JP5769355B2 - 遺伝子発現解析方法 - Google Patents
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Description
本発明にかかる遺伝子発現解析方法で用いる本実施形態にかかる遺伝子導入装置10は、図1に示すように、細胞を観察するための倒立型顕微鏡12に備えられる。倒立型顕微鏡12は、細胞を収容したワーク14を載置するワークホルダ16と、該ワークホルダ16上の細胞を照明する照明装置18と、細胞において反射あるいは透過した光、あるいは細胞から発生した蛍光を観察する観察装置20と、上記ワークホルダ16をX方向及びY方向に移動する顕微鏡XYステージ22と、該顕微鏡XYステージ22を駆動制御する顕微鏡XYステージコントローラ24と、上記照明装置18及び観察装置20を制御する顕微鏡コントローラ26と、上記観察装置20により得られた画像を処理する画像処理装置28と、該画像処理装置28により処理された画像を表示するモニタ30を有し、上記遺伝子導入装置10及び該倒立型顕微鏡12の全体を制御する制御コンピュータ32と、を備えている。なお、ワーク14は、細胞の観察を行えるよう、少なくともその基板は透明な材料、例えばガラスで形成された容器であり、シャーレや各種ウェル(マイクロプレート型、スライドガラス型等)が例示される。
上述した遺伝子導入装置10を用いた遺伝子導入方法について以下に説明する。
本実施形態に係る遺伝子導入装置10を用いて、ワーク14内の培養液中で培養される細胞に遺伝子を導入するには、まず、予め収容された細胞培養液中に対して、遺伝子導入物質を含む溶液を供給し混和させることにより、均一に分散させる。この供給工程は予め細胞培養液と遺伝子導入物質を所定濃度に調整した混合液をワーク14に対し供給するような手段であってもよい。また、導入物質は、導入物質以外の他の共存物質、例えば各種色素、微粒子、ペプチド、タンパク質、多糖類等を溶液中に含んでいてもよい。
以上の遺伝子導入装置10は、導入すべき遺伝子を含む溶液(好ましくは培養液)と共に所定の容器に収容されている細胞に対して、容器底面に配置した細胞へ挿入するための微細針を容器上方から精密に上下動させることにより、選ばれた単一の細胞に微小の穿孔を生じ、その穿孔より溶液を流入させる。遺伝子導入装置10によれば、微細針を用いるため、細胞に対するダメージを抑え、狙いとする細胞に対して遺伝子が導入できる。微細針と基板との間に細胞膜を挟みこんだ状態で摺動させるため、確実に細胞膜が破断し穿孔できる。また、穿孔が核内を貫通して形成されているため、遺伝子が核内を流通し効率良く核内に取り込まれる。遺伝子は細胞外の溶液中に分散しているため、細胞内で発現するために十分な量が細胞内に確保され高い導入効率が得られる。また、微細針を用いるため、細胞に対するダメージを抑え、狙いとする細胞に対して遺伝子が導入できる。低侵襲で生存率を高く維持したまま、導入効率も高い遺伝子導入が行なえる。また、検出部により、高精度な穿孔を実施できる。また、検出部が撓み量を検出することで可撓性支持部の破損を防止することも可能である。さらに、遺伝子は細胞外の溶液中に分散させた状態で穿孔内へ流入するようにしたので、細胞内で発現するために十分な量が細胞内に確保され高い導入効率が得られる。
発光をイメージングで捉える発光顕微鏡を用いて一細胞毎の発光を検出することが可能になっており、一細胞レベルでプロモーター活性がどのように変化しているかを観察することが出来る。同一視野で複数遺伝子の発現解析を行うため、標的とした細胞に確実にベクターのトランスフェクションを行う必要がある。細胞へのベクター導入方法としては、「標的とした細胞の周囲に高濃度の遺伝子発現ベクターを共存させておき、先の尖ったプローブ(例えばAFM用プローブ)で細胞に穴を開けてベクターを導入する。」という方法がある。遺伝子導入の方法は、これ以外にも、例えば電荷をかけて積極的に細胞内に導入するなど、いくつか考えられる。この方法を繰り返し行なって、異なる細胞に目的のベクターを導入することで、複数種の遺伝子の発現解析を同一のディッシュ内で条件(具体的には培養、薬剤による刺激、観察についての条件)を揃えて行うことができる。
[手順1]HeLa細胞を35mmガラスボトムディッシュ内で一晩培養する。培地は、DMEM(フェノールレッド、10%FCS入り)である。
[手順2]一晩培養後、DMEM(フェノールレッド、10%FCS入り)を除去し、HBSS溶液1mlを3回置き換え洗浄する。
[手順3]ルシフェラーゼをレポーターとして、AP1遺伝子のプロモーター領域を含む遺伝子発現ベクターであるpGL4−AP1を20ng/mlとなるようにHBSS溶液に調製してディッシュに加え、カンチレバーにより、上述したような観察下で適宜選択した視野領域に含まれている50個の細胞に対して遺伝子導入を行う。なお、GL4はプロメガ社で市販されているルシフェラーゼ遺伝子である。
[手順4]pGL4−AP1発現ベクターを除去し、HBSS溶液1mlを3回置き換え洗浄する。
[手順5]ルシフェラーゼをレポーターとして、NFκB1遺伝子のプロモーター領域を含む遺伝子発現する発現ベクターであるpGL4−NFκB1を20ng/mlとなるようにHBSS溶液に調製してディッシュに加え、カンチレバーにより、上述したような観察下で適宜選択した細胞に対して細胞に遺伝子導入を行う。なお、遺伝子導入した細胞群として、pGL4−AP1発現ベクターを導入した細胞とは異なる視野領域に含まれる50個の細胞を選択した。
[手順6]pGL4−NFκB1発現ベクターを除去し、HBSS溶液1mlを3回置き換え洗浄する。
[手順7]培地をDMEM(フェノールレッド、10%FCS入り)に置き換えて、一晩培養する。ここにおいて、AP1遺伝子とNFκB1遺伝子とが同一の生物発光試薬により発光標識された培養細胞が得られる。ここにおいて、発現パターンの違いや相関を解析すべき任意の遺伝子の組合せを異なる細胞群に対しおのおの導入することができる。なお、標識に用いる発光試薬も生物発光を生じる任意の発光タンパクであってよく、遺伝子ごとに異なる2色以上の波長で発光する発光関連遺伝子を含むような生物発光試薬を用いてもよい。また、細胞ごとに異なる遺伝子を導入する方法以外にも、同一の細胞について異なるプロモーター領域を発現するような複数種類の遺伝子を導入してもよく、その場合には、上記手順3及び4において複数の発現ベクターの混合溶液を添加すればよく、こうすることで同一の細胞の同一部位に対して効率よく複数種の遺伝子を導入することができ、上記手順5及び6の工程を省くこともできるので処理時間の短縮も図れる。
[手順8]培地をHEPES入りDMEM(1%FCS,フェノールレッド抜き)に置き換え、6時間培養する。
[手順9]PMA(Phorbol Myristate Acetate:最終濃度5ng/ml)およびA2318(最終濃度100ng/ml)で刺激する。
[手順10]D−ルシフェリン(プロメガ社製:最終濃度100mM)を加える。
[手順11]発光顕微鏡“LV200”(オリンパス社製)を使ってタイムラプス発光観察する。発光画像を、15分間隔で10時間撮影して画像記憶部に記憶する。なお、発光観察条件として、対物レンズの倍率は×20、露出時間は10分、binningは1×1、CCDカメラはImagEM(浜松ホトニクス(株)製)、である。
[手順12]タイムラプス発光観察によりおのおの撮像され保存された画像は、細胞ごとに分別し且つ発光強度に関する数値データを解析して、その解析結果をグラフ化するような画像処理を行う。この実験では、手順11の画像記憶と手順12の画像処理とを行う市販のソフトウェアであるAQUACOSMOS(浜松ホトニクス(株)製)を用いた。
12:倒立型顕微鏡
14:ワーク
16:ワークホルダ
18:照明装置
20:観察装置
22:顕微鏡XYステージ
24:顕微鏡XYステージコントローラ
26:顕微鏡コントローラ
28:画像処理装置
30:モニタ
32:制御コンピュータ
34:透過照明光源
36:コンデンサレンズ
38:落射照明光源
40:CCDカメラ
42:接眼レンズ
44:導入針
46:導入針保持具、46A:アーム
48:駆動ユニット
50:コントロールボックス
52:カンチレバー
54:取付部材
56:Z軸アクチュエータ
58:シリコンベース部
60:レバー部
62:駆動ユニット制御回路
64:アクチュエータ制御回路
66:針・基板面検出部
68:DNA分散溶液
70:基板
72:細胞、74:細胞膜、76:核、78:破断箇所
100 発光観察システム
103 容器(シャーレ)
104 ステージ
106 発光画像撮像ユニット
106a 対物レンズ(発光観察用)
106b ダイクロイックミラー
106c CCDカメラ
106d スプリットイメージユニット
106e フィルターホイール
106f 結像レンズ
110 画像解析装置
112 制御部
112a 発光画像撮像指示部
112b 発光画像取得部
112c 画像解析部
112d 解析結果出力部
114 クロック発生部
116 記憶部
118 通信インターフェース部
120 入出力インターフェース部
122 入力装置
124 出力装置
Claims (4)
- 細胞内の遺伝子の発現状態を解析する遺伝子発現解析方法であって、
生物発光を生じるように発光標識された所定の発光関連遺伝子を含む複数の細胞を倒立型の撮像装置を用いた照明光による観察下で選択的に作製する作製工程と、
前記作製工程で作製した複数の前記細胞が前記作製工程と同一の容器内に収められている状態で、当該複数の前記細胞に所定の刺激を与える刺激工程と、
前記刺激工程で刺激が与えられた後の複数の前記細胞を同一視野内に捉えた状態で、当該複数の前記細胞の発光画像を正立型の撮像装置により繰り返し撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像した複数の前記発光画像に基づいて、前記所定の発光関連遺伝子を含む細胞のみを関心領域として選びながら各々の所定の前記遺伝子の発現状態の変化を解析する解析工程と、
を含むことを特徴とする遺伝子発現解析方法。 - 前記作製工程は、AFM(Atomic Force Microscope)型の遺伝子導入装置又はマイクロインジェクション法を用いて、前記同一容器内に収められている各々の前記細胞ごとに前記所定の発光関連遺伝子を導入することにより、前記所定の発光関連遺伝子を含む複数の前記細胞を作製すること
を特徴とする請求項1に記載の遺伝子発現解析方法。 - 前記作製工程は、前記細胞ごとに異なる種類の導入用溶液を導入するとともに、前記撮像工程は、前記導入用溶液の種類を識別可能な条件で撮像すること
を特徴とする請求項1または2に記載の遺伝子発現解析方法。 - 前記作製工程は、前記同一細胞に異なる種類の導入用物質を混合液として導入するとともに、前記撮像工程は、前記混合液中の各導入用物質の種類を識別可能な条件で撮像すること
を特徴とする請求項1または2に記載の遺伝子発現解析方法。
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