JP5751796B2 - 光学素子の製造方法および光学素子 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1では、金型内における第1冷却工程で光学面から先に冷却し、さらに金型から取り出した後に第2冷却工程で徐冷することで、内部の屈折率分布を低減する技術が開示されている。
図1は本発明の第一の実施形態における光学素子の成形方法の特徴を最もよく表す図面であり、成形中の時間経過に伴う金型温度の変化を表している。1は機能駒の温度履歴、2は側面駒の温度履歴である。aは金型(キャビティ)内に樹脂が射出充填された時間を示す。bは側面駒11の温度が再びTgとなる時間を示す。cは金型が開く時間を示す。図2は本発明の光学素子の一例であるfθレンズ3の斜視図を示す。X方向のレンズの肉厚よりもZ方向のレンズの肉厚の方が小さく、Z方向よりもY方向に長い光学面を有する。fθレンズ3は、例えば、レーザービームプリンタのスキャナユニットに使用されるレンズであり、ポリゴンミラー等の光偏向器によって偏向されたレーザーを感光ドラム上に等速走査させつつ結像させるレンズである。4は光線が透過する光学面、5は光学面と隣接する非光学面、すなわち側面である。光学面には、光学有効領域(画像形成に有効な光線が通過する領域)と非光学有効領域(画像形成に有効でない光線が通過する領域)が存在する。本明細書においては、図2におけるX方向を光軸方向、Y方向を主走査方向、Z方向を副走査方向、光学面と隣接する非光学面5を側面と称することにする。fθレンズ3は熱可塑性プラスチックを用いて製造されることが多く、例えば日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標)や三井化学社製APEL(登録商標)、JSR社製ARTON(登録商標)などを用いて射出成形により製造される。
(溶融樹脂を射出充填する工程)
まず、光学素子の光学面を形成するための機能駒9、10と、側面を形成する側面駒11とに囲まれた空間である前記キャビティ15に、溶融樹脂を射出充填する。図1において、aは金型(キャビティ)内に樹脂が射出充填された時間を指す。充填と同時に側面駒11に備えた第二の温度調節手段12を用いて側面駒11を加熱する。なお本明細書における同時とは、例えば数秒以内における同時を意味する。側面駒11の温度を第二の温度調節手段12の熱により上昇させ、使用樹脂材料のガラス転移温度Tg以上に加熱する。
その後、第二の温度調節手段12への通電を停止する、もしくは電力量を減らすことにより金型を冷却し始める。側面駒11は冷却され、側面駒11の温度が再びTgとなる時間bのときに機能駒9、10の温度が(Tg−30)℃以上(Tg−5)℃以下となるように第一の温度調節手段(例えば水管)14によって金型温度を制御する。例えば使用樹脂材料のガラス転移温度Tg=137℃である場合は107℃以上132℃以下に金型温度を制御する。
その後、十分に金型内で冷却した後、時間cで光学素子を金型から取り出すことにより光学面の形状精度を崩すことなく離型することができる。また、金型から光学素子を取り出す際、機能駒9、10と側面駒11の温度差が10℃以下の状態で取り出すようにすると、一段と光学面の形状精度が向上することがわかった。これは以下のような理由によるものと考えられる。図4(b)は成形品を取り出すために金型を開いた状態を示している。この図に示したとおり、型開き中は側面駒11が金型のほかの部位と接触する面積が減少する。金型のほかの部位は温度調節水管14により温度を制御されているが、側面駒11は金型が開いている間、金型のほかの部位と接触する面積が減少しているため温度調節水管14より受ける制御の影響が小さくなる。よって、予め金型が開く時間cの段階で機能駒と側面駒の温度差を10℃以下にしておくことで、温度調節水管14から受ける影響を小さくすることができる。結果として再現性のよりよい成形を実現することができるため、光学面の形状精度も一段と向上する。また、成形品を金型から取り出す際には機能駒と側面駒の温度差を10℃以下とすることにより、型開閉に伴う各金型部材の温度変化を抑えることができる。各金型部材の温度が安定するまで待つ時間を設けなくとも安定した成形を行うことが可能となる。また、図1の実施形態においては、金型温度にあまり差がない状態で成形品を取り出すことができるので、次のサイクルに向けて金型温度の調整時間が短くて済み、必要以上にサイクルが長くなることを抑制し低コストでの成形が可能となる。
次に、本発明の第二の実施形態における光学素子の成形方法について説明する。上記第一の実施形態と同一部分はその説明を省略する。
次に、本発明の第三の実施形態における光学素子の成形方法について説明する。上記第一の実施形態及び第二の実施形態と同一部分はその説明を省略する。
その後、十分に金型を冷却し成形品を金型から取り出すことで、微細形状を転写し、かつ複屈折の小さい良好な光学素子を得ることができる。
次に、本発明の光学素子について説明する。
本発明の光学素子の一例について、第四の実施形態として説明する。図2(a)は前述したように、本発明の光学素子の一例であるfθレンズ3の斜視図を示す。X方向のレンズ肉厚よりもZ方向のレンズ肉厚の方が小さく、Y方向に長手の光学面を有する。fθレンズ3は、例えば、レーザービームプリンタのスキャナユニットに使用されるレンズであり、ポリゴンミラー等の光偏向器によって偏向されたレーザーを感光ドラム上に等速走査させつつ結像させるレンズである。4は光線が透過する光学面、5は光学面と隣接する非光学面、すなわち側面である。光学面には、光学有効領域(画像形成に有効な光線が通過する領域)と非光学有効領域(画像形成に有効でない光線が通過する領域)が存在する。レーザーは、光学面4の光学有効領域から、ある光束径を持って入射し、光軸方向(X軸方向)にレンズを透過して、感光ドラム上に、あるスポット径で結像する。本発明の光学素子であると、そのスポット径は、変形も回転も肥大もなく、優れた光学性能が得られる。具体的には、光軸方向から見た光学有効領域内における複屈折の主軸角差が20度以下であると、複屈折の影響を最小限に抑えることができ、スポットの肥大化を防ぐことができることを本願発明者は見出した。本明細書において、主軸とは、樹脂の配向の方向である複屈折の方向のことを言い、主軸角差とは、光学有効領域内における、最大の主軸方向の角差のことを言う。加えて、前記光軸方向から見た光学有効領域内における複屈折の主軸角差が、側面方向から見た複屈折の主軸角差よりも小さいことも複屈折の影響を最小限に抑えるためには必要である。これは、レンズとして機能するZ軸方向の幅、すなわち光学有効領域内において樹脂の配向の方向である、複屈折の方向が大きく異なるような場合に、複屈折による異常光が大きく発生してしまうためであると考えられる。複屈折はプラスチックの高分子鎖の配向や内部応力によって引き起こされ、射出成形においては、高分子鎖の配向は射出流動時のせん断応力や冷却時の熱応力によって発生する。しかし薄肉成形品とは異なり、fθレンズのような厚肉成型品の場合、射出流動時のせん断応力の影響は小さいため、主に熱応力によって配向が決定され、この配向の方向によって複屈折の方向、すなわち主軸が決まるためであると考えられる。また、主軸は樹脂温度がTg以上であれば熱応力によって方向が変わるが、Tg以下においては熱応力を受けてもその方向は変わらないため、側面駒の金型温度をTg以上に上げておくことが必要である。
本発明の光学素子の一例について、第五の実施形態として説明する。上記第四の実施形態と同一部分はその説明を省略する。
図1(a)に示した金型温度履歴で光学素子を成形した。樹脂材料として、Tgが137℃である日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標) E48Rを用いた。
金型の冷却中、側面駒の温度がTgとなったとき(図1における時間b)の機能駒の温度が、97℃及び134℃になるように調整して、それぞれ成形を行なった以外は、実施例1同様の方法で成形を行った。
実施例1及び比較例1の側面駒の温度がTgになった時の機能駒の温度が異なる光学素子それぞれについて、複屈折の主軸角差と屈折率分布の関係を表1に示した。
金型の冷却中、側面駒の温度がTgとなったとき(図1における時間b)の機能駒の温度を、127℃とし、実施例1同様の方法で成形を行なった。離型時(図1における時間c)における機能駒と側面駒の温度差を、5℃及び10℃に調整して、それぞれ得られた光学素子の成形ばらつきの関係を測定した。機能駒と側面駒の温度差はカートリッジヒーターへの電力供給量や通電を止めるタイミングを調節して、前記温度差となるようにした。
機能駒と側面駒の温度差が、15℃となるように離型した以外は、実施例2同様の方法で成形を行なった。
実施例2及び比較例2の離型時(図1における時間c)における機能駒と側面駒の温度差が異なる光学素子それぞれについて、成形ばらつきの関係を表2に示した。
樹脂材料に、Tgが131℃であるJSR社製ARTON(登録商標) D4531を用いた以外は、実施例1同様の方法で成形し、それぞれ得られた光学素子の複屈折の主軸角差、屈折率分布を測定した。
樹脂材料に、Tgが131℃であるJSR社製ARTON(登録商標) D4531を用いた以外は、比較例1同様の方法で成形し、それぞれ得られた光学素子の複屈折の主軸角差、屈折率分布を測定した。
実施例3及び比較例3の側面駒の温度がTgになった時の機能駒の温度が異なる光学素子それぞれについて、複屈折の主軸角差と屈折率分布の関係を表3に示した。
また時間bにおける機能駒の温度が101℃未満となった場合には、屈折率分布が大きくなってしまい、時間経過によるピント位置の移動量が大きなってしまった。
金型の冷却中、側面駒の温度がTgとなったとき(図1における時間b)の機能駒の温度を、121℃とし、実施例3同様の方法で成形を行なった。離型時(図1における時間c)における機能駒と側面駒の温度差を、5℃及び10℃に調整して、それぞれ得られた光学素子の成形ばらつきの関係を測定した。
機能駒と側面駒の温度差が、15℃となるように離型した以外は、実施例4同様の方法で成形を行なった。
実施例4及び比較例4の離型時(図1における時間c)における機能駒と側面駒の温度差が異なる光学素子それぞれについて、成形ばらつきの関係を表4に示した。
図1(d)に示した金型温度履歴で光学面の一面に反射防止のために微細突起形状を有する光学素子を成形した。微細突起形状を形成するために、機能駒表面には径200nm、深さ800nmの穴を全面に設けておく。樹脂材料として、Tgが137℃である日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標) E48Rを用いた。射出充填前(図1における時間a)の機能駒の温度が130℃となるように調整し、かつ金型の冷却中、側面駒の温度がTgとなったとき(図1(d)における時間b)の鏡面駒の温度が、132℃になるように調整して、成形を行った。得られた光学素子の微細突起形状の格子高さ、複屈折の主軸角差および屈折率分布を測定した。機能駒の温度は温調水管の温度を低下させることにより冷却を開始し、同時にカートリッジヒーターによって側面駒を加熱することで側面駒の冷却を遅らせた。またカートリッジヒーターからの熱と温調水管の温度がバランスして時間bにおいて前記温度となるように温調水管の温度を調節した。
射出充填前(図1における時間a)の機能駒の温度が140℃になるように調整し、かつ金型の冷却中、側面駒の温度がTgとなったとき(図1(d)における時間b)の鏡面駒の温度が、それぞれ107℃、127℃、132℃になるように調整した。それ以外は、実施例5と同様の方法で成形を行なった。
射出充填前(図1における時間a)の機能駒の温度が120℃になるように調整した以外は、実施例5と同様の方法で成形を行なった。
射出充填前(図1における時間a)の機能駒の温度が140℃になるように調整し、かつ金型の冷却中、側面駒の温度がTgとなったとき(図1(d)における時間b)の鏡面駒の温度が、それぞれ97℃及び134℃になるように調整した。それ以外は、実施例5と同様の方法で成形を行なった。
側面駒の温度がTgとなったとき(図1(d)における時間b)の鏡面駒の温度が、132℃となるように成形した時の、射出充填前の機能駒の温度が異なる光学素子それぞれの突起高さを表5に示した。
射出充填前(図1における時間a)の機能駒の温度が140℃になるように調整し、かつ側面駒の温度がTgになった時(図1(d)の時間b)の機能駒の温度が異なる光学素子それぞれについて、複屈折の主軸角差と屈折率分布の関係を表6に示した。
図1(c)に示した金型温度履歴で光学面の一面に収差低減のために回折格子形状を有する光学素子を成形した。樹脂材料として、Tgが131℃であるJSR社製ARTON(登録商標) D4531を用いた。射出充填前(図1(c)における時間a)の機能駒の温度が124℃となるように調整し、かつ金型の冷却中、側面駒の温度がTgとなったとき(図1(c)における時間b)の鏡面駒の温度が128℃になるように調整して、成形を行った。得られた光学素子の微細突起形状の格子高さ、複屈折の主軸角差および屈折率分布を測定した。温調水管の温度を124℃に設定し、射出充填と同時にカートリッジヒーターによって側面駒をTg以上に加熱した。その後、カートリッジヒーターへの通電を停止し時間bにおける昨日駒の温度が前記温度となるように温調水管の温度を調節した。
射出充填前(図1(c)における時間a)の機能駒の温度が114℃となるように調整すること、および温調水管の温度を114℃に設定すること以外は実施例7と同様の方法で成形を行なった。
射出充填前の機能駒の温度が異なる光学素子それぞれの格子形状の稜線の有無を表7に示した。
(b)では転写が不十分であるため稜線が確認できないことがわかる。
2 側面駒の温度履歴
3 プラスチック光学素子
4 光学面
5 側面
6 射出成形用金型
7 固定側金型
8 可動側金型
9 固定側機能駒
10 可動側機能駒
11 側面駒
12 カートリッジヒーター
13 側面駒温度制御用センサー
14 温度調節水管
15 レンズキャビティ
Claims (7)
- 光学面を形成する機能駒と、前記光学面と隣接する側面を形成する側面駒と、を有する金型を用いて光学素子を成形する光学素子の製造方法であって、
前記機能駒と前記側面駒とに囲まれた空間である前記金型のキャビティに、樹脂を射出し充填する射出充填工程と、
前記金型を冷却し、前記キャビティに充填された樹脂を冷却する金型冷却工程と、
前記冷却された樹脂を前記金型から取り出す工程と、を有し、
前記金型冷却工程において、前記側面駒の温度がTgまで冷却された時、前記機能駒の温度が(Tg−30)℃以上(Tg−5)℃以下となるように前記金型を冷却することを特徴とする光学素子の製造方法。 - 前記射出充填工程における前記側面駒は、前記樹脂のガラス転移温度Tgより高い温度に加熱されていることを特徴とする請求項1記載の光学素子の製造方法。
- 前記射出充填工程における前記樹脂を射出する時の前記機能駒の温度は、(Tg−10)℃以上であることを特徴とする請求項1または2記載の光学素子の製造方法。
- 前記射出充填工程における前記樹脂を射出する時の前記機能駒の温度は、Tg以上であることを特徴とする請求項1または2記載の光学素子の製造方法。
- 前記射出充填工程は、保圧工程を含み、前記保圧工程完了まで、前記機能駒の温度はTg以上であることを特徴とする請求項4記載の光学素子の製造方法。
- 前記金型から取り出す工程は、前記機能駒と前記側面駒の温度差が10℃以下となった時、前記金型から前記樹脂を取り出すことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の光学素子の製造方法。
- 請求項1乃至6いずれか一項記載の光学素子の製造方法を用いて製造された光学素子であって、
光軸方向の肉厚よりも副走査方向の肉厚の方が小さく、前記副走査方向よりも主走査方向に長い光学面を有し、
前記光軸方向から見た光学有効領域内における複屈折の主軸角差が20度以下であって、かつ、前記光軸方向から見た前記光学有効領域内における複屈折の主軸角差は、側面方向から見た複屈折の主軸角差よりも小さいことを特徴とする光学素子。
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