まず、上述の(1)太陽光発電パネルの設置構造、及び(10)太陽光発電パネルの設置方法における主要な用語の概要を説明する。
「太陽光発電パネル」とは、複数の太陽電池を集積した矩形板状のものであり、一般にパネルと呼ばれるものの他、複数のパネルを縦並びして一体に扱える状態にあるもの(ストリングスと呼ばれるもの)、複数のパネルを横並び及び縦並びして一体に扱える状態にあるもの(アレイと呼ばれるもの)を含む。パネルは、公知のものを利用できる。
「傾斜地」とは、山林、棚田、段々畑、高速道路沿いの法面、鉄道軌道沿いの法面などの傾斜を有する土地が挙げられる。太陽光がある程度あたる傾斜地であれば、太陽光発電パネルの設置個所に利用できる。太陽光が1日2時間以上、更に4時間以上ぐらいあたる傾斜地が好ましい。傾斜地の向きは問わない。日本国においては、傾斜地の向きは東南〜真南〜南西までの方位から選択されたものが好ましく、南向きの傾斜地がより好ましい。
「傾斜の上下方向」とは、傾斜地の地表面に沿って移動したときに高度が変化する方向である。例えば、山林では、山の裾などの低高度側から山頂などの高高度側に沿った方向である。以下、縦方向と呼ぶことがある。後述の「傾斜の左右方向」とは、傾斜地の地表面に沿って移動したときに高度が実質的に変化しない方向である。以下、横方向と呼ぶことがある。
この明細書では、二つ以上の太陽光発電パネルが連結部材によって一体になっている複数のパネルの集まりをパネル群と呼ぶ。「縦パネル群」とは、パネル群のうち、傾斜の縦方向に並べて配置され、このように縦並びに連結された複数のパネルの集まりをいう。各パネル群に備えるパネルの大きさは全て等しい場合、異なる大きさのパネルを含む場合のいずれでもよい。各パネル群に備えるパネル数も特に問わない。同じ大きさのパネルが複数連結された縦パネル群では、その外形が代表的には長方形状である。上述の(1)太陽光発電パネルの設置構造では、後述するように傾斜地の表面状態に応じてパネルがランダムに配置され得るため、同じ大きさの複数のパネルから構成されていても、外形が長方形状ではない縦パネル群を含み得る。後述する連結部材の長さを適宜調整すれば、パネルのランダム配置を容易に実現できる。
上記連結部材とは、太陽光発電パネル同士を連結する部材であり、「縦連結部材」とは、上記連結部材のうち、パネル群が傾斜地に配置された状態においてパネル同士を傾斜の縦方向に連結する部材をいう。後述する「横連結部材」とは、上記連結部材のうち、パネル群が傾斜地に配置された状態においてパネル同士を傾斜の横方向に連結する部材をいう。連結部材は、例えば、ワイヤ、チェーン、ロープ、紐などの可撓性のある長尺体、両側ピンチや両側フック(特にフック間にばね材やワイヤ、チェーンを有するものなど)、蝶番などが挙げられる。連結部材が金属製であれば、強度が高く、パネル同士の連結を強固に行える。金属は、耐食性に優れるステンレス鋼などが挙げられる。連結部材が樹脂などの非金属製であれば、耐食性に優れる。非金属は、ナイロン、ポリエチレンなどの樹脂などが挙げられる。連結部材には、公知のワイヤやチェーン、ロープなどを適宜利用できる。後述する枠部を備える形態では、縦連結部材は、倒木や伐採材、間伐材、これらに皮剥ぎなどの表面加工などを施した丸太などの木材を好適に利用できる。後述する取付部材についても、連結部材と同様な仕様、材質のものが利用できる。
「支持構造体」とは、少なくとも縦パネル群の重量を支持可能であり、かつ、傾斜地の地上に存在して縦パネル群の最上位置の太陽光発電パネルが取り付けられる部分(支持部)と、傾斜地の地中に埋まって支持部を傾斜地に固定する部分(埋設部)とを有するものとする。支持構造体は、支持部と埋設部とが一体物であり、支持部の一部が傾斜地に直接埋まって埋設部となる場合と、支持部と埋設部とが独立した部材である場合とがある。前者の一体物の場合は、例えば、後述の自然材では、立木の地上部分が支持部であり、立木の根が埋設部である。後者の独立部材の場合は、例えば、後述する丸太が支持部であり、傾斜地に打ち込まれて丸太を固定する部材における埋設部分が埋設部である。以下、支持部と埋設部とが独立した部材である場合、埋設部を有する部材を埋設固定部材と呼ぶ。一つの縦パネル群に対して、少なくとも一つの支持構造体が支持する。一つの縦パネル群に対して複数の支持構造体を備える形態とすれば、縦パネル群をより確実に支持できる。複数の縦パネル群が一つの支持構造体を共用する形態とすることもできる。支持構造体の詳細は後述する。
「最上位置に配置された太陽光発電パネル」とは、傾斜地に配置された一つの縦パネル群を傾斜の縦方向にみたとき、この縦パネル群において最も上方に位置するパネルをいう。
次に、上述の(1)太陽光発電パネルの設置構造、及び(10)太陽光発電パネルの設置方法の主要な構成及びその効果を詳しく説明する。
上述の設置構造では、太陽光発電パネルの設置場所が傾斜地であり、代表的には、パネルがこの傾斜地に実質的に直接配置されている。上述の設置方法では、太陽光発電パネルの設置場所を傾斜地とし、代表的には、パネルをこの傾斜地に実質的に直接配置する。そのため、上述の設置構造及び設置方法では、パネルを特定の角度に維持するための上述の支柱や支持基礎体などを省略できる。即ち、パネル数に応じて、大量の支柱や支持基礎体をも用意して、工場からパネルの設置現場まで搬送する必要が無い。特に上述の支持構造体として、後述する倒木や伐採材、それらの丸太、立木、切株、岩石といった設置現場に存在し得る資材や自然材を利用すれば、パネル以外の部材の搬送も実質的に不要である。その結果、上述の設置構造の構築や上述の設置方法の実施にあたり、最も簡素には、所定量のパネルのみを用意して、設置現場に搬送すればよいことになる。このように上述の設置構造及び設置方法によれば、設置現場に搬送する必要があるものをできる限り少なくできる。
上述の設置構造では、複数の太陽光発電パネルが連結された状態(パネル群)で設置されている。上述の設置方法では、複数の太陽光発電パネルを連結して設置する。そのため、上述の設置構造及び設置方法では、1枚のパネルを単独で設置する場合に比較して設置物の重量が大きく、風などによるパネルの浮き上がりを防止し易い。上述のようにパネルが傾斜地に実質的に直接配置される場合には、パネルが地表面から浮いた状態に配置される場合に比較して、上記パネルの浮き上がりをより防止し易い。また、縦パネル群は、傾斜地に埋まった部分(埋設部)を有することで傾斜地に強固に固定された支持構造体によって、その全体重量が支持されることからも、上述の設置構造及び設置方法は、上記パネルの浮き上がりを防止し易い。更に、支持構造体による支持によって、パネルやパネル群が傾斜地の下方に滑落することなども防止できる。そのため、縦パネル群は、長期に亘って傾斜地に安定して設置される。
上記の縦パネル群は、上述のワイヤやチェーンなどの連結部材によって太陽光発電パネル同士を縦並び状態に連結することで容易に形成できる。ワイヤなどの資材であれば、パネルの設置現場でも容易に調達可能である。このように設置現場でも容易に調達可能な資材を(縦)連結部材に利用することで、設置現場の地域住人であっても、上述の設置構造を容易に構築できたり、上述の設置方法を容易に実施できたりする。
そして、上述の設置構造では、傾斜地の地勢に沿って太陽光発電パネルが配置され、この配置状態に応じてパネル同士が連結されている。上述の設置方法では、傾斜地の地勢に沿って太陽光発電パネルを配置して、この配置状態に応じてパネル同士を連結する。即ち、整地されて平滑な地表面を十分に広く有する傾斜地を探したり、新たに整地を十分にしたりするなど、傾斜地の方をパネルの整列配置に適合させるのではなく、傾斜地の表面状態をできる限り変更せず、理想的にはそのままの状態とする。そして、上述の設置構造では、このような素の傾斜地に適合するように複数の太陽光発電パネルが設置されている点を特徴の一つとする。上述の設置方法では、このような素の傾斜地に適合するように複数の太陽光発電パネルを設置する点を特徴の一つとする。
従って、上述の設置構造及び設置方法では、一つの縦パネル群に備える少なくとも一部のパネルが他のパネルに対してずれて配置される(ランダムに配置される)こと、及び大きさが不均一であることを許容する。例えば、パネルを配置しようとする傾斜地の任意の位置に立木や切株、岩石などが存在する場合、これらを完全に除去するのではなく、これらを迂回してパネルを配置して縦パネル群を形成する。その結果、長方形状に整列配置されていない縦パネル群や、パネル間に比較的長い縦連結部材が存在する縦パネル群を含み得る。このような異形状の縦パネル群を含む上述の設置構造及び設置方法では、専用の機械などを用いた整地、及び整地に付随する上述の後対策などを実質的に不要にできる。上述の設置構造の構築及び設置方法の実施にあたり、パネルの設置の前準備として、例えば、倒木の除去や草刈り、小さな石の除去程度の簡単な整備、即ち、設置現場の地域住人でも容易に行える程度のことを必要に応じて行えばよい。
ここで、従来、複数の太陽光発電パネルを設置する場合には、統一の受光最適角度になるようにパネルを整列配置させている。一方、上述のようにランダムに配置された太陽光発電パネルのなかには、受光最適角度でないパネルが生じ得る。上述の設置構造では、傾斜地に沿って配置されるパネル数をより多くすることで、「受光最適角度でないパネルが生じ得る」ことを許容する。大量のパネルが配置されることで、一日平均でみれば十分な発電容量を確保できるからである。パネル数にもよるものの、上述の設置構造は、例えば、受光最適角度で配置された少量のパネルと比較して遜色のない発電容量を確保できると期待される。未利用の山林や棚田などの自然の傾斜地では、パネルの大量設置が可能な大面積を有している可能性が高い。このような傾斜地にパネルを大量設置することで、上述の設置構造及び上述の設置方法によって構築された設置構造は、日間平均発電量の多寡をパネル数などによって調整できる。また、上述の設置構造及び設置方法によって構築された設置構造は、各パネルの設置及び除去を容易に行えるため、太陽光の照射状態に応じて、時間や季節ごとなどに配置位置を変えることも容易に行えて、十分な発電量を確保し易い。
以上のことから、上述の設置構造及び設置方法によれば、整地や上述の整地後対策などが実質的に不要であり、太陽光発電パネルの設置現場にあるものや現地調達が容易な資材を利用できるため、設置現場の地域住人であっても、容易にかつ短期間で太陽光発電ファームを構築できる。また、整地の費用(代表的には太陽光発電ファームの建築費用の半分程度を占める)を可及的に低減できるため、上述の設置構造及び設置方法は、経済面からも、太陽光発電ファームの容易な構築に寄与する。更に、整地を実質的に行わず自然の地勢をできる限りそのまま保存することで、自然災害の予防も行える。また、パネルの設置領域に存在し得る切株や岩石などは、パネルの下方に存在する場合にはパネルの滑落防止のための堰として機能できる可能性もある。このように山林や棚田などの未利用地の活用、人手及び資材の現地調達の点から、上述の設置構造及び設置方法は、地域活性化を促進できる上に、環境保全などにもつながり、社会的意義が高いと期待される。
次に、上述の(1)太陽光発電パネルの設置構造、及び(10)太陽光発電パネルの設置方法について、より具体的な形態を列記して説明する。
(2) 上述の設置構造の一例として、前記支持構造体が、1.前記傾斜地に生えた立木、2.前記傾斜地に根を張った切株、3.前記傾斜地に一部が埋設される埋設固定部材によって前記傾斜地に固定された倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材、4.前記傾斜地に一部が埋設される埋設固定部材によって前記傾斜地に固定されたネット、及び5.前記傾斜地に一部が埋まり、他部が露出した岩石から選択される少なくとも一つを含む形態が挙げられる。
支持構造体としてパネルの設置現場に存在する立木、切株、及び岩石の少なくとも一つの自然材を含む場合には、これらはいずれも、地表面から突出して地上に存在する部分と、傾斜地に埋まった部分とを一体に備える。従って、この形態は、地表面から突出した部分を実質的にそのまま縦パネル群を取り付ける支持部に利用できる。つまり、上記形態は、傾斜地における太陽光発電パネルの配置予定領域を掘り起こして抜根や岩石の除去といった整地が不要であり、倒木や小石の除去、草刈りなどの軽微な整備などでよい。更に、この形態は、支持構造体を工業的に製造したり、工場から搬送したり、傾斜地に埋設したりすることも不要であり、より容易に構築できる。木の根や岩石の埋まった部分、即ち埋設部は、通常、地面に強固に固定されているため、縦パネル群の重量を十分に維持できる。
支持構造体の支持部として倒木、伐採材、間伐材、倒木を処理した丸太、伐採材を処理した丸太及び間伐材を処理した丸太から選択される少なくとも一つの木材を含む場合には、傾斜地が山林や山林の周辺に設けられる棚田などであれば容易に現地調達できる。木材の種類や表面加工方法などによって異なるものの、倒木や伐採材、間伐材、これらの丸太は少なくとも10年〜20年程度は十分に使用可能である。また、上述のように現地調達が容易であれば、適宜な時期に支持部とする木材の交換も容易である。支持部を交換することで、太陽電池の寿命に達するまで、この形態の配置構造を利用できる。このような木材を支持構造体に利用する場合には、木材を支持部とし、傾斜地に打ち込まれるU字状の部材、杭、ペグなどの埋設固定部材を別途用いることで、傾斜地に容易に、かつ強固に木材を固定でき、縦パネル群の重量を十分に維持できる。
支持構造体としてネットを含む場合には、ネットの大きさを調整することで小範囲から広範囲までの任意の範囲に容易に配置できる。即ち、ネットは、縦連結部材及び横連結部材のいずれにも利用でき、ネットを含む形態は、パネルの支持位置の自由度を高められてランダム配置をより行い易い。ネットも、上記木材と同様に、U字状の部材や杭、ペグなどの埋設固定部材を別途用いることで傾斜地に容易に、かつ強固に固定できる。金属製のネットであれば、強度が高く、多数の太陽光発電パネルを備える縦パネル群であっても、その重量を十分に維持できる。樹脂などの有機物製のネットであれば、軽量であり、配置し易い。
(3) 上述の設置構造の一例として、前記支持構造体は、前記太陽光発電パネルが直接取り付けられる直接支持体と、前記直接支持体を介して前記太陽光発電パネルを間接的に支持する間接支持体とを備え、前記直接支持体は、前記傾斜地に一部が埋設される埋設固定部材によって前記傾斜地に固定された倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を含み、前記間接支持体は、前記傾斜地に生えた立木、前記傾斜地に根を張った切株、前記傾斜地に一部が埋まり、他部が露出した岩石から選択される少なくとも一つの自然材を含む形態が挙げられる。
この形態は、縦パネル群の支持を木材と自然材との双方で行う。即ち、一つの縦パネル群に対して複数の支持構造体によって支持する。ここで、自然材は上述のように直接埋まった部分を有するため(埋設部が自分自身の一部であるため)、自然材のみを支持構造体としていても、縦パネル群を十分に支持できる。しかし、自然材に加えて、木材をも併用することで、上記形態は、縦パネル群をより強固に支持でき、風などによるパネルの舞い上がりや傾斜地の下方への滑落などを防止し易い。そして、この形態は、上記(2)の項で述べたように支持構造体をパネルの設置現場にあるものや現地調達が容易に可能なものとするため、より容易に構築できる。傾斜地が山林などであれば、木材及び自然材の双方ともに概ね設置現場にある。この形態は、一つの縦パネル群の重量が大きくなり易い場合、即ち大きな太陽光発電パネルを含む場合やパネル数が多い場合などに好適である。上述のネットを用いる場合についても、1.木材との組み合わせ、2.自然材との組み合わせ、3.木材及び自然材との組み合わせ、のいずれかとすると、大きなパネルや大量のパネルを含む場合であっても、強固に支持できる。
(4) 上述の設置構造の一例として、前記太陽光発電パネルに取り付けられて、前記傾斜地における隣り合う前記太陽光発電パネル間の隙間を遮光する防草部材を備える形態が挙げられる。
傾斜地に雑草などが生えている場合、太陽光発電パネル上に雑草などが覆い被さって、太陽電池の受光を妨げる恐れがある。上記形態は、傾斜地におけるパネル間の隙間を防草部材によって塞いで遮光するため、この隙間に雑草などが生えたり成長したりすることを抑制できる。従って、上記形態は、雑草などによるパネルへの受光妨害を抑制できる。ここで、傾斜地におけるパネルに覆われた領域は、パネル自体が遮光材となって雑草などの繁殖を抑制できる。しかし、傾斜地におけるパネル間の隙間は、そのままでは太陽光があたり、雑草などが生え得る。除草剤を用いれば、短時間で容易に除草可能である。しかし、除草効果を高めるために除草剤を大量に使用したり繰り返し使用したりすることは、作業者の身体への悪影響、パネルの設置現場への悪影響(自然環境への悪影響)などが危惧される。これに対して、上記形態は、遮光性のある板材などを防草部材として利用することで、作業者及び環境の双方に優しい。防草部材は、金属、木、樹脂などの遮光性を有する材料からなる板(プレート)やシート、布などが挙げられる。金属は遮光性が高い。特に、アルミニウムやその合金は軽量である上に、耐食性に優れて利用し易い。木製の防草部材は倒木や伐採材、間伐材などを利用して作製できるため、現地調達や交換などを容易に行える。樹脂は耐食性に優れる上に、軽く配置し易い。布は、耐食性に優れる上に、軽く、かつ任意の形状に配置し易い。防草部材は、上記隙間を遮光できれば、隣り合うパネルの一方にのみ備えていてもよいし、双方に備えてもよい。全てのパネルに防草部材を備えていてもよい。隣り合うパネルの双方に防草部材を備える場合には、隣り合う各パネルの防草部材の一部が重複するように防草部材の大きさを調整すると、確実に遮光でき、雑草の繁殖をより確実に防止し易く好ましい。
傾斜地に存在する岩石などの周囲に、太陽光発電パネルを十分に配置できないことが考えられる。また、立木や切株などの周囲に意図的に草木を育成させる可能性もある。このような場合、パネルが配置されず、上述の防草部材のみが配置される領域を設けることができる。例えば、上記草木の育成領域を囲むように枠状に防草部材を配置して、防草部材のみの領域を形成すれば、植生を保護しつつ、パネルへの受光妨害を防止できる。また、防草部材に囲まれる岩石などの周辺領域や上記草木の育成領域では、雑草や草木などが茂っても、その影は防草部材の上にできるだけであり、防草部材のみの領域に近接配置されたパネルが遮光されることが無い。
(5) 上述の設置構造の一例として、前記傾斜地が山林であり、前記支持構造体が前記傾斜地に生えた立木、及び前記傾斜地に根を張った切株の少なくとも一方の自然材を含み、前記縦パネル群を配置する発電ゾーンと、前記太陽光発電パネルを配置しない樹木ゾーンとを前記傾斜地の上下方向に交互に備える形態が挙げられる。
上記形態は、発電ゾーンによって大容量の発電が可能でありながら、山林を実質的にそのまま維持した樹木ゾーンを備えることで、立木の根や切株の根によって土砂崩れなどの自然災害を防止できる。上記形態は、ある程度大容量の発電を確保しつつ、自然保全、自然災害からの地域住人の保護などを図ることができる点で、社会的意義が高い。
(6) 上述の設置構造の一例として、前記傾斜地が棚田であり、前記支持構造体の支持部が前記棚田の畔のうち、上方に位置する畔に固定される形態が挙げられる。
一般に棚田は日当たりがよい場所に設けられるため、放棄棚田や休耕棚田は、太陽光発電ファームの構築地として良好に用いることができる。上記形態は、畔に支持部を固定することで縦パネル群の重量を支持でき、上述の太陽光発電パネルの浮き上がりや滑落などを防止できる。また、棚田は、多くの場合、山林のような立木、切株、岩石などが無いことから、荒廃している場合でも、軽微な整備でよく、又は整備が実質的に不要であり、上記形態は、より構築し易い。上記形態は、パネルが棚田に直接配置された場合と、パネルが棚田に直接配置されない場合とがある。前者は、田面にのみパネルが配置される場合、法面にのみパネルが配置される場合、田面及び法面の双方にパネルが配置される場合(例えば、後述の(7)の形態)が挙げられる。後者は、枠部を利用する後述する(8)の形態などが挙げられる。上記形態、及び後述の(7)、(8)の形態では、支持部を倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材とすると、棚田近くの周辺地域(山林など)から容易に調達できる上に、交換なども行い易い。上記形態、及び後述の(7)、(8)の形態は、棚田に代えて、棚田と同様に畝のある段々畑などにも適用できる。
(7) 上述の設置構造の一例として、前記傾斜地が棚田であり、前記支持構造体の支持部が前記棚田の畔のうち、上方に位置する畔に固定されており、前記縦パネル群が前記棚田の田面、及び前記田面に続く法面に階段状に配置される形態が挙げられる。
上記形態は、棚田の田面及び法面の双方に縦パネル群の太陽光発電パネルが配置されるため、棚田を最大限利用できる。田面に配置されるパネルは、構築時、田面に平置きできるため、配置が容易な上に、田面に支持されて安定した状態に維持されるため、連結作業も行い易い。法面に配置されるパネルは、法面の傾斜角度に応じて傾斜して配置されるため、受光最適角度になる場合がある。
(8) 上述の設置構造の一例として、前記傾斜地が棚田であり、前記縦パネル群を構成する各太陽光発電パネルは、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材によって枠状に組まれた枠部に固定されており、前記支持構造体の支持部は、前記棚田の上方の畔と下方の畔とにそれぞれ固定された前記枠部の横木を含み、前記縦連結部材は、前記上方の畔に固定された一方の横木と前記下方の畔に固定された他方の横木を渡るように配置された縦木を含む形態が挙げられる。
上記形態は、太陽光発電パネルが棚田に直接配置されるのではなく、枠部によって支持される。より具体的には、棚田に設けられた畔のうち、上方の畔と、下方の畔(すぐ下方の畔だけでなく、上記上方の畔との間に少なくとも一つの畔を介していてもよい)と、これら両畔間を橋渡しする斜辺とでつくられる矩形状に枠部が設けられ、この枠部に固定されることで、パネルも上下の畔間を橋渡しするように配置される。従って、各パネルは、上記斜辺の傾きに応じた角度に維持される。後述のように枠部の下に木材を別途配置して、パネルの角度を変化させることもできる。また、この形態の各パネルは、法面及び田面に接触せず、かつ畔から枠部の厚さ分以上離れた状態で支持されるため、上述の雑草などによるパネルへの受光妨害の問題が生じ難い。この形態は、田面や法面が比較的小さく、パネルを田面などに直接配置し難いような狭い棚田であっても、枠部を設けることで構築可能である。つまり、田面及び法面にパネルを直接配置する上記(7)の形態や、枠部を利用するこの形態を利用すれば、任意の大きさの棚田を有効活用できる。上記(7)の形態と、この形態とを組み合わせて、即ち一部のパネルを棚田に直接配置し、他部のパネルを枠部で支持してもよい。更に、上記形態は、支持部及び縦連結部材を兼ねる枠部の構成材料を木材とすることで、上述のように現地調達及び交換が容易に行える。その他、上記形態は、田面(段々畑の場合には畑面)にパネルが直接配置されないため、田面を別途利用できる。例えば、田面の利用には、日照が少なくてよいキノコ栽培などが挙げられる。
(9) 上述の設置構造の一例として、前記傾斜の左右方向に並べられた前記太陽光発電パネルを連結する横連結部材を含む形態が挙げられる。
縦連結部材だけではなく横連結部材をも含む上記形態は、太陽光発電パネルが上下左右に並んだ、より大きなパネル群を備えるといえる。そのため、上記形態は、より大容量の発電が望まれる場合に好適に利用できる。また、より大きなパネル群であることで、上述のパネルの浮き上がりをより防止し易い。上記形態は、より多くのパネルを含み得ることから、上述の(3)の形態のように、一つの縦パネル群に対して複数の支持構造体を備えることが好ましい。上述の枠部を用いる(8)の形態では、支持部を構成する枠部の横木を横連結部材としても利用できる。
(11) 上述の設置方法の一例として、前記傾斜地における前記太陽光発電パネルを配置する予定領域に遮光材を配置して除草する除草工程を備える形態が挙げられる。
上記形態は、傾斜地に太陽光発電パネルを配置してパネル群を構築する前に、パネルの配置予定領域を遮光することで雑草などが生えないようにする除草期間を設けるため、パネルの設置領域及びその近傍における雑草などによる受光妨害を効果的に防止できる。除草期間は長いほど好ましく、半年以上、更に1年以上が好ましい。例えば、パネルの設置領域を決定したら速やかに遮光材を配置することが挙げられる。除草工程を設けることに加えて、上述の防草部材を備えるパネルを用いることで、パネルの設置前後のいずれにおいても、雑草などが生えることを効果的に防止できる。遮光材を活用して、できるだけ除草剤を用いない形態とすることで、作業者及び環境の双方に優しく好ましい。遮光材には、上述の(4)の項で述べた防草部材と同様に、金属、木、樹脂などからなる板材やシート材、布といった遮光性を有するものを利用できる。必要に応じて、除草剤を使用してもよい。
以下、より具体的な形態を図に基づいて説明する。各図において、同一符号は同一名称物を示す。
[実施形態1]
図1を参照して、実施形態1の太陽光発電パネルの設置構造1A及び設置方法を説明する。この設置構造1Aは、山林といった傾斜地G1に、その傾斜に沿って配置された複数の太陽光発電パネル1と、パネル1,1同士を連結する連結部材30と、連結部材30で連結されたパネル群10を支持する支持構造体20とを備える。パネル群10は、傾斜地G1の傾斜の上下方向(縦方向、図1では左上から右下方向)に並べられたパネル1,1同士が縦連結部材31によって連結された縦パネル群10A〜10Dを備える。各縦パネル群は、その縦方向の最上位置に配置されたパネル1が支持構造体20に取り付けられて支持される。
設置構造1Aは、図1に示すように傾斜地G1に存在し得る岩石22,r、立木23、切株24などを除去せず、実質的にそのまま存在させて構築されている点を特徴の一つとする。これらを回避するように設けられた設置構造1Aは、パネルの大きさが不均一であったり、パネル1,1間の間隔が異なる部分を含んだり、パネル1の配置角度が不均一であったり、一つのパネル群10に含まれるパネル数が異なっていたりする。
また、この例の設置構造1Aは、一つの縦パネル群10A〜10Dに対して複数の支持構造体20を備える点を特徴の一つとする。具体的には、支持構造体20として、縦パネル群のパネル1が直接取り付けられる直接支持体(ここでは木材21)と、直接支持体を介して縦パネル群を間接的に支持する間接支持体(ここでは岩石22など)とを備える。
以下、設置構造の概要については上述したため省略し、詳細な構成などを中心に説明する。
[太陽光発電パネルの設置構造]
・太陽光発電パネル
この例の設置構造1Aは、所定の大きさのパネル1aと、それよりも大きなパネル1bとを備える。パネル1の大きさは適宜変更できる。パネル1は、架台などの台座が一体になった公知のものや市販のものを利用できる。
この例では、各パネル1の台座の四隅にそれぞれ、ワイヤやチェーンなどの縦連結部材31や直接支持体への取り付けに利用されるワイヤやチェーンなどの取付部材41を挿通可能な孔を有する。パネル1における連結部分の仕様などは、連結部材30や取付部材41の仕様に応じて適宜変更するとよい。
・パネル群
図1の左端に、縦並びされた複数(図1では5枚以上)のパネル1aを備え、パネル1a,1a間がワイヤなどの縦連結部材31によって連結されて縦長の長方形状に形成された縦パネル群10Aを示す。縦パネル群10Aでは、任意のパネル1a,1a間における縦連結部材31の長さが概ね等しく調整されている。つまり、縦パネル群10Aは、パネル1aが整列配置されたパネル群である。
図1において左から2番目に、複数(図1では3枚)のパネル1aを備えるが、傾斜地G1に存在する岩石rなどを回避するために各パネル1aが縦パネル群10Aのように整列されておらず、パネル1の向きなどが不ぞろいである縦パネル群10Bを示す。縦パネル群10Bでは、岩石rなどの近傍に配置されたパネル1a,1a間の縦連結部材31の長さが長めである(図1では左から2番目、上から2枚目と3枚目との間)。なお、縦パネル群10Bは、縦パネル群10Aよりもパネル数が少なくなっている(パネル群の全長が短くなっている)が例示であり、パネル数は適宜変更できる。また、図1では、回避物として、岩石rのみを例示しているが、切株s(図4)や立木(図示せず)の場合がある。
図1において中央に、傾斜の縦方向に並べられた複数(図1では5枚以上)のパネル1aと、傾斜の左右方向(横方向)に並べられた複数(図1では2枚)のパネル1aと、縦並びされたパネル1a,1a同士を連結する縦連結部材31と、横並びされたパネル1a,1a同士を連結するワイヤやチェーンなどの横連結部材37とを備えるパネル群10Cを示す。即ち、パネル群10Cは、縦並びに連結された縦パネル群と横並びに連結された横パネル群との双方を含む(合計10枚以上のパネル1aを含む)。
傾斜地G1において岩石rなどが存在する箇所を回避して、上述の大きなパネル1bが配置されている。この大きなパネル1bは、その近くに配置される縦パネル群10Aのパネル1aと、パネル群10Cのパネル1aとにワイヤやチェーンなどの連結部材35によって連結されている。即ち、縦パネル群10Aとパネル群10Cとパネル1bとで、新たなパネル群が構成されており、このパネル群は、縦パネル群とも横パネル群ともいえる。
図1において右から2番目に、複数(図1では3枚以上)のパネル1aを備えるが、傾斜地G1に存在する岩石rなどを回避するために、岩石r及びその近傍にパネル1が配置されておらず、岩石rを上下に挟むようにパネル1aが配置された縦パネル群10Dを示す。即ち、縦パネル群10Dは、パネル1a,1a間の間隔が大きい箇所を含み(図1では右から2番目、上から2枚目のパネル1aと3枚目のパネル1aとの間)、この箇所に岩石rなどが存在する。また、岩石rを挟むパネル1a,1a間の縦連結部材31の長さは、非常に長くなっている。
傾斜地G1の地勢に応じて配置された複数のパネル1を連結しているパネル群10は、このように様々な形態をとり得る。なお、パネル群10Cだけでなく、任意の縦パネル群のパネル1が連結部材35や横連結部材37によって連結されたより大きなパネル群とすることができる。
・支持構造体
この例では、各パネル群は、直接支持体の支持部に、山林といった設置現場での調達が容易な倒木や伐採材、間伐材、これらの丸太といった木材21を利用し、間接支持体に、傾斜地G1に存在する自然材を実質的にそのまま利用している。この例では、間接支持体は、傾斜地G1に一部が埋まり他部が露出した岩石22、傾斜地G1に生えた立木23、傾斜地G1に根を張った切株24の少なくとも一つとしている。山林などでは、強固で自然界でも長寿である広葉樹の雑木が豊富である。木材21に、このような雑木広葉樹の伐採材やその丸太を利用することは、山林を手入れすることになる上に、伐採材を有効活用できて好ましい。
木材21は、傾斜地G1に打ち込まれて埋め込まれた部分(埋設部、図示せず)を有するU字状の部材などの埋設固定部材211によって傾斜地G1に固定されている。木材21には、その周方向にチェーンやワイヤなどを巻回すると、直接支持体の支持部(ここでは木材21)と間接支持体の支持部(ここでは自然材の地上に存在する部分)とを連結するワイヤやチェーンなどの取付部材42や、直接支持体とパネル群10とを連結するワイヤやチェーンなどの取付部材41を取り付け易い上に、木材21の割れ防止、回転防止などの効果が期待できる。
この例では、縦パネル群10A,10Bのパネル1が同一の木材21に取り付けられ、同一の岩石22及び立木23に支持された形態、即ち、複数の縦パネル群10A,10Bが同一の支持構造体20を共有する形態である。この木材21は、横並びに隣り合うパネル群10を連結する横連結部材としても機能する。各パネル群10A,10Bがそれぞれ、別個の直接支持体(ここでは木材21)及び間接支持体(ここでは自然材)に支持される形態とすることができる。また、この例では、パネル群10C,10Dは、異なる木材21にそれぞれ取り付けられ、同一の立木23及び切株24に支持された形態、即ち、直接支持体が異なるものの、同一の間接支持体を共有する形態である。
各パネル群10の間接支持体の種類や個数は適宜変更できる。例えば、一つのパネル群10の直接支持体が、一つの間接支持体によって支持される形態とすることができる(後述の図4に例示)。しかし、図1に示す縦パネル群10A〜10Dのように、各パネル群10がそれぞれ、複数の間接支持体によって支持されると、複数のパネル1を強固にかつ確実に支持し易い。例えば、複数の間接支持体を備える場合、あるパネル群10について、ある間接支持体の取付部材42が経時的な劣化などによって支持が不十分になった場合でも、別の間接支持体によって支持できる。即ち、一つのパネル群10に対して複数の間接支持体を備える形態は、パネル群10の長期的な安定性を高められる。図1では、回避物として岩石rなどを示すが、このような回避物も間接支持体に利用できる。
その他、図1では、縦パネル群10A,10Bを支持する木材21と、パネル群10Cを支持する木材21とが上下方向の同じ位置(実質的に同じ高度)に横並びされて一直線状になっているが、縦パネル群10Dを支持する木材21は、上記一直線状の2本の木材21,21に対して、上下方向にずれている(高度が異なる)。地勢に沿ってパネル1がランダムに配置され得るため、支持部である木材21も、上述のように上下にずれて配置されたり、上下方向の概ね同じ位置であるが、一直線状に並ばなかったりすることがある。なお、後述する図4では、複数の木材21,…が一直線状に並んだ状態を例示している。
その他、木材21,21同士をチェーンやワイヤ、板材などで適宜連結して木材群とすることができる。この場合、各パネル群10が複数の木材21,…に支持されるため、各パネル群10が個々の木材21にのみ支持される場合よりも強固な支持構造とすることができる。また、木材群とすると、あるパネル群10について、経時的な劣化などによって、ある木材21の支持が不十分となった場合でも、別の木材21によって支持できる。
・その他の部材
各パネル1は、複数点支持がなされていることが好ましい。この例では、各パネル1はいずれも、連結部材30が取り付けられて四点支持されている。複数点、特に四点支持されることで、各パネル1の浮き上がりを防止し易い。更に、各パネル1の四隅などを傾斜地G1に直接固定する杭やペグなどのストッパー材70を設けることができる。連結部材30及びストッパー材70の双方により、パネル1の浮き上がりをより防止し易い上に、滑落も防止し易い。上述の大きなパネル1bのように、複数のパネル群10によって複数点支持(四点以上でもよい)を行うことができる。
特に、一つのパネル群10において、最下位置に配置されるパネル1は、滑落防止のためにストッパー材70によって傾斜地G1に固定されていることが望ましい。図1では、縦パネル群10Bの最下位置に配置されるパネル1aの最下端がストッパー材70で固定された状態を示す。又は、最下位置に配置されるパネル1を堰き止めるように、パネル1の下端縁に沿って横並びされ、傾斜地G1に打ち込まれた杭などの堰部材(図示せず)を設けることができる。この杭などには、倒木や伐採材、間伐材、これらの丸太などを利用すると、容易に現地調達できる。最下位置のパネル1の最下端近傍に、岩石rなどが存在すれば、堰部材などは設けなくてもよい。
[太陽光発電パネルの設置方法]
このような設置構造1Aは、例えば、以下の設置方法を利用して、容易に構築できる。この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が山林であり、前記支持体準備工程では、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を用意し、埋設固定部材を前記傾斜地に打ち込むことで前記木材を前記埋設固定部材によって前記傾斜地に固定すること、前記支持工程では、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを前記木材に取り付けると共に、前記傾斜地に生えた立木、前記傾斜地に根を張った切株、前記傾斜地に一部が埋まり、他部が露出した岩石から選択される少なくとも一つの自然材に、前記木材を更に取り付けて支持すること、が挙げられる。また、この設置方法は、前記山林における前記太陽光発電パネルを配置する予定領域を整備する整備工程や上述の除草工程を備えることが好ましい。以下、工程ごとに説明する。
・整備工程
傾斜地G1が山林である場合、地表面には、立木、倒木、切株、雑草、大小の岩石などが存在し得る。整備工程では、専用の機械や大型の機械などを用いなくても、概ね人手で除去可能な範囲で、倒木や小さい岩石などの除去、草刈り、必要に応じて伐採を行う。即ち、抜根や岩石の掘り起しなどが必要な大掛かりな整地は実質的に行わない。この形態では、大きな岩石22や伐採していない立木23、伐採後に残る切株24を間接支持体などに適宜利用する。
なお、立木23の根や切株24の根は、土を強固に保持するため、土砂崩れなどの自然災害を防止する。従って、根をできる限り長く生かせるように適宜な時期に切株24などから伸びる芽を切る芽切りなどを行うことが好ましい。また、立木23が生い茂って、立木23の近くのパネル1の受光を妨げないように、適宜な時期に枝落としなどを行うことが好ましい。伐採せずに残す立木23としては、針葉樹よりも比較的背が低く、根が広くかつ深く張ることで自然災害を防止し得る広葉樹が好ましい。広葉樹の場合には、上述の芽切りや枝落としを適宜行うことが好ましい。整備の後、適宜、上述の除草工程を行うことができる。
・支持体準備工程
この例では、上述のように直接支持体の支持部とする木材21を用意し、木材21の周囲を囲むようにU字状の部材などの埋設固定部材211を配置して傾斜地G1に打ち込み、埋設固定部材211の一部を傾斜地G1に埋設する。こうすることで、木材21を傾斜地G1に強固に固定する。この例では、一つの木材21に対してその長手方向に複数の埋設固定部材211を配置しており、木材21を傾斜地G1により強固に固定できる。また、この例では、木材21の長手方向に適宜な間隔をあけて、複数個所にチェーンやワイヤなどを木材21の周囲に巻き付けると共に、この巻き付けたチェーンなどの間を繋ぐように木材21の長手方向に沿ってチェーンやワイヤなどを連結して、取付部材41を取り付け易くしている。
更に、この例では、上述のように間接支持体を利用することから、傾斜地G1の適宜な位置にある岩石22、立木23、切株24といった自然材にチェーンやワイヤなどを巻き付けて、取付部材42を係止し易いようにする。なお、適切な位置に自然材が無い場合には、コンクリートなどで別途作製した支柱(図示せず)を用いることができる。しかし、この場合でも、自然材をできるだけ多く利用することで、コンクリートなどの支柱の利用量を低減でき、この支柱の作製、搬送や設置作業を軽減できる。別途作製した支柱が支持構造体20に利用できる点は、後述する実施形態2〜6についても同様である。
・配置工程、支持工程、連結工程
(整備した)傾斜地G1の地勢に応じて、つまり、岩石rや切株などを適宜回避して、傾斜に沿ってパネル1を配置する。
例えば、傾斜角度(勾配)が小さい場合などでは、パネル1を傾斜地G1の地表面に配置しただけで、パネル1は滑落することなく地表面に維持され得る。そのため、複数のパネル1を傾斜地G1に直接配置した後、連結部材30(31,35,37)によってパネル1,1同士を連結したり、取付部材41によってパネル1又はパネル群10を支持構造体20の支持部(ここでは木材21)に連結したりすることができる。即ち、この場合には、パネル1の配置と、支持と、連結とを完全に独立した工程とすることができる。パネル1の位置に応じて、連結部材30の長さを適宜調整する。
一方、傾斜角度(勾配)がある程度大きく、パネル1を傾斜地G1の地表面に配置しただけではパネル1が滑落する恐れがある場合などでは、傾斜の最上位置に配置されるパネル1を支持構造体20の支持部(木材21)に取付部材41によって連結し、以降、パネル1を配置するごとに連結部材30(31,35,37)による連結を行うことができる。即ち、この場合には、パネル1の支持を行った後、パネル1の配置と連結とを概ね交互に行うことになる。こうすることで、パネル1の滑落を確実に防止できる。
その他、連結部材30によって連結する前に、パネル1を上述の杭などの部材によって傾斜地G1に仮止めしたり、本固定したりすることができる。こうすることで、傾斜地G1の傾斜角度によらず、パネル1の滑落を確実に防止でき、支持構造体20への取り付け作業やパネル1,1同士の連結作業を安定して行える。
その他、複数のパネル1を連結したパネル群10(パネル数が少ない小パネル群でもよい)を予め作製して傾斜地G1に配置し、最上位置のパネル1を支持構造体20に取り付けることができる。この場合、パネル数を調整して(少なめにして)、軽量なパネル群とすると搬送や配置が行い易い。
上記の工程により、連結部材30に連結され、かつ木材21に支持された縦パネル群10Aなどのパネル群10を形成、支持、配置できる。この例では、パネル群10を間接支持体(岩石22、立木23、切株24といった自然材)によっても支持することから、木材21と、適宜な自然材とを取付部材42によって連結する。この工程によって、設置構造1Aを構築できる。
[効果]
実施形態1の太陽光発電パネルの設置構造1A及び設置方法は、山林といった傾斜地G1に対して軽微な整備しか行わなくてもよい点、パネルの設置現場(山林)での調達が容易な資材(木材21など)や現場(山林)にある資材(岩石22、立木23、切株24)を活用している点から、設置現場の地域住人であっても容易に構築可能、実施可能である。
[実施形態2]
図2を参照して、実施形態1の太陽光発電パネルの設置構造1B及び設置方法を説明する。この設置構造1Bの基本的構成は、上述の実施形態1の設置構造1Aと同様であり、縦連結部材31によって連結された複数の太陽光発電パネル1a,…を備える縦パネル群10と支持構造体20(木材21、埋設固定部材211)とを備える。特に、設置構造1Bでは各パネル1aに防草部材50を備える点が実施形態1との主要な相違点である。以下、この相違点及びその効果を中心に説明し、その他の構成及び効果は実施形態1と重複するため説明を省略する。
・防草部材
この例では、図2において上方に位置するパネル1aは、矩形状の台座の四辺のそれぞれに、矩形状の布からなる防草部材51が取り付けられている。防草部材51は、杭やペグなどの固定部材45によって傾斜地G1に固定されて、風などで浮き上がらないようにしている。
一方、図2において下方に位置するパネル1aは、矩形状の台座の四辺のそれぞれに、金属製の矩形板からなる防草部材53が取り付けられている。防草部材53は、上述のように固定部材45によって傾斜地G1に固定してもよいが、金属板は布よりも重く浮き上がり難いことから、固定部材45を省略してもよい(図2では省略している)。
そして、図2に示すように隣り合うパネル1a,1a間に配置される防草部材50は、少なくとも一部が重複するように設けられている。そのため、傾斜地G1におけるパネル1a,1a間の隙間を完全に遮光でき、除草効果が高い。
なお、この例では、布製の防草部材51と金属製の防草部材53との双方を備える例を示すが、いずれか一方でもよい。また、この例では、パネル1aの四辺全てに防草部材50を備える例を示すが、あるパネル1aに備える防草部材50の大きさが十分に大きければ、このパネル1aに隣り合うパネル1aは、防草部材50を備えていなくても、除草効果が期待できる。
[太陽光発電パネルの設置方法]
このような設置構造1Bは、例えば、以下の設置方法を利用して、容易に構築できる。この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が山林であり、前記支持体準備工程では、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を用意し、埋設固定部材を前記傾斜地に打ち込むことで前記木材を前記埋設固定部材によって前記傾斜地に固定すること、前記配置工程では、前記太陽光発電パネルとして、前記傾斜地における前記太陽光発電パネルによって覆われない露出領域を遮光する防草部材を備えるものを予め用意して配置することが挙げられる。又は、防草部材を備えるパネルを用意することに代えて、この設置方法は、前記傾斜地における隣り合う前記太陽光発電パネル間の隙間を遮光する防草部材を前記太陽光発電パネルに取り付ける防草材取付工程を備えることができる。これらの設置方法も、実施形態1と同様に、前記山林における前記太陽光発電パネルを配置する予定領域を整備する整備工程や上述の除草工程を備えることが好ましい。以下、特徴のある工程について説明し、実施形態1の設置方法と共通する点は説明を省略する。
・配置工程
傾斜地G1に設けられるパネル1a,1a間の隙間を覆うことができる十分な大きさの防草部材50を用意して、各パネル1aにワイヤやピンチなどで取り付けることで、防草部材付きパネルを作製できる。防草部材50が大きければ、防草部材50,50同士の重複部分を十分に確保でき、遮光性を高められる。この形態は、パネル1aの配置と同時に防草部材50を配置できるため、工程数が少ない。
・防草部材取付工程
この工程では、パネル1aを配置した配置工程後に、又はパネル1を支持構造体20に取り付けた支持工程後に、又はパネル群10を形成した連結工程後に、パネル1aに防草部材50を取り付ける。この形態は、パネル1a,1a間の隙間に応じた適切な大きさの防草部材50を用意できる上に、パネル1aの配置時、防草部材50の重量がパネル1aに加わらず、パネル1aを配置し易い。
又は、この工程では、パネル1aを傾斜地G1から浮かせた状態で、パネル1aに防草部材50を取り付け、防草部材50の大きさを適宜調整した後に、防草部材50付きパネル1aを傾斜地G1に配置したり、支持構造体20に取り付けたり、パネル1a,1a同士を連結させたりすることができる。この形態は、パネル1aへの防草部材50の取り付け作業が行い易い。また、この形態は、パネル1aに対して防草が望まれる面積に必要な防草部材50の大きさを傾斜地G1の地勢に合わせて調整するにあたり、現地で、防草部材50におけるパネル1aからの突出長さなどを調整し易く、適切な大きさの防草部材50を配置できる。
なお、この例に示す設置構造1Bでは、支持構造体20を直接支持体(ここでは木材21及び埋設固定部材211)のみとし、間接支持体を備えていない。そのため、支持体準備工程では支持構造体の支持部(ここでは木材21)を埋設固定部材211によって傾斜地G1に固定し、支持工程では、パネル群10のうち、傾斜の最上位置に配置されるパネル1aを支持部(木材21)に取付部材41によって連結すればよい。間接支持体となる上述の自然材が適切な位置に無い場合や、別途、支柱を設け難い場合などは、一つのパネル群10に備えるパネル数を比較的少なくすることで、木材21、又は上述の自然材などの直接支持体だけであっても十分に支持可能である。勿論、実施形態1と同様に少なくとも一つの間接支持体を備えることができる。
[効果]
防草部材50を備えることで、設置構造1Bの構築以降、雑草などの生成、成長を防止でき、生い茂った雑草などによるパネル1aへの受光妨害を防止できる。上述のように除草工程を行った場合には、整備工程で草刈りが不要である上に、設置構造1Bの構築以降、雑草などが生えることが実質的に無い。
[実施形態3]
図3を参照して、実施形態3の太陽光発電パネルの設置構造1C〜1E及び設置方法を説明する。これら設置構造1C〜1Eは、支持構造体20にネット25を備える点が上述の実施形態1の設置構造1A及び設置方法と異なる。詳しくは、設置構造1Cは、支持構造体20の支持部をネット25とする。設置構造1Dは、支持構造体20の支持部をネット25及び自然材(ここでは岩石22)とする。設置構造1Eは、支持構造体20として直接支持体及び間接支持体を備えて、直接支持体の支持部をネット25及び木材21とし、間接支持体を自然材(ここでは岩石22、立木23)とする。以下、この相違点及びその効果を中心に説明し、その他の構成及び効果は実施形態1と重複するため説明を省略する。
[太陽光発電パネルの設置構造]
・ネット
ネット25は、太陽光発電パネル1を配置する領域に応じた大きさ、形状であり、傾斜地G1に打ち込まれた杭やペグなどの埋設固定部材251によって傾斜地G1に固定されている。この例では、傾斜地G1にある岩石22や切株sなどの自然材にも、ワイヤやチェーンなどの係止部材252によって、ネット25を間接的に傾斜地G1に固定している。こうすることで、ネット25は傾斜地G1により強固に固定される。
設置構造1Cは、複数(図3では2枚)の太陽光発電パネル1aが縦連結部材31によって縦並びに連結された縦パネル群10Aにおいて、最上位置に配置されたパネル1aがワイヤやチェーン、フックなどの取付部材41によってネット25に固定されている。この設置構造1Cは、図3に示すように、一つのパネル群10に備えるパネル数が比較的少なく、ネット25であっても十分に支持可能である。
設置構造1Dは、複数(図3では2枚以上)のパネル1が縦連結部材31によって縦並びに連結された縦パネル群10Aにおいて、最上位置に配置された太陽光発電パネル1bがワイヤやチェーンなどの取付部材41によってネット25に固定されると共に、別の取付部材41によって岩石22にも取り付けられて支持されている。この設置構造1Dは、図3に示すように、大きなパネル1bを含む場合やパネル数が多い場合であっても、パネル群10を十分に支持できる。この例では、ネット25がこの岩石22にも固定されているため、パネル群10をより強固に支持できる。
設置構造1Eは、複数(図3では6枚以上)のパネル1aが縦連結部材31によって縦並びに連結された縦パネル群10Aにおいて、最上位置に配置されたパネル1aがワイヤやチェーンなどの取付部材41によってネット25に固定されると共に、埋設固定部材211によって傾斜地G1に固定された木材21にも別の取付部材41によって取り付けられて支持されている。かつ、このネット25は、木材21に固定されている上に、木材21は、傾斜地G1にある自然材(岩石22、立木23)によって支持されている。即ち、設置構造1Eは、ネット25(直接支持体)、木材21(直接支持体)、自然材(間接支持体)という三つの支持構造体20によって縦パネル群10Aを支持する。このような設置構造1Eは、より大きなパネルを含む場合やパネル数がより多い場合であっても、パネル群10を十分に支持できる。この例では、木材21にネット25の一部を巻回した後、その上にチェーンやワイヤなどを巻回することで、ネット25は木材21に強固に固定されている。
その他、図3において右から2番目に示す縦パネル群10Aは、一部のパネル1がワイヤなどの係止部材325によってネット25に固定された例を示す。この縦パネル群10Aは、図3に示すように5枚のパネル1aを備えており、5枚のうち上から2枚のパネル1はネット25に固定されておらず木材21に支持され、上から3枚目〜5枚目までの合計3枚のパネル1が係止部材325によってネット25に固定されている。この縦パネル群10Aに横並びする他のパネル群10においても、ネット25の上に配置されたパネル1を係止部材325によってネット25に適宜固定すると、ワイヤなどの縦連結部材31に加えて、ネット25自体をパネル群10におけるパネル1,1同士の連結部材として機能させられて、パネル1,1同士を強固に連結できる。又は、ワイヤなどの縦連結部材31を省略して、ネット25自体を縦連結部材としてもよい。ネット25はその全体に亘って、パネル1を取り付け可能であるため、パネル1のランダムな配置及び支持を容易に行える。
[太陽光発電パネルの設置方法]
上述の設置構造1C〜1Eは、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本として、支持構造体にネット25を含む設置方法を利用して容易に構築できる。設置構造1C〜1Eで利用する資材や部材の固定状態などは既に説明したため、以下、具体的な設置方法のみを説明する。
上述の設置構造1Cの構築には、例えば、以下の設置方法が利用できる。この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が山林であり、前記支持体準備工程では、ネットを用意し、埋設固定部材を前記傾斜地に打ち込むことで前記ネットを前記埋設固定部材によって前記傾斜地に固定すること、前記配置工程では、前記傾斜地に固定された前記ネットの上に前記太陽光発電パネルを配置すること、前記支持工程では、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを前記ネットに取り付けること、が挙げられる。更に、この設置方法は、前記連結工程では、前記太陽光発電パネルを前記ネットに取り付けることで、前記ネットによって連結された縦パネル群を形成すること、ができる。その他、この設置方法は、前記縦パネル群に備える各太陽光発電パネルをそれぞれ係止部材(図3では符号325)によって前記ネットに取り付けるネット固定工程、などを備えることができる。
上述の設置構造1Dの構築には、例えば、以下の設置方法が利用できる。この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が山林であり、前記支持体準備工程では、ネットを用意し、埋設固定部材を前記傾斜地に打ち込むことで前記ネットを前記埋設固定部材によって前記傾斜地に固定すること、前記配置工程では、前記傾斜地に固定された前記ネットの上に前記太陽光発電パネルを配置すること、前記支持工程では、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを前記ネットに取り付けると共に、前記傾斜地に生えた立木、前記傾斜地に根を張った切株、前記傾斜地に一部が埋まり、他部が露出した岩石から選択される少なくとも一つの自然材に、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを更に取り付けて支持すること、が挙げられる。更に、この設置方法は、前記連結工程では、前記太陽光発電パネルを前記ネットに取り付けることで、前記ネットによって連結された縦パネル群を形成すること、ができる。その他、この設置方法は、前記自然材(図3では、岩石22、切株s)に係止部材(図3では符号252)によって前記ネットを固定するネット支持工程や上述のネット固定工程、などを備えることができる。
上述の設置構造1Eの構築には、例えば、以下の設置方法が利用できる。この設置方法は、端的に言うと、実施形態1で説明した設置方法にネット25を加えた方法である。具体的には、この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が山林であり、前記支持体準備工程では、ネットを用意し、埋設固定部材を前記傾斜地に打ち込むことで前記ネットを前記埋設固定部材によって前記傾斜地に固定すると共に、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を用意し、別の埋設固定部材を前記傾斜地に打ち込むことで前記木材をこの埋設固定部材によって前記傾斜地に固定すること、前記配置工程では、前記傾斜地に固定された前記ネットの上に前記太陽光発電パネルを配置すること、前記支持工程では、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを前記ネット及び前記木材の双方に取り付けると共に、前記傾斜地に生えた立木、前記傾斜地に根を張った切株、前記傾斜地に一部が埋まり、他部が露出した岩石から選択される少なくとも一つの自然材に、前記木材を更に取り付けて支持すること、が挙げられる。更に、この設置方法は、前記連結工程では、前記太陽光発電パネルを前記ネットに取り付けることで、前記ネットによって連結された縦パネル群を形成すること、ができる。その他、この設置方法も、上述のネット支持工程やネット固定工程、などを備えることができる。
その他、上述の三つの設置方法も、前記山林における前記太陽光発電パネルを配置する予定領域を整備する整備工程や上述の除草工程を備えることが好ましい。
[効果]
傾斜地G1に直接固定したネット25にパネル1を取り付けることで、風などによりパネル1が移動して配置位置がずれることを効果的に抑制できる。そのため、パネル1がネット25上にランダムに配置された状態を維持し易い。また、ネット25は、可撓性を有することから、地勢に応じてうねらせた状態に配置できる。例えば、傾斜地G1の任意の位置に岩石22や切株sなどがあっても、図3に示すようにこれらを覆うようにネット25を配置できる。更に、複数のネット片をワイヤやロープなどによって連結して一体化し、大面積のネット25とすることや、傾斜地G1への配置前だけでなく配置後においても、適宜切断して任意の形状及び大きさのネット25にすることが容易である。更には、ネット25は、搬送時などでは折り畳むことで小さくできる。このようにネット25は、その大きさや形状の調整などを容易に行えて利用し易い。
その他、ネット25は、作業者の落下防止用の安全器などの取り付けなどにも利用できる。ここで、山林などの傾斜地G1では、急峻であったり、滑り易い岩盤などであったりして、パネル1の配置作業などを行う場合に作業者が滑る恐れがある。そこで、フックを備える安全帯やスパイクなどの突起を有する作業靴(突起が着脱自在な構成でもよい)などの安全器を用いて、上記フックをネット25に掛止したり、上記突起をネット25に食い込ませたりすると、作業に不慣れな地域住人であっても、安全かつ容易に太陽光発電パネルの設置構造1C〜1Eを構築できる。上記安全帯と上記作業靴とを併用すると、より安全性を高められる。また、例えば、ネット25の所定の位置にパネル1を配置するためにパネル1を引き上げるための吊り下げロープなどの固定金具をネット25に取り付けることもできる。このように支持構造体20にネット25を含む場合には、構築途中にもネット25を利用することで、傾斜地G1にパネル1を直接配置する場合に比較して、安全性及び容易性を高められると期待される。従って、作業に不慣れな地域住人といった任意の作業者であっても、安全かつ容易に太陽光発電パネルの設置構造1C〜1Eを構築できる。
[実施形態4]
図4を参照して、実施形態4の太陽光発電パネルの設置構造を説明する。上述の実施形態1〜3の太陽光発電パネルの設置構造1A〜1Eは、傾斜地G1を山林とし、山林における一定の領域をパネルの設置領域とした形態を説明した。このように山林を利用する場合には、上述のように岩石22や立木23、切株24といった自然材、現地調達した伐採材などを支持構造体20に利用することに加えて、図4に示すようにパネル群10を配置する発電ゾーン100と、太陽光発電パネル1を配置せず、立木wが十分に残る樹木ゾーン200とを傾斜地G1の上下方向に交互に備える形態とすることが好ましい。つまり、山林の山頂から裾野に亘って(縦方向の上側から下側に亘って)その全体に対して開拓(上述の整備工程で述べた整備と同様、又は伐採がより多い)を行うのではなく、複数の帯状領域に開拓することが好ましい。伐採した樹木(例えば、雑木広葉樹など)は、上述のように支持構造体の支持部(木材21)などに利用できる。伐採後の切株24は残しておき、上述のように支持構造体20に用いたり、切株24,sの根を土砂崩れなどの自然災害の防止に用いたりできる。傾斜地G1における裾野近くは、居住区に利用されることが多いため、樹木ゾーン200を設けると、上記自然災害を防止し易く好ましい。
発電ゾーン100に設ける縦パネル群10Aなどは、パネル1の数が多いことなどによって長くなり過ぎると重量が大きくなり、一つの支持構造体20では、十分な支持が行えない恐れがある。従って、一つの縦パネル群10Aなどはパネル数を調整して適宜な長さとし、複数の縦パネル群10Aなどを縦方向に並べて設けるとよい。この場合、上下の縦パネル群の間に下方の縦パネル群を支持する木材21などの支持構造体20(支持部)が存在する。この下方の支持構造体20に上方の縦パネル群10Aなどを更に連結させてもよい。こうすることで、各縦パネル群10Aなどをより強固に保持できる。
[実施形態5]
図5を参照して、実施形態5の太陽光発電パネルの設置構造1F及び設置方法を説明する。この設置構造1Fは、棚田といった傾斜地G2に、その傾斜に沿って配置された複数の太陽光発電パネル1と、パネル1,1同士を連結する連結部材30と、連結部材30で連結されたパネル群10を支持する支持構造体20とを備える。パネル群10は、傾斜地G2の傾斜の上下方向(縦方向、図5(B)では左上から右下に向かう方向)に並べられたパネル1,1同士が縦連結部材31によって連結された縦パネル群10Fを備える。縦パネル群10Fにおける縦方向の最上位置に配置されるパネル1が支持構造体20に取り付けられる。
棚田は、表面が実質的に水平である複数の田面G20と、田面G20、G20間に介在する傾斜面である法面G21と、田面G20における法面G21との境界に設けられる畔G25とを備える。設置構造1Fは、図5に示すように畔G25に埋設固定部材211によって固定された木材21を縦パネル群10Fの支持構造体20(支持部)としている点を特徴の一つとする。また、設置構造1Fは、図5に示すように階段状に続く田面G20と法面G21とにパネル1が配置されて、縦パネル群10Fが階段状に形成されている点を特徴の一つとする。
以下、設置構造1Fの概要については上述したため省略し、詳細な構成などを中心に説明する。また、実施形態1と重複する点も説明を省略する。
[太陽光発電パネルの設置構造]
・パネル群
図5に示す縦パネル群10Fは、複数のパネル1,…を備え、各パネル1がそれぞれ田面G20又は法面G21に配置され、パネル1,1間がワイヤなどの縦連結部材31によって連結されている。田面G20に配置されたパネル1は、その表面が田面G20と同様に実質的に水平に配置される。法面G21に配置されたパネル1は、その表面が法面G21の傾斜に沿って配置され、田面G20に対して特定の傾斜角度を有する。縦パネル群10Fに備える田面G20に配置されたパネル1と、このパネル1に続いて法面G21に配置されたパネル1とは、畔G25を跨ぐために比較的長めに調整された縦連結部材31によって連結される。即ち、縦パネル群10Fでは、畔G25を挟むパネル1,1間に配置される縦連結部材31の長さが他の箇所よりも概ね長い。
田面G20の大きさ及び法面G21の大きさによって、田面G20又は法面G21に配置されるパネル1の大きさやパネル数を選択するとよい。実施形態5の設置構造1Fも、実施形態1と同様に、パネル1の大きさが不均一であったり(図5(A)の左側の縦パネル群10Fではパネル1aのみ、右側の縦パネル群10Fではパネル1aと、大きなパネル1bとを含む)、パネル1,1間の間隔が異なる部分(特に、畔G25を跨ぐ部分)を含んだり、パネル1の配置角度が不均一であったり、一つの縦パネル群10Fに含まれるパネル数が異なっていたりする。田面G20の大きさ及び法面G21の大きさによっては、縦パネル群10Fは、田面G20や法面G21にパネル1が配置されていない部分を含み得る。つまり、田面G20又は法面G21にワイヤなどの縦連結部材31のみが配置される場合がある。
・支持構造体
設置構造1Fは、実施形態1と同様に、支持部と埋設部とが独立した支持構造体を備える。倒木や伐採材、間伐材、これらの丸太といった木材21を支持部とし、この木材21がU字状の部材などの埋設固定部材211によって畔G25に固定されている。埋設固定部材211は、棚田(傾斜地G2)の畔G25に打ち込まれて埋め込まれた部分(図5(B)に示す点線部分を参照)を有する。縦パネル群10Fに備えるパネル1のうち、最上位置に配置されるパネル1がワイヤやチェーンなどの取付部材41によってこの木材21に取り付けられる。代表的には、木材21が固定された畔G25に続く法面G21に配置されるパネル1が、木材21に取り付けられる。木材21における畔G25に固定されている以外の点は、実施形態1と同様にできる。
・その他の部材
上述のように各パネル1は、複数点支持、好ましくは四点支持とする。また、各パネル1の四隅などを田面G20や法面G21に直接固定するストッパー材70(図5では図示せず)などを設けたり、縦パネル群10Fにおける最下位置に配置されるパネル1をストッパー材70によって傾斜地G2に固定したりしてもよい。最下位置のパネル1が田面G20に配置される場合には、パネル1が実質的に滑落しないため、ストッパー材70を省略してもよい。その他、この例でも木材21は横連結部材としても機能するが、縦パネル群10Fのパネル1,1同士をワイヤやチェーンなどの横連結部材37で別途連結してもよい。
・防草部材
各パネル1には、上述の実施形態2で説明した防草部材を備えると、雑草などによるパネル1への遮光妨害を防止できて好ましい。
[太陽光発電パネルの設置方法]
このような設置構造1Fは、例えば、以下の設置方法を利用して、容易に構築できる。設置構造1Fで利用する資材や部材の固定状態などは既に説明したため、以下、具体的な設置方法のみを説明する。
この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が棚田であり、前記支持体準備工程では、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を用意し、埋設固定部材を前記棚田の畔に打ち込むことで前記木材を前記埋設固定部材によって前記畔に固定すること、前記配置工程では、前記棚田の田面及び法面にそれぞれ前記太陽光発電パネルを配置すること、前記支持工程では、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを前記木材に取り付けること、前記連結工程では、前記棚田の田面に配置された前記太陽光発電パネルと前記棚田の法面に配置された前記太陽光発電パネルとを連結して階段状に前記縦パネル群を形成すること、が挙げられる。
上記の設置方法も、前記棚田における前記太陽光発電パネルを配置する予定領域を整備する整備工程や上述の除草工程を備えることが好ましい。棚田では、実施形態1で説明した山林のように岩石や立木、切株などが通常存在しないため、上記整備工程では、草刈りや小石の除去程度で十分である。棚田は、通常、日当たりが良いところに設けられることから、上記除草工程を設けたり、上述の防草部材を取り付けたりするなどして、防草対策を行うことが好ましい。
[効果]
実施形態5の太陽光発電パネルの設置構造1F及び設置方法は、棚田といった傾斜地G2を利用することで、実質的に整地が不要であり、草刈り程度の非常に軽微な整備でよい点、パネル1の設置現場(棚田周辺の山林など)での調達が容易な資材(雑木広葉樹といった伐採材、その丸太などの木材21)を活用している点から、設置現場の地域住人であっても容易に構築可能、実施可能である。
(変形例5−1)
実施形態5では、パネル1を田面G20及び法面G21に直接配置する形態を説明した。法面G21が急峻な場合などでは、法面G21にパネル1を直接配置すると、受光最適角度から大きく外れることがある。そこで、パネル1の角度θ(パネル1の表面と田面G20とがつくる角度)が所望の値となるように、図6(A)に示すように、法面G21に立て掛けるようにパネル1を傾斜させて配置することができる。即ち、上述(1)太陽光発電パネルの設置構造の一例として、前記傾斜地は、棚田であり、前記支持構造体の支持部は、前記棚田の畔のうち、上方に位置する畔に固定されており、前記縦パネル群のうち、少なくとも一つの太陽光発電パネルは、前記棚田の田面に対して所定の角度に傾けて配置された形態が挙げられる。この設置構造は、受光最適角度(例えば、日本国では30°程度)を有する又は受光最適角度に近いパネル1を含むパネル群10を備えることによって、発電量の増大を期待できる。
傾けられたパネル1は、図6(A)に示すように取付部材41又は縦連結部材31を介して、畔G25に固定された木材21に支持される。加えて、傾けられたパネル1は、その上端縁が法面G21に支持され、下端縁が田面G20に支持される。更に、田面G20に配置された別のパネル1を傾けられたパネル1の下端縁に近接配置させた場合には、この別のパネル1を滑り防止のストッパー材として機能させることもできる。その他、傾けられたパネル1の四隅などを田面G20や法面G21に直接固定するワイヤやチェーンなどのストッパー材(図6では図示せず)を設けることもできる。このようにして、縦パネル群10Fに含まれる傾けられたパネル1は、所定の角度θを安定して維持できる。
更に、図6(B)に示すように、パネル1を所定の角度θに支持するための角度調整部材270を備える形態とすることができる。この形態の縦パネル群10Fは、取付部材41又は縦連結部材31を介して、畔G25に固定された木材21に支持されることに加えて、田面G20に配置された角度調整部材270によって、傾けられたパネル1をより安定して支持できて、角度θを維持し易い。
角度調整部材270には、支持構造体20を構成する木材21と同様に、倒木や伐採材、間伐材、これらの丸太といった木材を好適に利用できる。上述のようにこの木材は、現地調達や交換などが容易であるからである。角度調整部材270は、例えば、畔G25の長手方向に沿って配置されてパネル1を直接支持する直接支持木275と、田面G20に打ち込まれて直接支持木275を支持する支柱木276とを備えたり、田面G20に畔G25の長手方向に沿って配置される直接支持木275のみとしたりすることができる。支柱木276の一端部は、田面G20に十分に深く埋め込み、田面G20から突出する支柱木276の他端部(端面)に直接支持木275を載置する。直接支持木275と支柱木276とは、後述する実施形態6の中木265と支柱木266との固定と同様に、ワイヤやチェーンなどを用いて連結したり、接触面を平坦にする加工やほぞ溝などの加工を施したりして崩れ難くすることが好ましい。畔G25の長手方向に沿って複数の直接支持木275,…を配置する場合も、上述のように連結などして木材群とすることが好ましい。直接支持木275(木材群)に対する支柱木276の本数は適宜選択できる。支柱木276が多いほど、直接支持木275の支持強度を高められて、パネル1を十分に支持できる。
例えば、図6(B)に示すように、縦連結部材31で連結された複数のパネル1,…(縦パネル群10Fの一部)をまとめて所定の角度θに配置する場合、支柱木276の高さ(田面G20からの突出高さ)を調整したり、直接支持木275と支柱木276との組物を複数用いる場合には組物の間の間隔を調整したり、上記組物と直接支持木275とを組み合わせて用いたり、直接支持木275のみとしたり、直接支持木275の大きさ(直径)を変更したりすることで、複数のパネル1,…を安定して支持できる。例えば、上方に位置するパネル1に対しては、支柱木276の高さを高くし、下方に位置するパネル1に対しては、直接支持木275のみを配置するとよい。
変形例5−1の設置構造は、例えば、以下の設置方法を利用して、容易に構築できる。この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が棚田であり、前記支持体準備工程では、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を用意し、埋設固定部材を前記棚田の畔に打ち込むことで前記木材を前記埋設固定部材によって前記畔に固定すること、前記配置工程では、少なくとも一つの太陽光発電パネルを前記棚田の田面に対して所定の角度を有するように傾けて配置すること、前記支持工程では、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを前記木材に取り付けること、が挙げられる。この設置方法も、前記棚田における前記太陽光発電パネルを配置する予定領域を整備する整備工程や上述の除草工程を備えることが好ましい。更に、角度調整部材270を備える設置構造を構築する場合には、前記配置工程では、少なくとも一つの太陽光発電パネルを前記棚田の田面に対して所定の角度を有するように角度調整部材に支持させて傾けて配置すること、前記角度調整部材は倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を含むこと、が挙げられる。
[実施形態6]
図7を参照して、実施形態6の太陽光発電パネルの設置構造1G及び設置方法を説明する。この設置構造1Gは、上述の実施形態5と同様に棚田といった傾斜地G2を利用しているが、田面G20及び法面G21に太陽光発電パネル1が直接配置されておらず、枠部26にパネル1が固定されて、パネル群10Gが形成されている点が異なる。枠部26は、上方の畔G25と下方の畔G25とのそれぞれに沿って固定された横木260,260と、上下の畔G25,G25間を渡るように配置された縦木261,261とを備える。即ち、実施形態5の設置構造1Fは、代表的には棚田の田面G20及び法面G21の地表面に沿ってパネル1が配置されているのに対し、実施形態6の設置構造1Gは、代表的には縦木261によって結ばれた畔G25,G25間の傾斜に沿ってパネル1が配置されている。以下、この相違点を中心に説明し、実施形態5と重複する点は説明を省略する。
[太陽光発電パネルの設置構造]
・枠部
まず、枠部26を説明する。枠部26は、倒木や伐採材、間伐材、これらの丸太といった木材21が矩形枠状に組まれたものである。一つの枠部26には、少なくとも4本の木材21が用いられ、2本が横木260,260、2本が縦木261,261である。枠部26の一辺となる横木260は、その長手方向が畔G25の長手方向に沿って配置され、他辺となる縦木261が、畔G25,G25間を渡るように配置されて、上方の畔G25に固定された一方の横木260と、下方の畔G25に固定された他方の横木260とに組み付けられている。横木260と縦木261との組み付け・固定、後述する中木265と支柱木266との組み付け・固定には、ワイヤ、チェーン、紐などの長尺体、釘、ねじなどが利用できる。また、横木260及び縦木261の少なくとも一方に、他方を嵌め込むほぞ溝210を設けて、組み付けた横木260と縦木261とが一様な面を形成できるようにすると、平板状のパネル1を横木260及び縦木261の双方に安定して取り付けられる。ここでは、太めの木材21を横木260に用いて、横木260にほぞ溝210を設けている。縦木261は、横木260よりも細めの木材21を用いており、ほぞ溝210に嵌め込んだとき、ほぞ溝210からの突出部分が実質的に無いようにしている。
図7に示すように1本の横木260に、傾斜の上方から渡される縦木261の下方端と、下方に渡される縦木261の上方端とを組み付けることで、枠部26を傾斜の上方から下方に向かって連続的に設けることができる。但し、上方の枠部26に対して、下方の枠部26は、図7に示すように木材の太さ分だけ畔G25の長手方向にずれて(図7では右方向にずれて)設けられる。
更に、この例では、下方の枠部26は、横木260と平行に中木265を備える。ここで、畔G25,G25間が広い場合などでは、縦木261だけは枠部26の強度が不十分になる恐れがある。このような畔G25,G25間の傾斜方向に長い枠部26とする場合、図7に示すように、畔G25,G25間に渡される縦木261において、その長手方向の中央部分間を渡すように中木265を横木260に平行に設けることで、枠部26の強度(特に縦方向の強度)を高めて、パネル1を安定して支持できる枠部26とすることができる。中木265は、上述のワイヤなどやほぞ溝などを利用して縦木261に組み付け・固定してもよいが、この例では、更に、田面G20に一部が埋設された支柱木266によって支持される形態としている。この例では、適宜な間隔をあけて複数の支柱木266を田面G20に打ち込んで、支柱木266の一端部を田面G20に十分に深く埋め込んでおり、田面G20から突出する支柱木266の他端部(端面)に中木265が載置される。こうすることで、中木265の横方向の強度を高められ、ひいては枠部26の強度を高められる。このように枠部26が大型の場合でも、中木265、更には支柱木266を利用して、容易に補強できる。中木265及び支柱木266には、上述の丸太などの木材が好適に利用できる。
なお、図7では、上下の畔G25,G25間に渡る縦木261を1本としているが、畔G25,G25間に大きさによっては複数本とするとよい。この場合、縦木261,261同士の連結箇所には、上述の中木265を横木代わりに設けることが好ましい。
・支持構造体
そして、上述の枠部26の横木260が、実施形態5の木材21と同様に埋設固定部材211によって畔G25に固定されて、支持構造体として機能する。
・パネル群
図7に示すパネル群10Gは、複数のパネル1(ここではパネル1a)を備え、各パネル1はそれぞれ枠部26に配置され、かつ縦木261にワイヤやチェーンなどの枠固定材46によって固定される。従って、各パネル1は、縦木261を介して縦方向に連結されており、縦木261及び枠固定材46が縦連結部材として機能する。また、パネル1のうち、最上位置に配置されるパネル1が畔G25に固定された横木260(木材21)にワイヤやチェーンなどの取付部材41によって取り付けられる。
上述のように各パネル1は、複数点支持、特に四点支持が好ましいことから、パネル1のうち、枠部26に固定されない台座の隅は、図7に示すようにワイヤなどの縦連結部材31で連結したり、更にはワイヤなどの横連結部材37で連結したりすることが好ましい。その他、縦木261への固定に加えて、縦並びされたパネル1,1同士をワイヤなどの縦連結部材31で連結してもよい。中木265を有する場合には、パネル1を枠固定材46によって中木265にも固定してもよい。
パネル群10Gは、縦木261を介して縦方向に連結される縦パネル群を含む。また、横木260を介して横方向(畔G25の長手方向)に連結される横パネル群をも含む。パネル群10Gは、枠部26を用いるため、上述のように畔G25の長手方向に若干ずれが生じるものの、各パネル1が比較的整列配置される。枠部26の大きさに応じてパネル1の大きさやパネル数を適宜変更することで、図5に示すような不揃いな配置状態とすることもできる。
[太陽光発電パネルの設置方法]
このような設置構造1Gは、例えば、以下の設置方法を利用して、容易に構築できる。設置構造1Gで利用する資材や部材の固定状態などは既に説明したため、以下、具体的な設置方法のみを説明する。
この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が棚田であり、前記支持体準備工程では、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を縦木及び横木として枠状に組み、埋設固定部材を前記棚田の畔に打ち込むことで前記横木を前記埋設固定部材によって前記畔に固定すること、前記配置工程では、前記縦木及び前記横木によって枠状に組まれた枠部に前記太陽光発電パネルを配置すること、前記支持工程では、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを前記横木に取り付けること、前記連結工程では、前記枠部に配置された前記太陽光発電パネルを前記縦木に取り付けて前記縦パネル群を形成すること、が挙げられる。
上記の設置方法も、実施形態5と同様に、前記棚田における前記太陽光発電パネルを配置する予定領域を整備する整備工程を備えることが好ましい。但し、設置構造1Gでは、枠部26によって、棚田の地表面からある程度高い位置にパネル1が配置されるため、除草工程や防草部材を省略してもよい。
枠部26の組み付け・固定については、(G1)予め矩形状に組みつけた枠部26を作製して、畔G25に横木260を固定する方法、(G2)まず、横木260を畔G21に固定した後、これら横木260,260間を渡すように縦木261を配置して横木260と縦木261とを組み付ける方法、のいずれも利用できる。
この設置方法では、枠部26の上にパネル1を配置するごとに取付部材41、枠固定材46などで横木260や縦木261にパネル1を取り付けていくことが好ましい。こうすることで、パネル1が枠部26上を滑落することを防止できる。
中木265を備える枠部26を構築する場合には、(G10)予め枠部26に中木265も組み付けた中木付き枠部を作製して、畔G25に横木260を固定する方法、(G20)まず、横木260を畔G21に固定すると共に、支柱木266を田面G20に固定して支柱木266で中木265を支持した後、上方の横木260から中木265を経て下方の横木260までの間を渡すように縦木261を配置して組み付ける方法、のいずれも利用できる。
上述の整備や除草・防草に関する点、枠部の組み付け・固定に関する点、パネルの取り付けに関する点、中木・支柱木に関する点は、後述する変形例6−1についても同様である。
[効果]
実施形態6の太陽光発電パネルの設置構造1G及び設置方法は、実施形態5と同様に、棚田といった傾斜地G2を利用することで、パネルの設置現場の地域住人であっても容易に構築可能、実施可能である。特に、枠部26を利用することで、田面G20や法面G21が小さく、パネル1を直接配置することが難しい場合でも、棚田を有効活用できる。
(変形例6−1)
実施形態6では、枠部26が畔G25,G25間の傾斜に沿って配置され、パネル1がこの枠部26に固定された形態を説明した。畔G25,G25間の傾斜が急峻な場合などでは、枠部26に固定されたパネル1の配置角度が受光最適角度から大きく外れることがある。そこで、パネル1の角度θ(パネル1の表面と田面G20とがつくる角度)が所望の値となるように、実施形態6の設置構造1Gに加えて、枠部26を所定の角度に支持する角度調整部材(図示せず)を備える形態とすることができる。即ち、上述(1)太陽光発電パネルの設置構造の一例として、前記傾斜地は、棚田であり、前記縦パネル群を構成する各太陽光発電パネルは、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材によって枠状に組まれた枠部に固定されており、前記支持構造体の支持部は、前記棚田の上方の畔と下方の畔とにそれぞれ固定された前記枠部の横木と、前記枠部の横木を支持して前記枠部を所定の角度に支持する角度調整部材とを含み、前記縦連結部材は、前記上方の畔に固定された一方の横木と前記下方の畔に固定された他方の横木を渡るように配置された縦木を含み、前記枠部に固定された前記太陽光発電パネルが前記所定の角度に支持される形態が挙げられる。
上記角度調整部材は、横木260と同様に、倒木や伐採材、間伐材、これらの丸太といった木材を好適に利用できる。上述のようにこの木材は、現地調達や交換などが容易である上に、横木260及び縦木261と共に用意できるからである。角度調整部材は、例えば、埋設固定部材211と同様な部材などを畔G25に打ち込むことで畔G25に固定し、この上に横木260を配置して、横木260を支持する。即ち、木材を畔G25の長手方向に沿って多段に縦積みし、下段の木材(複数でもよい)を角度調整に用い、上段の木材を横木260とする。横木260と共通の埋設固定部材211によって、角度調整部材を畔G25に固定してもよい。角度調整部材の大きさ(直径)、本数、配置位置などを調整することで、パネル1(枠部26)の角度θを容易に調整できる。例えば、枠部26を構成する最上位置の横木260の下に角度調整部材(木材)を配置すれば、角度θを大きくできる。例えば、枠部26を構成する最上位置の横木260はそのままとし、最上位置以外の横木260の下に角度調整部材(木材)を配置すれば、角度θを小さくできる。又は、角度調整部材は、例えば、複数の木材を畔G25の長手方向に間隔をあけて打ち込むことで畔G25に固定した支柱木(杭)とすることができる。これらの支柱木上に横木260を配置して、横木260を支持する。この場合、支柱木の高さ(田面G20からの突出高さ)を調整することで、角度θを容易に調整できる。角度調整部材を上述の支柱木とする場合には、支柱木が埋設固定部材を兼ねる。
複数の角度調整部材(木材)を縦積みする場合や角度調整部材を上述の支柱木とする場合には、上述のようにワイヤやチェーンなどを用いて木材同士を連結したり、接触面を平坦にする加工やほぞ溝などの加工を施したりすると、崩れ難く、強固に一体化できて好ましい。
変形例6−1の設置構造は、例えば、以下の設置方法を利用して、容易に構築できる。この設置方法は、上述の(10)太陽光発電パネルの設置方法を基本とし、前記傾斜地が棚田であり、前記支持体準備工程では、倒木、伐採材、間伐材、及びこれらの丸太の少なくとも一つの木材を縦木、横木、及び前記太陽光発電パネルの角度調整部材とし、前記棚田の畔に前記角度調整部材を固定すること、前記縦木及び前記横木を枠状に組み、埋設固定部材を前記棚田の畔に打ち込むことで前記角度調整部材の上に配置された前記横木を前記埋設固定部材によって前記畔に固定すること、前記配置工程では、前記縦木及び前記横木によって枠状に組まれた枠部に前記太陽光発電パネルを配置すること、前記支持工程では、前記最上位置に配置される太陽光発電パネルを前記横木に取り付けること、前記連結工程では、前記枠部に配置された前記太陽光発電パネルを前記縦木に取り付けて前記縦パネル群を形成すること、これらの工程を経て、前記枠部に固定された前記太陽光発電パネルが前記所定の角度に支持された太陽光発電パネルの設置構造を得ること、が挙げられる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。