JP5766955B2 - 燻蒸用フィルム、燻蒸袋、及び燻蒸方法 - Google Patents
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すなわち、本発明によれば、式−(O・CH 2 ・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を、全モノマー単位を100モル%とした場合に、70モル%以上有するポリグリコール酸を50質量%以上含有する層を少なくとも1層備えることを特徴とする燻蒸用フィルムであって、セルロース成分からなる基紙の少なくとも片面に生分解性熱可塑性樹脂層が積層されてなるものを除く燻蒸用フィルムが提供される。
本発明において、燻蒸用フィルム等の主成分であるPGAは、式−(O・CH2・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を、全モノマー単位を100モル%とした場合に、70モル%以上有し、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上、最も好ましくは99モル%以上有するものであり、その上限は、100モル%である。したがって、PGAは、式−(O・CH2・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸のホモポリマー(グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合物を含む)に加えて、上記グリコール酸繰り返し単位を70モル%以上含むPGA共重合体を含むものである。式−(O・CH2・CO)−で表わされる繰り返し単位の含有割合が70モル%よりも少ないと、ガスバリア性、機械的特性、分解性、耐熱性が低下する。
本発明で使用するPGAは、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定におけるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、通常30,000〜800,000の範囲内であり、好ましくは50,000〜700,000、より好ましくは80,000〜600,000、さらに好ましくは100,000〜500,000、特に好ましくは120,000〜400,000の範囲内にあるものを選択する。重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、燻蒸用フィルムの機械的強度が不十分であったり、成形加工を行う場合の温度管理が難しくなったりする。重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、成形温度や加工温度が高くなるため、PGAやその他の添加成分の熱分解や酸化が生じることがある。
本発明で使用するPGAの融点(Tm)は、197〜245℃であり、共重合成分の種類及び含有割合によって調整することができる。好ましくは200〜243℃、より好ましくは、205〜238℃、特に好ましくは210〜235℃である。PGAの単独重合体の融点は、通常220℃程度である。融点が低すぎると、燻蒸用フィルムの機械的強度が不十分であったり、成形加工を行う場合の温度管理が難しくなったりする。融点が高すぎると、加工性が不足したり、燻蒸用フィルムの柔軟性が不足したりすることがある。融点が高すぎると、成形温度や加工温度が高くなるため、PGAやその他の添加成分の熱分解や酸化が生じることがある。
本発明で使用するPGAは、温度270℃及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が、通常100〜10,000Pa・s、好ましくは200〜8,000Pa・s、より好ましくは300〜4,000Pa・sである。PGAの溶融粘度が低すぎると燻蒸用フィルムの機械的特性が低下傾向を示し、高すぎると溶融押出加工や延伸加工が困難となることがある。
本発明の燻蒸用フィルム等は、PGA層を少なくとも1層備えることを特徴とする。該PGA層は、PGAを、50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上含有するものである。PGAの含有量が少なすぎると、燻蒸用フィルムのガスバリア性や機械的特性が低下する。
本発明の燻蒸用フィルム等のPGA層においては、前記のPGAの単独重合体または共重合体を、単独で樹脂材料として使用することができるが、PGAに、他の熱可塑性樹脂をブレンドし、PGAを主成分とする樹脂組成物を樹脂材料として使用することもできる。
本発明の燻蒸用フィルム等のPGA層には、溶融安定性を高めるために、熱安定剤を添加することができる。熱安定剤としては、重金属不活性化剤、ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステル、少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの長鎖アルキルエステル基とを持つリン化合物、炭酸金属塩などが好ましい。これらの化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
PGA層には、所望により、可塑剤、無機フィラー、触媒失活剤、熱線吸収剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、カップリング剤、顔料、染料などの各種添加剤を添加することができる。これらの各種添加剤は、PGAの延伸加工性、ガスバリア性、透明性、機械的特性などを損なわない範囲内の量で添加することが好ましい。これらの各種添加剤は、それぞれの機能や用途に応じて、PGA100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下の割合で配合される。
本発明の燻蒸用フィルム等におけるPGA層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは3〜500μm、より好ましくは5〜250μm、さらに好ましくは6〜120μm、特に好ましくは8〜80μmの厚みである。PGA層の厚みが薄すぎると、所望のガスバリア性や機械的特性が得られない。PGA層の厚みが厚すぎると、重量が増加するため運搬や回収に多大の労力や期間を要するとともに、燻蒸用フィルム等の可撓性が減少するため取扱い時に折損し、燻蒸剤が漏出するおそれもある。
本発明の燻蒸フィルムは、PGA層単独でも十分なバリア性、機械的特性を備えるものであるが、PGA層及び他の熱可塑性樹脂層を備える燻蒸用フィルム等とすることもできる。PGA層及び他の熱可塑性樹脂層はそれぞれ独立に、1層または複数層であってもよい。
本発明の燻蒸用フィルム等は、特に限定されず、それ自体公知の種々の方法によって製造したフィルムを使用することができ、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形やカレンダ成形などのフィルムの製造方法を採用することができる。
[バリア性]
本発明の燻蒸用フィルム等は、PGAを主成分とする層を少なくとも1層備えるものであることにより、各種の燻蒸剤に対する高いバリア性を有する。本発明の燻蒸用フィルム等がバリア性を示す燻蒸剤は、特に限定されず、広く殺菌剤、殺虫剤として使用される燻蒸剤である、クロロピクリン(トリクロロニトロメタン)、イソチオシアン酸メチル(MITC)、メチルジチオカルバメートナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩(カーバム剤)、3,5−ジメチルテトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン(ダゾメット剤)、臭化メチル、ヨウ化メチル、D−D剤(ジクロルプロパンとジクロルプロペン混合物)、DBCP(1,2−ジブロモ−3クロロプロパン)、DCIP(ジクロロジイソプロピルエーテル)、エチレンジブロマイド、ジメチルジクロルビニルホスフェート、二硫化炭素などが挙げられる。本発明の燻蒸用フィルム等がバリア性を示す燻蒸剤は、上記に例示された燻蒸剤の2種類以上を併用したものも含む。
また、本発明の燻蒸用フィルム等は、PGAを主成分とする層を少なくとも1層備えるものであることにより、薄肉かつ軽量で機械的特性に優れているため、燻蒸処理を行う場所までの運搬に要する労力、期間、費用を低減することができ、燻蒸用フィルム等の敷設や燻蒸処理の実施中、及び燻蒸処理終了後に、燻蒸用フィルム等の破損や折損が生じるおそれがなく、燻蒸剤の漏出の懸念もない。この結果、燻蒸処理に使用する燻蒸剤の使用量を従来より少なくすることができ、経済性及び安全性に優れている。
さらに、本発明の燻蒸用フィルム等は、PGAを主成分とする層を少なくとも1層備えるものであることにより、燻蒸処理終了後には、燻蒸処理を行った場所または近傍の適切な場所に燻蒸用フィルム等を残置しておけるので、燻蒸用フィルム等の回収や燻蒸用フィルム等の廃棄処理のための運搬が不要または容易となる。特に、燻蒸用フィルム等が、PGA層と、他の熱可塑樹脂層としてポリ乳酸等の生分解性樹脂を主成分とする層とを備えるものである場合は、3か月間程度、長くても6か月間程度、燻蒸用フィルム等を残置しておけば、ほぼ完全に分解してしまうので、回収や運搬作業が不要となる。該燻蒸用フィルム等の分解速度は、PGA層と他の熱可塑性樹脂層との組成及び厚みを選択することによって調整することができる。他の熱可塑樹脂層が生分解性樹脂を主成分とする層ではない場合も、PGA層がほぼ完全に分解してしまうため、燻蒸用フィルム等の残余の部分の回収作業が容易となる。
本発明の燻蒸方法は、前記した本発明のPGA層を備える燻蒸用フィルム、または、PGA層と他の熱可塑性樹脂層を備える燻蒸用フィルム(これらの燻蒸用フィルムを総称して、「本発明の燻蒸用フィルム」ということがある。)、または本発明の燻蒸用フィルムから形成した燻蒸用袋を使用する燻蒸方法である。
燻蒸用フィルムのガスバリア性(透過度)は、JIS K7126−2に準じて測定を行った。具体的には、図1に示すガス透過度試験装置を作製し、試料フィルムについて、有機化合物の透過度の測定を行った。すなわち、所定温度に調整した恒温槽内に、内径8cmの円筒状の透過セルを略鉛直に配置し、略水平に固定した試料フィルムにより、透過度測定器内を上側のチャンバ(セル)と下側のチャンバ(セル)に区分した。試料フィルムの厚みは10μmとし、該試料フィルム下側のチャンバの高さは5cm、試料フィルム上側のチャンバの高さは5mmとした。
燻蒸用フィルムのガスバリア性(燻蒸剤の減量度)は、5cm×5cmに切り出したヒートシール層を備える多層の試料フィルムを2枚重ねて、富士インパルス株式会社製キュートシーラーV300を用いて、3辺をヒートシールし、1辺が開放された袋を作成して測定した。
重量平均分子量200,000、温度270℃及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が600Pa・sのPGAに、熱安定剤として、旭電化株式会社製アデカスタブAX−71(リン酸モノステアリル50モル%とリン酸ジステアリル50モル%との混合物)を300ppmの割合で含有させたPGAペレットを、スクリュー径35mmの単軸押出機を用いて、樹脂温度が260〜270℃となるように加熱して溶融混練した。溶融物を、目開き100μmのフィルターを通して、長さ270mmで間隙0.75mmの直線状リップを有するTダイから押し出し、表面を40℃に保った金属ドラム上にキャストすることにより冷却し、厚み200μmの未延伸シートを作製した。60℃のシート温度に調整した該未延伸シートを、延伸ロールを用いて、延伸速度2m/分で、縦方向(MD)に、延伸倍率が6.0倍となるように一軸延伸した。一軸延伸フィルムの表面温度が33℃となるように冷却した後、該一軸延伸フィルムをテンター延伸機に導入し、フィルム温度38℃で、延伸倍率が3.7倍となるように横方向(TD)に延伸し、120℃で緊張下に1分間熱処理して、面積倍率22倍の二軸延伸フィルムを作製した。該二軸延伸PGAフィルムの厚みは15μmであった。
参考例1で製造したPGAフィルムについて、ガスバリア性(透過度)を測定した。有機化合物としては、極性や構造の異なる化合物であるシクロヘキサン、2−プロパノール、酢酸エチル及びトルエンを使用した。シクロヘキサン、2−プロパノール及び酢酸エチルについては、温度30℃で、湿度0%RHまたは湿度100%RHの条件で測定を行い、トルエンについては、温度50℃、湿度80%RHの条件で測定を行った。結果を表1に示す。
実施例1のPGAフィルムに代えて、EVOHフィルム(株式会社クラレ製EVAL(登録商標)F171Bフィルム、厚み15μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フィルムのガスバリア性(透過度)を測定した。結果を表1に示す。
参考例1で使用したPGAから形成したフィルム層(厚み25μm)、接着層(三菱化学株式会社製MODIC−F563)、及びヒートシール層(株式会社プライムポリマー製LLDPEモアテック(登録商標)0238CN)を配置して、LLDPE(厚み50μm)/接着層(厚み5μm)/PGAフィルム層(厚み25μm)/接着層(厚み5μm)/LLDPE(厚み50μm)である多層フィルムを製造した。具体的には、各層を形成する樹脂を、複数の押出機内でそれぞれ溶融混練した後、溶融樹脂をTダイ内で上記層構成となるように溶融接合させる共押出加工を行った。Tダイ出口から流出した溶融体を温度30℃の冷却ロールで冷却し、多層フィルムを製造した。
参考例2で製造した1辺が開放されたPGAフィルム袋内に、燻蒸剤であるイソチオシアン酸メチル(和光純薬株式会社製)1gを測りとり、開放された部分をヒートシールして、イソチオシアン酸メチルをPGAフィルム袋内に封入した。イソチオシアン酸メチルを封入したPGAフィルム袋を、初期重量をメトラー社製AT250で測定した後、温度30℃、湿度30%RH、及び、温度30℃、湿度100%RHに設定した恒温恒湿槽内中で、それぞれ静置した。24時間経過後及び72時間経過後にPGAフィルム袋の重量を測定し、初期重量からの重量減少量(g)を計算して、ガスバリア性(燻蒸剤の減量度)を測定した。結果を表2に示す。
参考例2で使用したPGAフィルム層に代えて、EVOHフィルム(株式会社クラレ製、EVAL−F171B)から形成したフィルム層を用いたこと以外は、参考例2と同様にして、EVOHを使用した多層フィルムを製造した。このEVOHの多層フィルムから製造した袋を使用して、実施例2と同様にして、初期重量からの重量減少量(g)を計算して、ガスバリア性(燻蒸剤の減量度)を測定した。結果を表2に示す。
Claims (6)
- 式−(O・CH 2 ・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を、全モノマー単位を100モル%とした場合に、70モル%以上有するポリグリコール酸を50質量%以上含有する層を少なくとも1層備えることを特徴とする燻蒸用フィルムであって、セルロース成分からなる基紙の少なくとも片面に生分解性熱可塑性樹脂層が積層されてなるものを除く燻蒸用フィルム。
- 前記ポリグリコール酸を50質量%以上含有する層及び他の熱可塑性樹脂を50質量%以上含有する層を備える請求項1に記載の燻蒸用フィルム。
- 前記他の熱可塑性樹脂を50質量%以上含有する層が生分解性樹脂を50質量%以上含有する層である請求項2に記載の燻蒸用フィルム。
- 前記生分解性樹脂がポリ乳酸である請求項3に記載の燻蒸用フィルム。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燻蒸用フィルムから形成した燻蒸用袋。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燻蒸用フィルムまたは請求項5に記載の燻蒸用袋を使用する燻蒸方法。
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