JP5758274B2 - 遮水壁および遮水壁の構築方法 - Google Patents

遮水壁および遮水壁の構築方法 Download PDF

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Description

本発明は、遮水壁および遮水壁の構築方法に関する。
従来、廃棄物処分場の遮水性の確保や、汚染土壌の封じ込めのために、地盤に種々の止水対策、遮水対策が施されてきた。
図7は、従来の廃棄物処分場103を示す図である。図7に示すように、廃棄物処分場103では、地盤107に、遮水シート105を敷設した貯留槽111が形成される。貯留槽111の外側の地盤107には、下端部が不透水層109に到達するような遮水壁101が構築される。
遮水壁101には、例えば、鋼矢板等の薄鋼板を用いて締め切る遮水壁、ソイルセメント地中連続壁による遮水壁、ソイルセメント地中連続壁と遮水シート等とを併用した合成遮水壁等が用いられる。また、遮水壁101の外側には、所定の間隔をおいてモニタリング井戸113が形成される。廃棄物処分場103では、モニタリング井戸113を用いて、遮水壁101からの漏水を検知する。
一般に、合成遮水壁は、ソイルセメント地中連続壁を構築した後、その内部に遮水シートや薄鋼板を設置して構築される。遮水シートを用いた合成遮水壁は、例えば、地中連続壁が固化する前に内部に遮水シートを埋め込むことにより、構築される。(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−96766号公報
しかしながら、鋼矢板等の薄鋼板を用いて締め切る遮水壁では、矢板の継手から漏水が生じやすい、施工費が嵩む等の問題がある。ソイルセメント地中連続壁による遮水壁は、剛性が高いために掘削による土留めの変形によってひび割れが生じる、地震時の変形追随性が乏しい等の問題がある。遮水シートを用いた合成遮水壁は、シート同士の継手の止水が不確実であり、特殊な設備や機械を使用して施工するため汎用性が低い等の問題がある。また、遮水シートの破れの問題もある。
また、図7に示すようなモニタリング井戸113を用いた漏水検知では、モニタリング井戸113が遮水壁101の外側に距離をおいて点在するため、漏水を検知するまでにタイムラグが生じる、漏水箇所の特定が困難である等の問題がある。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、既存の施工機械で施工でき、耐震性が高く、周辺への漏水が生じる前に漏水を検知でき、漏水部の補修が容易である遮水壁および遮水壁の構築方法を提供することである。
前述した目的を達成するために、第1の発明は、地盤内に鉛直方向に設置される遮水壁であって、下端部が不透水層に達するように、地盤内に形成されたソイルセメント地中連続壁と、前記ソイルセメント地中連続壁の内部に鉛直方向に形成されたモニタリング層形成用溝を、所定の間隔で区画化して形成されたモニタリング層と、を具備し、前記モニタリング層形成用溝は、所定の間隔で設けられたモルタル充填部を有し、前記モニタリング層は、前記モルタル充填部にモルタルを充填して前記モニタリング層形成用溝を区画化することで形成され、前記モニタリング層を用いて、前記遮水壁の漏水の有無を検知し、漏水部を補修可能であることを特徴とする遮水壁である。
第1の発明では、ソイルセメント地中連続壁の内部に、所定の間隔で区画化したモニタリング層が形成される。また、モニタリング層を用いて、遮水壁の漏水の有無を検知する。そのため、遮水壁の内部において、連続した溝を用いた漏水のモニタリングが可能となり、遮水壁から周辺地盤への漏水が生じる前に、漏水の有無を検知できる。また、モニタリング層が区画化されていることにより、漏水位置を容易に特定できる。そのため、漏水位置のみを対象として止水注入を行なって、漏水箇所を容易に補修することができる。
第1の発明では、前記ソイルセメント地中連続壁の内部であって、前記モニタリング層の内側に形成された遮水層形成溝に、変形追従性を有する止水材を充填して形成された遮水層をさらに具備してもよい。
第1の発明では、モニタリング層の内側に、変形追従性を有する止水材を充填して形成された遮水層を設けることにより、遮水壁の耐震性を高めることができる。
記モニタリング層は、前記モルタル充填部を除く部分に透水性を有する材料が充填されてもよい。
第1の発明では、モルタル充填部にモルタルを充填してモニタリング層形成用溝を区画化することにより、周辺地盤の土圧によるモニタリング層の閉塞を防止できる。
第2の発明は、地盤内に鉛直方向に設置される遮水壁の構築方法であって、下端部が不透水層に達するように、地盤内にソイルセメント地中連続壁を形成する工程(a)と、前記ソイルセメントが固化する前に、前記ソイルセメント地中連続壁の内部に第1の矢板を鉛直方向に挿入する工程(b)と、前記ソイルセメントが固化した後に、前記ソイルセメント地中連続壁から前記第1の矢板を引き抜いてモニタリング層形成用溝を形成する工程(c)と、前記モニタリング層形成用溝を所定の間隔で区画化し、モニタリング層を形成する工程(d)と、を具備することを特徴とする遮水壁の構築方法である。
第2の発明では、ソイルセメント地中連続壁の内部に、矢板の挿入・引き抜きを行なってモニタリング層を形成する。この方法では、既存の施工機械を用いた施工が可能である。また、遮水壁構築後は、遮水壁の内部において、連続した溝を用いた漏水のモニタリングが可能となる。第2の発明では、モニタリング層を所定の間隔で区画化するため、遮水壁から周辺地盤への漏水が生じる前に、漏水の有無を検知できる。また、モニタリング層を区画化することにより、漏水位置を容易に特定できる。そのため、漏水位置のみを対象として止水注入を行なって、漏水箇所を容易に補修することができる。
第2の発明では、前記工程(b)で、前記ソイルセメント地中連続壁の内部に、前記第1の矢板と平行に第2の矢板を挿入し、前記工程(c)で、前記ソイルセメント地中連続壁から前記第2の矢板を引き抜いて遮水層形成用溝を形成し、前記工程(d)で、前記遮水層形成用溝に変形追従性を有する止水材を充填して遮水層を形成してもよい。
第2の発明では、モニタリング層の内側に、変形追従性を有する止水材を充填して形成された遮水層を設けることにより、遮水壁の耐震性を高めることができる。遮水層も、既存の施工機械を用いた施工が可能である。
前記工程(d)では、前記モニタリング層形成用溝に所定の間隔で設けられたモルタル充填部にモルタルを充填することにより、前記モニタリング層形成用溝を区画化することが望ましい。
モルタル充填部にモルタルを充填することにより、前記モニタリング層形成用溝を区画化する場合、前記モルタル充填部を除く部分に透水性を有する材料を充填する工程(e)をさらに具備してもよい。
第2の発明では、モルタル充填部にモルタルを充填してモニタリング層形成用溝を区画化することにより、遮水壁構築後、周辺地盤の土圧によるモニタリング層の閉塞を防止できる。
本発明によれば、既存の施工機械で施工でき、耐震性が高く、周辺への漏水が生じる前に漏水を検知でき、漏水部の補修が容易である遮水壁および遮水壁の構築方法を提供できる。
廃棄物処分場3の概要を示す図 遮水壁1の一部を拡大した斜視図 遮水壁1を構築するための各工程を示す図 遮水層17の詳細な形成方法を示す図 第2の実施の形態に係る遮水壁1aの斜視図 第3の実施の形態に係る遮水壁1bの斜視図 従来の廃棄物処分場103を示す図
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、廃棄物処分場3の概要を示す図である。図1に示すように、廃棄物処分場3は、地盤7に遮水シート5を敷設した貯留槽11が形成される。貯留槽11の外側の地盤7には、下端部が不透水層9に到達するような遮水壁1が構築される。
遮水壁1は、溝4の内部にソイルセメント2を充填したものである。遮水壁1の内部には、廃棄物処分場3の外側すなわち地盤7側に、モニタリング層15が設けられる。モニタリング層15は、モニタリング層形成用溝21の内部に、所定の間隔をおいてモルタル23を充填し、区画化したものである。また、遮水壁1の内部には、廃棄物処分場3の内側すなわち貯留槽11側に、遮水層13が設けられる。遮水層13は、遮水層形成用溝17に止水材19を充填したものである。
止水材19は、遮水層形成用溝17に液体状で注入可能であり、固化するまでの時間が長い緩結型で、固化後に変形追従性、耐アルカリ性、耐久性を有するものを用いる。止水材19は、PVA(ポリビニルアルコール)ポリマーが好適である。室内での貫入試験により、PVAは、変形量と貫入抵抗値が比例関係にあり、大きな変形に対しても塑性的な変形を生じることがなく、変形追従性が極めて高いことが確認されており、遮水層13の形成に適切な変形追従性を有すると考えられる。止水材19は、シリカ系注入材(水ガラス)等を用いてもよい。
図2は、遮水壁1の一部を拡大した斜視図である。図2に示すように、モニタリング層15を形成するためのモニタリング層形成用溝21は、通常部21aと拡幅部21bとを有する。拡幅部21bは、例えば1つおきにモルタル充填部として用いられ、モルタル23が充填される。
遮水層13を形成するための遮水層形成用溝17は、通常部17aと拡幅部17bとを有する。遮水層形成用溝17は、止水材19が充填される。止水材19は、図示しない注入管を拡幅部17bの下部まで挿入して、充填される。遮水層形成用溝17は、所定の間隔で鋼矢板25aが埋設される。
遮水壁1では、例えば、モニタリング層15のモニタリング層形成用溝21の溜まり水を分析して、遮水層13からの漏水を検知する。遮水壁1では、モニタリング層15のモニタリング層形成用溝21の中をファイバースコープで直接観測して、遮水層13からの漏水を検知してもよい。なお、モニタリングとしては、モルタルが充填されていない拡幅部21bを用いることで、モニタリングのスペースおよび補修の際の注入管挿入スペースを確保することができる。
次に、遮水壁1の構築方法について説明する。図3は、遮水壁1を構築するための各工程を示す図である。図3(a)は、ソイルセメント地中連続壁6を形成する工程を示す図である。図3(a)に示す工程では、地盤7に溝4を掘削し、ソイルセメント2を充填して、ソイルセメント地中連続壁6を形成する。ソイルセメント地中連続壁6は、下端部が不透水層9に達するように形成する。
以下では、まず、ソイルセメント地中連続壁6内にモニタリング層15を形成する方法について図3を用いて説明する。遮水層13を形成する方法については後述する。
図3(b)は、ソイルセメント地中連続壁6に鋼矢板を挿入する工程を示す図である。モニタリング層15を形成するには、図3(b)に示す工程で、ソイルセメント2が固化する前に、第1の矢板である鋼矢板27を鉛直方向に挿入する。
図3(c)および図3(d)は、ソイルセメント地中連続壁6から鋼矢板を引く抜く工程を示す図である。モニタリング層15を形成するには、図3(c)および図3(d)に示す工程で、図3(c)に示すように、ソイルセメント2が固化した後、鋼矢板27の引き抜きの摩擦が小さいうちに、ソイルセメント地中連続壁6から鋼矢板27を引き抜く。そして、図3(d)に示すように、鋼矢板27を引き抜いた跡であるモニタリング層形成用溝21を形成する。
図3(e)は、モニタリング層15、遮水層13を形成する工程を示す図である。モニタリング層15を形成するには、図3(e)に示す工程で、モニタリング層形成用溝21を、所定の間隔をおいてモルタル23を充填することにより区画化する。モルタル23は、図2を用いて説明したモルタル充填部に充填する。モルタルを充填する際、例えば、モルタル充填部内に長い円柱状のビニール袋を挿入し、その袋の中にモルタルを充填することにより、モニタリング層形成用溝21にモルタルが漏れ出すことを防止できる。
次に、遮水壁1に遮水層13を形成する方法について、図3、図4を用いて説明する。図4は、遮水層13の詳細な形成方法を示す図である。図4に示す各図は、遮水壁1の一部の水平断面図である。
図3(a)に示すようなソイルセメント地中連続壁6の内部に遮水層13を形成するには、図3(b)に示す工程で、ソイルセメント2が固化する前に、ソイルセメント地中連続壁6の内部に、鋼矢板27と平行に、第2の矢板である鋼矢板25を挿入する。このとき、鋼矢板25を廃棄物処分場3の貯留槽11(図1)側に配置する。図4(a)は、ソイルセメント地中連続壁6に鋼矢板25を挿入した状態を示す。図3(b)に示す工程では、図4(a)に示すように、鋼矢板25を、ソイルセメント2の未固化範囲2aに挿入する。
遮水層13を形成するには、図3(c)および図3(d)に示す工程で、図3(c)に示すように、ソイルセメント2が固化した後、鋼矢板25の引き抜きの摩擦が小さいうちに、ソイルセメント地中連続壁6から鋼矢板25を引き抜く。そして、図3(d)に示すように、鋼矢板25を引き抜いた跡である遮水層形成用溝17を形成する。
図4(b)は、鋼矢板25bを除去した状態を示す図、図4(c)は、遮水層形成用溝17が形成された状態を示す図である。図3(c)および図3(d)に示す工程では、図4(a)に示す未固化範囲2aが固化した後、図4(b)に示すように、固化範囲2bに連続する溝4を掘削し、固化範囲2bの端部の除去部29のソイルセメント2を除去する。また、除去部29に継手部が埋設された鋼矢板25bを、ソイルセメント地中連続壁6から引き抜く。その後、図4(c)に示すように、ソイルセメント地中連続壁6の固化範囲2bから、先行して引き抜いた鋼矢板25bに隣接する鋼矢板25aを除く鋼矢板25を引き抜き、遮水層形成用溝17を形成する。鋼矢板25aは、ソイルセメント地中連続壁6内に残置される。
図3(c)および図3(d)に示す工程では、図4(c)に示すように、ソイルセメント2の固化範囲2bでの鋼矢板25の引き抜きと並行して、新たに掘削した溝4にソイルセメント2を充填する。
遮水層13を形成するには、図3(e)に示す工程で、遮水層形成用溝17に止水材19を充填する。図4(d)は、止水材19が充填された状態を示す図である。図3(e)に示す工程では、図4(d)に示すように、止水材19を、ソイルセメント2の固化範囲2bに形成された遮水層形成用溝17に充填する。
図3(e)に示す工程では、図4(d)に示すように、ソイルセメント2の固化範囲2bでの止水材19の注入と並行して、ソイルセメント2の未固化範囲2aに鋼矢板25を挿入する。このとき、図4(b)で撤去した鋼矢板25bは、撤去後の溝を用いて再度挿入される。
図4(e)は、遮水層形成用溝17が新たに形成された状態を示す図、図4(f)は、止水材19が新たに充填された状態を示す図である。図4(e)に示すように、後行して施工した図4(a)における未固化範囲2aにおいても、上述した先行施工部と同様に、ソイルセメント2が固化した後、鋼矢板25の引き抜きの摩擦が小さいうちに、ソイルセメント地中連続壁6の固化範囲2bから鋼矢板25bを含む鋼矢板25を引き抜く。そして、鋼矢板25を引き抜いた跡である遮水層形成用溝17を形成する。その後、図4(f)に示すように、遮水層形成用溝17に止水材19を充填する。
遮水壁1を構築する際には、上述したような各工程を施工区間ごとに時間差をおいて繰り返すことにより、完成済みの部分を延長していく。
遮水壁1を構築する際、図3(b)に示す工程における鋼矢板25、鋼矢板27の挿入には、クレーン等を用いる。鋼矢板25、鋼矢板27は、ソイルセメント地中連続壁6の下端に到達しないように沈設する。
図3(c)および図3(d)に示す工程における鋼矢板25、鋼矢板27の引き抜きは、ソイルセメント2の打設から2〜3日後が適切である。引き抜きには、油圧ジャッキ、ワイヤー式杭抜き機とクレーン等を用いる。一般的な鋼矢板を用いた場合、モニタリング層形成用溝21、遮水層形成用溝17の最小幅は10mm程度となる。
図3(c)および図3(d)に示す工程で、ソイルセメント地中連続壁6と鋼矢板25、鋼矢板27との摩擦が大きく引き抜きが困難となることが予想される場合は、図3(b)に示す工程の前に、鋼矢板25、鋼矢板27に摩擦低減のための被覆材を貼り付けまたは塗布しておく。
このように、第1の実施の形態では、ソイルセメント地中連続壁6の内部に、鋼矢板27、鋼矢板25の挿入・引き抜きを行なってモニタリング層15、遮水層13を形成する。この方法によれば、既存の施工機械を用いて遮水壁1を施工することが可能である。
完成後の遮水壁1は、内部に形成されたモニタリング層15を用いた漏水の検知が可能となる。遮水壁1では、モニタリング層15用いるため、周辺の地盤7への漏水が生じる前に、遮水壁1の漏水の有無を検知できる。また、モニタリング層15を区画化することにより、漏水位置を容易に特定できる。そのため、漏水位置のみを対象として止水注入を行なって、漏水箇所を容易に補修することができる。
遮水壁1のモニタリング層15は、モルタル充填部にモルタル23を充填してモニタリング層形成用溝21を区画化する。モルタル23を充填することにより、地盤7の土圧によるモニタリング層15の閉塞を防止できる。
遮水壁1は、変形追従性を有する止水材19を充填して形成された遮水層13を設けることにより、耐震性を高めることができる。特に、鋼矢板のみでは、継手部を完全に止水することが困難であるが、本発明では、継手部(拡幅部17b)に止水材19が充填されるため、確実に止水することができる。また、残置される鋼矢板25aの継手部には、止水材19が隙間に回り込んで充填されるため、その隙間を確実に止水することができる。
なお、前述の例では、鋼矢板25、27を撤去してから、止水材19を充填する例について説明したが、対象範囲の鋼矢板を全て撤去した後に止水材19を充填せず、鋼矢板の撤去と止水材の充填を並行して行ってもよい。例えば、鋼矢板を所定ピッチで撤去し、撤去された部位に止水材19を充填し、その後、残りの鋼矢板を撤去し、止水材19を充填してもよい。または、鋼矢板を所定量だけ吊り上げた状態で、止水材19を充填し、下方から徐々に鋼矢板の吊り上げと止水材の充填を行ってもよい。
また、これらを組み合わせて、所定ピッチで鋼矢板を撤去した後、残りの鋼矢板を所定量吊り上げて、下方から止水材を充填しながら、鋼矢板を撤去してもよい。このようにすることで、鋼矢板撤去後に、土圧によって遮水層形成用溝17が塞がることを防止しつつ、止水材19を遮水層形成用溝17に充填することができる。
なお、第1の実施の形態では、直線型の鋼矢板25、鋼矢板27を用いたが、波型等の他の形状の鋼矢板を用いてもよい。
次に、第2の実施の形態について説明する。図5は、第2の実施の形態に係る遮水壁1aの斜視図である。図5に示す遮水壁1aは、第1の実施の形態の遮水壁1とほぼ同様の構成であるが、モニタリング層15のかわりにモニタリング層15aを有する。モニタリング層15aは、第1の実施の形態のモニタリング層15において、モルタル23が充填されたモルタル充填部を除く部分に透水性材料31が充填される。
遮水壁1aは、第1の実施の形態の遮水壁1とほぼ同様の方法で構築される。遮水壁1aは、モニタリング層15を形成する際に、モニタリング層形成用溝21のモルタル充填部にモルタル23を充填した後、モニタリング層形成用溝21の通常部21aおよびモルタル23が充填されない拡幅部21bに透水性材料31を充填する。透水性材料31としては、例えば川砂などを使用することができる。
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、モニタリング層形成用溝21のモルタル充填部を除く部分に透水性材料31を充填することにより、地盤7の土圧によるモニタリング層15aの閉塞をより確実に防止できる。
第1、第2の実施の形態では、止水材19としてPVAを用いて遮水層13を形成した。これは、室内での貫入試験により、PVAは、変形量と貫入抵抗値が比例関係にあることが確認されており、遮水層13の形成に適切な変形追従性を有すると考えられるためである。また、室内での透水試験により、PVAの透水係数が充分に小さいことが確認されており、止水材19にPVAを用いて上述の10mm程度の遮水層13を形成すれば、廃棄物処分場の遮水層として指針に規定されている性能を満たすと考えられるためである。
第1、第2の実施の形態では、止水材19として他の材料を用いて遮水層を形成してもよい。止水材19は、シリカ系注入材(水ガラス)等を用いてもよい。
次に、第3の実施の形態について説明する。図6は、第3の実施の形態に係る遮水壁1bの斜視図である。図6に示す遮水壁1bは、第1の実施の形態の遮水壁1から、遮水層13を省いたものである。遮水壁1bは、ソイルセメント地中連続壁6の内部に、モニタリング層15のみが設けられる。
遮水壁1bのモニタリング層15は、第1の実施の形態の遮水壁1のモニタリング層15と同様の方法で構築される。
第3の実施の形態においても、ソイルセメント地中連続壁6の内部に、鋼矢板27の挿入・引き抜きを行なってモニタリング層15を形成するため、既存の施工機械を用いて遮水壁1bを施工することが可能である。
完成後の遮水壁1bは、内部に形成されたモニタリング層15を用いた漏水の検知が可能となる。遮水壁1bでは、周辺の地盤への漏水が生じる前に、漏水の有無を検知できる。また、モニタリング層15を区画化することにより、漏水位置を容易に特定できる。そのため、漏水位置のみを対象として止水注入を行なって、漏水箇所を容易に補修することができる。
遮水壁1bのモニタリング層15は、モルタル充填部にモルタル23を充填してモニタリング層形成用溝21を区画化する。モルタル23を充填することにより、地盤7の土圧によるモニタリング層15の閉塞を防止できる。
遮水壁1bのモニタリング層15では、第2の実施の形態の遮水壁1aのモニタリング層15aと同様に、モニタリング層形成用溝21のモルタル充填部を除く部分に透水性材料を充填してもよい。これにより、地盤7の土圧によるモニタリング層15の閉塞を、より確実に防止できる。
なお、第2、第3の実施の形態においても、直線型の鋼矢板25、鋼矢板27のかわりに、波型等の他の形状の鋼矢板を用いてもよい。
第1から第3の実施の形態では、ソイルセメント地中連続壁6の内部に遮水層13とモニタリング層15(15a)が設けられた遮水壁1(1a)や、モニタリング層15のみが設けられた遮水壁1bを示した。しかし、本発明の遮水壁としては、ソイルセメント地中連続壁6の内部に遮水層13のみを設けてもよい。遮水層13のみであっても、止水材19が柔軟性を有するため、遮水壁の変形にも追従して、止水性能を維持することができ、また、従来の方法のように、遮水層13には継部等がないため、確実に遮水性能を確保することができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1、1a、1b………遮水壁
2………ソイルセメント
2a………固化範囲
2b………未固化範囲
4………溝
6………ソイルセメント地中連続壁
7………地盤
9………不透水層
13………遮水層
15、15a………モニタリング層
17………遮水層形成用溝
19………止水材
21………モニタリング層形成用溝
23………モルタル
25、25a、25b、27………鋼矢板
31………透水性材料

Claims (7)

  1. 地盤内に鉛直方向に設置される遮水壁であって、
    下端部が不透水層に達するように、地盤内に形成されたソイルセメント地中連続壁と、
    前記ソイルセメント地中連続壁の内部に鉛直方向に形成されたモニタリング層形成用溝を、所定の間隔で区画化して形成されたモニタリング層と、
    を具備し、
    前記モニタリング層形成用溝は、所定の間隔で設けられたモルタル充填部を有し、
    前記モニタリング層は、前記モルタル充填部にモルタルを充填して前記モニタリング層形成用溝を区画化することで形成され、
    前記モニタリング層を用いて、前記遮水壁の漏水の有無を検知し、漏水部を補修可能であることを特徴とする遮水壁。
  2. 前記ソイルセメント地中連続壁の内部であって、前記モニタリング層の内側に形成された遮水層形成溝に、変形追従性を有する止水材を充填して形成された遮水層をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の遮水壁。
  3. 前記モニタリング層は、前記モルタル充填部を除く部分に透水性を有する材料が充填されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の遮水壁。
  4. 地盤内に鉛直方向に設置される遮水壁の構築方法であって、
    下端部が不透水層に達するように、地盤内にソイルセメント地中連続壁を形成する工程(a)と、
    ソイルセメントが固化する前に、前記ソイルセメント地中連続壁の内部に第1の矢板を鉛直方向に挿入する工程(b)と、
    前記ソイルセメントが固化した後に、前記ソイルセメント地中連続壁から前記第1の矢板を引き抜いてモニタリング層形成用溝を形成する工程(c)と、
    前記モニタリング層形成用溝を所定の間隔で区画化し、モニタリング層を形成する工程(d)と、
    を具備することを特徴とする遮水壁の構築方法。
  5. 前記工程(b)で、前記ソイルセメント地中連続壁の内部に、前記第1の矢板と平行に第2の矢板を挿入し、
    前記工程(c)で、前記ソイルセメント地中連続壁から前記第2の矢板を引き抜いて遮水層形成用溝を形成し、
    前記工程(d)で、前記遮水層形成用溝に変形追従性を有する止水材を充填して遮水層を形成することを特徴とする請求項記載の遮水壁の構築方法。
  6. 前記工程(d)で、前記モニタリング層形成用溝に所定の間隔で設けられたモルタル充填部にモルタルを充填することにより、前記モニタリング層形成用溝を区画化することを特徴とする請求項または請求項記載の遮水壁の構築方法。
  7. 前記モルタル充填部を除く部分に透水性を有する材料を充填する工程(e)をさらに具備することを特徴とする請求項記載の遮水壁の構築方法。
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