JP6639801B2 - 金属リン酸錯体二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、金属リン酸錯体を用いた二次電池に関する。
二次電池として、リチウム電池が広く用いられているところ、リチウム電池はエネルギー密度が高く、優れた性能を有しているが、発火事故が頻発する等の危険性を有している。そこで、ナトリウムイオン電池やバナジウム硫酸塩電池といった発火等の危険性の無い、安全な二次電池の実用化に向けた研究・開発が行われている。
かかる観点による電池として、金属とリン酸を活物質の成分として含む構成の電池が知られている。具体的には、主成分の金属として、安全性の観点の他、リチウムの供給不足にも対応できるものとしてナトリウムを用いたナトリウムイオン電池が挙げられるところ、ナトリウムイオン電池はリチウム電池と比較すると未だ十分な性能を備えていないため、性能向上を図るべく、リン酸を成分として含む構成のナトリウムイオン二次電池の活物質の研究が行われている。
特許文献1には、活物質としてナトリウムと遷移金属リン酸塩を正極の活物質として用いるナトリウムイオン二次電池が開示されている。また、特許文献2には、フッ素含有リン酸マンガン化合物を正極活物質として用いるナトリウムイオン電池が開示されている。 さらにまた、特許文献3には、ナトリウムと金属、フッ素を含むリン酸化合物を正極の活物質とし、ナトリウムと金属、リン酸化合物を負極の活物質とするナトリウムイオン二次電池が開示されている。
特開2011−98881号公報 特開2013−89379号公報 特開2013−89391号公報
特許文献1記載の発明では、結晶性の低い製造の容易な活物質を用いて放電容量とレート特性を向上させるために遷移金属リン酸を用いる。また、特許文献2に記載の発明では、正極活物質として用いるフッ素含有リン酸マンガン化合物の結晶構造を維持することによりナトリウムイオン二次電池の性能向上を図ることを課題とする。さらにまた、特許文献3記載の発明では、正極および負極の活物質の組み合わせによりナトリウムイオンの移動の効率化によるナトリウムイオン二次電池の高放電容量の確保及び安定した充放電動作を実現することをその課題とし、活物質にリン酸を用いる。
上記特許文献1〜3記載の発明では、ナトリウムイオン電池として当然のことであるが、特に正極の活物質はナトリウムの供給源としての役割を担うため、必ずナトリウムを含んだ活物質でなければならないという制約を有する。すなわち、活物質として、必須の成分であるナトリウムに加え、他の金属とさらにリン酸とを成分として用いた構成とするものであることから、リン酸と組み合わせる活物質の組成の選択の自由度が低くならざるをえない。また、上記特許文献1〜3記載の発明では、リチウムイオン電池と比較した場合の電池性能について、ナトリウムイオン電池ならではの課題を設定し、これを解決しようとするものである。
そして、一般に、二次電池における起電力は、正極および負極に用いられる活物質の金属イオンの酸化・還元反応による電位差にのみ依存する。上記特許文献1〜3記載の発明において、活物質を構成する分子中のリン酸の働きについて言及がない。
本発明者らは、負極の活物質に用いる金属リン酸錯体を構成するリン酸の挙動に着目し鋭意研究を進めた結果、負極におけるリン酸が二次電池の性能に貢献する働きを見出した。
すなわち、本発明の目的は、負極活物質にバナジウムリン酸錯体またはインジウムリン酸錯体用い、正極に所定の金属のリン酸錯体、硫酸塩または硝酸塩を用いることで、高度な安全性を確保しつつ、起電力を向上させ、重量エネルギー密度の高い二次電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る金属リン酸錯体二次電池は、バナジウムリン酸錯体を含む負極活物質を有し、前記活物質中のバナジウムが酸化・還元反応すると共に、前記活物質中のリン酸が酸化・還元反応によりリン酸=亜リン酸=次亜リン酸と変化することで起電力を得る負極と、鉄、コバルト、セリウム、マンガンからなる群より選ばれ、酸化・還元反応により酸化数が増減する金属の、リン酸錯体、硫酸塩または硝酸塩を含む正極活物質を有する正極と、を備える。
これにより、負極の活物質として使用されるバナジウムリン酸錯体中のリン酸が、充電中にリン酸は還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化し、放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。このとき、リン酸=亜リン酸=次亜リン酸の酸化・還元反応の前後で電位差が生ずることになる。この電位差が、活物質中のバナジウムの酸化・還元反応による電位差に加わることになり、この負極活物質を負極に用いた二次電池において全体としての起電力が増大する。また、正極における正極の活物質として、鉄、コバルト、セリウム、またはマンガンのリン酸錯体、硫酸塩または硝酸塩を用いることで、これらの酸化・還元反応の前後の電位差も二次電池全体としての起電力の増大に貢献する。
別の好ましい態様によれば、前記負極活物質をインジウムリン酸錯体とし、正極活物質としてセリウムまたはバナジウムのリン酸錯体とすることができる。
これにより、負極の活物質として使用されるインジウムリン酸錯体中のリン酸が、充電中にリン酸は還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化し、放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。このとき、リン酸=亜リン酸=次亜リン酸の酸化・還元反応の前後で電位差が生ずることになる。この電位差が、活物質中のインジウムの酸化・還元反応による電位差に加わることになり、この負極活物質を負極に用いた二次電池において全体としての起電力が増大する。また、正極における正極の活物質として、セリウム、またはバナジウムのリン酸錯体を用いることで、これらの酸化・還元反応の前後の電位差も二次電池全体としての起電力の増大に貢献する。
また、本発明の一態様に係る金属リン酸錯体二次電池は、正極と負極とを隔てるセパレーターとして、合成樹脂からなる多孔質シートを用いることを特徴とする。
正極・負極の活物質としてリン酸錯体を用いた場合、これらは水に不溶であるところ、電解液に飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いると、活物質は溶解しないため、電解液は両極において共通のものとすることができる。そうすると、セパレーターは基本的には両極の接触を防ぐ絶縁性能と水の透過性能を備えるだけで良く、かかるセパレーターとしては、例えば、合成樹脂からなる多孔質シートを用いることができる。なお、合成樹脂は、単体および複合体のいずれでもよい。これにより、二次電池製造の低コスト化を図ることができる。
本発明によれば、負極活物質にバナジウムリン酸錯体またはインジウムリン酸錯体を用い、正極に所定の金属のリン酸錯体、硫酸塩または硝酸塩を用いることで、高度な安全性を確保しつつ、起電力を向上させ、重量エネルギー密度の高い二次電池を提供することができる。
バナジウムリン酸錯体固体電池の放電曲線を示す図である。 リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 充電前のバナジウム(III)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す図である。 亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 次亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す図である。 充電後のバナジウム(II)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す図である。 鉄(II)フェナントロリン錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の放電曲線を示す図である。 コバルト(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の放電曲線を示す図である。 セリウム(III)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の放電曲線を示す図である。 マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の放電曲線を示す図である。 セリウム(III)リン酸錯体―インジウム(III)リン酸錯体電池の放電曲線を示す図である。 バナジウム(IV)リン酸錯体―インジウム(III)リン酸錯体電池の放電曲線を示す図である。 鉄(II)硫酸塩―バナジウム(III)リン酸錯体電池の放電曲線を示す図である。 セリウム(III)硝酸塩―バナジウム(III)リン酸錯体電池の放電曲線を示す図である。 セリウム(III)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池(セパレーターとしてポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布を使用)の放電曲線を示す図である。 マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池(セパレーターとしてポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布を使用)の放電曲線を示す図である。 マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池(セパレーターとしてポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布を使用;電解質として硫酸ナトリウム(Na2SO4)を使用)の放電曲線を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
一般に、二次電池の起電力は、正極・負極に用いられる活物質の酸化・還元反応によって生じる電位差による。ここで、二次電池の活物質に用いられる錯体において、活物質が安定な錯体として存在するために必要な物質として硫酸等の金属に対する対イオンが組み合わされる。このとき、金属と結合する官能基は、原子価が1価の場合は原理的に酸化・還元反応が起こらず、原子価が2価以上の場合には、活物質に用いられる錯体の安定性が損なわれたり、有害な物質が生成されたりすることから、対イオンとしての物質に二次電池全体の起電力に貢献しうる電位差が生ずるとは考えられていなかった。
(配位子による補助効果について)
本発明者らは、鋭意研究の結果、対イオンの配位子としてリン酸を用いた場合、リン酸中のリンが酸化・還元反応し、二次電池の起電力に貢献する働きをすることを見出した。これは、他の物質、例えば、硫酸を用いた場合、硫酸自体には酸化・還元反応が起こらないことから、硫酸自体は二次電池の起電力には貢献せず、この働きはリン酸に特有のものといえる。
バナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池の一例として、電解液の溶媒に水を用いたバナジウム(IV)/(III)リン酸錯体固体二次電池の放電曲線を図1に示す。図1から、電位が長時間2Vを超える値を維持していることが確認できる。また、重量エネルギー密度は270Wh/kgであった。
ここで、配位子としてのリン酸が、二次電池の起電力に貢献する働きについて説明する。まず、バナジウム二次電池の一般的な起電力について、バナジウム二次電池として一般的なバナジウム硫酸二次電池の場合を次のように表すことができる。
上の(1)式に示したように正極の酸化還元電位は1.00V、(2)式に示したように負極の酸化還元電位は0.26Vであることから、バナジウム硫酸二次電池の理論的な起電力は、これらの電位差を合計して少なくとも1.26Vとなる。しかし、バナジウムの濃度や硫酸の濃度がケミカルポテンシャルに影響すると考えられ、一般的にはバナジウム硫酸二次電池の起電力は1.4Vとされている(小久見善八 編著 電気化学、2010年、オーム社)。ここで、上述の通り、硫酸自体は酸化・還元反応せず、価数の変化が起こらないことから、硫酸自体は二次電池の起電力には貢献しない。
一方、バナジウムリン酸錯体二次電池について、理論的に次の式で表すことができる。
これによれば、バナジウムリン酸錯体二次電池の起電力は、(3)式に示した酸化還元電位1.00Vと(4)式に示した酸化還元電位0.26Vとの合計である1.26Vとなる。しかし、実際には、図1との関係で先に述べたようにバナジウムリン酸錯体二次電池は、2Vを超える起電力を有する。この優位性は、上記(3)、(4)式で示したバナジウムによる酸化・還元反応だけでは説明することができない。また、リン酸錯体形成によって、ケミカルポテンシャルが変化することを考慮しても、0.7V以上の大きな電位差を説明することはできない。そこで、本発明者らは、バナジウムに配位しているリン酸の、酸化・還元反応における関与に着目した。
(FT−IR測定)
ここで、負極に活物質としてバナジウムリン酸錯体を用いたバナジウムリン酸二次電池を具体例として用いて考察する。検証は、リン酸におけるP−Oの伸縮振動に着目し、リン酸ナトリウムおよびバナジウムリン酸錯体のFT−IR測定を行い、両者を比較することで行った。なお、FT−IR測定装置は、JASCO社製FT/IR6100を用いた。
図2にリン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。1010cm−1における大きな吸収は、リン酸のP−Oの伸縮振動に対応する。
ここで用いたバナジウムリン酸錯体二次電池の負極の活物質は、充電前はバナジウムが3価、充電後は還元反応により2価に価数が変化する。図3に、充電前のバナジウム(III)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す。図2と図3のスペクトルとを比較すると、スペクトルの形が非常によく似ていることが確認できる。なお、バナジウム(III) リン酸錯体ではP−Oの伸縮振動が1010cm−1から1060cm−1にシフトしている。これにより、バナジウム(III)リン酸錯体が等方的な四面体構造を取ることも確認できる。
図4に、亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。
図5に次亜リン酸ナトリウムのFT−IRスペクトルを示す。亜リン酸ナトリウムと次亜リン酸ナトリウムの両者共、リン酸ナトリウムのスペクトルと異なるところ、特に次亜リン酸ナトリウムのスペクトルは著しく異なることが確認できる。
図6に、バナジウムリン酸錯体二次電池の負極の活物質として用いた、充電後のバナジウム(II)リン酸錯体のFT−IRスペクトルを示す。図5と図6のスペクトルとを比較すると、わずかにシフトしているピークもあるが、両者の全てのピークがそれぞれに対応していることが確認できる。
以上より、バナジウムリン酸錯体二次電池の負極の活物質としてのバナジウムリン酸錯体において、充電前はリン酸として存在していた配位子が、充電後は次亜リン酸まで還元されていることが確認できる。このとき、リン酸は、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。
上述のバナジウムリン酸錯体二次電池の負極の活物質におけるリン酸の酸化・還元反応は、次のように表すことができる。
上記(5)式からリン酸が亜リン酸に還元され、リンの原子価は、5価から3価に還元されることが分かる。これにより0.28Vの電位差が生じる。さらに、(6)式から、亜リン酸から次亜リン酸に還元され、リンの原子価が3価から1価に還元されていることが分かる。これにより0.50Vの電位差が生じる。すなわち、(5)式と(6)式とにより、リン酸は亜リン酸に還元され、さらに次亜リン酸まで還元されることにより、0.28Vと0.50Vとの合計である0.78Vの電位差が生じる。充放電の繰り返し試験の結果、反応の可逆性も確認できた。
このように、本発明者らは、配位子であるリン酸中のリンの酸化・還元反応により、電位差を生じ、起電力の増大に貢献する働きを担うことを見出した。この現象を配位子(リン酸)による補助効果と呼ぶこととする。
これを上述のバナジウムリン酸錯体二次電池の例で説明すると、バナジウムリン酸錯体二次電池における負極活物質のバナジウムの酸化・還元反応は(4)式に示す通りであるところ、電位差は0.26Vとなる。これに上述の配位子による補助効果により、0.78Vの電位差を加えることができ、負極全体としては0.26Vと0.78Vとの合計である1.04Vの電位差が生じることとなる。すなわち、バナジウムの酸化還元電位だけでなく、配位子による補助効果が働くことにより、0.78V分起電力が向上し、二次電池の起電力に対して配位子の補助効果が大きく貢献することが説明できる。
負極活物質としては、配位子としてリン酸を用いた金属リン酸錯体であれば原理的にはどのようなものでも用いることができる。ただし、二次電池として構成した場合の安全性の確保、負極の酸化還元電位等を考慮し、好ましい具体的としては、例えば、上述のバナジウムリン酸錯体を用いることができ、また、それ以外の金属リン酸化合物として、例えば、インジウムリン酸(In(III)PO)錯体を好ましく用いることができ、その他、ニッケルリン酸錯体、銅リン酸錯体等を挙げることができる。負極活物質としてIn(III)POを用いた場合、インジウムの酸化・還元反応は次の(7)式に示す通りであり、電位差は0.40Vとなるところ、上述の配位子による補助効果により、0.78Vの電位差を加えることができ、負極全体としては0.40Vと0.78Vとの合計である1.18Vの電位差が生じることとなる。すなわち、理論上、負極ではインジウムを用いた方が、バナジウムを用いるより大きな起電力が得られる。
次に、上記負極活物質を用いて二次電池を構成する場合の正極の活物質に用いる金属化合物について説明する。
かかる金属化合物は、酸化・還元反応により金属イオンの酸化数が変化することで酸化・還元反応の前後の電位から電位差が生じ、この電位差と上述の負極全体における電位差を合計して二次電池全体の起電力とすることができる。具体的には、酸化数が変化するものであればよいが、例えば、上述のバナジウムの他、鉄、コバルト、セリウム、マンガン、ニッケル、カドミウム、亜鉛、インジウム等が挙げられる。鉄、コバルト、セリウム、マンガンの酸化・還元反応を(8)〜(12)式に示す。
上記式中のphenはフェナントロリンを示す。これらの金属化合物を正極の活物質に用いると、上記電位差が生じる。金属イオンの塩としては、例えば、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩などを用いることができる。
次に、本発明で使用される電解液について説明する。電解液として用いる液体は、難分解性で難燃性電解質を含む導電性液体で、分解しにくく、燃焼もしにくい。また、前記液体は水もしくは水と非水溶媒の混合物として用いることができる。電解液として水(電解質の水溶液)を用いることができる。これは導電性液体に有機溶媒を使用することに比べ、安全性が格段に増加する。水溶液中に水が存在するため、発火の畏れもなく、例え系内に燃えやすい有機物が存在していたとしても、燃える心配はない。特に、リチウムイオン電池では、水を使うことは絶対に有り得ない。
電解液として電解質を溶解させた水溶液を使用できるのが特徴であるが、水と非水溶媒を混合して使用することもできる。また、非水溶媒に難分解性で難燃性電解質を溶解させた電解液を使用することができる。非水溶媒だけの電解液は電解液として水を使用しないので、水を使用できない二次電池の電解液にも使用できる。
非水溶媒として、例えば、 4−Methyl−1,3−dioxolan−2−one (以下、「PC」と略記する)を挙げることができる。PCは前記電解質を溶解することができ、電解液とすることができる。PCは粘度が高いため、粘度を下げるため炭酸ジエチル(Diethyl carbonate)を混合して用いることもできる。
さらに、PCと水を併用することもできる。前記電解質をPCに溶解した後、水を加えて電解液とすることもできるし、前記電解質を水に溶解した後、PCを加えて電解液とすることもできる。水を加えることにより、導電性は大幅に向上する。
電解質は水もしくは非水溶媒、または水と非水溶媒の混合液に溶解して解離し、導電性を示す水溶液となるので、電解液として使用することができるのである。このような電解質として、例えば、過塩素酸ナトリウムを挙げることができる。
水溶液もしくは非水溶媒中の電解質の濃度としては、0.1M〜5Mで、好ましくは1M〜4M、より好ましくは2M〜3Mである。さらに好ましくは飽和水溶液を用いることができる。
過塩素酸ナトリウムは水に対する溶解度が非常に高く、優れた電解質であるが、有機物との混合物は爆発の危険性があることも否めない。そこで、かかる危険を回避し得る構成として、電解質として硫酸ナトリウム(Na2SO4)を用いることもできる。
また、正極および負極に電極内部の導電性を確保するために導電性炭素材料を備えることにより、二次電池の内部抵抗を低減させることができ、電池の充放電効率を高めることができ、電池のエネルギー密度を大きくすることができる。
導電性素材は、炭素繊維フェルトを用いることができる。これに代えて、またはこれとともにカーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛粉末、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維フェルト、グラフェンの少なくとも1つか、これらを組み合わせたものと活物質を混合し、加圧成型して固形化したもの、または容器に充填したものも用いることができる。
また、導電性素材に電解液を支持させることでも目的を達することができる。導電性素材に電解質の水溶液または非水溶媒溶液を含ませ、乾燥させることで導電性素材に電解質を支持させる方法を用いることができる。
本発明で使用するセパレーターは、正極と負極とを隔てるとともに、電子の移動は妨げるがプロトン(H+)を通過させることができる材料を用いる。具体的には、カチオン交換膜を好ましく用いることができる
また、両極活物質としてリン酸錯体を用いた場合、これらは水に不溶である。電解液に飽和過塩素酸ナトリウム水溶液を用いると、活物質は溶解しないため、電解液は両極において共通(例えば、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液)となる。負極と正極の電解液が共通であるとういことは極めて珍しく、既存の電池では鉛蓄電池だけである。負極と正極の電解液が共通であることにより、電池内部の機能構造を簡略化することができる。セパレーターとしてカチオン交換膜を使用する理由は、水素イオンとナトリウムを透過し、他の金属イオンを遮断することにあるが、電解液が共通であれば、セパレーターとしてカチオン交換膜である必要はない。すなわち、セパレーターは両極の接触を防ぐ絶縁性能と水の透過性能を備えるだけで良い。この点も、鉛蓄電池と共通する。かかるセパレーターとしては、例えば、合成樹脂からなる多孔質シートを用いることができる。なお、合成樹脂は、単体および複合体のいずれでもよい。合成樹脂からなる多孔質シートとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布を挙げることができる。ポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布は、水を透過し、耐薬品、耐熱に優れ、難燃性で電気特性も安定しており、高分子構造が単純で非常に安価である。そのため、セパレーターとしてポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布を用いることにより、二次電池製造の低コスト化に資することになる。
正極・負極のそれぞれの導電性素材は、充放電のため、導電体によって容器の外側に形成された端子と接続される。端子は正極用、負極用のものがそれぞれ容器外に一部が露出するように設けられ、これらを介して、電池と電池外部の機器を接続する。
以上、説明したように、負極活物質に金属リン酸錯体を用いることで、安全な二次電池の構成としつつ、リン酸中のリンの酸化・還元反応によってこの負極活物質を用いた二次電池全体の起電力を増加させることができ、重量エネルギー密度を向上させることができる。また、正極の活物質に酸化・還元反応により酸化数が増減する金属化合物を用いることができる。これにより、安全性を確保しつつ、必ずしも正極・負極の両極双方に高価なバナジウム等の金属を用いることなく入手し易い安価な金属で高性能な二次電池を構成することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。まず、本発明で用いる電極の製造法について説明する。正極と負極のそれぞれについて、活物質と、導電性を確保するための炭素材料を混合、粉砕し、型に入れ、加圧成型する。正極と負極の部材をそれぞれ難分解性で難燃性電解質を含む電解液で湿らし、カチオン交換膜を挟むよう相対するように載置する。なお、放電試験は、全てBioLogic社製VSPを用いて測定を行った。
(実施例1)
(鉄(II)フェナントロリン錯体―バナジウム(III)錯体電池)
正極活物質に鉄(II)フェナントロリン錯体[Fe(II)(o−phen)(ClO)]を用い、負極活物質にはバナジウム(III)錯体[V(III)PO4]を用い、正極と負極のそれぞれについて活物質と導電性を確保するための炭素材料を混合、粉砕し、型に入れ加圧成型した。
正極と負極をそれぞれ難分解性で難燃性電解質を含む電解液で湿らし、カチオン交換膜を挟むよう相対するように載置した。難分解性で難燃性電解質を含む電解液としては、過塩素酸ナトリウムの飽和水溶液を用いた。カチオン交換膜はAGCエンジニアリング株式会社製「セレミオン(CSO)」を用いた。
正極のイオン交換膜と接する面と反対面に電極内で発生した電気を集電するための集電部材を接合し、さらに集電した電気を取り出すための端子を貼り付けた。負極も同様にした。集電部材として、炭素繊維織物を使用した。前記正極、前記負極、前記セパレーター、集電部材、端子を容器に収容し、電池を作製した。
正極における鉄フェナントロリン錯体の酸化還元電位は、(8)式で示すように1.14Vである。
これに(4)式で示した負極のバナジウムの3価から2価に変化する時の電位差0.26Vが加わる。
さらに、負極の活物質として金属リン酸化合物中のリン酸が充電中に還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。この過程で(5)式、(6)式に示す電位差が発生する。
そうすると、正極において1.14V、負極においては0.26Vに0.28Vと0.50Vとを加えた1.04Vの電位差が生じることになり、鉄−バナジウム電池の全体としての起電力はこれらを合計して2.18Vとなる。すなわち、起電力が2.18Vという起電力の高い電池が得られる。得られた二次電池についてCut−Off電圧2.8V、充電電流5mA、放電流0.5mAで放電試験を行った。この試験の放電曲線を図7に示す。図7において、横軸は比容量、縦軸は電極電位である。比容量には、放電流(mA)、活物質の重量(g)、時間(h)が含まれているが、変数は時間だけで、図の形は横軸を時間に対してプロットしたものと変わりない。図7より、初期電圧が2V以上であることが確認できた。同時に、正極活物質がリン酸錯体でない電池構成であっても電池として正常に機能しうることが確認できた。ただし、正極活物質である鉄化合物が重く、グラフの変曲点では1.8V程度まで電圧降下が生じており、重量エネルギー密度は約113Wh/kgであった。
(実施例2)
(コバルト(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池)
正極の活物質にコバルト(II)リン酸錯体[Co(II)HPO4・8HO]を用い、負極の活物質にはバナジウム(III)リン酸錯体[V(III)PO4]を用い、正極と負極のそれぞれについて活物質と導電性を確保するための炭素材料を混合、粉砕し、型に入れ加圧成型した。
炭素材料は、日本黒鉛工業(株)製のJSP−αと電気化学工業(株)製のカーボンブラックの混合物を用いた。その他の条件は実施例1と同様にして、電池を作製した。
正極におけるCo(III)とCo(II)の反応は(9)式に示すように、大きな酸化還元電位がある。
これに上述の(4)式で示した負極のバナジウムの3価から2価に変化する時の酸化還元電位0.26Vが加わる。
さらに、負極活物質における金属リン酸化合物中のリン酸が充電中に還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。この過程で(5)式、(6)式に示す起電力が発生する。
そうすると、正極において1.82V、負極においては0.26Vに0.28Vと0.50Vとを加えた1.04Vの電位差が生じることになり、コバルト−バナジウムの全体としての起電力はこれらを合計して2.86Vとなる。すなわち、起電力が2.86Vという起電力の高い電池が得られる。得られた二次電池についてCut−Off電圧を3.3Vとした他は実施例1と同様の条件で放電試験を行った。この試験の放電曲線を図8に示す。図8のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図8より、初期電圧が2.5V以上で、グラフの傾斜がなだらかで、かつ、変曲点でも少なくとも2V以上の電圧を維持できていることが確認できた。重量エネルギー密度は185Wh/kgであった。
(実施例3)
(セリウム(III)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池)
正極に用いる活物質にセリウム(III)リン酸錯体[Ce(III)PO4・2HO]を用い、負極に用いる活物質にバナジウム(III)リン酸錯体[V(III)PO4]を用いた他は、実施例2と同様の方法でセリウム(III)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池を作製し、実施例2と同様の方法で放電試験を行った。なお、セリウムの酸化還元電位は(10)式に示されるように4価から3価の間で変化する際の1.61Vである。
これに(4)式で示した負極のバナジウムの3価から2価に変化する時の酸化還元電位0.26Vが加わる。
さらに、負極の活物質として金属リン酸化合物中のリン酸が充電中に還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。この過程で(5)式、(6)式に示す電位差が発生する。
そうすると、正極において1.61V、負極においては0.26Vに0.28Vと0.50Vとを加えた1.04Vの電位差が生じることになり、セリウム(III)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力はこれらを合計して2.65Vとなる。すなわち、起電力が2.65Vという起電力の高い電池が得られる。得られた二次電池についてCut−Off電圧3.5V、充電電流5mA、放電流0.5mAで放電試験を行った。この試験の放電曲線を図9に示す。図9のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図9より、少なくとも1回目、2回目の試験において、初期電圧が2.5V以上で、かつ、グラフの傾斜がなだらかで変曲点でも2V以上の電圧を維持できていることが確認できた。重量エネルギー密度は240Wh/kgであった。
(実施例4)
(マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池)
正極の活物質にマンガン(II)リン酸錯体[Mn(II)(HPO4)・4HO]を用い、負極の活物質にバナジウム(III)リン酸錯体[V(III)PO4]を用いた以外は、実施例2と同様の方法でマンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池を作製した。正極におけるマンガンの酸化還元電位は(11)式に示すように1.51Vである。
これに(4)式で示した負極のバナジウムの3価から2価に変化する時の酸化還元電位0.26Vが加わる。
さらに、負極の活物質として金属リン酸化合物中のリン酸が充電中に還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。この過程で(5)式、(6)式に示す電位差が発生する。
そうすると、正極において1.51V、負極においては0.26Vに0.28Vと0.50Vとを加えた1.04Vの電位差が生じることになり、マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力はこれらを合計して2.55Vとなる。すなわち、起電力が2.55Vという起電力の高い電池が得られる。得られた二次電池についてCut−Off電圧3.5V、充電電流7mA、放電流0.5mAで放電試験を行った。この試験の放電曲線を図10に示す。図10のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図10より、初期電圧が2.5V以上で、グラフの傾斜がなだらかで、かつ、変曲点でも少なくとも2.3V以上の電圧を維持できていることが確認できた。重量エネルギー密度は260Wh/kgであった。
(実施例5)
(セリウム(III)リン酸錯体―インジウム(III)リン酸錯体電池)
正極の活物質にセリウム(III)リン酸錯体[Ce(III)PO4・2HO]を用い、負極の活物質にインジウム(III)リン酸錯体[In(III)PO4]を用いた他は、実施例2と同様の方法でセリウム(III)リン酸錯体―インジウム(III)リン酸錯体電池を作製した。なお、セリウムの酸化還元電位は次の(10)式に示され、また、上述した通り1.61Vである。
これに(7)式で示した負極のインジウムの3価から2価に変化する時の酸化還元電位0.40Vが加わる。
さらに、負極の活物質として金属リン酸化合物中のリン酸が充電中に還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。この過程で(5)式、(6)式に示す電位差が発生する。
そうすると、正極において1.61V、負極においては0.40Vに0.28Vと0.50Vとを加えた1.18Vの電位差が生じることになり、セリウム(III)リン酸錯体―インジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力はこれらを合計して2.79Vとなる。すなわち、起電力が2.79Vという起電力の高い電池が得られる。得られた二次電池について、実施例4と同様の条件で放電試験を行った。この試験の放電曲線を図11に示す。図11のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図11より、初期電圧が2.80V以上で、グラフの傾斜がなだらかで、かつ、変曲点でも2.5V以上の高い電圧を維持できていることが確認できた。重量エネルギー密度は270Wh/kgであった。
(実施例6)
(バナジウム(IV)リン酸錯体―インジウム(III)リン酸錯体電池)
正極に用いる活物質にバナジウム(IV)リン酸錯体[V(IV)OHPO]を用い、負極に用いる活物質にインジウム(III)リン酸錯体[In(III)PO4]を用いた他は、実施例2と同様の方法でインジウム(III)リン酸錯体電池を作製した。なお、バナジウムの酸化還元電位は(12)式に示されるように5価から4価の間で変化する際の1.00Vである。
これに(7)式で示した負極のインジウムの3価から2価に変化する時の酸化還元電位0.40Vが加わる。
さらに、負極の活物質として金属リン酸化合物中のリン酸が充電中に還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。この過程で(5)式、(6)式に示す電位差が発生する。
そうすると、正極において1.00V、負極においては0.40Vに0.28Vと0.50Vとを加えた1.18Vの電位差が生じることになり、バナジウム(IV)リン酸錯体―インジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力はこれらを合計して2.18Vとなる。すなわち、起電力が2.18Vという起電力の高い電池が得られる。得られた電池について、実施例5と同様の条件で放電試験を行った。この試験の放電曲線を図12に示す。図12のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図12より、初期電圧が2.7V以上で、グラフの傾斜がなだらかで、かつ、変曲点でも少なくとも2.5V以上の電圧を維持できていることが確認できた。重量エネルギー密度は284Wh/kgであり、他の実施例と比較して、最も良好な結果が得られることが確認できた。すなわち、インジウムリン酸錯体を負極活性物質に用いると、バナジウムリン酸錯体を負極活物質に用いた場合よりも大きな電極電位を生じさせ、重量エネルギー密度の高い優れた二次電池が得られることが確認できた。
(実施例7)
(鉄(II)硫酸塩―バナジウム(III)リン酸錯体電池)
正極に用いる活物質に鉄(II)硫酸塩 [Fe(II)SO]を用い、負極に用いる活物質にバナジウム(III)リン酸錯体[V(III)PO4]を用いた他は、実施例2と同様の方法で鉄(II)硫酸塩―バナジウム(III)リン酸錯体電池を作製した。なお、鉄の酸化還元電位は(12)式に示されるように3価から2価の間で変化する際の0.77Vである。
これに(4)式で示した負極のバナジウムの3価から2価に変化する時の電位差0.26Vが加わる。
さらに、負極の活物質として金属リン酸化合物中のリン酸が充電中に還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。この過程で(5)式、(6)式に示す電位差が発生する。
そうすると、正極において0.77V、負極においては0.26Vに0.28Vと0.50Vとを加えた1.04Vの電位差が生じることになり、鉄(II)硫酸塩―バナジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力はこれらを合計して1.81Vとなる。すなわち、起電力が1.81Vの電池が得られる。得られた二次電池についてCut−Off電圧3.5V、充電電流3mA、放電流0.5mAで放電試験を行った。この試験の放電曲線を図13に示す。図13のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図13より、初期電圧が2.5V以上で、かつグラフ全体の傾斜もなだらかで、かつ、編曲点においても少なくとも2.3V程度の電圧を維持できていることが確認できた。重量エネルギー密度は210Wh/kgであることが確認できた。
(実施例8)
(セリウム(III)硝酸塩―バナジウム(III)リン酸錯体電池)
正極に用いる活物質にセリウム(III)硝酸塩[Ce(III)(NO3)3・6HO]を用い、負極に用いる活物質にバナジウム(III)リン酸錯体[V(III)PO4]を用いた他は、実施例2と同様の方法でセリウム(III)硝酸塩―バナジウム(III)リン酸錯体電池を作製した。なお、セリウムの酸化還元電位は(10)式に示されるように4価から3価の間で変化する際の1.61Vである。
これに(4)式で示した負極のバナジウムの3価から2価に変化する時の電位差0.26Vが加わる。
さらに、負極の活物質として金属リン酸化合物中のリン酸が充電中に還元され、リン酸→亜リン酸→次亜リン酸と変化する。放電中は次亜リン酸は酸化され、次亜リン酸→亜リン酸→リン酸と変化する。この過程で(5)式、(6)式に示す電位差が発生する。
そうすると、正極において1.61V、負極においては0.26Vに0.28Vと0.50Vとを加えた1.04Vの電位差が生じることになり、セリウム(III)硝酸塩―バナジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力はこれらを合計して2.65Vとなる。すなわち、起電力が2.65Vという起電力が高い電池が得られる。得られた二次電池についてCut−Off電圧3.5V、充電電流5mA、放電流0.5mAで放電試験を行った。この試験の放電曲線を図14に示す。図14のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図14より、初期電圧が2.5V以上で、グラフの傾斜がなだらかで、かつ、変曲点でも少なくとも2.5V以上の電圧を維持できていることが確認できた。また、重量エネルギー密度は210Wh/kgであることが確認できた。
(実施例9)
(セリウム(III)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池)
セパレーターとしてポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布を用いることとし、具体的には、東レ株式会社製「トルコン」(登録商標)紙を用いた。その他の点は、実施例3と同様の構成・方法でセリウム(III)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池を作製した。
実施例3と同様、セリウム(III)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力は合計して2.65Vとなる。得られた二次電池について、実施例7と同様の条件で放電試験を行った。この試験の放電曲線を図15に示す。図15のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図15より、初期電圧が2.2V以上で、グラフ全体におけるプラトー(平坦部)が占める割合が大きく、また変曲点でも少なくとも2V以上の電圧を維持できており、二次電池として安定した特性を確認できた。重量エネルギー密度は205Wh/kgであることが確認できた。
(実施例10)
(マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池)
実施例9と同様、セパレーターとしてポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布を用いることとし、具体的には、東レ株式会社製「トルコン」(登録商標)紙を用いた。その他の点については、実施例4と同様の構成・方法でマンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池を作製した。
実施例4と同様、マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力は合計して2.55Vとなる。得られた二次電池についてCut−Off電圧3.5V、充電電流10mA、放電電流0.5mAで放電試験を行った。この試験の放電曲線を図16に示す。図16のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図16より、初期電圧が2.5V程度で、グラフの傾斜は急ではあるものの、5回の繰り返し試験の結果が同様であり、繰り返しの特性において安定していることが確認できた。重量エネルギー密度は180Wh/kgであることが確認できた。
(実施例11)電解質として飽和硫酸ナトリウム使用
(マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池)
実施例9及び実施例10と同様に、セパレーターとしてポリフェニレンサルファイドからなる湿式不織布を用いることとし、具体的には東レ株式会社製「トルコン」(登録商標)紙を用いた。また、電解質として硫酸ナトリウム(Na2SO4)を用いることとし、飽和硫酸酸ナトリウムを作成し、電解液とした。その他の点は、実施例4と同様の構成・方法でマンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池を作製した。
実施例4及び実施例10と同様、マンガン(II)リン酸錯体―バナジウム(III)リン酸錯体電池の全体としての起電力は合計して2.55Vとなる。得られた二次電池についてCut−Off電圧3.2V、充電電流10mA、放電流0.5mAで放電試験を行った。この試験の放電曲線を図17に示す。図17のグラフの縦軸と横軸の関係は、実施例1の場合と同様である。図17のグラフによれば、初期電圧が少なくとも2.0V以上で、グラフの傾斜はやや急ではあるものの、変曲点において1.3〜1.5V程度の電圧を維持できていることが確認できた。重量エネルギー密度は150Wh/kgであることが確認できた。なお、充放電の繰り返しに伴い、エネルギー密度が減少していることも確認できるが、これは活物質の乾燥によるものであって、電解質[Na2SO4]そのものの性質に起因するものではないと考えられる。
以上、実施例1〜11において示したように、必ずしも両極双方に高価なバナジウムを用いなくても十分な起電力を有し、良好な重量エネルギー密度を備えた実用性のある二次電池の構成とすることができることが確認できた。また、実施例5に示したように、バナジウムをまったく用いずに実用性の高い二次電池の構成とすることができることも確認できた。
本発明の負極活物質は、液漏れや発火の危険、環境負荷の観点から従来の電池と比較して高度な安全性を確保した二次電池としつつ、バナジウムを用いる構成とすることはもちろん、必ずしもバナジウム等の効果な金属を用いずに起電力を向上させた二次電池の構成に資することもできる。現在用いられているリチウムイオン二次電池等の二次電池は、環境負荷や安全性の問題が指摘されながらも、効率等の問題で用いられ続けているが、本発明の二次電池はこれらあらゆる二次電池に代替して利用することができる。例えば、自動車のセルモーターを始動させる電池はもちろん、電気自動車、ハイブリッド自動車、各種電気機器、スマートグリッドにおける電池として用いること等が考えられる。

Claims (4)

  1. バナジウムリン酸錯体を含む負極活物質を有し、前記活物質中のバナジウムが酸化・還元反応すると共に、前記活物質中のリン酸が酸化・還元反応によりリン酸=亜リン酸=次亜リン酸と変化することで起電力を得る負極と、
    鉄、コバルト、セリウム、マンガンからなる群より選ばれ、酸化・還元反応により酸化数が増減する金属の、リン酸錯体、硫酸塩または硝酸塩を含む正極活物質を有する正極と、
    を備えることを特徴とする金属リン酸錯体二次電池。
  2. インジウムリン酸錯体を含む負極活物質を有し、前記活物質中のインジウムが酸化・還元反応すると共に、前記活物質中のリン酸が酸化・還元反応によりリン酸=亜リン酸=次亜リン酸と変化することで起電力を得る負極と、
    セリウム、バナジウムからなる群より選ばれ、酸化・還元反応により酸化数が増減する金属の、リン酸錯体を含む正極活物質を有する正極と、
    を備えることを特徴とする金属リン酸錯体二次電池。
  3. 正極と負極とを隔てるセパレーターとして、合成樹脂からなる多孔質シートを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属リン酸錯体二次電池。
  4. 過塩素酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを電解質とする電解液を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属リン酸錯体二次電池。



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