JP5766144B2 - トルクコンバータのパイロットボス - Google Patents
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Description
そのため、パイロットボス202を嵌合孔205aに嵌入してトルクコンバータ200とドライブシャフト205とを連結すると、パイロットボス202と嵌合孔205aとの間に僅少の隙間が生じるため、この隙間に起因して、トルクコンバータ200とドライブシャフト205との軸心ズレが発生することがあった。
パイロットボスでは、円筒形状の本体部の一端側に、本体部の内側と外側とを連通させる切欠きが形成されて、切欠きが形成された一端側が、嵌合孔に嵌入される嵌合部、他端側が、トルクコンバータとの連結部とされており、
切欠きは、本体部の一端から他端側に延びると共に本体部の周方向に所定間隔で複数設けられて、嵌合部を内側に弾性変形可能としており、
本体部の一端側では、本体部の周方向に所定間隔で設けられた切欠きの間が、嵌合部となっており、
嵌合部の各々では、他端側よりも大径の大径部が、一端に設けられており、
嵌合部の一端側を、大径部が嵌合孔に嵌入可能となる外径まで内側に変形させる荷重が、嵌合部の変形が弾性域での変形から塑性域での変形になるときの境界荷重よりも小さくなり、かつ
パイロットボスを嵌合孔に嵌入したあとにトルクコンバータの自重により嵌合部に作用する荷重が、嵌合部に変形を生じさせる最小の荷重未満となるように、
本体部の径方向における嵌合部の厚みと、本体部の周方向における切欠きの幅と、本体部の中心軸線方向における切り欠き長さを設定した構成のトルクコンバータのパイロットボス。
この状態で、パイロットボスの一端側は、その外径を広げて元の形状に戻ろうとする復元力により、嵌合孔の内周面に圧接しており、パイロットボスと嵌合孔との間に軸心ズレを起こし得る隙間が生じない。
よって、トルクコンバータの自重により、軸心ズレが発生することを好適に抑えることができる。
図1は、トルクコンバータ10のパイロットボス14を説明する断面図であって、(a)は、パイロットボス14とドライブシャフト30との連結部の断面図であり、(b)は、(a)における、領域Aの拡大図であり、(c)は、(b)におけるB−B断面図である。
フロントカバー12は、軸線Xに対して直交する円盤部121と、円盤部121の外周縁から、軸線Xに沿ってドライブプレート20から離れる方向に延びる円筒部122とを備えており、円筒部122の先端122aは、リヤカバー13の円筒部131の先端131a側に内嵌している。
リヤカバー13の円筒部131の先端131aは、フロントカバー12の円筒部122に溶接されており、フロントカバー12とリヤカバー13とが、入力軸1の回転中心軸(軸線X)周りに一体回転可能に接合されている。
このボス部材15には、ドライブプレート20の外径側の連結部25がボルトB1で固定されている。
この連結部21には、ドライブシャフト30がボルトB2で固定されている。
パイロットボス14は、トルクコンバータ10とドライブシャフト30とを連結する際に、トルクコンバータ10とドライブシャフト30との軸心合わせに用いられるものでああり、ドライブシャフト30の嵌合孔32に、軸線Xの軸方向から嵌入されている。
図2は、パイロットボス14の斜視図であり、図3の(a)は、図2における面Aでパイロットボス14を切断した断面図であり、(b)は、(a)におけるA−A矢視図であり、(c)は、軸方向から見た大径部144の外周面144aの形状を説明するために、(b)における一部を切欠いて拡大した拡大図である。
そのため、軸方向から見て切欠き141の各々は、本体部140の中心を通る各仮想線Im1と重なる位置にそれぞれ所定幅Wで設けられている。
実施の形態のパイロットボス14では、軸線X周りの周方向で、合計3つの嵌合部142が設けられている。
嵌合部142は、軸線Xに沿ってドライブシャフト30側に延びており、その先端には、嵌合部142よりも大径の大径部144が設けられている。
実施の形態では、嵌合部142は、連結部143と一体に形成されて、この連結部143で片持ち支持されている。そのため、嵌合部142は、大径部144が設けられた先端側が、軸線X側(内側)に弾性変形可能となっている。
そして、図3の(c)に示すように、軸方向から見た大径部144の外周面144aは、軸線Xを中心とする仮想円Im2上に位置しており、この仮想円Im2の直径D1(大径部144の直径D1)は、ドライブシャフト30の嵌合孔32の内径D2よりも大きい径に設定されている(D1>D2)。
図4は、パイロットボス14を、ドライブシャフト30の嵌合孔32に嵌入する場合における嵌合部142の変形を説明する図であって、(a)は、パイロットボス14の大径部144が嵌合孔32に嵌入される前の状態を、(b)は、大径部144が嵌合孔32に嵌入された直後の状態を、(c)は、大径部144が、嵌合孔32内の所定位置に配置されて、パイロットボス14の嵌合孔32への嵌入が完了した状態を、それぞれ示す図であり、(d)は、(a)の領域Aの拡大図であり、(e)は、(b)の領域Bの拡大図であり、(f)は、(c)の領域Cの拡大図である。
ここで、傾斜面144bの外径は、先端部144b1から離れるにつれ拡径しているので、パイロットボス14は、大径部144が設けられた先端側を徐々に内側に撓ませながら、嵌合孔32に嵌入される。
この際、嵌合部142の先端側(大径部144側)は、最終的に、大径部144の外径が嵌合孔32の内径D2と同じになるまで内側に変形させられることになる(図4の(b)、(e)、矢印F1参照)。
図5は、パイロットボス14を構成する材料の応力−ひずみ線図を模式的に示した図である。
図5に示すように、パイロットボス14を構成する材料(例えば軟鋼)からなる部材にひずみが発生すると、ひずみに対して応力が直線的に上昇したのち、上降伏点を超えると、応力が大きく上昇せずにひずみだけが進行するようになる。この応力−ひずみ線図において、上降伏点を境にして左側が弾性域、右側が塑性域と呼ばれており、弾性域内での変形は、弾性変形であって、ひずみを生じさせている荷重を除荷すれば形状が元に戻るのに対し、塑性域内での変形は、塑性変形であって、ひずみを生じさせている荷重を除荷しても、形状が完全に戻らないことが知られている。
嵌合部142を嵌合孔32に嵌入させたときの嵌合部142の変形により生ずるひずみεは、大径部144の外径D1、嵌合孔32の内径D2との関係において、ε=(D1−D2)/D1で表すことができる。
この復元力は、図4の(c)、(f)において矢印F2で示す方向に作用するので、大径部144の外周面144aは、嵌合孔32の内周面に圧接させられた状態となる。
そのため、従来のパイロットボスのように、軸方向から見たときに、パイロットボス14の外周と嵌合孔32の内周との間に、軸線X周りの周方向の広範囲に亘って隙間が形成されることが好適に防止されるようになっている(図1の(c)、図8の(c)参照)。
図6は、パイロットボス14に作用する荷重fと、嵌合部142の変形量xとの関係を模式的に示す図である。
そして、荷重の大きさが上限fmaxを超えると、パイロットボス14(嵌合部142)の変形が塑性域での変形となる。ここで、上限fmaxは、嵌合部142の変形が弾性域での変形から塑性域での変形になる境界の荷重である。
そのため、トルクコンバータ10の自重により作用する荷重(トルコン荷重)を、パイロットボス14(嵌合部142)に変形を生じさせる最小の荷重fminよりも小さくすると、パイロットボス14をドライブシャフト30の嵌合孔32に嵌入した状態での嵌合部142の変形を防止できるので、トルクコンバータ10とドライブシャフト30との軸心ズレの発生を防止できる。
実施の形態では、作業荷重が、嵌合部142の変形が弾性域の変形ではなく塑性域への変形になる荷重fmaxよりも小さくなるように、嵌合部142の厚みWx、切欠き141の幅Wおよび長さLが、それぞれ設定されている。
パイロットボス14では、円筒形状の本体部140の一端140a側に、本体部140の内側と外側とを連通させる切欠き141が形成されて、切欠き141が形成された一端140a側が、嵌合孔32に嵌入される嵌合部142、他端140b側が、トルクコンバータ10との連結部143とされており、
切欠き141は、本体部140の前記一端140aから軸線Xに沿って他端140b側に延びると共に本体部140の周方向に所定間隔で複数設けられて、嵌合部142の一端140a側を内側に弾性変形可能としており、
本体部140の一端140a側では、本体部140の軸線X周りの周方向に所定間隔で設けられた切欠き141、141の間が嵌合部142となっており、嵌合部142の各々では、当該嵌合部142の連結部143側よりも大径の大径部144が、一端140aに設けられている構成のトルクコンバータ10のパイロットボス14とした。
この状態で、パイロットボス14の嵌合部142先端側は、その外径を広げて元の形状に戻ろうとする復元力により、嵌合孔32の内周面に圧接しており、パイロットボス14と嵌合孔32の内周面との間に軸心ズレを起こし得る隙間が生じない。
よって、トルクコンバータ10の自重により、軸心ズレが発生することを好適に抑えることができる。
この際、傾斜面144bが、パイロットボス14を嵌合孔32に嵌入する際のガイドとして機能するので、パイロットボス14の嵌合孔32の嵌入がよりスムーズに行えることになる。
この場合、その状態からパイロットボス14を無理に嵌合孔32に嵌入しようとすると、嵌合部142の一部に応力が集中することや、想定されていた作業荷重よりも大きい荷重がパイロットボス14に一時的に作用することがあり、かかる場合、作業荷重が、荷重の上限fmaxを超えて、嵌合部142の変形が塑性域での変形になってしまう虞がある。
実施の形態のように、大径部144の嵌合孔32側に傾斜面144bを設けることで、傾斜面144bが、パイロットボス14を嵌合孔32に嵌入するときのガイドとして機能して、嵌合孔32へのパイロットボス(嵌合部142)の嵌入をスムーズに行うことができるので、上記のような問題が発生する虞を好適に防止できる。
この復元力は、図4の(c)、(f)において矢印F2で示す方向に作用するので、大径部144の外周面144aは、嵌合孔32の内周面に圧接させられた状態となる。
そのため、従来のパイロットボスのように、軸方向から見たときに、パイロットボス14の外周と嵌合孔32の内周との間に、軸線X周りの周方向の広範囲に亘って隙間が形成されることが好適に防止されるので(図1の(c)、図8の(c)参照)、従来のパイロットボスの場合に生じていた軸心ズレの発生を抑えることができる。
これにより、従来のパイロットボスの場合に生じていた軸心ズレの発生を抑えることができる。
他の態様にかかる嵌合部142では、大径部144の外周面144a’が、軸線X1に対して所定角度θ傾斜しており、外周面144aの外径が、先端側から離れるにつれて縮径している。ここで、軸線X1は、軸線Xに対して平行な線分である。
そうすると、パイロットボス14が嵌合孔32に嵌入した状態で、パイロットボス14(大径部144)と嵌合孔32との接触面積をより広く取ることができるので、パイロットボス14の嵌合孔32との軸方向の位置ずれを生じにくくすることができる。
パイロットボス14の嵌合孔32との軸方向の位置ずれは、嵌合孔32の端部32pと嵌合部142との接触点の位置ずれとなり、トルコン荷重の作用点が軸方向に変化することになる。よって、例えば、パイロットボス14が嵌合孔32から外れる方向に位置ずれが発生すると、その分だけ、トルコン荷重によりパイロットボス14が変形しやすくなる虞がある。
10 トルクコンバータ
12 フロントカバー
13 リヤカバー
14 パイロットボス
15 ボス部材
20 ドライブプレート
21 連結部
22 開口
25 連結部
30 ドライブシャフト
31 嵌合部
32 嵌合孔
32p 端部
140 本体部
142 嵌合部
143 連結部
144 大径部
144a’ 外周面
144b 傾斜面
200 トルクコンバータ
201 フロントカバー
202 パイロットボス
205 ドライブシャフト
206 ドライブプレート
B1 ボルト
B2 ボルト
X 軸線
X1 軸線
Claims (3)
- トルクコンバータとエンジンのドライブシャフトとを連結する際に、ドライブシャフトの嵌合孔に嵌入されて、トルクコンバータとドライブシャフトの軸心合わせに用いられるトルクコンバータのパイロットボスであって、
前記パイロットボスでは、円筒形状の本体部の一端側に、前記本体部の内側と外側とを連通させる切欠きが形成されて、前記切欠きが形成された一端側が、前記嵌合孔に嵌入される嵌合部、他端側が、前記トルクコンバータとの連結部とされており、
前記切欠きは、前記本体部の前記一端から前記他端側に延びると共に前記本体部の周方向に所定間隔で複数設けられて、前記嵌合部を前記内側に弾性変形可能としており、
前記本体部の前記一端側では、前記本体部の周方向に所定間隔で設けられた切欠きの間が、前記嵌合部となっており、
前記嵌合部の各々では、前記他端側よりも大径の大径部が、前記一端に設けられており、
前記嵌合部の前記一端側を、前記大径部が前記嵌合孔に嵌入可能となる外径まで前記内側に変形させる荷重が、前記嵌合部の変形が前記弾性域での変形から塑性域での変形になるときの境界荷重よりも小さくなり、かつ
前記パイロットボスを前記嵌合孔に嵌入したあとにトルクコンバータの自重により前記嵌合部に作用する荷重が、前記嵌合部に変形を生じさせる最小の荷重未満となるように、
前記本体部の径方向における前記嵌合部の厚みと、前記本体部の前記周方向における前記切欠きの幅と、前記本体部の中心軸線方向における前記切り欠き長さを設定したことを特徴とするトルクコンバータのパイロットボス。 - 前記大径部には、前記一端に向かうにつれて縮径する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトルクコンバータのパイロットボス。
- 前記嵌合部の前記一端側を、前記大径部が前記嵌合孔に嵌入可能となる外径まで前記内側に変形させたときの前記嵌合部の変形が、前記パイロットボスを構成する材料の弾性域での変形となるように、前記嵌合孔に嵌入されていないときの前記大径部の外径と、前記嵌合孔の内径を設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトルクコンバータのパイロットボス。
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