以下、本発明の実施の形態の1つにおけるインナーロータ型ブラシレスモータ(以下、単にブラシレスモータ又はモータということがある。)について説明する。
本実施の形態において、インナーロータ型ブラシレスモータは、薄型(扁平型)で、2つのステータヨークの間にコイルが配置された構造を有するクローポール型のブラシレスモータである。モータは、小型なものであり、簡素な構成を有している。モータには、それを駆動するための駆動回路を有する配線用基板が、モータのモータケースに沿うようにして設けられており、小型化が図られている。
本実施の形態において、ロータにはウエイトが設けられている。すなわち、モータは、ロータを回転させることで振動力を発生させる、振動モータである。なお、モータは、振動モータに限られるものではない。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるインナーロータ型ブラシレスモータを示す分解斜視図である。
図1に示されるように、インナーロータ型ブラシレスモータ1は、大まかに、モータケース(以下、単にケースということがある。)2と、トッププレート8と、シャフト25を中心軸として回転可能なロータ10と、軸受(メタル)21と、上ステータヨーク30と、下ステータヨーク40と、コイル50と、配線用基板70と、粘着シート(粘着部材の一例)90とを備えている。ロータ10には、ロータ10の重心がその回転軸から偏心するように、ウエイト15が設けられている。モータ1は、ロータ10の回転に伴い振動する振動モータである。
ケース2、上ステータヨーク30、及び下ステータヨーク40は、例えば軟磁性材料を用いて形成されている。モータ1において、上ステータヨーク30と下ステータヨーク40とは一対のステータヨークを構成する。各ステータヨーク30,40には、絶縁皮膜が施されている。上ステータヨーク30と下ステータヨーク40との間には、コイル50が配置されている。なお、以下の説明において、上ステータヨーク30と下ステータヨーク40とのそれぞれを、ヨーク30、ヨーク40ということがある。
図1に示されるように、ヨーク30には、3つの極歯30a,30b,30cが設けられている。ヨーク40には、3つの極歯40a,40b,40cが設けられている。ヨーク30,40のそれぞれの極歯30a〜30c,40a〜40cは、互いに対面交差するように、ロータ10の回転中心に相当する位置を中心に、周状に並ぶように突設されている。
図2は、モータ1の側断面図である。
図2において示されている断面は、ロータ10の回転軸すなわちシャフト25の中心軸を通る平面である。
図1、図2を参照して、モータ1の各構成部材について説明する。
トッププレート8は、モータ1の上面を覆うように設けられており、ケース2の内部の各部材は、露出していない。
図2に示されるように、モータ1において、ロータ10、ヨーク30,40、及びコイル50などは、ケース2の内部に配置される。配線用基板70は、ケース2の底面に沿うようにしてモータ1の底部に配置されている。モータ1は、全体として、比較的薄く、平面視で(モータ1の上面(トッププレート8の外表面)に対面する位置から見て)円形の、コイン型に形成されている。
コイル50は、銅製の導線を巻回して円環形に構成された空芯コイルである。図2に示されるように、コイル50は、ヨーク30,40間に挟まれるようにして配置されている。コイル50は、複数の極歯30a〜30c,40a〜40cの外周に、環状に配置されている。
本実施の形態において、コイル50は、自己融着線である導線を用いて構成されている。
配線用基板70は、例えばプリント配線基板である。図1に示されるように、配線用基板70は、ケース2の底面すなわちモータ1の外周形状と略同じ円形の外周形状を有している。
配線用基板70の上面には、駆動用IC76、電子部品77、及び接続パターンが設けられている。駆動用IC76、電子部品77、及び接続パターンなどは、例えばコイル50に通電して、ロータ10をコイル50などに対して回転させる駆動回路を構成する。接続パターンには、2つのランド71,72が設けられている。ランド71,72は、それぞれ、ケース2の底面に対向するように、配線用基板70の上面に露出している。ランド71,72には、コイル50の巻き始めの巻回端部(巻き始め線)51、巻き終わりの巻回端部(巻き終わり線)52のそれぞれが接続される。
図1に示されるように、ケース2は、下面が覆われた椀形状を有している。ケース2の中央部には、円筒状に形成された保持部2cが設けられている。保持部2cには、円柱形状の軸受(メタル)21が圧入され、固定されている。軸受21は、例えばすべり軸受であり、シャフト25が貫通するようにして配置されている。また、軸受21の底面には、スラスト板27が配置されている。スラスト板27は、ケース2の軸受21と、配線用基板70の上面との間に配置されている。これにより、ロータ10がシャフト25を中心に回転可能に軸支される。
ケース2の底面の一部には、開口部4,5が形成されている。開口部4,5は、それぞれ、配線用基板70上のランド71,72に対応する位置に形成されている。このようにケース2に開口部4,5が形成されていることで、ケース2の底面に配線用基板70を重ねたとき、ランド71,72が開口部4,5を介してケース2の内部側に露出する。コイル50の2つの巻回端部51,52は、開口部4,5を介してランド71,72に接続される。
また、ケース2の底面の一部には、孔部7(図4に示す。)が形成されている。孔部7は、駆動用IC76、電子部品77に対応する位置に形成されている。ケース2に孔部7が形成されていることで、ケース2の底面に配線用基板70を重ねたとき、駆動用IC76や電子部品77などがケース2の底面に干渉しないように構成されている。これにより、配線用基板70をケース2により近づけることができ、モータ1の小型化、薄型化が可能となっている。
本実施の形態において、配線用基板70は、粘着シート90によりケース2に固定される。粘着シート90は、例えば、シート状の基材の両面に粘着剤などが配されたものであり、両面に粘着性を有するシート状である。
図3は、粘着シート90を示す平面図である。
図3に示されるように、粘着シート90は、配線用基板70や、ケース2の底面の外周形状と略同じ円形の外周形状を有している。粘着シート90は、配線用基板70の上面とケース2の底面との間に配されて用いられる。すなわち、配線用基板70とケース2とが粘着シート90を挟んで互いに圧着されることで、配線用基板70がケース2に固定される。
粘着シート90には、例えば4つの孔部91,92,95,96が設けられている。図1に示されるように、孔部91は、開口部4及びランド71に対応する位置に形成されている。孔部92は、開口部5及びランド72に対応する位置に形成されている。孔部95は、軸受21及びスラスト板27に対応する位置に形成されている。孔部96は、孔部7と、駆動用IC76及び電子部品77とに対応する位置に形成されている。これにより、粘着シート90を介してもなお、ケース2の内部から配線用基板70のランド71,72へアクセスできる。また、シャフト25が粘着シート90に触れることがなく、モータ1が適正に動作可能である。
図1に示されるように、ロータ10は、環状磁石11と、ロータスペーサ12と、ウエイト15と、シャフト25とを有している。
環状磁石11は、例えば、環状に連続して一体に形成された永久磁石であり、ロータスペーサ12の側周部12aに保持されている。環状磁石11は、例えば、複数の極歯(極歯30a〜30c,40a〜40c)に対応する複数の磁極(例えば6つの磁極)を有している。図2に示されるように、環状磁石11は、周状に配置されている極歯30a〜30c,40a〜40cに近接して対向するように、ロータ10の外周部分に配置されている。
ロータスペーサ12は、大まかに、下方に開口する椀形状を有している。図2に示されるように、ロータスペーサ12は、円筒状の側周部12aと、側周部12aの上部からロータ10の中央部にかけて略水平に形成された板状部12bとを有している。ロータスペーサ12の中央部には、保持孔部12cが形成されている。板状部12bの一部には、開口部12hが形成されている。板状部12bは、保持孔部12c及び開口部12hを除き、側周部12aを塞ぐように形成されている。
側周部12aは、ロータスペーサ12の外周をなし、環状磁石11の内面に面するように形成されている。環状磁石11は、ロータスペーサ12の側周部12aすなわちロータスペーサ12の外周に、その内周面が側周部12aに面するようにしてはめ込まれ、その状態でロータスペーサ12に接着されて固定されている。
保持孔部12cには、シャフト25の上端部が貫入している。ロータスペーサ12は、その中央部に、シャフト25を保持している。シャフト25は、保持孔部12cに貫入した状態で、ロータスペーサ12の上面すなわち板状部12bから下方に突出するように、ロータスペーサ12に固定されている。ロータ10は、シャフト25を回転軸として回転可能に、ケース2内に配置されている。
ロータスペーサ12は、例えば軟磁性材料を用いて形成されている。本実施の形態において、ロータスペーサ12は、例えば、プレス加工や板金加工などにより製造可能であるが、これに限られるものではない。また、硬磁性材料を用いて形成されていたり、これらと樹脂等を併せて用いて形成されていたりしてもよい。
ウエイト15は、例えば半円盤形状を有する錘である。図1に示されるように、ウエイト15は、側周部12a及び板状部12bで囲まれたロータスペーサ12の底面側に開口する空間のうち、ロータ10の中心部を除いて、底面視でその略半周部分を占めるような形状に形成されている。ウエイト15は、例えばタングステン合金など、比重が大きい金属を用いて形成されている。なお、ウエイト15の材質や形状はこれに限られるものではない。ウエイト15は、例えば、接着又は溶接などにより、ロータスペーサ12に固定されている。ウエイト15の体積、比重は比較的大きいので、ロータ10の重心の偏心量をより大きくすることができる。
図2に示されるように、ロータ10は、シャフト25が軸受21を貫通し、シャフト25の下端部がスラスト板27に接触するようにして、ケース2に配置されている。ロータ10がシャフト25を回転軸として回転するとき、シャフト25が軸受21に対して摺動する。このとき、ロータ10は、スラスト板27によりシャフト25の軸方向に支えられて、回転する。
図1に示されるように、ヨーク30とヨーク40とは、それぞれ、平板部(ヨークつば部)31,41を有している。平板部31,41は、それぞれ、平面視でケース2の内側壁面よりもわずかに小さい円板状の外周形状を有しており、ヨーク30とヨーク40とは、ケース2の内部に軽圧入で取り付けられている。これにより、ヨーク30と、ヨーク40と、ケース2とで、磁気回路が構成されている。
ヨーク30,40は、平板部31,41でコイル50を上下方向に挟むようにして重ねられている。ヨーク30,40は、極歯30a,30b,30cと極歯40a,40b,40cとが相対向するような向きで、重ねられている。このようにヨーク30,40が重ねられた状態で、極歯30a〜30c,40a〜40cは、上面視で、反時計回りに、極歯30a、極歯40a、極歯30b、極歯40b、極歯30c、極歯40cと周状に並ぶように配置されている。
各極歯30a〜30c,40a〜40cは、例えば、ヨーク30,40の平板部31,41から折り曲げられることで形成されている。すなわち、ヨーク30,40は、それぞれ、1つの板状部材から極歯30a〜30c,40a〜40cに相当する部位をプレス加工などにより折り曲げて形成することにより、他の部材を接合することなく、一体に成形されている。ヨーク30,40のうち極歯30a〜30c,40a〜40cが設けられた部位よりも内側の部位は空いており、ロータ10が配置されるスペースとなっている。これにより、上記の通り、ロータ10の環状磁石11は、極歯30a〜30c,40a〜40cに対向するように配置されている。
図2に示されるように、コイル50は、周状に並ぶ複数の極歯30a〜30c,40a〜40cの外周に配置されている。モータ1は、コイル50によりヨーク30,40が励磁され、極歯30a〜30cと極歯40a〜40cとが励磁されることで駆動される。すなわち、ロータ10は、コイル50及び極歯30a〜30c,40a〜40cに対して回転可能である。
図1などに示されるように、モータ1は、例えば次のような手順で一体に組み立てられている。すなわち、ケース2の内部に、ヨーク40、コイル50、ヨーク30を順に配置する。ケース2の底面には配線用基板70を配置して、コイル50の2つの巻回端部51,52を、配線用基板70のランド71,72に接続する。そして、ヨーク30,40の中央部にロータ10を配置し、モータ1の上面から、ケース2の内部をトッププレート8で覆う。なお、組立て手順は、これに限られるものではない。例えば、先に配線用基板70をケース2に固定してから、ケース2の内部に各部材を配置してもよい。
ここで、コイル50の巻回端部51,52は、以下のようにして、ケース2の内部から開口部4,5を経由して配線用基板70に配線されている。巻回端部51,52は、粘着シート90に付着することで配線用基板70に位置決めされた状態で、例えば溶接により、ランド71,72に接続されている。
図4は、配線用基板70が取り付けられた状態のケース2を示す平面図である。
図4に示されるように、本実施の形態において、粘着シート90の孔部91,92は、それぞれ、その全体が開口部4,5からケース2の内部側に露出し、かつ、開口部4,5よりも開口面積が小さくなるように形成されている。これにより、開口部4からは、粘着シート90のうち、孔部91の周縁部の近傍の部分が露出している(露出部91a)。同様に、開口部5からは、粘着シート90のうち、孔部92の周縁部の近傍の部分が露出している(露出部92a)。
図5は、コイル50の巻回端部51,52の配線構造を説明する斜視図である。
図5には、モータ1のうち、配線用基板70が固定されたケース2に、ヨーク40とコイル50とが取り付けられている状態が示されている。
図5に示されるように、開口部4,5から粘着シート90の露出部91a,92aがケース2の内部側に露出していることにより、巻回端部51,52は、ランド71,72に接続される前に、露出部91a,92aに付着した状態とされる。ここで「付着」とは、粘着シート90に引き離し可能にくっつくことと、粘着シート90に引き離し不可能にくっつくことのいずれであってもよい。
例えば、巻回端部51は、平面視でランド71のうち孔部91から露出する部分を横切るようにして、コイル50側から先端部側にかけて、開口部4の周辺に配線されている。このとき、孔部91の周囲の露出部91aは粘着性を有する部分であるので、巻回端部51を露出部91aに付着させることができる。巻回端部51は、ランド71の露出する部分を挟み、先端部側の付着部51aと、コイル50側(巻回端部51の根元側)の付着部51bとで、粘着シート90に付着している。すなわち、巻回端部51は、後述のようにランド71に接続される、ランド71上にある接続部分(接続部51c)を挟むようにして、先端部側とコイル50側との2点の付着部51a,51bにおいて、粘着シート90の露出部91aに付着している。
巻回端部52も、巻回端部51と同様に、後述のようにランド72に接続されるランド72上の部分(接続部52c)を挟むようにして、先端部側とコイル50側との2点の付着部52a,52bで、粘着シート90の露出部92aに付着している。すなわち、巻回端部52は、平面視でランド72のうち孔部92から露出する部分を横切るようにして、開口部5の周辺に配線される。そして、巻回端部52のうち、ランド72の露出する部分を挟み、先端部側の付着部52aと、コイル50側(巻回端部52の根元側)の付着部52bとで、粘着シート90の露出部92aに付着している。
このようにして巻回端部51,52のそれぞれが露出部91a,92aに付着している状態で、各巻回端部51,52のランド71,72への接続が行われる。
ここで、本実施の形態において、上述のようにコイル50は自己融着線を用いて構成されているところ、巻回端部51,52は、いったんランド71,72に熱融着された後、ランド71,72にレーザ溶接(レーザビーム溶接)により接続される。例えば、巻回端部51,52は、溶着こて(ヒータ)などを用いて、ランド71,72に押し付けられ、加熱される。これにより、自己融着線の融着皮膜を部分的に溶融させ、巻回端部51をランド71に、巻回端部52をランド72に、それぞれ熱融着できる。巻回端部51,52がランド71,72に熱融着された状態で、巻回端部51,52のランド71,72への融着部分をレーザ溶接により溶接する。これにより、巻回端部51は、付着部51a,51bに挟まれた接続部51cにおいて、ランド71に接続される。また、巻回端部52は、付着部52a,52bに挟まれた接続部52cにおいて、ランド72に接続される。なお、溶接は、レーザ溶接に限られず、他の方法により行われてもよい。
本実施の形態においては、上記のような配線構造が採用されているので、巻回端部51,52の位置を、粘着シート90を用いて位置決めしたうえで、確実にかつ容易に、巻回端部51,52をランド71,72に接続できる。また、ランド71,72への接続に備えて巻回端部51,52を位置決めするために、巻回端部51,52を絡げるための部材やピンなどを用いるような複雑な構造を用いる必要がない。配線用基板70をケース2に貼り付けるための粘着シート90を利用して、巻回端部51,52の位置決めを行うことができるので、部品点数が多くなることがない。したがって、モータ1の構成を簡素化することができ、モータ1の製造コストを低減することができる。また、巻回端部51,52を固定するための特別な構造を用いる必要がないので、モータ1の小型化、薄型化をより進めることができる。
本実施の形態においては、コイル50は、自己融着線を用いて構成されており、巻回端部51,52は、粘着シート90に一部が付着している状態でランド71,72に熱融着され、その後、ランド71,72に接続される。したがって、巻回端部51,52が単に粘着シート90に付着している場合と比較して、より確実にかつ容易に、巻回端部51,52をランド71,72に溶接できる。
巻回端部51,52のそれぞれは、粘着シート90により配線用基板70側に保持されている配線構造を有している。したがって、巻回端部51,52に引っ張りなどのストレスが加わっても、接続部51c,52cにそのストレスがかかりにくく、巻回端部51,52が断線しにくくなる。特に、本実施の形態においては、各巻回端部51,52が、接続部51c,52cのそれぞれを挟むように、2箇所の付着部51a,51b、付着部52a,52bで粘着シート90に付着している。したがって、より確実に、接続部51c,52cへのストレスの軽減効果が得られる。
ここで、例えばモータ1をリフロー方式で基板上などに実装できるものとする場合において、従来では、次のような問題があった。すなわち、このようなリフロー方式に対応するモータでは、巻回端部51,52と配線用基板70のランド71,72とは、溶接などの方法で接続されていることが望ましい。これは、例えばはんだ付けで巻回端部51,52とランド71,72との両者を接続した構造では、リフロー時にはんだが溶融し、両者の接続が不良となることがあるためである。しかしながら、溶接などの方法で両者を接続するためには、巻回端部51,52を配線用基板70に対して位置決めしておく必要があるところ、従来の配線構造では、モータ内のスペースの問題などにより、巻回端部51,52の位置決めができず溶接により接続することが困難な場合があった。
しかしながら、本実施の形態では、上述の通り、モータ1を小型に構成しつつ、かつ、巻回端部51,52をランド71,72に溶接により接続した構造を採用することができるので、モータ1を、リフロー方式に対応可能なものとして容易に構成することができる。換言すると、本実施の形態のような配線構造を用いることで、製造コストが低く、リフロー方式に対応可能なモータ1を、より小型化、薄型化することができる。
[変型例の説明]
モータ1は、1枚の粘着シート90を用いてケース2に配線用基板70が接続されているものに限られない。モータ1は、例えば、ケース2と配線用基板70とが対向する部分において、部分的に粘着部材が配置されていることで、ケース2に配線用基板70が固定された構造を有していてもよい。この場合であっても、ケース2の開口部4,5を介して粘着部材の一部がケース2の内部側に露出するように構成されていることで、モータ1の巻回端部51,52部分の配線構造を上述と同様に構成できる。
図6は、本実施の形態の一変型例に係るモータ1のコイル50の巻回端部51,52の配線構造を説明する斜視図である。
図6に示されるように、本変型例において、配線用基板70をケース2の底面に固定する粘着部材としては、両面に粘着性を有する複数の両面テープ191,192,193,194,…(以下、これらを総称して両面テープ190ということがある。)が用いられている。モータ1のその他の構成は、上述の実施の形態におけるそれと同一である。
各両面テープ190は、例えば、配線用基板70のうち、ランド71,72、駆動用IC76、及び電子部品77が設けられている部位や、軸受21に対応する中心部などを除く各部に、部分的に貼り付けられている。各両面テープ190が配線用基板70とケース2の底面とに貼り付くことで、配線用基板70がケース2に固定されている。
本変型例において、両面テープ191,192は、それぞれ、ランド71の周方向(ロータ10の回転方向)の端部に近接するように配置されている。すなわち、両面テープ191,192は、ランド71を挟むようにして、ランド71の両側部に配置されている。ここで、両面テープ191,192は、それぞれ、ランド71に近接する部分が平面視でケース2の開口部4からケース2の内部側に露出するようにして、配置されている。換言すると、各両面テープ191,192は、配線用基板70とケース2との間に挟まれている部位と、配線用基板70に貼り付けられているがケース2には貼り付けられていない露出部191a,192aとを有する。
コイル50の巻回端部51は、上記のようにしてケース2の内部側に露出する露出部191a,192aに付着された状態で、溶接などによりランド71に接続されている。すなわち、巻回端部51は、ランド71に接続されている接続部51cを挟み、先端側の付着部51aと、コイル50側の付着部51bとで配線用基板70側に固定されている。図6に示されているように、付着部51aは、両面テープ192に付着しており、付着部51bは、両面テープ191に付着している。
両面テープ191,192と同様に、両面テープ193,194は、ランド72を挟むようにして、ランド72の両側部に配置されている。各両面テープ193,194は、配線用基板70とケース2との間に挟まれている部位と、配線用基板70に貼り付けられているがケース2には貼り付けられていない露出部193a,194aとを有している。
巻回端部52は、露出部193a,194aに付着された状態で、溶接などによりランド72に接続されている。すなわち、巻回端部52は、ランド72に接続されている接続部52cを挟み、付着部52a,52bで配線用基板70側に固定されている。図6に示されているように、付着部52aは、両面テープ194に付着しており、付着部52bは、両面テープ193に付着している。
このように、本変型例では、各両面テープ190に、ケース2の内部側に露出する露出部191a〜194aが設けられており、この露出部191a〜194aに巻回端部51,52が付着することで、巻回端部51,52が位置決めされている。したがって、上述の実施の形態における効果と同様の効果が得られる。
また、本変型例では、専用に切り出された粘着シートなどを用いることなく、両面テープ190が用いられている。したがって、モータ1の部品のコストを低く抑えることができる。さらにまた、各両面テープ190は、配線用基板70のランド71,72の近辺まで延長されており、その一部が露出部191a〜194aとされている。すなわち、配線用基板70をケース2に固定するための両面テープ190のほか、配線用に別の両面テープを用いることがない。したがって、モータ1の製造コストを低減することができる。
[その他]
上記の実施の形態のそれぞれの特徴部分を適宜組み合わせてブラシレスモータを構成してもよい。
巻回端部は、それぞれ、ランドを挟むようにした2箇所でなく、ランド近くの1箇所においてのみ粘着シートなどの粘着部材に付着するようにしてもよい。また、各巻回端部は、3箇所より多くの箇所に付着していてもよい。
巻回端部へのランドへの接続方法は、レーザ溶接に限られない。例えば、はんだ付けや、溶着により接続されていてもよい。例えば、リフロー方式に対応したモータにおいて、はんだ付けにより巻回端部をランドに接続するようにしてもよい。この場合、巻回端部は、粘着シートや両面テープに付着して位置決めされた状態ではんだ付けが行われるので、リフロー時にはんだが溶けても、巻回端部の位置は、位置決めされたままで保たれる。したがって、巻回端部とランドとの接続が外れにくくなる。また、コイルは、自己融着線を用いて構成されたものに限られない。コイルが自己融着線を用いたものでなくても、巻回端部の位置が位置決めされることにより、巻回端部とランドとを確実にかつ容易に接続することができる。コイルが、自己融着線ではない導線を用いて構成されたものであっても、レーザ溶接や、半田付けや、溶着などの接続方法のいずれでも採用することができ、接続を確実にかつ容易に行うことができる。
粘着シートに設けられている孔部の開口面積は、モータケースの開口部の開口面積より大きくてもよい。例えば、孔部が開口部の位置とは若干ずれた位置に形成されていることにより、開口部から粘着シートの上面の一部が露出し、コイルの巻回端部が付着可能な露出部となるようにしてもよい。
粘着部材は、シート状のものに限られない。例えばゲル状の粘着剤など、液体の粘着部材を用いてもよい。この場合、例えばゲル状の粘着剤を用いてモータケースに配線用基板を固定する場合において、モータケースの開口部からモータケースの内部側に粘着剤を露出させ、露出した部分に巻回端部を付着させるようにしてもよい。
配線用基板は、駆動用ICなどの集積回路を有していないものであってもよい。また、配線用基板のランドは、必ずしもモータケースの開口部を介してモータケースの内部側に露出するように配置されていなくてもよい。また、コイルの巻回端部は、必ずしも配線用基板のランドに接続されていなくてもよい。例えば、配線用基板に配線用の端子などが設けられており、それに巻回端部が接続されるようにしてもよい。このような場合であっても、巻回端部が、いったん、開口部から露出した粘着シートなどの露出部に付着することで位置決め可能になるので、上述と同様の効果が得られる。
モータの磁極の数や極歯の数は上述に限られず、さらに多くてもよいし、これより少なくてもよい。モータは、モータケースが有底円筒状の丸形ものに限られず、角型のものであってもよい。
モータは、クローポール形のものに限られない。ロータの構造も、上述の実施の形態に限られるものではない。モータは、モータケースの内部に配置されたコイルでロータを回転駆動させる、インナーロータ型のブラシレスモータであればよい。本発明は、モータケースのうち開口部がある面に沿うように設けられた配線用基板に、開口部を経由してコイルの導線が接続されるように構成されたブラシレスモータに広く適用可能である。
モータは、振動モータでなくてもよく、ウエイトは設けられていなくてもよい。モータは、トッププレートやモータケースを貫通するシャフトを有し、駆動源として他の機器において利用されるようなものであってもよい。モータケースにシャフトが保持されており、ロータはそのシャフトを貫通する軸受を保持していてもよい。モータは、すべり軸受やワッシャに代えて、他の形式の軸受などを用いたものであってもよい。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。