JP5758182B2 - アルミニウム材 - Google Patents
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Description
<1> マグネシウム含有量が1重量%以上8重量%以下、ケイ素含有量が0.0001重量%以上0.02重量%以下、鉄含有量が0.0001重量%以上0.03重量%以下であり、
アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、鉄以外の元素の含有量が、それぞれ0.005重量%以下であり、かつ、
アルミニウム、マグネシウム以外の元素の含有量の合計が、0.1重量%以下であるアルミニウム合金を圧延し、さらに表面処理してなり、
前記アルミニウム合金は、合金マトリックス中に金属間化合物粒子を含み、
合金表面において観察される金属間化合物粒子のうち、
粒子サイズが0.1μm 2 以上100μm 2 未満の金属間化合物粒子の密度が、1000個/mm 2 以下であり、
粒子サイズが100μm 2 以上の金属間化合物粒子の密度が、10個/mm 2 以下であり、かつ、
単位面積当りの金属間化合物粒子の占有面積が、0.5%以下であり、
燃料電池の電解液に接触するセパレータまたは筐体に用いられるアルミニウム材。
<2> 前記表面処理が、陽極酸化処理である前記<1>に記載のアルミニウム材。
<3> 前記表面処理が、金メッキ処理である前記<1>に記載のアルミニウム材。
<4> 前記アルミニウム合金の0.2%耐力が、150N/mm2以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載のアルミニウム材。
0.2%耐力が150N/mm2以上であるアルミニウム合金は、応力が加えられても変形が少なく、建築材料、自動車材料などの構造材料、および電極などの蓄電デバイス材料として好適に使用される。
ここで、合金表面において観察される金属間化合物粒子のうち、粒子サイズが0.1μm2以上100μm2未満の金属間化合物粒子の密度が、1000個/mm2以下であることが好ましく、500個/mm2以下であることがより好ましい。
また、上記0.1μm2以上100μm2未満の金属間化合物粒子の密度条件を満たすと共に、粗大な化合物である、粒子サイズが100μm2以上の金属間化合物粒子の密度が、10個/mm2以下であることが好ましい。
ここで、粒子サイズ、粒子密度は、アルミニウム合金の表面を鏡面研磨後に、エッチング液により表面をエッチングして、撮影した光学顕微鏡写真から求めることができる。
なお、粒子サイズは、光学顕微鏡写真において観察されるそれぞれの金属間化合物粒子が占める面積から判断する。
該占有面積は、アルミニウム合金の単位面積当りにおいて観測される個々の金属間化合物粒子の粒子サイズの合計、すなわち、個々の粒子が占める面積の合計を表す。
本発明において、「表面処理」とは、アルミニウム合金の表面をアルミニウム合金以外の成分からなる皮膜にて被覆することを意味する。表面処理を行うことにより、耐食性がより向上するという利点がある。
表面処理の方法としては、アルミニウム合金を陽極酸化して該合金表面に酸化皮膜を形成する陽極酸化処理や、アルミニウム合金の表面を金属メッキする金属メッキ処理、その他化学皮膜処理や塗装等が挙げられる。なお、金属メッキ処理に好適に使用される金属としては、金、クロム、ニッケル等の金属あるいはこれらを含む合金が挙げられる。
これらの表面処理の中でもよりアルミニウム合金の耐食性を向上させることができる点で、陽極酸化処理、金属メッキ処理が好ましい。また、陽極酸化処理による酸化皮膜は絶縁性であり、金属メッキによるメッキ膜は導電性であるという特徴を有することから、本発明のアルミニウム材は、使用目的に応じて導電性、絶縁性を適宜付与することができる。
表面処理において、アルミニウム合金の表面に形成される皮膜の厚みは、該合金表面を実質的に欠陥なく被覆できる厚みがあればよい。
具体的には、陽極酸化処理による酸化皮膜の場合、通常、5〜50μm、好ましくは、8〜15μmである。また、金属メッキ皮膜の場合には、通常、0.01〜1μm、好ましくは、0.05〜0.5μmである。
(1)アルミニウム合金の調製方法
上記のアルミニウム合金は、例えば、高純度アルミニウム(純度:99.999%以上)を約680〜800℃で溶融し、所定量のマグネシウム(純度:99.99%以上)を溶融アルミニウム中に挿入して合金溶湯を得、合金溶湯に含まれる水素ガスや非金属介在物を除去して清浄にする処理(例えば、合金溶湯の真空処理)を行い製造することができる。真空処理は、通常、約700℃〜約800℃で約1時間〜約10時間、真空度0.1〜100Paの条件で行われる。合金を清浄にする処理としては、フラックス、不活性ガスや塩素ガスを吹き込む処理も利用できる。真空処理などで清浄にされた合金溶湯は、通常、鋳型にて鋳造され、鋳塊とされる。鋳型は50〜200℃に加熱した鉄や黒鉛製を用いて、680〜800℃の合金溶湯を流し込む方法で鋳造する。また、一般的に利用されている連続鋳造により鋳塊を得ることもできる。
鋳塊の圧延加工においては、例えば、熱間圧延と冷間圧延とを行い、鋳塊を板材に加工する。熱間圧延は、例えば、鋳塊を温度350〜450℃、1パス加工率2〜20%の条件で、目的の厚さまで繰り返し行われる。
熱間圧延後には、通常、冷間圧延の前に焼鈍処理を行う。焼鈍処理は、例えば、熱間圧延した板材を、350〜450℃に加熱、昇温後直ちに放冷してもよいし、1〜5時間程度保持後に放冷してもよい。この処理にて、材料が軟質化して、冷間圧延に好ましい状態が得られる。
冷間圧延は、例えば、アルミニウム合金の再結晶温度未満の温度、通常、室温から80℃以下で、1パス加工率1〜10%の条件で、目的の厚さまで繰り返し行われる。冷間圧延により、薄い板材で、0.2%耐力が150N/mm2以上であるアルミニウム合金が得られる。
表面処理は、アルミニウム合金を陽極酸化処理する方法、又は金属メッキ処理する方法等により行われる。
以下、表面処理の好適な方法を例示する。
陽極酸化処理は、アルミニウム合金を陽極酸化する工程(以下、工程(a1)と称す。)及び封穴処理する工程(以下、工程(a2)と称す。)を有する方法により行うことができる。
工程(a1)における好適な方法を例示すると、アルニウム合金を20%希硫酸に浸漬し、温度5〜20℃、電圧10〜30V、電流0.1〜10A/dm2、時間10〜60分の条件下で行うことで、該アルミニウム合金の表面に酸化皮膜が形成される。
なお、工程(a1)後の酸化皮膜には、無数の欠陥が存在する場合が多い。このような欠陥が存在すると、アルミニウム材の耐食性を低下させる傾向にある。そのため、工程(a2)により、酸化皮膜の欠陥を封穴処理する。
工程(a2)における封穴処理の好適な条件を例示すると、5%酢酸ニッケル水溶液に浸漬し、温度80〜95℃、時間10〜60分の条件が挙げられる。
なお、工程(a1)の前、工程(a1)と工程(a2)の間、及び工程(a2)の後に、アルミニウム合金を洗浄する工程を追加することができる。洗浄は水などを使って行えばよい。
金属メッキ処理は、対象となる金属前駆体(複数種でもよい)を含む溶液にアルミニウム合金を浸漬し、アルミニウム合金の表面に金属皮膜を形成する方法である。その方法としては、従来公知の電解メッキ又は無電解メッキにおける方法を採用することができる。
好適な一例として、金メッキ処理の方法を例示すると、アルミニウム合金をシアン化金水溶液に浸漬し、温度40〜60℃、電圧1〜10V、時間10〜60秒の条件下で行えばよい。
(1)アルミニウム合金の成分分析
発光分光分析装置(型式:ARL−4460、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用し、アルミニウム合金中のMg、Si、Fe、Cu、Ti、Mn、Ga、Ni、V、Znを定量した。
加工前のアルミニウム合金の断面積(S0)と加工後のアルミニウム合金の断面積(S)から下式により算出した。
加工率(%)=(S0−S)/S0×100
アルミニウム合金の表面を鏡面研磨した後、アルミニウム合金を20℃、1重量%水酸化ナトリウム水溶液に60秒間浸漬してエッチングし、水洗した。次いで、光学顕微鏡を使って表面を撮影した。撮影倍率200倍の光学顕微鏡写真から、金属間化合物粒子の粒子サイズ、粒子密度(単位面積当りの個数)及び占有面積を求めた。なお、光学顕微鏡写真での判断が困難な0.1μm2未満の粒子はカウントしていない。
強度は、JIS5号試験片についてINSTRON 8802を使用して、試験速度:20mm/分、0.2%オフセット法により求めた。
アルミニウム合金を表面処理して形成された皮膜の厚みは、フィッシャー・インストルメンツ社製膜厚測定器を使用して測定した。
(i)アルミニウム合金A
高純度アルミニウム(純度:99.999%以上)を750℃で溶融し、マグネシウム(純度:99.99%以上)を溶融アルミニウム中に挿入して、Mg含有量が2.5重量%であるAl−Mg合金溶湯を得た。次に、合金溶湯を温度750℃で、2時間、真空度50Paの条件で保持して清浄化した。清浄化した合金溶湯を150℃の鋳鉄鋳型(22mm×150mm×200mm)にて鋳造し、鋳塊を得た。鋳塊の成分を表1に示す。
次いで、鋳塊を次の条件で溶体化処理した。
鋳塊を室温(25℃)から430℃まで50℃/時の速度で昇温し、430℃で10時間保持した。引き続き、500℃まで50℃/時の速度で昇温し、500℃で10時間保持した。その後、500℃から200℃まで300℃/時の速度で冷却した。
溶体化処理した鋳塊の両面を2mm面削加工した後、熱間圧延してアルミニウム合金板を得た。熱間圧延は、350℃から450℃にて厚さ18mmから3mmまで加工率83%で行った。次に、熱間圧延した板材を温度370℃に加熱、昇温後1時間保持して、放冷する方法で、焼鈍処理を行った。次に、アルミニウム合金板を冷間圧延してアルミニウム合金Aからなる圧延板を得た。冷間圧延は50℃以下にて厚さ3mmから0.5mmまで加工率83%で行った。
アルミニウム合金A(圧延板)の強度(0.2%耐力)およびアルミニウム合金A(圧延板)の金属間化合物粒子の粒子サイズ、粒子密度、占有面積を求めた。アルミニウム合金A(圧延板)の0.2%耐力を表2に示し、粒子密度、占有面積を表3、表4にそれぞれ示す。
高純度Al(純度:99.999%以上)を普通純度Al(純度:99.8%)に変更したこと以外、アルミニウム合金Aの製造方法と同じ操作を行ってアルミニウム合金Bからなる圧延板を得た。アルミニウム合金B(圧延板)の0.2%耐力を表2に示し、粒子密度、占有面積を表3、表4にそれぞれ示す。
(1)陽極酸化処理アルミニウム材の製造
実施例1として、アルミニウム合金A(圧延板)に対して、陽極酸化処理として、陽極酸化(20%希硫酸、温度:10℃、電圧:15V、時間:20分)及び封穴処理(5%酢酸ニッケル水溶液、温度:90℃、時間:20分)を行い、陽極酸化皮膜10μmを有する実施例1のアルミニウム材を得た。
また、比較例1として、アルミニウム合金A(圧延板)に代えて、アルミニウム合金B(圧延板)を使用した以外は、実施例1と同様にして、陽極酸化皮膜10μmを有する比較例1のアルミニウム材を得た。
実施例1及び比較例1のアルミニウム材(圧延板)の耐食性評価はAl溶出試験により行った。
実施例1及び比較例1のアルミニウム材からなる試験片(縦40mm、横40mm、厚さ0.5mm)を硫酸(濃度1mol/L、温度80℃)に浸漬した。浸漬後、2時間経過後、溶出したAlを誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)により定量した。
実施例1のアルミニウム材のAl溶出速度は、比較例1のアルミニウム材の溶出速度の90%であった。
(1)金メッキ処理アルミニウム材の製造
実施例2として、アルミニウム合金A(圧延板)をシアン化金(メルテック社製)の水溶液に浸漬し、温度:50℃、電圧:4V、時間:20秒の条件にて、金メッキ処理して、金メッキ層0.1μmを有する実施例2のアルミニウム材を得た。
また、比較例2として、アルミニウム合金A(圧延板)に代えて、アルミニウム合金B(圧延板)を使用した以外は、実施例2と同様にして、金メッキ層0.1μmを有する比較例2のアルミニウム材を得た。
実施例2及び比較例2のアルミニウム材(圧延板)の耐食性評価はAl溶出試験により行った。
実施例2及び比較例2のアルミニウム材からなる試験片(縦40mm、横40mm、厚さ0.5mm)を硫酸(濃度1mol/L、温度80℃)に浸漬した。浸漬後、2時間経過後、溶出したAlを誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)により定量した。
実施例2のアルミニウム材のAl溶出速度は、比較例2のアルミニウム材の溶出速度の84%であった。
Claims (4)
- マグネシウム含有量が1重量%以上8重量%以下、ケイ素含有量が0.0001重量%以上0.02重量%以下、鉄含有量が0.0001重量%以上0.03重量%以下であり、
アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、鉄以外の元素の含有量が、それぞれ0.005重量%以下であり、かつ、
アルミニウム、マグネシウム以外の元素の含有量の合計が、0.1重量%以下であるアルミニウム合金を圧延し、さらに表面処理してなり、
前記アルミニウム合金は、合金マトリックス中に金属間化合物粒子を含み、
合金表面において観察される金属間化合物粒子のうち、
粒子サイズが0.1μm 2 以上100μm 2 未満の金属間化合物粒子の密度が、1000個/mm 2 以下であり、
粒子サイズが100μm 2 以上の金属間化合物粒子の密度が、10個/mm 2 以下であり、かつ、
単位面積当りの金属間化合物粒子の占有面積が、0.5%以下であり、
燃料電池の電解液に接触するセパレータまたは筐体に用いられるアルミニウム材。 - 前記表面処理が、陽極酸化処理である請求項1に記載のアルミニウム材。
- 前記表面処理が、金メッキ処理である請求項1に記載のアルミニウム材。
- 前記アルミニウム合金の0.2%耐力が、150N/mm2以上である請求項1から3のいずれかに記載のアルミニウム材。
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