以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1にかかるAD変換器の測定装置1の構成例を示す図である。本実施の形態にかかる測定装置1は、ノイズによる測定結果のばらつきを圧縮することにより、測定時間を増大させることなく、AD変換器の精度の高い測定を行うことができる。この測定結果を用いることにより、例えば、AD変換器の精度の高い誤差の算出及び補正を行うことができる。以下、具体的に説明する。
図1に示すAD変換器の測定装置1は、入力電圧生成部11と、測定及び計算部(測定部)12と、を備える。なお、図1には、被測定回路であるAD変換器2も示されている。
(AD変換器2)
本実施の形態にかかる測定装置1の説明の前に、まず、被測定回路であるAD変換器2の詳細について説明する。AD変換器2は、パイプライン型のAD変換器であって、入力電圧(アナログ値)Viに応じた出力値(デジタル値)Voを出力する。なお、本実施の形態では、AD変換器2が10ビット幅の出力値Voを出力する場合を例に説明する。
具体的には、AD変換器2は、10ビット幅に対応して10個の基本ブロック21_1〜21_10を有する。基本ブロック21_1の入力ノードN11には、AD変換器2の外部からの入力電圧(アナログ値)Viが供給される。また、基本ブロック21_2〜21_10の入力ノードN21〜N101には、それぞれ、前段の基本ブロック21_1〜21_9の出力ノードN12〜N92の電圧が供給される。
基本ブロック21_1〜21_10は、何れも同じ回路構成を有している。具体的には、基本ブロック21_1〜21_10は、それぞれ、増幅器AMP1〜AMP10と、比較器CMP1〜CMP10と、スイッチ素子SW1〜SW10と、を有する。
基本ブロック21_1において、増幅器AMP1は、入力ノードN11に供給される入力電圧Viと、基準電圧Vref及び接地電圧GND(略0V)のいずれかと、の電位差を2倍に増幅して、出力ノードN12に対して出力する。
比較器CMP1は、入力ノードN11に供給される入力電圧Viと、基準電圧Vrefと、を比較して比較結果を出力する。例えば、入力電圧Viが基準電圧Vrefより低い場合(Vi<Vrefの場合)、比較器CMP1は、Hレベルの比較結果を出力する。一方、入力電圧Viが基準電圧Vref以上の場合(Vi≧Vrefの場合)、比較器CMP1は、Lレベルの比較結果を出力する。この比較結果は、スイッチ素子SW1の切替制御端子に供給されるととともに、AD変換器2の外部出力端子を介して外部に出力される。なお、この比較結果は、AD変換器2の出力値(デジタル値)Voの最上位ビット(便宜上、第1ビットと称す)の論理値として出力される。
スイッチ素子SW1は、切替制御端子に供給される比較器CMP1の比較結果に基づいて、増幅器AMP1と、基準電圧端子Vref及び接地電圧端子GNDの何れか一方と、を選択的に接続する。なお、基準電圧端子Vrefとは、基準電圧Vrefの供給される端子のことである。また、接地電圧端子GNDとは、接地電圧GNDの供給される端子のことである。
例えば、比較器CMP1からHレベルの比較結果が出力された場合(即ち、Vi<Vrefの場合)、スイッチ素子SW1は、増幅器AMP1と接地電圧端子GNDとを接続する。それにより、増幅器AMP1は、入力電圧Viと接地電圧GNDとの電位差(Vi−GND=Vi)を2倍に増幅した電圧(2Vi)を出力ノードN12に対して出力する。
一方、比較器CMP1からLレベルの比較結果が出力された場合(即ち、Vi≧Vrefの場合)、スイッチ素子SW1は、増幅器AMP1と基準電圧端子Vrefとを接続する。それにより、増幅器AMP1は、入力電圧Viと基準電圧Vrefとの電位差(Vi−Vref)を2倍に増幅した電圧(2(Vi−Vref))を出力ノードN12に対して出力する。
同様にして、基本ブロック21_2〜21_10において、増幅器AMP2〜AMP10は、それぞれ、入力ノードN21〜N101に供給される電圧と、基準電圧Vref及び接地電圧GNDの何れか一方と、の電位差を2倍に増幅して、出力ノードN22〜N102に対して出力する。
比較器CMP2〜CMP10は、それぞれ、入力ノードN21〜N101に供給される電圧と、基準電圧Vrefと、を比較して比較結果を出力する。例えば、入力ノードN21〜N101の電圧が基準電圧Vrefより低い場合、比較器CMP2〜CMP10は、それぞれ、Hレベルの比較結果を出力する。一方、入力ノードN22〜N102の電圧が基準電圧Vref以上の場合、比較器CMP2〜CMP10は、それぞれ、Lレベルの比較結果を出力する。これら比較結果は、それぞれ、スイッチ素子SW2〜SW10の切替制御端子に供給されるとともに、いずれも、AD変換器2の外部出力端子を介して外部に出力される。なお、比較器CMP2〜CMP10から出力される比較結果は、それぞれ、AD変換器2の出力値(デジタル値)Voの第2〜第10ビット(上から2ビット目のビット〜10ビット目のビット)の論理値として出力される。
スイッチ素子SW2〜SW10は、それぞれ、切替制御端子に供給される比較器CMP2〜CMP10の比較結果に基づいて、増幅器AMP2〜AMP10と、基準電圧端子Vref及び接地電圧端子GNDの何れか一方と、を選択的に接続する。
例えば、比較器CMP2〜CMP10の比較結果がHレベルの場合、スイッチ素子SW2〜SW10は、それぞれ、増幅器AMP2〜AMP10と接地電圧端子GNDとを接続する。それにより、増幅器AMP2〜AMP10は、それぞれ、入力ノードN21〜N101の電圧と接地電圧GNDとの電位差を2倍に増幅した電圧を出力ノードN22〜N102に対して出力する。一方、比較器CMP2〜CMP10の比較結果がLレベルの場合、スイッチ素子SW2〜SW10は、それぞれ、増幅器AMP2〜AMP10と基準電圧端子Vrefとを接続する。それにより、増幅器AMP2〜AMP10は、それぞれ、入力ノードN21〜N101の電圧と基準電圧Vrefとの電位差を2倍に増幅した電圧を出力ノードN22〜N102に対して出力する。ここで各段が出力する2倍という物理量は、容量比もしくは抵抗比で生成するのが一般的であるが、これに限定しない。なお初段については1倍されてきたものと考える。
このようにして、被測定回路であるAD変換器2は、入力電圧(アナログ値)Viに応じた10ビット幅の出力値(デジタル値)Voを出力する。
(測定装置1)
次に、本実施の形態にかかる測定装置1の詳細について説明する。図1に示す測定装置1は、上記したように、入力電圧生成部11と、測定及び計算部12と、を備える。
入力電圧生成部11は、AD変換器2に供給するためのランプ波の入力電圧Viを生成する部である。入力電圧生成部11は、例えば、内部にDA変換器を有し、当該DA変換器にデジタル信号を供給することにより、線形的に電圧レベルが変化する入力電圧Viを生成する。なお、本実施の形態では、ランプ波の入力電圧Viのステップ幅が、AD変換器2の分解能(1LSB)の概略1/10である場合を例に説明する。
測定及び計算部12は、AD変換器2から出力された出力値(デジタル値)Voを測定し、その測定値に基づき、第1推定値や第2推定値(後述)を算出する部である。
測定及び計算部12は、例えば、演算処理装置(CPU)、データメモリ、図2に示すフローチャートに沿った処理を実行するためのプログラムを格納したインストラクションメモリ、及び、入力電圧Viの電圧範囲(AD変換器2のフルスケール)やステップ幅を制御する制御部など、を有するマイクロコンピュータである。ただし、測定及び計算部12は、マイクロコンピュータである場合に限定されず、同様の機能を有する他の構成に適宜変更可能である。
なお、図1に示す測定装置1は、アナログ信号とデジタル信号が混在したミックストシグナルLSI用のテスタの一部として設けられても良い。
(フローチャート)
続いて、図1に示す測定装置1の動作を、図2を用いて説明する。図2は、図1に示す測定装置1の動作を示すフローチャートである。
まず、測定装置1は、被測定回路であるAD変換器2に対して、ランプ波の入力電圧Viを出力する。なお、上記したように、ランプ波の入力電圧Viのステップ幅は、AD変換器2の分解能(1LSB)の概略1/10である。そして、測定装置1は、入力電圧(アナログ値)Viに応じたAD変換器2の出力値(デジタル値)Voを測定する(図2のS101)。
次に、測定装置1は、同じ出力値を示す複数の入力電圧Viの値の平均値を算出する(図2のS102)。具体的には、測定装置1は、出力値"0000000001"(2進数)を示す複数の入力電圧Viの値の平均値(以下、第1推定値や入力平均値と称す場合がある)を算出する。同様にして、測定装置1は、出力値"0000000001"(2進数)〜"1111111110"(2進数)のそれぞれについて第1推定値を算出する。このようにして、測定装置1は、出力値Voの各値に対する入力電圧Viの第1推定値を算出する。
なお、本実施の形態では、同じ出力値を示す複数の入力電圧Viの値の平均値を第1推定値とする場合を例に説明しているが、これに限られない。例えば、発生頻度のみに着目するヒストグラム法を用いて第1推定値を算出しても良い。
次に、測定装置1は、第2推定値の算出を行う(図2のS103〜S111)。以下、順を追って説明する。
まず、測定装置1は、AD変換器2の出力値(デジタル値)Voを表す10ビットの中から、近似係数を求める対象のビット(計算対象ビット、計算対象物理量ビット)を一つ選択する(図2のS103)。例えば、測定装置1は、計算対象ビットとして、第1ビット(最上位ビット)を選択する。
そして、測定装置1は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、一対の出力値Voを選択する(図2のS104)。例えば、測定装置1は、一対の出力値Voとして、"0000000001"(2進数)及び"1000000001"(2進数)を選択する。そして、測定装置1は、この一対の出力値Voに対する一対の第1推定値の差電圧を算出する(図2のS105)。
測定装置1は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、出力値Voの対の全て(理想的には510対)を選択したか否かを確認する(図2のS106)。条件を満たす出力値Voの対の全てを選択し終えていない場合(図2のS106のNO)、測定装置1は、条件を満たす出力値Voの対のうちまだ選択していない一対の出力値Voを選択する(図2のS107)。例えば、測定装置1は、一対の出力値Voとして、"0000000010"(2進数)及び"10000000010"(2進数)を選択する。そして、測定装置1は、この一対の出力値Voに対する一対の第1推定値の差電圧を算出する(図2のS105)。
測定装置1は、計算対象ビットの値を固定した状態で、このような動作(図2のS104〜S107)を繰り返し、理想的には合計510対の第1推定値のそれぞれの差電圧を算出する。
そして、測定装置1は、条件を満たす出力値Voの対の全てを選択し終えると(図2のS106のYES)、例えば、一次近似等の回帰法を用いて、510対の第1推定値のそれぞれの差電圧の近似係数を算出する(図2のS108)。なお、本実施の形態では、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明する。
なお、このときの510対の第1推定値のそれぞれの差電圧は、何れも、AD変換器2の基本ブロック21_1に設けられた増幅器AMP1の入力電位差Vi及び(Vi−Vref)の差に相当する。この増幅器AMP1の入力電位差の差(Vi−(Vi−Vref))=Vrefは、第1ビット(最上位ビット)の重みに相当する。
また、測定装置1は、"0000000000"(2進数)や"1111111111"(2進数)を含む出力値Voの対を選択の対象外としている。それは、ゼロ及びフルスケールには、ゼロ以下及びフルスケール以上のデータが全て集約されるため、"0000000000"(2進数)や"1111111111"(2進数)に大きな誤差が含まれるからである。
続いて、測定装置1は、出力値(デジタル値)Voを表す10ビットの全てを計算対象ビットとして選択したか否かを確認する(図2のS109)。出力値Voを表す10ビットの全てを計算対象ビットとして選択し終えていない場合(図2のS109のNO)、測定装置1は、当該10ビットの中からまだ選択していないビットを計算対象ビットとして選択する(図2のS110)。例えば、測定装置1は、計算対象ビットとして、第2ビット(上から2ビット目のビット)を選択する。
そして、測定装置1は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、一対の出力値Voを選択する(図2のS104)。例えば、測定装置1は、一対の出力値Voとして、"0000000001"(2進数)及び"0100000001"(2進数)を選択する。そして、測定装置1は、この一対の出力値Voに対する一対の第1推定値の差電圧を算出する(図2のS105)。
測定装置1は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、出力値Voの対の全て(理想的には510対)を選択したか否かを確認する(図2のS106)。条件を満たす出力値Voの対の全てを選択し終えていない場合(図2のS106のNO)、測定装置1は、条件を満たす出力値Voの対のうちまだ選択していない一対の出力値Voを選択する(図2のS107)。例えば、測定装置1は、一対の出力値Voとして、"0000000010"(2進数)及び"01000000010"(2進数)を選択する。そして、測定装置1は、この一対の出力値Voに対する一対の第1推定値の差電圧を算出する(図2のS105)。
測定装置1は、計算対象ビットの値を固定した状態で、このような動作(図2のS104〜S107)を繰り返し、理想的には合計510対の第1推定値のそれぞれの差電圧を算出する。
そして、測定装置1は、条件を満たす出力値Voの対の全てを選択し終えると(図2のS106のYES)、例えば、一次近似等の回帰法を用いて、510対の第1推定値のそれぞれの差電圧の近似係数を算出する(図2のS108)。なお、本実施の形態では、上記したように、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明している。
なお、このときの510対の第1推定値のそれぞれの差電圧は、何れも、AD変換器2の基本ブロック21_2に設けられた増幅器AMP2の入力電位差Vi×2及びVi×2−Vrefの差等に相当する。初段入力に換算すると、Vi及びVi−Vref/2の差等に相当する。この増幅器AMP2の入力電位差の差(Vi×2−(Vi×2−Vref))=Vrefは、第2ビット(上から2ビット目のビット)の重みに相当する。
測定装置1は、このような動作(図2のS103〜S110)を繰り返すことにより、出力値Voを表す10ビットの各ビットについて、510対の第1推定値のそれぞれの差電圧の近似係数を算出する。それにより、各ビットにおける差電圧(510対の第1推定値のそれぞれの差電圧の略)の近似式(上記した近似係数の近似式)が確定する。換言すると、各ビットの重さを示す近似式が確定する。
なお、上記したように、出力値Voを表す10ビットの各ビットにおける近似係数の算出では、510対もの母体数の第1推定値が存在する。そのため、各ビットの近似係数に含まれるノイズによるばらつき成分の標準偏差は、510の平方根の逆数、即ち、約1/22に圧縮される。これにより、近似係数の確率的信頼度区間も約1/22に圧縮され、真値との誤差の範囲も約1/22に圧縮される。
測定装置1は、出力値(デジタル値)Voを表す10ビットの全てを計算対象ビットとして選択し終えると(図2のS109のYES)、各ビットにおける差電圧の近似式に基づき、出力値Voの各値("0000000000"(2進数)〜"1111111111"(2進数))に対する入力電圧Viの第2推定値を算出する(図2のS111)。
具体的には、測定装置1は、出力値Voを表す10ビットのうち論理値"1"を示すビットにおける差電圧の近似値(上記近似式から求まる値)をそれぞれ加算することにより、当該出力値Voに対する入力電圧Viの第2推定値を算出する。例えば、出力値Voが"0000000001"(2進数)の場合、測定装置1は、論理値"1"を示す第10ビット(最下位ビット)における差電圧の近似値を、第2推定値として算出する。また、例えば、出力値"010000001"(2進数)の場合、測定装置1は、論理値"1"を示す第2及び第10ビットの各ビットにおける差電圧の近似値をそれぞれ加算して第2推定値として算出する。このようにして、測定装置1は、出力値Voの各値("0000000000"(2進数)〜"1111111111"(2進数))に対する入力電圧Viの第2推定値を算出する。
このように、第2推定値は、各ビットにおける差電圧の近似値に基づいて算出される。そのため、第2推定値に含まれるノイズによるばらつき成分は、第1推定値に含まれるノイズによるばらつき成分と比較して、約1/22に圧縮される。また、真値との誤差の範囲も約1/22に圧縮される。測定装置1は、この第2推定値を算出することにより、AD変換器2の精度の高い測定結果を得たということができる。
ここで、AD変換器2の測定時間(図2のS101)は、従来と変わらない。また、測定後の第2推定値の算出時間は、測定時間と比較すると無視できるほどに短い。そのため、測定装置1は、測定時間を増大させることなく、AD変換器2の精度の高い測定を行うことができる。
なお、本実施の形態では、測定装置1が、全ての出力値Vo("0000000000"(2進数)〜"1111111111"(2進数))に対する入力電圧Viの第2推定値を算出する場合を例に説明したが、これに限られない。測定装置1は、誤差の大きな入力電圧Viの第2推定値のみを算出しても良い。なお、誤差の大きな入力電圧Viは、各ビットにおける差電圧の近似値に基づき抽出することが可能である。
また、本実施の形態において、出力値Voを表す10ビットの各ビットにおける近似係数の算出では、510対の第1推定値が存在する場合を例に説明したが、これに限られない。第1推定値の対は510対未満であっても良い。実際の測定では、ノイズの影響により、測定時間内に期待する出力値Voが出力されない場合(ミッシングコードが発生する場合)もある。この場合、第1推定値の対は、510対未満となる。
仮に、測定時間内に期待する出力値Voがほとんど出力されなかったために、第1推定値の対がわずか100対であったとする。その場合でも、近似係数に含まれるノイズによるばらつき成分の標準偏差は、100の平方根の逆数、即ち、1/10に圧縮される。つまり、ノイズ圧縮効果及び真値との誤差の範囲の圧縮効果は、十分にあるということができる。
また、例えば、ランプ波の入力電圧Viのステップ幅を、本例と比較して8倍にした場合、即ち、AD変換器2の分解能(1LSB)の概略8/10にした場合でも、第1推定値の対は、100対程度となる。そのため、測定装置1は、依然としてAD変換器2の精度の高い測定を行うことができる。さらに、この場合、測定装置1は、測定時間を1/8に短縮することもできる。つまり、測定装置1は、測定時間を短縮し、かつ、AD変換器2の精度の高い測定を行うことができる。具体的には、1024コードに対して10,000ポイント程度必要であった測定点数を、1/8の1250ポイント程度に削減することができる。
なお、上記のように、ランプ波の入力電圧Viのステップ幅は、適宜変更可能である。ノイズによるばらつきが小さければ、ステップ幅をさらに大きくして、測定時間をさらに短縮することも可能である。
その後、出力値Voに対する入力電圧Viの第2推定値は、積分直線性や微分直線性等の算出に供される。つまり、出力値Voに対する入力電圧Viの第2推定値は、フルスケールに対する誤差の算出に供される(図2のS112)。
これらの誤差は、主として、AD変換器2に設けられた比較器CMP1〜CMP10のオフセット及び増幅器AMP1〜AMP10のゲイン誤差等の物理量のばらつきに起因して発生する。これらの誤差を得るに当たり、測定装置1は、ノイズによるばらつき成分を圧縮することで、測定時間を増大させることなく、AD変換器2の精度の高い測定結果(第2推定値)を得ている。この測定結果を用いることにより、AD変換器2の精度の高い誤差の算出が可能となる。
このように、本実施の形態にかかる測定装置1は、ノイズによる測定結果のばらつきを圧縮することにより、測定時間を増大させることなく、AD変換器2の精度の高い測定を行うことができる。さらに、本実施の形態にかかる測定装置1は、ランプ波の入力電圧Viのステップ幅を大きくして測定点数を減らすことにより、測定時間を短縮し、かつ、十分に精度の高いAD変換器2の測定を行うことができる。この測定結果を用いることにより、AD変換器2の精度の高い誤差の算出が可能となる。
なお、本実施の形態では、測定装置1が、出力値Voを表す10ビットの各ビットについて、510対の第1推定値のそれぞれの差電圧の近似係数を算出する場合を例に説明したが、これに限られない。測定装置1は、近似係数に代えて平均値を算出しても良い。この場合、各ビットにおける差電圧の平均値に基づいて、出力値Voに対する入力電圧Viの第2推定値が算出される。
また、本実施の形態では、測定装置1が、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明したが、これに限られない。場合によっては、二次近似等を採用しても良い。
また、図2に示すフローチャートは、一例に過ぎない。したがって、例えば、フローの順序は、同様の結果を得ることができるのであれば、適宜変更可能である。例えば、一部又は全部の計算処理が並行して行われても良い。また、前記の通り、差を求める数は必ずしも全コード分である必要はなく、相当量の抜けがあっても効果が得られるので、適宜減らすことも可能である。
また、本実施の形態では、被測定回路であるAD変換器2が、パイプライン型のAD変換器である場合を例に説明したが、これに限られない。AD変換器2は、逐次比較型等のAD変換器であっても良い。
また、本実施の形態では、被測定回路であるAD変換器2が、10ビット幅の出力値(デジタル値)Voを出力する場合を例に説明したが、これに限られない。AD変換器2は、任意のビット幅の出力値(デジタル値)Voを出力するものであって良い。
また、被測定回路であるAD変換器2は、測定装置1によって算出された誤差を相殺するためのオフセット調整回路をさらに備えていても良い。このオフセット調整回路は、例えば、比較器CMP1〜CMP10に対して設けられ、算出された誤差に基づいて比較器CMP1〜CMP10のそれぞれのオフセット電圧を調整する。それにより、AD変換器2は、精度の高いAD変換を行うことが可能になる。
あるいは、被測定回路であるAD変換器2は、出力値(デジタル値)Voからデジタル的に誤差分を減算したり、出力値(デジタル値Vo)に対してデジタル的に誤差分の逆数を乗算したりすることにより、誤差を相殺することも可能である。それにより、AD変換器2は、精度の高いAD変換を行うことが可能になる。
上記2つのいずれの場合も、AD変換器2の製造工程において、測定装置1がAD変換器2の測定及び誤差の算出を行うことにより、AD変換器2は、誤差又はそれに基づく補正値を内部メモリ等に記憶させておくことができる。あるいは、AD変換器2は、予め誤差の算出及びその補正を行う機能を搭載しておくことにより、実動作時(例えば、電源投入時)に、自動的に誤差の算出及びその補正を行うことができる。
(本願発明と従来技術との比較(その1))
なお、非特許文献1に開示されたAD変換器の測定方法では、ノイズの影響により測定結果がばらついてしまい、精度の高い測定を行うことができなかった。そのため、従来では、AD変換器の測定点数を多くすることで、ばらつきを平均化し、測定精度を向上させていた。しかしながら、その場合、測定時間が増大してしまうという問題があった。
一方、本実施の形態にかかるAD変換器の測定装置1は、図2に示すフローチャート及びその説明に代表される処理を実行することで、ノイズによるばらつき成分を圧縮するため、測定時間を増大させることなく、精度の高い測定を行うことができる。さらに、本実施の形態にかかる測定装置1は、ランプ波の入力電圧Viのステップ幅を大きくして測定点数を減らすことにより、測定時間を短縮し、かつ、十分に精度の高い測定を行うことができる。
(本願発明と従来技術との比較(その2))
次に、本実施の形態にかかる測定装置1による測定結果(第2推定値)と、本発明の特徴を有しない従来の測定装置による測定結果(第1推定値に相当)と、の違いを、図8〜図13を用いて説明する。
図8は、1LSB間の測定点数が概略10ポイントである場合における積分非直線性誤差(INL)を示す図である。図9は、同じく1LSB間の測定点数が概略10ポイントである場合における微分非直線性誤差(DNL)を示す図である。図8及び図9では、いずれも、上段が本発明の測定装置による測定結果を示し、下段が従来の測定装置による測定結果を示す。なお、横軸は出力値Vo(コード)を示し、縦軸は誤差を示している。
図8及び図9から明らかなように、本発明の測定装置による測定結果の方が、従来の測定装置による測定結果よりも、ノイズによる測定結果のばらつきが圧縮(抑制)されている。つまり、本発明の測定装置は、従来よりも、精度の高い測定を行っている。
続いて、図10は、1LSB間の測定点数が概略2ポイントである場合における積分非直線性誤差を示す図である。図11は、同じく1LSB間の測定点数が概略2ポイントである場合における微分非直線性誤差を示す図である。図10及び図11では、いずれも、上段が本発明の測定装置による測定結果を示し、下段が従来の測定装置による測定結果を示す。なお、横軸は出力値Vo(コード)を示し、縦軸は誤差を示している。
図10及び図11から明らかなように、本発明の測定装置による測定結果の方が、従来の測定装置による測定結果よりも、ノイズによるばらつきが圧縮(抑制)されている。つまり、本発明の測定装置は、従来よりも、精度の高い測定を行っている。ここで、従来の測定装置による測定結果では、測定点数の減少により、ノイズによるばらつきが大きくなっている。一方、本発明の測定装置による測定結果では、測定点数が減少しているにもかかわらず、依然としてノイズによるばらつきが十分に圧縮されている。
図12の上段は、1LSB間の測定点数が概略2ポイントである場合における、本発明の測定装置による測定結果の積分非直線性誤差を示す図である(図10の上段に相当)。図12の下段は、1LSB間の測定点数が概略10ポイントである場合における、従来の測定装置による測定結果の積分非直線性誤差を示す図である(図8の下段に相当)。図13の上段は、1LSB間の測定点数が概略2ポイントである場合における、本発明の測定装置による測定結果の微分非直線性誤差を示す図である(図11の上段に相当)。図13の下段は、1LSB間の測定点数が概略10ポイントである場合における、従来の測定装置による測定結果の微分非直線性誤差を示す図である(図9の下段に相当)。
図12及び図13から明らかなように、本発明の測定装置による測定結果では、従来よりも測定点数が少ないにもかかわらず、従来よりもノイズによるばらつきが圧縮されている。つまり、本発明の測定装置は、測定時間を短縮しても、従来よりも精度の高い測定を行うことができることがわかる。
実施の形態2
図3は、本発明の実施の形態2にかかるDA変換器の測定装置3の構成例を示す図である。本実施の形態にかかる測定装置3は、ノイズによる測定結果のばらつきを圧縮することにより、測定時間を増大させることなく、DA変換器の精度の高い測定を行うことができる。この測定結果を用いることにより、例えば、DA変換器の精度の高い誤差の算出及び補正を行うことができる。以下、具体的に説明する。
図3に示すDA変換器の測定装置3は、デジタルパターン発生器(デジタル信号生成部)31と、AD変換器32と、測定及び計算部(測定部)33と、を備える。なお、図3には、被測定回路であるDA変換器4も示されている。
(DA変換器4)
本実施の形態にかかる測定装置3の説明の前に、まず、被測定回路であるDA変換器4の詳細について説明する。DA変換器4は、入力値(デジタル値)Viに応じた出力電圧(アナログ値)Voを出力する。なお、本実施の形態では、DA変換器4が6ビット幅の入力値(デジタル値)Viに応じた出力電圧(アナログ値)Voを出力する場合を例に説明する。
具体的には、DA変換器4は、定電流源部41と、スイッチ部42と、抵抗素子R1と、を有する。定電流源部41は、6ビット幅に対応して6個の定電流源(第1素子)I1_1〜I1_6を有する。定電流源I1_1〜I1_6には、それぞれ電流Ia〜Ifが流れる。なお、電流Ia=2Ib=4Ic=8Id=16Ie=32Ifが成り立つ。定電流源I1_1〜I1_6は、いわゆる、2進重み付けされた物理量(2進重み付け電流源)である。
スイッチ部42は、6ビット幅に対応して6個のスイッチ素子SW1_1〜SW1_6を有する。スイッチ素子SW1_1〜SW1_6は、それぞれ、定電流源I1_1〜I1_6と、DA変換器4の外部出力端子と、の間に直列に設けられる。また、スイッチ素子SW1_1〜SW1_6のそれぞれの切替制御端子には、外部からの入力値(デジタル値)ViがDA変換器4の外部入力端子を介して供給される。より具体的には、スイッチ素子SW1_1〜SW1_6のそれぞれの切替制御端子には、それぞれ、入力値Viの第1ビット(最上位ビット)〜第6ビット(最下位ビット)の値が供給される。
スイッチ素子SW1_1〜SW1_6は、切替制御端子にHレベルの信号が供給された場合にオンし、それぞれ、定電流源I1_1〜I1_6とDA変換器4の外部出力端子との間を導通させる。また、スイッチ素子SW1_1〜SW1_6は、切替制御端子にLレベルの信号が供給された場合にオフし、それぞれ、定電流源I1_1〜I1_6とDA変換器4の外部出力端子との間を非導通にさせる。
例えば、入力値Viが"000000"(2進数)の場合、スイッチ素子SW1_1〜SW1_6は、何れもオフする。そのため、定電流源I1_1〜I1_6からDA変換器4の外部出力端子に向けて電流は流れない。したがって、DA変換器4は、0Vの出力電圧Voを出力する。また、例えば、入力値Viが"000011"(2進数)の場合、スイッチ素子SW1_5,SW1_6がオンし、SW1_1〜SW1_4がオフする。そのため、定電流源I1_5,I1_6からDA変換器4の外部出力端子に向けて電流Ie,Ifの加算電流(3If)が流れる。したがって、DA変換器4は、加算電流3If及び抵抗素子R1に基づいて生成された電圧を、出力電圧Voとして外部に出力する。また、例えば、入力値Viが"111111"(2進数)の場合、スイッチ素子SW1_1〜SW1_6が何れもオンする。そのため、定電流源I1_1〜I1_6からDA変換器4の外部出力端子に向けて電流Ia〜Ifの加算電流(63If)が流れる。したがって、DA変換器4は、加算電流63If及び抵抗素子R1に基づいて生成された電圧を、出力電圧Voとして外部に出力する。
このようにして、被測定回路であるDA変換器4は、6ビット幅の入力値(デジタル値)Viに応じた出力電圧(アナログ値)Voを出力する。
(測定装置3)
次に、本実施の形態にかかる測定装置3の詳細について説明する。図3に示す測定装置3は、上記したように、デジタルパターン発生器(デジタル信号生成部)31と、AD変換器32と、測定及び計算部33と、を備える。
デジタルパターン発生器31は、被測定回路であるDA変換器4に供給するための入力値(デジタル値)Viを発生する部である。AD変換器32は、被測定回路であるDA変換器4の出力電圧(アナログ値)Voを取り込み、当該出力電圧Voに応じたデジタル信号を出力する。そして、測定及び計算部33は、AD変換器32のデジタル信号に基づき、DA変換器4の出力電圧Voの測定を行う。さらに、測定及び計算部33は、その測定値に基づき、推定値(後述)を算出する。
なお、デジタルパターン発生器31は、測定及び計算部33の内部に組み込まれても良い。つまり、測定及び計算部33自体が、入力値Viを作り出しても良い。また、AD変換器32は、測定及び計算部33の内部に組み込まれても良い。
測定及び計算部33は、例えば、演算処理装置(CPU)、データメモリ、図4に示すフローチャートに沿った処理を実行するためのプログラムを格納したインストラクションメモリ、及び、入力値Viの値等を制御する制御部など、を有するマイクロコンピュータである。ただし、測定及び計算部33は、マイクロコンピュータである場合に限定されず、同様の機能を有する他の構成に適宜変更可能である。
なお、図3に示す測定装置3は、アナログ信号とデジタル信号が混在したミックストシグナルLSI用のテスタの一部として設けられても良い。
(フローチャート)
続いて、図3に示す測定装置3の動作を、図4を用いて説明する。図4は、図3に示す測定装置3の動作を示すフローチャートである。
まず、測定装置3は、被測定回路であるDA変換器4に対して、ゼロからフルスケールまでのデジタルの入力値Viを順に出力する。具体的には、測定装置3は、"000000"(2進数)から"111111"(2進数)までのデジタルの入力値Viを順に出力する。そして、測定装置3は、入力値(デジタル値)Viに応じたDA変換器4の出力電圧(アナログ値)Voを測定する(図4のS201)。
次に、測定装置3は、DA変換器4の入力側の6ビットの中から、近似係数を求める対象のビット(計算対象ビット)を一つ選択する(図4のS202)。例えば、測定装置3は、計算対象ビットとして、第1ビット(最上位ビット)を選択する。
そして、測定装置3は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、一対の入力値Viを選択する(図4のS203)。例えば、測定装置3は、一対の入力値Viとして、"000000"(2進数)及び"100000"(2進数)を選択する。そして、測定装置3は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図4のS204)。
測定装置3は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、入力値Viの対の全て(32対)を選択したか否かを確認する(図4のS205)。条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えていない場合(図4のS205のNO)、測定装置3は、条件を満たす入力値Viの対のうちまだ選択していない一対の入力値Viを選択する(図4のS206)。例えば、測定装置3は、一対の入力値Viとして、"000001"(2進数)及び"100001"(2進数)を選択する。そして、測定装置3は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図4のS204)。
測定装置3は、計算対象ビットの値を固定した状態で、このような動作(図4のS203〜S206)を繰り返し、合計32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧を算出する。
そして、測定装置3は、条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えると(図4のS205のYES)、例えば、一次近似等の回帰法を用いて、32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する(図4のS207)。なお、本実施の形態では、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明する。
なお、このときの32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧は、何れも、第1ビット(最上位ビット)に対応する定電流源I1_1の電流Ia(=32If)と、抵抗素子R1と、によって生成される電圧の重みに相当する。
続いて、測定装置3は、DA変換器4の入力側の6ビットの全てを計算対象ビットとして選択したか否かを確認する(図4のS208)。DA変換器4の入力側の6ビットの全てを計算対象ビットとして選択し終えていない場合(図4のS208のNO)、測定装置3は、当該6ビットの中からまだ選択していないビットを計算対象ビットとして選択する(図4のS209)。例えば、測定装置3は、計算対象ビットとして、第2ビット(上から2ビット目のビット)を選択する。
そして、測定装置3は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、一対の入力値Viを選択する(図4のS203)。例えば、測定装置3は、一対の入力値Viとして、"000000"(2進数)及び"010000"(2進数)を選択する。そして、測定装置3は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図4のS204)。
測定装置3は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、入力値Viの対の全て(32対)を選択したか否かを確認する(図4のS205)。条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えていない場合(図4のS205のNO)、測定装置3は、条件を満たす入力値Viの対のうちまだ選択していない一対の入力値Viを選択する(図4のS206)。例えば、測定装置3は、一対の入力値Viとして、"000001"(2進数)及び"010001"(2進数)を選択する。そして、測定装置3は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図4のS204)。
測定装置3は、計算対象ビットの値を固定した状態で、このような動作(図4のS203〜S206)を繰り返し、合計32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧を算出する。
そして、測定装置3は、条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えると(図4のS205のYES)、例えば、一次近似等の回帰法を用いて、32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する(図4のS207)。なお、本実施の形態では、上記したように、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明している。
なお、このときの32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧は、何れも、第2ビット(上から2ビット目のビット)に対応する定電流I1_2の電流Ib(=16If)と、抵抗素子R1と、によって生成される電圧の重みに相当する。
測定装置3は、このような動作(図4のS202〜S209)を繰り返すことにより、DA変換器4の入力側の6ビットの各ビットについて、32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する。それにより、各ビットにおける差電圧(32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の略)の近似式(上記した近似係数の近似式)が確定する。換言すると、各ビットの重さを示す近似式が確定する。より詳しくは、物理量としての定電流源I1_1〜I1_6ごとに、抵抗素子R1に生成する電圧の近似式が確定する。
なお、上記したように、DA変換器4の入力側の6ビットの各ビットにおける近似係数の算出では、32対もの母体数の出力電圧Voが存在する。そのため、各ビットの近似係数に含まれるノイズによるばらつき成分の標準偏差は、32の平方根の逆数、即ち、約1/6に圧縮される。これにより、近似係数の確率的信頼度区間も約1/6に圧縮され、真値との誤差の範囲も約1/6に圧縮される。
測定装置3は、DA変換器4の入力側の6ビットの全てを計算対象ビットとして選択し終えると(図4のS208のYES)、各ビットにおける差電圧の近似式に基づき、各入力値("000000"(2進数)〜"111111"(2進数))に応じた出力電圧Voの出力推定値を算出する(図4のS210)。
具体的には、測定装置3は、入力値Viを表す6ビットのうち論理値"1"を示すビットにおける差電圧の近似値(上記近似式から求まる値)をそれぞれ加算することにより、当該入力値Viに応じた出力電圧Voの出力推定値を算出する。例えば、入力値Viが"000001"(2進数)の場合、測定装置3は、論理値"1"を示す第6ビット(最下位ビット)における差電圧の近似値を、出力推定値として算出する。また、例えば、入力値Viが"010001"(2進数)の場合、測定装置3は、論理値"1"を示す第2ビット及び第6ビットの各ビットにおける差電圧の近似値をそれぞれ加算して出力推定値として算出する。このようにして、測定装置3は、各入力値("000000"(2進数)〜"111111"(2進数))に応じた出力電圧Voの出力推定値を算出する。
このように、出力推定値は、各ビットにおける差電圧の近似値に基づいて算出される。そのため、出力推定値に含まれるノイズによるばらつき成分は、実測した出力電圧Voに含まれるノイズによるばらつき成分と比較して、約1/6に圧縮される。また、真値との誤差の範囲も約1/6に圧縮される。測定装置3は、この出力推定値を算出することにより、DA変換器4の精度の高い測定結果を得たということができる。
ここで、DA変換器4の測定時間(図4のS201)は、従来と変わらない。また、測定後の出力推定値の算出時間は、測定時間と比較すると無視できるほどに短い。そのため、測定装置3は、測定時間を増大させることなく、DA変換器4の精度の高い測定結果を得ることができる。
なお、本実施の形態では、測定装置3が、全ての入力値("000000"(2進数)〜"111111"(2進数))に応じた出力電圧Voの出力推定値を算出する場合を例に説明したが、これに限られない。測定装置3は、誤差の大きな出力電圧Voの出力推定値のみを算出しても良い。なお、誤差の大きな出力電圧Voは、各ビットにおける差電圧の近似値に基づいて抽出することが可能である。
その後、各入力値Viに応じた出力電圧Voの出力推定値は、積分直線性や微分直線性等の算出に供される。つまり、各入力値Viに応じた出力電圧Voの出力推定値は、フルスケールに対する誤差の算出に供される(図4のS211)。
これらの誤差は、主として、DA変換器4に設けられた定電流源I1_1〜I1_6の電流値Ia〜If(物理量)のばらつきに起因して発生する。これらの誤差を得るに当たり、測定装置3は、ノイズによる測定結果のばらつき成分を圧縮することで、測定時間を増大させることなく、DA変換器4の精度の高い測定結果(出力推定値)を得ている。この測定結果を用いることにより、DA変換器4の精度の高い誤差の算出が可能となる。
このように、本実施の形態にかかる測定装置3は、ノイズによる測定結果のばらつき成分を圧縮することにより、測定時間を増大させることなく、DA変換器4の精度の高い測定を行うことができる。さらに、本実施の形態にかかる測定装置3は、入力値Viの変化幅を大きくして測定点数を減らすことにより、測定時間を短縮し、かつ、十分に精度の高いDA変換器4の測定を行うことができる。この測定結果を用いることにより、DA変換器4の精度の高い誤差の算出が可能となる。
なお、本実施の形態では、測定装置3が、DA変換器4の入力側の6ビットの各ビットについて、32対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する場合を例に説明したが、これに限られない。測定装置3は、近似係数に代えて平均値を算出しても良い。この場合、各ビットにおける差電圧の平均値に基づいて、入力値Viに応じた出力電圧Voの出力推定値が算出される。
また、本実施の形態では、測定装置3が、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明したが、これに限られない。場合によっては、二次近似等を採用しても良い。
また、図4に示すフローチャートは、一例に過ぎない。したがって、例えば、フローの順序は、同様の結果を得ることができるのであれば、適宜変更可能である。
また、本実施の形態では、被測定回路であるDA変換器4が、6ビット幅の入力値(デジタル値)Viに応じた出力電圧(アナログ値)Voを出力する場合を例に説明したが、これに限られない。DA変換器4は、任意のビット幅の入力値Viに応じた出力電圧Voを出力するものであって良い。
また、被測定回路であるDA変換器4は、測定装置3によって算出された誤差を相殺するための誤差補正用電流源をさらに備えていても良い。この誤差補正用電流源は、算出された誤差に基づいて定電流源I1_1〜I1_6に流れる電流Ia〜Ifを調整する。それにより、DA変換器4は、精度の高いDA変換を行うことが可能になる。
あるいは、被測定回路であるDA変換器4は、入力値(デジタル値)からデジタル的に誤差分を減算したり、入力値(デジタル値)に対してデジタル的に誤差分の逆数を乗算したりすることにより、誤差を相殺することも可能である。それにより、DA変換器4は、精度の高いDA変換を行うことが可能になる。
上記2つのいずれの場合も、DA変換器4の製造工程において、測定装置3がDA変換器4の測定及び誤差の算出を行うことにより、DA変換器4は、誤差又はそれに基づく補正値を内部メモリ等に記憶させておくことができる。あるいは、DA変換器4は、予め誤差の算出及びその補正を行う機能を搭載しておくことにより、実動作時(例えば、電源投入時)に、自動的に誤差の算出及びその補正を行うことができる。
(本願発明と従来技術との比較)
なお、本発明の特徴を有しない従来の測定装置では、ノイズの影響により測定結果がばらついてしまい、精度の高い測定を行うことができなかった。そのため、従来では、繰り返し測定を行うことで、ばらつきを平均化し、測定精度を向上させていた。しかしながら、その場合、測定時間が増大してしまうという問題があった。
一方、本実施の形態にかかるDA変換器の測定装置3は、図4に示すフローチャート及びその説明に代表される処理を実行することで、ノイズによるばらつき成分を圧縮するため、繰り返し測定を行うことなく、精度の高い測定を行うことができる。
実施の形態3
図5は、本発明の実施の形態3にかかるDA変換器の測定装置5の構成例を示す図である。図3では、被測定回路であるDA変換器4が、2進重み付け電流源(定電流源I1_1〜I1_6)のみによって構成されていた。一方、図5では、被測定回路であるDA変換器6が、2進重み付け電流源(定電流源I2_1〜I2_6)及び単位電流源(定電流源I3_1〜I3_15)によって構成される。以下、具体的に説明する。
図5に示すDA変換器の測定装置5は、基本的には、図3に示す測定装置3と同じ回路構成である。測定装置5に設けられたデジタルパターン発生器(デジタル信号生成部)51、AD変換器52、及び、測定及び計算部(測定部)53は、それぞれ、測定装置3に設けられたデジタルパターン発生器31、AD変換器32、及び、測定及び計算部33に対応する。なお、図5には、被測定回路であるDA変換器6も示されている。
(DA変換器6)
本実施の形態にかかる測定装置5の説明の前に、まず、被測定回路であるDA変換器6の詳細について説明する。DA変換器6は、入力値(デジタル値)Viに応じた出力電圧(アナログ値)Voを出力する。なお、本実施の形態では、DA変換器6が10ビット幅の入力値(デジタル値)Viに応じた出力電圧(アナログ値)Voを出力する場合を例に説明する。
具体的には、DA変換器6は、第一の物理量としての定電流源部61と、スイッチ部62と、第二の物理量としての定電流源部63と、スイッチ部64と、デコーダ65と、抵抗素子R2と、を有する。なお、定電流源部61及びスイッチ部62は、入力値Viを表す10ビットのうち下位6ビット(第1ビット群)の値に応じた電流を生成する。一方、定電流源部63、スイッチ部64及びデコーダは、入力値Viを表す10ビットのうち上位4ビット(第2ビット群)の値に応じた電流を生成する。そして、DA変換器6は、これらを加算した電流と、抵抗素子R2と、に基づいて生成された電圧を、出力電圧(アナログ値)Voとして外部に出力する。
定電流源部61は、図3に示す定電流源部41と同じ回路構成である。定電流源部61に設けられた定電流源(第1素子、第1定電流源)I2_1〜I2_6は、それぞれ、定電流源部41に設けられた定電流源I1_1〜I1_6に対応する。したがって、定電流源I2_1〜I2_6には、それぞれ電流Ia〜Ifが流れる。なお、電流Ia=2Ib=4Ic=8Id=16Ie=32Ifが成り立つ。定電流源I2_1〜I2_6は、いわゆる、2進重み付け電流源である。
スイッチ部62は、図3に示すスイッチ部42と同じ回路構成である。スイッチ部62に設けられたスイッチ素子SW2_1〜SW2_6は、それぞれ、スイッチ部42に設けられたスイッチ素子SW1_1〜SW1_6に対応する。なお、スイッチ素子SW2_1〜SW2_6のそれぞれの切替制御端子には、それぞれ、入力値Viの第5ビット(上から5ビット目のビット)〜第10ビット(最下位ビット)の値が供給される。
スイッチ素子SW2_1〜SW2_6は、切替制御端子にHレベルの信号が供給された場合にオンし、それぞれ、定電流源I2_1〜I2_6とDA変換器6の外部出力端子との間を導通させる。また、スイッチ素子SW2_1〜SW2_6は、切替制御端子にLレベルの入力信号が供給された場合にオフし、それぞれ、定電流源I2_1〜I2_6とDA変換器6の外部出力端子との間を非導通にさせる。
例えば、入力値Viの第5〜第10ビットの値が"000000"(2進数)の場合、スイッチ素子SW2_1〜SW2_6は、何れもオフする。そのため、定電流源I2_1〜I2_6からDA変換器6の外部出力端子に向けて電流は流れない。また、例えば、入力値Viの第5〜第10ビットの値が"000011"(2進数)の場合、スイッチ素子SW2_5,SW2_6がオンし、SW2_1〜SW2_4がオフする。そのため、定電流源I2_5,I2_6からDA変換器6の外部出力端子に向けて電流Ie,Ifの加算電流(3If)が流れる。また、例えば、入力値Viの第5〜第10ビットの値が"111111"(2進数)の場合、スイッチ素子SW2_1〜SW2_6が何れもオンする。そのため、定電流源I2_1〜I2_6からDA変換器6の外部出力端子に向けて電流Ia〜Ifの加算電流(63If)が流れる。
定電流源部63は、15個の定電流源(第2素子、第2定電流源)I3_1〜I3_15を有する。定電流源I3_1〜I3_15には、何れも同じ電流値の電流Igが流れる。なお、電流Ig=2Iaが成り立つ。定電流源I3_1〜I3_15は、いわゆる、単位電流源である。
デコーダ65は、入力値Viの第1ビット(最上位ビット)〜第4ビット(上から4ビット目のビット)で表される2進数の値に相当する数の切替信号をHレベルにし、それ以外の残りの切替信号をLレベルにする。
例えば、入力値Viの第1〜第4ビットの値が"0000"(2進数)の場合、"0000"(2進数)の値に相当する数は"0"(10進数)であるため、デコーダ65は、切替信号CTL1〜CTL15を何れもLレベルにする。また、例えば、入力値Viの第1〜第4ビットの値が"0011"(2進数)の場合、"0011"(2進数)の値に相当する数は"3"(10進数)であるため、デコーダ65は、切替信号CTL1〜CTL3をHレベル、それ以外の切替信号CTL4〜CTL15をLレベルにする。また、例えば、入力値Viの第1〜第4ビットの値が"1111"(2進数)の場合、"1111"(2進数)の値に相当する数は"15"(10進数)であるため、デコーダ65は、切替信号CTL1〜CTL15を何れもHレベルにする。
スイッチ部64は、15個のスイッチ素子SW3_1〜SW3_15を有する。スイッチ素子SW3_1〜SW3_15は、それぞれ、定電流源I3_1〜I3_15と、DA変換器6の外部出力端子と、の間に直列に設けられる。また、スイッチ素子SW3_1〜SW3_15のそれぞれの切替制御端子には、それぞれ、デコーダ65からの切替信号CTL1〜CTL15が供給される。
スイッチ素子SW3_1〜SW3_15は、切替制御端子にHレベルの信号が供給された場合にオンし、それぞれ、定電流源I3_1〜I3_15とDA変換器6の外部出力端子との間を導通させる。また、スイッチ素子SW3_1〜SW3_15は、切替制御端子にLレベルの信号が供給された場合にオフし、それぞれ、定電流源I3_1〜I3_15とDA変換器6の外部出力端子との間を非導通にさせる。
例えば、入力値Viの第1〜第4ビットの値が"0000"(2進数)の場合、切替信号CTL1〜CTL15が何れもLレベルになるため、スイッチ素子SW3_1〜SW3_15は何れもオフする。そのため、定電流源I3_1〜I3_15からDA変換器6の外部出力端子に向けて電流は流れない。また、例えば、入力値Viが"0011"(2進数)の場合、切替信号CTL1〜CTL3がHレベル、切替信号CTL4〜CTL15がLレベルになるため、スイッチ素子SW3_1〜SW3_3はオンし、スイッチ素子SW3_4〜SW3_15はオフする。そのため、定電流源I3_1〜I3_3からDA変換器6の外部出力端子に向けて電流3Igが流れる。また、例えば、入力値Viの第1〜第4ビットの値が"1111"(2進数)の場合、切替信号CTL1〜CTL15が何れもHレベルになるため、スイッチ素子SW3_1〜SW3_15は何れもオンする。そのため、定電流源I3_1〜I3_15からDA変換器6の外部出力端子に向けて電流15Igが流れる。
そして、DA変換器6は、定電流源部61からスイッチ部62を介して流れる電流、及び、定電流源部63からスイッチ部64を介して流れる電流、を加算した電流と、抵抗素子R2と、に基づいて生成された電圧を、出力電圧Voとして外部出力端子を介して外部に出力する。
このようにして、被測定回路であるDA変換器4は、10ビット幅の入力値(デジタル値)Viに応じた出力電圧(アナログ値)Voを出力する。
(測定装置5)
図5に示す測定装置5では、図3に示す測定装置3と比較して、基本的な構成は同じであるが、被測定回路の測定方法が若干異なる。したがって、以下では、基本的な構成の説明は省略し、測定方法(動作)の説明のみを行う。
(フローチャート)
図5に示す測定装置5の動作を、図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7は、図5に示す測定装置5の動作を示すフローチャートである。
まず、測定装置5は、被測定回路であるDA変換器6に対して、ゼロからフルスケールまでのデジタルの入力値Viを順に出力する。具体的には、測定装置5は、"0000000000"(2進数)から"1111111111"(2進数)までのデジタルの入力値Viを順に出力する。そして、測定装置5は、入力値(デジタル値)Viに応じたDA変換器6の出力電圧(アナログ値)Voを測定する(図6のS301)。
次に、DA変換器6の下位6ビット(第5〜第10ビット)側の計算を開始する(S6のS302)。
測定装置5は、DA変換器6の入力側の下位6ビットの中から、近似係数を求める対象のビットを一つ選択する(図6のS303)。例えば、測定装置5は、計算対象ビットとして、第5ビット(上から5ビット目のビット)を選択する。
そして、測定装置5は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、一対の入力値Viを選択する(図6のS304)。例えば、測定装置5は、一対の入力値Viとして、"0000000000"(2進数)及び"0000100000"(2進数)を選択する。そして、測定装置5は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図6のS305)。
測定装置5は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、入力値Viの対の全て(512対)を選択したか否かを確認する(図6のS306)。条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えていない場合(図6のS306のNO)、測定装置5は、条件を満たす入力値Viの対のうちまだ選択していない一対の入力値Viを選択する(図6のS307)。例えば、測定装置5は、一対の入力値Viとして、"0000000001"(2進数)及び"0000100001"(2進数)を選択する。そして、測定装置5は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図6のS305)。
測定装置5は、計算対象ビットの値を固定した状態で、このような動作(図6のS304〜S307)を繰り返し、合計512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧を算出する。
そして、測定装置5は、条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えると(図6のS306のYES)、例えば、一次近似等の回帰法を用いて、512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する(図6のS308)。なお、本実施の形態では、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明する。
なお、このときの512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧は、何れも、第5ビットに対応する定電流源I2_1の電流Ia(=32If)と、抵抗素子R2と、によって生成される電圧の重みに相当する。
続いて、測定装置5は、DA変換器6の入力側の下位6ビットの全てを計算対象ビットとして選択したか否かを確認する(図6のS309)。DA変換器6の入力側の下位6ビットの全てを計算対象ビットとして選択し終えていない場合(図6のS309のNO)、測定装置5は、当該6ビットの中からまだ選択していないビットを計算対象ビットとして選択する(図6のS310)。例えば、測定装置5は、計算対象ビットとして、第6ビット(上から6ビット目のビット)を選択する。
そして、測定装置5は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、一対の入力値Viを選択する(図6のS304)。例えば、測定装置5は、一対の入力値Viとして、"0000000000"(2進数)及び"0000010000"(2進数)を選択する。そして、測定装置5は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図6のS305)。
測定装置5は、計算対象ビットの論理値のみ異なり、それ以外のビットの論理値が同じである、入力値Viの対の全て(512対)を選択したか否かを確認する(図6のS306)。条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えていない場合(図6のS306のNO)、測定装置5は、条件を満たす入力値Viの対のうちまだ選択していない一対の入力値Viを選択する(図6のS307)。例えば、測定装置5は、一対の入力値Viとして、"0000000001"(2進数)及び"0000010001"(2進数)を選択する。そして、測定装置5は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図6のS305)。
測定装置5は、計算対象ビットの値を固定した状態で、このような動作(図6のS304〜S307)を繰り返し、合計512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧を算出する。
そして、測定装置5は、条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えると(図6のS306のYES)、例えば、一次近似等の回帰法を用いて、512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する(図6のS308)。なお、本実施の形態では、上記したように、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明している。
なお、このときの512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧は、何れも、第6ビットに対応する定電流I2_2の電流Ib(=16If)と、抵抗素子R2と、によって生成される電圧の重みに相当する。
測定装置5は、このような動作(図6のS303〜S310)を繰り返すことにより、DA変換器6の入力側の下位6ビットの各ビットについて、512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する。それにより、下位6ビットの各ビットにおける差電圧(512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の略)の近似式(上記した近似係数の近似式)が確定する。換言すると、下位6ビットの各ビットの重さを示す近似式が確定する。より詳しくは、物理量としての定電流源I2_1〜I2_6ごとに、抵抗素子R2に生成する電圧の近似式が確定する。
なお、上記したように、下位6ビットの各ビットにおける近似係数の算出では、512対もの母体数の出力電圧Voが存在する。そのため、近似係数に含まれるノイズによるばらつき成分の標準偏差は、512の平方根の逆数、即ち、約1/22に圧縮される。これにより、近似係数の確率的信頼度区間も約1/22に圧縮され、真値との誤差の範囲も約1/22に圧縮される。
測定装置5は、DA変換器6の入力側の下位6ビットの全てを計算対象ビットとして選択し終えると(図6のS309のYES)、次に、DA変換器6の入力側の上位4ビット(第1〜第4ビット)についての計算を開始する(図7のS311)。
測定装置5は、入力値Viの上位4ビットの値の組み合わせ(組)のうち、差が"1"である値の組み合わせを計算対象値として一つ選択する(図7のS312)。例えば、測定装置5は、計算対象値の組み合わせとして、"0000"(2進数)及び"0001"(2進数)を選択する。
そして、測定装置5は、上位4ビットの値が計算対象値のそれぞれの値を示し、かつ、下位6ビットの値が同じである、一対の入力値Viを選択する(図7のS313)。例えば、測定装置5は、一対の入力値Viとして、"0000000000"(2進数)及び"0001000000"(2進数)を選択する。そして、測定装置5は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図7のS314)。
測定装置5は、上位4ビットの値が計算対象値のそれぞれの値を示し、かつ、下位6ビットの値が同じである、入力値Viの対の全て(64対)を選択したか否かを確認する(図7のS315)。条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えていない場合(図7のS315のNO)、測定装置5は、条件を満たす入力値Viの対のうちまだ選択していない一対の入力値Viを選択する(図7のS316)。例えば、測定装置5は、一対の入力値Viとして、"0000000001"(2進数)及び"0001000001"(2進数)を選択する。そして、測定装置5は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図7のS314)。
測定装置5は、上位4ビットの値を固定した状態で、下位6ビットの値を切り替えることにより、このような動作(図7のS313〜S316)を繰り返し、合計64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧を算出する。
そして、測定装置5は、条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えると(図7のS315のYES)、例えば、一次近似等の回帰法を用いて、64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する(図7のS317)。なお、本実施の形態では、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明する。
なお、このときの64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧は、何れも、上位4ビットが"0000"(2進数)から"0001"(2進数)に切り替わることにより流れ出す物理量としての定電流源I3_1の電流Igと、抵抗素子R2と、によって生成される電圧の重みに相当する。
続いて、測定装置5は、入力値Viの上位4ビットの値の組み合わせ(組)のうち、差が"1"である値の組み合わせの全てを計算対象値として選択したか否かを確認する(図7のS318)。全てを計算対象値として選択し終えていない場合(図7のS318のNO)、測定装置5は、入力値Viの上位4ビットの値の組み合わせのうち、まだ選択していない値の組み合わせを計算対象値として選択する(図7のS319)。例えば、測定装置5は、計算対象値の組み合わせとして、"0001"(2進数)及び"0010"(2進数)を選択する。
そして、測定装置5は、上位4ビットの値が計算対象値のそれぞれの値を示し、かつ、下位6ビットの値が同じである、一対の入力値Viを選択する(図7のS313)。例えば、測定装置5は、一対の入力値Viとして、"0001000000"(2進数)及び"0010000000"(2進数)を選択する。そして、測定装置5は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図7のS314)。
測定装置5は、上位4ビットの値が計算対象値のそれぞれの値を示し、かつ、下位6ビットの値が同じである、入力値Viの対の全て(64対)を選択したか否かを確認する(図7のS315)。条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えていない場合(図7のS315のNO)、測定装置5は、条件を満たす入力値Viの対のうちまだ選択していない一対の入力値Viを選択する(図7のS316)。例えば、測定装置5は、一対の入力値Viとして、"0001000001"(2進数)及び"0010000001"(2進数)を選択する。そして、測定装置5は、この一対の入力値Viに応じた一対の出力電圧Voの差電圧を算出する(図7のS314)。
測定装置5は、上位4ビットの値を固定した状態で、下位6ビットの値を切り替えることにより、このような動作(図7のS313〜S316)を繰り返し、合計64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧を算出する。
そして、測定装置5は、条件を満たす入力値Viの対の全てを選択し終えると(図7のS315のYES)、例えば、一次近似等の回帰法を用いて、64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する(図7のS317)。なお、本実施の形態では、上記したように、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明している。
なお、このときの64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧は、何れも、上位4ビットが"0001"(2進数)から"0010"(2進数)に切り替わることにより流れ出す物理量としての定電流源I3_2の電流Igと、抵抗素子R2と、によって生成される電圧の重みに相当する。
測定装置5は、このような動作(図7のS312〜S319)を繰り返すことにより、入力値Viの上位4ビットの値の各組み合わせについて、64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する。それにより、上位4ビットの値の各組み合わせにおける差電圧(64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の略)の近似式(上記した近似係数の近似式)が確定する。より詳しくは、物理量としての定電流源I3_1〜I3_15毎に、抵抗素子R2に生成する電圧の近似式が確定する。
なお、上記したように、上位4ビットの値の各組み合わせにおける近似係数の算出では、64対もの母体数の出力電圧Voが存在する。そのため、近似係数に含まれるノイズによるばらつき成分の標準偏差は、64の平方根の逆数、即ち、1/8に圧縮される。これにより、近似係数の確率的信頼度区間も1/8に圧縮され、真値との誤差の範囲も1/8に圧縮される。
測定装置5は、入力値Viの上位4ビットの値の組み合わせのうち、差が"1"である値の組み合わせの全てを計算対象値として選択し終えると(図7のS318のYES)、上位4ビットの値の各組み合わせにおける差電圧の近似式、及び、下位6ビットの各ビットにおける差電圧の近似式、に基づき、各入力値("0000000000"(2進数)〜"1111111111"(2進数))に応じた出力電圧Voの出力推定値を算出する(図7のS320)。
まず、測定装置5は、入力値Viの上位4ビットの各値に応じて生成される電圧の推定値を算出する。具体的には、測定装置5は、定電流源部63から流れる電流により生成される電圧の近似値(上記近似式から求まる値)をそれぞれ加算することにより、上位4ビットの各値に応じて生成される電圧の推定値を算出する。例えば、上位4ビットの値が"0001"(2進数)の場合、測定装置5は、定電流源I3_1から流れる電流Igにより生成される電圧の近似値を、推定値として算出する。また、例えば、上位4ビットの値が"0100"(2進数)の場合、測定装置5は、各定電流源I3_1〜I3_4から流れる電流Igにより生成される電圧の近似値をそれぞれ加算して、推定値として算出する。このようにして、測定装置5は、入力値Viの上位4ビットの各値("0000"(2進数)〜"1111"(2進数))に応じて生成される電圧の推定値を算出する。
なお、この場合、上位4ビットの値が大きくなるほど、加算される電圧の近似値の数が多くなるため、和の標準偏差はさらに圧縮される。
次に、測定装置5は、入力値Viの下位6ビットの各値に応じて生成される電圧の推定値を算出する。具体的には、測定装置5は、下位6ビットのうち論理値"1"を示すビットにおける差電圧の近似値(上記近似式から求まる値)をそれぞれ加算することにより、下位6ビットの値に応じて生成される電圧の推定値を算出する。例えば、下位6ビットの値が"000001"(2進数)の場合、測定装置5は、論理値"1"を示す第10ビット(最下位ビット)における差電圧の近似値を、推定値として算出する。また、例えば、下位6ビットの値が"010001"(2進数)の場合、測定装置5は、論理値"1"を示す第6ビット及び第10ビットの各ビットにおける差電圧の近似値をそれぞれ加算して推定値として算出する。このようにして、測定装置5は、入力値Viの下位6ビットの各値("000000"(2進数)〜"111111"(2進数))に応じて生成される電圧の推定値を算出する。
そして、測定装置5は、入力値Viの上位4ビットの各値に応じて生成される電圧の推定値と、入力値Viの下位6ビットの各値に応じて生成される電圧の推定値と、を加算することで、入力値Viの各値("0000000000"(2進数)〜"1111111111"(2進数))に応じた出力電圧Voの出力推定値を算出する。なお、上位4ビットの各値に応じて生成される電圧の推定値の算出、及び、入力値Viの下位6ビットの各値に応じて生成される電圧の推定値の算出の順序は、逆であっても、同時であっても良い。
なお、出力推定値に含まれるノイズによるばらつき成分は、実測した出力電圧Voに含まれるノイズによるばらつき成分と比較して、上位4ビットについては1/8に圧縮され、下位6ビットについては約1/22に圧縮される。また、真値との誤差の範囲も同程度に圧縮される。測定装置5は、この出力推定値を算出することにより、DA変換器6の精度の高い測定結果を得たということができる。
ここで、DA変換器6の測定時間(図6のS301)は、従来と変わらない。また、測定後の出力推定値の算出時間は、測定時間と比較すると無視できるほどに短い。そのため、測定装置5は、測定時間を増大させることなく、DA変換器6の精度の高い測定結果を得ることができる。
なお、本実施の形態では、測定装置5が、全ての入力値("0000000000"(2進数)〜"1111111111"(2進数))に応じた出力電圧Voの出力推定値を算出する場合を例に説明したが、これに限られない。測定装置5は、誤差の大きな出力電圧Voの出力推定値のみを算出しても良い。なお、誤差の大きな出力電圧Voは、各ビットにおける差電圧の近似値等に基づいて抽出することが可能である。
また、本実施の形態では、測定装置5が、全ての入力値Viを出力する場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、測定装置5は、下位6ビットの値として、0、3、6、・・・60、63(10進数)のみを出力しても良い。この場合、上位4ビットの値の各組み合わせにおける近似係数の算出では、出力電圧Voの対は64対未満(22対)となる。その場合でも、近似係数に含まれるノイズによるばらつき成分の標準偏差は、22の平方根の逆数、即ち、約1/5に圧縮される。つまり、ノイズ圧縮効果及び真値との誤差の範囲の圧縮効果は、十分にあるということができる。
要するに、測定装置5は、依然としてDA変換器6の精度の高い測定を行うことができる。さらに、この場合、測定装置5は、測定時間を1/3に短縮することもできる。つまり、測定装置5は、測定時間を短縮し、かつ、DA変換器6の精度の高い測定を行うことができる。
なお、上記のように、下位6ビットの値の変化幅は、適宜変更可能である。ノイズによるばらつきが小さければ、下位6ビットの値の変化幅をさらに大きくして、測定時間をさらに短縮することも可能である。
その後、各入力値Viに応じた出力電圧Voの出力推定値は、積分直線性や微分直線性等の算出に供される。つまり、各入力値Viに応じた出力電圧Voの出力推定値は、フルスケールに対する誤差の算出に供される(図7のS321)。
これらの誤差は、主として、DA変換器6に設けられた定電流源I2_1〜I2_6の電流値Ia〜If(物理量)のばらつき、及び、定電流源I3_1〜I3_15の電流値Ig(物理量)のばらつき、に起因して発生する。これらの誤差を得るに当たり、測定装置5は、ノイズによるばらつき成分を圧縮することで、測定時間を増大させることなく、DA変換器6の精度の高い測定結果(出力推定値)を得ている。この測定結果を用いることにより、DA変換器6の精度の高い誤差の算出が可能となる。
このように、本実施の形態にかかる測定装置5は、ノイズによるばらつき成分を圧縮することにより、測定時間を増大させることなく、DA変換器6の精度の高い測定を行うことができる。さらに、本実施の形態にかかる測定装置3は、入力値Viの下位6ビットの値の変化幅を大きくして測定点数を減らすことにより、測定時間を短縮し、かつ、十分に精度の高いDA変換器6の測定を行うことができる。この測定結果を用いることにより、DA変換器6の精度の高い誤差の算出が可能となる。
なお、本実施の形態では、測定装置5が、DA変換器6の入力側の下位6ビットの各ビットについて、512対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する場合を例に説明したが、これに限られない。測定装置5は、近似係数に代えて平均値を算出しても良い。同様に、本実施の形態では、測定装置5が、入力値Viの上位4ビットの値の各組み合わせについて、64対の出力電圧Voのそれぞれの差電圧の近似係数を算出する場合を例に説明したが、これに限られない。測定装置5は、近似係数に代えて平均値を算出しても良い。この場合、これらの平均値に基づいて、入力値Viに応じた出力電圧Voの出力推定値が算出される。
また、本実施の形態では、測定装置5が、回帰法として一次近似を採用した場合を例に説明したが、これに限られない。場合によっては、二次近似等を採用しても良い。
また、図6及び図7に示すフローチャートは、一例に過ぎない。したがって、例えば、フローの順序は、同様の結果を得ることができるのであれば、適宜変更可能である。例えば、上位4ビット側の計算(図6のS302〜S310)と、下位6ビット側の計算(図7のS311〜S319)と、は順序が入れ替わっても良い。また、例えば、一部又は全部の計算処理が並行して行われても良い。
また、本実施の形態では、被測定回路であるDA変換器6が、10ビット幅の入力値Viに応じた出力電圧Voを出力する場合を例に説明したが、これに限られない。DA変換器6は、任意のビット幅の入力値Viに応じた出力電圧Voを出力するものであっても良い。
また、本実施の形態では、被測定回路であるDA変換器6が、入力値Viの上位4ビットに対応して15個の単位電流源(I3_1〜I3_15)を有し、また、入力値Viの下位6ビットに対応して6個の2進重み付け電流源(I2_1〜I2_6)を有する場合を例に説明したが、これに限られない。単位電流源及び2進重み付け電流源の数は、DA変換器の仕様に応じて適宜変更可能である。いずれにせよ、DA変換器の出力を決める物理量(本実施例では各電流源)ごとに統計処理されれば良い(近似や平均を求めればよい)。
また、被測定回路であるDA変換器6は、測定装置5によって算出された誤差を相殺するための誤差補正用電流源をさらに備えていても良い。この誤差補正用電流源は、算出された誤差に基づいて定電流源I2_1〜I2_6に流れる電流Ia〜If及び定電流源I3_1〜I3_15に流れる電流Igを調整する。それにより、DA変換器4は、精度の高いDA変換を行うことが可能になる。
あるいは、被測定回路であるDA変換器6は、入力値(デジタル値)からデジタル的に誤差分を減算したり、入力値(デジタル値)に対してデジタル的に誤差分の逆数を乗算したりすることにより、誤差を相殺することも可能である。それにより、DA変換器6は、精度の高いDA変換を行うことが可能になる。
上記2つのいずれの場合も、DA変換器6の製造工程において、測定装置5がDA変換器6の測定及び誤差の算出を行うことにより、DA変換器6は、誤差又はそれに基づく補正値を内部メモリ等に記憶させておくことができる。あるいは、DA変換器6は、予め誤差の算出及びその補正を行う機能を搭載しておくことにより、実動作時(例えば、電源投入時)に、自動的に誤差の算出及びその補正を行うことができる。
(本願発明と従来技術との比較)
なお、本発明の特徴を有しない従来の測定装置では、ノイズの影響により測定結果がばらついてしまい、精度の高い測定を行うことができなかった。そのため、従来では、繰り返し測定を行うことで、ばらつきを平均化し、測定精度を向上させていた。しかしながら、その場合、測定時間が増大してしまうという問題があった。
一方、本実施の形態にかかるDA変換器の測定装置5は、図6及び図7に示すフローチャート及びその説明に代表される処理を実行することで、ノイズによるばらつき成分を圧縮するため、繰り返し測定を行うことなく、精度の高い測定を行うことができる。さらに、本実施の形態にかかる測定装置5は、測定点数を減らすことにより、測定時間を短縮し、かつ、十分に精度の高い測定を行うことができる。
以上のように、上記実施の形態1〜3にかかる測定装置は、ノイズによる測定結果ばらつきを圧縮することにより、測定時間を増大させることなく、データ変換器の精度の高い測定を行うことができる。この測定結果を用いることにより、データ変換器の精度の高い誤差の算出及び補正が可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態1〜3に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。実施の形態2、3では、被測定回路として、上位が単位電流源で構成され、下位が重み付け電流源で構成されたDA変換器が用いられた場合を例に説明したが、これに限られない。つまり、物理量が電流源である場合に限られない。上位が単位容量素子で構成され、下位が重み付け容量素子で構成された電荷再分配型のDA変換器が被測定回路として用いられても良い。つまり、物理量が容量素子であっても良い。
同様に、物理量が抵抗素子であるR−2R方式のDA変換器が被測定回路として用いられても良い。物理量が容量素子であるC−2C方式のDA変換器が被測定回路として用いられても良い。
また、上位が抵抗ストリング構成、下位も抵抗ストリング構成であるDA変換器が被測定回路として用いられても良い。この場合、図5に示すDA変換器6の上位4ビット側の計算で用いた手法を上位にも下位にも適用すればよい。
要するに、様々な種類の物理量(抵抗素子、容量素子、定電流源等)のDA変換器、及び、様々な変換方式のDA変換器が、被測定回路として用いられても良い。
上記したDA変換器の何れかを含む逐次比較型AD変換器が、被測定回路として用いられても良い。逐次比較型AD変換器の動作では、内蔵するDA変換器の出力を入力電圧にもっとも近い値になるように調整していくことで出力値(デジタル値)を求める。したがって、内蔵するDA変換器の持つ非直線性誤差がそのまま逐次比較型AD変換器の誤差となる。そのため、まず内蔵するDA変換器の各物理量の有無に応じた複数の差(差電圧)に注目して統計処理した結果を用いて推定値を求めることとなる。この場合、図1に示すAD変換器2に対して用いた手法、及び、図3に示すDA変換器4に対して用いた手法を、当該被測定回路に対して適用すればよい。なお、実施の形態1では、入力換算で見ると基準電圧Vrefを各段の増幅度(抵抗比や容量比)で割ったものが等価的な物理量と考えられる。こう考えることにより、実施の形態1とそれ以外の実施の形態とが組み合わされたAD変換器であっても、本発明が適用可能である。
2つの並列型DA変換器が組み合わされたサブレンジング型DA変換器等が、被測定回路として用いられても良い。この場合、図5に示すDA変換器6の上位4ビット側の計算で用いた手法を両者に適用すればよい。
2つのAD変換器を交互に動作させるインタリーブ型のAD変換器が、被測定回路として用いられても良い。この場合、図1に示すAD変換器2に対して用いた手法を両者に適用すればよい。
このように、本願発明の測定装置は、被測定回路であるデータ変換器の単位物理量に相当する差分を統計処理することで、ノイズによるばらつき成分を圧縮するものであり、極めて広く応用が可能である。