JP5755514B2 - パラジウム合金の製造方法 - Google Patents
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Description
近年、貴金属素材の高騰を受け、白金又は白金合金や、金又は金合金を使用した装身具の価格が高くなり、装飾品の消費市場は縮小する傾向を示してきている。特に、高品位な宝飾品はその影響が大きい。
そこで、このような環境変化に対応するため、高品位な貴金属で素材価値を維持しつつ白金合金や金合金より安価な装飾品としての素材が求められるようになってきている。
また、筆記具においては、付加価値を出すため装飾用の金輪やペン先の部材等に金合金等を用いて機械的性質を確保しながら、高級感を出しているものがあるが、こうした筆記具においても、前記したような理由により、また顧客へのアピールとなるように、白金合金や金合金に代わって新たな貴金属素材により製造することが検討され始めている。
かかるパラジウム合金には、一部輸入されたPd990という製品もあるが、国内で製造されているパラジウム合金としてはPd950までの純度が主流である。その理由は、パラジウムは、純度が高すぎると装身具の加工時に必要な機械的性質を確保できないだけでなく、柔らかすぎるが故に変形しやすく傷がつきやすいからである。具体的には、例えば指輪等においては、現実問題として要求されるビッカース硬度は80Hv以上であるが、パラジウムは高純度になればなる程ビッカース硬度が低く、純パラジウム(不可避的不純を含む)のビッカース硬度は約40Hv程度と低い。
また、ホウ素が侵入したパラジウム等の表面は硬化してビッカース硬度が高いものの、パラジウム等の内部にはホウ素が存在しないため内部のビッカース硬度は高くなっておらず、例えば指輪等へ加工した場合、耐変形性能は十分とはいえなかった。
また、上記の方法では、パラジウム等の表面を硬化させることはできるものの、表面に肌荒れが起こり易く、例えば指輪等を製造する際には、加工後に表面を再度磨く等の後工程が必要となる場合が多く、製造コストのアップに繋がるという問題もある。
また、一般に貴金属を溶解する場合、例えば、ZrO2またはSiO2等の酸化物を含んだ坩堝を使用するが、こうした坩堝の耐熱限界は2000℃程度であるのに対し、ホウ素の融点が2092℃であり、酸化もし易い。このため、これらの坩堝に所定配合比率でパラジウムとホウ素とを投入して溶解しても、安定した溶融ができず、均質な合金を得るのは難しいという問題がある。
請求項1に記載の発明は、
パラジウム合金の製造方法であって、
パラジウム:94.5〜97.6質量%、ホウ素:2.4〜5.5質量%の組成割合のパラジウムとホウ素とを水冷坩堝を用いて溶解して均一組成の母合金を製造する第1工程と、
少なくとも所定量の前記第1工程により製造した母合金とパラジウムとケイ素を混ぜて溶解して、
ホウ素とケイ素を合わせて0.04〜1.0質量%を含有し、少なくともケイ素を0.01〜0.4質量%の範囲で含有し、パラジウムを99.0質量%以上含んだパラジウム合金を製造する第2工程と、
を有することを特徴とする。
パラジウム合金の製造方法であって、
パラジウム:94.5〜97.6質量%、ホウ素:2.4〜5.5質量%の組成割合のパラジウムとホウ素とを水冷坩堝を用いて溶解して均一組成の母合金を製造する第1工程と、
少なくとも所定量の前記第1工程により製造した母合金とパラジウムを混ぜてSiO2を含んだ坩堝を用いて溶解して、
ホウ素とケイ素を合わせて0.04〜1.0質量を含有し、少なくともケイ素を0.01〜0.4質量%の範囲で含有し、パラジウムを99.0質量%以上含んだパラジウム合金を製造する第2工程と、
を有することを特徴とする。
パラジウム合金の製造方法であって、
パラジウム:94.5〜97.6質量%、ホウ素:2.4〜5.5質量%の組成割合のパラジウムとホウ素とを水冷坩堝を用いて溶解して均一組成の母合金を製造する第1工程と、
Si酸化物で構成された鋳造用坩堝に、少なくとも所定量の前記第1工程により製造した母合金とパラジウムを混合して高周波溶解炉により溶解して、
ホウ素とケイ素を合わせて0.04〜1.0質量%を含有し、少なくともケイ素を0.01〜0.4質量%以内の範囲で含有し、パラジウムを99.0質量%以上含んだパラジウム合金からなる鋳造品を製造する第2工程と、
を有することを特徴とする。
その母合金を得るには、パラジウムとホウ素の共晶点近傍で合金(母合金)を作る必要があり、パラジウムとホウ素の共晶点は、ホウ素の含有量が3.1質量%、5.3質量%近傍の2カ所に存在する。パラジウムとホウ素を溶解する際に、例えば、溶解用として一般的な、SiO2を含んだ坩堝を使用した場合には当該坩堝に含まれているケイ素(Si)が、あるいはジルコン坩堝を使用した場合には当該坩堝に含まれているジルコニウム(Zr)が還元溶出してしまい、坩堝を構成する成分が不可避に母合金に混入し、ホウ素の組成割合が減少することが実験結果より判った。そのホウ素の減少量やケイ素やジルコニウムの混入量をコントロールすることは難しく、正確な組成割合の母合金を得るためには水冷坩堝を使用することが重要な構成要件となる。
そして、このような高純度なパラジウム合金であるため、例えば、指輪やネックレス等の装身具の材料として、或いは筆記具のペン先や装飾用の金輪等の部材として、広い用途で用いることができる。
また、装身具としての指輪等や、筆記具に装着する金輪等に用いる場合には、加工時に変形したり傷が付き難くなるので、変形や傷による後工程の必要性がなくなり、品質の向上はもとより製造コストも抑えることができる。
また、色的にもプラチナ合金と比較して遜色ない装身具を、材料費を安くして提供することができるようになる。
また、高純度を維持しているので、顧客に貴金属としての高級感を印象付けることができるとともにプラチナ合金で製造した装身具より安価に提供することができる。
一方、ホウ素とケイ素を合わせて1.0質量%を超えて含有すると、例えば指輪等を切削加工等で製造する際に、合金を所望の厚みにするための圧延加工や、所望の形状にするための加工を行った場合に、加工硬化による硬度上昇に伴い変形抵抗が大きくなる。このため、製品とするための加工が困難となったり、加工時に割れが生じやすくなったりすることで、生産性が低下するという問題が生じるため好ましくない。
また、ケイ素を0.01質量%以上含有すれば、後述する「表2」の参考例8に示すように、純パラジウム(比較例1)に比べて、ビッカース硬度が10Hv以上高くなり、測定誤差以上に硬度が高くなっているので、確実に硬度の上昇が得られる。ケイ素を0.4質量%を超えて含有すると、脆くなり、製品とするための加工が困難となったり、加工時に割れが生じやすくなったりすることで、生産性が低下するという問題が生じるため好ましくない。
カットリングの製造は、一般的には次のような工程からなる。
a.先ず、パラジウム合金等のインゴットを製造する工程、
b.前記板材を圧延・焼鈍を繰り返して所定の板厚にする工程。
c.メンコ抜き(ドーナツ形状に打ち抜き)し、プレス成型して指輪に形成する工程。
e.必要に応じて焼鈍しながら指輪のサイズを拡張する工程。
f.幅詰め切削(旋盤にて指輪の幅を所定の寸法)および外径切削(旋盤にて指輪の形状を甲丸とか平とかの形状に切削)を行い、指輪に製造する工程。
上記切削工程においてはダイヤバイトを用いて切削を行っているが、パラジウム−ホウ素の合金、パラジウム−ホウ素−ケイ素の合金、パラジウム−ケイ素の合金の各指輪の製造における切削工程において、1本のバイトで切削できる指輪の数に差があることが判った。その結果を表1に示す。
これに対し、参考例4の0.17質量%のホウ素および0.13質量%のケイ素を含有し残部をパラジウムとしたパラジウム合金の指輪(表面層のビッカース硬度:282Hv)の製造にあたっては、約300本程度の切削が可能であった。また、参考例5の0.09質量%のケイ素を含有し残部をパラジウムとしたパラジウム合金の指輪(表面層のビッカース硬度:164Hv)の製造にあたっても、約300本程度の切削ができ、参考例6の0.4質量%のケイ素を含有し残部をパラジウムとしたパラジウム合金の指輪(表面層のビッカース硬度:285Hv)の製造にあたっても、約400本程度の切削ができた。
したがって、ケイ素を0.09〜0.4質量%含有量していると切削性の向上が見られた。また、参考例7に示すように、ケイ素の含有量が0.6質量%だと脆くなり、圧延工程において板材に割れが生じてしまった。
本発明のパラジウム合金の製造方法は、均一組成の母合金を製造する第1工程と、前記母合金を用いて高純度パラジウム合金を製造する第2工程と、を有している。
かかる製造方法は、パラジウムにホウ素を表面から内部まで均一に含有させて合金化する方法として、パラジウムとホウ素が共晶点を持つことに注目し、先ず、共晶点近傍で合金(母合金)を作り、次に、融点を下げた均質な合金(母合金)を使用して所定の配合のパラジウムとホウ素の合金(所望の高純度なパラジウム合金)を製造するものである。
なお、パラジウムとホウ素の共晶点は、3.1%近傍、5.3%近傍の2カ所に存在するが、以下、3.1%近傍の共晶点を例にとって説明する。
この水冷坩堝を使えば溶解物を3000℃以上の高温まで昇温できるため、パラジウムと、高融点(2092℃)のホウ素とを、均一に溶解することができる。
また、パラジウム−ホウ素系合金は、例えばセラミックス坩堝を使用して溶解すると坩堝成分が還元されて溶解中の合金の中に混入し3元系の合金になってしまうが、水冷坩堝を使えば坩堝がホウ素と反応することなく、坩堝成分の合金への混入が起こらず、均質な2元系のパラジウム合金を製造することができる。
こうした水冷坩堝により、パラジウムとホウ素の両者が溶解過程でともに溶解し合金化が進むと固相線と液相線が同じとなる共晶点1065℃が融点となる。共晶点付近では凝固温度範囲が狭く、所謂「てこの原理」が働きにくいので偏析が起きにくく、繰り返し溶解することで共晶点では均一な合金が得られることとなる。
実際に約115℃の凝固温度範囲を持つ5.50%で母合金50gを作成後、破砕して4ブロックに分け、各ブロックからサンプリングしてICP分析を実施した結果、5.25%〜5.42%で最大誤差率4.5%だった。同様に2.40%で母合金50gを作成後、破砕して5ブロックに分け、各ブロックからサンプリングしてICP分析を実施した結果、2.29〜2.37%で最大誤差率4.6%だった。
また、5.5%配合の母合金を使用してパラジウム−1%ホウ素の合金となるように溶解を行ったが、実際の母合金の分析値が5.25%だった場合、パラジウム−0.96%ホウ素の合金となる。2.4%配合の母合金を使用してパラジウム−1%ホウ素の合金となるように溶解を行ったが、実際の母合金の分析値が2.29%だった場合、パラジウム−0.95%ホウ素の合金となり、ホウ素量の0.05%レベルのずれは機械的性質にほとんど影響を与えないレベルであると言える。
また、5.5%配合の母合金を使用してパラジウム−0.03%ホウ素の合金となるように溶解を行ったが、実際の母合金の分析値が5.25%だった場合、パラジウム−0.029%ホウ素の合金となる。2.4%配合の母合金を使用してパラジウム−0.03%ホウ素の合金となるように溶解を行ったが、実際の母合金の分析値が2.29%だった場合、パラジウム−0.029%ホウ素の合金となり、ホウ素の量の0.001%レベルのずれは機械的性質にほとんど影響を与えないレベルであると言える。
従って、115℃程度の凝固温度範囲であれば、実生産上問題のない母合金を作製することができ、ホウ素量2.4%〜5.5%の範囲であれば、安定した母合金を作製することができ、パラジウムが94.5〜97.6質量%であって、ホウ素が2.4〜5.5質量%の範囲で配合することができる。
実際に約50℃の凝固温度範囲を持つ5.40%で母合金50gを作成後、破砕して4ブロックに分け、各ブロックからサンプリングしてICP分析を実施した結果、5.35%〜5.29%で最大誤差率2.0%だった。同様に2.80%で母合金を作製後、破砕して5ブロックに分け、各ブロックからサンプリングしてICP分析を実施した結果、2.74%〜2.77%で最大誤差率2.1%だった。従って、50℃程度の凝固温度範囲であれば、安定した母合金を作製することができ、ホウ素量2.8%〜3.9%、5.0%〜5.4%の範囲であれば、安定した母合金を作製することができる。
従って、パラジウムが94.6〜95.0質量%であって、ホウ素が5.0〜5.4質量%、パラジウムが96.1〜97.2質量%であって、ホウ素が2.8〜3.9質量%の範囲で配合することができる。
5.3%近傍の共晶組成はβB相を含むため酸化しやすい面があるが、3.1%近傍の共晶組成はパラジウムを主成分とする相のみからなり酸化しにくく、また凝固温度範囲の立ち上がりが緩慢で管理がしやすく好ましい。
または、上記第1工程により製造した母合金と所定量のパラジウムをSiO2を含んだ坩堝を用いて溶解して、少なくともケイ素を0.01〜0.4質量%の範囲で含有し、パラジウムを99.0質量%以上含んだパラジウム合金を製造する(請求項2)。
または、Si酸化物で構成された鋳造用坩堝に、少なくとも所定量の上記第1工程により製造した母合金とパラジウムを混合して高周波溶解炉により溶解して、ホウ素とケイ素を合わせて0.04〜1.0質量%を含有し、少なくともケイ素を0.01〜0.4質量%以内の範囲で含有し、パラジウムを99.0質量%以上含んだパラジウム合金からなる鋳造品を製造する(請求項3)。
以下、実施例により、本発明のパラジウム合金について具体的に説明する。
先ず、パラジウム48.45gと、ホウ素1.55gを銅製の水冷ハース上にのせ、真空排気後、アルゴン置換したアーク炉(以下、真空置換型アーク炉という)で溶解して、ホウ素をパラジウムとホウ素の共晶点の近傍である3.1質量%含有したパラジウムとホウ素とからなる均一組成の母合金を50g製造した。
次に、製造した母合金0.48g(パラジウム0.465g、ホウ素0.015gを含有)と、パラジウム49.485gとケイ素0.035gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.90質量%、ホウ素を0.03質量%、ケイ素を0.07質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例1とした。
実施例1と同様にして製造した母合金0.81g(パラジウム0.785g、ホウ素0.025gを含有)と、のパラジウム49.165gとケイ素0.025gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、パラジウムを99.90質量%、ホウ素を0.05質量%、ケイ素を0.05質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例2とした。
実施例1と同様にして製造した母合金1.13g(パラジウム1.095g、ホウ素0.035gを含有)と、パラジウム48.86gとケイ素0.01gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.91質量%、ホウ素を0.07質量%、ケイ素を0.02質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例3とした。
実施例1と同様にして製造した母合金1.45g(パラジウム1.405g、ホウ素0.045gを含有)と、パラジウム48.545gとケイ素0.005gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.90質量%、ホウ素を0.09質量%、ケイ素を0.01質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例4とした。
実施例1と同様にして製造した母合金4.84g(パラジウム4.69g、ホウ素0.15gを含有)と、パラジウム45.06gとケイ素0.10gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.50質量%、ホウ素を0.3質量%、ケイ素を0.2質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例5とした。
実施例1と同様にして製造した母合金8.06g(パラジウム7.81g、ホウ素0.25gを含有)と、パラジウム41.69gとケイ素0.08gと他の添加物としてAg、Cu、Niから選んだそれぞれ1種を0.17gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.00質量%、ホウ素を0.5質量%、ケイ素を0.16質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例6とした。
実施例1と同様にして製造した母合金9.68g(パラジウム9.38g、ホウ素0.30gを含有)と、パラジウム40.12gとケイ素0.20gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.00質量%、ホウ素を0.6質量%、ケイ素を0.4質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例7とした。
実施例1と同様にして製造した母合金12.90g(パラジウム12.50g、ホウ素0.40gを含有)と、パラジウム37.01gとケイ素0.05gと他の添加物としてAg、Cu、Niから選んだそれぞれ1種を0.04gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.02質量%、ホウ素を0.8質量%、ケイ素を0.1質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例8とした。
実施例1と同様にして製造した母合金12.90g(パラジウム12.50g、ホウ素0.40gを含有)と、パラジウム37.0gとケイ素0.10gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.00質量%、ホウ素を0.8質量%、ケイ素を0.2質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例9とした。
実施例1と同様にして製造した母合金0.484g(パラジウム0.469g、ホウ素0.015gを含有)と、パラジウム49.511gとケイ素0.005gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.96質量%、ホウ素を0.03質量%、ケイ素を0.01質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、実施例10とした。
純パラジウム50gの板材を、比較例1とした。
実施例1と同様にして製造した母合金0.16g(パラジウム0.155g、ホウ素0.005gを含有)と、パラジウム49.835gとケイ素0.005gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.98質量%、ホウ素を0.01質量%、ケイ素を0.01質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、比較例2とした。
実施例1と同様にして製造した母合金0.32g(パラジウム0.31g、ホウ素0.01gを含有)と、パラジウム49.675gとケイ素0.005gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.97質量%、ホウ素を0.02質量%、ケイ素を0.01質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、比較例3とした。
実施例1と同様にして製造した母合金1.61g(パラジウム1.56g、ホウ素0.05gを含有)と、パラジウム47.99gとケイ素0.40gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.10質量%、ホウ素を0.1質量%、ケイ素を0.8質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、比較例4とした。
実施例1と同様にして製造した母合金14.52g(パラジウム14.07g、ホウ素0.45gを含有)と、パラジウム35.23gとケイ素0.25gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを98.60質量%、ホウ素を0.9質量%、ケイ素を0.5質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、比較例5とした。
実施例1と同様にして製造した母合金19.35g(パラジウム18.75g、ホウ素0.60gを含有)と、パラジウム30.35gとケイ素0.3gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを98.2質量%、ホウ素を1.2質量%、ケイ素を0.6質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、比較例6とした。
先ず、パラジウム48.0gと、ケイ素2.0gを銅製の水冷ハース上にのせ、真空排気後、アルゴン置換したアーク炉(以下、真空置換型アーク炉という)で溶解して、ケイ素をパラジウムとケイ素の共晶点の近傍である4.0質量%含有したパラジウムとケイ素とからなる均一組成の母合金を50g製造した。
次に、製造した母合金0.125g(パラジウム0.12g、ケイ素0.005gを含有)と、パラジウム49.875gを銅製の水冷ハース上にのせ真空置換型アーク炉で溶解し、圧延・焼鈍してパラジウムを99.99質量%、ケイ素を0.01質量%含有したパラジウム合金50gの板材を製造して、参考例8とした。
(1.硬度)
実施例1〜10、比較例1〜6の板材について、表面層の3箇所にてビッカース硬度(Hv)を測定し、その平均値を求めた。
また、各板材を切断して内部の3箇所にてビッカース硬度(Hv)を測定し、その平均値を求めた。その結果は表2に示した通りである。
実施例1〜10、比較例1〜6及び参考例8の板材について、圧延加工して割れが生じたか否かを目視検査し、下記のように評価した。その結果は表2に示した通りである。
割れが生じない・・・○
割れが生じた・・・×
表記していないが、実施例1〜10、比較例1〜6及び参考例8の板材について、表面の肌荒れ状態を目視観察したが、各板材の表面状態はどれも良好で、実施例と比較例においての差はみられなかった。
比較例1〜3は、パラジウム合金の板材における表面と内部のビッカース硬度が80Hv未満であり、例えば装飾品としての指輪の材料として用いる場合には、指輪を鋳造により製造した際に製品として傷が付き易いという問題があり、好ましくない。
比較例4〜5は、ビッカース硬度は245Hv以上有るが、ケイ素の量が多く、圧延加工の際に割れてしまった。
比較例6は、ビッカース硬度が380Hv以上と高くかつケイ素の量が多く、圧延加工の際に割れてしまった。
参考例8は、圧延加工の際に割れることはないが、比較例1の純パラジウム合金よりビッカース硬度が10Hv以上高くなっているものの、80Hv未満であった。
先ず、実施例1と同様にして製造した母合金4.84g(パラジウム4.69g、ホウ素0.15gを含有)と、計算上のホウ素の割合が0.3質量%となるようにパラジウム45.16gとをシリカ坩堝に混合して遠心鋳造機を用いて鋳造により指輪を製造して、実施例11とした。
先ず、前記実施例1と同様に、パラジウム145.35gと、ホウ素4.65gを銅製の水冷ハース上にのせ、真空排気後、アルゴン置換したアーク炉(以下、真空置換型アーク炉という)で溶解して、ホウ素をパラジウムとホウ素の共晶点近傍である3.1質量%含有したパラジウムとホウ素とからなる均一組成の母合金を150g製造した。
実施例12と同様にして製造した母合金16.30g(パラジウム15.81g、ホウ素0.49gを含有)と、計算上のホウ素の割合が0.7質量%となるようにパラジウム53.70gとをシリカ坩堝に混合して遠心鋳造機を用いて鋳造により指輪を製造し、実施例13とした。
実施例12と同様にして製造した母合金18.62g(パラジウム18.06g、ホウ素0.56gを含有)と、計算上のホウ素の割合が0.8質量%となるようにパラジウム51.38gとをシリカ坩堝に混合して遠心鋳造機を用いて鋳造により指輪を製造し、実施例14とした。
実施例12と同様にして製造した母合金23.28g(パラジウム22.58g、ホウ素0.70gを含有)と、計算上のホウ素の割合が1.0質量%となるようにパラジウム46.72gとをシリカ坩堝に混合して遠心鋳造機を用いて鋳造により指輪を製造し、実施例15とした。
実施例12と同様にして製造した母合金32.59g(パラジウム31.61g、ホウ素0.98gを含有)と、計算上のホウ素の割合が1.4質量%となるようにパラジウム37.41gとをシリカ坩堝に混合して遠心鋳造機を用いて鋳造により指輪を製造し、比較例7とした。
実施例12と同様にして製造した母合金46.56g(パラジウム45.16g、ホウ素1.40gを含有)と、計算上のホウ素の割合が2.0質量%となるようにパラジウム23.44gとをシリカ坩堝に混合して遠心鋳造機を用いて鋳造により指輪を製造し、比較例8とした。
(1.硬度)
実施例11〜15及び比較例7〜8の指輪について、表面の3箇所にてビッカース硬度(Hv)を測定し、その平均値を求めた。
また、各指輪を切断して内部の3箇所にてビッカース硬度(Hv)を測定し、その平均値を求めた。その結果は表3に示した通りである。
Claims (3)
- パラジウム合金の製造方法であって、
パラジウム:94.5〜97.6質量%、ホウ素:2.4〜5.5質量%の組成割合のパラジウムとホウ素とを水冷坩堝を用いて溶解して均一組成の母合金を製造する第1工程と、
少なくとも所定量の前記第1工程により製造した母合金とパラジウムとケイ素を混ぜて溶解して、
ホウ素とケイ素を合わせて0.04〜1.0質量%を含有し、少なくともケイ素を0.01〜0.4質量%の範囲で含有し、パラジウムを99.0質量%以上含んだパラジウム合金を製造する第2工程と、
を有することを特徴とするパラジウム合金の製造方法。 - パラジウム合金の製造方法であって、
パラジウム:94.5〜97.6質量%、ホウ素:2.4〜5.5質量%の組成割合のパラジウムとホウ素とを水冷坩堝を用いて溶解して均一組成の母合金を製造する第1工程と、
少なくとも所定量の前記第1工程により製造した母合金とパラジウムを混ぜてSiO2を含んだ坩堝を用いて溶解して、
ホウ素とケイ素を合わせて0.04〜1.0質量%を含有し、少なくともケイ素を0.01〜0.4質量%の範囲で含有し、パラジウムを99.0質量%以上含んだパラジウム合金を製造する第2工程と、
を有することを特徴とするパラジウム合金の製造方法。 - パラジウム合金の製造方法であって、
パラジウム:94.5〜97.6質量%、ホウ素:2.4〜5.5質量%の組成割合のパラジウムとホウ素とを水冷坩堝を用いて溶解して均一組成の母合金を製造する第1工程と、
Si酸化物で構成された鋳造用坩堝に、少なくとも所定量の前記第1工程により製造した母合金とパラジウムを混入して高周波溶解炉により溶解して、
ホウ素とケイ素を合わせて0.04〜1.0質量%を含有し、少なくともケイ素を0.01〜0.4質量%以内の範囲で含有し、パラジウムを99.0質量%以上含んだパラジウム合金からなる鋳造品を製造する第2工程と、
を有することを特徴とするパラジウム合金の製造方法。
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