JP5751225B2 - 真空成膜装置、及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

真空成膜装置、及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、真空下における機能性薄膜の加工前後の可撓性支持体を、ロールツーロールによって搬送させる際に加工面を実質的に非接触として、複数の異なる機能性薄膜の形成を連続的に行えることにより、生産性が高く、性能及び品質を向上させることの可能なガイドロール機構に関し、更に可撓性支持体に蒸着或いはスパッタリングなどによる加工を施して、機能性薄膜を形成する真空薄膜形成装置、ならびにこれらを用いたロールツーロールで有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)を製造する方法に関する。
近年、自発光素子として有機EL素子が注目されている。有機EL素子は、薄膜の有機化合物からなる発光層を電極で挟持した構成で、電極間に電流を供給すると発光する素子である。従って、薄膜である有機EL素子を光源として利用すると、小型化、軽量化が容易である上、蛍光灯に比べて発光の応答速度が速く、点灯直後の光量も比較的安定した照明装置となる。
有機EL素子を白色の発光として、蛍光灯の代替の照明用途への応用が検討されている。
有機EL素子は、光透過性の電極、例えばITO(インジウムチンオキサイド)の上に有機分子やポリマー、有機金属錯体などのナノメートル単位の薄膜層を積層し、最後に薄膜の電極層を形成して得られる。しかしながら、これらの薄膜の膜厚すべてを併せても、全体の膜厚は0.6μmにも満たない、非常に薄い多層構造の薄膜、すなわち機能性薄膜の積層体である。従って薄膜形成前の支持体には優れた平面性が必要とされ、異物や突起物、キズ、折れやヒビ割れなどがあると有機ELとしたとき、電圧印加時に、ショート(いわゆるリーク)により発光電流の増大や非発光となることがある。また、発光層中で電荷が移動したり励起子を形成したりして発光に至るまでの電気化学的なプロセスを妨害する、いわゆる水分・酸素等に代表される物質に対して、有機EL素子は非常に敏感である。これらの物質が、最初から不純物として存在したり、製造工程中で、混入したり、ガス拡散を防止する材料層の破損部分を越えて進入したりすると、発光の効率や駆動寿命が著しく短くなり、実用的な照明や表示のための性能を得ることができなくなる。
また、水分・酸素等は電極表面や内部の電気的、化学的な特性を変化させ、電子や正孔の移動を妨害する場合もあり、その結果、実用的な特性を大きく劣化させる。
有機EL素子の詳細については、オーム社から刊行されている「有機ELディスプレイ」(時任静士・安達千波矢・村田英幸、共著)の各章に詳しい記載がある。
従って、有機EL素子は、例えば、乾燥剤を封入して、ガラスや金属缶で密閉した構造の中に収めたり、また、水分や酸素等のガス成分に対して、バリア性能を有する層を基材や封止材料に形成して、性能を確保したりすることが検討されている。
ところが、従来開示されている技術では、少量のサンプルを多くの時間と作業時間を費やして作製しており、これを経済的に見合うべく安価で大量に製造することは困難である。
有機EL素子の材料を破損の危険や、質量が大きく取り扱いにくいガラス基板による真空での成膜から、プラスチックフィルムの元巻きを巻き出して、加工後に巻き取る、いわゆるロールツーロールによる加工による生産性の向上が試みられている。
例えば、特許文献1に見られるような真空チャンバー中で金属膜を形成する方法や装置は既に知られている。また、特許文献2に見られるような、ロールツーロールであって、巻き出しから巻き取りまで、プラスチックフィルム上に有機EL素子を形成する工程を非接触化するアイデアが開示されている。また、特許文献3、4に代表される、大気圧下で搬送される可撓性支持体をロールとロール或いはロールと筐体の狭い間隙を搬送させながら、真空下へ導入して、何らかの成膜加工を施す装置や工夫は開示されている。
多数の開示技術がありながら、真空下で有機EL素子に代表される高機能薄膜を生産性よく製造できない最大の理由は、可撓性支持体への多層薄膜を真空下で成膜する際に、加工面を非接触化できないことにある。従来の技術では、せっかく可撓性支持体を使用しながら、背面のみを大きなドラムに巻きつけて加工面上に有機物や金属、無機物などの種々の材料を成膜するので、その直前と直後の搬送のためのガイドロールは、必ず支持体の成膜加工される面に接触することになる。また、圧力差のある領域を搬送させるためには、気体分子の流れ込みにともなう可撓性支持体の振動や搬送方向のズレやシワの発生を抑制しなくてはならないが、このために搬送系全体の張力をあげるとスリキズが強く現われ、ガイドロールでの座屈、折れなども発生する。更に、複数の真空成膜室を水平に連結した場合に、各成膜室で異なる加工時間に合わせて、支持体を搬送するために、真空成膜室の間に、アキュームレータをおいて支持体の搬送と停止時間を調整したい場合があるが、加工面に接触するガイドロールを多数設置することになり、ガイドロールの表面のわずかな凹凸や異物の付着が、支持体の表面をこすったり、成膜済みの下層をキズつけたりするので、サブミクロンの薄膜を形成する装置のガイドロールとしては使えない。特に真空中の搬送においては、一般にはガスや低分子成分の揮発の危険がある樹脂製のガイドロールやゴム弾性のあるガイドロールは性能劣化を招くので敬遠されるため、真空下でも放出ガスの少ない、鏡面化された金属性ガイドロールを使用することが多い。
逆にこのような金属製ガイドロールが、有機EL用途の平滑性の高い樹脂フィルムやこの表面に加工された機能層や有機EL層と接触すると、たとえすべらずに追随して、接触しながら回転しても、わずか1μm程度の異物を巻き込んだ場合であっても確実に成膜面を損傷する。すなわち従来技術ではロールツーロールで可撓性支持体を搬送するといっても加工面の非接触化が困難である。
実際、研究室などの小スケールでは、支持体の厚みが比較的厚く、支持体の幅が狭いので、搬送張力を下げたり、良好な部分のみ選別したりする工夫により、生産技術的な課題は顕在化しない。ロールツーロールでない場合には、単に枚葉のガラス基板上に樹脂フィルムを固定するなどしてプラスチックフィルム上に薄膜を形成することは可能である。また加工面接触のガイドロールの中央部の直径を両端部より少し小さくすることで、生産性を無視すれば、可撓性支持体の表面を擦らずに薄膜を成膜し必要なデータを得ることは可能である。
このような課題が現実に発生するのは、可撓性支持体の幅方向の剛性が小さくなる場合、すなわち基材を薄くしてコスト低減を試みたり、また一度の搬送により、製品を大量に製造しようとして支持体の広幅化を試みた場合や、全体の搬送速度をあげて、停止と再搬送の時間を短くしていわゆるタクトタイムを短くした場合に搬送張力を高くしたときなど、いずれも生産性を向上し、成膜前後の可撓性支持体の取り扱い条件が厳しくなった場合である。例えば、40μm程度の支持体としてはかなり薄い場合であっても、140mm幅の2軸延伸ポリエステルフィルムで、搬送時の張力が、9.81×10−5N程度であれば、前述の中央部のみ非接触化したガイドロールを使用することで、支持体の座屈・折れといった問題の発生はかなり減少するが、とても大量かつ安定、安価に製造できるとはいえず、生産設備の費用も膨大なものとなる。
従来、有機EL素子は先端技術とされ、ガラス基板による枚葉ごとの有機EL素子作製はようやく市場に対応できるようになってきたが、ロール方式の生産の際の歩留まりの向上や生産技術に関するよく検討された技術アイデアや応用はあまりない。
特開2008−50638号公報 特開2007−42315号公報 特開平8−311650号公報 特表2006−522217号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、有機EL素子製造工程に代表される真空下の多層薄膜形成を可撓性支持体を搬送して行う、ロール方式の生産工程において、その広幅化、省スペース化、高性能化、高品質化を達成するための製造装置及び製造ラインに必須のガイドロール機構、該ガイドロール機構を組み込んだ、支持体や成膜面にキズの発生しない真空成膜装置、を提供することにあり、また、省スペース化と高生産性を達成し、支持体や成膜面にキズの発生しない真空成膜装置、該ガイドロール機構を用いたことによる、発光寿命の改善された、生産性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
.真空度が、100Pa以下、1×10−7以上の容器内において、搬送ガイドロールを有するとともに、有機エレクトロルミネッセンス素子の電極又は有機層を形成させる成膜部を備え、ロールツウロールで前記電極又は前記有機層を少なくとも1層形成できる真空成膜装置であって、成膜される薄膜の厚みが0.3nm以上、200nm以下であり、前記搬送ガイドロールの加工面側の少なくとも一つ以上のガイドロール機構は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の可撓性支持体(ウェブ)を支持し、真空中でウェブの搬送方向を30度以上、240度以下、変更するためのガイドロール機構であって、搬送中、前記可撓性支持体は、ガイドロールの両端部においてのみガイドロールに接触し、少なくとも接触部分の一部に可撓性支持体をガイドロール上に押さえる機構が複数箇所において設けられており、且つ、該機構は、可撓性支持体の端部がガイドロールの端部に接触を開始する角度の位置から、ガイドロールの端部から離脱し非接触となる角度の位置まで、連続的に、該可撓性支持体をガイドロール上に保持するガイドロール機構であることを特徴とする真空成膜装置。
2.前記搬送ガイドロールの加工面側の少なくとも一つ以上のガイドロール機構は、ガイドロールが可撓性支持体(ウェブ)と非接触になる回転軸方向の長さが150mm以上2000mm以下であり、該ガイドロールの両端部におけるウェブと接触する部分の回転軸方向の長さが、ウェブの全幅に対して、1%以上、10%以下であることを特徴とする前記1に記載の真空成膜装置。
.可撓性支持体(ウェブ)に電極及び有機層が形成された有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記電極が形成された後の前記ウェブの搬送と、前記有機層が形成された後の前記ウェブの搬送と、を真空中においてガイドロール機構を用いて行い、前記ガイドロール機構は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の可撓性支持体(ウェブ)を支持し、真空中でウェブの搬送方向を30度以上、240度以下、変更するためのガイドロール機構であって、搬送中、前記可撓性支持体は、ガイドロールの両端部においてのみガイドロールに接触し、少なくとも接触部分の一部に可撓性支持体をガイドロール上に押さえる機構が複数箇所において設けられており、且つ、該機構は、可撓性支持体の端部がガイドロールの端部に接触を開始する角度の位置から、ガイドロールの端部から離脱し非接触となる角度の位置まで、連続的に、該可撓性支持体をガイドロール上に保持するガイドロール機構であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
4.前記ガイドロール機構は、ガイドロールが可撓性支持体(ウェブ)と非接触になる回転軸方向の長さが150mm以上2000mm以下であり、該ガイドロールの両端部におけるウェブと接触する部分の回転軸方向の長さが、ウェブの全幅に対して、1%以上、10%以下であることを特徴とする前記3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
本発明により、真空下で広幅の可撓性支持体を用いた場合には困難であった同一の可撓性支持体上へ逐次成膜の繰り返しが可能となり、座屈や折れのない均一な広幅可撓性支持体への機能材料の積層成膜が可能となるガイドロール機構が得られ、良品の歩留まりが向上し、生産性が向上する。
本発明により、従来困難であった、真空下での剛性の小さい可撓性支持体上へ、異物やスリキズなどによる欠陥の少ない機能性薄膜を形成することが可能となる。
本発明により機能性薄膜の生産性、とりわけ有機EL素子の生産性が向上するとともに、有機EL素子にピンホールや異物の混入がなくなり、整流比や駆動寿命が向上する。
ウェブの搬送方向の角度変化について示す図である。 両端部にウェブを押さえ保持するクリップ機構を設けたガイドロール機構を示す図である。 両端部にウェブを押さえ保持する本発明のガイドロール機構の別の形態の一例を示す図である。 両端部にウェブを押さえ保持する本発明のガイドロール機構の更に別の形態の一例を示す図である。 ガイドロール中央部分にウェブ加工面を支える部分を設けたガイドロール機構を示す図である。 本発明の非接触のガイドロール機構を用いた真空成膜装置の一例を示す概略図である。 本発明の有機EL素子の製造工程の概略図である。
以下本発明を実施するための最良の形態について説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。また、本発明の目的を達成でき、かつ、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更を加えてよい。
本発明は、ロール上の可撓性支持体、特にプラスチックフィルムを真空下で用いて、有機EL素子用の透明導電膜、複数の有機材料を積層してなる有機EL素子の実用的な製造方法、この製造に必須なガイドロール機構に関し、ロール状の可撓性支持体への真空成膜装置において、機能性薄膜の形成する前後の搬送時、可撓性支持体の加工面側を実質的に非接触化することを図って、有機EL素子をはじめとする機能性材料の薄膜の性能、品質、生産性を向上するよう設計されたガイドロール機構、真空成膜装置、有機EL素子の製造法に関する。
本発明におけるロールツーロール方式とは、ロール状に巻いた可撓性を有する長尺の基材(巻き芯を含めて、「元巻き」ともいう。搬送中の一部分をさす場合、ウェブともいう)、例えば、プラスチックフィルムを繰り出して、間欠的或いは連続的に搬送しながら、該基材上にサブミクロンの機能性材料層を形成したり、有機EL構造体の一部または全部を形成したりして、再び、ロールに巻き取る方式である。例えば、透明導電層を真空成膜装置中で繰り出して、一箇所または複数の箇所でスパッタなどにより、成膜後、真空中で巻き取る場合である。また、最後の機能層を真空中で成膜後、真空中で保護フィルムをラミネートしたり、真空から、一段階または複数段階の減圧室を経由して常圧に戻してから、保護フィルムをラミネートしたりしてから、巻き取る場合も、いわゆるロールツーロール方式と呼称する。通常は、ラミネートフィルムで積層された機能層を保護した場合、可撓性があったとしても、その次の工程では、あえて巻き取ることをせずに、断裁処理などして枚葉の状態のままの製造工程をとることもある。本発明では、加工面側の最終成膜工程が終了し、大気圧下へ戻すまで、ウェブの状態のまま搬送する場合は、広い意味でロールツーロール方式と呼称し、当然、加工面側を実質的に非接触として搬送することにより性能、品質が向上する。
本発明では、「連続真空」という場合は、大気圧下から、狭い間隙にウェブを導き、入側と出側に差圧を付与しながら、真空成膜処理を行う部分へ搬送する場合をさす。またウェブの長手方向の一部をその全幅にわたって上下からゲートバルブで挟み込んだ後、減圧して、次の、より真空度の高い(高真空の領域)真空槽側のゲートバルブを開いた後、予めアキュームレータへ蓄積したウェブを高真空側の真空槽へ送り込む場合も、「連続真空」搬送と呼称する。
本発明でいうところの可撓性支持体とは、30μm〜250μmの厚みがあり、外径が7.7cmから30cmの巻き芯(コアともいう)に巻き取ることが可能な高分子有機材料からなるフィルム(比較的、厚い場合はシートともいう)をさす。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、2,6−ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン(PES)等のプラスチックフィルムである。紛らわしくない場合は支持体ともいう。均一な連続したフィルムであることが望ましいが、異種或いは同種の可撓性支持体の末端を接合(スプライス)したものでもよく、この場合接合部は可撓性支持体より薄い粘着テープにより、搬送中に破断しないように接合する。可撓性支持体の透明性は特に指定はないが、有機EL素子を構成する場合には、可視光線の透過率が50%以上99%以下である、いわゆる透明または半透明のものが好ましい。複数の高分子材料を積層したものであってもかまわない。特開2005−38661号記載の積層フィルムも用いることができる。
巻き芯は上記の可撓性支持体を巻き取った際に、変形することがなく、150℃くらいの雰囲気にさらされた場合でも変形することがなく、また、搬送装置への着脱や減圧室などへの移送時に、発塵しないことが望ましい。また巻き芯の表面部分のうちで、可撓性支持体の接する部分は平滑であることが、望ましく、表面粗さRaが30nm、Rtが100nm以下であることが望ましい。ガラス繊維強化プラスチック製やステンレス製の巻き芯が好ましい。
可撓性支持体の両端部には、巻き出しや巻き取りの際の、コア上のウェブ表面と、この上に重なるウェブの背面が強くこすりあわないように、ナーリング加工(エンボス加工ともいう)を施してもよい。この高さは、2μmから50μmくらいが好ましい。
本発明の可撓性支持体は、ガスバリア層を形成してあるものを用いることが望ましい。特に有機EL素子は、水分・酸素などに代表される、ガス成分に非常に敏感であり、発光層をはじめとする有機材料層での電気化学的に重要な機能が阻害されやすい。ガスバリア層としては、酸化珪素等の、例えば無機蒸着膜であり、水蒸気透過係数が1×10−14g・cm/(cm・sec・Pa)以下の層である。またスパッタ等、又プラズマCVD法等によっても形成される。好ましくは20nm〜20μm程度の厚みをもつ防湿層である。これらのガスバリア層を有する可撓性支持体を用いることで支持体から機能性層への水蒸気透過度等のガス透過性を低下させる。これより、大きい値であっても発光することは可能であるが、通常の大気下、いわゆる常温常湿の環境下での駆動寿命が劣化し、製品化が難しい。またガスバリア性は有機EL素子の通常陽極を形成する可撓性支持体側だけでなく、封止フィルム側にも同程度の性能が必要である。封止フィルム側にガスバリア性を付与しない場合、可撓性支持体側から有機EL素子の各層を形成し、陰極層を形成した後、素子保護のためのガスバリア層を形成してから、封止フィルムをラミネート(貼合)することが望ましい。封止フィルムのラミネートは真空中で行っても、大気圧下で行ってもよい(窒素気流などの不活性ガス雰囲気下が好ましい)。
本発明は、可撓性の支持体を真空下で搬送し、0.3nm以上、200nm以下の機能性薄膜を形成し、途中で巻き取ることなく連続的、或いは断続的に搬送しながら逐次、真空成膜室を移送したのち、薄膜形成を行うためのガイドロール機構であって、成膜加工面側を内面としてガイドロール抱かせる場合に可撓性支持体の座屈、折れ、シワをなくすことができる。
本発明の1つの態様を図2に示す。図では、段付きロールにクリップ機構を設けている。
本発明のガイドロールは可撓性支持体の加工面を抱かせて、進行方向を30度以上240度以下、変更するためのものであり、可撓性支持体上の一点に注目したとき、この点の進行方向のベクトルがつくる軌跡である仮想の平面とガイドロールの回転軸は、直交する。
ウェブの搬送方向の角度変化について、ウェブの搬送と接触するガイドロールを、ガイドロール回転軸に垂直な面で切ったときの断面図で図1に示す。図1の入り側矢印(ベクトル)をガイドロールでどれだけの角度、方向を変えたか、ということであり、図に角度変化θの例を示す。従って180度なら、元来た方向に戻ることを意味する。この角度θはロールへの抱き角と呼ばれることもある。
可撓性支持体は、巻き出されたのちは、幅方向と長手方向の二つの座標ベクトルの形成する平面上に、見掛け上重なり、一定の厚みを有する平面体とみなせる。現実には、可撓性支持体に予め施されたいろいろな処理及び元巻きの状態、例えば、断裁、熱処理、元巻きの保管期間と重力の方向、元巻きを構成する可撓性支持体の厚みと巻き径或いは巻き数、元巻きのコアの外径とコア材質や強度などにより、完全な平面ではなく、ウェブとして搬送中に、シワやたるみ、折れ(座屈)、片伸び(ワカメ)などの見かけの異常が観察される。これらが発生すると、ウェブの安定搬送が困難となり、いかにガイドロール間の平行度、ガイドロールそのものの回転精度、円筒としての真円度が均一であっても、ウェブが蛇行したり、ツレたり、折れかさなったりする。
本発明のガイドロール機構は、これらの製品性能や品質を劣化させる現象を抑制することができる。
一般的には、すなわち、大気圧下の通常搬送においてガイドロールとの摩擦や接触、擦れをあまり気にしない場合には、搬送の張力を可撓性支持体の弾性限界の範囲内で高めに設定し、いわゆる、高張力搬送を行うことで、上記の問題は解決できる。また片側に加工面を形成し、特に加工後のガイドロールとの接触を嫌う場合には、加工面側に接触が予想されるガイドロールの表面に多孔質、もしくは多数の穴を空けたガイドロールを使用し、内側から空気、或いは加工面に不活性な気体(ガス)を供給し、加工面を空気圧やガス圧でウェブを浮上させながら、搬送することも、実際に行われている。
本発明が課題とするような、真空中或いは減圧化では、気体による浮上は困難であり、前述の加工面を内側に抱き込むガイドロールは、加工面と接触させる場合には、異物の付着のない、高度な平面性を有し、小さな慣性モーメントでウェブ追髄性が良好であることが必須である。これはいわゆる平ガイドロールであるが、これだけを用いた場合では、500mm幅の可撓性支持体を用いて、有機EL素子を収率よく形成することは困難であった。搬送張力を比較的低く設定し、加工面に接触するガイドロールの中央部、すなわち製品として確保すべき領域、をウェブが接触するガイドロール両端部の回転半径より小さくしたガイドロール(図2のクリップ機構がない場合、また図3のフィルム抑えローラーのない状態)を用いた場合、100mm幅の50μm厚のポリエステルフィルムについてはなんとか搬送可能であったが、150mm幅以上では、ガイドロール中央部の非接触部分へウェブが落ち込み、ウェブの搬送方向は、30度以上変えることは困難であった。特に見た目の観察では、変化がないが、例えば、100μm厚のポリエチレンテレフタレート上に成膜された120nmの導電性薄膜(金属酸化物)を成膜・搬送させたのち、これを陽極に用いた有機EL素子では、微細な亀裂状の非発光部が観察され、可撓性支持体上の導電性薄膜が、断裂していることが判明した。
本発明によるガイドロール機構によるウェブ搬送方向の変化は240度を上限とする。
実際に使う場合、アキュームレータなどでは、180度の搬送方向の変化ができれば、問題はない。これが240度を超えると、出側のウェブが入り側のウェブと干渉するため、直ちに搬送方向変更のガイドロールが必要となり、150mm幅以上の可撓性支持体の真空搬送では、設備構造が複雑となり、設備の調整や保全の際に、不便である。
本発明のガイドロール機構は、可撓性支持体の加工面でない側に用いても構わない。ただし真空中の搬送ではガス分子が吸着する面積、すなわち真空室の内部表面積を極力、減らすことが、装置内部の放出ガスを減らすことになり、良質な真空成膜を得るために必要である。また装置起動後の真空排気ポンプの負荷を減らすためにも同様の工夫は必要である。このような理由から、本発明のガイドロール機構は極力、金属性の部品を使用することが推奨される。
やむをえず、弾性変形の必要な部分(例えば、図3のフィルム抑えローラーのウェブとの接触部分)はゴム弾性の有機材料(ポリマー)などを使用するが、金属のローラーの外周部に前述のゴム弾性材料を取り付けるなどして、ガス吸着や発生の可能性の高い部材の使用は抑制すべきである。例えば、フッ素樹脂系の材料(バイトン、アフレックスなど)が広く使用可能である。
本発明のガイドロール機構のロールの円筒部分の外形は、2cm以上、40cm以下が好ましい。外径が2cmより小さいと、可撓性支持体の表面の長手方向(円周方向)に圧縮応力が加わり、それが直ちに解放されるため、真空成膜される材料の特性にもよるが、成膜後の面内応力変化の影響で膜がダメージを受ける。また、前記図2におけるクリップ部分の構造やカムなどの部品が細かくなり、機械加工上の精度や、また定期的な検査実施時の作業性に問題が生じる。また外径が40cmより大きいと、ガイドロールの慣性モーメントが大きくなり、特に多数のガイドロール機構を経由したのち、駆動ロールでウェブを引っ張るように搬送しようとすると、搬送開始時の張力が、大きくなってしまう。一定の張力でウェブを搬送するために、外部に駆動用の装置を多数設置することになり、これらを同期させるために複雑な制御が必要となる。真空中の搬送設備は装置内全体を短時間で真空排気することが必要とされるため、真空成膜室の見かけの内部表面積をできるだけ小さくしなければならない。従って、できるだけガイドロールの設置本数を減らす必要があり、本発明の目的を十分果たすことができない。
本発明のガイドロール機構はそれ自身が真空室の外に設置されたモーターや駆動ベルトなどにより回転するものであっても、慣性力で自由に回転するいわゆるフリーガイドロールであってもよい。
図2に示した本発明のガイドロール機構に組み込まれるクリップ機構は、ガイドロールの外側に固定されるカムによってロールの回転角を検知して、開閉する。すなわち、ウェブがガイドロールの入側に達したとき、そのウェブの接する点に最も近いクリップ機構がガイドロール端面に取り付けられたバネを伸ばすように、固定されたカムがカムフォロワを持ち上げ、フィルム押さえでフィルム段付きガイドロールと挟んでこれを段付ロールに固定する。
本発明の段付ガイドロールの段上に位置する可撓性支持体は、成膜加工されたとしても製品化範囲外であるので、フィルム押さえがフィルムを強く押さえ込んでもかまわない。また段付ガイドロールの表面にゴム弾性の部材を貼り付けて、ウェブを圧着する力を調整したり、カム及びカム固定部材と、ガイドロール及び回転シャフトの加工公差による微妙な位置ずれを修正してもよい。
本発明のガイドロール機構は、可撓性支持体の成膜加工面を内側に巻き込み、接触する側のガイドロールに組み込まれて、可撓性支持体の成膜加工をこれから行う領域、及び成膜加工がなされた領域をガイドロールに、実質的に非接触としながら、かつ可撓性支持体の幅が150mm以上、2000mm以下の場合においても、可撓性支持体に座屈、折れなどの塑性変形をともなう損傷を与えずに複数のガイドロール間を真空搬送できることに特徴がある。
本発明のガイドロール機構は、当然のことながら、通常のガイドロールと組み合わせて用いてかまわない。特に可撓性支持体の成膜加工を行わない側の面に接触し、抱かれるガイドロールは従来のものを用いてかまわない。
両面に成膜加工を行う場合は、可撓性支持体の一方の側と他方の側の双方の面のガイドロールに本発明の機構を組み込んだガイドロールを使用することも可能である。
本発明で使用した図6に示す真空成膜装置、また図7に示す機EL素子のロールツーロール成膜装置のガイドロール位置と本発明のガイドロール機構を組み込んだ箇所を示したが、本発明の内容はこれに限定されるものではなく、本発明の内容逸脱しなければ、これ以外の組み合わせや、実施態様も本発明に含まれる。これらは、可撓性支持体上への加工する材料やその加工済みの製品の用途によって異なるが本発明に要求されるような全体の真空下での成膜厚みが0.6μm以下のであれば、単膜、積層成膜を問わず、また途中で、パターニングや大気圧下での種々の工程を含んでいてもかまわない。
図3に、本発明のガイドロール機構について、段付ガイドロールと可撓性支持体の背面に傾斜させたフィルム押さえローラーを両サイドに組み合わせた態様を示す。フィルム押さえローラーは回転軸を図3のように傾斜させるだけでなく、ウェブの進行方向にカタカナの逆「ハ」の字状に設置し、ウェブが進行するにつれ、幅を広げるように幅方向張力をかける設置法も可能である。
また、図4に、本発明のガイドロール機構について、段付ガイドロールの段上の円周方向にスプロケット状の突起を形成した例とこのガイドロールに勘合するように予め、端部に穿孔した可撓性支持体と組み合わせた態様を示す。
本発明のガイドロール機構は、このように、搬送中、ガイドロールの両端部においてのみガイドロールに接触し、かつ、少なくともその接触部分の一部において、可撓性支持体をガイドロール上に押さえる機構を設けたことを特徴とする。
本発明のガイドロール機構について、その態様を以下に詳しく述べる。
図2は、可撓性支持体(ウェブ)がガイドロールに接する両端部において、少なくとも接触部分の一部に、可撓性支持体の端部がガイドロールの端部に接触を開始する角度の位置から、ガイドロールの端部から離脱し非接触となる角度の位置まで、連続的に、該可撓性支持体をガイドロール上に押さえ保持するクリップ機構を設けたものである。
即ち、段付きロール1と、ロール両端部の周面上に複数固定されたフィルム押さえユニット2と、固定されたカム3等からなるカム機構が組み合わされている。
段付きロール1上をフィルムF(可撓性支持体)はロールの両端部においてロールと接触し搬送されるが、回転するロールの両端部に固定された複数のフィルム押さえユニット2が、固定されたカム3と協同して、フィルムの搬送方向を変えるとき、フィルム両端部を押さえて、フィルム幅手方向に張力を及ぼし、フィルムのたるみや変形がないように固定、保持する機能をもつ。フィルム押さえユニット2は、フィルム押さえ21とカムフォロワ23、バネ22等からなり、段付きロール1上に固定具24によって固定された構造をもち、フィルム押さえ21とカムフォロワ23は段付きロール1上の固定具24上に支点(軸)をもつ同一部材で連結されている。バネ22は段付きロール側面に一方が固定されており、フィルムFが所定の位置(従ってフィルム押さえユニットがカムの所定の位置)にきたとき、カムフォロワ23の腕を段付きロールの軸方向に引っ張ることで、フルム押さえ21を跳ね上げフィルム押さえを解除するよう働く。即ち、カムフォロワ23が固定されたカム3に接触して、ロールの回転と共にカム3上を摺動或いは回転移動して、カム形状に応じてフィルム押さえの位置を変えて、バネ22により、フィルムを保持、また解除するように作動する。図2に、ロールに抱かれてフィルムが搬送される際に、カムフォロワ23がカム3上を移動してその位置を変え、それにより、フィルム押さえ位置21‘が変化して、フィルム面を押さえ、保持する様子を示している。
このような機構によれば、必要な角度変更に応じてカム形状を選択することで、ウェブを、非接触のロールにより、シワやたるみ、折れ(座屈)、片伸び(ワカメ)などなく、所望の方向に角度変更することができる。尚、図で21′はフィルム押さえの位置を示す。4はロールの回転軸を示す。
また、ガイドロールがフィルム(ウェブ)と非接触になる回転軸方向の長さは150mm以上2000mm以下であり、該ガイドロールの両端部におけるウェブと接触する部分の回転軸方向の長さが、ウェブの全幅に対して、少なくとも1%以上、10%以下であることが好ましい。1%以下であると、ウェブ両端において固定する効果がなく、また、10%以上では、実際に製品として使用できる領域が少なくなり収率低下をもたらす。
図3に、本発明のガイドロール機構の別の具体的態様の一例を示す。
図3では、ウェブ加工面に接触するガイドロールの中央部、すなわち製品として確保すべき領域、をウェブが接触するガイドロール両端部の回転半径より小さくしたガイドロール両端部に、フィルム(可撓性支持体)を両端部においてガイドロール上に押さえ保持する機構として、フィルムをガイドロール上に押さえるニップロール(フィルム押さえローラー5)を、可撓性支持体の端部がガイドロールの端部に接触を開始する角度の位置から、ガイドロールの端部から離脱し非接触となる角度の位置までの間に、少なくとも1カ所(一対)以上に設けている。
該ニップロールの可撓性支持体(ウェブ)に接触する表面材質はゴム等の弾性体であって、且つ、該ニップロールの回転軸は、ガイドロールの回転軸に対して、0.5度以上、20度以下、可撓性支持体(ウェブ)中央側に傾斜しており、フィルム幅方向に張力を及ぼすように配置される(図でθ)。
尚、ニップロール回転軸は、フィルム搬送方向に対してもフィルム押さえローラーの軸が同様の角度で搬送方向に対し開いていることが好ましい。
図4に本発明の更に別の具体的態様の一例を示す。
図4においては、加工面に接触するガイドロールの中央部、すなわち製品として確保すべき領域をウェブが接触するガイドロール両端部の回転半径より小さくしたガイドロールの両端部に、フィルム(可撓性支持体)を両端部においてガイドロール上に押さえ保持する機構として、スプロケット機構を設けたものである。
即ち、ガイドロールの可撓性支持体と接触する周面上に、前記可撓性支持体(ウェブ)の搬送方向に並んだ複数の突起6が設けられており、該突起は、予め可撓性支持体の端部に穿孔された孔とかみ合いながら、可撓性支持体にガイドロールが接触を開始する時点から、非接触となる時点まで、該可撓性支持体をガイドロール表面に固定する。
この場合、スプロケットの歯数は特に限定されないが、少なくとも6以上であることが好ましい。
又、この場合フィルム(可撓性支持体)の両端部には、このスプロケットの歯数と合致するよう両端部に規則的に穿孔(パーフォレーション)が行われ、搬送時にフィルムをロールの所定位置に固定して、フィルム(ウェブ)をガイドロール上に固定・保持する。
これらのガイドロールも、可撓性支持体(ウェブ)と非接触になる回転軸方向の長さが150mm以上2000mm以下であり、該ガイドロールの両端部におけるウェブと接触する部分の回転軸方向の長さが、ウェブの全幅に対して、1%以上、10%以下であることが好ましい。
また、このようなスプロケット方式は、加工面に接触するガイドロールの中央部をウェブが接触するガイドロール両端部の回転半径より小さくしたガイドロールにおいて、両端部に設けるのでなく、ガイドロールを、ガイドロール中央部においてウェブを支えるように、中央部をスプロケットホイール状として表面に突起を設け、同じく中央部を穿孔した可撓性支持体或いはフィルム(ウェブ)を用い、これを保持することができる。
図5に中央部分にウェブ加工面を支える部分を設けた加工面接触ガイドロール機構を示した。
図5では、両端部を図2に示したクリップ機構により保持しているが、これに限らない。この場合、中央部にスプロケットに勘合する穿孔を施したフィルムを用いるが、この場合、支持体の中央部は製品としては使用できない。
本発明のガイドロール機構は、真空中で用いられることが好ましい。真空中では、前記のような気体によりウェブを浮かせ搬送させる等の手段がとれないため、よい非接触搬送手段が限られる。
本発明の非接触搬送手段であるガイドロール機構において、可撓性支持体又はフィルム等ウェブの厚みとしては、30μm〜250μmの範囲であり、50μm以上が好ましく、また、ウェブの搬送張力は500g/10cm幅以上が好ましい。
ロールの抱き角としては、前記の如く10度〜270度、好ましくは、30度以上、240度以下である。
図6は本発明の非接触のガイドロール機構を用いた真空成膜装置の一例を示す概略図である。
真空成膜装置は減圧室40中の巻き出しロールaから巻き出されたフィルム基材Fがガイドロールbを介して真空槽50中に、ゲートスリットを介して搬送され、更にガイドロールcを介して、支持ロール(冷却ロール)d及びスパッタリングカソード30からなる成膜ゾーンに入る。減圧室は例えば、100Pa〜10−1Paの範囲に設定され、真空槽は10−1Pa〜1×10−7Paの範囲であり、この差圧をゲートスリットで調整する。
本発明の非接触ロールは、100Pa〜10−7Paの真空度において用いられる。
図ではスパッタによる成膜を示したが、蒸着等でも同様である。フィルム(基材)Fの表面にスパッタにより成膜がされた後、基材は同様にガイドロールeを介してゲートスリットを通り真空槽から、スリットを介して隔てられたより減圧室におかれた巻き取りロールgに巻き取られる。
ゲートスリットは丁度、基材のFの処理面が接触しないようなオリフィス形状を有し、真空槽と減圧室それぞれにおいて独立に減圧システムを有し、差圧を調整できるようにしている。成膜ゾーンとなる真空槽は減圧度10−1Pa〜1×10−7Paの範囲であり、巻き取り室は真空槽よりは低い真空度とするのが好ましい。具体的には、成膜室は通常10−1Pa程度、巻き取り室はそれよりも10Pa以上真空度を低くすることが好ましい。成膜室及び巻き取り室間に更に真空度の差が必要な場合には各室間にバッファー室を設置し各室においてロータリーポンプ、拡散ポンプなどの通常使用される各種ポンプを用いて独立で排気できるようにして、所望の真空度を保つようにする。バッファー室は複数設けそれぞれ差圧を調整する。
このスパッタによるウェブ成膜面はガイドロールe、そしてこの場合fに接触するので、接触することで性能劣化しやすい例えばITO等の場合、本発明において例えばガイドロールe、fについて、本発明の非接触ガイドロール機構を用いる。これにより両端部以外はガイドロールとフィルム成膜面とは接触しない。
成膜、巻き取りの後、反転して搬送・成膜する場合や、予め基材上に既に成膜がされている場合には、基材ロール表面側が成膜されている場合、ガイドロールcまたbも同様に成膜面がロール表面に接触するので、これらを非接触のロールとすることが好ましい。
次いで、本発明の段付ガイドロールを備えた真空成膜装置を用いて有機EL素子の製造について説明する。
図7に本発明の有機EL素子の製造工程について概略図で示した。図はITO電極をパターニング済み支持体ロールを用いてロールツウロールで有機EL素子を製造する工程の概略図である。
電極付き支持体ロール101から巻き出された基板は、ガイドロール102を介しスリットを通って前室R1に入り、更にスリットロール104を介し真空下のアキューム室R2に搬送され、大気圧下の基板を真空下へ導入連続真空搬送する。アキューム室R2においてはアキュームレータにより工程におけるウェブ加工長を確保する。アキュームレータは105、107、109、111の固定された加工面側支持ガイドロールと、上下に動作する106、108、110により構成される。
前室又アキューム室等本発明の非接触ロールが用いられる部屋の減圧度は100Pa〜1×10−7Paの範囲に保たれており、前室、アキューム室又真空成膜室と順次減圧度が向上し、真空成膜室においては、10−1Pa〜10−3Paが一般的である。
次いで、基板は真空成膜室R3に連続搬送される。真空成膜室R3とアキューム室R2間にはゲートスリットAが備えられ差圧を調整する。詳細は省略されているが、差圧を調製するスリットロールでもよく、またこれらと共に、真空成膜室の高真空との差圧が大きい場合複数のチャンバーからなるバッファー領域が設けられる。
前室からは加工面支持ロール113を介しスリットを介して真空成膜室にはいる。真空成膜室R3は、第1成膜室1、第2成膜室からなり、各成膜室間には処理スピードを吸収するアキュームレータ機構が設けられる。又、各成膜室、及び前室はそれぞれ独立に排気されている。
第1成膜室は複数の蒸着用ボートを備え、有機EL各機能層材料薄膜を蒸着形成する成膜室、また、第2成膜室は、陰極等の金属蒸着を行う成膜室である。それぞれ、減圧度10×10−1Pa〜1×10−7Paの範囲に保たれている。113は前室の加工面支持ガイドロール、114、115は第1成膜室の背面保持ガイドロール。また、117はアキュームロール、119、120は第2成膜室の背面支持ガイドロール、121は、ゲートスリットB直前の前室にあって、スリットバルブBは前記ゲートスリットA同様にバッファー機構と共に真空度の調整を行うものであるが更にバルブ機構をもつ。ここから、有機EL各層、また、陰極等が順次蒸着により積層形成された基板は、圧力調整室R4に入る。圧力調整室において、123はアキュームロールであり、圧力調整室R4出口側のゲートバルブCを閉め、ゲートバルブBを開け、製品ウェブをアキュームで溜め込んだ後、ゲートバルブBを閉め、不活性ガスで圧力調整後、ゲートバルブCを開けて、ラミネート室R5へ送る。
ラミネート室において、126は保護フィルムの元巻きであり、接着剤塗布、加圧接着(ラミネータ)、(光或いは熱による)硬化工程を経て(図において詳細は省略)、巻き取り室において巻き取られ、127はロールツーロールで製造された製品の元巻きを示す。
得られた製品元巻きを所定のサイズにカットすることで有機ELパネルが得られる。
次に、有機EL素子について説明する。
有機EL素子は、電極間に単数または複数の有機層を積層した構造であり、例えば、陽極/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極等の構成、また、最も単純には、陽極/発光層/陰極からなる構成を有し、これ以外にも電子阻止層、また正孔阻止層、またバッファー層等適宜必要とされる層が所定の層順で積層された構成を有する。これら各有機層、各薄膜の膜厚は、1nm〜数μmの範囲にわたり、電極からキャリアを注入することで層中の発光材料が発光する。両極から注入された正孔及び電子等のキャリア移動がスムースに行われるよう各層が構成されている。
有機EL素子を構成する各有機層について説明する。
有機EL素子を構成するこれら各有機層のうち、発光層中に含有される発光材料(成膜材料)には種々の蛍光性物質が用いられ、限定されるものではないが、例えば、カルバゾール、カルボリン、ジアザカルバゾール等の芳香族複素環化合物、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等及びこれらの単独オリゴ体或いは複合オリゴ体等があげられる。
また発光層中には、好ましくは0.1〜20質量%程度のドーパント材料が含有されることが好ましい。ドーパントとしては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体等公知の蛍光色素等、また、リン光発光タイプの発光層の場合、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジン)(ピコリナート)イリジウム、などに代表されるオルトメタル化イリジウム錯体等の錯体化合物が前記発光材料と共に0.1〜20質量%程度含有される。
りん光発光方式は、発光層内部に発光領域をもつためか、比較的発光ムラが起こりづらく、貼合法の最大の難点である接合界面でのムラや、キャリア移動が遅くなるという現象を起こしにくく好ましい。
正孔注入・輸送層に用いられる材料としては、フタロシアニン誘導体、ヘテロ環アゾール類、芳香族三級アミン類、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などに代表される導電性高分子等の高分子材料、また、発光層に用いられる、例えば、4,4′−ジカルバゾリルビフェニル、1,3−ジカルバゾリルベンゼン等のカルバゾール系発光材料、(ジ)アザカルバゾール類、1,3,5−トリピレニルベンゼンなどのピレン系発光材料に代表される低分子発光材料、ポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリビニルカルバゾール類などに代表される高分子発光材料などがあげられる。
電子注入・輸送層材料としては、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物もしくは以下にあげられた含窒素五員環誘導体等がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等があげられる。
有機EL素子、各有機層の膜厚は、0.05〜0.3μm程度必要であり、好ましくは0.1〜0.2μm程度である。
本発明の有機層の形成方法としては蒸着法、また塗布や印刷等も用いられる。
電極材料のうち正孔の注入を行う陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数をもつものが適しており、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、酸化スズ、酸化インジウム、ITO等の酸化金属、更にはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。しかしながら、透光性であることが好ましく透明電極であるITOが好ましい。ITO透明電極の形成方法としては、スパッタ、またマスク蒸着またはフォトリソパターニング等が使用できるが、これに限られるものではない。
また、陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数をもつものが適しており、マグネシウム、アルミニウム等。合金としては、マグネシウム/銀、リチウム/アルミニウム等が代表例としてあげられる。また、その形成方法は、スパッタ、マスク蒸着、フォトリソパターニング、メッキ、印刷等が使用できるが、これに限られるものではない。
また、基板としては、透明樹脂フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、また、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等、厚みが30μm〜250μmのプラスチックフィルムがあげられる。
また、基板上には防湿層を有することが好ましい。防湿層としては、水蒸気、酸素等、ガスバリア性を有する材料で構成される層であれば、限定されないが、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のセラミック蒸着層、また、これらのセラミック層と衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成を有する防湿層、また、金属箔、例えば銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、等のラミネート層(6〜50μm厚)等があげられる。
これら防湿層を有するフィルムとして、代表的には、例えば、PETフィルム等の樹脂フィルム基材(10〜200μm)上に上記セラミック層を蒸着形成したもの、また、金属箔等に、例えばポリエチレン系樹脂フィルムをラミネートしたもの等があげられる。
封止を行うには、形成した有機EL素子上に、保護フィルムとして、水蒸気また酸素等ガスバリア性の高い前記の防湿層を有するフィルムで素子を覆って封止樹脂で接着(ラミネート)、封止する。防湿フィルムとしては例えば、凸版印刷製のGXフィルム等のPETを基材とした蒸着フィルム等もあげられる。
又、上記防湿層を直接素子上に更に保護層として形成してもよい。
このように封止部材をガスバリア性基材で構成すれば、前記ガスバリア層を有する基材上に形成された有機EL素子を外気から効率よく封止して水蒸気や酸素等の劣化性ガスの影響を抑えることができる。
前記封止樹脂(接着剤)としては、一般に使用されている熱硬化性、また光硬化性接着剤を用いることができる。
また、本発明においては照明用の単色或いは白色の有機EL素子の製造について示したが、有機層のうち発光層をRGBのそれぞれ3色ごとにパターニングして構成し、駆動回路を組み込むことでフルカラー表示体とすることもできる。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
図2のガイドロールを用いて、ITOフィルム、有機EL素子を作製した。
図6で示されるロールツーロールの真空チャンバー内に幅700mm、厚さ100μのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の元巻きを導入し、図中、b、c、e、f、各ガイドロールに本発明、図2のカムによるクリップ機構を組み込んだ段付きガイドロールを採用して、定法に従い、アルゴン雰囲気下で、ITO膜を130nm成膜して、透明導電膜を形成した。尚、用いたガイドロールは幅750mm、径は中央部で75mm、両端部で100mmのステンレス製(クロムメッキ(鏡面化処理済み、バフ研磨仕上げ、中心線表面粗さRa:4.1nm))段差付きロールであり、PETフィルム両端部20mmが接触するようにした。非接触となるウェブ中央部分の幅は660mmである。
ITO成膜面には予め、大気圧下プラズマによるガス遮蔽膜(バリア膜)を80nmの厚みで形成したものを用いた。このITO膜の表面比抵抗は、40Ω/□であった。
次に、ITO膜の形成された面に、幅方向670mm、長手方向720mmの長方形の領域に紫外光で重合するフォトリソグラフ用の樹脂をパターン塗布し、90℃の乾燥炉を通過させたのち、位置を合わせ露光後、搬送しながら、現像、エッチング、アルカリ処理を経て、イオン交換水で洗浄後、清浄な空気を吹き付けて、十分乾燥したのち、巻き取った。各パターンの間隔は、後述の真空成膜プラントの各真空室に差圧を形成するためのゲートで挟み込まれる部分を予め確保するため60mmづつ距離を置いた。このITOパターン済PETフィルムの元巻きを、図7の連続真空有機EL成膜プラントの繰り出し側(図中の101)に取り付け、103、105、107、109、111、113、116、118、121、122、124に本発明のガイドロール機構(図2、カム制御のクリップ機構付きガイドロール)を使用して、前段の第1真空成膜室で、各材料を入れた蒸着ボートから、α−NPD(40nm)、CBP(共蒸着成分としてIr(ppy)を6%含有)(35nm)、BAlq(5nm)、Alq(40nm)、フッ化リチウム(0.5nm)を蒸着し、更に、後段の第2真空成膜室で、アルミニウムを110nm蒸着した後、ラミネート室において、封止樹脂(接着剤)が40μm塗布されているガスバリア層形成済みのPETフィルム(PET厚み80μm)を用いて窒素気流下でラミネートし、ゲートスリットDから、大気下へ搬送し、巻き取った。この元巻きから、各発光パターンに該当する素子を一部切り出し、通電して、緑色りん光の発光を確認した。
発光部をランダムにサンプリングして顕微鏡の視野で観察し、初期の非発光部の面積割合を算出した。更にこのとき、一定の電圧(7Vから10Vの間)を順方向と逆方向に印加して、流れる電流の比率を整流比として求め、リーク電流の大小の指標とした。またこの有機EL素子を3週間、常温常圧の大気下に保存した後の非発光部の面積の増加割合を算出し、ガスバリア膜の損傷度合いの指標とした。
Figure 0005751225
実施例2
前記図2のガイドロールに代えて図3のガイドロールを用いて有機EL素子を製造した。
実施例1において、図7の連続真空有機EL成膜プラントのカム制御のクリップ機構付きガイドロールをすべて、本発明のガイドロール機構(図3、座屈防止用フィルム押さえローラー付きガイドロール)に置換えたほかは、まったく同様にして、発光素子を切り出し、同様の評価を行った。
尚、ガイドロールのサイズは実施例1に用いたものと同じであり、フィルム押さえローラーは両端に一対、ウェブに接触する表面材質はバイトン(フッ素樹脂)製とし、回転軸をガイドロールの回転軸に対して中央側に傾斜させた(θ=8度)。
実施例3
図4のガイドロールと端部穿孔済みフィルムを用いて有機EL素子を試作した。
実施例1と同様に成膜したバリア層とITO層が成膜されているITOフィルムの両端部に、図4のガイドロールの両端部の突起に勘合するように、ITO膜に損傷を与えぬよう注意深く穿孔機を用いて穿孔した。有機EL素子成膜装置のガイドロール側の突起の下部の直径は5mmとし、図4のスプロケット型の段付きガイドロールの段上に接触する幅は、20mmずつとした。非接触となるウェブ中央部分の幅は660mmであった。この穿孔済みのITOフィルムを実施例1とまったく同様にITOパターニング済みフィルムを作成した。このITOパターン済PETフィルムの元巻きを、図Yの連続真空有機EL成膜プラントの繰り出し側(図中の1)に取り付け、103、105、107、109、111、113、116、118、121、122、124に本発明のガイドロール機構(図4、スプロケット形ガイドロール)を使用して、搬送させ、実施例1とまったく同様に、封止済の有機EL素子を巻き取り、この一部を切り出して、同様の評価を行った。
比較例1
すべて平ガイドロールを用いてITOフィルムを作製、更に有機EL素子を作製した。
図6で示されるロールツーロールの真空チャンバー内に幅700mm、厚さ100μのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の元巻きを導入し、図中、b、c、e、f、各ガイドロールを通常のクロムメッキ平ガイドロール(鏡面化処理済み、バフ研磨仕上げ、中心線表面粗さRa:4.1nm)採用して、定法に従い、アルゴン雰囲気下で、ITO膜を130nm成膜して、透明導電膜を形成した。ITO成膜面には予め、大気圧下プラズマによるガス遮蔽膜(バリア膜)を80nmの厚みで形成したものを用いた。このITO膜の表面比抵抗は、45Ω/□であった。
このITOフィルムを実施例1と同様に処理して、ITOパターニング済みPETフィルムの元巻きを作成した。このITOパターン済PETフィルムの元巻きを、図7の連続真空有機EL成膜プラントの繰り出し側(図中の1)に取り付け、実施例1で使用した成膜機の搬送経路上の103、105、107、109、111、113、116、118、121、122、124の本発明のガイドロール機構を取り外し、このガイドロール機構のフィルム接触部分と同一の直径をもつ平ガイドロールを用いたほかは、実施例1とまったく同様に封止済み有機EL素子を試作した。この素子を実施例1と同様に評価した。
比較例2
ITOフィルムは平ガイドロールで、また段付ガイドロールで有機EL素子を作成した。
比較例1のITOフィルムを実施例1と同様に処理して、ITOパターニング済みPETフィルムの元巻きを作成した。このITOパターン済PETフィルムの元巻きを、図7の連続真空有機EL成膜プラントの繰り出し側(図中の1)に取り付け、実施例1で使用した成膜機の搬送経路上の103、105、107、109、111、113、116、118、121、122、124の本発明のガイドロール機構(図2、カム制御のクリップ機構付きガイドロール)から、カムをすべてして、フィルム押さえが機能しない単なる段付きガイドロールとして、用いたほかは、実施例1とまったく同様に封止済み有機EL素子を試作した。この素子を実施例1と同様に評価した。
評価結果を下表に示す。
Figure 0005751225
本発明のガイドロール機構を用いた真空成膜装置用い形成したITO膜は、平ロールを用いたものよりも表面比抵抗が低く特性の低下が少ない。また、有機エレクトロルミネッセンス素子についても、同様に本発明のガイドロール機構を用いない装置により製造した有機EL素子は用いたものよりも整流比が低くリーク電流が多いこと又比発光部の面積割合に大きな差が生じた。平ロールによる劣化が大きい。また押さえ機構のない段付きロールを用いたものも、支持体の折れ、シワ等によるものと思われるが、非発光部の面積割合も多く、押さえ機構付きの本発明のガイドロール機構が非常に有効であることが判る。
1 段付きロール
2 フィルム押さえユニット
3 カム
5 フィルム押さえローラー
30 スパッタリングカソード
40 減圧室
50 真空槽
F フィルム
a 巻き出しロール
b、c、e ガイドロール
d 支持ロール
g 巻き取りロール

Claims (4)

  1. 真空度が、100Pa以下、1×10−7以上の容器内において、搬送ガイドロールを有するとともに、有機エレクトロルミネッセンス素子の電極又は有機層を形成させる成膜部を備え、ロールツウロールで前記電極又は前記有機層を少なくとも1層形成できる真空成膜装置であって、成膜される薄膜の厚みが0.3nm以上、200nm以下であり、
    前記搬送ガイドロールの加工面側の少なくとも一つ以上のガイドロール機構は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の可撓性支持体(ウェブ)を支持し、真空中でウェブの搬送方向を30度以上、240度以下、変更するためのガイドロール機構であって、搬送中、前記可撓性支持体は、ガイドロールの両端部においてのみガイドロールに接触し、少なくとも接触部分の一部に可撓性支持体をガイドロール上に押さえる機構が複数箇所において設けられており、且つ、該機構は、可撓性支持体の端部がガイドロールの端部に接触を開始する角度の位置から、ガイドロールの端部から離脱し非接触となる角度の位置まで、連続的に、該可撓性支持体をガイドロール上に保持するガイドロール機構である
    ことを特徴とする真空成膜装置。
  2. 前記搬送ガイドロールの加工面側の少なくとも一つ以上のガイドロール機構は、ガイドロールが可撓性支持体(ウェブ)と非接触になる回転軸方向の長さが150mm以上2000mm以下であり、該ガイドロールの両端部におけるウェブと接触する部分の回転軸方向の長さが、ウェブの全幅に対して、1%以上、10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の真空成膜装置。
  3. 可撓性支持体(ウェブ)に電極及び有機層が形成された有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    前記電極が形成された後の前記ウェブの搬送と、前記有機層が形成された後の前記ウェブの搬送と、を真空中においてガイドロール機構を用いて行い、
    前記ガイドロール機構は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の可撓性支持体(ウェブ)を支持し、真空中でウェブの搬送方向を30度以上、240度以下、変更するためのガイドロール機構であって、搬送中、前記可撓性支持体は、ガイドロールの両端部においてのみガイドロールに接触し、少なくとも接触部分の一部に可撓性支持体をガイドロール上に押さえる機構が複数箇所において設けられており、且つ、該機構は、可撓性支持体の端部がガイドロールの端部に接触を開始する角度の位置から、ガイドロールの端部から離脱し非接触となる角度の位置まで、連続的に、該可撓性支持体をガイドロール上に保持するガイドロール機構である
    ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  4. 前記ガイドロール機構は、ガイドロールが可撓性支持体(ウェブ)と非接触になる回転軸方向の長さが150mm以上2000mm以下であり、該ガイドロールの両端部におけるウェブと接触する部分の回転軸方向の長さが、ウェブの全幅に対して、1%以上、10%以下であることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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