JP6637660B2 - 二次電池 - Google Patents

二次電池 Download PDF

Info

Publication number
JP6637660B2
JP6637660B2 JP2015045362A JP2015045362A JP6637660B2 JP 6637660 B2 JP6637660 B2 JP 6637660B2 JP 2015045362 A JP2015045362 A JP 2015045362A JP 2015045362 A JP2015045362 A JP 2015045362A JP 6637660 B2 JP6637660 B2 JP 6637660B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
secondary battery
active material
sodium
phosphate
vanadium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015045362A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015181107A (ja
Inventor
博 冨安
博 冨安
潤烈 朴
潤烈 朴
Original Assignee
潤烈 朴
潤烈 朴
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 潤烈 朴, 潤烈 朴 filed Critical 潤烈 朴
Priority to JP2015045362A priority Critical patent/JP6637660B2/ja
Publication of JP2015181107A publication Critical patent/JP2015181107A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6637660B2 publication Critical patent/JP6637660B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

本発明は、負極活物質において酸化還元反応をひきおこす有効元素が非金属である二次電池に関する。
一般に、電池においては、酸化還元反応をひきおこす有効元素が金属である活物質が用いられる。これは例えば、一次電池の乾電池ではマンガン、亜鉛等、二次電池では、鉛、カドミウム、ニッケル、リチウム等が挙げられる。特に、現在実用されている二次電池の多くにおいて、金属または金属化合物が用いられているのが実情であるといえる。
これは、二次電池に酸化還元反応をひきおこす有効元素が金属である活物質を用いることにより、エネルギー密度を向上させる利点がある反面、電池の活物質に酸化還元反応の有効元素として用いられる金属は、リチウムやバナジウムのように安価とはいえないものが多く、また、鉛やカドミウムのように環境負荷が大きかったり、アルカリ金属のように爆発性がある等、これらを用いることによる不利益もまた看過できない。
活物質における酸化還元反応をひきおこす有効元素として金属を用いないことにより、電池のエネルギー密度が低下したとしても、安全性が高く、地表上に多く存在する、単離容易等の事情により安価で入手容易な物質によって電池を構成できれば、安価に大量の電池を得ることが可能となる。重量エネルギー密度や体積エネルギー密度が厳格に求められる場面でなければ、個々の電池のエネルギー密度が著しく高くなくとも、大型電池として構成したり、電池を分散して配置する等の工夫により、低コストで安全な電池としての活用が可能である。
活物質における酸化還元反応をひきおこす有効元素として金属を用いない電池構成の可能性について、一次電池であれば、例えば、燃料電池は水素と酸素とを活物質に用いていることで知られ、また、有機物には電極上で酸化あるいは還元反応を起こすものがあることから、これらを適切に組み合わせることにより、可能性があるといえる。しかし、二次電池では、活物質の化学反応が可逆でなければならない。活物質において酸化還元反応をひきおこす有効元素が金属でなく、かつ、可逆に反応するものを見つけるのは容易ではない。
ここで、活物質中の酸の働きに着目する。酸を含む活物質を用いた二次電池は、従来より数多く存在し、枚挙に遑がないが、例えば、特許文献1には、リチウム等のリン酸塩等を正極活物質に用いたリチウム二次電池が開示されている。特許文献1記載の発明では、高電位、高エネルギー密度を実現すべく、リン酸塩等をリチウム二次電池の正極活物質として用いるところ、上記特許文献1の発明では、リチウム二次電池として当然のことであるが、リチウムが金属化合物として働く。すなわち、この二次電池の電池性能は、リチウムイオンの酸化・還元反応による電位差に依存する。また、活物質を構成する分子中の酸自体の酸化・還元電位については言及がない。
特開平6−275227号公報
一般に、二次電池における起電力は、正極および負極に用いられる活物質の金属イオンの酸化・還元反応による電位差に依存する。そこで、本発明者らは、酸化還元反応における有効元素が金属でない化合物を活物質とした場合の酸化状態の変化に着目し、鋭意研究を進めた結果、負極にリン酸を用いた場合に、その酸化還元電位が二次電池の性能に貢献することを見出した。
すなわち、本発明の目的は、負極活物質にリン酸無機塩を用いることで、液漏れや発火の危険、環境負荷の観点から従来の電池と比較して高度な安全性を確保し、かつ著しく低廉な二次電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る二次電池は、活物質中のリン酸イオンが酸化・還元反応によりリン酸イオン=亜リン酸イオン=次亜リン酸イオンと変化する負極と、活物質中の硝酸イオンが酸化・還元反応により硝酸イオン=亜硝酸イオンと変化する正極とを備える。ここで、リン酸イオンは、加水分解してリン酸1水素イオンおよびリン酸2水素イオンと平衡にあるが、全て総称してリン酸イオンと呼ぶことにする。他のイオンについても全て同様である。
これにより、負極活物質として使用される無機リン酸塩中のリン酸イオンが充電中に還元され、リン酸イオン→亜リン酸イオン→次亜リン酸イオンと変化し、反対に放電中は次亜リン酸イオンが酸化され、次亜リン酸イオン→亜リン酸イオン→リン酸イオンと変化する。このとき、リン酸=亜リン酸=次亜リン酸の酸化・還元反応の前後で電位差が生ずる。この負極活物質におけるリン酸=亜リン酸=次亜リン酸の酸化・還元反応の前後の電位差が二次電池の負極における起電力となる。
正極では、正極活物質として使用される無機硝酸塩の硝酸イオンが充電中に還元され、硝酸イオン→亜硝酸イオンと変化し、反対に放電中は亜硝酸が酸化され、亜硝酸イオン→硝酸イオンと変化する。このとき、硝酸イオン中の窒素の酸化・還元反応の前後で電位差が生ずる。そうすると、負極活物質におけるリン酸=亜リン酸=次亜リン酸の酸化・還元反応の前後の電位差と、正極活物質における硝酸イオンの酸化・還元反応の前後の電位差とが相俟って二次電池の起電力となることにより、負極および正極のいずれにおいても活物質中の金属の酸化還元電位に依存しない二次電池を構成することができる。
お、酸は、自身が不安定なこと、また電極を腐食させる等の問題があるため、活物質としては、これらの塩、例えば、リン酸塩、硝酸塩を用いることができる。
また、本発明の一態様に係る二次電池は、負極に、触媒として三酸化バナジウム(III)または五酸化バナジウム(V)をさらに有することを特徴とする。
負極活物質に、触媒として三酸化バナジウム(III)または五酸化バナジウム(V)を添加することで、後述する、均一反応的効果ないしはバナジウム酸化物表面における不均一反応、すなわちレドックスキャパシタ的効果が働くものと考えられ、これにより、二次電池の電極電位を向上させることができる。
また、本発明の一態様に係る二次電池は、電解液が飽和過塩素酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする。
電解液として飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を使用することで、電極における気体発生を抑制することができ、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液では重量比でNaClO4がH2Oの2倍近くもあるため、電気二重層の発生要因になる。この電気二重層のキャパシタ効果により二次電池の電極電位を向上させることができる。
本発明によれば、負極活物質にリン酸無機塩を用いることで、液漏れや発火の危険、環境負荷の観点から従来の電池と比較して高度な安全性を確保し、かつ著しく低廉な二次電池を提供することができる。
バナジウムリン酸錯体固体電池の放電曲線を示す図である。 リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 充電前のバナジウム(III)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す図である。 亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 次亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 充電後のバナジウム(II)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す図である。 リン酸−硝酸二次電池の放電曲線を示す図である。 リン酸ナトリウムの31P-NMRスペクトルを示す図である。 亜リン酸ナトリウムの31P-NMRスペクトルを示す図である。 次亜リン酸ナトリウムの31P-NMRスペクトルを示す図である。 リン酸ナトリウムと亜リン酸ナトリウムとの混合物の31P-NMRスペクトルを示す図である。 亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムとの混合物の31P-NMRスペクトルを示す図である。 リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムとの混合物の31P-NMRスペクトルを示す図である。 高温時(80℃)におけるリン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムとの混合物の31P-NMRスペクトルを示す図である。 次亜リン酸ナトリウム塩−硝酸ナトリウム塩二次電池におけるV2O5の添加量による重量エネルギー密度の変化を示す図である。 活物質を用いず3M過塩素酸ナトリウム水溶液を電解液に用いた二次電池の充放電曲線 活物質を用いず飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を電解液に用いた二次電池の充放電曲線 リン酸ナトリウム塩−硝酸ナトリウム塩二次電池(NaClO4水溶液)の放電曲線を示す図である。 リン酸ナトリウム塩−硝酸ナトリウム塩二次電池(PC溶液)の放電曲線を示す図である。 実施例1で得られた二次電池と実施例2で得られた二次電池とを直列に接続し、LEDに接続させて発光させた状態を示す写真である。 次亜リン酸ナトリウム塩(V2O3添加:20重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸ナトリウム塩(V2O5添加:10重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸ナトリウム塩(V2O5添加:20重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸ナトリウム塩(V2O5添加:30重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸ナトリウム塩(CrCl3添加:20重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸カルシウム塩(V2O5添加:20重量%) −硝酸ナトリウム塩二次電池(NaClO4飽和水溶液) の放電曲線を示す図である。 リン酸2水素カリウム塩(V2O5添加:20重量%) −亜硝酸ナトリウム塩二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸ナトリウム塩(V2O3添加:20重量%) −硫酸鉄(III)二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸ナトリウム塩(V2O5添加:20重量%) −硫酸鉄(III)二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 リン酸水素カルシウム塩 (V2O3添加:20重量%) −硫酸鉄(II)二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸カルシウム塩 (V2O5添加:20重量%) −硫酸鉄(III)二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 リン酸二水素カリウム塩(V2O5添加:20重量%)−硫酸鉄(II)二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。 次亜リン酸カルシウム塩(V2O5添加:20重量%) −リン酸鉄二次電池(NaClO4飽和水溶液)の放電曲線を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
(前提)
一般に、二次電池の起電力は、正極・負極に用いられる活物質の酸化・還元反応によって生じる電位差による。ここで、二次電池として構成するための条件は、活物質の酸化還元反応が可逆的であることを要する。二次電池で金属化合物が用いられる主な要因は、金属化合物が有する反応における可逆性にある。金属化合物の酸化還元反応によって生じる起電力はそれら金属または化合物に固有なもので、条件が異なると通常はマイナーな変化が見られる。
本発明者らは、鋭意研究の結果、活物質中の金属イオンの対イオンまたは配位子としてリン酸イオンを用いた場合、リン酸中のリンが酸化・還元反応し、二次電池の起電力に貢献する働きをすることを見出した。
かかる酸の働きを用いた二次電池の一例として、バナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池を用いて説明する。まず、電解液の溶媒に水を用いたバナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池の放電曲線を図1に示す。図1から、電位が長時間2Vを超える値を維持していることが確認できる。また、重量エネルギー密度は270Wh/kgであった。
ここで、このときのリン酸が、二次電池の起電力に貢献する働きについて説明する。バナジウム二次電池の一般的な起電力について、バナジウム二次電池として一般的なバナジウム硫酸二次電池の場合を次のように表すことができる。
上の(1)式に示したように正極の酸化還元電位は1.00V、(2)式に示したように負極の酸化還元電位は0.26Vであることから、バナジウム硫酸二次電池の理論的な起電力は、これらの電位差を合計して少なくとも1.26Vとなる。しかし、バナジウムの濃度や硫酸の濃度がケミカルポテンシャルに影響すると考えられ、一般的にはバナジウム硫酸二次電池の起電力は1.4Vとされている(小久見善八 編著 電気化学、2010年、オーム社)。ここで、上述の通り、硫酸自体は酸化・還元反応せず、価数の変化が起こらないことから、硫酸自体は二次電池の起電力にはほとんど貢献しない。僅かな寄与は、硫酸濃度変化に伴い、バナジウムイオンのケミカルポテンシャルの変化によってひきおこされる。
一方、バナジウムリン酸錯体二次電池について、理論的に次の式で表すことができる。
これによれば、バナジウムリン酸錯体二次電池の起電力は、標準状態における(3)式に示した酸化還元電位1.00Vと(4)式に示した酸化還元電位0.26Vとの合計である1.26Vとなる。しかし、実際には、図1との関係で先に述べたようにバナジウムリン酸錯体二次電池は、2Vを超える起電力を有する。この優位性は、上記(3)、(4)式で示したバナジウムによる酸化・還元反応だけでは説明することができない。また、リン酸錯体形成によって、ケミカルポテンシャルが変化することを考慮しても、0.7V以上の大きな電位差を説明することはできない。そこで、本発明者らは、バナジウムに配位しているリン酸イオンの、酸化・還元反応における関与に着目した。
(FT−IR測定)
そこで、負極に活物質としてバナジウムリン酸錯体を用いたバナジウムリン酸二次電池を具体例として用いて考察する。検証は、リン酸におけるP−Oの伸縮振動に着目し、リン酸ナトリウムおよびバナジウムリン酸錯体のFT−IR測定を行い、両者を比較することで行った。なお、FT−IR測定装置は、JASCO社製FT/IR6100を用いた。
図2にリン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。1010cm-1における大きな吸収は、リン酸のP−Oの伸縮振動に対応する。
ここで用いたバナジウムリン酸錯体二次電池の負極の活物質は、充電前はバナジウムが3価、充電後は還元反応により2価に価数が変化する。図3に、充電前のバナジウム(III)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す。図2と図3のスペクトルとを比較すると、スペクトルの形が非常によく似ていることが確認できる。なお、バナジウム(III) リン酸錯体ではP−Oの伸縮振動が1010cm-1から1060cm-1にシフトしている。これにより、バナジウム(III)リン酸錯体が等方的な四面体構造を取ることも確認できる。
図4に、亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。
図5に次亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムの両者共、リン酸ナトリウムのスペクトルと異なるところ、特に次亜リン酸ナトリウムのスペクトルは著しく異なることが確認できる。
図6に、バナジウムリン酸錯体二次電池の負極の活物質として用いた、充電後のバナジウム(II)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す。図5と図6のスペクトルとを比較すると、わずかにシフトしているピークもあるが、両者の全てのピークがそれぞれに対応していることが確認できる。
以上より、バナジウムリン酸錯体二次電池の負極の活物質としてのバナジウムリン酸錯体において、充電前はリン酸として存在していた配位子が、充電後は次亜リン酸まで還元されていることが確認できる。このとき、リン酸は、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。
上述のバナジウムリン酸錯体二次電池の負極の活物質の酸化・還元反応は、次のように表すことができる。
上記(5)〜(7)式は負極の全反応を示す。ただし、次の(8)式に示すように電気的中性を保つため、水の酸解離平衡が含まれる。
上記(5)式は、活物質中のバナジウムイオンの酸化還元電位を示す。また、上記(6)式からリン酸が亜リン酸に還元され、リンの原子価は、5価から3価に還元されることが分かる。これにより0.28Vの電位差が生じる。さらに、(7)式から、亜リン酸から次亜リン酸に還元され、リンの原子価が3価から1価に還元されていることが分かる。これにより0.50Vの電位差が生じる。すなわち、(6)式と(7)式とにより、リン酸は亜リン酸に還元され、さらに次亜リン酸まで還元されることにより、0.28Vと0.50Vとの合計である0.78Vの電位差が生じる。これにより、図1のグラフから確認した負極活物質のバナジウムの酸化還元電位のみでは説明できなかった0.7V以上の電位差が説明できる。
以上より、負極・正極における半電池の電極反応は、以下の(9)式および(10)式で表すことができる。負極および正極における電極反応であり、標準電極電位は、理論的に(9)式と(10)式とを合計した2.04Vになる。これは図1で示した充放電結果から確認した2Vを超える起電力と一致する。充放電の繰り返し試験の結果、反応の可逆性も確認できた。
このように、本発明者らは、活物質に用いたリン酸が酸化・還元反応によりリン酸=亜リン酸=次亜リン酸と変化すること、すなわち、リン酸中のリンの価数が5価=3価=1価と可逆に変化することにより、電位差を生じ、二次電池の起電力に貢献する働きを担うことを見出した。
(負極活物質中の金属の酸化還元電位に依存しない二次電池)
上述のように、リン酸自体が酸化・還元反応により十分な電位差を有することから、負極活物質中の金属の酸化還元電位に依存しない二次電池を構成することができる。
正極活物質の配位子としては硝酸を用いることができる。硝酸は、(11)式に示すように酸化・還元反応により硝酸=亜硝酸と可逆に反応することが知られている(F.A.Cotton and G.Wilkinson: Advanced inorganic Cemistry Fifth Edition p. 327, John Wiley & Sons, 1988) 。
そうすると、上述の負極活物質におけるリン酸と同様に、正極活物質における硝酸が二次電池の起電力に貢献する働きをすることが推測できる。そこで、金属の酸化還元電位に依存しない二次電池として、リン酸を負極に、硝酸を正極とした二次電池の構成可能性について実証を行った。上記(6)、(7)および(11)式から理論上はこれらの総和である1.72Vの起電力を有する電池が期待できる。負極活物質として2Mのリン酸、正極活物質として2Mの硝酸を用い、それぞれの水溶液にグラファイト板を接触させて正極および負極を構成した。正極と負極の間にセパレーターとして陽イオン交換膜を配置し、二次電池を作製した。
この二次電池を充電後、0.5mAで放電した時の放電曲線を図7に示す。放電曲線は必ずしも良好とはいえないが、少なくとも電極電位が約1.6Vであることが確認できる。これは上述の理論値と比較しても大きくかけ離れていないといえる。これにより、正極活物質に用いた硝酸が酸化・還元反応により硝酸=亜硝酸と変化すること、すなわち、硝酸中の窒素の価数が5価=3価と可逆に変化することにより、電位差を生じ、負極活物質に用いたリン酸と同様に二次電池の起電力に貢献する働きを担うといえる。なお、正極の硝酸は反応性が高く、電極を溶解してしまうため、硝酸そのものを使う限り二次電池としての実用性は期待できないが、活物質中の金属の酸化還元電位に依存しない二次電池の構成可能性を肯定する結果であるといえる。
以上を理論的な前提とし、活物質中の金属の酸化還元電位に依存しない二次電池の具体的な構成を説明する。
負極活物質としては、リン酸基を用いたリン酸無機塩であれば原理的にはどのようなものでも用いることができる。ただし、二次電池として構成した場合の安定性を考慮し、好ましい具体的としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムを挙げることができる。
次に、正極活物質としては、硝酸基を用いた硝酸無機塩であれば原理的にはどのようなものでも用いることができる。ただし、負極活物質の場合と同様、二次電池として構成した場合の安定性を考慮すると、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウムを好ましく用いることができる。
また、正極活物質として、硫酸鉄(III)(Fe2(SO4)3)または硫酸鉄(II)(Fe(SO4))を用いることもできる。この場合、硝酸の代わりに鉄イオンの酸化還元電位に依存することになることから、正極活物質においては活物質中の金属の酸化還元電位に依存しないとはいえないが、他の構成と同様、安価かつ安全な二次電池となしうる。
上記リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウムは、肥料としても用いられ、非常に安価に入手できるものとして広く知られるものである。
なお、二次電池の起電力が金属の酸化還元電位に依存しない構成とするための活物質として、複数の酸化状態を持つものは、原理的には塩素、臭素、ヒ素等がありうるが、二次電池として用いた場合に水の分解を併発しない、気化しない等、二次電池としての重要な条件を満たすものとして、負極においてはリン、正極においては窒素を好ましく用いることができる。従って、負極活物質としては上述のリン酸無機塩、正極活物質としては上述の硝酸無機塩を好ましく用いることができる。
31P-NMR 測定)
上述の通り、二次電池の負極活物質として、リン酸ナトリウムを用いることができる。ここで、リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムおよび次亜リン酸ナトリウムの挙動を調べるため、31P-NMR測定を行った。用いたNMR装置はJNM-ECX400Pである。リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムおよび次亜リン酸ナトリウムの31P-NMRスペクトルを、それぞれ図8〜図10に示す。また、リン酸ナトリウムと亜リン酸ナトリウムとの混合物のスペクトルを図11に、亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムとの混合物のスペクトルを図12に、リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムとの混合物のスペクトルを図13に、高温時(80℃)のリン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムとの混合物のスペクトルを図14に示す。
測定の結果、仮に、リン化合物が安定しない場合には、ピークが時間と共に変化し、一定に保たれないところ、図8〜図14のすべてにおいてスペクトル中のピークの波形がすべて安定していることが確認でき、リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムおよび次亜リン酸ナトリウムはいずれも安定していることが確認できる。また、リン酸ナトリウムのNMRスペクトルは図8に示すように1本線であることが確認できる。これにより、異性体は存在しないか、または存在しても、NMR測定時間内に迅速に交換することが分かった。図9および図10に示すように、亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムでは、複数のピークが見られ、これらが異性体を持ち、NMR測定時間内に交換しないことが確認できる。なお、高温(80℃)でもスペクトルに変化が見られず、亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムが水中で安定であることが確認できる。
図11に示すように、リン酸ナトリウムと亜リン酸ナトリウムとを混合すると、1本線になる。これにより、リン酸ナトリウムと亜リン酸ナトリウムの間で迅速な交換反応が起こっていることが確認できる。興味深いのは、亜リン酸ナトリウムの異性体が全て同じように反応することである。つまり、亜リン酸ナトリウムの異性体は互いに交換しないが、リン酸ナトリウムとの間では、それらは迅速に交換することが確認できた。
一方、亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムとの混合物のNMRスペクトルを示した図12では、それらのピークが独立しており、NMR測定時間内では交換が起きていない。図13より、リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムとの混合物については、常温では交換は起きていないが、図14より、図13と比較するとピークが1本減少し、80℃では異性体の1つが迅速に交換することが確認できる。
以上より、31P-NMR 測定の結果、リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムおよび次亜リン酸ナトリウムはいずれも安定しており、リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムでは異性体が観測された。これら塩は、高温(80℃)でも同様である。また、リン酸ナトリウムと亜リン酸ナトリウムの間では、迅速な交換が確認され、これらの酸化還元反応も速い可能性を予測させる。リン酸ナトリウムと亜リン酸ナトリウムの間では交換反応は全く確認できなった。そのため、リン酸ナトリウムと亜リン酸ナトリウムの間での酸化還元反応が遅い可能性はある。リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムでは、高温で迅速な交換が起こることが確認できた。
交換反応と酸化還元反応は、以下のように説明できる。リン酸イオン(PV)と亜リン酸イオン(PIII)の交換反応は以下の(12)式のように表すことができる。なお、式中の「」の記号は、交換の様子を示すために便宜的につけたものである。一方、リン酸イオンの還元と亜リン酸イオンの酸化反応は以下の(13)式および(14)式のように表すことができる。
ここで、(12)式で示した交換反応の速さは、(13)式と(14)式で示したリン酸(PV)と亜リン酸(PIII)間の酸化還元反応(電極反応)の速さに依存する。つまり、(13)式および(14)式で示した反応がいずれも速ければ、(12)式で示した交換反応も速くなる。反対に、(13)式と(14)式で示した電極反応が速ければ、(12)式で示した交換反応も速いことになる。ただし、(12)式で示した交換反応は、直接PV と PIIIとの間における電子供与の可能性もあることから、交換反応が速いことは必ずしも電極反応が速いということの絶対的な根拠とまではいえない。以上より、必ずしも絶対的な根拠とはいえないが、交換反応が速いということは電極反応が速い可能性を示唆するものであるといえる。
(触媒)
触媒として、負極の活物質にバナジウムを添加すると、さらに電池の性能を向上させることができる。ここでいうバナジウムは、酸化バナジウム、バナジウム塩、バナジウム錯体のいずれでも良く、特に制限はないが、価格や入手容易性の観点からは、酸化バナジウム、具体的には五酸化バナジウム(V)または三酸化バナジウム(III)を好ましく用いることができ、このうち五酸化バナジウム(V)は最も安価かつ容易に入手できることから、特に好ましく用いることができる。
(バナジウムの触媒としての効果について)
バナジウムの触媒としての効果について、以下に説明する。まず、リン酸(H3PVO4)、亜リン酸(H3PIIIO3)、次亜リン酸(あるいはホスフィン酸)(H3PIO2)の間の平衡を以下の(15)式と(16)式に示す。
次亜リン酸は、電極での反応は速くないことが推測される。一方、バナジウム(II)の電極反応は迅速に進むと考えられる。次亜リン酸とバナジウム(II)の反応が速ければ、以下の反応が起こる。ここでは、リン酸(H3PVO4)はPV, 亜リン酸(H3PIIIO3)はPIII、次亜リン酸(H3PIO2)はPIで示す。なお、反応における水の関与は無視するものとする。
上記(17)式と(18)式とを足すと、次の(19)式のようになる。
上記(19)式で表される反応は、上述の(16)式で表される反応と、反応の向きは逆であるものの、熱力学的には全く同じ反応である。電極では上述の(17)式で表される反応が起こっているが、熱力学的には式に表れない。すなわち、電極では上述の(17)式で表される反応が起こるが、その際生成するバナジウム(III)は、上述の(18)式で表される反応によりバナジウム(II)に戻されることから、熱力学的には、反応全体を見ると(17)式は表れないことになる。反応が進み、PIが減少すると、上述の(18)式で表される反応は起こらず、原理的に次の(19)式で表される反応が起こるものと考えられる。
一般に、PIIIからPVへの酸化は起こり難いとされるが、上記(20)式で示すようにバナジウムにより活性化されると推測される。バナジウム(II)は電極上で酸化される。
上述の(20)式と(17)式とを足すと、反応の向きは異なるが上述の(15)式になる。
上記(21)式において、上述の(17)式で表したバナジウムの反応は表れない。すなわち、上記(21)式によればバナジウムは触媒としてのみ機能することが分かる。次亜リン酸、亜リン酸が無くなれば、バナジウム(II)も電極上で酸化され、バナジウム(III)になる。負極で起こる全ての反応の電位は、0.78V + 0.26V = 1.04Vになる。以上は、酸化バナジウムの均一反応的効果による触媒効果と考えることができる。ただし、これは上述の(16)式に示されるようにバナジウムの2価と3価の反応であり、添加される五酸化バナジウム(V)(V2O5)は固体で5価であるところ、2価と3価まで還元される必要があることになる。
一方、バナジウム酸化物(V2O3あるいはV2O5)の触媒効果と、酸化ルテニウム(RuO2)で報告されているレドックスキャパシタとの類似性からバナジウムによる触媒効果を説明することも考えられる。
酸化ルテニウム(RuO2)によるレドックスキャパシタでは、上記(22)式で示される反応により、電荷を貯蔵・放出できる。五酸化バナジウム(V)(V2O5)においても、これと類似する、次の(23)式で示される反応が生じうる。
上記(23)式で示される反応によれば、電子の放出・吸収反応が、電極での活性中心になり、次亜リン酸またはリン酸の酸化・還元反応を活性化させる可能性がある ([1]J.P. Zheng et.al.. J. Electrochem. Soc., 142, L6 ,1995、[2]W. Sugimoto et.al., Angew. Chem. Int. Ed., 42, 4092 ,2003、[3]J.H. Park et.al., J. Electrochem. Soc., 150, A864 82003、[4]C.C. Hu et.al., J. Electrochem. Soc., 151, A281 ,2004、[5]K. Naoi et.al., J. Electrochem. Soc., 156, A52 ,2009)。
以上より、バナジウム酸化物表面における不均一反応、換言するとレドックスキャパシタ的効果として、バナジウムの触媒効果を説明できる。レドックスキャパシタ的効果として説明する場合、五酸化バナジウム(V)(V2O5)の状態を維持すればよく、反応の良好な可逆性、二次電池における良好な充放電の繰り返しが期待できる
負極活物質として次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)、正極活物質として硝酸ナトリウム(NaNO3)を用いた二次電池において、負極活物質の触媒として、五酸化バナジウム(V)(V2O5)を重量比で5重量%、10重量%、20重量%、30重量%と変化させて場合の重量エネルギー密度の変化を測定した。なお、このときの二次電池は以下のように作成した。負極活物質として次亜リン酸ナトリウム、正極活物質として硝酸ナトリウムを秤量し、それぞれ導電性のカーボン粉末と1:10の割合で混合した。さらに負極活物質の触媒として、五酸化バナジウム(V)(V2O5)を重量比で上述のように変化させて負極活物質に混合した。混合後、それぞれ油圧装置で加圧してフィルム状に形成した。これらのフィルムを陽イオン交換膜(AGF製)を挟むよう相対するように載置した。これらのフィルムを水で湿らせて、電池ユニット(宝泉製)に入れ、二次電池を得た。なお、電解液について、飽和水溶液を用いた。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行い、五酸化バナジウム(V)(V2O5)の重量比の変化に伴う重量エネルギー密度の変化を測定した結果を図15に示す。ここで、活物質が導電性のカーボン粉末に対して1/10の割合であることよりすれば、五酸化バナジウム(V)(V2O5)が10重量%添加されている場合とは活物質ペレット全体では1%にすぎない。この点、図15に示したグラフによれば、五酸化バナジウム(V)(V2O5)が10重量%添加されている場合でも120Wh/kgという高い電極電位が得られていることが確認でき、五酸化バナジウム(V)(V2O5)の添加量を増加してもグラフの傾きは非線形で、重量エネルギー密度の増加は次第に緩やかになっていることが確認できる。これにより、触媒効果を明確に示しているといえる。
(酸化バナジウムに代えて塩化クロム(III)を添加した場合)
上述の酸化バナジウムを添加した場合の触媒としての効果を理解する目的で、酸化バナジウムに代わる他の金属として、塩化クロム(III)を添加した場合の効果を調べた。クロム(III)はクロム(II)と次の(22)式で示すように平衡がある。
これは、クロム(II)がバナジウム(III)に比べると遥かに強い還元剤であることを意味する。バナジウム(III)の場合は、上述の(18)式で示したように、次亜リン酸ナトリウムにより還元されることが分かるが、クロム(II)は次亜リン酸ナトリウムにより還元され難い。
上記(23)式で表した反応において、E0は+であるが、クロム(II)の強い還元力を考えると、実際には反応は起こらないと考えるのが妥当である。以上を考えると、クロムイオンは、電極で上述の(22)式で示した反応は起こるが、それ以上反応は連鎖しない。つまり、バナジウムの一連の反応に見られるような触媒反応は起こらない。
次に、本発明で使用される電解液について説明する。電解液としては、難分解性で難燃性電解質を含む導電性液体を用いることができる。電解質は溶媒に溶解して解離し、導電性を示す溶液となる。このような電解質として、例えば、過塩素酸ナトリウムを挙げることができる。
上記導電性の液体としては、非水溶媒を用いることができる。非水溶媒として、例えば、 4-Methyl-1,3-dioxolan-2-one (以下、「PC」と略記する)を挙げることができる。PCは前記電解質を溶解することができ、電解液とすることができる。PCは粘度が高いため、粘度を下げるため炭酸ジエチル(Diethyl carbonate)を混合して用いることもできる。
上記導電性の液体として、水(電解質の水溶液)を用いることもできる。これは導電性液体に有機溶媒を使用する場合に比べ、安全性が格段に増加する。水溶液中に水が存在するため、発火の畏れもなく、例え系内に燃えやすい有機物が存在していたとしても、燃える心配はない。
上記導電性の液体として、水と非水溶媒を混合して使用することもできる。
水溶液または非水溶媒中の電解質の濃度としては、0.1M〜5Mで、好ましくは1M〜4M、より好ましくは2M〜3Mである。
さらに好ましくは飽和水溶液を用いる。飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を使用することで、電極における気体発生を抑制する原因になり、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液は約17Mと非常に濃厚であり、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液では、重量比でNaClO4がH2Oの2倍近くもあるため、電気二重層の発生要因になる。電気二重層のキャパシタ効果により電極電位を向上させると考えられる。
飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を使用することによる電気二重層のキャパシタ効果を実証すべく、以下の試験を行った。導電性カーボンのみでペレットを作製し、一方は(1)3M過塩素酸ナトリウム水溶液、他方は(2)飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を滴下して電池を組み立て、負荷電流は全て3mA、放電流は0.5mAとし、両者を比較した。なお、このとき導電性カーボンは、アセチレンブラック10%、J-SP-α80%、カーボンフェルト10%としたものを用いた。(1)の3M過塩素酸ナトリウム水溶液を用いた電池は、加電圧3V近辺で水の分解によるガスの発生が激しく、cut-off電位は2.8Vが限界であった。一方、(2)飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いた電池では、cut-off電位は3.2Vとすることができ、試験後、電池を解体した際の目視確認によれば、ガスが発生した痕跡はほとんど無いことが確認できた。
(1)及び(2)のいずれについても2回の充放電試験を行った。(1)の電池の充放電曲線を図16に、(2)の電池の充放電曲線を図17に示す。図16によれば、1回目と2回目で充電時間が異なる為、グラフ上相違があるものの、放電時に一定の傾向を示すことが確認できる。すなわち、放電曲線はほぼ直線的であることから、キャパシタが有する特徴を示しているといえるものの、減衰が急激であることから、蓄電量は小さいことが確認できる。一方、図17によれば、最初の急激な減衰と比較的なだらかな減衰を確認できる。以上より、両者には大きな相違があることが確認できた。
上記試験によれば、必ずしも活物質を用いることなく、導電性カーボンに飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を電解液として用いると電池として機能しうることが確認できた。これは、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いると、大きな電気二重層キャパシタが生じることに因ると考えられる。この電気二重層キャパシタにより、活物質を用いた電池においても電池全体の電極電位を引き上げる効果をも有する。
飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いると、なぜ大きな電気二重層キャパシタが生じるのかについて、以下にその理由を考察する。過塩素酸ナトリウムの、水における溶解度は非常に大きく、25℃で、100gの水溶液中に67.8gが溶解する(化学便覧 基礎編II,丸善,1993)。つまり、過塩素酸ナトリウム1分子に対して水分子は3〜4個しか存在しない。この数は、通常の第一配位圏内の水の数(6個)よりも少なく、水分子がNa+とClO4 -に強く束縛されていることを意味し、この状態では自由な水分子は存在しない。その結果、上述の(2)の二次電池の充放電試験において、水の電気分解は抑制され、3.2Vの負荷が可能になったものと考えられる。また、中心イオン(Na+とCLO4 -)は通常の水分子による中和(水分子は分極している)が少なく、電気二重層による中心イオンの配向で高いポテンシャルが生じるものと推測できる。
正極および負極に電極内部の導電性を確保するために導電性炭素材料を用いることができる。これにより、二次電池の内部抵抗を低減させることができ、電池の充放電効率を高めることができ、電池のエネルギー密度を大きくすることができる。
導電性素材は、炭素繊維フェルトを用いることができる。これに代えて、またはこれとともにカーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛粉末、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維フェルト、グラフェンの少なくとも1つか、これらを組み合わせたものと活物質を混合し、加圧成型して固形化したもの、または容器に充填したものも用いることができる。
また、導電性素材に電解液を支持させることでも目的を達することができる。導電性素材に電解質の水溶液または非水溶媒溶液、もしくはこれらを混合した溶液を含ませ、乾燥させることで導電性素材に電解質を支持させる方法を用いることができる。
本発明で使用するセパレーターは、正極と負極とを隔てるとともに、陰イオンの移動は妨げるがプロトン(H+)およびナトリウムイオンを通過させることができる材料を用いる。具体的には、陽イオン交換膜を好ましく用いることができる。
正極・負極のそれぞれの導電性素材は、充放電のため、導電体によって容器の外側に形成された端子と接続される。端子は正極用、負極用のものがそれぞれ容器外に一部が露出するように設けられ、これらを介して、電池と電池外部の機器を接続する。
以上、説明したように、負極活物質にリン酸無機塩、正極活物質に硝酸無機塩を用いることで、活物質において酸化還元反応をひきおこす有効元素が非金属である二次電池を構成することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。まず、本発明で用いる電極の製造法について説明する。なお、放電試験は、全てBioLogic社製SP−50を用いて測定を行った。
(実施例1)
(リン酸ナトリウム塩−硝酸ナトリウム塩二次電池;NaClO4水溶液(10M)を用いた構成)
実用性を考慮し、活物質にリン酸ナトリウム塩および硝酸ナトリウム塩を用いた二次電池を構成した。塩にすることにより、活物質は非常に安定する。特に、亜硝酸ナトリウムは亜硝酸より遥かに安定で、充放電によりNOXが発生することもない。ここで、ナトリウムイオンは活物質として反応には関与しない。このときの塩の反応は、酸としての反応と類似し、以下の(24)、(25)および(26)式のように表すことができる。
また、負極、正極毎の反応としては、以下の(27)式および(28)式のように表すことができる。
負極と正極における標準電極電位を合計すると、1.72Vになる。この値がこの電池の標準状態における起電力になる。一般に、二次電池の活物質には金属が含まれ、活物質の酸化還元反応では、金属の酸化状態が変化する。すなわち、金属の酸化還元電位に依存する。しかし、実施例1の電池では、負極活物質中のリンおよび正極活物質中の窒素の酸化状態が変化する。
具体的な負極活物質として次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)、正極活物質として硝酸ナトリウム(NaNO3)を用い、以下のように二次電池を作成した。なお、初期状態においてこれらの塩を用いたのは、塩の溶解性を最大に保つことができるからである。電池としては、初期状態でリン酸塩または亜リン酸塩を用いても機能する。
負極活物質として次亜リン酸ナトリウムを秤量し、導電性のカーボン粉末である日本黒鉛製(J-SP-α)と電気化学工業製(アセチレンブラック)の混合物、と混合する。十分に混合したら、油圧装置で加圧してフィルム状に形成した。また、正極活物質として硝酸ナトリウムを秤量し、負極活物質と同様にフィルム状に形成した。これらのフィルムを陽イオン交換膜(AGF製)を挟むよう相対するように載置した。これらのフィルムを水で湿らせて、電池ユニット(宝泉製)に入れ、二次電池を得た。なお、電解液について、電解質には過塩素酸ナトリウム、導電性の液体としては水を用いた。導電性を確保するため(電極には)板状の金を使用した。なお、この二次電池は固体電池に見えるが、活物質は水に溶けるため、本質的には液体であり、液体電池と位置づけることができる。活物質は非常に濃厚で、標準状態よりも高い電極電位が期待できる。
得られた二次電池について、放電試験として放電流を0.5mA、充放電を5回繰り返し行った。放電試験の結果を図18に示す。図18より、二次電池として十分な性能を備えることが確認できる。また、図18から、着目すべきは電極電位が約2.5Vと理論値よりも0.7V以上も大きいことが確認できる。この理由は定かではないが、ナトリウム塩では、酸と電極電位に差があり、さらに活物質がほとんど固体状態で、非常に濃厚溶液であることである。硝酸ナトリウムの水への溶解度は920g/Lで、次亜リン酸ナトリウムの水への溶解度は1100g/Lであることから、飽和溶液は、いずれも10M(mol/dm3)近く、これら濃厚溶液が電極電位を高くしたと考えられる。また、図17に見られるように、電気二重層キャパシタによる電極電位の上乗せもその要因になる。
(実施例2)
(リン酸ナトリウム塩−硝酸ナトリウム塩二次電池;PCを用いた構成)
負極活物質として次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)を秤量し、導電性のカーボン粉末(富士黒鉛工業株式会社製、鱗状黒鉛)と1:1の割合で混合した。同様に、正極活物質として硝酸ナトリウム(NaNO3)を秤量し、導電性のカーボン粉末と1:1の割合で混合した。これらの混合粉末を陽イオン交換膜で仕切られた電池ユニット(宝泉製)にそれぞれ正極・負極としてそれぞれ収容し、二次電池を得た。電極にグラファイト板を使用した。それぞれの活物質を湿らす程度に導電性液体を少量セル内に加えた。導電性液体は、3M過塩素酸ナトリウムを含むPC(4-methyl-1,3-dioxolan-2-one)を用いた。
得られた二次電池について、放電電流を1mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図19に示す。図19の放電曲線より、電圧降下がなだらかで、導電性液体として非水溶媒のPCを用いた場合にも二次電池として十分な性能を備えることが確認できる。また、図19より、初期の電極電位が約1.7Vであることを確認できる。これにより、前述の理論的な標準電極1.72Vと良く一致していることも確認できる。
実施例1で得られた二次電池と実施例2で得られた二次電池を直列に接続し、LEDに接続させて発光させた写真を図20に示す。このLEDを発光させるためには、3V以上の電位が必要であるところ、良好に発光することを確認できた。
(実施例3)
(次亜リン酸ナトリウム塩(V2O3添加:20重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
実施例1と同様に、負極活物質として次亜リン酸ナトリウムを秤量し、これに触媒として重量比で1/5の三酸化バナジウム(III)(V2O3)を加えた上で、導電性のカーボン粉末(日本黒鉛製J-SP-α)と1:10の割合で混合する。十分に混合したら、加圧してフィルム状に形成した。また、正極活物質として硝酸ナトリウムを秤量し、負極活物質と同様に導電性のカーボン粉末と1:10の割合で混合した上でフィルム状に形成した。ただし、正極活物質には触媒は加えなかった。これらのフィルムを陽イオン交換膜(AGF製)を挟むよう相対するように載置した。電解液について、電解質に過塩素酸ナトリウム、導電性の液体として水を用い、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液とし、前記フィルムを飽和過塩素酸ナトリウム水溶液で湿らせて、電池ユニット(宝泉製)に入れ、二次電池を得た。なお、実施例1と同様、導電性を確保するため電極には板状の金を使用した。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図21に示す。図21の放電曲線より、放電流の大部分の電極電位、すなわち起電力が著しく高くなることが確認できた。繰り返し試験も良好で、5回目でも大きな変化はないことが確認できる。この曲線から実施例3の二次電池の重量エネルギー密度は138Wh/kgであることが確認できた。負極活物質に触媒として三酸化バナジウム(III)を加え、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いることにより、電極電位が高く、重量エネルギー密度の高い良好な二次電池を得られることが確認できた。
(NaClO4飽和水溶液)を用いた二次電池の放電曲線
(実施例4)
(次亜リン酸ナトリウム塩(V2O5添加:10重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質の触媒として、重量比で1/10の五酸化バナジウム(V)(V2O5)を加えた以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図22に示す。図22の放電曲線より、放電流の大部分の電極電位、すなわち起電力が2Vを超えることが確認できる。繰り返し試験も良好で、5回目でも大きな変化はないことが確認できる。この曲線から実施例4の二次電池の重量エネルギー密度は120Wh/kgであることが確認できた。負極活物質に触媒として重量比で1/10の五酸化バナジウム(V)を加え、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いることにより、電極電位が高く、重量エネルギー密度の高い良好な二次電池を得られることが確認できた。
(実施例5)
(次亜リン酸ナトリウム塩(V2O5添加:20重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質の触媒として、重量比で1/5の五酸化バナジウム(V)(V2O5)を加えた以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図23に示す。図23の放電曲線より、放電流の大部分の電極電位、すなわち起電力が2Vを超えることが確認できる。繰り返し試験も良好で、5回目でも大きな変化はないことが確認できる。この曲線から実施例5の二次電池の重量エネルギー密度は144Wh/kgであることが確認できる。負極活物質に触媒として重量比で1/5の五酸化バナジウム(V)を加え、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いることにより、電極電位が高く、重量エネルギー密度の高い良好な二次電池を得られることが確認できた。
(実施例6)
(次亜リン酸ナトリウム塩(V2O5添加:30重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質の触媒として、重量比で3/10の五酸化バナジウム(V)(V2O5)を加えた以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図24に示す。図24の放電曲線より、放電流の大部分の電極電位、すなわち起電力が2Vを超えることが確認できる。繰り返し試験も良好で、5回目でも大きな変化はないことが確認できる。この曲線から実施例6の二次電池の重量エネルギー密度は160Wh/kgであることが確認できる。負極活物質に触媒として重量比で3/10の五酸化バナジウム(V)を加え、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いることにより、電極電位が高く、重量エネルギー密度の高い実施例3の二次電池をさらに上回る良好な二次電池を得られることが確認できた。
(比較例1)
(次亜リン酸ナトリウム塩(CrCl3添加:20重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質に、実施例3と同様の重量比の塩化クロム(III)(CrCl3)を加えた以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図25に示す。図25の放電曲線より、電極電位は、同じ重量比で負極活物質に三酸化バナジウム(III)または五酸化バナジウム(V)を添加した実施例についての放電曲線を示した上述の図21〜24と比較すると、明らかに低いレベルで推移していることが確認できた。これにより、負極活物質に塩化クロム(III)を添加した場合、実施例3〜6のような触媒効果は生じないことが推察できる。
(実施例7)
(次亜リン酸カルシウム塩 (V2O5添加:20重量%)−硝酸ナトリウム塩二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質として、次亜リン酸カルシウム塩Ca(H2PO2)2、正極活物質として、亜硝酸ナトリウム塩(NaNO3)を用いた以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図26に示す。図26の放電曲線より、十分に高い電極電位が安定して得られ、重量エネルギー密度は109Wh/kgであることが確認できた。これにより、負極活物質として、リン酸あるいは次亜リン酸の対イオンにナトリウムイオンが必須という訳ではなく、ナトリウムイオンに代えて、他の陽イオンであるカルシウムを用いた場合でも、十分に二次電池として機能することが確認できた。
(実施例8)
(リン酸二水素カリウム塩 (V2O5添加:20重量%)−亜硝酸ナトリウム塩二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質として、リン酸二水素カリウム塩(KH2PO4)、正極活物質として、亜硝酸ナトリウム塩(NaNO2)を用いた以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図27に示す。図27の放電曲線より、十分に高い電極電位が安定して得られ、重量エネルギー密度は147Wh/kgであることが確認できた。これにより、実施例7におけるのと同様、負極活物質としてリン酸あるいは次亜リン酸の対イオンにナトリウムイオンが必須という訳ではなく、ナトリウムイオンに代えて、他の陽イオンであるカリウムを用いた場合でも、十分に二次電池として機能することが確認できた。
(実施例9)
(次亜リン酸ナトリウム塩(V2O3添加:20重量%)−硫酸鉄(III)二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
正極活物質として、硫酸鉄(III)(Fe2(SO4)3)を用いた点以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。この電池では、硝酸の代わりに鉄イオンが活物質になる。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図28に示す。上記(31)式からも明らかな通り、Fe3+は硝酸と比べると電位が低いため (F.A.Cotton and G.Wilkinson: Advanced inorganic Cemistry Fifth Edition p. 327, John Wiley & Sons, 1988)、図28の放電曲線より、実施例9の二次電池の電極電位も前述の図21〜図24において示した実施例3〜6の二次電池と比較すると低いことが確認できた。同時に、図28によれば、曲線の下降がなだらかで、5回とも同じような曲線を描いていることから、繰り返し性能も良好で、二次電池として安定した性能を有していることも確認できた。この曲線から実施例9の二次電池の重量エネルギー密度は80Wh/kgであることが確認できた。ただし、硫酸鉄(III)は安価で、安定しているため、この電池には限りない魅力がある。
(実施例10)
(次亜リン酸ナトリウム塩(V2O5添加:20重量%)−硫酸鉄(III)二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質の触媒として、五酸化バナジウム(V)(V2O5)を加えた点以外は実施例9と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図29に示す。図29の放電曲線より、図28に示した実施例9の二次電池と同程度の性能であることが確認できた。この曲線から実施例10の二次電池の重量エネルギー密度は105Wh/kgであることが確認できた。
(実施例11)
(リン酸水素カルシウム塩 (V2O3添加:20重量%)−硫酸鉄(II)二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質としてリン酸水素カルシウム(CaHPO4)を用い、正極活物質として硫酸鉄(II)(FeSO4)を用いた点以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。負極活物質に触媒として重量比で1/5の三酸化バナジウム(III)(V2O3)を加えた点も実施例3と同様である。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図30に示す。図30の放電曲線より、実施例11においても負極活物質として次亜リン酸ナトリウムを用いた実施例9と同程度の性能の電池を得られることを確認できた。この曲線から実施例11の二次電池の重量エネルギー密度は130Wh/kgであることが確認できた。
(実施例12)
(次亜リン酸カルシウム塩 (V2O5添加:20重量%)−硫酸鉄(III) Fe2(SO4)3二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質として次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)を用い、正極活物質として硫酸鉄(III)Fe2(SO4)3を用い、負極活物質の触媒として、五酸化バナジウム(V)(V2O5)を加えた点以外は実施例11と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図31に示す。図31の放電曲線より、実施例12においても負極活物質として次亜リン酸ナトリウムを用いた実施例10と同程度の性能の電池を得られることを確認できた。この曲線から実施例12の二次電池の重量エネルギー密度は96Wh/kgであることが確認できた。
(実施例13)
(リン酸二水素カリウム塩(V2O5添加:20重量%)−硫酸鉄(II)二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質として、リン酸二水素カリウム塩(KH2PO4)、正極活物質として、硫酸鉄(II) (FeSO4)を用いた以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図32に示す。図32の放電曲線より、図29に示した実施例10の二次電池と同程度の性能であることが確認できた。この曲線から実施例13の二次電池の重量エネルギー密度は107Wh/kgであることが確認できた。
(実施例14)
(次亜リン酸カルシウム塩 (V2O5添加:20重量%)−リン酸鉄(III)二次電池; NaClO4飽和水溶液を用いた構成)
負極活物質として、次亜リン酸カルシウム塩Ca(H2PO2)2、正極活物質として、リン酸鉄 (III)(FePO4)を用いた以外は実施例3と同様の方法で二次電池を得た。
得られた二次電池について、放電電流を0.5mAとして放電試験を行った。放電試験の結果を図33に示す。この曲線から、実施例14の二次電池の重量エネルギー密度は91Wh/kgであることが確認できた。
本発明の二次電池は、少なくとも負極活物質において必ずしも金属の酸化還元電位に依存せず、または負極活物質・正極活物質のいずれにおいても金属の酸化還元電位に依存しない構成であることにより、液漏れや発火の危険、環境負荷の観点から従来の電池と比較して高度な安全性を確保し、かつ著しく低廉な二次電池を実現できる。現在用いられている二次電池は、環境負荷や安全性の問題が指摘されながらも、エネルギー密度の高さに注目が集まっているところ、電池の活物質に用いられる金属は、リチウムやバナジウムのように安価とはいえないものが多く、また、鉛やカドミウムのように環境負荷が大きかったり、アルカリ金属のように爆発性がある等、活物質中の金属の酸化還元電位に依存する構成とすることによる不利益も少なくない。
本発明の二次電池は、少なくとも負極活物質において金属の酸化還元電位に依存せず、または負極活物質・正極活物質のいずれにおいても金属の酸化還元電位に依存しないことにより、電池のエネルギー密度が低下したとしても、安全性が高く、地表上に多く存在する、単離容易等の事情により安価で入手容易な物質によって電池を構成することで、安価に大量の電池を得ることが可能となる。そうすると、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度が厳格に求められる場面でなければ、個々の電池のエネルギー密度が必ずしも著しく高くなくとも、大型電池として構成したり、電池を分散して配置してコミュニティ全体としての蓄電容量を確保する等の工夫により、低コストで安全な電池として活用することが考えられる。

Claims (6)

  1. 活物質中のリン酸イオンが酸化・還元反応によりリン酸イオン=亜リン酸イオン=次亜リン酸イオンと変化する負極と、
    活物質中の硝酸イオンが酸化・還元反応により硝酸イオン=亜硝酸イオンと変化する正極と、
    を備えることを特徴とする二次電池。
  2. 前記正極の活物質は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムおよび硝酸カルシウムからなる群から選ばれる無機塩であることを特徴とする請求項に記載の二次電池。
  3. 活物質中のリン酸イオンが酸化・還元反応によりリン酸イオン=亜リン酸イオン=次亜リン酸イオンと変化する負極と、
    活物質中の鉄イオンの酸化数が酸化・還元反応により3価から2価の間で変化する正極と、
    を備えることを特徴とする二次電池。
  4. 前記負極の活物質は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびリン酸カルシウムからなる群から選ばれる無機塩であることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の二次電池。
  5. 前記負極は、触媒として三酸化バナジウム(III)または五酸化バナジウム(V)をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の二次電池。
  6. 電解液として飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を使用することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
JP2015045362A 2014-03-06 2015-03-06 二次電池 Active JP6637660B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015045362A JP6637660B2 (ja) 2014-03-06 2015-03-06 二次電池

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014043748 2014-03-06
JP2014043748 2014-03-06
JP2015045362A JP6637660B2 (ja) 2014-03-06 2015-03-06 二次電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015181107A JP2015181107A (ja) 2015-10-15
JP6637660B2 true JP6637660B2 (ja) 2020-01-29

Family

ID=54329271

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015045362A Active JP6637660B2 (ja) 2014-03-06 2015-03-06 二次電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6637660B2 (ja)

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5770239B2 (ja) * 2012-09-28 2015-08-26 アマゾン電池株式会社 バナジウムリン酸錯体二次電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015181107A (ja) 2015-10-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhang et al. Hydrated layered vanadium oxide as a highly reversible cathode for rechargeable aqueous zinc batteries
Yan et al. High‐voltage zinc‐ion batteries: design strategies and challenges
Bin et al. Progress in aqueous rechargeable sodium‐ion batteries
Xie et al. An irreversible electrolyte anion-doping strategy toward a superior aqueous Zn-organic battery
Xu et al. Recent progress in the design of advanced cathode materials and battery models for high‐performance lithium‐X (X= O2, S, Se, Te, I2, Br2) batteries
Liu et al. A flexible solid‐state aqueous zinc hybrid battery with flat and high‐voltage discharge plateau
Li et al. Mechanistic insight into the electrochemical performance of Zn/VO2 batteries with an aqueous ZnSO4 electrolyte
Chen et al. Anion chemistry enabled positive valence conversion to achieve a record high-voltage organic cathode for zinc batteries
Liu et al. Rechargeable anion-shuttle batteries for low-cost energy storage
Yadegari et al. Sodium‐oxygen batteries: a comparative review from chemical and electrochemical fundamentals to future perspective
Song et al. High‐energy‐density metal–oxygen batteries: Lithium–Oxygen batteries vs Sodium–Oxygen batteries
Liu et al. A Zinc–Dual‐Halogen Battery with a Molten Hydrate Electrolyte
Xu et al. Recent Advances in Electrolytes for Potassium‐Ion Batteries
US9728775B2 (en) Composite anode structure for aqueous electrolyte energy storage and device containing same
Zhu et al. Recent progresses and prospects of cathode materials for non-aqueous potassium-ion batteries
Yin et al. The potential of Na–Air batteries
Ao et al. Electrolyte solvation structure manipulation enables safe and stable aqueous sodium ion batteries
JP2017063020A (ja) 充電式電気化学エネルギー貯蔵デバイス
US20140076730A1 (en) Method and apparatus for extracting energy and metal from seawater electrodes
Jiang et al. An all-phosphate and zero-strain sodium-ion battery based on Na3V2 (PO4) 3 cathode, NaTi2 (PO4) 3 anode, and trimethyl phosphate electrolyte with intrinsic safety and long lifespan
Sharma et al. Fluorophosphates as efficient bifunctional electrocatalysts for metal–air batteries
JP2011071074A (ja) リチウムを含む遷移金属化合物と導電性高分子からなる導電性複合体およびその製造方法ならびにその複合体を用いたリチウムイオン2次電池用正極材料、リチウムイオン2次電池ならびにリチウムイオン2次電池を用いた車
Dai et al. The emerging of aqueous zinc‐based dual electrolytic batteries
Hu et al. Redox-active inorganic materials for redox flow batteries
JPWO2018193683A1 (ja) 電気化学デバイス用部材及び電気化学デバイス

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150407

AA64 Notification of invalidation of claim of internal priority (with term)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764

Effective date: 20150414

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150520

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180214

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20180214

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20180214

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190305

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20190424

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190703

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191217

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191223

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6637660

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250