JP5766322B1 - 分散電源系統連系時の系統制御システム、装置、及び方法 - Google Patents

分散電源系統連系時の系統制御システム、装置、及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電力系統の安定化を図りつつ、自然エネルギー発電の利用率を向上させる。【解決手段】安定化制御装置5は、電力系統4の連系点3の電圧値を計測し、電圧値と予め定められた基準電圧値との偏差に基づき比例積分制御値を出力する電圧制御部51と、電圧制御部51からの比例積分制御値に基づいて、連系点3の電圧値が基準電圧値以下となるように、PV(自然エネルギー発電システム)1の出力を抑制する抑制信号を生成する抑制信号生成部53とを備える。【選択図】図2

Description

本発明は、分散電源系統連系時の系統制御システム、装置、及び方法に関し、より詳細には、PV(Photo Voltaic:太陽光発電)などの自然エネルギー発電を分散電源として電力系統に連系させた分散電源系統連系時の系統制御システム、該システムを構成する安定化制御装置、及び系統制御方法に関する。
地球環境を考慮した低炭素社会の実現に向けて、太陽光発電(以下、単にPVという)等を用いた大量の再生可能エネルギーの導入が開始されている。導入目標としては、2020年に2800万kW、2030年に5300万kWが示されている。このような再生可能エネルギーは、天候などの自然条件に応じて、その発電量が刻々と変動するため、電力系統において再生可能エネルギーが多く利用されるほど、電力系統における電圧変動や周波数変動を引き起こす可能性が高くなる。このため、電力系統の電圧状態、周波数状態に応じて、適切な発電量制御あるいは負荷制御が行えないと、電力品質が低下してしまう。
従来、例えば、特許文献1には、ステップ式自動電圧調整器の一つであるSVR(Step Voltage Regulator)と、安定化制御装置と、蓄電池などの電力貯蔵装置とを組み合わせた電圧変動抑制システムが開示されている。これによれば、安定化制御装置が自然エネルギー発電システムの出力を監視し、この出力状態に基づき電力貯蔵装置の充放電を制御する。
特開2009−65820号公報
上記の自然エネルギー発電システムの一つであるPVを、連系点を介して電力系統に接続した場合、系統連系ガイドラインによれば、PV運転時に連系点電圧が上昇し、上限値を超えたときに、PV出力を150秒以上停止(遮断)することが要求される。この場合、PVの多くは再起動まで5分程度要するため、PV利用率(すなわち、電圧上限を加えずPVがフルに発電できた場合の発電電力量を100%としたときの割合)が低下してしまうという問題がある。
図11は、系統電圧が上限値を超えたときのPV出力遮断処理のシミュレーション結果を示す図で、図中、縦軸右側は系統電圧(V)、縦軸左側はPV出力電力(W)、横軸は経過時間(秒)を示し、101は系統電圧、102はPV出力電力を示す。なお、PV無出力時系統電圧を103.6V、系統電圧上限値を107V、PV出力遮断時間を300秒とする。つまり、系統電圧が107Vを超えると、PV出力が300秒間遮断されるように制御される。これは、PV出力の遮断を行わないと、系統電圧が上限値を超えてしまい、電力系統が不安定となるためである。なお、一般家庭の場合、上記の系統電圧は、電気事業法に基づき、101±6Vの範囲に制御されるものとする。
図11において、101aはPV出力遮断無しの場合の系統電圧、101bはPV出力遮断有りの場合の系統電圧を示す。また、102aはPV出力遮断無しの場合のPV出力電力、102bはPV出力遮断有りの場合のPV出力電力を示す。このシミュレーション結果に基づいて、PV出力遮断を行わない場合、全経過時間でPV出力電力量は42.7Whと算出される。また、PV出力遮断を行った場合、全経過時間でPV出力電力量は17.0Whと算出される。この場合、PV利用率は、17.0/42.7≒39.8%となる。すなわち、電力系統で電圧上昇が発生した場合に、従来の方法ではPV出力が一定時間遮断されてしまう。そして、この電圧上昇が頻繁に発生すると、その都度PVの発生電力が供給されない状態となるため、PV利用率が上記のように低下してしまう。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、電力系統の安定化を図りつつ、自然エネルギー発電の利用率を向上させることができる分散電源系統連系時の系統制御システム、該システムを構成する安定化制御装置、及び系統制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、自然エネルギー発電システムが連系点を介して接続された電力系統に対して、該電力系統を安定化させる安定化制御装置を備えた分散電源系統連系時の系統制御システムであって、前記安定化制御装置は、前記連系点の電圧値を計測し、該電圧値と予め定められた基準電圧値との偏差に基づき比例積分制御値を出力する電圧制御部と、前記比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下となるように、前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制する抑制信号を生成する抑制信号生成部とを備え、前記抑制信号生成部は、前記比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下のときには前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制せず、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値より大きい場合、前記連系点の電圧値から前記基準電圧値を減算した偏差が大きくなるに従って、前記自然エネルギー発電システムの出力の抑制を大きくし、前記連系点の電圧値から前記基準電圧値を減算した偏差が所定値以上のときには、前記自然エネルギー発電システムの出力を完全に抑制する前記抑制信号を生成することを特徴としたものである。
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記安定化制御装置は、さらに、前記連系点での周波数を計測し、該周波数と予め定められた基準周波数との偏差に基づき比例積分制御値を出力する周波数制御部を備え、前記抑制信号生成部は、前記電圧制御部の比例積分制御値及び前記周波数制御部の比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下となり且つ前記連系点の周波数が前記基準周波数の範囲となるように、前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制する前記抑制信号を生成することを特徴としたものである。
第3の技術手段は、第1または第2の技術手段において、前記連系点を介して前記電力系統に対して電力の充放電を行う電力貯蔵装置と、前記連系点の電圧値の移動平均により制御目標値を決定すると共に、該決定した制御目標値と現在の電圧値との偏差に基づき比例制御値を算出し、該比例制御値に基づく充放電指令を前記電力貯蔵装置に出力する他の安定化制御装置とを備えたことを特徴としたものである。
第4の技術手段は、第3の技術手段において、前記電力貯蔵装置は、前記充放電指令が充電を示す場合、前記電力系統から電力を充電し、前記充放電指令が放電を示す場合、前記電力系統へ電力の放電を行うことを特徴としたものである。
第5の技術手段は、第1〜第4のいずれか1の技術手段における系統制御システムを構成する安定化制御装置である。
第6の技術手段は、自然エネルギー発電システムが連系点を介して接続された電力系統に対して、該電力系統を安定化させる安定化制御装置による分散電源系統連系時の系統制御方法であって、前記安定化制御装置が、前記連系点の電圧値を計測し、該電圧値と予め定められた基準電圧値との偏差に基づき比例積分制御値を出力する電圧制御ステップと、前記比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下となるように、前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制する抑制信号を生成する抑制信号生成ステップとを備え、前記抑制信号生成ステップは、前記比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下のときには前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制せず、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値より大きい場合、前記連系点の電圧値から前記基準電圧値を減算した偏差が大きくなるに従って、前記自然エネルギー発電システムの出力の抑制を大きくし、前記連系点の電圧値から前記基準電圧値を減算した偏差が所定値以上のときには、前記自然エネルギー発電システムの出力を完全に抑制する前記抑制信号を生成することを特徴としたものである。
本発明によれば、電力系統において電圧上昇が発生した場合でも、系統電圧が上限値を超えないように、自然エネルギー発電の出力を抑制することにより、電力系統の安定化を図りつつ、自然エネルギー発電の利用率を向上させることができる。
本発明の第1の実施形態に係る系統制御システムの構成例を示す図である。 本発明による安定化制御装置の構成例を示すブロック図である。 安定化制御装置のリミッタ設定及び入出力特性の一例について説明するための図である。 第1の実施形態に係るPV出力抑制処理のシミュレーション結果の一例を示す図である。 第2の実施形態に係る安定化制御装置の周波数偏差の場合のリミッタ設定の一例について説明するための図である。 本発明の第3の実施形態に係る系統制御システムの構成例を示す図である。 図6に示す第2の安定化制御装置の構成例を説明するための図である。 電力貯蔵装置、第2の安定化制御装置、及びSVRによる系統電圧の制御例を示す図である。 第3の実施形態に係るPV出力抑制処理のシミュレーション結果の一例を示す図である。 大規模系統における、PV出力抑制処理のみの場合と、PV出力抑制処理及び蓄電池充放電処理を組み合わせた場合とのシミュレーション結果を比較した図である。 系統電圧が上限値を超えたときのPV出力遮断処理のシミュレーション結果を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の分散電源系統連系時の系統制御システム、該システムを構成する安定化制御装置、及び系統制御方法に係る好適な実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る系統制御システムの構成例を示す図で、図中、1は自然エネルギー発電システムの一例であるPV(太陽光発電)、2は構内系統、3は連系点、4は電力系統、5は安定化制御装置を示す。PV1で発電された電力は、構内系統2から連系点3を介して電力系統4に出力される。安定化制御装置5は、ADC(Ancillary Decentralized Power & Load Control System:アンシラリー分散制御システム)とも呼ばれ、PV1に接続されると共に、連系点3を介して電力系統4に接続され、連系点3の電圧偏差、あるいは、電圧偏差及び周波数偏差を算出し、これに基づいてPV1の出力を制御する。
図2は、本発明による安定化制御装置5の構成例を示すブロック図である。安定化制御装置5は、電圧制御部51、周波数制御部52、抑制信号生成部53、制御値加算部54、及び抑制係数乗算部55を備えているが、本実施形態では、周波数制御部52を含まない構成、つまり、電圧制御部51、抑制信号生成部53、制御値加算部54、及び抑制係数乗算部55からなる構成について説明する。
本実施形態の安定化制御装置5は、連系点3の電圧値を計測し、電圧値と予め定められた基準電圧値との偏差に基づき比例積分制御値を出力する電圧制御部51と、電圧制御部51からの比例積分制御値に基づいて、連系点3の電圧値が基準電圧値以下となるように、PV1の出力を抑制する抑制信号を生成する抑制信号生成部53とを備える。ここで、系統電圧は101±6Vの範囲に制御されるものとし、上限となる基準電圧値は107Vとする。
より具体的には、電圧制御部51は、連系点3の現在の電圧値と基準電圧値(107V)との偏差ΔVを求める偏差算出部51aと、偏差算出部51aで求めた偏差ΔVに基づき比例制御を行う比例制御器51bと、比例制御器51bにより偏差ΔVに対して比例制御された値に制限をかけて比例制御値ΔPvpを出力する第1リミッタ51cと、偏差算出部51aで求めた偏差ΔVに基づき積分制御を行う積分制御器51dと、積分制御器51dにより偏差ΔVに対して積分制御された値に制限をかけて積分制御値ΔPviを出力する第2リミッタ51eと、第1リミッタ51cからの比例制御値ΔPvpと第2リミッタ51eからの積分制御値ΔPviを加算し比例積分制御値ΔPvを出力する加算部51fとを備える。なお、この比例積分制御値ΔPvの極性は制御値加算部54で+から−に変換され、比例積分制御値ΔPとして出力されるが、本実施形態では周波数制御部52について考慮しないため、|ΔPv|=|ΔP|となる。
抑制信号生成部53は、電圧制御部51からの比例積分制御値ΔPに制限をかけて比例積分制御値ΔP′を出力するリミッタ53aと、リミッタ53aからの比例積分制御値ΔP′に基づいて抑制係数(0〜1)を演算する抑制係数演算部53bとを備える。抑制信号生成部53は、抑制係数演算部53bで求めた抑制係数を含む抑制信号を抑制係数乗算部55に出力し、抑制係数乗算部55では、PV1からの発電出力にこの抑制係数を乗じ、連系点3の電圧値が基準電圧値以下となるように、PV1の発電出力を抑制する。
図3は、安定化制御装置5のリミッタ設定及び入出力特性の一例について説明するための図である。図3(A)は電圧制御部51の第1リミッタ51cにおけるリミッタ設定例であり、図3(B)は電圧制御部51の第2リミッタ51eにおけるリミッタ設定例である。また、図3(C)は抑制信号生成部53のリミッタ53aにおけるリミッタ設定例である。また、図3(D)は抑制信号生成部53の抑制係数演算部53bでの演算に用いる入出力特性の一例である。なお、図2の比例積分制御値ΔPvは、偏差ΔVの比例制御値ΔPvp(第1リミッタ51c)と、偏差ΔVの積分制御値ΔPvi(第2リミッタ51e)とを加算したものである。
すなわち、図3(A)のリミッタ設定によれば、電力系統4の現在の電圧値が基準電圧値(107V)以下の場合、偏差ΔVは−となり、比例制御値ΔPvpは0に制御される。一方、電力系統4の現在の電圧値が基準電圧値よりも大きい場合、偏差ΔVは+となり、偏差ΔVの増加に伴い、比例制御値ΔPvpは「+W1」まで所定の傾きで増加する。そして、比例制御値ΔPvpが「+W1」になると、リミッタがかかり、偏差ΔVがこれ以上大きくなっても、比例制御値ΔPvpが「+W1」を超えることはない。また、図3(B)のリミッタ設定についても同様に積分制御値ΔPviが「+W1」で制限される。ここで、PV1の発電出力は、これら比例制御値ΔPvpと積分制御値ΔPviとを加算した比例積分制御値ΔPvにより制御される。そして、この比例積分制御値ΔPvは、0〜+2W1の値を取り得るが、制御値加算部54で極性変換され、比例積分制御値ΔP(−2W1〜0)とされる。
次に、図3(C)のリミッタ設定、すなわち、抑制信号生成部53のリミッタ53aのリミッタ設定は、制御値加算部54での極性変換に伴うもので、リミッタ53aは、電圧制御部51からの極性変換後の比例積分制御値ΔPに制限をかけて比例積分制御値ΔP′を出力する。具体的には、比例積分制御値ΔPの−2W1〜0の値に対して、比例積分制御値ΔP′として−W2〜0を出力する。つまり、比例積分制御値ΔP′が「−W2」になると、リミッタがかかるように制御される。図3(C)でのリミッタ設定は、比例積分制御値ΔPが比例制御値ΔPvpと積分制御値ΔPviとを加算したものであるため、これに対してさらにリミッタをかける。これにより、比例積分制御値ΔPが「−W2」に制限されるが、この「−W2」は「−W1」であってもよい。
上記において、リミッタ設定値「−W2」は、電力系統4の電圧が基準電圧値(107V)以下となる範囲で、電力系統4がPV1から受け入れ可能(許容可能)な電力(PV出力)によって決定される。受け入れ可能なPV出力が例えば「W0」であれば、「W0」のPV出力を得るために必要な比例積分制御値がリミッタ設定値「−W2」として設定される。これにより、偏差ΔVの大きさに係らず、比例積分制御値ΔP′はリミッタ設定値「−W2」で制限される。具体例として、PV1が400kW相当の発電能力を持ち、電力系統4の電圧が基準電圧値(107V)以下となる範囲で、電力系統4に受け入れ可能なPV出力が発電能力の2/3、すなわち、267kWである場合、この「267kW」のPV出力を得るために必要な比例積分制御値がリミッタ設定値となる。
次に、図3(D)の入出力特性は、比例積分制御値ΔP′を入力とし、抑制係数を出力としたものである。この入出力特性は、抑制信号生成部53の抑制係数演算部53bでの演算に用いられる。抑制係数は0〜1の値をとり、抑制係数が1のとき、PV出力を全く抑制しない(0%の出力抑制)とされ、抑制係数が0のとき、PV出力を完全に抑制する(100%の出力抑制)とされる。すなわち、比例積分制御値ΔP′が0の場合、偏差ΔVは−(現在電圧値≦基準電圧値)となるため、抑制係数は1となり、PV出力の抑制は行われない。一方、比例積分制御値ΔP′が0〜−W2の場合、偏差ΔVは+(現在電圧値>基準電圧値)となるため、抑制係数は0〜1をとり、PV出力の抑制が行われる。
具体的には、図3(D)の入出力特性をデータテーブルとしてメモリ(図示せず)に保持しておけばよい。比例積分制御値ΔP′が0〜−W2の値である場合、入出力特性の傾きに応じて、抑制係数は0〜1の値をとり、PV出力が抑制される。なお、本実施形態では、抑制係数の決定方法の一例として、比例積分制御値の極性変換(+から−)を行っているが、極性変換を行わず、+のままで処理を行ってもよい。
抑制信号生成部53は、上記のようにして、連系点3における現在電圧値と基準電圧値との偏差ΔVに基づき抑制係数を求め、この抑制係数を含む抑制信号を、後段の抑制係数乗算部55に出力する。そして、抑制係数乗算部55では、PV1からのPV出力に対して、抑制信号生成部53から得た抑制係数を乗じ、これにより抑制されたPV出力を電力系統4に出力させる。
図4は、第1の実施形態に係るPV出力抑制処理のシミュレーション結果の一例を示す図で、図4(A)は系統電圧及びPV出力電力の制御例を示し、図4(B)はPV抑制係数の出力例を示す。図4(A)中、縦軸右側は系統電圧(V)、縦軸左側はPV出力電力(W)、横軸は経過時間(秒)を示し、6は系統電圧、7はPV出力電力を示す。図4(B)中、縦軸はPV抑制係数、横軸は経過時間(秒)を示す。なお、PV無出力時系統電圧を103.1V、系統電圧上限値を107Vとする。つまり、本例の場合、PV出力電力の12Wが実際の400kWに相当し、その2/3の267kW(すなわち、図中8W)以下にPV出力を抑制することで、系統電圧4の電圧が上限値(107V)以下に制御される。
図4(A)において、6aはPV出力抑制無しの場合の系統電圧、6bはPV出力抑制有りの場合の系統電圧を示す。また、7aはPV出力抑制無しの場合のPV出力電力、7bはPV出力抑制有りの場合のPV出力電力を示す。つまり、図4(A)に示すように、連系点3における現在電圧値が基準電圧値(107V)より大きくなると、PV出力抑制処理が開始され、図4(B)のPV抑制範囲にて動的にPV抑制係数(0〜1)が算出される。これにより、PV出力が8W以下に抑制される。
上記のシミュレーション結果に基づいて、PV出力抑制を行わない場合、全経過時間でPV出力電力量は42.7Whと算出される。また、PV出力抑制を行った場合、全経過時間でPV出力電力量は39.4Whと算出される。この場合、PV利用率は、39.4/42.7≒92.3%となる。つまり、図11の従来例のように、PV出力を遮断する場合と比較して、格段にPV利用率が向上していることが分かる。なお、PV利用率とは、前述した通り、電圧上限を加えずPVがフルに発電できた場合の発電電力量を100%としたときの割合である。
このように本実施形態によれば、電力系統において電圧上昇が発生した場合でも、系統電圧が上限値を超えないように、自然エネルギー発電の出力(PV出力)を抑制することにより、電力系統の安定化を図りつつ、自然エネルギー発電の利用率を向上させることができる。
(第2の実施形態)
ここで、電力会社から買電する大規模系統の場合、電圧は変動するが、周波数は比較的安定している。これに対して、電力会社から切り離され、自家発電機等を用いた小規模な自立系統の場合、電圧は比較的安定しているが、周波数が変動する。つまり、自家発電機として多数のPV1が接続され、PV出力が大きくなってくると、系統周波数の変動が大きくなってくる。このため、PV出力を抑制することで、周波数変動も抑えることができると考えられる。従って、本発明を大規模系統及び自立系統の両方に適用するために、電圧偏差に加え、周波数偏差も考慮したほうが望ましい。上述の第1の実施形態では、電圧偏差に基づき抑制係数を求めたが、本実施形態では、電圧偏差に加え、さらに、周波数偏差を求め、これら電圧偏差及び周波数偏差に基づき抑制係数を求める。
本実施形態について、前述の図2の構成例を参照しながら説明する。なお、安定化制御装置5は、電圧制御部51及び周波数制御部52の両方を含む構成、つまり、電圧制御部51、周波数制御部52、抑制信号生成部53、制御値加算部54、及び抑制係数乗算部55を備えた構成とされる。
本実施形態の安定化制御装置5は、連系点3での周波数を計測し、周波数と予め定められた基準周波数との偏差に基づき比例積分制御値を出力する周波数制御部52を備え、抑制信号生成部53は、電圧制御部51の比例積分制御値及び周波数制御部52の比例積分制御値に基づいて、連系点3の電圧値が基準電圧値以下となり且つ連系点3の周波数が基準周波数の範囲となるように、PV1の出力を抑制する抑制信号を生成する。ここで、第1の実施形態と同様に、系統電圧は101±6Vの範囲、系統周波数は50±0.2Hzの範囲に制御されるものとし、上限となる基準電圧値は107V、基準周波数は±0.2Hz(50Hzを0とした場合の基準)、基準周波数の範囲は−0.2〜+0.2Hzとする。なお、電圧制御部51の構成は、第1の実施形態で説明した通りであり、ここでの説明は省略する。
より具体的には、周波数制御部52は、連系点3の現在の周波数(ここでは50Hzを0として計測し、例えば、50.1Hzであれば+0.1Hz、49.9Hzであれば−0.1Hzとなる)と基準周波数(±0.2Hz)との偏差Δfを求める偏差算出部52aと、偏差算出部52aで求めた偏差Δfに基づき比例制御を行う比例制御器52bと、比例制御器52bにより偏差Δfに対して比例制御された値に制限をかけて比例制御値ΔPfpを出力する第1リミッタ52cと、偏差算出部52aで求めた偏差Δfに基づき積分制御を行う積分制御器52dと、積分制御器52dにより偏差Δfに対して積分制御された値に制限をかけて積分制御値ΔPfiを出力する第2リミッタ52eと、第1リミッタ52cからの比例制御値ΔPfpと第2リミッタ52eからの積分制御値ΔPfiを加算し比例積分制御値ΔPfを出力する加算部52fとを備える。なお、この比例積分制御値ΔPfの極性は制御値加算部54で+から−に変換され、さらに、比例積分制御値ΔPv(−極性)に加算されて、比例積分制御値ΔPとして出力される。つまり、本実施形態では、|ΔPv+ΔPf|=|ΔP|となる。
以下同様の制御となるが、抑制信号生成部53は、電圧制御部51及び周波数制御部52からの比例積分制御値ΔPに制限をかけて比例積分制御値ΔP′を出力するリミッタ53aと、リミッタ53aからの比例積分制御値ΔP′に基づいて抑制係数(0〜1)を演算する抑制係数演算部53bとを備える。抑制信号生成部53は、抑制係数演算部53bで求めた抑制係数を含む抑制信号を抑制係数乗算部55に出力し、抑制係数乗算部55では、PV1からの発電出力に抑制係数を乗じ、連系点3の電圧値が基準電圧値以下となり且つ連系点3の周波数が基準周波数の範囲となるように、PV1の発電出力を抑制する。
図5は、第2の実施形態に係る安定化制御装置5の周波数偏差の場合のリミッタ設定の一例について説明するための図である。図5(A)は周波数制御部52の第1リミッタ52cのリミッタ設定例であり、図5(B)は周波数制御部52の第2リミッタ52eにおけるリミッタ設定例である。なお、図2の比例積分制御値ΔPfは、偏差Δfの比例制御値ΔPfp(第1リミッタ52c)と、偏差Δfの積分制御値ΔPfi(第2リミッタ52e)とを加算したものである。
すなわち、図5(A)のリミッタ設定によれば、電力系統4の現在の周波数が基準周波数(±0.2Hz)内の場合、偏差Δfは−となり、比例制御値ΔPfpは0に制御される。一方、電力系統4の現在の周波数が基準周波数を超える場合、偏差Δfは+となり、偏差Δfの増加に伴い、比例制御値ΔPfpは「+W1」まで所定の傾きで増加する。そして、比例制御値ΔPfpが「+W1」になると、リミッタがかかり、偏差Δfがいくら大きくなっても、比例制御値ΔPfpが「+W1」を超えることはない。また、図5(B)のリミッタ設定についても同様に積分制御値ΔPfiが「+W1」で制限される。
ここで、PV1の発電出力は、電圧分の比例制御値ΔPvpと積分制御値ΔPviとを加算した比例積分制御値ΔPvと、周波数分の比例制御値ΔPfpと積分制御値ΔPfiとを加算した比例積分制御値ΔPfとを加算した比例積分制御値ΔPにより制御される。なお、比例積分制御値ΔPv及び比例積分制御値ΔPfは、制御値加算部54で極性変換され、さらに、加算されて、比例積分制御値ΔPとされる。以下、基本的に第1の実施形態の場合と同様の方法により、比例積分制御値ΔPから抑制係数を求める。
このように本実施形態によれば、大規模系統及び自立系統の両系統において電圧及び周波数の上昇が発生した場合でも、系統電圧が上限値を超えず且つ周波数が一定範囲を超えないように、自然エネルギー発電の出力(PV出力)を抑制することにより、電力系統の安定化を図りつつ、自然エネルギー発電の利用率を向上させることができる。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る系統制御システムの構成例を示す図である。本実施形態のシステムは、第1の実施形態と同様に、PV1、構内系統2、連系点3、電力系統4、第1の安定化制御装置5を備え、さらに、電力貯蔵装置8、第2の安定化制御装置9、及びSVR(Step Voltage Regulator)21を備える。なお、第1の安定化制御装置5は、図1及び図2に示した安定化制御装置5と同じ構成とする。すなわち、本実施形態では、第1の安定化制御装置5によるPV出力抑制処理とは独立して、蓄電池等の電力貯蔵装置8及び第2の安定化制御装置9を用いて、電力系統4に対して電力の充放電処理(以下、蓄電池充放電処理という)を行うように構成される。
以下、上記の蓄電池充放電処理について具体的に説明する。PV1で発電された電力は、構内系統2に出力され、制御目標値に対して電圧が高い場合には、連系点3を介して電力貯蔵装置8に貯蔵され、制御目標値に対して電圧が低い場合には、電力貯蔵装置8には貯蔵されずに放電される。電力貯蔵装置8は、PV1に連系点3を介して接続される電力系統4に対して電力の充放電を行う。
第2の安定化制御装置9は、本発明の他の安定化制御装置に相当し、電力系統4と電力貯蔵装置8との連系点3の電圧値を計測し、電圧値の移動平均により制御目標値を決定すると共に、決定した制御目標値と現在の電圧値との偏差に基づく充放電指令を電力貯蔵装置8に出力する。この第2の安定化制御装置9は、第1の安定化制御装置5とは独立して動作する。
電力貯蔵装置8は、例えば、蓄電池として例示され、第2の安定化制御装置9からの充放電指令が充電、すなわち、“正”の値を示す場合、電力系統4から電力を充電し、充放電指令が放電、すなわち、“負”の値を示す場合、電力系統4へ電力の放電を行うように構成される。
SVR21は、変圧器、電力計測装置、及びSVR制御装置で構成され、電力系統4が接続された変電所(図示せず)と連系点3との間に設置される。電力計測装置は、設置点の電圧値を計測し、SVR制御装置は、電力計測装置により計測された電圧値が所定値を超えている時間が所定時間以上となった場合に変圧器の変圧比を1タップ分変更させるように制御する。
すなわち、電力貯蔵装置8、第2の安定化制御装置9、及びSVR21を併設することにより、電力系統4の短周期変動に対しては電力貯蔵装置8及び第2の安定化制御装置9により電圧変動を抑制し、電力系統4の長周期変動に対してはSVR21により電圧変動を抑制することができる。なお、本実施形態では、SVR21を不要としてもよいが、より効果的に電圧変動を抑制するためにはSVR21を設置したほうが望ましい。また、電力貯蔵装置8とSVR21とで分担して電圧変動を抑制することにより、SVR21の動作回数を減少させ、長寿命化を図ることも可能となる。
図7は、図6に示す第2の安定化制御装置9の構成例を説明するための図である。上述のように、第2の安定化制御装置9は、連系点3の電圧値を計測し、電圧値の移動平均により制御目標値を決定する。具体的には、例えば、3分間隔で移動平均を求める処理(つまり、平準化フィルタ処理)を行う。移動平均とした理由は、第2の安定化制御装置9の設置地点、計測時間に対応した値を制御目標値とするためである。また、制御目標値の変動を緩やかにできるという効果もある。そして、第2の安定化制御装置9は、上記で決定した制御目標値と現在の電圧値との偏差を求める。ここで、この偏差から充放電指令を決定する際に、比例制御を適用することが好ましい。比例制御を適用することで、応答性を良くすることが可能となる。また、この際、微小な偏差に応答しないように不感帯を設けるようにしてもよい。
図8は、電力貯蔵装置8、第2の安定化制御装置9、及びSVR21による系統電圧の制御例を示す図である。PV1の出力がある時刻で急変した場合、これに伴い電力系統4の有効電力も変動する。この電圧変動を抑制するために、第2の安定化制御装置9が充放電指令を電力貯蔵装置8に出力する。電力貯蔵装置8は、充放電指令に従って電力系統4に対して電力の充放電を行い、系統電圧の変動を抑制する。一方、SVR21は、連系点3の電圧値を計測し、計測した電圧値が所定値を超えている時間が所定時間以上となった場合に変圧器の変圧比を1タップ分変更させ、系統電圧の変動を抑制する。
図8(A)は、SVRの基本的な制御例を説明するための図である。図中、縦軸は連系点電圧、横軸は時間を示す。SVR21は、基準電圧に対して、次式により上限電圧VUp及び下限電圧VLoを設定する。なお、ここでは、基準電圧を101V、不感帯を1%とする。
Up=基準電圧×(1+不感帯/100) …式1
Lo=基準電圧×(1−不感帯/100) …式2
上記例の場合、上限電圧VUp=102V、下限電圧VLo=100Vと設定される。そして、SVR21は、連系点3の電圧値を計測し、計測した電圧値が上限電圧VUpを上回っている時間、あるいは、下限電圧VLoを下回っている時間が所定時間Td(ここでは45秒)以上となった場合に、変圧器のタップを切り替える。例えば、図8(A)において、時間(T1−T2+T3)≧Tdである場合、タップを1段下げる降圧動作を行い、また、時間(T4)≧Tdである場合、タップを1段上げる昇圧動作を行う。なお、時間T1〜T4の計時は、SVR21が備える内部カウンタ(図示せず)により行われる。
図8(B)は、電力貯蔵装置とSVRとを併設したときのステップ応答の一例を説明するための図で、図中、縦軸は系統電圧、横軸は時間、10は入力、11はSVR単独の場合の応答特性、12は電力貯蔵装置とSVRとを併設した場合の応答特性を示す。すなわち、SVR単独の場合には、時間Td毎に、変圧器のタップを切り替え、上限電圧VUpを下回って、あるいは、下限電圧VLoを上回って動作を停止する。
これに対して、SVRと電力貯蔵装置とを併設することにより、SVRと電力貯蔵装置とが並行して動作することになるため、SVR単独動作時と比べて電圧変動が抑制され波形が小さくなる。そして、その差分は電力貯蔵装置に充電されるか、あるいは、電力貯蔵装置から放電される。
ここで、SVRの1タップ相当の電圧調整刻みは、例えば、高圧6.6kV配電線では約100V程度である。また、上記の所定時間Tdを設けることで、SVR21が頻繁に動作することを防止し、動作回数を抑制することができる。このように、SVR21と電力貯蔵装置8とが協調することで電圧変動が抑制される。図8(B)の例においては、電力系統4の連系点電圧が所定値以下に降下すると、SVR21の動作により昇圧され、また、設置点電圧が所定値以上に上昇すると、SVR21の動作により降圧され、電圧変動が常に一定範囲に収まるように制御される。
図9は、第3の実施形態に係るPV出力抑制処理のシミュレーション結果の一例を示す図である。本例では、第1の安定化制御装置5によるPV出力抑制制御と、電力貯蔵装置8及び第2の安定化制御装置9による蓄電池充放電制御とを同時に行った場合について示す。図9(A)は系統電圧及びPV出力電力の制御例を示し、図9(B)はPV抑制係数の出力例を示し、図9(C)は充放電電力の出力例を示す。図9(A)中、縦軸右側は系統電圧(V)、縦軸左側はPV出力電力(W)、横軸は経過時間(秒)を示し、13は系統電圧、14はPV出力電力を示す。図9(B)中、縦軸はPV抑制係数、横軸は経過時間(秒)を示す。図9(C)中、縦軸は充放電電力(W)、横軸は経過時間(秒)を示す。なお、PV無出力時系統電圧を103.1V、系統電圧上限値を107Vとする。本例の場合も12Wが実際の400kWに相当する。
図9(A)において、13aはPV出力抑制及び蓄電池充放電無しの場合の系統電圧、13bはPV出力抑制及び蓄電池充放電有りの場合の系統電圧を示す。また、14aはPV出力抑制及び蓄電池充放電無しの場合のPV出力電力、14bはPV出力抑制及び蓄電池充放電有りの場合のPV出力電力を示す。つまり、図9(A)に示すように、連系点3における現在電圧値が基準電圧値(107V)より大きくなると、第1の安定化制御装置5によりPV出力抑制処理が開始され、図9(B)に示すように動的にPV抑制係数(0〜1)が算出される。一方、これとは独立して、図9(C)に示すように、電力貯蔵装置8及び第2の安定化制御装置9により蓄電池充放電処理が実行される。
上記のシミュレーション結果に基づいて、PV出力抑制及び蓄電池充放電を行わない場合、全経過時間でPV出力電力量は42.7Whと算出される。また、PV出力抑制及び蓄電池充放電を行った場合、全経過時間でPV出力電力量は41.8Whと算出される。この場合、PV利用率は、41.8/42.7≒98.0%となる。つまり、図4のPV出力抑制のみの場合と比較して、さらにPV利用率が向上していることが分かる。これは、電力貯蔵装置8に充電する電力量分だけ、PV出力を増加させることができるため、PV出力抑制のみの場合と比べ、PV利用率が向上すると考えられる。
図9(D)は、第1の安定化制御装置5、電力貯蔵装置8、及び第2の安定化制御装置9の動作例を説明するための図である。図9(D)におけるS1〜S7の各動作は図9(A)〜(C)の各区間1〜3に対応している。ここで、PV1に対する第1の安定化制御装置5は比例積分制御、電力貯蔵装置8に対する第2の安定化制御装置9は比例制御のため、第2の安定化制御装置9が先に動作する。まず、第2の安定化制御装置9は、連系点3の系統電圧が基準電圧値(107V)に到達するまで、電力貯蔵装置8により電力系統4に対して電力の充放電を行う(S1,区間1)。
次に、第2の安定化制御装置9は、連系点3の系統電圧が基準電圧値(107V)を超えて上昇する場合には、電力系統4の電力を電力貯蔵装置8に充電する(S2,区間2)。そして、電力貯蔵装置8への充電後に、さらに系統電圧が上昇する場合には(S3)、第1の安定化制御装置5が動作し、連系点3の電圧偏差に基づき比例積分制御値を算出し、この比例積分制御値に基づいて、連系点3の電圧値が基準電圧値(107V)以下となるように、PV1の出力を抑制する(S4)。
次に、第2の安定化制御装置9は、PV1の出力抑制により、連系点3の系統電圧が降下すると、これを補うために、電力系統4に対して電力貯蔵装置8から放電を行う(S5,区間3)。そして、電力貯蔵装置8からの放電後に、系統電圧が上昇し、基準電圧値(107V)を超えた場合には(S6)、再び第1の安定化制御装置5が動作し、連系点3の電圧偏差に基づき比例積分制御値を算出し、この比例積分制御値に基づいて、連系点3の電圧値が基準電圧値(107V)以下となるように、PV1の出力を抑制する(S7)。以下、S1〜S7までの処理が繰り返し実行される。
なお、上記例の場合、第1の安定化制御装置5によるPV出力抑制制御は、電圧偏差のみに基づき行っているが、第2の実施形態で説明したように、電圧偏差及び周波数偏差に基づき行うようにしてもよい。
図10は、大規模系統における、PV出力抑制処理のみの場合と、PV出力抑制処理及び蓄電池充放電処理を組み合わせた場合とのシミュレーション結果を比較した図である。「抑制+電池制御」はPV出力抑制処理及び蓄電池充放電処理を組み合わせた場合のシミュレーション結果を示し、「抑制制御」はPV出力抑制処理のみの場合のシミュレーション結果を示す。本例のPV出力抑制処理では、電圧偏差及び周波数偏差の両方に基づき処理を行うものとする。なお、項目(1)は系統電圧及びPV出力の比較例、項目(2)は系統周波数の比較例、項目(3)はPV抑制係数の比較例、項目(4)は「抑制+電池制御」の場合における充放電指令値、項目(5)は「抑制+電池制御」及び「抑制制御」におけるPV利用率を示す。
図中、15は「抑制+電池制御」の場合の系統電圧(V)、16は「抑制+電池制御」の場合のPV出力電力(W)、17は「抑制+電池制御」の場合の系統周波数(Hz)を示し、同様に、18は「抑制制御」の場合の系統電圧(V)、19は「抑制制御」の場合のPV出力電力(W)、20は「抑制制御」の場合の系統周波数(Hz)を示す。なお、PV無出力時系統電圧を103Vとし、系統電圧上限値を107Vとする。また、系統周波数の上限値及び下限値は50Hzを基準の0とした場合に±0.2Hzとする。本例の場合も12Wが実際の400kWに相当する。
項目(1)について、「抑制+電池制御」の系統電圧15及び「抑制制御」の系統電圧18が共に上限107V以下に制御されていることが分かる。また、「抑制+電池制御」のPV出力電力16は、「抑制制御」のPV出力電力19と比べて、高くなっている。これは、第2の安定化制御装置9により電力貯蔵装置8に電力が充電される分、PV出力を増やすことができるためである。
また、項目(2)について、「抑制+電池制御」の系統周波数17は、「抑制制御」の系統周波数20よりも振幅が小さくなり、基準周波数の範囲(±0.2Hz)に収まっていることが分かる。また、項目(3)のPV抑制係数は「抑制+電池制御」のほうが「抑制制御」よりも大きくなる(抑制しない方向)。すなわち、電力貯蔵装置8に電力を充電できる分、PV抑制係数を大きくし、この結果、PV出力を増やすことができる。
そして、本例の場合、項目(5)に示すように、「抑制+電池制御」のPV利用率が「95.70%」、「抑制制御」のPV利用率が「93.00%」と算出され、「抑制+電池制御」のほうが「抑制制御」よりもPV利用率が高くなる。つまり、「抑制制御」の場合よりもPV出力を増やすことにより、PV利用率を向上させることができる。なお、図10の例では、大規模系統に適用した場合について説明したが、自立系統であっても同様に適用することができる。
このように、第1の安定化制御装置5を用いたPV出力抑制制御に加え、電力貯蔵装置8及び第2の安定化制御装置9を用いた蓄電池充放電制御を行うことで、PV出力をさらに増やすことが可能となるため、PV利用率の更なる向上を図ることができる。また、PV出力抑制制御と蓄電池充放電制御とを併用することで、系統電圧、系統周波数共に基準値に抑えることができるため、電力系統の安定化に寄与することができる。
以上、分散電源系統連系時の系統制御システム及び該システムを構成する安定化制御装置の各実施形態を中心に説明したが、本発明は、安定化制御装置による系統制御方法としての実施形態をとることもできる。
1…自然エネルギー発電システム(PV)、2…構内系統、3…連系点、4…電力系統、5…安定化制御装置(第1の安定化制御装置)、6,13,15,18…系統電圧、7,14,16,19…PV出力電力、8…電力貯蔵装置、9…第2の安定化制御装置、10…入力、11…SVR単独の場合の応答特性、12…電力貯蔵装置とSVRとを併設した場合の応答特性、17,20…系統周波数、21…SVR。

Claims (6)

  1. 自然エネルギー発電システムが連系点を介して接続された電力系統に対して、該電力系統を安定化させる安定化制御装置を備えた分散電源系統連系時の系統制御システムであって、
    前記安定化制御装置は、前記連系点の電圧値を計測し、該電圧値と予め定められた基準電圧値との偏差に基づき比例積分制御値を出力する電圧制御部と、
    前記比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下となるように、前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制する抑制信号を生成する抑制信号生成部とを備え
    前記抑制信号生成部は、前記比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下のときには前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制せず、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値より大きい場合、前記連系点の電圧値から前記基準電圧値を減算した偏差が大きくなるに従って、前記自然エネルギー発電システムの出力の抑制を大きくし、前記連系点の電圧値から前記基準電圧値を減算した偏差が所定値以上のときには、前記自然エネルギー発電システムの出力を完全に抑制する前記抑制信号を生成することを特徴とする系統制御システム。
  2. 前記安定化制御装置は、さらに、前記連系点での周波数を計測し、該周波数と予め定められた基準周波数との偏差に基づき比例積分制御値を出力する周波数制御部を備え、
    前記抑制信号生成部は、前記電圧制御部の比例積分制御値及び前記周波数制御部の比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下となり且つ前記連系点の周波数が前記基準周波数の範囲となるように、前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制する前記抑制信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の系統制御システム。
  3. 前記連系点を介して前記電力系統に対して電力の充放電を行う電力貯蔵装置と、前記連系点の電圧値の移動平均により制御目標値を決定すると共に、該決定した制御目標値と現在の電圧値との偏差に基づき比例制御値を算出し、該比例制御値に基づく充放電指令を前記電力貯蔵装置に出力する他の安定化制御装置とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の系統制御システム。
  4. 前記電力貯蔵装置は、前記充放電指令が充電を示す場合、前記電力系統から電力を充電し、前記充放電指令が放電を示す場合、前記電力系統へ電力の放電を行うことを特徴とする請求項3に記載の系統制御システム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の系統制御システムを構成する安定化制御装置。
  6. 自然エネルギー発電システムが連系点を介して接続された電力系統に対して、該電力系統を安定化させる安定化制御装置による分散電源系統連系時の系統制御方法であって、
    前記安定化制御装置が、前記連系点の電圧値を計測し、該電圧値と予め定められた基準電圧値との偏差に基づき比例積分制御値を出力する電圧制御ステップと、前記比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下となるように、前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制する抑制信号を生成する抑制信号生成ステップとを備え
    前記抑制信号生成ステップは、前記比例積分制御値に基づいて、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値以下のときには前記自然エネルギー発電システムの出力を抑制せず、前記連系点の電圧値が前記基準電圧値より大きい場合、前記連系点の電圧値から前記基準電圧値を減算した偏差が大きくなるに従って、前記自然エネルギー発電システムの出力の抑制を大きくし、前記連系点の電圧値から前記基準電圧値を減算した偏差が所定値以上のときには、前記自然エネルギー発電システムの出力を完全に抑制する前記抑制信号を生成することを特徴とする系統制御方法。
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