JP2012188709A - 高強度高導電性二相銅合金及びその製造方法 - Google Patents

高強度高導電性二相銅合金及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】晶出相の粗大化を防止してFe濃度の増大に応じて強度を向上させつつ、導電性にも優れたCu-Fe系の高強度高導電性二相銅合金及びその製造方法強度を提供する。
【解決手段】質量%でFeを4%以上15%以下含有し残部Cu及び不可避的不純物からなり、Cu母相2と第二相とからなり、第二相はさらに、{(圧延平行方向の長さ)/(圧延方向の厚み)}で表される比が2以上で、かつ圧延平行方向の断面から観察したときの互いの間隔が4.0μm以下である長晶出物4と、{(圧延平行方向の長さ)/(圧延方向の厚み)}で表される比が2未満で、かつ圧延平行方向及び圧延方向に平行な面で切断した円相当径の平均値で1.0μm以下である短晶出物6とからなる高強度高導電性二相銅合金である。
【選択図】図2

Description

本発明は強度と導電性に優れ、例えば二次電池の集電体に好適に適用できる高強度高導電性二相銅合金及びその製造方法に関する。
次世代の大容量リチウムイオン電池用集電体において,銅箔メーカーの開発競争が激化している。銅箔はリチウムイオン電池の負極側の集電体に使われ,次世代電池では銅箔に従来以上の引張強度が必要といわれている。これは,電池の容量を増やすため、集電体に塗着される電極活物質が従来のカーボン系材料から他の合金系に替えられると,充放電の繰り返しによる体積変化が大きくなり,構造破壊を引き起こすおそれがあるからである。そこでこのサイクル寿命を確保するため,銅箔の合金化が必要となり、電解銅箔に無い高い強度を持つ材料の開発が進められている。
一般に、Cuに強化元素を添加して高強度化すると導電率が低下し、一方で導電率を上昇させるためCu純度を高めると低強度となる関係がある。そこで、Cu母相中に第二相を晶出させた合金系(複相合金)が開発された。この合金は、強加工することにより第二相がファイバ状に分散され、りん青銅と同等の強度を持ちつつ、母相はCuであるため、導電率が60%IACS(international annealed copper standard、焼鈍標準軟銅に対する電気伝導度の比)を超える高導電性材が得られている。この複相合金系としては、Cu-Cr、Cu-Agなどが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
又、本出願人は、Feを4〜10質量%含むと共にMgを添加したCu-Fe系合金を報告している(特許文献4参照)。
特開平9-249925号公報 特開平6-279894号公報 特開平10-53824号公報 特開2009-79283号公報
ところで、Cu-Fe系合金は、Feを4%以上含有することでCu母相中に第二相として晶出し、いわゆる「複相合金」を構成し、第二相による複合強化の効果を得ている。そして、特許文献4に記載されているように、Cu-Fe系複相合金の強度はFe濃度に比例して高くなる傾向にあるものの、Fe濃度が高くなるにつれて溶解温度が高くなり,温度が低下して液相が凝固する時の冷却時間が長くなるために晶出相が粗大化し、Fe濃度が10質量%を超えても強度はほとんど向上しないという問題がある。
図1は、特許文献4(表1)に記載されている実施例、及び本願の後述する実施例及び比較例のCu-Fe系合金における、Fe濃度と強度(0.2%耐力)との関係を示す。なお、本願の実施例は冷却後のインゴットを溶体化処理せずに冷間圧延して製造したのに対し、本願の比較例は溶体化処理を行った点が相違している。ここで、溶体化処理とは微細な晶出相を母相に固溶させる熱処理である。
図1より、特許文献4の実施例及び本願の比較例から、Fe濃度が10質量%以上になると、0.2%耐力はむしろ低下する傾向にあることがわかる。従って、本願の実施例に示すように、Fe濃度が10質量%以上で溶解温度が高くなっても晶出相を粗大させないようにして、Fe濃度に応じて強度を向上させることが要求される。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、晶出相の粗大化を防止してFe濃度の増大に応じて強度を向上させつつ、導電性にも優れたCu-Fe系の高強度高導電性二相銅合金及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは種々検討した結果、Cu-Fe系二相合金の材料を溶解した後、第二相が粗大化する高温(1100℃以上)の領域の冷却速度を速くしてインゴットを製造し、このインゴットを冷間圧延することで、晶出相を粗大にさせずに合金の強度を向上させることに成功した。特にFe添加量が10%以上の場合、溶解温度が高くなって晶出相も粗大になり易いので、本発明が有効となる。又、インゴットを溶体化処理すると、温度が低下して液相が凝固する時の材料を高い冷却速度で冷却して微細な晶出相を得ても、この微細粒が溶体化処理で固溶して消失してしまい、結果として第二相が延伸せず強度が低下する。そのため、本発明ではインゴットを溶体化処理しない。
上記の目的を達成するために、本発明の高強度高導電性二相銅合金は、質量%でFeを4%以上15%以下含有し残部Cu及び不可避的不純物からなり、Cu母相と第二相とからなり、前記第二相はさらに、{(圧延平行方向の長さ)/(圧延方向の厚み)}で表される比が2以上で、かつ圧延平行方向の断面から観察したときの互いの間隔が4.0μm以下である長晶出物と、{(圧延平行方向の長さ)/(圧延方向の厚み)}で表される比が2未満で、かつ圧延平行方向及び圧延方向に平行な面で切断した円相当径の平均値で1.0μm以下である短晶出物とからなる。
さらに、0.01〜0.5質量%のMgが合金中に固溶してなることが好ましい。
本発明の高強度高導電性二相銅合金において、前記高強度高導電性二相銅合金の材料を溶解した後、1100℃まで2℃/sを超える冷却速度で冷却し、冷却後のインゴットを溶体化処理せずに冷間圧延して製造されることが好ましい。
本発明の高強度高導電性二相銅合金の製造方法は、前記高強度高導電性二相銅合金の製造方法であって、質量%でFeを4%以上15%以下含有し、必要に応じ0.01〜0.5質量%のMgが合金中に固溶し残部Cu及び不可避的不純物からなるCu合金材料を溶解した後、1100℃まで2℃/sを超える冷却速度で冷却し、冷却後のインゴットを溶体化処理せずに冷間圧延した後、時効処理を行い、さらに時効後冷間圧延を行う。
前記時効処理を400℃以上600℃以下,かつ0.5〜20時間の条件で行うことが好ましい。
前記冷間圧延の前に、850℃以下で熱間圧延又は熱間鍛造を行ってもよい。熱間圧延又は熱間鍛造はインゴットの形状に応じ、必要であれば(例えば、インゴットの厚みが大きく、冷間圧延のみで厚みを小さくすることが困難な場合など)実施すればよい。例えば連続鋳造のような鋳造機で冷却速度を速くした場合,必ずしも熱間圧延や鍛造は必要ない。熱間圧延や熱間鍛造を実施する理由は製造上の問題であり、冷間圧延では割れが頻発するからである。熱間圧延や熱間鍛造の温度が850℃を超えると割れやすいので、850℃以下が望ましい。
本発明によれば、Fe濃度が10質量%以上になっても晶出相の粗大化を防止して強度を向上させつつ、導電性に優れたCu-Fe系高強度高導電性二相銅合金が得られる。
本発明及び特許文献4の合金のFe濃度と0.2%耐力との関係を示した図である。 本発明の合金の圧延材組織を模式的に示した図である。 本発明の実施例及び比較例の合金のFe濃度と0.2%耐力との関係を示した図である。 実施例14の試料を圧延平行方向及び圧延方向に平行な面で切断した断面の反射電子(BSE)像を示す図である。
以下、本発明に係る高強度高導電性二相銅合金の実施の形態について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%を示すものとする。
[Fe]
上記銅合金はFeを4%以上15%以下含有する。Feが4%以上含有されるとCu母相中に第二相として晶出し、いわゆる「複相合金」を構成する。Fe含有量が4%未満であるとFeはまったく晶出せず、第二相による複合強化の効果が少ない。
一方、後述するように、本発明においては、合金材料を溶解した後、第二相が晶出する凝固温度範囲(1100℃以上)の冷却速度を速くすることで、Feが10%以上であっても晶出相を粗大化させずに合金の強度を向上させることができる。Fe含有量の上限を15%としたのは15%を超えると溶解温度が上昇するためCuが気相となり,溶解炉壁に蒸着して溶解装置の故障等を招くためである。
従って、本発明によれば、Fe濃度を高くするのに応じ、強度を向上させることが可能となる。特に、後述するMgを添加した場合には、Fe濃度10〜15%の範囲で、0.2%耐力で810MPa以上(Mgを0.2%以上添加した場合は850MPa以上)の強度が得られ、40%IACS以上の高導電率が得られる。
[第二相]
第二相は、Cu及び他の化学成分を含む合金溶湯から鋳造時にこれらの元素が晶出したものであり、晶出の際、第二相にFeが多く分配される。Cu,Feは互いに固溶する元素であり,Cu母相中に晶出する第二相はCuとFeを含むが、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)による半定量分析によれば、第二相中のFe濃度は約80%以上と考えられる。但し、これに限定されるものではない。
又、本発明において第二相は,{(圧延平行方向の長さ)/(圧延方向の厚み)}で表される比が2以上で、かつ圧延平行方向の断面から観察したときの互いの間隔が4.0μm以下である長晶出物と、{(圧延平行方向の長さ)/(圧延方向の厚み)}で表される比が2未満で、かつ圧延平行方向及び圧延方向に平行な面で切断した円相当径の平均値が1.0μm以下である短晶出物とからなる。
なお、第二相の長晶出物及び短晶出物は、最終工程終了後の圧延組織の断面を研磨した後、SEM(走査型電子顕微鏡)のBSE(反射電子)像により、母相と異なる組成として観察することができる。組織が観察しにくい場合は、エッチング又は電解研磨を行ってもよい。
上記した長晶出物は、従来のCu-Fe系複相合金においても形成され、Cu母相内に例えば針状に晶出し、加工によって延伸して合金強度を向上させる。一方、短晶出物は、インゴットの鋳造条件(冷却速度が速い場合)によっては晶出せず、さらにインゴットを溶体化処理すると消失してしまう。又、短晶出物は銅母相中に微細に分散して存在することで、後述の強化機構i)が作用し、加工時に長晶出物がさらに延伸し、合金強度のより一層の向上に寄与すると考えられる。特に、Feが10%以上において、溶体化処理して短晶出物を消失させると、合金の強度向上が図れず、Feが10%未満の合金よりかえって強度が低下する。
ここで、第二相を延伸するには,Cu相が強化されるか第二相が軟化するかの少なくともいずれかが必要であるが、短晶出物が銅母相中に分散してCu相が強化されることで、Cu相と第二相の強度差が縮小され、第二相が延伸される。
ここで、複相合金は,複合則を利用し、又は異相界面の面積を増加させることで強化する合金であり、異相界面の面積を増加することによる効果が大きい。このため、i)第二相が合金中に数多く分散している(同じ体積分率なら微細に分散している)ほど、ii)第二相が引き伸ばされやすいほど、iii)加工度が大きくなるほど、高強度化される。これらの理由から,第二相の形状及び大きさを制御するとより高い強度が得られる。
図2は、本発明の合金の圧延材組織を模式的に示したものである。この図において、圧延材組織は、Cu母相2のマトリクス中に第二相(長晶出物)4、第二相(短晶出物)6が分散されている。そして、「板幅方向を「圧延直角方向t」とし、板の長手方向を「圧延平行方向L」とする。また、第二相の圧延方向の厚みをsとする。図2において、圧延平行方向Lの第二相の長さをL1とする。圧延平行方向は、例えば圧延表面に形成された圧延ロールの目を圧延平行方向と定めればよい。
長晶出物4は、L1/sで表されるアスペクト比が2以上であり、延伸されて例えばリボン状(舌片状)の形態を示す。一方、短晶出物6は、L1/sで表されるアスペクト比が2未満であり、例えば球状の形態を示し、さらに圧延平行方向L及び圧延方向に平行な面で切断した円相当径の平均値が1.0μm以下である。ここで、円相当径とは、切断面の面積と同一面積の円の直径である。
また、長晶出物4は、圧延平行方向Lの断面から観察したときの互いの間隔dが4.0μm以下である。ここで、圧延平行方向Lの断面とは、圧延平行方向Lに沿い圧延表面に垂直な面で圧延材を切断した時の断面をいう。dは圧延方向の長晶出物4同士の間隔でもある。長晶出物4同士の間隔dが小さくなるほど、強度が高くなる。又、dは、圧延加工度を高くすることで小さくすることができる。
同様な理由から、各長晶出物4の圧延方向の厚みsも薄い方が強度が高くなり、sが300nm以下であることが好ましい。
ここで、複相合金は複合則を利用した強化機構であり,通常、複合則では材料の強度(σ:応力)は、第一相及び第二相の体積分率(それぞれV1,V2)に依存するが(σ=V1σ1+V2σ2)、第二相の体積分率よりはむしろ分散した第二相間の距離の方が強度への寄与が大きい。つまり、第二相同士の間隔が加工によって狭まること、つまりCu母相と第二相の異相界面の面積を増大させること、すなわち、第二相厚みが薄くなることが最も高強度化につながる。
そして、長晶出物の厚み及び長晶出物同士の間隔を狭めるためには、個々の第二相が微細となり、その厚みも小さくなっていることが必要である。すなわち、複相合金を強化するためには,第二相の初期晶出物を微細とさせ、さらにその後の加工により第二相を変形させて厚みを小さくして互いに近接させることが重要である。そして、加工した際に第二相がすべて剪断されるだけの強度がこの材料の強度を示し、上記界面の数が多いほど強度が高くなると考えられる。
なお、本発明の銅合金へのMgの添加はFe晶出物の微細化には寄与しないが、Cu相を強化することでFe晶出物の延伸を容易にすると考えられる。
短晶出物が形成される鋳造条件(具体的には、溶解後の冷却条件)としては、以下を挙げることができる。まず、上述のように第二相(ここでいう第二相は、長晶出物及び短晶出物をともに含む)が粗大化しないよう、合金材料を溶解した後、1100℃まで2℃/sを超える冷却速度で冷却する。これにより、微細な第二相(長晶出物及び短晶出物)を得ることができる。なお、合金材料を溶解した後、1100℃までの冷却速度の上限は特に限定されない。なお、合金材料を溶解した後、1100℃まで2℃/sを超える冷却速度で冷却することができる鋳造方法としてESR(Electro Slag Remelting)法や横型連続鋳造法などが挙げられる。
一方,材料が700℃以下まで冷却された後、緩冷却(例えば、12℃/分以下)を施すと,短晶出物が微細な(円相当径で1.0μm以下の)粒子状に析出する。
なお、1100℃〜700℃の温度範囲での冷却速度は、1100℃以上での冷却速度より遅く、700℃以下での冷却速度より速くすればよく、例えば2℃/s〜0.1℃/sとすればよいことが実績値で判明している。
インゴットを冷間圧延する前に熱間圧延又は熱間鍛造を行う場合には、熱間脆性による割れ,又はCu相と第二相の強度差に起因する界面での割れを防ぐため,その加工温度を熱間圧延、熱間鍛造共に850℃以下とすることが好ましい。又、インゴットを冷間圧延後に時効処理すると、導電率が向上するので好ましいが、時効処理が600℃を超えると、析出した第二相(長晶出物及び短晶出物)がCu母相中に固溶して導電率を著しく低下させる。従って、時効処理を400℃以上600℃以下,かつ0.5〜20時間の条件で行うことが好ましい。
なお、950℃以下で水冷程度の急冷を施すと第二相が延伸し難くなることから、熱間圧延又は熱間鍛造を950℃で実施後に水冷程度の急冷を実施することは好ましくない。第二相が延伸し難くなる理由の1つとして、950℃から急冷することで、第二相がCuの過飽和固溶体になって固溶強化して、第二相の強度が高くなることが考えられる。
また、インゴットを溶体化処理すると短晶出物がCu母相に固溶し、最終的に得られる強度が低下する。そのため、インゴットを溶体化処理してはならない。
以上のように溶解後の冷却条件を規定することで短晶出物が析出して第二相が容易に延伸し、Fe濃度に応じた高強度が得られる。特に、溶湯の冷却速度だけでなく、熱間圧延又は熱間鍛造時の熱処理条件、及び時効処理時の熱処理条件を上記のように設定すると、Cu相と第二相の強度差がさらに縮小し、第二相の延伸をさらに容易にすることができ、強度が一層向上する。
なお、時効処理後は強度が低下するので,時効処理後の冷間圧延の加工度η=3.0以上で加工することが好ましい。
[Mg]
0.01〜0.5%のMgを合金中に添加すると、Mgが主にCu母相に固溶する。ii)については,Mgが銅母相へ固溶することにより、銅母相の強度が高くなる。そして、相対的に銅母相と第二相の強度差が小さくなることで、第二相に塑性加工時の力が加わり易くなり、第二相が延伸し易くなる。iii)については,従来の複相合金と同様、加工度を大きくすればよく、複相合金に通常用いられる加工度で十分な強度が得られる。例えば,加工度80%以上とすると、0.2%耐力で700MPa程度まで高強度化される。但し、MgによるCu相の強化により,低加工度でも高強度が得られる。
このようにして晶出相は加工によって延伸し,さらに相間の界面積が増大することで高強度が得られる。その際,固溶したMgは第二相を延伸しやすくする効果がある。Mgは状態図から見て、第二相(Fe相)にはほとんど固溶せず、本発明の合金を実際に電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)により第二相内のMgを分析したところ、Mgが検出限界以下であったことを本発明者らは確認している。
Mgの添加濃度が0.01%未満であると、Fe第二相を延伸させて微細化する効果が得られず、0.5%を超えるとMgがCu母相へ固溶し難くなって酸化物(MgOなど)として晶出する。なお、Mgの添加濃度が0.3%を超えると粗大な粒子(酸化物、ノロ)が発生し、銅箔にした際のピンホールを招くと共に、この粗大粒子の粒径が第二相間の間隔よりも大きいため第二相を分断し,結果的に第二相の延伸を抑制してしまうため,強度が低下することがある。従って、好ましくはMg の含有量を0.3%以下とする。
さらに、Mgは銅合金を固溶強化させると共に、銅合金の再結晶温度を上昇させるので、耐熱性(半軟化温度)が向上する。
合金中の固溶元素の含有割合は、高周波誘導結合(ICP)質量分析装置を用いて測定することができる。
[不可避的不純物]
上記銅合金中の不可避的不純物の含有量は特に制限されず、JISに規格する電気銅やタフピッチ銅の不純物のレベルとしてもよいが、JISに規格する無酸素銅と同一であるのが好ましい。例えば、JIS H 2123に規格する無酸素形銅C1011における、不純物の含有量と同等にすることができる。
これらの不純物としては、Gd,Y,Yb,Nd,In,Pd,Teを挙げることができる。
なお,Feは熱処理で酸化の影響を受けやすいため、軟鋼等の純度の高いものを選択するのが好ましい。但し、銅合金を箔とした場合、Fe中の酸化物はピンホール等の欠陥の原因となる。そのため、FPCやリチウムイオン電池用銅箔等の箔の場合、より純度の高い鉄を使用することが好ましい。
[製造]
本発明の銅合金は以下のようにして製造することができる。まず、電気銅又は無酸素銅を主原料とし、上記化学成分その他を添加した組成を溶解炉にて溶解する。次に、この溶湯を1100℃まで2℃/sを超える冷却速度で冷却してインゴットを得た後、溶体化処理せずに熱間鍛造,もしくは熱間圧延を実施し,その後冷間圧延により,製品板厚まで圧延するが,その間時効処理を1回以上行う。
このように、第二相が晶出する凝固温度範囲(1100℃以上)の冷却速度を速くしてインゴットを製造することで、晶出相を粗大にさせずに合金の強度を向上させることができる。又、インゴットを溶体化処理すると、溶解後の材料を高い冷却速度で冷却して微細な晶出相を得ても、この微細粒が溶体化処理で固溶して消失してしまい、結果として第二相が延伸せず強度が低下する。そのため、本発明ではインゴットを溶体化処理しない。
なお、1100℃〜700℃の温度範囲での冷却速度は、1100℃以上での冷却速度より遅く、700℃以下での冷却速度より速くすればよく、例えば2℃/s〜0.1℃/sとすることができる。
さらに、インゴットを冷間圧延する前に均質化焼鈍、熱間圧延及び熱間鍛造の1つ以上を行ってもよいが、熱間圧延は850℃以下で800℃以上、熱間鍛造は850℃以下、さらに好ましくは800℃以下で行うと好ましい。冷間圧延は、例えば時効後の加工度が95%以上で行うことが好ましく、冷間圧延と焼鈍を1回以上繰り返してもよい。さらに、冷間圧延後の時効処理を400℃以上600℃以下,かつ0.5〜20時間の条件で行うとよい。時効後冷間圧延後に焼鈍(歪取焼鈍)を行ってもよい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明の銅合金は、箔の形態とすることができる。例えば,携帯電話など小型化・高機能化に伴い,フレキシブルプリント基板(FPC)の需要が拡大しており、かかるFPC用銅箔に適用可能である。リチウムイオン電池等の二次電池の負極側の集電体に適用可能である。また、電子・電気機器や自動車等に使用されるリードフレームや端子等の部品に用いられる銅合金にも適用可能である。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.試料の作製
電気銅に表1に示す組成の元素をそれぞれ添加して真空溶解した後、表1に示す冷却速度でインゴットを鋳造した。これを800℃の温度で3時間の条件で均熱保持し、溶体化処理せずに、800℃の温度で熱間圧延を施した。さらに面削して冷間圧延を行い、表1に示す条件で時効処理後、仕上げ冷間圧延を行い、板厚0.080mmの試料を作製した。時効後の冷間圧延の総圧延加工度を99.7%とした。なお、必要に応じて最後に歪取焼鈍を行った(500℃で15秒)。歪取焼鈍を行うことで導電率が向上する。
又、第二相の長晶出物及び短晶出物の形態は、試料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、その反射電子(BSE)像から求めた。長晶出物及び短晶出物の上記アスペクト比は、最終冷間圧延後の合金条を圧延平行方向L及び圧延方向に平行な面で切断し、全体を樹脂に埋めて機械研磨により断面を研磨した。そして、断面の析出物を走査型電子顕微鏡により10視野観察して求めた。短晶出物の円相当径は、最終冷間圧延後の合金条を上記面で切断し、断面の短晶出物を走査型電子顕微鏡により観察して求めた(倍率:5000〜20000倍)。そして、10視野観察して短晶出物の円相当径の平均値(算術平均)を求めた。
合金中の固溶元素の含有割合の測定方法は、高周波誘導結合(ICP)質量分析装置を用いて測定した。
<試料の評価>
(1)強度の評価
JIS-Z2241に従い、試料の引張強度を測定し、0.2%耐力(YS:yielding strength)を求めた。試料はJISに従って作製した。
(2)導電性の評価
四端子法にて、試料の導電率を求めた。単位の%IACS(international annealed copper standard)は、焼鈍標準軟銅に対する電気伝導度の比である。40%IACS以上であれば、導電性が良好であると評価した。
得られた結果を表1及び図3に示す。
表1及び図3から明らかなように、Mgを添加しない実施例1〜4、7,8の場合、Feの含有量が多くなるのにつれて0.2%耐力が順調に向上し、Fe濃度が10質量%以上になっても晶出相の粗大化を防止して強度を向上させるのに成功したことがわかった。
又、Mgを添加した実施例5,6、9〜15の場合、Fe濃度が同一でMgを添加しない実施例に比べ、0.2%耐力が向上した。例えば、Fe濃度が10質量%の場合、Mgを添加した実施例5,6の0.2%耐力は800MPa以上であり、同様な組成を有する特許文献4(実施例15;0.2%耐力=720MPa)より 大幅に強度が向上しており、Feが 10質量%以上で、鋳造時の冷却速度を大きくし、溶体化処理を行わないことの効果が表れている。
なお、図4は、実施例14の試料を圧延平行方向及び圧延方向に平行な面で切断した断面のSEM(BSE)像を示す。Cu母相のマトリクス中に第二相(長晶出物)4、第二相(短晶出物)6が分散されていることがわかる。
一方、Feの含有量が4%未満である比較例1の場合、二相合金が得られず、強度が低下した。
Mgの含有量が0.5%を超えた比較例2の場合、酸化物が大量に発生し、短晶質物の円相当径が100nmを超えて粗大化し、導電率が低下した。
溶解後、1100℃まで2℃/s以下の冷却速度で冷却してインゴットを製造した比較例3,4の場合、長晶質物及び短晶質物が粗大化し、Fe濃度が同一の実施例に比べて強度が大幅に低下した。
冷間圧延後、400℃未満の低温で時効処理した比較例6、及び時効処理しなかった比較例7の場合、導電率が低下した。
時効後冷間圧延の加工度をη=3.0未満とした比較例8の場合、第二相の延伸の程度が小さく、長晶出物の厚みが300nmを超え、強度が低下した。
インゴットを950℃で60秒間溶体化処理した比較例9の場合、短晶質物が固溶して消失し、第二相が延伸し難く、長晶出物の厚みが300nmを超え、Fe濃度が同一の実施例に比べて強度が低下した。
なお、図1は、Mgの含有量が0.3%である本願の実施例(実施例6、14、15)及び比較例(比較例3〜9、但し、比較例3〜8はMgが0.2%)、並びに特許文献4(表1)に記載されている実施例(実施例3,7、13、15、但し実施例15はMgが0.15%)をプロットした。
又、図3は、Mgを含有しない本願の実施例(実施例1〜4、7,8)、Mgを含有した本願の実施例(実施例5、6、9〜15)及び比較例(比較例3〜9)をプロットした。
2 Cu母相
4 第二相(長晶出物)
6 第二相(短晶出物)

Claims (6)

  1. 質量%でFeを4%以上15%以下含有し残部Cu及び不可避的不純物からなり、Cu母相と第二相とからなり、
    前記第二相はさらに、{(圧延平行方向の長さ)/(圧延方向の厚み)}で表される比が2以上で、かつ圧延平行方向の断面から観察したときの互いの間隔が4.0μm以下である長晶出物と、{(圧延平行方向の長さ)/(圧延方向の厚み)}で表される比が2未満で、かつ圧延平行方向及び圧延方向に平行な面で切断した円相当径の平均値で1.0μm以下である短晶出物とからなる高強度高導電性二相銅合金。
  2. さらに、0.01〜0.5質量%のMgが合金中に固溶してなる請求項1に記載の高強度高導電性二相銅合金。
  3. 前記高強度高導電性二相銅合金の材料を溶解した後、1100℃まで2℃/sを超える冷却速度で冷却し、冷却後のインゴットを溶体化処理せずに冷間圧延して製造された請求項1又は2に記載の高強度高導電性二相銅合金。
  4. 請求項1又は2に記載の高強度高導電性二相銅合金の製造方法であって、
    質量%でFeを4%以上15%以下含有し、必要に応じ0.01〜0.5質量%のMgが合金中に固溶し残部Cu及び不可避的不純物からなるCu合金材料を溶解した後、1100℃まで2℃/sを超える冷却速度で冷却し、
    冷却後のインゴットを溶体化処理せずに冷間圧延した後、時効処理を行い、さらに時効後冷間圧延を行う高強度高導電性二相銅合金の製造方法。
  5. 前記時効処理を400℃以上600℃以下,かつ0.5〜20時間の条件で行う請求項4に記載の高強度高導電性二相銅合金の製造方法。
  6. 前記冷間圧延の前に、850℃以下で熱間圧延又は熱間鍛造を行う請求項4又は5に記載の高強度高導電性二相銅合金の製造方法。
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