JP5756547B1 - 表面処理銅箔及び積層板 - Google Patents
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Abstract
Description
まず、本発明の実施形態の説明に先立ち、発明者等が得た知見について説明する。FPC等の配線板には、銅箔基材及び銅箔基材のいずれかの主面上に設けられた粗化銅めっき層を有する表面処理銅箔と、樹脂基材と、を備える積層板(銅張積層板)が用いられている。積層板は、表面処理銅箔の粗化銅めっき層が設けられた側の面と、樹脂基材と、を貼り合わせて形成されている。例えば図5に示すように、FPC100に電子部品等を実装する際の電子部品等の実装位置の位置合わせは、光源101から光を照射しつつ、例えばCCDカメラ102等を用い、銅配線を形成するために表面処理銅箔が除去された箇所の樹脂基材越しに、実装位置の位置決めマーク103を視認して行われる。このため、表面処理銅箔が除去された箇所の樹脂基材には、透明性が高いことが要求されている。しかしながら、積層板を形成する際に樹脂基材と表面処理銅箔とが貼り合わされると、粗化銅めっき層により表面処理銅箔の表面に形成された凹凸が樹脂基材に転写されてしまうため、樹脂基材の透明性が低下してしまう。そこで、表面処理銅箔を貼り合わせて除去した後の樹脂基材のHAZE値や光透過率(以下では、これらをそれぞれ「樹脂基材のHAZE値」や「樹脂基材の光透過率」とも言う。)が所定の値となるように、表面処理銅箔の樹脂基材に貼り合わせられる側の面の表面粗さを調整している。なお、樹脂基材のHAZE値とは、樹脂基材を透過した全光線の光量に対する拡散透過光量(直進せずに拡散した光の量)の割合である。樹脂基材の光透過率は、光の反射や散乱を考慮せずに、平行光線で測定した値である。光の反射や散乱が多いと、樹脂基材の光透過率が低くなる。つまり、樹脂基材の光透過率は、樹脂基材を透過した全光線の光量に対する直進透過光量(拡散せずに直進した光の量)の割合と相関している。ただし、光透過率と直進透過光量とでは、測定機器及び測定方法が異なるため、光透過率の数値の絶対値と直進透過光量の割合の数値の絶対値とは一致しない。このように、樹脂基材のHAZE値と樹脂基材の透過率とはそれぞれ、樹脂基材自体の透明性(濁り度)を示す指標であり、表裏一体の関係にある。例えば、樹脂基材のHAZE値が大きくなると、樹脂基材の光透過率の値が小さくなり、樹脂基材のHAZE値が小さくなると、樹脂基材の光透過率の値が大きくなる。
(1)表面処理銅箔及び積層板の構成
まず、本発明の一実施形態にかかる表面処理銅箔の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかる表面処理銅箔1を備える積層板10の概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる表面処理銅箔1は、銅箔基材2と、銅箔基材2上に形成された銅めっき層3と、銅めっき層3上に形成された粗化銅めっき層4と、を備えている。また、表面処理銅箔1は、樹脂基材としての例えばポリイミド樹脂フィルムの両主面上に、表面処理銅箔1を対向させて、粗化銅めっき層4の側が樹脂基材に接するように表面処理銅箔1を貼り合わせた後、表面処理銅箔1を樹脂基材から除去したとき、樹脂基材のHAZE値が80%以下、透明度が70%以上となり、表面処理銅箔と樹脂基材との間のピール強度が0.6N/mmとなるように形成されている。
(数1)
HAZE値(%)=(拡散透過光量/全光線透過光量)×100
(数2)
透明度(%)={(IC−IR)/(IC+IR)}×100
上述したように、本実施形態にかかる表面処理銅箔1は、銅箔基材2を備えている。銅箔基材2として、例えば圧延銅箔や電解銅箔が用いられる。銅箔基材2として、電解銅箔よりも耐屈曲性に優れ、繰り返して折り曲げても破断しにくい圧延銅箔が用いられるとよりよい。圧延銅箔の形成材料として、例えば無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)やタフピッチ銅(TPC:Tough-Pitch Copper)の純銅が用いられている。無酸素銅とは、JIS C1020やJIS H3100等に規定する純度が99.96%以上の銅材である。無酸素銅には、例えば数ppm程度の酸素が含有されていてもよい。つまり、無酸素銅は、酸素含有量がゼロでなくてもよい。タフピッチ銅とは、例えばJIS C1100やJIS H3100等に規定する純度が99.9%以上の銅材である。タフピッチ銅には、例えば100ppm〜600ppm程度の酸素が含有されていてもよい。圧延銅箔の形成材料として、無酸素銅やタフピッチ銅に、微量のスズ(Sn)や銀(Ag)等の所定の添加材が添加された希薄銅合金が用いられてもよい。これにより、圧延銅箔の耐熱性等を向上させることができる。
銅箔基材2のいずれかの主面上には、例えば電解めっき等により銅めっき層3が形成されている。銅めっき層3は、平滑銅めっき層であり、粗化銅めっき層4の下地層として機能する。銅めっき層3には、所定量の硫黄元素(S)が含まれている。つまり、銅めっき層3は、メルトカプト基を有する有機化合物(有機硫黄化合物)が添加された銅めっき液を用いて形成されている。以下では、銅めっき層3を形成する銅めっき液を、単に「銅めっき液」という。メルトカプト基を有する有機化合物として、例えばビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)が用いられる。
銅めっき層3上には、粗化銅めっき層4が形成されている。これにより、アンカー効果が得られ、後述の積層板10における表面処理銅箔1と樹脂基材11との間の密着性(以下では、単に「密着性」とも言う。)を向上させることができる。粗化銅めっき層4は、主に複数の粗化粒で構成されている。粗化銅めっき層4は、粗化抜けが発生していない状態にあるとよい。例えば、粗化銅めっき層4を上面から見た際、銅めっき層3が露出しないように、粗化銅めっき層4が形成されているとよい。
粗化銅めっき層4上には、所定厚さ(例えば1nm以上70nm以下)の防錆層(後処理めっき層)5が形成されているとよい。防錆層5は、所定のめっき液を用いて形成されている。これにより、表面処理銅箔1の耐熱性や耐薬品性等を向上させることができる。また、積層板10を形成した後、エッチングにより表面処理銅箔1の所定箇所を除去して銅配線を形成する際、表面処理銅箔1を容易に除去できる。
本実施形態にかかる積層板(CCL:Copper Clad Laminate)10は、表面処理銅箔1の粗化銅めっき層4が設けられた側の面と、樹脂基材11と、が貼り合わされて形成されている。積層板10は、例えば、2つの表面処理銅箔1を用いて形成されていてもよい。つまり、積層板10は、樹脂基材11の両方の主面(両面)上に、2つの表面処理銅箔1の粗化銅めっき層4が設けられた側がそれぞれ樹脂基材11に接するとともに、2つの表面処理銅箔1をそれぞれ対向させて貼り合わせることで形成されていてもよい。樹脂基材11として、例えばポリイミド(PI)樹脂フィルムや、ポリエチレンテレフタラート(PET)等のポリエステルフィルム、液晶ポリマ(LCP)等が用いられる。
次に、本実施形態にかかる表面処理銅箔1、積層板10及びこの積層板10を用いて形成するフレキシブルプリント配線板(FPC)の製造方法について、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態にかかる表面処理銅箔1及び積層板10の製造工程を示すフロー図である。
まず、本実施形態にかかる表面処理銅箔1の製造方法について説明する。
銅箔基材2としての例えば圧延銅箔や電解銅箔を形成する。銅箔基材2として、例えば圧延銅箔を用いる場合、まず、無酸素銅やタフピッチ銅からなる純銅の鋳塊や、無酸素銅やタフピッチ銅を母相とし、母相中に所定量のSnやAg等の添加剤を添加した希薄銅合金の鋳塊を鋳造する。そして、鋳造した鋳塊に対し、所定の熱間圧延処理、所定の冷間圧延処理、所定の焼鈍処理等を行い、所定厚さ(例えば11μm)の圧延銅箔を形成する。このとき、圧延銅箔を再結晶させる際の加熱温度に応じて、圧延銅箔の耐熱性を調整するとよい。
銅箔基材形成工程(S11)が終了した後、まず、銅箔基材2の表面を清浄する処理を行う。そして、銅箔基材2のいずれかの主面上に、銅めっき層3を形成する銅めっき処理を行う。
銅箔基材形成工程(S11)が終了したら、銅箔基材2の表面を清浄する処理を行う。例えば、銅箔基材2の表面に、清浄処理として、電解脱脂処理と酸洗処理とを行う。電解脱脂処理として、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を用いた陰極電解脱脂処理を行う。アルカリ溶液として、例えば、水酸化ナトリウムを20g/L以上60g/L以下含み、炭酸ナトリウムを10g/L以上30g/L以下含む水溶液が用いられる。酸洗処理として、例えば硫酸等の酸性水溶液に銅箔基材2を浸漬し、銅箔基材2の表面に残存するアルカリ成分を中和したり、銅酸化膜を除去する処理を行う。酸性水溶液として、硫酸を120g/L以上180g/L以下含む水溶液、クエン酸等を含む水溶液、銅をエッチングする銅エッチング液等が用いられる。
清浄処理(S121)が終了したら、銅めっき液を準備する。銅めっき液として、例えば硫酸銅及び硫酸を主成分とする水溶液(酸性銅めっき浴)を準備する。そして、銅めっき液中に、有機硫黄化合物として例えばSPSを、所定量(例えば5mg/L以上60mg/L以下)添加する。また、必要に応じて、銅めっき液中に、界面活性剤、レベリング剤、塩化物イオンを添加してもよい。銅めっき液中に、界面活性剤として例えば荏原ユージライト株式会社製のCU−BRITE TH−RIIIシリーズの界面活性剤薬液を所定量(例えば1ml/以上4ml/L以下)添加してもよい。また、銅めっき液中に、レベリング剤として例えば荏原ユージライト株式会社製のCU−BRITE TH−RIIIシリーズのレベリング剤薬液を所定量(例えば3ml/L以上10ml/L以下)添加してもよい。また、銅めっき液中に、塩化物イオンとして例えば塩酸を所定量(例えば0.05ml/L以上0.3ml/L以下)添加してもよい。
銅めっき層形成工程(S12)が終了したら、銅めっき層3を形成した銅箔基材2を水洗した後、銅めっき層3上に所定厚さ(例えば0.05μm以上0.3μm以下)の粗化銅めっき層4を形成する。つまり、粗化銅めっき層4を形成するめっき液(粗化銅めっき液)中で電解めっき処理を行い、粗化銅めっき層4を形成する。粗化銅めっき液として、例えば硫酸銅および硫酸を主成分とする酸性銅めっき浴が用いられる。また、粗化銅めっき液中に、例えば所定量(例えば10g/L以上30g/L以下)の硫酸鉄七水和物を含む水溶液を添加するとよい。
粗化銅めっき層形成工程(S13)が終了したら、粗化銅めっき層4を形成した銅箔基材2を水洗した後、粗化銅めっき層4上に所定厚さ(例えば1nm以上70nm以下)の防錆層5を形成する。つまり、防錆層5を形成するめっき液中で電解めっき処理を行い、防錆層5を形成する。防錆層5の厚さはめっき量と一定の関係を有する。つまり、めっき量が多くなると、防錆層5の厚さが厚くなる。従って、所定のめっき量となるように、防錆層5を形成する電解めっき処理を行うとよい。
粗化銅めっき層形成工程(S13)が終了したら、粗化銅めっき層4を形成した銅箔基材2を水洗した後、Niめっき処理を行い、粗化銅めっき層4上に所定厚さ(例えば10nm以上50nm以下)のNiめっき層を形成する。例えば、硫酸ニッケル六水和物を280g/L以上320g/L以下と、塩化ニッケルを40g/L以上50g/L以下と、硼酸を40g/L以上60g/L以下と、を含むめっき液(めっき浴)を用いて電解めっき処理を行うことで、Niめっき層を形成する。Niめっき層の厚さの調整は、めっき時間を調整することで行う。
Niめっき処理が終了したら、Niめっき層を形成した銅箔基材2を水洗した後、Znめっき処理を行い、Niめっき層上に所定厚さ(例えば1nm以上10nm以下)のZnめっき層を形成する。例えば、硫酸亜鉛を80g/L以上120g/L以下と、硫酸ナトリウムを60g/L以上80g/L以下と、を含むめっき液を用いて電解めっき処理を行うことで、Znめっき層を形成する。Znめっき層の厚さの調整は、めっき時間を調整することで行う。
Znめっき処理が終了したら、Znめっき層を形成した銅箔基材2を水洗した後、クロメート処理を行い、Znめっき層上に所定厚さ(例えば1nm以上10nm以下)クロメート処理層を形成する。例えば、処理液として3価クロムタイプの反応型クロメート液を用いて化成処理を行うことで、クロメート処理層を形成する。クロメート処理層の厚さの調整は、化成処理時間等を調整することで行う。
クロメート処理が終了したら、クロメート処理層を形成した銅箔基材2を水洗した後、シランカップリング処理を行い、クロメート処理層上に、厚さが非常に薄いシランカップリング層を形成する。例えば、処理液として、シランカップリング液を用いて化成処理を行うことで、シランカップリング層を形成する。シランカップリング層の厚さの調整は、化成処理時間や処理液の濃度等を調整することで行う。以上により、本実施形態に係る表面処理銅箔1が製造される。
続いて、表面処理銅箔1を用いて積層板10を形成する。まず、表面処理銅箔1を所定の大きさに裁断する。また、いずれかの主面上に熱可塑性層が形成された樹脂基材(例えばポリイミド(PI)樹脂フィルム)11を準備する。そして、2つの表面処理銅箔1がそれぞれ対向するとともに、各表面処理銅箔1の粗化銅めっき層が設けられた側の面と、樹脂基材11の熱可塑性層と、が接するように、表面処理銅箔1と樹脂基材11とを配置する。続いて、例えば真空プレス機等を用い、表面処理銅箔1と樹脂基材11とを所定温度(例えば150℃以上350℃以下)に加熱しつつ、表面処理銅箔1と樹脂基材11とに所定圧力(例えば0.5MPa以上3.0MPa以下)を所定時間(例えば1分以上120分以下)加えることで、表面処理銅箔1と樹脂基材11とを貼り合わせて、積層板10として2層CCLを形成する。
続いて、樹脂基材11のHAZE値を測定する。まず、例えばエッチングにより、積層板10から少なくとも一部(例えばHAZE値及び後述の透明度の測定に必要な面積分)の表面処理銅箔1を除去して樹脂基材11を露出させる。そして、積分球21の光導入口21aを塞ぐように、測定対象である樹脂基材11(積層板10の樹脂基材11が露出した部分)を配置する(図2参照)。蓋体24により光排出口21bを閉じた状態で、光源22から光を照射し、検出器23で全光線透過光量を測定する。続いて、蓋体24を外して光排出口21bを開いた状態で、光源22から光を照射し、検出器23で拡散透過光量を測定する。そして、上記(数1)から、表面処理銅箔1を除去した箇所の樹脂基材11のHAZE値を算出する。樹脂基材11のHAZE値が80%以下であった場合、表面処理銅箔1を合格と判定する。樹脂基材11のHAZE値が80%を超えた場合、表面処理銅箔1を不良品と判定する。
HAZE値検査工程(S30)で測定したHAZE値が80%以下であった場合、積層板10から表面処理銅箔1を除去した箇所の樹脂基材11の透明度を測定する。まず、光源22の光の出射位置に樹脂基材11を配置する(図3(a)参照)。続いて、蓋体24を外した状態で、光源22から光を照射し、センターセンサ31aとリングセンサ31bとでそれぞれ、樹脂基材11を透過して光導入口21aから積分球21内に導入された光の光量を測定する。そして、センターセンサ31aで受光した光量(IC)とリングセンサ31bで受光した光量(IR)とを用い、上記(数2)から樹脂基材11の透明度を算出する。樹脂基材11の透明度が70%以上であった場合、表面処理銅箔1を合格と判定する。樹脂基材11の透明度が70%未満であった場合、表面処理銅箔1を不良品と判定する。そして、積層板10の製造工程を終了する。
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
まず、試料1〜21の各試料となる表面処理銅箔を作製した。
試料1では、まず、銅箔基材として、無酸素銅(OFC)で形成され、厚さが11μmの圧延銅箔を準備した。この銅箔基材に電解脱脂処理と酸洗処理とを行い、銅箔基材の表面の清浄を行った。まず、水酸化ナトリウムを40g/Lと、炭酸ナトリウムを20g/Lと、を含む水溶液を用いて電解脱脂処理を行った。このとき、液温を40℃とし、電流密度を10A/dm2とし、処理(めっき)時間を10秒間とした。電解脱脂処理が終了した後、銅箔基材を水洗した。その後、硫酸を150g/L含み、液温が25℃である水溶液中に、銅箔基材を10秒間浸漬して酸洗処理を行った。酸洗処理が終了した後、銅箔基材を水洗した。
試料2〜3ではそれぞれ、銅めっき層の厚さを表3に示す通りに変更した。この他は、試料1と同様にして表面処理銅箔を作製した。
試料4では、粗化銅めっき層の平均厚さを0.11μmとした。つまり、粗化銅めっき層を形成する際のめっき処理条件を変更し、粗化粒の大きさを小さくした。この他は、試料1と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料5〜6ではそれぞれ、銅めっき層の厚さを表3に示す通りに変更した。この他は、試料4と同様にして表面処理銅箔を作製した。
試料7では、粗化銅めっき層の平均厚さを0.3μmとした。つまり、粗化銅めっき層を形成する際のめっき処理条件を変更し、粗化粒の大きさを大きくした。この他は、試料1と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料8〜9ではそれぞれ、銅めっき層の厚さを表3に示す通りに変更した。この他は、試料7と同様にして表面処理銅箔を作製した。
試料10では、粗化銅めっき層の平均厚さを0.03μmとした。この他は、試料2と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料11では、銅めっき層を、有機硫黄化合物としてのSPSを添加していない銅めっき液を用いて形成した。この他は、試料10と同様にして表面処理銅箔を作製した。
試料12では、粗化銅めっき層を、硫酸鉄七水和物を添加していない粗化銅めっき液を用いて形成した。この他は、試料10と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料13では、銅めっき層を形成しなかった。この他は、試料12と同様にして表面処理銅箔を作製した。
試料14では、粗化銅めっき層の平均厚さを0.35μmとした。この他は、試料2と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料15では、銅めっき層を、有機硫黄化合物としてのSPSを添加していない銅めっき液を用いて形成した。この他は、試料14と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料16では、粗化銅めっき層を、硫酸鉄七水和物を添加していない粗化銅めっき液を用いて形成した。この他は、試料14と同様にして表面処理銅箔を作製した。
試料17では、銅めっき層を、有機硫黄化合物としてのSPSを添加していない銅めっき液を用いて形成した。この他は、試料5と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料18では、粗化銅めっき層を、硫酸鉄七水和物を添加していない粗化銅めっき液を用いて形成した。この他は、試料5と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料19では、銅めっき層を形成しなかった。この他は、試料1と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料20では、銅めっき層を形成しなかった。この他は、試料4と同様にして表面処理銅箔を作製した。試料21では、銅めっき層を形成しなかった。この他は、試料7と同様にして表面処理銅箔を作製した。
試料1〜21の各表面処理銅箔を用いて、積層板として両面FCCL(Flexible Copper Clad Laminate)をそれぞれ作製した。樹脂基材として、厚さが25μmであるポリイミド樹脂フィルム(株式会社カネカ製のピクシオ(登録商標))を用いた。試料1〜21の各表面処理銅箔と樹脂基材とを、所定の大きさ(縦100mm×横60mm)に裁断した。そして、樹脂基材の両面上にそれぞれ、所定形状に裁断した各試料である表面処理銅箔を積層した。このとき、各試料である表面処理銅箔の粗化銅めっき層が設けられた側の面が樹脂基材と接するように各試料を積層した。その後、真空プレス機を用いて、300℃、5MPa、15分間の条件下で各試料である表面処理銅箔と樹脂基材とを貼り合わせて、両面FCCLを作製した。なお、真空プレス機による貼り合わせ条件は、各試料である表面処理銅箔が再結晶されて再結晶組織を有することとなる熱量を表面処理銅箔に付与するとともに、ポリイミド樹脂フィルムメーカの推奨条件を満たし、表面処理銅箔と樹脂基材とを貼り合わせることができるように設定した。
試料1〜21の各表面処理銅箔を用いて形成した積層板について、樹脂基材の透明性の評価を行った。樹脂基材の透明性の評価として、積層板から各試料である表面処理銅箔を除去した後の樹脂基材のHAZE値及び透明度の測定を行った。具体的には、各試料を用いて作製した積層板に対し、塩化第二鉄を用いてスプレーエッチング処理を行うことで、積層板から表面処理銅箔を全て除去した。つまり、樹脂基材の両面(両主面)の全面を露出させた状態とした。そして、表面処理銅箔が除去された樹脂基材のそれぞれについて、BYK製のhaze-gard plusを用いてHAZE値及び透明度の測定を行った。
試料1〜21の各表面処理銅箔を用いて形成した積層板の密着性は、表面処理銅箔を樹脂基材から剥離する際のピール強度を測定することで評価した。ピール強度の測定は、以下のように行った。まず、試料1〜21の各表面処理銅箔を用いて形成した積層板のそれぞれの一方の主面(表面処理銅箔の樹脂基材と接する側とは反対側の面)上に、幅が1mmで、所定長さのマスキングテープを貼った。また、各積層板の他方の主面の全面にマスキングテープを貼った。そして、マスキングテープを貼った各積層板に対し、塩化第二鉄を用いてスプレーエッチング処理を行うことで、積層板から表面処理銅箔の所定箇所(マスキングテープが貼られていない箇所)を除去した。その後、マスキングテープを除去した。続いて、表面処理銅箔31を樹脂基材32から引き剥がした際の強度を測定した。具体的には、エッチングされて1mm幅となった表面処理銅箔を、樹脂基材から90°の角度で(引き剥がされた表面処理銅箔と樹脂基材との為す角が90°となるように)、表面処理銅箔を樹脂基材から引き剥がしたときに要する力をピール強度として測定した。このように測定したピール強度の値が大きいほど、密着性が高いといえる。
試料1〜21について、樹脂基材の透明性(HAZE値、透明度)、表面処理銅箔と樹脂基材との密着性の評価結果を表3にそれぞれ示す。
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
本発明の一態様によれば、
銅箔基材と、
前記銅箔基材上に形成された銅めっき層と、
前記銅めっき層上に形成された粗化銅めっき層と、を備える表面処理銅箔であって、
樹脂基材の両主面上に、前記表面処理銅箔を対向させて、前記粗化銅めっき層が設けられた側の面が前記樹脂基材に接するように前記表面処理銅箔を貼り合わせた後、前記樹脂基材の両主面上から前記表面処理銅箔を除去したとき、前記樹脂基材のHAZE値が80%以下、透明度が70%以上となり、前記表面処理銅箔と前記樹脂基材との間のピール強度が0.6N/mm以上となるように形成されている表面処理銅箔が提供される。
付記1の表面処理銅箔であって、好ましくは、
前記銅めっき層は、メルカプト基を有する有機化合物が添加された銅めっき液を用いて形成されている。
付記2の表面処理銅箔であって、好ましくは、
前記銅めっき液中には、前記メルトカプト基を有する有機化合物が5mg/L以上60mg/L以下含まれている。
付記1ないし3のいずれかの表面処理銅箔であって、好ましくは、
前記銅めっき層は、厚さが0.1μm以上0.6μm以下となるように形成されている。
付記1ないし4のいずれかの表面処理銅箔であって、好ましくは、
前記粗化銅めっき層は、平均厚さが0.05μm以上0.30μm以下となるように形成されている。
本発明の他の態様によれば、
銅箔基材、前記銅箔基材上に形成された銅めっき層、及び前記銅めっき層上に形成された粗化銅めっき層、を備える表面処理銅箔と、
前記粗化銅めっき層が設けられた側の面に接するように形成された樹脂基材と、を備え、
前記表面処理銅箔は、前記樹脂基材の両主面上に、前記表面処理銅箔を対向させて前記表面処理銅箔を貼り合わせた後、前記樹脂基材の両主面上から前記表面処理銅箔を除去したとき、前記樹脂基材のHAZE値が80%以下、透明度が70%以上となり、前記表面処理銅箔と前記樹脂基材との間のピール強度が0.6N/mm以上となるように形成されている積層板が提供される。
2 銅箔基材
3 銅めっき層
4 粗化銅めっき層
Claims (3)
- 銅箔基材と、
前記銅箔基材上に形成された銅めっき層と、
前記銅めっき層上に形成された粗化銅めっき層と、を備える表面処理銅箔であって、
前記銅めっき層は、メルカプト基を有する有機化合物が添加された銅めっき液を用いて形成され、
ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂基材の両主面上に、前記表面処理銅箔を対向させて、前記粗化銅めっき層が設けられた側の面が前記樹脂基材に接するように前記表面処理銅箔を貼り合わせた後、前記樹脂基材の両主面上から前記表面処理銅箔を除去したとき、
前記樹脂基材のHAZE値が80%以下、透明度が70%以上となり、
前記表面処理銅箔と前記樹脂基材との間のピール強度が0.6N/mm以上となるように形成され、
前記粗化銅めっき層の平均厚さが0.05μm以上0.30μm以下となるように形成されている
表面処理銅箔。 - 前記銅めっき層は、厚さが0.1μm以上0.6μm以下となるように形成されている
請求項1に記載の表面処理銅箔。 - 銅箔基材、前記銅箔基材上に形成された銅めっき層、及び前記銅めっき層上に形成された粗化銅めっき層、を備える表面処理銅箔と、
前記粗化銅めっき層が設けられた側の面に接するように形成されたポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂基材と、を備え、
前記銅めっき層は、メルカプト基を有する有機化合物が添加された銅めっき液を用いて形成され、
前記表面処理銅箔は、前記樹脂基材の両主面上に、前記表面処理銅箔を対向させて前記表面処理銅箔を貼り合わせた後、前記樹脂基材の両主面上から前記表面処理銅箔を除去したとき、前記樹脂基材のHAZE値が80%以下、透明度が70%以上となり、
前記表面処理銅箔と前記樹脂基材との間のピール強度が0.6N/mm以上となり、
前記粗化銅めっき層の平均厚さが0.05μm以上0.30μm以下となるように形成されている
積層板。
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