に係る二次電池について説明する。尚、以下では第1実施の形態と重複する部分については適宜説明を省略する。
第2実施の形態に係る二次電池においては、レドックスフロー電池として構成する。上述の正極に用いるバナジウムリン酸錯体をリン酸水溶液等の溶液に溶解させる。また、上述の負極に用いるバナジウムリン酸錯体も同様にリン酸水溶液等に溶液に溶解させる。容器内に、これら正極の溶液と負極の溶液とが混合しないようにセパレーターで隔て容器内に入れる。レドックスフロー電池の正極と負極では、それぞれ溶液を循環させる必要があり、補助タンクを設け、ポンプによって循環させる等の手段を用いることができる。
本実施形態における電解液は、バナジウムリン酸錯体を溶解できる溶液であればよいが、例えば、リン酸化合物を含む溶液を用いることができる。リン酸化合物の水溶液の具体例としては、リン酸水溶液、リン酸アンモニウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液を挙げることができる。水溶液の濃度としては、0.1M〜5Mで、好ましくは1M〜4M、より好ましくは2M〜3Mである。
ここで、活物質として用いるバナジウムリン酸錯体は、一般的に難溶性であるため、活物質の析出が生じやすい。そこで、リン酸化合物を非水溶媒に溶解させることで析出を抑制することができる。例えば、リン酸とエチレングリコールを容量比1:1とした混合溶媒を用いることができる。非水溶媒として、エチレングリコールの他、プロピレンカーボネート、1−プロパノールを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
(液体電池の構成としての他の実施形態)
本発明の第3実施の形態に係る二次電池について説明する。尚、第3実施の形態は、上述の第2実施の形態と比べ一部の構成が異なるのみであり、その他の部分については概ね同様である。このため、以下では第2実施の形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
本実施形態では、正極、負極のそれぞれにおいて、活物質として4価のバナジウムリン酸錯体を用い、正極と負極で1種類の活物質を用いる電池構成とする。
本実施形態では、正極に使用される活物質であるバナジウムリン酸錯体は、酸化・還元反応により5価と4価の間で酸化数が増減するバナジウムリン酸錯体である。5価の錯体の具体例としては、バナジウム(V)
リン酸錯体(VOPO4)が挙げられる。4価の錯体の具体例としては、バナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)を挙げることができる。
負極に使用される活物質であるバナジウムリン酸錯体は、酸化・還元反応により4価と2価の間で酸化数が増減するバナジウムリン酸錯体である。4価の錯体の具体例としては、バナジウム(IV)リン酸水素錯体(VOHPO4)、3価の錯体の具体例としてバナジウム(III)リン酸錯体(VPO4)、2価の錯体の具体例としてバナジウム(II)リン酸水素錯体(VHPO4)を挙げることができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、電解液の溶媒として、水もしくは非水溶媒、またはこれらの混合物を用いた構成を適宜組み合わせた電池構成とすることができる。
(起電力発生の化学的メカニズム)
バナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池の一例として、電解液の溶媒に水を用いたバナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池の放電曲線を図13に示す。図13から、電位が長時間2Vを超える値を維持していることが確認できる。
ここで、起電力に関し、バナジウムリン酸錯体二次電池の、一般的なバナジウム二次電池に対する優位性を説明する。まず、バナジウム二次電池の一般的な起電力について、バナジウム二次電池としてポピュラーな硫酸バナジウム二次電池の場合を次のように表すことができる。
上の(13)式に示したように正極の電位差は1.00V、(14)式に示したように負極の電位差は0.26Vであることから、硫酸バナジウム二次電池の理論的な起電力は、これらの電位差を合計して少なくとも1.26Vとなる。しかし、バナジウムの濃度や硫酸の濃度がケミカルポテンシャルに影響すると考えられ、一般的には硫酸バナジウム二次電池の起電力は1.4Vとされている(小久見善八 編著 電気化学、2010年、オーム社)。ここで、硫酸自体には価数の変化が起こらないことから、硫酸自体は二次電池の起電力には貢献しない。
一方、先に述べたようにバナジウムリン酸錯体二次電池は、2Vを超える起電力を有するところ、この優位性は、バナジウムによる酸化還元反応だけでは説明することができない。また、リン酸錯体形成によって、ケミカルポテンシャルが変化することを考慮しても、0.7V以上の大きな電位の差異を説明することはできない。そこで、本発明者らは、バナジウムに配位しているリン酸の、酸化・還元反応における関与に着目した。リン酸の酸化・還元反応は、次のように表すことができる。
バナジウムリン酸錯体二次電池のリン酸の酸化・還元反応は、上記(15)式と(16)式の2つの式が成り立つ。(15)式からリン酸の原子価は、5価から3価に還元されており、換言するとリン酸が亜リン酸に還元されることが確認できる。ここで、仮に、負極において、バナジウムの酸化還元反応に、さらに(15)式の電位差が加わると、起電力は先に述べた1.4Vの電位差に0.28Vの電位差が加わることにより、1.7V程度になる。しかし、これでも先に述べた図13のグラフで確認できた2V以上の起電力を説明できていない。そこで、さらに上記(16)式の電位差0.50Vが加わると起電力は2.2V程度になり、先に述べた図13の放電曲線を合理的に説明できる。上記(16)式から、リン酸の原子価は3価から1価に還元されており、換言すると亜リン酸から次亜リン酸に還元されることが確認できる。すなわち、(15)式と(16)式とにより、リン酸は亜リン酸に還元され、さらに次亜リン酸まで還元されるといえる。充放電の繰り返し試験の結果、反応の可逆性を確認した。以上より、バナジウムリン酸錯体二次電池における負極における全反応は、次の(17)式のように示すことができる。
このように、バナジウムリン酸錯体二次電池の大きな電極電位は、リン酸による補助効果を考慮することにより合理的に説明される。本発明者らは、この現象を配位子(リン酸)による補助効果と呼ぶことにし、二次電池において、配位子による補助効果を見出したのは、本発明が最初である。
(XRD測定・FT―IR測定用電池)
XRD測定・FT―IR測定用にバナジウムリン酸錯体固体二次電池を用いた。この二次電池は、正極活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体、負極活物質にバナジウム(III) リン酸錯体を用いた構成の固体二次電池の構成とした。正極に関し、バナジウム(IV)リン酸錯体に導電性炭素粉末を混合し、さらにバインダーとしてPTFE粉末を混合した上、得られた混合物を実施例5におけるのと同様に金型に入れ圧縮機によりプレスし、ペレット状にし、これを正極とした。なお、上記導電性炭素粉末は、電気化学工業(株)製のものと日本炭素工業(株)製の炭素粉末との混合物を用いた。また、上記バインダーは、Samplatec社製のPTFE粉末を用いた。一方、負極に関し、バナジウム(III) リン酸錯体を上記正極と同様の処理を行うことでペレット状にし、これを負極とした。
次に、セパレーターを挟むようにしてセパレーターの一方の面に、上述の正極用のペレットが接するように配置し、セパレーターのもう一方の面には負極用のペレットが接するように、セパレーターを介して正極・負極のペレットが対向するように配置した。なお、上記セパレーターは、東レ株式会社製の商品名TORCONと、AGCエンジニアリング(株)製のカチオン交換膜、商品名セレミオンCSOを用いた。
正極及び負極のいずれにおいても、ペレットには、セパレーターと接する面と反対面に導電性カーボンクロスを接合した。導電性カーボンクロスは、充放電する際に使用する端子を接続する。これらを、端子を一部露出させるようにしてステンレス製の電池ケース(Hosen製のHSセル)に収納し、当該ケース内部を導電性液体の電解液で湿らせ、電池を得た。なお、上記導電性液体の電解液は、過塩素酸ナトリウムの3M水溶液を用いた。また、充放電装置はBioLogic社製SP−50を用いた。
(XRD測定)
バナジウム(III) リン酸錯体(VPO4)およびバナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)のXRD測定を行った。次いで、それらの錯体を活物質とした先に述べた二次電池を充電した後の負極物質および正極物質、すなわちバナジウム(IV)リン酸錯体の酸化生成物およびバナジウム(III)リン酸錯体の還元生成物のXRD測定を行った。なお、XRD測定装置は、リガク社製MiniFlexIIを用いた。
ここで、まず純粋なリン酸ナトリウムのXRDを測定した。これは、バナジウムリン酸錯体を合成する際に、リン酸ナトリウムを使用していることから、未反応のリン酸ナトリウムが不純物として存在しているかどうかを確認するためである。
図14に、純粋なリン酸ナトリウムのXRDスペクトルを示す。結晶性を示すが、強度は弱いことが分かる。
図15にバナジウム(III)リン酸錯体として合成した物質のXRDスペクトルを示す。図15から分かるように、図14において示されたピークは確認されず、リン酸ナトリウムは含まれていないことが確認できる。そして、図15のスペクトルは幅広で、明確なピークを持たないことが確認できる。これにより、バナジウム(III)リン酸錯体が結晶構造を持たないアモルファス構造であることが分かる。これは、Nakamura等が発表(T.Nakamura, I.Inui, M.Inoue,T.Miyake;J Mater Sci 41 (2006) 4335-4341)したVPO4のXRDスペクトルに関する結果と一致し、バナジウム(III) リン酸錯体(VPO4)と同定された。
図16にバナジウム(IV) リン酸錯体として合成した物質のXRDスペクトルを示す。図16においても図14において示されたピークは確認されず、リン酸ナトリウムは含まれていないことが確認できた。図16のスペクトルから確認できる2θ=27°のピークは、バナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)と共通するピークであることが確認できた(B.M.Azmi,
T.Ishihara, H.Nichiguchi, Y.Takita; J. Power Sources 119-121 (2003) 273-277)。すなわち、バナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)と同定された。
図17に、先に述べたバナジウムリン酸錯体固体二次電池として構成した場合における負極活物質のXRDスペクトルを示す。バナジウム(III)リン酸錯体の還元生成物は2θ=26°に鋭いピークを示す。バナジウム(III)リン酸錯体(VPO4)は結晶構造を持たず、バナジウム金属は41°に主要なピークを有し、51°と77°に小さなピークを有する(宮内彰彦;資源・素材学会 秋の大会(2008)発表要旨)ことから、図17のスペクトルは、V(III)でも金属のものでもないことが明らかであることから、図17はバナジウム(II)リン酸錯体(VHPO4)のスペクトルであると結論づけることができる。図23のスペクトルには、アモルファスの痕跡がないことからバナジウム(III)からバナジウム(II)への還元は完全に進行したことが確認できる。
図18に、先に述べたバナジウムリン酸錯体固体二次電池として構成した場合における充電後の正極における活物質のXRDスペクトルを示す。充電後の正極における活物質のXRDスペクトルには、バナジウム(IV)リン酸水素錯体(VOHPO4)に特徴的な27°のピークが残っており、正極においてバナジウム(IV)からバナジウム(V)への還元は概ね進行していることが確認できる。
(FT−IR測定)
次いで、リン酸におけるP−Oの伸縮振動に着目し、リン酸ナトリウムおよびバナジウムリン酸錯体のFT−IR測定を行った。なお、FT−IR測定装置は、JASCO社製FT/IR6100を用いた。
図19にリン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。1010cm-1における大きな吸収は、リン酸のP−Oの伸縮振動に対応する。
図20に、バナジウム(III)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す。図19と図20においてスペクトルの形は非常によく似ているが、V(III)PO4 ではP−Oの伸縮振動が1010cm-1から1060cm-1にシフトしている。これにより、V(III)PO4 が等方的な四面体構造を取ることが確認できる。
図21にバナジウム(IV)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す。これにより、V(IV)OHPO4
のFT−IRスペクトルは3本に割れ、バナジウム(IV)リン酸錯体には構造上の異方性があることが確認できる。
図22に、亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。
図23に次亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムの両者共、リン酸ナトリウムのスペクトルと異なるが、特に次亜リン酸ナトリウムのスペクトルは著しく異なる。
図24に、先に述べたバナジウムリン酸錯体固体二次電池として構成した場合における負極側活物質の充電後のFT−IRスペクトルを示す。図23と図24とを比較すると、わずかにシフトしているピークもあるが、両者の全てのピークがそれぞれに対応しており、負極において次亜リン酸が生成していることは明らかである。すなわち、負極においてリン酸が次亜リン酸まで還元されている決定的な証拠となった。
図25に、先に述べたバナジウムリン酸錯体固体二次電池として構成した場合における正極側活物質の充電後のFT−IRを示す。バナジウム(V)リン酸錯体は、バナジウム(IV)OHPO4 と同様、構造上に異方性があり、バナジウム(IV)錯体と類似したFT−IRスペクトルになる。バナジウム(V)錯体の痕跡が残っているが、1180cm-1と1142cm-1はバナジウム(V) 錯体のピークで、1082cm-1付近に大きな吸収が見られる。
図26に短い充電時間における負極のFT−IRスペクトルを示す。短い充電時間における負極側活物質のFT−IRスペクトルから、基本的にバナジウム(III)PO4 のスペクトルと一致するが、1120cm-1 における小さな吸収は弱い充電による亜リン酸の生成と矛盾しない。
以上の充電後の負極活物質のFT−IRの測定により、負極において次亜リン酸が生成していることが確認され、配位子(リン酸)による補助効果が証明された。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。実施例1〜3において、正極活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体、負極活物質にバナジウム(III)リン酸錯体を用いた構成を、実施例4、5において正極活物質および負極活物質いずれについてもバナジウム(IV)リン酸錯体を用いた構成を説明する。
(実施例1)
正極活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体、負極活物質にバナジウム(III)リン酸錯体を用いて固体二次電池の構成とした。正極の活物質として、2Mのバナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)のリン酸溶液を炭素繊維フェルトに塗布して支持させた。炭素繊維フェルトが湿潤状態になるまで、電解液として適宜リン酸水溶液を注液した。
負極の活物質として、バナジウム(III) リン酸錯体(VPO4)のリン酸溶液を炭素繊維フェルトに塗布して支持させた。正極の場合と同様に、炭素繊維フェルトが湿潤状態になるまで、電解液として適宜リン酸水溶液を注液した。
セパレーターとして、カチオン交換膜を使用した。セパレーターを挟むようにしてセパレーターの一方の面に正極の炭素繊維フェルトが接するように配置し、セパレーターのもう一方の面には負極の炭素繊維フェルトが接するように、セパレーターを介して正極の炭素繊維フェルトと負極の炭素繊維フェルトが対向するように配置した。
正極及び負極のいずれにおいても、炭素繊維フェルトには、セパレーターと接する面と反対面にカーボンクロスを接合した。グラッシーカーボンは、充放電する際に使用する端子を接続する。これらを、端子を一部露出させるようにして樹脂製のケースに収納し電池を得た。
(実施例2)
正極活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体、負極活物質にバナジウム(III)リン酸錯体を用いてレドックス・フロー二次電池の構成とした。水槽の中央にセパレーターであるカチオン交換膜を設置し、水槽を正極の溶液を収容する区画と負極の溶液を収容する区画に区切って、正極側と負極側に注入する液が混ざらないようにした上で、正極の水槽にバナジウム(IV)リン酸錯体の2Mリン酸水溶液を、負極の水槽にはバナジウム(III)リン酸錯体の2Mリン酸水溶液を投入した。正極と負極側の液は、それぞれポンプで補助水槽を循環させた。両極ともにカーボンクロスを用いて充放電を行った。直流電源から電流を流すと、正極側で酸化反応が、負極側で還元反応が起こった。
十分に反応させた後、直流電源を外し、正極と負極の電位を測定したところ、最大で1.55Vの電位差が認められた。通常の硫酸バナジウムの水溶液中での電位を測定したところ、1.26Vであり、バナジウムリン酸錯体での電位の方が大きいことが明らかとなり、バナジウムリン酸錯体を用いることで、優れた性能を示す電池を得られることが分かった。
(実施例3)
正極活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体、負極活物質にバナジウム(III)リン酸錯体を用いて、活物質と導電性炭素素材をペースト状に形成した固体二次電池の構成とした。正極の活物質としての2Mのバナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)のリン酸溶液と、カーボンナノチューブを混合し、ペースト状にした。このペースト状物をポリプロピレン製の型枠に収容し、固定した。
負極の活物質としての2Mのバナジウム(III) リン酸錯体(VPO4)のリン酸溶液と、カーボンナノチューブを混合し、ペースト状にした。正極におけるのと同様、このペースト状物をポリプロピレン製の型枠に収容し、固定した。
セパレーターとして、カチオン交換膜を使用した。実施例1におけるのと同様に、セパレーターを挟むようにしてセパレーターの一方の面に、上述の正極のカーボンナノチューブが混合された成型物が接するように配置し、セパレーターのもう一方の面には負極のカーボンナノチューブが混合された成型物が接するように、セパレーターを介して正極のカーボンナノチューブ成型物と、負極のカーボンナノチューブ成型物が対向するように配置した。
正極及び負極のいずれにおいても、カーボンナノチューブの成型物には、セパレーターと接する面と反対面にグラッシーカーボンを接合した。グラッシーカーボンは、充放電する際に使用する端子を接続する。これらを、端子を一部露出させるようにして樹脂製のケースに収納し電池を得た。
(実施例4)
正極活物質および負極活物質いずれについてもバナジウム(IV)リン酸錯体を用いた構成のレドックス・フロー二次電池の構成とした。正極と負極のいずれについても活物質としてバナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)を用い、濃度が1Mとなるように85%のリン酸水溶液とエチレングリコール1:1(容積比)の混合溶媒に溶解した以外は、実施例2と同様の構成とした。
充電時の電流は0.7mAであった。図13に示すように、充電終了後、数分後に測定した電位は1.7Vに上昇することが確認できた。これは、図14に示す硫酸バナジウム(IV)を用いたレドックスフロー電池の電位が1.4Vまでしか上昇しないことと比較して良好な結果であることが確認できた。
次いで放電動作を測定した。放電曲線を図15に示す。放電時の電流は0.002mAであった。放電曲線からも満充電の電位が約1.7Vであることが分かる。すなわち、放電曲線において、1.7Vまでは急激に減衰し、1.7Vを変曲点にして緩やかな放電が始まり、10,000秒でも約1.5Vの電位を保持している。最初の急激な減衰は過充電によるものであると考えられ、変曲点を起電力とみなすことができる。このことから、リン酸バナジウム(IV)錯体のレドックス・フロー二次電池の起電力は1.7Vであるといえる。この値は、硫酸バナジウムレドックス・フロー二次電池の起電力1.4Vに比べると0.3Vも大きく、エネルギー密度の観点からも有利であるといえる。
(実施例5)
正極活物質および負極活物質いずれについてもバナジウム(IV)リン酸錯体を用いた構成の固体二次電池の構成とした。この構成において、電解液を用いない構成とした。
バナジウム(IV) リン酸水素錯体(VOHPO4)をグラファイト粉末と混合し、これを金型に入れ、6t/cm2の圧力で圧縮機によりプレスした。表面が滑らかな板状のペレットが得られ、これを正極および負極に用いた。セパレーターとして、カチオン交換膜を使用した。実施例1におけるのと同様に、セパレーターを挟むようにしてセパレーターの一方の面に、上述の正極用のペレットが接するように配置し、セパレーターのもう一方の面には負極用のペレットが接するように、セパレーターを介して正極・負極のペレットが対向するように配置した。
正極及び負極のいずれにおいても、ペレットには、セパレーターと接する面と反対面に導電性カーボンクロスを接合した。導電性カーボンクロスは、充放電する際に使用する端子を接続する。これらを、端子を一部露出させるようにして樹脂製のケースに収納し電池を得た。導電性を確保するため、カチオン交換膜と正極・負極のそれぞれのペレットに少量のエチレングリコールを添加した。添加量は、膜および電極が湿る程度の極微量である。
図30に、得られた電池に直流電流を通電して充電した場合の充電曲線を示す。時間とともに緩やかに電位は上昇し、最終的に電位は2Vを越えた。満充電させた後、緩やかに放電させた。放電電流は0.001mAであった。これは、正極活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体、負極活物質にバナジウム(III)リン酸錯体を用いた構成の固体二次電池と比較しても遜色のない性能を有しているといえる。図31、図32に、正極活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体、負極活物質にバナジウム(III)リン酸錯体を用いた構成の固体二次電池の充電曲線、放電曲線をそれぞれ示した。
次に、実施例6〜9では、導電性液体の電解液をそれぞれ変更した構成を説明する。実施例6では導電性液体の電解液として水を用い、実施例7では水と非水溶媒との混合液、実施例8および9では非水溶媒を用いた構成とした。なお、実施例6〜9では、ステンレス製の電池ケース(Hosen製のHSセル)を用いた。
(実施例6)
正極活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体、負極活物質にバナジウム(III) リン酸錯体を用いた構成の固体二次電池の構成とした。正極に関し、バナジウム(IV)リン酸錯体に導電性炭素粉末を混合し、さらにバインダーとしてPTFE粉末を混合した上、得られた混合物を実施例5におけるのと同様に金型に入れ圧縮機によりプレスし、ペレット状にし、これを正極とした。なお、上記導電性炭素粉末は、電気化学工業(株)製のものと日本黒鉛(株)製の商品JーSPーαの炭素粉末との混合物を用いた。また、上記バインダーは、Samplatec社製のPTFE粉末を用いた。一方、負極に関し、バナジウム(III) リン酸錯体を上記正極と同様の処理を行うことでペレット状にし、これを負極とした。
実施例5におけるのと同様に、セパレーターを挟むようにしてセパレーターの一方の面に、上述の正極用のペレットが接するように配置し、セパレーターのもう一方の面には負極用のペレットが接するように、セパレーターを介して正極・負極のペレットが対向するように配置した。なお、上記セパレーターはACCエンジニアリング(株)製のカチオン交換膜、商品名セレミオンCSOを用いた。なお、上記導電性液体の電解液は、過塩素酸ナトリウムの3M水溶液を用いた。
図33に、得られた電池に3.2Vのcut-off電圧でほぼ満充電した状態から放電を5回繰り返した場合の放電曲線を示す。図33において、横軸は比容量、縦軸は電極電位である。比容量には、放電流(mA)、活物質の重量(g)、時間(h)が含まれているが、変数は時間だけで、図の形は横軸を時間に対してプロットしたものと変わりない。比容量に縦軸の電位をかけることにより、エネルギー密度が算出される。
図33のグラフから、5回の放電曲線がほとんど重なっており、良好な充放電の再現性が確認できた。また、このグラフから、この電池のエネルギー密度は約300Wh/kgであることが確認できた。このエネルギー密度の値は、極めて良好であるといえ、実用化されたバナジウムリン酸錯体二次電池としては、一般的なリチウムイオン電池に次ぐ性能を有することが確認できた。
(実施例7)
構成を実施例6と同様にしつつ、導電性液体の電解液として、0.1Mの炭酸エチレン(EC:1,3-Dioxolan-2-one, Ethylene Carbonate)水溶液に、3Mの過塩素酸ナトリウムを溶解させた混合液を用い、さらに炭素粉末については実施例6の混合物ではなく、電気化学工業(株)製カーボンブラック(商品HS−100)を用い、実施例6と同様の処理を行い、電池を得た。
図34に、得られた電池に3.2Vのcut-off電圧でほぼ満充電した状態から放電を5回繰り返した場合の放電曲線を示す。このグラフから、実施例6の場合と同様、5回の放電曲線がほとんど重なっており、良好な充放電の再現性が確認できた。実施例6の場合と同様、この電池のエネルギー密度は約300Wh/kgであることが確認できた。
(実施例8)
構成を実施例6と同様にしつつ、導電性液体の電解液を非水溶媒とし、PC(4-Methyl-1,3-dioxolan-2-one)、と炭酸ジエチル(DEC:Diethyl carbonate)とを1:1の体積比で混合した混合液を用い、さらに導電性炭素粉末は、電気化学工業(株)製カーボンブラック、商品名HS−100を用い、実施例6と同様の処理を行い、電池を得た。
図35に、得られた電池に2.8Vのcut-off電圧でほぼ満充電した状態から放電を5回繰り返した場合の放電曲線を示す。図35のグラフから、エネルギー密度は約200Wh/kgであることが確認でき、また、5回の放電曲線がほとんど重なっており、良好な充放電の再現性が確認できた。
ここで、実施例6〜8の導電性液体の電解液の相違の観点からは、実施例6の導電性液体の電解液に水を使用した場合と、実施例7の水と非水溶媒との混合液を用いた場合に、高いエネルギー密度(約300Wh/kg)が確認できた。また、実施例8の非水溶媒を用いた場合は、電極電位が高いことが確認でき、例えば、電解質(過塩素酸ナトリウム)の濃度、炭素の種類、セパレーターの種類を変える等、条件を変更することにより、さらに高いエネルギー密度が期待できる。
(実施例9)
構成を実施例6と同様にしつつ、導電性液体の電解液を非水溶媒とし、PC(4-Methyl-1,3-dioxolan-2-one)、と炭酸ジエチル(DEC:Diethyl carbonate)とを1:1の体積比で混合した混合液を用い、さらに導電性炭素粉末は、電気化学工業(株)製カーボンブラック、商品名HS−100と富士黒鉛工業(株)製の黒鉛(商品UF−2)との混合物を用いた。セパレーターはセルガード(株)製、単層ポリプロピレン(PP)セパレーター(商品名:2400)を用いて実施例6と同様の処理を行い、電池を得た。
図36に、得られた電池に3.5Vのcut-off電圧で充電した場合の充電曲線を示す。なお、電流は、5mAとした。図36のグラフから、起電力まで一気に充電していることを読み取ることができ、二次電池として良好な充電曲線を示していることが確認できた。
導電性液体の電解液について、安全性の観点からは、水(過塩素酸ナトリウム水溶液)を用いることが最も安全性に優れているといえる。ただし、水を用いると、気体の発生が懸念されるところ、実施例6〜9の図33〜36の充放電曲線によっても、また放電後の活物質(ペレット)の形状を観察した結果においても、実施例6〜9のcut-off電圧では気体の発生は確認されなかった。
以上、説明したように本発明のバナジウムリン酸錯体二次電池は、正極に於いて酸素移動反応が生じず、従い、これが電子移動の障害となることもなく、充放電の効率を向上させることができるとともに、液漏れや環境負荷の観点から従来の電池と比較して安全な二次電池を提供することができる。現在用いられている二次電池は、環境負荷や安全性の問題が指摘されながらも、効率等の問題で用いられているが、本発明の二次電池はこれらあらゆる二次電池に代替して利用することができる。例えば、自動車のセルモーターを始動させる電池はもちろん、電気自動車、ハイブリッド自動車、各種電気機器、スマートグリッドにおける電池として用いること等が考えられる。

Claims (6)

  1. 酸化・還元反応により酸化数が4価から5価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、電極内部の導電性を確保する導電性炭素素材、を有する正極と、
    酸化・還元反応により酸化数が3価から2価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、電極内部の導電性を確保する導電性炭素素材、を有する負極と、
    前記正極と負極との間に介在されるセパレーターと、
    前記正極、前記負極、前記セパレーターが収容される容器と、
    を備えることを特徴とするバナジウムリン酸錯体二次電池。
  2. 酸化・還元反応により酸化数が4価から5価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、を有する正極と、
    酸化・還元反応により酸化数が3価から2価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、を有する負極と、
    前記正極と負極との間に介在されるセパレーターと、
    前記正極、前記負極、前記セパレーターが収容される容器と、
    を備えることを特徴とするバナジウムリン酸錯体二次電池。
  3. 酸化・還元反応により酸化数が4価から5価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、を有する正極と、
    酸化・還元反応により酸化数が4価から2価の間で増減するバナジウムリン酸錯体を含む活物質、電解液、を有する負極と、
    前記正極と負極との間に介在されるセパレーターと、
    前記正極、前記負極、前記セパレーターが収容される容器と、
    を備えることを特徴とするバナジウムリン酸錯体二次電池。
  4. 前記正極および前記負極は、さらに導電性素材を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のバナジウム二次電池。
  5. 前記電解液は、電解質を含む導電性液体であって、前記液体は、水もしくは非水溶媒、または水と非水溶媒の混合物であることを特徴とする請求項1に記載のバナジウムリン酸錯体二次電池。
  6. 前記電解液は、リン酸化合物および非水溶媒を有することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載のバナジウムリン酸錯体二次電池。
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