以下、本発明による電磁干渉検出装置、電磁干渉検出方法および電磁干渉検出プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による電磁干渉検出装置および電磁干渉検出方法について説明するが、かかる電磁干渉検出方法をコンピュータにより実行可能な電磁干渉検出プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、電磁干渉検出プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
[本発明の特徴]
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、簡単な構成で干渉波をより高精度に検出することが可能な電磁干渉検出装置、電磁干渉検出方法および電磁干渉検出プログラムを実現していることを主要な特徴としている。
すなわち、本発明による電磁干渉検出装置は、あらかじめ定めた所定周波数の通信信号を受信し、あらかじめ定めた所定時刻毎に通信信号の時間波形データをサンプリングする通信信号取得部と、該通信信号取得部における前記所定時間毎のサンプリングデータに基づいて、少なくとも1つの振幅特徴量を算出する特徴量算出部と、該特徴量算出部によって算出された前記所定時間毎の振幅特徴量に対して、複数の教師データとの類似度をそれぞれ算出する類似度算出部と、該類似度算出部によって算出された前記複数の教師データとの類似度の比較演算により電磁干渉検出用の干渉検出パラメータを導出する干渉検出パラメータ演算部と、該干渉検出パラメータ演算部によって導出された前記干渉検出パラメータをあらかじめ定めた所定の閾値と比較することにより、電磁干渉発生の有無を判定する電磁干渉判定部と、該電磁干渉判定部による判定結果を出力する出力部と、前記振幅特徴量、前記類似度、前記複数の教師データ、電磁干渉発生の判定結果を保存する記憶部と、を少なくとも備えていることを特徴としている。
ここで、前記干渉検出パラメータ演算部によって算出される前記干渉検出パラメータとは、干渉波の有無を判定するために、前記複数の振幅特徴量より演算されるパラメータである。前記干渉検出パラメータは、干渉波の有無によって変化するので、前記干渉検出パラメータに基づいて、電波干渉を検出することができる。
また、本発明による電磁干渉検出方法は、電磁波を識別する電磁波識別装置における電磁干渉の検出方法であって、あらかじめ定めた所定周波数の通信信号を受信し、あらかじめ定めた所定時刻毎に通信信号の時間波形データをサンプリングする通信信号取得ステップと、該通信信号取得ステップにおける前記所定時間毎のサンプリングデータに基づいて、少なくとも1つの振幅特徴量を算出する特徴量算出ステップと、該特徴量算出ステップによって算出された前記所定時間毎の振幅特徴量に対して、複数の教師データとの類似度をそれぞれ算出する類似度算出ステップと、該類似度算出ステップによって算出された前記複数の教師データとの類似度の比較演算により電磁干渉検出用の干渉検出パラメータを導出する比較演算ステップと、該比較演算ステップによって導出された前記干渉検出パラメータをあらかじめ定めた所定の閾値と比較することにより、電磁干渉発生の有無を判定する電磁干渉判定ステップと、該電磁干渉判定ステップによる判定結果を出力する出力ステップと、前記振幅特徴量、前記類似度、前記複数の教師データ、電磁干渉発生の判定結果を保存する記憶ステップと、を少なくとも有していることを特徴としている。
また、本発明による電磁干渉検出プログラムは、プログラムの実行が可能なコンピュータにおいて、あらかじめ定めた所定周波数の通信信号を受信し、あらかじめ定めた所定時刻毎に通信信号の時間波形データをサンプリングする通信信号取得機能と、該通信信号取得機能における前記所定時間毎のサンプリングデータに基づいて、少なくとも1つの振幅特徴量を算出する特徴量算出機能と、該特徴量算出機能によって算出された前記所定時間毎の振幅特徴量に対して、複数の教師データとの類似度をそれぞれ算出する類似度算出機能と、該類似度算出機能によって算出された前記複数の教師データとの類似度の比較演算により電磁干渉検出用の干渉検出パラメータを導出する比較演算機能と、該比較演算機能によって導出された前記干渉検出パラメータをあらかじめ定めた所定の閾値と比較することにより、電磁干渉発生の有無を判定する電磁干渉判定機能と、該電磁干渉判定機能による判定結果を出力する出力機能と、前記振幅特徴量、前記類似度、前記複数の教師データ、電磁干渉発生の判定結果を保存する記憶機能と、の各機能のうち1ないし複数の機能をプログラムとして実行させることを特徴としている。
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態として、有線もしくは無線による通信に対し、他の通信や電気、電磁ノイズによる通信妨害(干渉)が発生していることを判別することができる電磁干渉検出装置および電磁干渉検出の一例について説明する。以下の説明においては、無線通信における実施形態を取り上げて説明するが、有線通信においてもほぼ同様に実施することができることは言うまでもない。
図1は、本発明の第1実施形態における、電磁干渉検出装置の構成例を示すブロック構成図である。
図1に示す電磁干渉検出装置100は、受信電波波形取得部101と、特徴量算出部102と、記憶部103と、類似度算出部104と、干渉検出パラメータ演算部105と、電磁干渉判定部106と、出力部107とを少なくとも備えて構成されている。
受信電波波形取得部101は、あらかじめ定めた所定時刻毎に通信信号の時間波形データをサンプリングする部位であり、通信信号として電磁ノイズ等の外乱を含む電磁波(到来電波)を受信して、該電磁波の周波数と振幅値とを取得する。ここで用いられる受信機は、電磁波の周波数毎に振幅が測定可能な電圧計、電界強度計、スペクトラムアナライザ等である。当該受信電波波形取得部101によって取得された周波数毎の振幅データは、当該受信電波波形取得部101に内蔵の時計もしくは外部の時計からの時刻データ(すなわち該振幅データ取得時の時刻データ)と関連付けられている。さらに、当該受信電波波形取得部101は、あらかじめ定めた所定時間毎にサンプリング(受信した電磁波の周波数と振幅値との測定動作)を繰り返す機能を有している。
受信電波波形取得部101によって取得されて時刻データと関連付けられた取得データ(受信した電磁波の周波数と振幅値とのデータ)は、サンプリング毎に次段の特徴量算出部102に送られる。特徴量算出部102においては、受信電波波形取得部101によって取得された前記取得データ(受信した電磁波の周波数と振幅値とのデータ)の少なくとも1つの特徴量を算出する。ここで、特徴量とは、例えば、振幅確率分布(APD:Amplitude Probability Distribution)である。振幅確率分布(APD)は、前段の受信電波波形取得部101から送られてきた振幅値データと取得時刻データとを基にして、ある振幅値を超えた時間と、全測定時間との比を求めることによって得られる、振幅値を変数とした特徴量である。つまり、特徴量算出部102は、受信電波波形取得部101における所定時間毎のサンプリングデータに基づいて、振幅特徴量を算出する部位である。
ここで、特徴量算出部102において算出される特徴量は、振幅値によって大きく影響されるため、変調方式毎に異なるものとなる。また、同じ変調方式であっても、干渉すなわち通信妨害の度合いにより、その特徴量は変化が生じたものになる。
一例として、変調方式に例えばPSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)を用いた通信Aに対し、FSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)を用いた通信Bが妨害しているケースについて説明する。特徴量算出部102において計算される振幅確率分布(APD)は、通信A、通信Bそれぞれの単一波のみ受信している場合と、干渉が発生している場合とにおいては、図2に示すような違いが生じる。図2は、本発明の第1実施形態における、受信電波波形の振幅特徴量として振幅確率分布(APD)を算出した例を示す説明図であり、通信Aの被害波と通信Bの妨害波との間で電磁干渉が発生した場合の振幅確率分布(APD)の変化の様子を合成波として示している。なお、図2の横軸に信号の振幅(Power)を示し、縦軸に振幅確率(Propability)を示している。
つまり、図2に示すように、受信電波波形として、通信A、通信Bそれぞれの単一波の場合には、通信Aの被害波11および通信Bの妨害波12は、それぞれ、実線の曲線および破線の曲線に示すような振幅確率分布(APD)を示しているが、通信Bの妨害波12が通信Aの被害波11に対して電磁干渉している状態になった場合には、(通信A+通信B)の合成波13として、太い実線の曲線に示すような振幅確率分布(APD)に変化する。かくのごとき振幅確率分布(APD)の分布の違いを用いて、電磁干渉の有無を識別することができる。
また、振幅特徴量として、振幅確率分布(APD)の代わりに、または、振幅確率分布(APD)とともに、図3に示すような振幅ヒストグラムを用いても良い。図3は、本発明の第1実施形態における、受信電波波形の振幅特徴量として振幅ヒストグラムを算出した例を示す説明図であり、通信Aの被害波と通信Bの妨害波との間で電磁干渉が発生した場合の振幅確率分布(APD)の微分量の変化の様子を合成波として示している。なお、図2の横軸に信号の振幅(Power)を示し、縦軸に振幅確率密度(Propability density)を示している。
つまり、図3に示すように、受信電波波形として、通信A、通信Bそれぞれの単一波の場合には、通信Aの被害波11および通信Bの妨害波12は、それぞれ、実線の曲線および破線の曲線に示すような振幅確率密度分布を示しているが、通信Bの妨害波12が通信Aの被害波11に対して電磁干渉している状態になった場合には、(通信A+通信B)の合成波13として、太い実線の曲線に示すような振幅確率密度分布に変化する。図3に示すように、振幅ヒストグラムは、振幅確率分布(APD)の微分量を示す振幅確率密度分布であり、振幅の変動に対して、図2の場合の振幅確率分布(APD)に比し、より高感度な識別が可能になる。
なお、受信電波波形の特徴量は、振幅確率分布(APD)、振幅ヒストグラムのいずれかのみに限るものではなく、振幅確率分布(APD)や振幅ヒストグラムも含め、受信電波波形の平均値、標準偏差、歪度、尖度、ピーク係数、および、確率分布のモーメントなどの統計量のうち、少なくとも1つ以上のデータを測定日時とともに含んで構成するようにしても良い。
かくのごとき特徴量算出部102における算出処理により算出された受信電波波形毎の特徴量に関するデータは、記憶部103に格納される。記憶部103においては、特徴量算出部102によって算出された受信電波波形毎の特徴量を数値化して保存する。このとき、受信電波波形の特徴量には、通信信号の取得時の時刻データを含んでいるので、電磁干渉すなわち妨害信号が発生した時刻を知ることができる。
図4は、本発明の第1実施形態における、あらかじめ定めた所定時間毎の受信電波波形における特徴量を記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存する際のデータ構成例を示す表である。図4に示す例においては、記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存する受信電波波形の特徴量のデータが、一例として、振幅確率分布21、振幅ヒストグラム22、および測定日時23から構成されている場合を示している。
特徴量算出部102の次段に位置する類似度算出部104においては、特徴量算出部102によって算出されて記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存されている各受信電波波形の特徴量の変化を判別するための処理を行う。通信や電気、電磁ノイズによる通信妨害(干渉)が発生していることを判別するのに当たって、受信電波波形取得部101においては、あらかじめ定めた所定周期毎に妨害波監視のために受信電波波形の測定を繰り返して実施しており、その都度、特徴量算出部102において受信電波波形の特徴量が算出されて、図4に示したような形式で記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存されている。
かくのごとく、受信電波波形の特徴量を記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存している状態にある際に、類似度算出部104においては、電磁干渉の強度に変化が生じたことを判断する基準として、教師データが用いられる。教師データは、記憶部103にあらかじめ格納されている。つまり、類似度算出部104は、あらかじめ定めた所定時間毎の各受信電波波形の振幅特徴量に対して、複数の教師データとの類似度をそれぞれ算出する部位であり、受信電波波形取得部101が新たにサンプリングした所定時間毎の受信電波波形の特徴量と、記憶部103に記憶された複数の教師データとに基づいて、複数の教師データそれぞれに対する類似度を算出する。類似度算出部104からは、各教師データを相関元とする類似度があらかじめ定めた所定時間毎に対応付けて、出力され、逐次、記憶部103の類似度格納テーブル30に格納される。
ここで、類似度算出部104における算出処理は、統計処理分野において一般に用いられている手法を用いており、該算出処理として、ピアソンの相関係数を用いて、サンプリングした受信電波波形の特徴量と教師データとの2変数間の類似度を算出している。ここで、ピアソンの相関係数C(x,y)は、2組の数値からなるデータ列(x,y)={(xi,yi)}(i=0,1,…,n)が与えられたとき、次の式(1)によって定義される。
式(1)において、ピアソンの相関係数C(x,y)の数値が'1'に近いほど、両者の特徴量に類似性が高く、同じ電磁波成分に関連していると判断することができる。かくのごとき処理により、所定時間毎の各受信電波波形それぞれに対して、教師データの数と同数の相関係数を算出する。算出した相関係数のデータは、類似度を示すデータとして、記憶部103の類似度格納テーブル30に格納される。
図5は、本発明の第1実施形態における、あらかじめ定めた所定時間毎の受信電波波形における特徴量と複数の教師データとの類似度を記憶部103の類似度格納テーブル30に格納する際のデータ構成例を示す表である。図5に示す例においては、記憶部103の類似度格納テーブル30に格納する各受信電波波形の類似度のデータが、一例として、振幅確率分布31、振幅ヒストグラム32、および測定日時33から構成されており、教師データとして、教師データA、教師データBの2つを記憶部103にあらかじめ保存していた場合を示している。ここで、複数の教師データ(図5の例においては、教師データA、教師データBの2つの教師データ)としては、例えば、複数の異なる通信方式における理想的環境(雑音レベルの低い環境)において受信した受信電波波形の特徴量等が適宜選択されて、記憶部103にあらかじめ保存されている。
以下、図1の電磁干渉検出装置100のブロック構成図に示す当該電磁干渉検出装置100の構成に関する説明に復帰する。類似度算出部104の次段に位置する干渉検出パラメータ演算部105は、あらかじめ定めた所定時間毎の受信電波波形における特徴量それぞれごとに、類似度算出部によって算出された複数の教師データそれぞれとの類似度を示す各相関係数の比較演算を行うことにより、干渉検出パラメータを導出する部位である。干渉検出パラメータは、あらかじめ定めた所定時間毎の受信電波波形における特徴量それぞれごとに、複数の教師データとの類似度を示す複数の相関係数の数値を結合することによって求めることができる。ここで、複数の相関係数の数値を結合する手法は、例えば、和、積や差分等の四則演算が用いられる。なお、干渉検出パラメータは、あらかじめ定めた所定時間毎に対応付けて、出力され、逐次、記憶部103に保存される。
干渉検出パラメータ演算部105の次段に位置する電磁干渉判定部106は、干渉検出パラメータ演算部105によって導出されて記憶部103に保存された干渉検出パラメータの数値を、あらかじめ定めた所定の閾値と比較することにより、受信電波波形取得部101がサンプリングした所定時間毎の受信電波波形に関して、電磁干渉が発生しているか否かを判定する。電磁波に電磁干渉が発生している場合には、電磁干渉の影響によって、受信電波波形の特徴量である振幅確率分布(APD)や振幅ヒストグラムが変化しており、その結果が干渉検出パラメータの変化として表れる。
したがって、電磁干渉判定部106において、干渉検出パラメータ演算部105によって導出された干渉検出パラメータの数値とあらかじめ設定した所定の閾値との大小関係を比較することにより、電磁波に電磁干渉が発生しているか否かを判定することができる。なお、電磁干渉判定部106における判定結果(電磁干渉発生の有無を示す判定結果)は、あらかじめ定めた所定時間毎に対応付けて、出力され、逐次、記憶部103に保存される。
出力部107は、電磁干渉判定部106による判定結果(電磁干渉発生の有無を示す判定結果)を出力する部位であり、例えば、電磁干渉の有無を出力するディスプレイまたはプリンタ、あるいは、電磁干渉発生をユーザに伝えるアラーム等から構成されている。電磁干渉判定部106において電磁波に電磁干渉が発生していると判定した場合、出力部107は、電磁干渉が電磁波に発生している旨を出力してユーザに通報する。
次に、本発明の第1実施形態として図1の電磁干渉検出装置100の動作の一例について、図6のフローチャートを用いて説明する。図6は、本発明の第1実施形態における、電磁干渉検出装置100の動作の一例を示すフローチャートであり、フローチャートの各処理ボックスの右側には、それぞれの処理を行う電磁干渉検出装置100の部位を示す符号も併記している。
図6のフローチャートにおいて、まず、受信電波波形取得部101は、あらかじめ定めた所定周波数の通信信号を受信し、あらかじめ定めた所定時刻毎に通信信号の時間波形データをサンプリングすることにより、新たにサンプリングした受信電波信号の信号波形を取得して、特徴量算出部102に対して送付する(ステップSa1)。次に、特徴量算出部102は、受信電波波形取得部101から所定時間毎のサンプリングデータとして送付されてきた受信電波信号の信号波形それぞれに対して、逐次、少なくとも1つの特徴量(振幅特徴量)を算出して、記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存していく(ステップSa2)。
さらに、類似度算出部104は、記憶部103にあらかじめ保存されている複数の教師データ1,2,…,Nを取得して(ステップSa3)、特徴量算出部102において算出されて記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存されている所定時間毎の受信電波波形の特徴量との類似度1,2,…,Nをそれぞれ計算して、得られた複数の教師データ1,2,…,Nそれぞれと各受信電波波形の特徴量との類似度1,2,…,Nを記憶部103の類似度格納テーブル30に各受信電波波形毎に格納していく(ステップSa4)。
次いで、干渉検出パラメータ演算部105は、類似度算出部104によって複数の教師データ1,2,…,N毎に計算された類似度1,2,…,Nを用いて比較演算を行うことにより、干渉検出パラメータを各受信電波波形毎に導出して、記憶部103に保存する(ステップSa5)。次いで、電磁干渉判定部106は、干渉検出パラメータ演算部105によって導出された各受信電波波形毎の干渉検出パラメータと電磁干渉有無識別用としてあらかじめ定めた所定の閾値との大小関係により、電磁干渉の有無を判別する。具体的には、電磁干渉判定部106は、干渉検出パラメータが前記所定の閾値以下であるか否かを判定して、判定した結果を記憶部103に保存する(ステップSa6)。
電磁干渉判定部106は、干渉検出パラメータが前記所定の閾値以下であると判定した場合には(ステップSa6のYES)、出力部107に対してその旨を通知し、出力部107は、電磁干渉が電磁波に発生していることを出力する(ステップSa7)。一方、電磁干渉判定部106は、干渉検出パラメータが前記所定の閾値よりも大きいと判定した場合には(ステップSa6のNO)、電磁干渉が電磁波に発生していない正常な電波環境にあるものとして、電波環境の判定処理を終了する。
かくのごとき一連の動作により、電磁干渉検出装置100は、記憶部103にあらかじめ登録しておいた複数の教師データ1,2,…,Nに基づいて、電磁干渉が通信に発生しているか否かを判定することができる。
次に、図6のフローチャートのステップSa5において干渉検出パラメータ演算部105によって導出された干渉検出パラメータに基づいて、電磁干渉発生の有無を判定する原理について、具体例を用いて、さらに説明する。ここで、本具体例においては、変調方式の異なるデジタル通信同士の干渉モデルとして、被害波にπ/4シフトQPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相偏移変調)を用い、妨害波にGMSK(Gaussian Minimum Shift Keying:ガウス最小偏移変調)を用いた電波信号の電波環境にある場合を例に取って説明する。
図7は、本発明の第1実施形態における、干渉強度の大きさによる相関係数の変化の具体例を示す模式図であり、横軸に被害波の妨害波に対する強度比DUR(Desired to Undesired signal ratio)を示し、縦軸に相関係数(Correlation)を示しており、被害波と妨害波との合成波に関して、被害波と妨害波との強度比DURを変化させた場合の相関係数の分布を示している。ただし、相関元とした教師データについては、干渉のない理想的な被害波(π/4シフトQPSK)のみを受信した場合の受信電波波形の特徴量を用いている。また、強度比DURは、被害波の強度を固定とし、妨害波の強度を変化させることによって変化させている。妨害波の強度が強くなるほど、強度比DURは小さい値になっていく。
図7に示すように、強度比DURが小さくなる(つまり、干渉波の強度が増加する)につれて、相関係数は減少していく。したがって、干渉度の程度により決まる閾値をあらかじめ設定することによって、あらかじめ設定した閾値以下の小さい相関係数が算出された場合には、電磁干渉の発生を自動的に判定することができる。言い換えると、該相関係数として、干渉検出パラメータ演算部105によって導出された干渉検出パラメータが、あらかじめ設定した所定の閾値以下の小さい値になっていた場合には、電磁干渉の発生を自動的に判定することができる。
ここで、図7に示す相関係数の分布の場合においては、傾きが一定ではなく、例えば強度比DUR0dBから−10dBに向かって、妨害波の強度が増加しているにも関わらず、相関係数が大きくなる区間(DUR=0dB〜−10dB)が存在することが分かる。このような相関係数の分布に対して、電磁干渉有無判定用の閾値をあらかじめ設定して、電磁干渉の有無を判断する場合、図7におけるDUR=0dB〜−10dBの区間が、干渉検出性能を劣化させる要因になり得る。つまり、あらかじめ設定する前記閾値を、DUR=−10dBにおける相関係数のピークよりも低く設定した場合、妨害波による電磁干渉が強くなっている0dB以下の区間においても、相関係数(つまり干渉検出パラメータ)が前記閾値を上回ってしまい、電磁干渉がないものと誤って判断してしまうことになる。
したがって、図7に示す相関係数の分布の場合においても、電磁干渉の有無を精度高く検出するためには、前記閾値を、図7にハッチングを施して図示した閾値設定範囲内に限定して設定することが必要である。
なお、強度比DURに対して相関係数が図7に示すような分布を取る意味は、合成波が有する特徴の観点から説明することができる。すなわち、情報を持った2つの信号(被害波と妨害波)が混信した場合、情報量が最も少ない状態となるのは、2つの信号が同じ振幅強度で混信し、見分けが付かない状態になっている場合である。したがって、かかる場合には、混信電波は、元の信号の特徴が最も表れない自然雑音に近い振幅変動となる。そのため、理想的な被害波を教師データとした相関係数の分布は、DUR≒0dB近傍で変曲点を有することになる。
ここで、強度比DURが変曲点0dB以下の一定の区間(図7の場合、DUR=0dB〜−10dBの区間)においては、情報を有する妨害波の信号成分が顕著になるが、情報量の最も少ない状態と比較すると、特徴を有する分、相関係数は増加する。いわば、妨害波の特徴を、被害波の特徴と「誤解」している区間と看做すこともできる。さらに、変曲点0dB以下の一定の区間(図7の場合、DUR=0dB〜−10dBの区間)を超えて、妨害波の振幅がさらに強くなると、このような「誤解」が解けて、図7に示すように、再び、相関係数が減少するようになる。かくのごとき特性の傾向は、図7に示した本具体例のみに限らず、あらゆる変調方式の組み合わせにおいても、共通しており、前述の説明と同様に、閾値の設定如何によって、電磁干渉の検出性能を劣化させる可能性がある。
また、相関元とした教師データについては、図7に示したような、干渉のない理想的な被害波(π/4シフトQPSK)のみを受信した場合の受信電波波形の特徴量を用いる場合に限るものではない。教師データとして用いる特徴量として、例えば、被害波とは異なる変調方式の受信電波波形の特徴量を用いるようにしても良い。図8は、本発明の第1実施形態における、被害波とは異なる変調方式の教師データに対する干渉強度の大きさによる相関係数の変化の具体例を示す模式図であり、図7の場合と同様、横軸に被害波の妨害波に対する強度比DURを示し、縦軸に相関係数(Correlation)を示しており、被害波と妨害波との合成波において、被害波と妨害波との強度比DURを変化させた場合の相関係数(つまり干渉検出パラメータ)の分布を示している。
ここで、図8においては、被害波とは異なる変調方式の教師データにおける相関係数のDUR依存性を示しており、教師データとして、妨害波(GMSK)のみを受信した場合の受信電波波形の特徴量を用いた場合について菱形マークでポイントした曲線で示し、また、受信信号がない自然雑音(ノイズ)のみの場合の特徴量を用いた場合について三角マークでポイントした曲線で示している。なお、参考のために、図7に示した干渉のない理想的な被害波(π/4シフトQPSK)のみを受信した場合の受信電波波形の特徴量を教師データとして用いている場合も、四角マークでポイントした曲線として合わせて示している。
また、教師データは、単一の受信電波波形の特徴量のみである必要はなく、合成波を受信した場合の受信電波波形の特徴量を教師データとして用いるようにしても良い。図8には、被害波(π/4シフトQPSK)と妨害波(GMSK)との2つの電波信号の強度比DURが0dBであった場合の合成波を教師データとして用いている場合における相関係数のDUR依存性について、×マークでポイントした破線の曲線として示している。
図8に示すように、相関元となる教師データの種類によって、相関係数のDUR依存性は異なる分布を示すことになり、かくのごとき複数の教師データを基準として、干渉検出パラメータ演算部105においては、サンプリングした受信電波波形の特徴量に関する類似度を算出し、干渉検出パラメータを導出することになる。異なる複数の教師データとの相関係数を組み合わせて干渉検出パラメータを導出することにより、電磁干渉判定部106においては、より多くの教師データを用いて精度よく電磁干渉の有無の検出を判断することができる。
かくのごとき異なる複数の教師データとの相関係数を組み合わせて干渉検出パラメータを導出する場合、前述したように、各相関係数に対する四則演算が用いられる。例えば、図8に示したπ/4シフトQPSK(被害波)と自然雑音(ノイズ)との2つの受信電波波形の特徴量に関する振幅ヒストグラムを教師データとして用いた場合における各相関係数に対する四則演算処理として、2つの教師データそれぞれとの相関係数(類似度)の和および積を適用することによって、干渉検出パラメータを導出した場合について、図9に示している。
図9は、本発明の第1実施形態における干渉検出パラメータ演算部105の動作例として、複数の教師データとの相関係数の和および積によって導出した干渉検出パラメータの干渉強度の大きさによる変化の具体例を示す模式図であり、π/4シフトQPSK(被害波)と自然雑音(ノイズ)との2つの受信電波波形の特徴量に関する教師データそれぞれとの相関関数の和により導出した干渉検出パラメータのDUR依存性を菱形マークでポイントした曲線で示し、該2つの受信電波波形の特徴量に関する教師データそれぞれとの相関関数の積により導出した干渉検出パラメータのDUR依存性を四角マークでポイントした曲線で示している。
図9に示すように、2つの受信電波波形の特徴量に関する教師データそれぞれとの相関関数の和により導出した干渉検出パラメータについても、積により導出した干渉検出パラメータについても、いずれも、強度比DURに対して妨害波の強さに応じて(正の領域から負の領域に向かって)単調減少になる分布となっており、図8に示したような変曲点が存在していた分布の場合と比較して、強度比DUR<0の区間における電磁干渉の検出性能の劣化を抑制できることが分かる。さらに、電磁干渉の有無を判定するための閾値をあらかじめ設定する場合、該閾値の設定自由度を向上させることができるので、所望の強度比DURにおける電磁干渉の検出を行うことも可能になる。
また、干渉検出パラメータは、複数の教師データとの相関係数に適当な数値変換を施すことによって導出するようにしても良い。例えば、それぞれの相関係数(類似度)を指数とする冪乗変換(底10)を行った後に積算することにより、干渉検出パラメータを導出するようにしても良い。図10は、本発明の第1実施形態における干渉検出パラメータ演算部105の異なる動作例として、複数の教師データとの相関係数の冪乗変換によって導出した干渉検出パラメータの干渉強度の大きさによる変化の具体例を示す模式図であり、π/4シフトQPSK(被害波)と自然雑音(ノイズ)との2つの受信電波波形の特徴量に関する振幅ヒストグラムを教師データとして、2つの相関係数の冪乗変換後の積算によって導出した干渉検出パラメータのDUR依存性を三角マークでポイントした曲線で示している。
図10に示すように、複数の教師データとの相関係数の冪乗変換後の積算等の数値変換によって導出した干渉検出パラメータは、図9の場合よりも、相関係数の微小な変化が、より強調された分布になっていることが分かる。さらに、複数の教師データとの相関係数の冪乗変換後の積算等の数値変換を行う際に、すなわち、干渉検出パラメータを導出する際に、優先すべき教師データに対応する相関係数(類似度)に対して重み付けを施すようにしても良い。
次に、図11の模式図を用いて、電磁干渉検出装置100における検出性能について説明する。図11は、本発明の第1実施形態における電磁干渉検出装置100の電磁干渉の検出率および誤検出率と閾値との関係の一例を示す模式図であり、横軸に教師データとの類似度から導出した干渉検出パラメータに相当する相関関数を示し、縦軸に電磁干渉の検出率および誤検出率のヒストグラムを示しており、電磁干渉が存在している場合(ここでは、強度比DUR=10dBの場合)と、電磁干渉が存在していない場合(つまり被害波のみを受信している場合)の受信電波波形をそれぞれ複数回ずつ受信した場合の相関係数の度数分布を示している。
図11に示すように、電磁干渉が存在している場合('干渉あり'と記載した曲線)、電磁干渉が存在していない場合('干渉無し'と記載した曲線)のそれぞれについては、教師データとの類似度から導出した干渉検出パラメータに相当する相関係数の平均値、分散値を求めた結果により、正規分布として近似している。
ここで、電磁干渉の検出率および誤検出率を、それぞれ、次のように定義する。電磁干渉の検出率は、実際に干渉があり、かつ、電磁干渉検出装置100によって電磁干渉があると判断される事象が起こる割合である。図11に示すように、電磁干渉が実際にあった事象の数をM、そのうち、電磁干渉の有無を識別するためにあらかじめ設定した所定の閾値を越えて、電磁干渉がないと判定された事象の数をmとしたとき、電磁干渉の検出率は、{(M−m)/M}として与えられる。
一方、電磁干渉の誤検出率は、実際には干渉が無く、かつ、電磁干渉検出装置100によって電磁干渉があると判断される事象が起こる割合である。図11に示すように、電磁干渉が実際には無かった事象の数をN、そのうち、電磁干渉の有無を識別するためにあらかじめ設定した前記所定の閾値以下に下回り、電磁干渉があると判定された事象の数をnとすると、電磁干渉の誤検出率は(n/N)として与えられる。
電磁干渉検出装置100においては、電磁干渉の検出率{(M−m)/M}ができるだけ高く、かつ、電磁干渉の誤検出率(n/N)ができるだけ低いことが望ましい。図11に示すように、電磁干渉の有無識別用の前記所定の閾値を上げて、より大きな値にするほど、実際には電磁干渉があるにも関わらず、電磁干渉がないと判定される事象の数mが減少するので、電磁干渉の検出率は増加する。しかし、一方で、電磁干渉の有無識別用の前記所定の閾値がより大きな値にするほど、実際には電磁干渉がないにも関わらず、電磁干渉があると判定される事象の数nが増加し、電磁干渉の誤検出率も増加してしまう。
逆に、前記所定の閾値を下げて、より小さい値にするほど、電磁干渉の検出率は低下するものの、一方、電磁干渉の誤検出率を低下させることができる。かくのごとく、電磁干渉の検出率と誤検出率とは、トレードオフの関係にあることから、要求される性能に合わせて、電磁干渉の有無識別用の前記所定の閾値を適宜設定することが望ましい。しかし、先に述べたように、単一の教師データのみを用いている場合においては、精度の高い電磁干渉の検出性能を実現するための、電磁干渉の有無識別用の前記所定の閾値の設定範囲は限定される。したがって、単一の教師データのみを用いている場合には、必ずしも、所望な特性を確保することができるとは限らない。
次に、電磁干渉の誤検出率が十分に低い(1E−3)以下となるように前記所定の閾値を設定した場合における電磁干渉の検出率について評価した結果を説明する。図12(A)および図12(B)は、本発明の第1実施形態における、電磁干渉検出装置100の電磁干渉有無判定用の各閾値に対する検出率の干渉強度の大きさによる変化の一例を示す模式図であり、横軸には強度比DURを示し、縦軸には電磁干渉の検出率を示しており、電磁干渉有無判定用の前記所定の閾値を複数の異なる値に変化させた場合の電磁干渉の検出率のDUR依存性を示している。なお、図12(A)は、π/4シフトQPSK(被害波)の受信電波波形の特徴量を教師データとして用いた場合の電磁干渉の検出率のDUR依存性の様子を示し、図12(B)は、π/4シフトQPSKと自然雑音(ノイズ)との2つの受信電波波形の特徴量を教師データとして用い、それぞれの教師データとの類似度(相関係数)の和によって導出した干渉検出パラメータを用いた場合の電磁干渉の検出率のDUR依存性の様子を示している。
電磁干渉有無判定用の前記所定の閾値として異なる値を設定した場合の電磁干渉の検出率を評価するために、図12(A)においては、強度比DUR=20dBにおいて電磁干渉の検出率が80%になる前記所定の閾値の値0.977(図12(A)の丸マークのポイントで示す曲線)から、徐々に、該閾値の値を、0.950(図12(A)の縦棒マークのポイントで示す曲線)、0.900(図12(A)の三角マークのポイントで示す曲線)、0.850(図12(A)の四角マークのポイントで示す曲線)、0.800(図12(A)の×マークのポイントで示す曲線)へと減少させた際の、各DURにおける電磁干渉の検出率の劣化程度を示している。
同様に、図12(B)においても、強度比DUR=20dBにおいて電磁干渉の検出率が80%になる前記所定の閾値の値1.649(図12(B)の丸マークのポイントで示す曲線)から、徐々に、該閾値の値を、1.630(図12(B)の縦棒マークのポイントで示す曲線)、1.610(図12(B)の三角マークのポイントで示す曲線)、1.590(図12(B)の四角マークのポイントで示す曲線)、1.580(図12(B)の×マークのポイントで示す曲線)、1.570(図12(B)の*マークのポイントで示す曲線)へと減少させた際の、各DURにおける電磁干渉の検出率の劣化程度を示している。
図12(A)、図12(B)の双方に共通して、電磁干渉有無判定用の前記所定の閾値の値が減少していくのにしたがって、強度比DURが高い領域ほど、電磁干渉の検出率が劣化していく。さらに、図12(A)の単一の教師データを用いている場合においては、DUR<0dBの領域においても、前記所定の閾値の値が減少していくのにしたがって、電磁干渉の検出率がより激しく低下している様子を確認することができる。これに対して、図12(B)の複数の教師データを用いている場合においては、DUR<0dBの領域における電磁干渉の検出率の低下を抑制できることが分かる。かくのごとく、複数の教師データを用いて導出した干渉検出パラメータを適用することにより、電磁干渉の検出率を向上させることができる。
本発明の第1実施形態の電磁干渉検出装置100においては、到来電波波形の測定データに基づいて、複数の教師データと該到来電波波形との類似度から干渉検出パラメータを導出し、導出した干渉検出パラメータを所定の閾値と比較することによって、電磁干渉波の発生の有無を自動的に判定している。
この結果、電磁干渉が発生しているか否かをより精度良く判定(検出)することができ、電波監視システム等への適用に有効である。また、簡素な構成によって実現することができることから、携行用の不法電波探査設備への搭載にも適している。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態として、第1実施形態とは異なる電磁干渉検出装置および電磁干渉検出方法について説明する。本第2実施形態においては、図1の電磁干渉検出装置100の干渉検出パラメータ演算部105における干渉検出パラメータの導出手段として、第1実施形態の場合とは異なり、各教師データの類似度を、それぞれに対応してあらかじめ定めた所定の閾値と比較した結果として得られる論理値を干渉検出パラメータとして算出する。さらには、電磁干渉判定部106においても、第1実施形態の場合とは異なり、干渉検出パラメータ演算部105によって算出された該干渉検出パラメータを論理演算することによって電磁干渉の有無を判断する。
つまり、本第2実施形態における電磁干渉検出装置100のブロック構成は、第1実施形態の図1と同一の構成であるが、干渉検出パラメータ演算部105および電磁干渉判定部106の2つの部位における動作が、第1実施形態の場合とは異なっている。図13は、本発明の第2実施形態における、電磁干渉検出装置の動作の一例を示すフローチャートであり、図6のフローチャートの場合と同様、フローチャートの各処理ボックスの右側には、それぞれの処理を行う電磁干渉検出装置100の部位を示す符号も併記している。
図13のフローチャートにおいて、まず、受信電波波形取得部101は、図6のフローチャートのステップSa1の場合と同様、あらかじめ定めた所定周波数の通信信号を受信し、あらかじめ定めた所定時刻毎に通信信号の時間波形データをサンプリングすることにより、新たにサンプリングした受信電波信号の信号波形を取得して、特徴量算出部102に対して送付する(ステップSb1)。次に、特徴量算出部102も、図6のフローチャートのステップSa2の場合と同様、受信電波波形取得部101から所定時間毎のサンプリングデータとして送付されてきた受信電波信号の信号波形それぞれに対して、逐次、少なくとも1つの特徴量(振幅特徴量)を算出して、記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存していく(ステップSb2)。
さらに、類似度算出部104も、図6のフローチャートのステップSa3,Sa4の場合と同様、記憶部103にあらかじめ保存されている複数の教師データ1,2,…,Nを取得して(ステップSb3)、特徴量算出部102において算出されて記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存されている所定時間毎の受信電波波形の特徴量との類似度1,2,…,Nをそれぞれ計算して、得られた複数の教師データ1,2,…,Nそれぞれと各受信電波波形の特徴量との類似度1,2,…,Nを記憶部103の類似度格納テーブル30に各受信電波波形毎に格納していく(ステップSb4)。
次いで、干渉検出パラメータ演算部105は、図6のフローチャートのステップSa5の場合とは異なり、類似度算出部104によって複数の教師データ1,2,…,N毎に計算されたN個の類似度1,2,…,N毎にあらかじめ定めた所定の閾値との大小関係をそれぞれ比較して、それぞれの比較結果からN個の干渉検出パラメータ1,2,…,NとしてN個の論理値('1'/'0')を各受信電波波形毎に導出して、記憶部103に保存する(ステップSb5)。次いで、電磁干渉判定部106は、図6のフローチャートのステップSa6の場合とは異なり、干渉検出パラメータ演算部105によって導出された各受信電波波形毎のN個の干渉検出パラメータ1,2,…,Nの論理演算を行った結果に基づいて、電磁干渉の有無を判別する。具体的には、電磁干渉判定部106は、N個の干渉検出パラメータ1,2,…,Nの論理演算結果が'1'(もしくは'0')であるか否かを判定して、判定した結果を記憶部103に保存する(ステップSb6)。
電磁干渉判定部106は、N個の干渉検出パラメータ1,2,…,Nの論理演算結果が'1'(もしくは'0')であると判定した場合には(ステップSb6のYES)、出力部107に対してその旨を通知し、出力部107は、電磁干渉が電磁波に発生していることを出力する(ステップSb7)。一方、電磁干渉判定部106は、N個の干渉検出パラメータ1,2,…,Nの論理演算結果が'1'(もしくは'0')ではなく、'0'(もしくは'1')と判定した場合には(ステップSb6のNO)、電磁干渉が電磁波に発生していない正常な電波環境にあるものとして、電波環境の判定処理を終了する。
かくのごとき一連の動作により、第2実施形態の場合においても、第1実施形態の場合と同様、電磁干渉検出装置100は、記憶部103にあらかじめ登録しておいた複数の教師データ1,2,…,Nに基づいて、電磁干渉が通信に発生しているか否かを判定することができる。
なお、図13のフローチャートのステップSb6において電磁干渉判定部106によって実施されるN個の干渉検出パラメータ1,2,…,Nの論理演算は、例えば、OR演算やAND演算等を用いる。図14は、本発明の第2実施形態における、電磁干渉検出装置100の電磁干渉判別部106における干渉検出パラメータに対する論理演算の一例を示す真理値表であり、教師データA、教師データBの2つの教師データを用いていた場合について2つの干渉検出パラメータの論理演算に関する真理値表を示している。図14(A)は、2つの干渉検出パラメータの論理演算として論理和(OR)演算を用いている場合の真理値表を示し、図14(B)は、2つの干渉検出パラメータの論理演算として論理積(AND)演算を用いている場合の真理値表を示している。
図14(A)、図14(B)のいずれの場合についても、教師データA、教師データBの2つの教師データそれぞれに対応して閾値A、閾値Bの2つの閾値を所定の閾値としてあらかじめ設定している。そして、図14(A)の論理和(OR)演算を用いる場合には、ステップSb4において類似度算出部104によって所定時間毎の受信電波波形の特徴量と2つの教師データA,教師データBそれぞれとの類似度A,類似度Bを計算した結果が、それぞれに対応してあらかじめ設定した閾値A、閾値B以下であった場合には、ステップSb5において、干渉検出パラメータ演算部105によって、それぞれに対応する2つの干渉検出パラメータA,Bを、論理値'1'として導出し、ステップSb6においては、電磁干渉判定部106によって、該2つの干渉検出パラメータA,Bの論理和(OR)演算を施すことにより、該2つの干渉検出パラメータA,Bの少なくともいずれかが論理値'1'であった場合には、論理値'1'を出力し、図14(A)の論理和(OR)欄に示すような論理演算結果が得られる。
一方、図14(B)の論理積(AND)演算を用いる場合には、ステップSb4において類似度算出部104によって所定時間毎の受信電波波形の特徴量と2つの教師データA,教師データBそれぞれとの類似度A,類似度Bを計算した結果が、それぞれに対応してあらかじめ設定した閾値A、閾値B以上であった場合には、ステップSb5において、干渉検出パラメータ演算部105によって、それぞれに対応する2つの干渉検出パラメータA,Bを、論理値'1'として導出し、ステップSb6においては、電磁干渉判定部106によって、該2つの干渉検出パラメータA,Bの論理積(AND)演算を施すことにより、該2つの干渉検出パラメータA,Bの双方が論理値'1'であった場合にのみ、論理値'1'を出力し、図14(B)の論理積(AND)欄に示すような論理演算結果が得られる。
したがって、ステップSb6においては、電磁干渉判定部106は、図14(A)の論理和(OR)演算を用いる場合には、図14(A)の論理和(OR)欄に示す論理演算結果が'1'であった場合には、電波干渉が発生しているものと判断し、一方、図14(B)の論理積(AND)演算を用いる場合には、図14(B)の論理積(AND)欄に示す論理演算結果が'0'であった場合には、電波干渉が発生しているものと判断して、出力部107から、電磁干渉の発生の旨を出力するようにすれば良い。
第2実施形態の電磁干渉検出装置100における干渉検出パラメータ演算部105および電磁干渉判定部106の2つの部位における動作は、2つの教師データの場合のみならず、3つ以上の複数の教師データを用いる場合についても全く同様に動作することが可能である。かくのごとく、本第2実施形態においては、複数の教師データそれぞれに対応してあらかじめ設定した複数の閾値それぞれと比較した結果を用いているので、多角的な視点から、電磁干渉の発生の有無を判断することができ、第1実施形態と同様に、検出性能を改善することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態として、第1実施形態、第2実施形態とはさらに異なる電磁干渉検出装置および電磁干渉検出方法について説明する。本第3実施形態においては、図1の電磁干渉検出装置100の干渉検出パラメータ演算部105において導出される干渉検出パラメータとして、第1実施形態、第2実施形態の場合とは異なり、複数の各教師データの類似度と特徴量算出部102において特徴量として算出された所定時間毎の受信電波波形の振幅パラメータとによって演算した評価量を導入する場合を示している。
ここで、所定時間毎の受信電波波形の振幅パラメータは、受信電波波形を特徴付けるパラメータであり、該振幅パラメータとしては、例えば、振幅の最大値、平均値、実効値、尖頭値等の振幅情報を示す物理量、または、該物理量から導出される振幅強度に対応した定数等を用いる。而して、所定時間毎の受信電波波形を特徴付ける振幅パラメータが重み付け値となり、干渉検出パラメータをより有効な評価量として機能させることができるようになる。なお、干渉検出パラメータは、干渉検出パラメータ演算部105において、複数の各教師データに対する類似度と所定時間毎の受信電波波形の振幅パラメータとにより、第1実施形態の場合と同様に、四則演算、数値変換によって演算される。
つまり、本第3実施形態における電磁干渉検出装置100のブロック構成についても、第1実施形態の図1と同一の構成であるが、特徴量算出部102および干渉検出パラメータ演算部105の2つの部位における動作が、第1実施形態の場合とは異なっている。図15は、本発明の第3実施形態における、電磁干渉検出装置の動作の一例を示すフローチャートであり、図6のフローチャートの場合と同様、フローチャートの各処理ボックスの右側には、それぞれの処理を行う電磁干渉検出装置100の部位を示す符号も併記している。
図13のフローチャートにおいて、まず、受信電波波形取得部101は、図6のフローチャートのステップSa1の場合と同様、あらかじめ定めた所定周波数の通信信号を受信し、あらかじめ定めた所定時刻毎に通信信号の時間波形データをサンプリングすることにより、新たにサンプリングした受信電波信号の信号波形を取得して、特徴量算出部102に対して送付する(ステップSc1)。次に、特徴量算出部102は、図6のフローチャートのステップSa2の場合とは異なり、受信電波波形取得部101から所定時間毎のサンプリングデータとして送付されてきた受信電波信号の信号波形それぞれに対して、逐次、少なくとも1つの特徴量(振幅特徴量)の他に、さらに、受信電波信号の波形を特徴付けている振幅パラメータを算出して、記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存していく(ステップSc2)。
次に、類似度算出部104は、図6のフローチャートのステップSa3,Sa4の場合と同様、記憶部103にあらかじめ保存されている複数の教師データ1,2,…,Nを取得して(ステップSc3)、特徴量算出部102において算出されて記憶部103の特徴量保存テーブル20に保存されている所定時間毎の受信電波波形の特徴量との類似度1,2,…,Nをそれぞれ計算して、得られた複数の教師データ1,2,…,Nそれぞれと各受信電波波形の特徴量との類似度1,2,…,Nを記憶部103の類似度格納テーブル30に各受信電波波形毎に格納していく(ステップSc4)。
次いで、干渉検出パラメータ演算部105は、図6のフローチャートのステップSa5の場合とは異なり、類似度算出部104によって複数の教師データ1,2,…,N毎に計算されて記憶部103に保存されているN個の類似度1,2,…,Nと特徴量算出部102によって算出されて記憶部103に保存されている各受信電波波形毎の振幅パラメータとを用いて、干渉検出パラメータを各受信電波波形毎に導出して、記憶部103に保存する(ステップSc5)。次いで、電磁干渉判定部106は、図6のフローチャートのステップSa6の場合と同様、干渉検出パラメータ演算部105によって導出された各受信電波波形毎の干渉検出パラメータと電磁干渉有無識別用としてあらかじめ定めた所定の閾値との大小関係により、電磁干渉の有無を判別する。具体的には、電磁干渉判定部106は、干渉検出パラメータが前記所定の閾値以下であるか否かを判定して、判定した結果を記憶部103に保存する(ステップSc6)。
電磁干渉判定部106は、干渉検出パラメータが前記所定の閾値以下であると判定した場合には(ステップSc6のYES)、出力部107に対してその旨を通知し、出力部107は、電磁干渉が電磁波に発生していることを出力する(ステップSc7)。一方、電磁干渉判定部106は、干渉検出パラメータが前記所定の閾値よりも大きいと判定した場合には(ステップSc6のNO)、電磁干渉が電磁波に発生していない正常な電波環境にあるものとして、電波環境の判定処理を終了する。
かくのごとき一連の動作により、第3実施形態の場合においても、第1実施形態の場合と同様、電磁干渉検出装置100は、記憶部103にあらかじめ登録しておいた複数の教師データ1,2,…,Nに基づいて、電磁干渉が通信に発生しているか否かを判定することができる。
ここで、先に述べたように、自然雑音(ノイズ)とDUR=0dBの合成波の受信電波波形とは振幅変動が似通った波形になる。また、DUR=0dB以外の合成波においても、混信する受信電波の信号成分の数が増えれば増えるほど、中心極限定理により、ガウス分布すなわち自然雑音(ノイズ)の波形に近づくという性質がある。そのため、特徴量算出部102において算出される振幅特徴量として、第1実施形態に示したような振幅確率分布(APD)や振幅ヒストグラム等の振幅変動を捉える特徴量のみを用いた場合、自然雑音と合成波との類似度が近い状態になってしまう可能性がある。
しかし、通信信号の送信電波としては自然雑音(ノイズ)と振幅強度が異なることから、干渉検出パラメータ演算部105における干渉検出パラメータの演算時に、例えば、振幅の最大値、平均値、実効値、尖頭値等の振幅情報を示す物理量、または、該物理量から導出される振幅強度に対応した定数等を振幅パラメータとして加えることによって、自然雑音と合成波との類似度が近くなる状況においても、両者を区別することができる。
なお、以上の各実施形態の説明においては、無線通信の場合として、電磁波を用いている場合について説明したが、有線通信の場合についても、電磁波の受信電波を、有線回線を伝搬してくる通信信号に置き換え、図1の受信電波波形取得部101を該通信信号の電気信号波形を取得する通信信号取得部とすることにより、図1のような電磁干渉検出装置100や図6、図13、図15の各フローチャートに示した電磁干渉検出方法によって、無線通信の場合と全く同等の効果を得ることができる。
また、以上の本発明の実施形態については、各図面を参照して詳細に説明したが、具体的な構成は、かくのごとき各図面の実施形態のみに限られるものではなく、当然のことながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲内の設計等も含まれる。例えば、類似度算出部104において算出される類似度は、第1実施形態において説明したようなピアソンの相関係数のみに限られなくても構わない。すなわち、該類似度は、ケンドールの順位相関係数、スピアマンの順位相関係数であっても良い。また、類似度の代わりに、非類似度(距離関数)として、ユークリッド距離、チェビシェフ距離、マンハッタン距離、キャンベラ距離、ミンコフスキー距離を用いても良い。
さらに、非類似度となる距離関数を用いた場合においても、前述の第1実施形態や第3実施形態の場合と同様に、干渉検出パラメータ演算部105において、干渉検出パラメータを導出し、電磁干渉判定部106において、電磁干渉の有無識別用としてあらかじめ定めた所定の閾値を設定することによって、電磁干渉の検出が可能である。なお、非類似度となる距離関数を用いた場合においては、電磁干渉判定部106における干渉検出パラメータと前記所定の閾値との大小関係の判定処理を、類似度の場合とは逆の構成とすることによって、電磁干渉の発生の有無を正しく判定することができ、出力部107から電磁干渉が通信に発生していることを通知することができる。
また、以上に説明した電磁干渉検出装置を構成する各部位の機能をコンピュータシステムによって実行可能なプログラムとして実現するようにしても良いし、かかるプログラム(すなわち電磁干渉検出プログラム)を、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、記録した該プログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしても良い。また、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものである。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の内蔵記憶装置のことを意味している。
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムがファイル転送された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間の間、プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、前述したプログラム(すなわち電磁干渉検出プログラム)は、当該プログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により、他のコンピュータシステムに転送されても良い。ここで、当該プログラムを伝送する「伝送媒体」としては、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことを意味している。また、前述したプログラム(すなわち電磁干渉検出プログラム)は、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせによって実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。