JP5758847B2 - 高強度・高弾性率ポリプロピレン繊維及びその製造方法 - Google Patents

高強度・高弾性率ポリプロピレン繊維及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、高強度・高弾性率ポリプロピレン繊維及びその製造方法に関する。
ポリプロピレン(PP)は、プロピレンを重合させた熱可塑性樹脂である。PPは、比重が小さく、高強度であり、且つ耐熱性及び耐薬品性に優れているという特徴を有する。このため、繊維材料、包装材料、容器及び自動車部品のような種々の用途に広く用いられている。
PP繊維は、通常、PPを溶融紡糸し、この紡出糸を延伸することによって製造される。
特許文献1は、極限粘度[η]が少なくとも5 dl/g以上である超高分子量ポリプロピレン(A)85〜99.5重量部と、極限粘度[η]が少なくとも2 dl/g以上であるポリエチレン(B)0.5〜15重量部とからなる超高分子量PP組成物に、流動性改良剤(C)を加えて溶融混合した後、これをダイより押出し成形し、得られる押出物を延伸することを特徴とする超高分子量PP延伸成形体の製造方法を記載する。当該文献は、超高分子量PPを用いることにより、少なくとも0.8 GPaの引張強度を有するPP繊維が得られることを記載する。
特許文献2は、メルトフローインデックス0.05〜30、密度0.890 g/cm3以上のアイソタクティクポリプロピレンを溶融紡糸し、得られた未延伸繊維を熱処理した後、冷延伸を行い延伸量で1〜100%に延伸し、引き続き、熱延伸時の変形速度が1分あたり30%を超える1段以上の熱延伸を行い総延伸量で300%以上に延伸することを特徴とする高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維の製造方法を記載する。
特許文献3は、非晶質或いは可能な限り低結晶性の原繊維をガラス転移点以上結晶化温度前後までの温度でゾーン延伸し、非晶質或いは低結晶性の高配向繊維となし、ついでこの得られた繊維に高度の緊張を加えつつ結晶化温度以上の温度でゾーン熱処理することを特徴とする高弾性率、高強度繊維の製造法を記載する。
特許文献4は、メルトフローレートが3〜100 g/10分でアイソタクチックペンタッド分率が96.5%以上であるPPからなり、スメチカ晶の割合が30%以上の未延伸糸を延伸することを特徴とするPP繊維の製造方法を記載する。
本発明者らは、PPと同じく熱可塑性樹脂であるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)繊維の製造方法として、PHAを溶融押出して溶融押出繊維を作製し、該溶融押出繊維をPHAのガラス転移温度+15℃以下に急冷、固化させて非晶質の繊維を作製し、該非晶質の繊維をガラス転移温度+15℃以下に放置して結晶化繊維を作製し、該結晶化繊維を延伸し、更に緊張熱処理をすることを特徴とする繊維の製造方法(以下、「微結晶核延伸法」とも記載する)を開発した(特許文献5)。
特開平6-41814号公報 特開平7-166415号公報 特開昭56-15430号公報 特開平9-170111号公報 国際公開第2006/038373号パンフレット
自動車部品のような高い強度及び剛性が要求される繊維強化プラスチック用途においては、材料となるプラスチック繊維の強度及び弾性率のいずれも高いことが要求される。しかしながら、従来技術のPP繊維の製造方法では、高強度及び高弾性率を兼ね備えるPP繊維を得ることは困難であるという問題点が存在した。例えば、特許文献3に記載の方法では、ゾーン延伸及びゾーン熱処理の工程を含むことにより、高弾性率のPP繊維を得ている。しかしながら、該繊維の破断強度は低い。
特許文献1に記載の方法では、特殊な超高分子量PPを原料に用いることで、高強度及び高弾性率のPP繊維を得ている。しかしながら、かかる特殊な物質を原料として使用することは、製造コストを上昇させることとなる。
本発明者らの開発した特許文献5に記載の方法では、非晶質のPHA繊維をガラス転移温度付近に放置して結晶化繊維を作製する微結晶核延伸法により、結果として得られるPHA繊維の強度を向上させることができる。特許文献5に記載の方法で得られるPHA繊維は、約1.322 GPaの引張強度及び約8.11 GPaのヤング率である。
本発明者らは、特許文献5に記載の微結晶核延伸法をポリプロピレン(PP)に適用し、且つ溶融押出繊維を紡糸する際の押出速度に対する引取速度の比(以下、「溶融延伸比」とも記載する)を特定の範囲に調整することにより、特別な原料及び/又は手段を用いることなく高強度のPP繊維を製造することができるPP繊維の製造方法を開発した(PCT/JP2011/062346)。PCT/JP2011/062346には、当該出願に係る方法で得られるPP繊維の引張強度が約1.7 GPaであることは開示されているものの、該繊維の引張弾性率は開示されていない。本発明者らは、当該出願に開示される方法で得られるPP繊維の引張弾性率を調査したところ、約4.6 GPaの引張弾性率であることを見出した。すなわち、PCT/JP2011/062346に開示される方法によって得られるPP繊維は、特許文献1〜3に記載の方法によって得られるPP繊維と比較して、引張強度は高いものの、引張弾性率は低い。それ故、PCT/JP2011/062346に開示される方法によって得られるPP繊維の引張強度を維持しつつ、引張弾性率をさらに向上させる必要があるという課題が存在した。
それ故、本発明は、特別な原料及び/又は手段を用いることなく高強度且つ高弾性率のポリプロピレン繊維を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、微結晶核延伸法及び溶融延伸比の最適化に加えて、延伸後のPP繊維に所定の応力を付与しながら熱処理することにより、高強度且つ高弾性率のPP繊維を製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) ポリプロピレン繊維の製造方法であって、以下の工程:
ポリプロピレンを溶融押出し、該溶融押出繊維を、ポリプロピレンのガラス転移温度以上且つガラス転移温度+20℃以下の温度において、押出速度に対する引取速度の比が50〜400の範囲となるように引取りながら紡糸する溶融押出繊維紡糸工程;
溶融押出繊維紡糸工程で得られた溶融押出繊維を、ポリプロピレンのガラス転移温度以上且つガラス転移温度+20℃以下の温度に維持する温度維持工程;
温度維持工程後の溶融押出繊維を延伸する延伸工程;及び
延伸工程で得られた延伸繊維に200〜450 N/mm2の範囲の応力を付与しながら、110℃以上且つ150℃未満の温度において、該繊維を熱処理する熱処理工程;
を含む、前記方法。
(2) 前記(1)に記載の方法で製造されるポリプロピレン繊維。
(3) 前記(2)に記載のポリプロピレン繊維を用いて製造される繊維強化樹脂。
本発明により、特別な原料及び/又は手段を用いることなく高強度且つ高弾性率のポリプロピレン繊維を製造する方法を提供することが可能となる。
本発明のポリプロピレン繊維の製造方法の一実施形態を示す工程図である。 実施例1及び比較例1のPP繊維を製造する際の熱処理工程時の応力と、結果として得られたPP繊維の引張弾性率との関係を示す図である。 実施例2及び比較例2のPP繊維を製造する際の熱処理工程時の応力と、結果として得られたPP繊維の引張弾性率及び引張強度との関係を示す図である。A:引張弾性率(GPa);B:引張強度(MPa)。 実施例3及び比較例3のPP繊維の引張弾性率及び引張強度を示す図である。A:引張弾性率(GPa);B:引張強度(MPa)。
<1.ポリプロピレン繊維の製造方法>
本発明は、ポリプロピレン繊維の製造方法に関する。
本明細書において、「ポリプロピレン」(PP)は、プロピレンのポリマーを意味し、全てのメチル基が同一の立体配置を有するアイソタクチックPP、隣接するメチル基の立体配置が互いに反対となるように該メチル基が結合した不斉炭素が配列されているシンジオタクチックPP、及び隣接するメチル基の立体配置が不規則となるように該メチル基が結合した不斉炭素が配列されているアタクチックPPのいずれのPPをも包含する。また、本発明に係るPPは、前記PPから選択される単独のポリマーの形態であってもよく、前記PPから選択される2以上のPPの混合物の形態であってもよい。本発明に係るPPは、前記のいずれの形態も包含する。例えば、本発明に係るPPは、ペンタッド(五連鎖)立体規則性評価におけるmmmm分率が、0.85以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。なお、mmmm分率は、13C-NMR法によって決定することができる。
本発明に係るポリプロピレンは、前記のPP単位のみからなるホモポリマーの形態であってもよく、他のモノマーとの共重合体(コポリマー)の形態であってもよい。或いは、2種以上のホモポリマー及び/又はコポリマーの混合物の形態であってもよい。コポリマーとしては、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーを挙げることができる。コポリマーを形成する共重合モノマーとしては、限定するものではないが、例えば、エチレン及び1-ブテン等を挙げることができる。
通常、PPを繊維状の形態に成形する場合、狭い範囲の分子量分布を有するPP繊維は高い強度を示すことが知られている。それ故、本発明に係るPPは、重量平均分子量(Mw)が200,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が5以下であることが好ましい。なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC法により決定することができる。
前記特徴を有するポリプロピレンを本発明の方法に用いることにより、従来技術と比較して高強度且つ高弾性率のポリプロピレン繊維を製造することが可能となる。
図1は、本発明のポリプロピレン繊維の製造方法の一実施形態を示す工程図である。以下、図1に基づき、本発明の方法の好ましい実施形態について詳細に説明する。
[1. 溶融押出繊維紡糸工程]
本発明の方法は、ポリプロピレンを溶融押出し、該溶融押出繊維を、温度Aにおいて、引取りながら紡糸する溶融押出繊維紡糸工程(工程S1)を含む。以下で説明するように、本工程は、溶融押出繊維中のPP樹脂の分子の配向度を向上させる条件で実施される。
本工程において、PPを溶融押出する手段としては、当該技術分野で通常使用されるプラスチック繊維の溶融押出技術を使用すればよい。溶融押出する手段としては、限定するものではないが、例えば、原料プラスチックを加熱、溶融した後、該溶融物を加圧押出する押出装置を挙げることができる。前記の押出装置を本工程に使用することにより、結果として得られるPP繊維の繊維径を好適な範囲に調整することが可能となる。
本工程において、PPを溶融押出する押出速度は、以下で説明する押出速度に対する引取速度の好適な比を満たす範囲であればよい。また、PPを溶融押出する炉温度は、使用されるPPの融点以上であることが好ましく、融点+10℃以上の温度であることがより好ましく、融点+15〜融点+100℃の範囲の温度であることが特に好ましい。
なお、融点は、限定するものではないが、例えば融点測定装置を用いて、使用されるPPの融点を予め測定することにより決定することができる。
本発明者らは、特許文献5に記載の方法をPP繊維の製造に適用すると、PHA繊維と同様にPP繊維の強度が向上することを見出した。特許文献5に記載の方法は、PHAの溶融押出繊維をガラス転移温度以上且つガラス転移温度+15℃以下の範囲の温度に急冷することにより、溶融押出繊維を非晶形態とし、さらにこれを前記温度で保冷して溶融押出繊維中に微小結晶核を形成させることを特徴とする。この微小結晶核は、延伸の起点(延伸核)となるため、1段階の延伸でもポリマー分子が高度に配向し、結果として得られる繊維の強度が向上する。それ故、本発明の方法においても、本工程で溶融押出繊維を所定の温度Aに急冷することにより、溶融押出繊維を非晶形態とし、さらにこれを以下で説明する温度維持工程で所定の温度Bに維持することにより、溶融押出繊維中にPPの微小結晶核を形成させることができると推測される。
本工程において、溶融押出されたPP繊維は、溶融押出手段における加熱温度から所定の温度Aに急冷され、該温度Aにおいて、引取りながら紡糸される。ここで温度Aは、PPのガラス転移温度以上且つガラス転移温度+20℃以下の範囲の温度であることが必要であり、ガラス転移温度以上且つガラス転移温度+10℃以下の範囲の温度であることが好ましい。
なお、本明細書において、「ガラス転移温度(Tg)」は、PPが可塑性を有する状態から硬化状態に転移する温度を意味し、限定するものではないが、例えば示差走査熱量測定(DSC)又は動的粘弾性測定により、決定することができる。
本工程において、溶融押出繊維を溶融押出手段における加熱温度から温度Aに急冷する手段は特に限定されない。例えば、溶融押出繊維を、当該技術分野で通常使用される液体又は気体の冷却媒体中に導入すればよい。本工程で使用される冷却媒体としては、限定するものではないが、例えば、水及び氷水、空気、並びに窒素及びヘリウムのような不活性気体を挙げることができる。水又は氷水が好ましい。前記手段を用いて溶融押出繊維を溶融押出手段における加熱温度から温度Aに急冷することにより、該繊維を形成するPPを非晶形態にすることが可能となる。
なお、得られたPP繊維の結晶形態は、限定するものではないが、例えばX線回折(XRD)により、決定することができる。
本工程において、溶融押出繊維を温度Aにおいて引取る手段は特に限定されない。例えば、前記冷却媒体に導入された溶融押出繊維を、冷却媒体中、当該技術分野で慣用される通常の引取手段を用いて所定の引取速度で巻取軸に巻取り巻糸体を形成させるか、又は冷却媒体中を所定の引取速度で通過させた後、該冷却媒体の外で、通常の引取手段を用いて所定の引取速度で巻取軸に巻取り巻糸体を形成させることによって、溶融押出繊維を温度Aにおいて引取ることができる。或いは、前記冷却媒体で温度Aに急冷された溶融押出繊維を、通常の引取手段を用いて所定の引取速度で引取りながら、予め温度Aに冷却された容器に収容することによって、温度Aにおいて溶融押出繊維を引取ることもできる。いずれの場合も本工程の実施形態に包含される。ここで、前記引取手段としては、限定するものではないが、例えば、ボビンのような巻取軸に繊維を巻取ることで巻糸体を形成させる巻取装置及びローラーを挙げることができる。また、溶融押出繊維は、引取によって付与された該繊維の緊張状態を維持したまま前記手段で回収され、以下で説明する温度維持工程に供されることが好ましい。例えば、溶融押出繊維の巻糸体は、該繊維の両端を巻取軸に固定する等の常法によって、繊維が実質的に弛緩しないようにして温度Aに急冷することが好ましい。また、容器に収容された溶融押出繊維は、該繊維の両端を容器に固定するか、又は一端を容器に、他端を重りに固定する等の常法によって、繊維が実質的に弛緩しないようにして温度Aに急冷することが好ましい。
本発明者らは、本工程の押出速度と引取速度との比を調整して、押出速度に対する引取速度の比(以下「溶融延伸比」とも記載する)を当該技術分野で通常設定される約20より高い範囲に最適化するとともに、溶融押出繊維を温度Aにおいて引取りながら紡糸することにより、結果として得られるPP繊維の強度が、通常の溶融延伸比で製造されるPP繊維と比較して大幅に向上することを見出した。前記効果は、溶融延伸比を従来技術と比較してより高い範囲に最適化し、且つ溶融押出繊維を温度Aに急冷することにより、溶融押出繊維中の非晶形態のPPポリマー分子の配向度が向上し、以下で説明する温度維持工程によって形成される微小結晶核による強度向上効果をさらに向上させるためと推測される。
本工程において、押出速度に対する引取速度の比(溶融延伸比)は、50〜400の範囲であることが必要であり、180〜220の範囲であることが好ましい。この場合、温度Aにおいて冷却媒体に導入された溶融押出繊維を引取る引取速度は、50〜2,500 mm/秒の範囲であることが好ましく、200〜2,000 mm/秒の範囲であることがより好ましい。押出速度に対する引取速度の比を前記範囲に調整することにより、溶融押出繊維中のPPポリマー分子の配向度を向上させて、結果として得られるPP繊維の強度を向上させることが可能となる。
前記条件で本工程を実施することにより、ポリマー分子の配向度が向上した非晶形態を有するPPの溶融押出繊維を形成させることが可能となる。
[2. 温度維持工程]
本発明の方法は、溶融押出繊維紡糸工程で得られた溶融押出繊維を、温度Bに維持する温度維持工程(工程S2)を含む。本工程において、溶融押出繊維は、溶融押出繊維中のPP樹脂に微細な結晶核を形成させる条件(温度B)に維持される。
本工程において、溶融押出繊維は、溶融押出繊維紡糸工程で付与された該繊維の緊張状態を維持していることが好ましい。例えば、溶融押出繊維の巻糸体の場合、該繊維の両端を巻取軸に固定する等の常法によって、繊維が実質的に弛緩しないようにして温度Bに維持されることが好ましい。また、容器に収容された溶融押出繊維の場合、該繊維の両端を容器に固定するか、又は一端を容器に、他端を重りに固定する等の常法によって、繊維が実質的に弛緩しないようにして温度Bに維持されることが好ましい。
本工程において、溶融押出繊維を維持する温度Bは、PPのガラス転移温度以上且つガラス転移温度+20℃以下の範囲の温度であることが必要であり、ガラス転移温度以上且つガラス転移温度+10℃以下の範囲の温度であることが好ましい。溶融押出繊維紡糸工程で溶融押出繊維を急冷する温度Aと、本工程で溶融押出繊維を維持する温度Bとは同一であることが特に好ましい。また、溶融押出繊維を温度Bに維持する時間は、3〜72時間の範囲であることが好ましく、12〜48時間の範囲であることがより好ましい。ここで、溶融押出繊維を温度Bに維持する手段は、前工程と同様の手段を用いることが好ましい。
前記条件で本工程を実施することにより、溶融押出繊維紡糸工程で得られた非晶形態を有するPPの溶融押出繊維に、微細な結晶核を形成させることが可能となる。
[3. 延伸工程]
本発明の方法は、温度維持工程後の溶融押出繊維を延伸する延伸工程(工程S3)を含む。
本工程において、溶融押出繊維を延伸する手段としては、当該技術分野で通常使用されるプラスチック繊維の延伸技術を使用すればよい。延伸する手段としては、限定するものではないが、例えば、巻糸体から溶融押出繊維を引きだし、ローラー等で延伸する手動式又は機械式の延伸装置を挙げることができる。
本工程において、延伸倍率には特に上限はなく、溶融押出繊維が破断しない程度であればよい。具体的には、延伸倍率は、2倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましい。また、溶融押出繊維を延伸する温度は、PPのガラス転移温度以上であることが好ましく、ガラス転移温度以上且つガラス転移温度+50℃以下の範囲の温度であることがより好ましく、室温(例えば20〜25℃の範囲)であることが特に好ましい。
延伸繊維はその後、通常の引取手段を用いて所定の延伸速度で巻取軸に巻取り巻糸体を形成させるか、又は容器に収容することができる。或いは、延伸された繊維をそのままの状態で、以下で説明する熱処理工程に供してもよい。いずれの場合も本工程の実施形態に包含される。延伸繊維は、延伸によって付与された該繊維の緊張状態を維持したまま前記手段で回収され、以下で説明する熱処理工程に供されることが好ましい。例えば、延伸繊維の巻糸体は、該繊維の両端を巻取軸に固定する等の常法によって、繊維が実質的に弛緩しないようにされることが好ましい。また、容器に収容された延伸繊維は、該繊維の両端を容器に固定するか、又は一端を容器に、他端を重りに固定する等の常法によって、繊維が実質的に弛緩しないようにされることが好ましい。
前記条件で本工程を実施することにより、結果として得られるPP繊維の繊維径を減少させることが可能となる。
[4. 熱処理工程]
本発明の方法は、延伸工程で得られた延伸繊維に応力を付与しながら、温度Cにおいて該繊維を熱処理する熱処理工程(工程S4)を含む。
本発明者らは、前記工程で得られた延伸繊維に応力を付与しながら該繊維を熱処理すると、結果として得られるPP繊維の弾性率が向上することを見出した。前記工程で得られた延伸繊維中には、微小結晶核を延伸の起点として、ポリマー分子が高度に配向している。この延伸繊維に応力を付与しながら熱処理することにより、高度に配向したポリマー分子鎖が弛緩することを抑制しながら結晶形成させることができる。それ故、結果として得られるPP繊維は、高い強度を維持しながら弾性率が向上すると推測される。
本工程において、延伸繊維に付与される応力は、200〜450 N/mm2の範囲であることが必要であり、270〜420 N/mm2の範囲であることが好ましく、390±25 N/mm2の範囲であることがより好ましい。延伸繊維に対し、前記範囲の初期応力を付与し、その後連続的に前記範囲の応力を付与し続けながら、該繊維を熱処理することが好ましい。前記条件で延伸繊維に応力を付与しながら該繊維を熱処理することにより、PPポリマー分子鎖が弛緩することを抑制しながら結晶形成させることができる。
なお、延伸繊維に付与される応力は、例えば、延伸繊維に付与される荷重及び該繊維の断面積を測定し、それぞれの値に基づき算出することができる。
本工程において、延伸繊維に応力を付与する手段は、当該技術分野で公知の様々な手段を適用することができる。本工程の間、延伸繊維に前記範囲の応力を連続的に付与し続けられる手段であれば、特に制限されない。例えば、延伸繊維の一端又は両端を重りのような荷重手段に固定することによって、該繊維に連続的に荷重を作用させる。これにより、延伸繊維に前記範囲の初期応力を付与し、その後連続的に前記範囲の応力を付与し続けることができる。この場合、荷重手段による荷重は、本工程を実施する間、実質的に一定の量であってもよく、延伸繊維に付与される応力に応じて適宜増減させてもよい。或いは、延伸繊維の巻糸体の場合、前記範囲の初期応力を付与して巻取軸に巻き取った後で、該繊維の両端を巻取軸に固定することによって、該繊維に連続的に前記範囲の応力を付与し続けてもよい。
本工程において、延伸繊維を熱処理する温度Cは、110℃以上且つ150℃未満の温度であることが必要であり、120〜140℃の範囲の温度であることが好ましい。温度Cが前記範囲の場合、引張弾性率が向上するため好ましい。また、延伸繊維を温度Cで熱処理する時間は、2〜15分の範囲であることが好ましく、5〜10分の範囲であることがより好ましい。前記条件で熱処理することにより、PPポリマー分子鎖が弛緩することを抑制しながら結晶形成させることができる。
本工程において、延伸繊維のうち、前記範囲の応力を付与されている部分(以下、「応力付与部分」とも記載する)の略全長に亘って温度Cで熱処理することができれば、延伸繊維を加熱する手段は特に制限されない。例えば、延伸繊維の応力付与部分を、当該技術分野で通常使用されるヒーター又はローラーのような加熱装置上に配置し、前記範囲の応力を付与しながら温度Cで熱処理することにより、実施することができる。或いは、延伸繊維の応力付与部分を、当該技術分野で通常使用される液体又は気体の加熱媒体中に導入し、該加熱媒体中で前記範囲の応力を付与しながら温度Cで熱処理することにより、実施することもできる。前記加熱媒体としては、限定するものではないが、例えば、水及びシリコンオイルのような液体、空気、並びに窒素及びヘリウムのような不活性気体を挙げることができる。前記加熱媒体は、当該技術分野で通常使用される恒温槽又はドライオーブンのような加熱装置により、温度Cに維持すればよい。
前記条件で本工程を実施することにより、高強度且つ高弾性率のPP繊維を得ることが可能となる。
<2. ポリプロピレン繊維>
すでに述べたように、本発明の方法で得られるPPの溶融押出繊維は、繊維中のPPポリマー分子の配向度が高く、且つ繊維中に延伸の起点(延伸核)となる微小結晶核を有する。また、熱処理工程において延伸繊維に応力を付与しながら該繊維を熱処理することにより、延伸繊維中の高度に配向したポリマー分子鎖は、弛緩することなく結晶形成する。このため、本発明の方法で得られるPP繊維は、従来技術の方法で得られるPP繊維(通常、約0.4 GPaの引張強度及び約5 GPaの引張弾性率を有する)と比較して、極めて高い強度を有するだけでなく、極めて高い弾性率を有する。例えば、本発明の方法で製造されるPP繊維の引張強度は、通常、1.0〜1.8 GPaの範囲であり、典型的には、1.3〜1.8 GPaの範囲である。また、本発明の方法で製造されるPP繊維の引張弾性率は、通常、5.0〜12 GPaの範囲であり、典型的には、8〜12 GPaの範囲である。なお、引張強度及び引張弾性率は、JIS-K-6301に基づき、決定することができる。
<3.繊維強化樹脂>
本発明の方法で得られるPP繊維は、従来技術の方法で得られるPP繊維と比較して極めて高い強度及び弾性率を有する。それ故、本発明はまた、本発明のPP繊維を用いて製造される繊維強化樹脂に関する。
本発明の繊維強化樹脂は、前記で説明した本発明のPP繊維を含有する。また、本発明の繊維強化樹脂は、所望により、結合剤、可塑剤、着色剤、安定剤、滑剤及び充填剤のような1種類以上の添加剤を含有してもよい。前記添加剤を含有することにより、様々な機能を本発明の繊維強化樹脂に付与することが可能となる。
以上詳細に説明したように、本発明の方法は、特別な原料及び/又は手段を用いることなく高強度且つ高弾性率のPP繊維を製造することができる。また、本発明のPP繊維は、高い引張強度及び引張弾性率を有するため、該PP繊維を用いて製造される強化繊維樹脂は、軽量であるだけでなく、高強度且つ高剛性の特性を有する。そのため、本発明の繊維強化樹脂を用いることにより、自動車部品の軽量化並びに強度及び剛性向上が可能となる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<参考例:微結晶核延伸法及び溶融延伸比の最適化の効果>
[参考例1及び2のポリプロピレン繊維の作製]
PCT/JP2011/062346に開示される方法で得られるPP繊維の例である。
市販のポリプロピレン(PP)(FY6;Mw=5.1×105;Mn=1.2×105;Mw/Mn=4.1;mmmm分率=0.934;日本ポリプロ社)を押出装置に仕込み、種々の押出速度でPPを溶融押出した。ここで、押出装置の溶融温度は190℃の炉温度及び185℃のダイ温度に設定し、押出口のノズル径は0.5 mm(参考例1)又は1 mm(参考例2)とした。溶融押出したPP繊維を、氷浴中にて0℃に急冷し、0℃において種々の引取速度で巻取軸に巻取り、巻取軸に繊維の両端を固定して溶融押出繊維の巻糸体を形成させた(溶融押出繊維紡糸工程)。得られた溶融押出繊維の巻糸体を、氷浴中にて0℃で48時間維持した(温度維持工程)。その後、溶融押出繊維の巻糸体から繊維を引きだし、手回し延伸機を用いて該繊維を室温で10倍に延伸した後(延伸工程)、手回し延伸機に繊維の両端が固定された延伸繊維を、そのままの状態(以下「定長法」とも記載する)で、120℃で5分間熱処理して(熱処理工程)、PP繊維を得た。
[参考比較例1のポリプロピレン繊維の作製]
特許文献5に記載の方法で得られるPP繊維の例である。溶融延伸比が従来技術の範囲の値(17)となるように押出速度及び引取速度を調整した他は前記と同様の方法で、PP繊維を得た。なお、溶融延伸比は、押出速度に対する引取速度の比として算出される。
[参考比較例2のポリプロピレン繊維の作製]
従来技術の方法に本発明の溶融延伸比を適用して得られるPP繊維の例である。溶融延伸比が189となるように押出速度及び引取速度を調整して室温で溶融押出繊維を引取り、且つ温度維持工程を省略した他は前記と同様の方法で、PP繊維を得た。
[ポリプロピレン繊維の引張強度試験]
得られたPP繊維の引張強度を測定した。測定は、JIS-K-6301に基づき、10 mmの繊維長の試料を用いて行った。引張速度は20 mm/秒とした。結果を表1に示す。
Figure 0005758847
表1に示すように、0.5 mmのノズル径の押出装置を用いて紡糸した参考例1の場合、押出速度及び引取速度を調整して溶融延伸比を高くする程、引張強度が向上した。溶融延伸比が165の参考例1-3の場合、1.40 GPaの引張強度を示した。1.0 mmのノズル径の押出装置を用いて紡糸した参考例2の場合、溶融延伸比が200を超えると引張強度が低下した。参考例2のPP繊維の中で、溶融延伸比が189の参考例2-4の引張強度が最も高く、1.70 GPaの引張強度を示した。
これに対し、特許文献5に記載の方法に基づき調製された参考比較例1は、0.82 GPaの引張強度であった。また、参考例2で最も高い引張強度を示した参考例2-4と同じ溶融延伸比を適用して室温で溶融押出繊維を引取り、且つ温度維持工程を省略した参考比較例2は、0.83 GPaの引張強度であった。
<試験1:熱処理工程時の付与応力の効果>
[実施例1のポリプロピレン繊維の作製]
市販のポリプロピレン(PP)(FY6;Mw=5.1×105;Mn=1.2×105;Mw/Mn=4.1;mmmm分率=0.934;日本ポリプロ社)を押出装置に仕込み、4.54 mm/秒の押出速度でPPを溶融押出した。ここで、押出装置の溶融温度は、160-210-240-240℃のシリンダー温度及び240℃のダイ温度に設定し、押出口のノズルは1.0 mmの内径の24孔ノズルとした。溶融押出したPP繊維を、9℃の水浴中において、急冷しながら908 mm/秒の引取速度で巻取軸に巻取り、巻取軸に繊維の両端を固定して溶融押出繊維の巻糸体を形成させた(溶融押出繊維紡糸工程)。このとき、押出速度に対する引取速度の比は200だった。得られた溶融押出繊維の巻糸体を、水浴中にて2℃に保冷し、該温度で48時間維持した(温度維持工程)。温度維持工程後の溶融押出繊維の巻糸体から繊維を引きだし、手回し延伸機を用いて該繊維を室温で10倍に延伸した後、巻取軸に巻き取って延伸繊維の巻糸体を形成させた(延伸工程)。延伸工程後の延伸繊維の巻糸体から繊維を引きだし、120℃のドライオーブン中で、繊維の一端を固定し、他端に所定の初期応力に相当する種々の重量の重りを連結することにより、該繊維に所定の応力を付与(以下「荷重法」とも記載する)しながら120℃で5分間熱処理して(熱処理工程)、実施例1-1〜1-4のPP繊維を得た。
[比較例1のポリプロピレン繊維の作製]
実施例1の手順において、巻取軸に繊維の両端が固定された延伸繊維の巻糸体を、そのままの状態(以下「定長法」とも記載する)で熱処理した他は前記と同様の手順で、比較例1のPP繊維を得た。比較例1のPP繊維の製造方法は、PCT/JP2011/062346に開示される方法に相当する。定長法によってPP繊維に付与される初期応力は、53 N/mm2に相当する。
[実施例2のポリプロピレン繊維の作製]
実施例1の手順において、熱処理工程の温度を140℃に、時間を10分間に変更した他は前記と同様の手順で、実施例2-1〜2-7のPP繊維を得た。
[比較例2のポリプロピレン繊維の作製]
実施例2の手順において、巻取軸に繊維の両端が固定された延伸繊維の巻糸体を、そのままの状態で熱処理した他は前記と同様の手順で、比較例2のPP繊維を得た。比較例2のPP繊維の製造方法は、PCT/JP2011/062346に開示される方法に相当する。定長法によってPP繊維に付与される初期応力は、53 N/mm2に相当する。
[ポリプロピレン繊維の性能試験]
得られたPP繊維の引張弾性率及び引張強度を測定した。測定は、JIS-K-6301に基づき、10 mmの繊維長の試料を用いて行った。引張速度は20 mm/秒とした。結果を表2に示す。実施例1及び比較例1のPP繊維を製造する際の熱処理工程時の応力と、結果として得られたPP繊維の引張弾性率との関係を図2に示す。
Figure 0005758847
表2に示すように、熱処理工程において、定長法で熱処理した比較例1のPP繊維と比較して、荷重法で熱処理した実施例1-1〜1-3のPP繊維は、付与される応力を高くする程、引張弾性率が向上した。初期応力が368 N/mm2の実施例1-3の場合、7.3 GPaの引張弾性率を示した。初期応力が526 N/mm2の実施例1-4の場合、熱処理工程時に繊維が破断した(図2)。
同様の傾向は、熱処理工程の温度を140℃に変更した実施例2でも確認された。実施例2及び比較例2のPP繊維を製造する際の熱処理工程時の応力と、結果として得られたPP繊維の引張弾性率及び引張強度との関係を図3に示す。
<試験2:熱処理工程時の温度及び時間の効果>
[ポリプロピレン繊維の作製]
実施例1の手順において、熱処理工程の温度を120又は140℃に、時間を5又は10分間に、初期応力を368 N/mm2に変更した他は前記と同様の手順で、実施例3-1〜3-4のPP繊維を得た。
実施例3の手順において、巻取軸に繊維の両端が固定された延伸繊維の巻糸体を、そのままの状態で熱処理した他は前記と同様の手順で、比較例3のPP繊維を得た。比較例3のPP繊維の製造方法は、PCT/JP2011/062346に開示される方法に相当する。定長法によってPP繊維に付与される初期応力は、53 N/mm2に相当する。
[ポリプロピレン繊維の性能試験]
試験1と同様の手順で、得られたPP繊維の引張弾性率及び引張強度を測定した。結果を表3に示す。また、実施例3-1〜3-4及び比較例3のPP繊維の引張弾性率及び引張強度を図4に示す。
Figure 0005758847
図4Aに示すように、熱処理工程時の熱処理の温度及び時間の少なくともいずれかを高くする程、引張弾性率が向上した。また、図4Bに示すように、延伸繊維に応力を付与しながら熱処理工程を実施した実施例3-1〜3-4のPP繊維は、定長法で熱処理工程を実施した比較例3のPP繊維と比較して、略同等の引張強度を維持した。
<試験3:熱処理工程時の温度及び付与応力の効果>
[ポリプロピレン繊維の作製]
実施例1の手順において、熱処理工程の温度を100、110、120、140又は150℃に、時間を10分間に、初期応力を406 N/mm2に変更した他は前記と同様の手順で、実施例4-1〜4-5のPP繊維を得た。
[ポリプロピレン繊維の性能試験]
試験1と同様の手順で、得られたPP繊維の引張弾性率及び引張強度を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0005758847
表4に示すように、熱処理工程時の熱処理の温度が100℃以下の場合(実施例4-1)、応力を付与しても引張弾性率は向上しなかった。これに対し、熱処理工程時の熱処理の温度が110℃以上且つ150℃未満の場合(実施例4-2〜4-4)、温度が高くなる程、引張弾性率が向上した。しかしながら、150℃で熱処理工程を実施した実施例4-5の場合、熱処理工程時に繊維が破断した。
前記結果は、熱処理工程において進行するPP繊維中のPPの結晶化の速度差に起因すると考えられる。熱処理工程時の熱処理の温度が100℃以下の場合、PPの結晶化が遅く進行するため、10分間の熱処理では結晶の整列が不十分となり、結果として引張弾性率の向上が確認できなかったと考えられる。一方、熱処理工程時の熱処理の温度が150℃以上の場合、熱処理工程時に繊維が破断するため、PP繊維を得ることができない。
以上より、高弾性率のPP繊維を製造するためには、熱処理工程時の熱処理の温度は110℃以上且つ150℃未満の温度であることが好ましく、120〜140℃の範囲の温度であることがより好ましい。

Claims (1)

  1. ポリプロピレン繊維の製造方法であって、以下の工程:
    ポリプロピレンを溶融押出し、該溶融押出繊維を、ポリプロピレンのガラス転移温度以上且つガラス転移温度+20℃以下の温度において、押出速度に対する引取速度の比が50〜400の範囲となるように引取りながら紡糸する溶融押出繊維紡糸工程;
    溶融押出繊維紡糸工程で得られた溶融押出繊維を、ポリプロピレンのガラス転移温度以上且つガラス転移温度+20℃以下の温度に維持する温度維持工程;
    温度維持工程後の溶融押出繊維を延伸する延伸工程;及び
    延伸工程で得られた延伸繊維に200〜450 N/mm2の範囲の応力を付与しながら、110℃以上且つ150℃未満の温度において、該繊維を熱処理する熱処理工程;
    を含む、前記方法。
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