以下、本発明の黒化めっき液、導電性基板の一実施形態について説明する。
(黒化めっき液)
本実施形態の黒化めっき液は、ニッケル化合物と、亜鉛化合物と、すず化合物と、アミド硫酸とを含み、前記すず化合物の濃度が0.3g/L以上0.9g/L以下とすることができる。
本発明の発明者らは、エッチング液に対する反応性が、銅層と同等もしくはそれ以下の黒化層を形成できる黒化めっき液について鋭意検討を行った。
そして、黒化めっき液について検討を進める中で、本発明の発明者らは、黒化層をニッケルと、亜鉛と、すずとを含有する層とすることで、黒化層のエッチング液に対する反応性を抑制でき、銅層と同時にエッチングした場合でも所望の形状にできることを見出した。
このため、本実施形態の黒化めっき液は、金属成分としてニッケルと亜鉛とすずとを含有する層を形成できるめっき液であることが好ましい。
そこで、本実施形態の黒化めっき液は、ニッケル化合物と、亜鉛化合物と、すず化合物とを含有することができる。さらに、錯化剤として機能するアミド硫酸を含有することで、形成した黒化層に色ムラが生じることを抑制できる。
ただし、本発明の発明者らの検討によれば、黒化めっき液中のすず化合物の濃度が0.3g/L未満の場合、エッチング液に対する反応性を抑制する効果が十分ではない場合があった。このため、本実施形態の黒化めっき液中のすず化合物の濃度は、0.3g/L以上であることが好ましい。特に、本実施形態の黒化めっき液中のすず化合物の濃度は、0.4g/L以上であることがより好ましい。
また、黒化めっき液中のすず化合物の濃度が0.9g/Lを超えると、黒化めっき液により形成した黒化層による銅層表面での光の反射を抑制する機能が低下し、導電性基板の反射率が高くなる場合がある。このため、本実施形態の黒化めっき液中のすず化合物の濃度は0.9g/L以下であることが好ましい。特に、本実施形態の黒化めっき液中のすず化合物の濃度は、0.8g/L以下であることがより好ましく0.7g/L以下であることが特に好ましい。
本実施形態の黒化めっき液に含まれる、ニッケル化合物と、亜鉛化合物と、すず化合物とについては、各金属成分を含有し、ニッケル、亜鉛、すずがめっき液中でイオン化するものであればよく、各化合物の種類は特に限定されるものではない。ニッケル化合物と、亜鉛化合物と、すず化合物と、について、例えば硫酸化合物、塩酸化合物、スルファミン酸化合物から選択されたいずれかの化合物を用いることができる。なお、ニッケル化合物と、亜鉛化合物と、すず化合物とは、同じ種類の化合物、例えば硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸すず等であってもよいが、異なる種類の化合物であってもよい。
特に、ニッケル化合物、亜鉛化合物、すず化合物がそれぞれ、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸すずの場合、めっき液のpHが調整し易くなるため好ましい。この場合、本実施形態の黒化めっき液は、硫酸ニッケルと、硫酸亜鉛と、硫酸すずと、アミド硫酸とを含み、硫酸すずの濃度を0.3g/L以上0.9g/L以下とすることができる。
上述の様に、本実施形態の黒化めっき液は、ニッケル化合物と、亜鉛化合物と、すず化合物と、アミド硫酸とを含有することができる。本実施形態の黒化めっき液中のすず化合物以外の各成分の含有量については特に限定されるものではなく、形成する黒化層に要求される反射率の抑制の程度等に応じて任意に選択することができる。
例えば、ニッケル化合物として硫酸ニッケルを用いる場合、硫酸ニッケルは黒化めっき液中で硫酸ニッケル6水和物として存在すると考えられるが、黒化めっき液中の硫酸ニッケル6水和物の濃度は、30g/L以上であることが好ましい。これは硫酸ニッケル6水和物の濃度を30g/L以上とすることで、形成する黒化層中に十分なニッケルを供給し、黒化層に色ムラ等が生じることを抑制できるからである。黒化めっき液中の硫酸ニッケル6水和物の濃度の上限値は特に限定されるものではなく、例えば硫酸ニッケル6水和物の飽和濃度以下となるように添加することができる。特に黒化めっき液を用いて黒化層を成膜する前にめっき液中に析出物等が生じることを抑制する観点から、100g/L以下であることが好ましい。
また、亜鉛化合物として、硫酸亜鉛を用いる場合、硫酸亜鉛は黒化めっき液中で硫酸亜鉛7水和物として存在すると考えられるが、黒化めっき液中の硫酸亜鉛7水和物の濃度は1.5g/L以上4.8g/L以下であることが好ましい。これは、黒化めっき液中の硫酸亜鉛7水和物の濃度を1.5g/L以上とすることで、形成した黒化層を特に銅層表面での光の反射を抑制するためにより適した色とすることができ、導電性基板の光の反射率を特に抑制できるからである。また、硫酸亜鉛7水和物の濃度を4.8g/Lより多くした場合、成膜する黒化層に色ムラ等が生じる場合があるため、4.8g/L以下とすることが好ましい。
なお、黒化めっき液に含まれる金属成分としてのニッケル及び亜鉛の合計の含有量(含有重量)に対する、金属成分としての亜鉛の含有量(含有重量)の割合は2重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
黒化層は、ニッケルと亜鉛とを同時に含有することで、銅層表面での光の反射を抑制するのに適した色とすることができる。そして、黒化めっき液に含まれる、金属成分としてのニッケル及び亜鉛の合計の重量に対する、金属成分としての亜鉛の割合が2重量%以上の場合、銅層表面での光の反射を抑制するのに特に適した色とすることができ、導電性基板の反射率を抑制できるからである。
ただし、亜鉛の割合が高くなりすぎると、形成した黒化層に色ムラ等を生じる恐れがある。このため、黒化めっき液に含まれる金属成分としてのニッケル及び亜鉛の合計の重量に対する、金属成分としての亜鉛の割合は20重量%以下であることが好ましい。
黒化めっき液中のアミド硫酸の濃度は特に限定されないが、例えば10g/L以上30g/L以下であることが好ましい。
また、本実施形態の黒化めっき液のpHを調整する際に用いる薬剤は特に限定されるものではないが、成膜する黒化層に影響を与えないように金属成分を含有しないアルカリを用いることが好ましい。このため、例えばpHはアンモニア水により調整されていることが好ましい。なお、本実施形態の黒化めっき液のpHをアンモニア水により調整した場合、本実施形態の黒化めっき液はアンモニア水、もしくは添加したアンモニア水由来の成分をさらに含有することができる。
本実施形態の黒化めっき液のpHの範囲は特に限定されるものではないが、例えば2.0以上4.0以下であることが好ましい。
これは、黒化めっき液のpHが2.0未満の場合、形成した黒化層が光の反射を十分に抑制できる色にならない場合があるためである。また、黒化めっき液のpHが4.0を超えると、黒化めっき液の一部の成分が析出する場合等があり、係る黒化めっき液を用いて黒化層を形成すると、黒化層に色ムラが生じる場合があるためである。
本実施形態の黒化めっき液には、ニッケル化合物、亜鉛化合物、すず化合物、アミド硫酸以外にも任意の成分を含有することができる。例えば添加剤として、モリブデン(Mo)化合物等を添加することもできる。
以上に説明した本実施形態の黒化めっき液によれば、導電層である銅層とエッチング液に対する反応性が同等、もしくは銅層よりも反応性の低い黒化層を形成することができる。このため、銅層と、本実施形態の黒化めっき液により成膜した黒化層とを同時にエッチングし、パターン化した場合でも、所望の形状とすることができる。
また、本実施形態の黒化めっき液によれば、導電性基板の銅層表面での光の反射を十分に抑制できる黒化層を形成する際に好適に用いることができる。さらに、本実施形態の黒化めっき液を用いることで、黒化層を電解めっき法等の湿式法により成膜することができるため、従来、乾式法で成膜されていた黒化層と比較して生産性良く黒化層を形成できる。
(導電性基板)
次に、本実施形態の導電性基板の一構成例について説明する。
本実施形態の導電性基板は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面上に配置された銅層と、銅層上に黒化めっき液を用いて形成された黒化層と、を有することができる。
なお、本実施形態における導電性基板とは、銅層等をパターニングする前の、透明基材の表面に銅層、及び黒化層を有する基板と、銅層等をパターン化した基板、すなわち、配線基板と、を含む。
ここでまず、導電性基板に含まれる各部材について以下に説明する。
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等の透明基材を好ましく用いることができる。
可視光を透過する樹脂基板の材料としては例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂を好ましく用いることができる。特に、可視光を透過する樹脂基板の材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネート等をより好ましく用いることができる。
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。透明基材の厚さとしては例えば10μm以上200μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合、透明基材の厚さは20μm以上120μm以下とすることが好ましく、20μm以上100μm以下とすることがより好ましい。タッチパネルの用途に用いる場合で、例えば特にディスプレイ全体の厚さを薄くすることが求められる用途においては、透明基材の厚さは20μm以上50μm以下であることが好ましい。
透明基材の全光線透過率は高い方が好ましく、例えば全光線透過率は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。透明基材の全光線透過率が上記範囲であることにより、例えばタッチパネルの用途に用いた場合にディスプレイの視認性を十分に確保することができる。
なお透明基材の全光線透過率はJIS K 7361−1に規定される方法により評価することができる。
次に、銅層について説明する。
透明基材上に銅層を形成する方法は特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、透明基材と銅層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち銅層は、透明基材の少なくとも一方の面上に直接形成されていることが好ましい。なお、後述のように透明基材と銅層との間に密着層を配置する場合には、銅層は密着層の上面に直接形成されていることが好ましい。
透明基材等の上面に銅層を直接形成するため、銅層は銅薄膜層を有することが好ましい。また、銅層は銅薄膜層と銅めっき層とを有していてもよい。
例えば透明基材上に、乾式めっき法により銅薄膜層を形成し、該銅薄膜層を銅層とすることができる。これにより、透明基材上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できる。なお、乾式めっき法としては、例えばスパッタリング法や蒸着法、イオンプレーティング法等を好ましく用いることができる。
また、銅層の膜厚を厚くする場合には、銅薄膜層を給電層として湿式めっき法の一種である電気めっき法により銅めっき層を形成することにより、銅薄膜層と銅めっき層とを有する銅層とすることもできる。銅層が銅薄膜層と銅めっき層とを有することにより、この場合も透明基材上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できる。
銅層の厚さは特に限定されるものではなく、銅層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。
ただし、銅層が厚くなると、配線パターンを形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ易くなり、細線が形成しにくくなる等の問題を生じる場合がある。このため、銅層の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
また、特に導電性基板の抵抗値を低くし、十分に電流を供給できるようにする観点から、例えば銅層は厚さが50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
なお、銅層が上述のように銅薄膜層と、銅めっき層とを有する場合には、銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
銅層が銅薄膜層により構成される場合、または銅薄膜層と銅めっき層とを有する場合のいずれの場合でも、銅薄膜層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば50nm以上500nm以下とすることが好ましい。
銅層は後述するように例えば所望の配線パターンにパターニングすることにより配線として用いることができる。そして、銅層は従来透明導電膜として用いられていたITOよりも電気抵抗値を低くすることができるから、銅層を設けることにより導電性基板の電気抵抗値を小さくできる。
次に黒化層について説明する。
黒化層は、既述の黒化めっき液を用いて成膜することができる。このため、例えば銅層を形成後、銅層の上面に電解めっき法等の湿式法により形成することができる。
黒化めっき液については既述のため、ここでは説明を省略する。
黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。これは、黒化層の厚さを30nm以上とすることにより銅層表面における光の反射を特に抑制できるからである。
黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、黒化層の厚さは120nm以下とすることが好ましく、90nm以下とすることがより好ましい。
なお、既述の黒化めっき液により黒化層を成膜した場合、黒化層は、ニッケル、亜鉛、すずを含有する層とすることができる。
このため、本実施形態の導電性基板は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面上に配置された銅層と、銅層上に配置された黒化層と、を有し、黒化層が、ニッケルと、亜鉛と、すずとを含む構成とすることができる。
また、導電性基板は上述の透明基材、銅層、黒化層以外に任意の層を設けることもできる。例えば密着層を設けることができる。
密着層の構成例について説明する。
上述のように銅層は透明基材上に形成することができるが、透明基材上に銅層を直接形成した場合に、透明基材と銅層との密着性は十分ではない場合がある。このため、透明基材の上面に直接銅層を形成した場合、製造過程、または、使用時に透明基材から銅層が剥離する場合がある。
そこで、本実施形態の導電性基板においては、透明基材と銅層との密着性を高めるため、透明基材上に密着層を配置することができる。
透明基材と銅層との間に密着層を配置することにより、透明基材と銅層との密着性を高め、透明基材から銅層が剥離することを抑制できる。
また、密着層は黒化層としても機能させることができる。このため、銅層の下面側、すなわち透明基材側からの光による銅層の光の反射も抑制することが可能になる。
密着層を構成する材料は特に限定されるものではなく、透明基材及び銅層との密着力や、要求される銅層表面での光の反射の抑制の程度、また、導電性基板を使用する環境(例えば湿度や、温度)に対する安定性の程度等に応じて任意に選択することができる。
密着層は例えば、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも1種以上の金属を含むことが好ましい。また、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むこともできる。
なお、密着層は、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金を含むこともできる。この場合についても、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むこともできる。この際、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金としては、Cu−Ti−Fe合金や、Cu−Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Zn合金、Ni−Ti合金、Ni−W合金、Ni−Cr合金、Ni−Cu−Cr合金を好ましく用いることができる。
密着層の成膜方法は特に限定されるものではないが、乾式めっき法により成膜することが好ましい。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、密着層には上述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
密着層が炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含む場合には、密着層を成膜する際の雰囲気中に炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスを添加しておくことにより、密着層中に添加することができる。例えば、密着層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
密着層を上述のように乾式めっき法により成膜することにより、透明基材と密着層との密着性を高めることができる。そして、密着層は例えば金属を主成分として含むことができるため銅層との密着性も高い。このため、透明基材と銅層との間に密着層を配置することにより、銅層の剥離を抑制することができる。
密着層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば3nm以上50nm以下とすることが好ましく、3nm以上35nm以下とすることがより好ましく、3nm以上33nm以下とすることがさらに好ましい。
密着層についても黒化層として機能させる場合、すなわち銅層における光の反射を抑制する場合、密着層の厚さを上述のように3nm以上とすることが好ましい。
密着層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、密着層の厚さは上述のように50nm以下とすることが好ましく、35nm以下とすることがより好ましく、33nm以下とすることがさらに好ましい。
次に、導電性基板の構成例について説明する。
上述のように、本実施形態の導電性基板は透明基材と、銅層と、黒化層と、を有することができる。また、任意に密着層等の層を設けることもできる。
具体的な構成例について、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の導電性基板の、透明基材、銅層、黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
本実施形態の導電性基板は、例えば透明基材の少なくとも一方の面上に、透明基材側から銅層と、黒化層とがその順に積層された構造を有することができる。
具体的には例えば、図1(a)に示した導電性基板10Aのように、透明基材11の一方の面11a側に銅層12と、黒化層13と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1(b)に示した導電性基板10Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ銅層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。
また、さらに任意の層として、例えば密着層を設けた構成とすることもできる。この場合例えば、透明基材の少なくとも一方の面上に、透明基材側から密着層と、銅層と、黒化層とがその順に形成された構造とすることができる。
具体的には例えば図2(a)に示した導電性基板20Aのように、透明基材11の一方の面11a側に、密着層14と、銅層12と、黒化層13とをその順に積層することができる。
この場合も透明基材11の両面に密着層、銅層、黒化層を積層した構成とすることもできる。具体的には図2(b)に示した導電性基板20Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、他方の面11b側と、にそれぞれ密着層14A、14Bと、銅層12A、12Bと、黒化層13A、13Bとをその順に積層できる。
なお、図1(b)、図2(b)において、透明基材の両面に銅層、黒化層等を積層した場合において、透明基材11を対称面として透明基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、透明基材11の一方の面11a側の構成を図1(b)の構成と同様に、密着層14Aを設けずに銅層12Aと、黒化層13Aとをその順に積層した形態とし、透明基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
ところで、本実施形態の導電性基板においては、透明基材上に銅層と、黒化層とを設けることで、銅層による光の反射を抑制し、導電性基板の反射率を抑制することができる。
本実施形態の導電性基板の反射率の程度については特に限定されるものではないが、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合のディスプレイの視認性を高めるためには、反射率は低い方が良い。例えば、波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率が20%以下であることが好ましく、19%以下であることがより好ましい。
反射率の測定は、導電性基板の黒化層に光を照射するようにして測定を行うことができる。具体的には例えば図1(a)のように透明基材11の一方の面11a側に銅層12、黒化層13の順に積層した場合、黒化層13に光を照射するように黒化層13の表面Aに対して光を照射し、測定できる。測定に当たっては波長400nm以上700nm以下の光を例えば波長1nm間隔で上述のように導電性基板の黒化層13に対して照射し、測定した値の平均値を該導電性基板の反射率とすることができる。
本実施形態の導電性基板はタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。この場合導電性基板はメッシュ状の配線を備えた構成とすることができる。
メッシュ状の配線を備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の導電性基板の銅層、及び黒化層をエッチングすることにより得ることができる。
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を銅層等の積層方向の上面側から見た図を示しており、配線パターンが分かり易いように、透明基材、及び銅層をパターニングして形成した配線31A、31B以外の層は記載を省略している。また、透明基材11を介してみえる配線31Bも示している。
図3に示した導電性基板30は、透明基材11と、図中Y軸方向に平行な複数の配線31Aと、X軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、配線31A、31Bは銅層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面または下面には図示しない黒化層が形成されている。また、黒化層は配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされている。
透明基材11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。透明基材11と配線との配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
まず、図4(a)に示したように、透明基材11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、図4(a)では配線31Aの上面、及び31Bの下面には、配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。
また、図4(b)に示したように、1組の透明基材11を用い、一方の透明基材11を挟んで上下面に配線31A、31Bを配置し、かつ、一方の配線31Bは透明基材11間に配置されてもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。なお、既述のように、銅層、黒化層以外に密着層を設けることもできる。このため、図4(a)、(b)いずれの場合でも、例えば配線31Aおよび/または配線31Bと透明基材11との間に密着層を設けることもできる。密着層を設ける場合、密着層も配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされていることが好ましい。
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1(b)のように透明基材11の両面に銅層12A、12Bと、黒化層13A、13Bとを備えた導電性基板から形成することができる。
図1(b)の導電性基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基材11の一方の面11a側の銅層12A、黒化層13Aを、図1(b)中Y軸方向に平行な複数の線状のパターンがX軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1(b)中のX軸方向は、各層の幅方向と平行な方向を意味している。また、図1(b)中のY軸方向とは、図1(b)中の紙面と垂直な方向を意味している。
そして、透明基材11の他方の面11b側の銅層12B、黒化層13Bを図1(b)中X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけてY軸方向に沿って配置されるようにエッチングを行う。
以上の操作により図3、図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、透明基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、銅層12A、12B、黒化層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。また、図4(a)において、配線31A、31Bと、透明基材11との間にさらに配線31A、31Bと同じ形状にパターニングされた密着層を有する導電性基板は、図2(b)に示した導電性基板を用いて同様にエッチングを行うことで作製できる。
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1(a)または図2(a)に示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の導電性基板を2枚用いて形成した場合を例に説明すると、図1(a)に示した導電性基板2枚についてそれぞれ、銅層12、黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけてY軸方向に沿って配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではない。例えば、銅層12等が積層された図1(a)における表面Aと、銅層12等が積層されていない図1(a)における他方の面11bとを貼り合せて、図4(b)に示した構造となるようにすることもできる。
また、例えば透明基材11の銅層12等が積層されていない図1(a)における他方の面11b同士を貼り合せて断面が図4(a)に示した構造となるようにすることもできる。
なお、図4(a)、図4(b)において、配線31A、31Bと、透明基材11との間にさらに配線31A、31Bと同じ形状にパターニングされた密着層を有する導電性基板は、図1(a)に示した導電性基板にかえて図2(a)に示した導電性基板を用いることで作製できる。
図3、図4に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
また、図3、図4においては、直線形状の配線を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する配線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
以上の本実施形態の導電性基板によれば、透明基材の少なくとも一方の面上に形成された銅層上に、黒化層を積層した構造を有している。そして、黒化層は既述の黒化めっき液を用いて形成されているため、黒化層のエッチング液に対する反応性は、銅層と同等以下となっている。このため、既述の様に、銅層と、黒化層とをエッチングによりパターン化する際、黒化層を容易に所望の形状にパターン化することができる。
また、本実施形態の導電性基板に含まれる黒化層は、銅層表面における光の反射を十分に抑制し、反射率を抑制した導電性基板とすることができる。また、例えばタッチパネル等の用途に用いた場合にディスプレイの視認性を高めることができる。
さらに、黒化層を既述の黒化めっき液を用いて湿式法により形成できるため、従来の乾式法を用いて黒化層を成膜する場合と比較して、生産性良く導電性基板を生産することができる。
(導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の導電性基板の製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態の導電性基板の製造方法は、以下の工程を有することができる。
透明基材の少なくとも一方の面上に銅層を形成する銅層形成工程。
銅層上に黒化めっき液を用いて黒化層を形成する黒化層形成工程。
なお、黒化めっき液としては既述のニッケル化合物と、亜鉛化合物と、すず化合物と、アミド硫酸とを含み、すず化合物の濃度が0.3g/L以上0.9g/L以下である黒化めっき液を用いることができる。
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について具体的に説明する。
なお、本実施形態の導電性基板の製造方法により上述の導電性基板を好適に製造することができる。このため、以下に説明する点以外については上述の導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため説明を一部省略する。
銅層形成工程に供する透明基材は予め準備しておくことができる。用いる透明基材の種類は特に限定されるものではないが、既述のように可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等の透明基材を好ましく用いることができる。透明基材は必要に応じて予め任意のサイズに切断等行っておくこともできる。
そして、銅層は既述のように、銅薄膜層を有することが好ましい。また、銅層は銅薄膜層と銅めっき層とを有することもできる。このため、銅層形成工程は、例えば乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程を有することができる。また、銅層形成工程は、乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程と、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法の一種である電気めっき法により銅めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
銅薄膜層を形成する工程で用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等を用いることができる。なお、蒸着法としては真空蒸着法を好ましく用いることができる。銅薄膜層を形成する工程で用いる乾式めっき法としては、特に膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
次に銅めっき層を形成する工程について説明する。湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程における条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、銅めっき液を入れためっき槽に銅薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、銅めっき層を形成できる。
次に、黒化層形成工程について説明する。
黒化層形成工程においては、既述のニッケル化合物と、亜鉛化合物と、すず化合物と、アミド硫酸とを含み、すず化合物の濃度が0.3g/L以上0.9g/Lである黒化めっき液を用いて黒化層を形成できる。
黒化層は湿式法により形成できる。具体的には例えば、銅層を給電層として用いて、既述の黒化めっき液を含むめっき槽内で、銅層上に電解めっき法により黒化層を形成することができる。このように銅層を給電層として、電解めっき法により黒化層を形成することで、銅層の透明基材と対向する面とは反対側の面の全面に黒化層を形成できる。
黒化めっき液については既述のため、説明を省略する。
なお、黒化層形成工程により、ニッケルと、亜鉛と、すずとを含む黒化層を形成することができる。
本実施形態の導電性基板の製造方法においては、上述の工程に加えてさらに任意の工程を実施することもできる。
例えば透明基材と銅層との間に密着層を形成する場合、透明基材の銅層を形成する面上に密着層を形成する密着層形成工程を実施することができる。密着層形成工程を実施する場合、銅層形成工程は、密着層形成工程の後に実施することができ、銅層形成工程では、本工程で透明基材上に密着層を形成した基材に銅薄膜層を形成できる。
密着層形成工程において、密着層の成膜方法は特に限定されるものではないが、乾式めっき法により成膜することが好ましい。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、密着層には既述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
本実施形態の導電性基板の製造方法で得られる導電性基板は例えばタッチパネル等の各種用途に用いることができる。そして、各種用途に用いる場合には、本実施形態の導電性基板に含まれる銅層、及び黒化層がパターン化されていることが好ましい。なお、密着層を設ける場合は、密着層についてもパターン化されていることが好ましい。銅層、及び黒化層、場合によってはさらに密着層は、例えば所望の配線パターンにあわせてパターン化することができ、銅層、及び黒化層、場合によってはさらに密着層は同じ形状にパターン化されていることが好ましい。
このため、本実施形態の導電性基板の製造方法は、銅層、及び黒化層をパターニングするパターニング工程を有することができる。なお、密着層を形成した場合には、パターニング工程は、密着層、銅層、及び黒化層をパターニングする工程とすることができる。
パターニング工程の具体的手順は特に限定されるものではなく、任意の手順により実施することができる。例えば図1(a)のように透明基材11上に銅層12、黒化層13が積層された導電性基板10Aの場合、まず黒化層13上の表面Aに所望のパターンを有するマスクを配置するマスク配置ステップを実施することができる。次いで、黒化層13上の表面A、すなわち、マスクを配置した面側にエッチング液を供給するエッチングステップを実施できる。
エッチングステップにおいて用いるエッチング液は特に限定されるものではない。ただし、本実施形態の導電性基板の製造方法で形成する黒化層は銅層とほぼ同様のエッチング液への反応性を示す。このため、エッチングステップにおいて用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、一般的に銅層のエッチングに用いられるエッチング液を好ましく用いることができる。
エッチング液としては例えば、硫酸、過酸化水素水、塩酸、塩化第二銅、及び塩化第二鉄から選択された1種類以上を含む混合水溶液を好ましく用いることができる。エッチング液中の各成分の含有量は、特に限定されるものではない。
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温して用いることもでき、例えば40℃以上50℃以下に加熱して用いることもできる。
また、図1(b)のように透明基材11の一方の面11a、他方の面11bに銅層12A、12B、黒化層13A、13Bを積層した導電性基板10Bについてもパターニングするパターニング工程を実施できる。この場合例えば黒化層13A、13B上の表面A、及び表面Bに所望のパターンを有するマスクを配置するマスク配置ステップを実施できる。次いで、黒化層13A、13B上の表面A、及び表面B、すなわち、マスクを配置した面側にエッチング液を供給するエッチングステップを実施できる。
エッチングステップで形成するパターンについては特に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。例えば図1(a)に示した導電性基板10Aの場合、既述のように銅層12、黒化層13を複数の直線や、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)を含むようにパターンを形成することができる。
また、図1(b)に示した導電性基板10Bの場合、銅層12Aと、銅層12Bとでメッシュ状の配線となるようにパターンを形成することができる。この場合、黒化層13Aは、銅層12Aと同様の形状に、黒化層13Bは銅層12Bと同様の形状になるようにそれぞれパターニングを行うことが好ましい。
また、例えばパターニング工程で上述の導電性基板10Aについて銅層12等をパターン化した後、パターン化した2枚以上の導電性基板を積層する積層工程を実施することもできる。積層する際、例えば各導電性基板の銅層のパターンが交差するように積層することにより、メッシュ状の配線を備えた積層導電性基板を得ることもできる。
積層した2枚以上の導電性基板を固定する方法は特に限定されるものではないが、例えば接着剤等により固定することができる。
以上の本実施形態の導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、透明基材の少なくとも一方の面上に形成された銅層上に、黒化層を積層した構造を有している。そして、黒化層は既述の黒化めっき液を用いて形成されているため、黒化層のエッチング液に対する反応性は、銅層と同等以下となっている。このため、既述の様に、銅層と、黒化層とをエッチングによりパターン化する際、黒化層を容易に所望の形状にパターン化することができる。
また、本実施形態の導電性基板の製造方法により得られる導電性基板に含まれる黒化層は、銅層表面における光の反射を十分に抑制し、反射率を抑制した導電性基板とすることができる。このため、例えばタッチパネル等の用途に用いた場合にディスプレイの視認性を高めることができる。
さらに、黒化層を既述の黒化めっき液を用いて湿式法により形成できるため、従来の乾式法を用いて黒化層を成膜する場合と比較して、生産性良く導電性基板を生産することができる。
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
まず、得られた導電性基板の評価方法について説明する。
(1)反射率
測定は、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2600)に反射率測定ユニットを設置して行った。
後述のように各実験例では図1(a)に示した構造を有する導電性基板を作製した。このため、反射率測定は図1(a)に示した導電性基板10Aの黒化層13の表面Aに対して入射角5°、受光角5°として、波長400nm以上700nm以下の光を波長1nm間隔で照射して正反射率を測定し、その平均値を該導電性基板の反射率(平均反射率)とした。
(2)エッチング特性
硫酸40g/L、35%過酸化水素水20mLからなる、液温が30℃のエッチング液に浸漬し、黒化層が溶解し、銅層が露出するまでの時間を測定した。
なお、銅層は、銅層が露出してから溶解するまでの時間が30秒となることを予め確認しておいた。
(3)判定
導電性基板の反射率が20%以下であり、かつエッチング特性の評価結果が5秒以上の導電性基板について〇と判定した。
導電性基板の反射率が20%を超え、および/またはエッチング特性の評価結果が5秒未満の導電性基板については×と判定した。
(試料の作製条件)
以下の実施例、比較例では、以下に説明する条件で導電性基板を作製し、上述の評価方法により評価を行った。
[実施例1]
(1)黒化めっき液
実施例1では、ニッケル化合物として硫酸ニッケルを、亜鉛化合物として硫酸亜鉛を、すず化合物として硫酸すずを、それぞれ含有し、さらにアミド硫酸を含有する黒化めっき液を調製した。なお、黒化めっき液には、硫酸ニッケル6水和物の濃度が40g/L、硫酸亜鉛7水和物の濃度が4.8g/L、硫酸すずの濃度が0.3g/L、アミド硫酸の濃度が11g/Lとなるように各成分を添加調製した。
また、アンモニア水を黒化めっき液に添加して、黒化めっき液のpHを3に調整した。
(2)導電性基板
(銅層形成工程)
長さ100m、幅500mm、厚さ100μmの長尺状のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材の一方の面上に銅層を成膜した。なお、透明基材として用いたポリエチレンテレフタレート樹脂製の透明基材について、全光線透過率をJIS K 7361−1に規定された方法により評価を行ったところ97%であった。
銅層形成工程では、銅薄膜層形成工程と、銅めっき層形成工程と、を実施した。
まず、銅薄膜層形成工程について説明する。
銅薄膜層形成工程では、基材として上述の透明基材を用い、透明基材の一方の面上に銅薄膜層を形成した。
銅薄膜層形成工程ではまず、予め60℃まで加熱して水分を除去した上述の透明基材を、スパッタリング装置のチャンバー内に設置した。
次に、チャンバー内を1×10−3Paまで排気した後、アルゴンガスを導入し、チャンバー内の圧力を1.3Paとした。
スパッタリング装置のカソードに予めセットしておいた銅ターゲットに電力を供給し、透明基材の一方の面上に銅薄膜層を厚さが0.2μmになるように成膜した。
次に、銅めっき層形成工程においては銅めっき層を形成した。銅めっき層は、電気めっき法により銅めっき層の厚さが0.3μmになるように成膜した。
以上の銅薄膜層形成工程と、銅めっき層形成工程とを実施することで、銅層として厚さ0.5μmの銅層を形成した。
銅層形成工程で作製した、透明基材上に厚さ0.5μmの銅層が形成された基板を20g/Lの硫酸に30sec浸漬し、洗浄した後に以下の黒化層形成工程を実施した。
(黒化層形成工程)
黒化層形成工程では、上述の本実施例の黒化めっき液を用いて電解めっき法により、銅層の一方の面上に黒化層を形成した。なお、黒化層形成工程においては黒化めっき液の温度が40℃、電流密度が0.2A/dm2、めっき時間が100secの条件で電解めっきを行い、黒化層を形成した。
形成した黒化層の膜厚は70nmとなった。
以上の工程により得られた導電性基板について、既述の反射率、及びエッチング特性の評価を実施した。結果を表1に示す。
[実施例2、実施例3]
黒化めっき液を調製する際、各実施例について、黒化めっき液内の硫酸すずの濃度、及びpHを表1に示した値となるように変更した点以外は実施例1の場合と同様にして黒化めっき液を調製した。
また、黒化層を形成する際に各実施例で作製した黒化めっき液を用いた点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
[比較例1〜比較例3]
黒化めっき液を調製する際、各比較例について、黒化めっき液内の硫酸すずの濃度、及びpHを表1に示した値となるように変更した点以外は実施例1の場合と同様にして黒化めっき液を調製した。なお、比較例1については硫酸すずを添加しなかった。
また、黒化層を形成する際に各比較例で作製した黒化めっき液を用いた点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
表1に示した結果より、調製した黒化めっき液内のすず化合物である硫酸すずの濃度が0.3g/L以上0.9g/L以下である、実施例1〜実施例3については、エッチング特性の評価結果が5秒以上となっていた。すなわち、黒化層のエッチング液に対する反応性が銅層と同等以下になっていることを確認できた。
また、実施例1〜実施例3については、反射率も20%以下であり、形成した黒化層は、銅層表面での光の反射を特に抑制できていることが確認できた。
これに対して、調製した黒化めっき液内の硫酸すずの濃度が0.3g/L未満の比較例1、2については、エッチング特性の評価結果が4秒と実施例1〜実施例3よりも大幅に短くなっていることを確認できた。これは、すず化合物である硫酸すずの添加量が十分ではなかったため、黒化層のエッチング液に対する反応性を抑制する効果が十分ではなかったためと考えられる。
また、比較例3については、黒化めっき液中の硫酸すずの濃度が0.9g/L以上の1g/Lであったため、形成した黒化層が、銅層表面での光の反射を抑制する機能が十分ではなく、反射率が57.7%と非常に高い値となった。