JP2021102791A - 蒸着装置及び蒸着膜を形成した基材の製造方法 - Google Patents

蒸着装置及び蒸着膜を形成した基材の製造方法 Download PDF

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祐輔 清水
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Abstract

【課題】蒸着膜の性能を低下させず、安定化処理が施された蒸着膜を形成した基材を製造可能なロールトゥロール式の搬送機構を用いた蒸着装置を実現する。【解決手段】蒸着装置(100)は、真空環境下でロールトゥロール式の搬送機構で搬送される基材(1)上に反応性フッ素化合物を蒸着させる防汚膜成膜室(50)と、低真空環境下で酸素又は水蒸気と反応性フッ素化合物とを反応させ、防汚膜(3)に安定化処理を施す安定化室(60)とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、蒸着装置及び蒸着膜を形成した基材の製造方法に関する。
従来、反応性フッ素化合物を含む防汚膜は、大気環境下で塗布により成膜されている。防汚膜は、例えば、大気環境下で防汚膜を保管し、大気にさらされることによって大気中の成分と反応し、時間をかけて安定化する。
特許文献1には、被処理基板にフッ素含有樹脂からなる防汚膜を形成する成膜方法であって、防汚膜を蒸着膜として形成する蒸着膜形成工程と、蒸着膜の安定化及び固定化を図るための仕上げ処理工程と、を有することを特徴とする成膜方法が記載されている。
特開2014−43600号公報(2014年3月13日公開)
ところで、真空環境下で、ロールトゥロール式の搬送機構に搬送される基材上に、蒸発源から反応性フッ素化合物の蒸気を蒸着させることによって、基材上に防汚膜を蒸着膜として形成する蒸着装置が開発されている。当該蒸着装置によれば、真空環境下で成膜可能であることから乾燥工程が不要であり、純度の高い蒸着膜を連続的に形成することができる。このような蒸着装置のうち、蒸着膜の性能を低下させずに蒸着膜に対し、蒸着膜を安定化させるための処理である安定化処理を施せる蒸着装置が求められている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ロールトゥロール式の搬送機構を用いた蒸着装置に関するものではない。
本発明の一態様は、蒸着膜の性能を低下させずに蒸着膜に安定化処理を施せる、ロールトゥロール式の搬送機構を用いた蒸着装置及びその関連技術を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る蒸着装置は、真空環境下において、ロールトゥロール式の搬送機構によって搬送される基材上に、蒸発源から反応性フッ素化合物の蒸気を蒸着させることによって、上記基材上に蒸着膜を形成する蒸着膜成膜室と、上記蒸着膜成膜室よりも低真空環境下において、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と上記反応性フッ素化合物とを反応させることによって、上記蒸着膜成膜室において形成された上記蒸着膜に安定化処理を施す安定化室と、を備える。
本発明の一態様に係る蒸着膜を形成した基材の製造方法は、真空環境下において、ロールトゥロール式の搬送機構によって搬送される基材上に蒸発源から反応性フッ素化合物の蒸気を蒸着させることによって、上記基材上に蒸着膜を形成する蒸着膜成膜工程と、上記蒸着膜成膜工程よりも低真空環境下において、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と上記反応性フッ素化合物とを反応させることによって、上記蒸着膜成膜工程において形成された上記蒸着膜に安定化処理を施す安定化工程と、を包含する。
本発明の一態様によれば、蒸着膜の性能を低下させずに蒸着膜に安定化処理を施せる、ロールトゥロール式の搬送機構を用いた蒸着装置及びその関連技術を実現できる。
本発明の一実施形態に係る蒸着装置の概略を説明する図である。 本発明の一実施形態に係る蒸着装置によって製造される蒸着膜を形成した基材の一例を示す図である。
<蒸着装置100>
以下、図1及び2を用いて、本発明に係る蒸着装置及び蒸着膜を形成した基材の製造方法の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る蒸着装置100の概略を説明する図である。図1に示すように、蒸着装置100は、搬入室10と、蒸着面処理室20と、反射防止膜成膜室30と、差圧調整室40と、防汚膜成膜室50と、安定化室60とを備えている。
蒸着装置100は、複数のロールから構成される搬送機構を備えている。また、蒸着装置100は、基材1の蒸着面1aを処理する蒸着面処理部21と、反射防止膜2を形成するためのスパッタ源(第1スパッタ源32及び第2スパッタ源33)と、反射防止膜2上に防汚膜3を形成するための蒸発源51を備えている。蒸着装置100は、基材巻出巻取ロール11を構成する巻出ロール11aから基材1を巻き出し、巻取ロール11bに巻き取る過程において、基材1上に反射防止膜2及び防汚膜3を形成する。このようなロールトゥロール式の搬送機構を備える蒸着装置100によれば、乾燥装置(不図示)を備えることなく、1つの装置によって、蒸着膜を形成した基材4を連続的に製造できる。
なお、図1に示すように、蒸着装置100の形態として、反射防止膜2を形成するスパッタ源と、防汚膜3を形成する蒸発源51とは別々の部屋に配置されていてもよいが、同じ部屋に配置されていてもよい。反射防止膜2を形成するスパッタ源と、防汚膜3を形成する蒸発源51とが同じ部屋に配置されている場合、スパッタ源の動作できる真空度と、蒸発源51の動作できる真空度とを、各源において個別に調整することが好ましい。
〔蒸着膜を形成した基材4〕
図2は、本発明の一実施形態に係る蒸着装置100によって製造される蒸着膜を形成した基材4の一例を示す図である。
図2に示すように、蒸着装置100によって製造される蒸着膜を形成した基材4は、基材1上に、反射防止膜2及び防汚膜3が形成されてなる基材である。
(基材1)
基材1は、蒸着膜を形成する対象である。本態様に係る蒸着装置100おいて、防汚膜3を形成する対象である基材1は、一例として、可視光を透過することができる透明なフィルムであり得る。
基材であるフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、アクリル、アラミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリカーボネート等の樹脂から形成される樹脂フィルム、並びに、可撓性を有し、ロールに巻き取ることが可能な超薄板ガラス等が挙げられる。超薄板ガラスとしては、例えば、市販品として、G−Leaf(登録商標)(日本電気硝子株式会社製)等が挙げられる。
基材1の厚さ及び材質は、長尺の帯状の形状にでき、ロール状に巻き取ることが可能となる程度の可撓性を維持できれば、特に限定されない。
(反射防止膜2)
反射防止膜(AR膜;Anti-Reflection膜)2は、高屈折率の第1無機膜2aと、低屈折率の第2無機膜2bとが基材1上に積層されることによって形成され得る。反射防止膜2は、第1無機膜2aと、第2無機膜2bとが交互に基材1上に積層された合計4つ以上の層から構成されている。
反射防止膜2の厚さは、第1無機膜2a及び第2無機膜2bによる反射防止効果を得ることができればよく、反射防止膜2の各層の構成、反射防止効果を得る波長領域及び反射率に応じて適宜設定すればよい。よって、反射防止膜2の厚さは特に限定されない。
(防汚膜3)
防汚膜(AF膜;Anti-Fingerprint膜)3は、蒸着膜の好ましい態様の一例である。防汚膜3は、蒸発源51のノズル51aから蒸着材料に含まれる反応性フッ素化合物を蒸気化し、当該反応性フッ素化合物を基材1に蒸着させることによって、基材1上に、より具体的には、基材1上に形成された反射防止膜2上に蒸着膜として形成される。なお、反応性フッ素化合物は、当該反応性フッ素化合物を含むフッ素系防汚コーティング剤として市販されている。
防汚膜3の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、0nmよりも大きく、20nm以下の厚さである。
〔搬送機構〕
図1に示すように、蒸着装置100は、基材巻出巻取ロール11と、ガイドロール12と、キャンロール13と、差圧ロール14とから構成される搬送機構を備えている。基材巻出巻取ロール11及びキャンロール13は、モータ等の駆動部(不図示)を備えている。基材巻出巻取ロール11は、駆動部により時計回りに回転し、キャンロール13は、駆動部により反時計回りに回転することによって、巻出ロール11aから巻取ロール11bに向かう搬送方向に基材1を搬送する。以下では、巻出ロール11aから巻取ロール11bに向かう搬送方向に沿った基材1の搬送を順送りと称する。これに対し、巻取ロール11bから巻出ロール11aに向かう搬送方向の逆方向への基材1の搬送を逆送りと称する。
蒸着装置100は、巻出ロール11aと巻取ロール11bとに接続されたモータのトルクを制御する張力制御機構(不図示)を備えている。当該張力制御機構は、ガイドロール12c、12d、12g及び12hが備える張力測定部(不図示)によって検出され、フィードバックされた張力の変化に基づき、モータのトルクを制御する。これにより、蒸着装置100における基材1及び蒸着膜を形成した基材4を好適に搬送することができる。
(基材巻出巻取ロール11)
基材巻出巻取ロール11における巻出ロール11aは、搬入室10の外部から搬入した基材1を取り付けるためのロールである。巻出ロール11aは、蒸着膜を形成した基材4を製造する前の段階において、蒸着膜を形成した基材4を製造するための基材1が巻かれたロールとして搬入室10に取り付けられる。これに対し、巻取ロール11bは、時計回りに回転することによって、安定化処理が施された防汚膜3が基材1上に、より具体的には、反射防止膜2及び防汚膜3が基材1の蒸着面1a側に形成された、蒸着膜を形成した基材4をロール状に巻き取る。なお、ロール状に巻き取られた、蒸着膜を形成した基材4は、巻取ロール11bから取り外され、蒸着装置100の外部に搬出される。
(ガイドロール12)
ガイドロール12であるガイドロール12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12h、12i及び12jは、モータ等の駆動部を備えていないフリーロールである。ガイドロール12のそれぞれは、基材1の蒸着面1a側との接触及び接触に伴う摩擦により、順送りのときには時計回り、逆送りのときには反時計回りに回転する。
(ガイドロール12c、12d、12g、12h)
蒸着装置100において、ガイドロール12c、12d、12g、及び12hは、それぞれ、基材巻出巻取ロール11及びキャンロール13のモータによって搬送される基材1の蒸着面1a側との接触及び接触に伴う摩擦により、基材1が搬送される流れに沿って回転する。ガイドロール12c、及び12dは、一定の回転速度に制御されたキャンロール13aと、キャンロール13aのロール面に接触した基材1及び蒸着膜を形成した基材4とに加わる張力の変化を検出する。また、ガイドロール12g、及び12hは、一定の回転速度に制御されたキャンロール13bと、キャンロール13bのロール面に接触した基材1及び蒸着膜を形成した基材4とに加わる張力の変化を検出する。
ガイドロール12c及び12d、並びにガイドロール12g及び12hにおけるロール面には、例えば、クロムメッキ処理が施されている。ガイドロール12dは、キャンロール13aと、ガイドロール12eとの間に配置され、キャンロール13aとガイドロール12eとの間においてガイドロール12dに加わる張力を検知する張力測定部を備えている。また、ガイドロール12gは、キャンロール13bと、ガイドロール12iとの間に配置され、キャンロール13bとガイドロール12iとの間においてガイドロール12h加わる張力を検知する張力測定部を備えている。例えば、ガイドロール12hに取り付けられた張力測定部は、キャンロール13bのロール面と接触し、蒸着膜を形成した基材4が搬送されるときにおける巻取ロール11bとの間の張力変化を検出する。張力測定部は、内部に板バネを備える。ガイドロール12hは、蒸着膜を形成した基材4がキャンロール13bと巻取ロール11bにとの間に通過することきに基材に加わる張力を板バネのたわみとして荷重に変換し、このときの荷重を電気信号として出力することによって実現され得る。張力測定部によって検知された張力の変化は、上述の張力制御機構にフィードバックされる。なお、ガイドロール12gは、ガイドロール12fとキャンロール13bとの間に加わる張力を測定し得る。
なお、上述の例では、蒸着装置100は、巻出ロール11aと巻取ロール11bとに接続されたモータのトルクを制御する張力制御機構を備えているが、本実施形態ではこれに限定されない。本実施形態では、蒸着装置100は、張力制御機構を備えた巻出ロール11a及び巻取ロール11bの前後にも、張力制御機構を備えたモータが配置されていてもよい。これにより、巻出ロール11aとガイドロール12cとの間、ガイドロール12dと12gとの間、及び、ガイドロール12hと巻取ロール11bとの間でも好適に張力を制御することができる。
(キャンロール13)
キャンロール13は、基材1の裏面1b側に接触し、反時計回り(逆送りのときには時計回り)に回転することによって基材1を搬送方向に搬送する。また、キャンロール13は、温調機構(不図示)を内蔵し、キャンロール13のロール面の温度を制御し、基材1を基材1の裏面1b側からプロセスに適正な温度を維持する部材として機能する。
キャンロール13は、キャンロール13aと、キャンロール13bとから構成されている。キャンロール13aは、冷却水配管を温調機構として内蔵し、基材1の蒸着面1a側に反射防止膜2を成膜するときに反射防止膜2を冷却する。キャンロール13bは、ヒータを温調機構として内蔵し、基材1の蒸着面1a側に防汚膜3を成膜するときに防汚膜3を加熱する。キャンロール13bは、ヒータ等の温調機構によって防汚膜3を加熱することにより、基材1の蒸着面1a側に形成されたフッ素化合物との反応性を向上させることができる。
(差圧ロール14)
差圧ロール14は、両隣の部屋の圧力の差によって受ける影響を抑制できる程度に小さい隙間に基材1又は蒸着膜を形成した基材4を搬送させることによって、両隣の部屋の差圧を維持するロールである。差圧ロール14は、差圧ロール14a及び差圧ロール14bから構成さている。差圧ロール14aは、反射防止膜成膜室30と防汚膜成膜室50との間における差圧調整室40a内において、基材1を搬送するロールである。また、差圧ロール14bは、反射防止膜成膜室30と防汚膜成膜室50との間における差圧調整室40b内において、基材1を搬送するロールである。なお、差圧ロール14はフリーロールであってもよく、モータ等の駆動部を備える駆動ロールであってもよい。
〔搬入室10〕
搬入室10は、蒸着膜を形成するために、ロール状に巻き取られた基材1を蒸着装置100に搬入し、取り付ける部屋である。搬入室10は、その内部に巻出ロール11aを備えており、蒸着膜を形成する前の基材1のロールを巻出ロール11aに取り付けるようになっている。基材1は、巻出ロール11aの回転に伴い、ガイドロール12aへと送出され、ガイドロール12aに搬送されつつ、搬入室10から蒸着面処理室20へ連通する搬入口を通過して蒸着面処理室20へと搬送される。
搬入室10は、その内部に真空ポンプ(不図示)を備えていることが好ましい。搬入室10は、基材1のロールを巻出ロール11aに取り付けた後、搬入室10の内部を減圧することによって、いわゆるロードロック室としての機能を備える。
〔蒸着面処理室20〕
蒸着面処理室20は、蒸着面処理部21を備えており、蒸着面処理部21によって、基材1の蒸着面1a側に前処理を施す部屋である。
蒸着面処理室20から反射防止膜成膜室30へ連通する搬入口の開口は、基材1を通過させることができる程度に大きく、かつ、蒸着面処理室20内の圧力と反射防止膜成膜室30内の圧力とが互いに圧力の差によって影響を受けることを抑制できる程度に小さい開口であり得る。蒸着装置100には、一例として、搬入室10と蒸着面処理室20との間、及び、蒸着面処理室20と反射防止膜成膜室30との間の少なくとも一方に、基材1の厚さ方向に平行な方向に沿って開閉するゲートバルブ等が設けられていることがより好ましい。ゲートバルブを閉じることにより、搬入室10及び反射防止膜成膜室30をそれぞれ仕切り、搬入室10の圧力と反射防止膜成膜室30の圧力とを分けることができる。また、基材1を挟むように搬入室10と蒸着面処理室20との間のゲートバルブを閉じた状態で、搬入室10を大気開放してもよい。これにより、蒸着面処理室20よりも右側にある各部屋の圧力を低い圧力に保ったまま、搬入室10を大気圧に戻し、搬入室10における巻出ロール10aの基材1を、蒸着装置100の外部に搬出できる。このように、搬入室10と蒸着面処理室20との間にゲートバルブが設けられていれば、搬入室10はロードロック室としての機能を有し、搬入室10における基材1を交換することができる。
また、蒸着面処理室20は、差圧調整室40のように、第1差圧ガイド41と第2差圧ガイド42との間の隙間を基材1又は蒸着膜を形成した基材4を通過させてもよい。これによっても、蒸着面処理室20は、第1スパッタ源32及び第2スパッタ源33の影響を低減させた状態で、蒸着面処理部21によって、基材1の蒸着面1a側に前処理を施すことができる。
(蒸着面処理部21)
蒸着面処理部21は、順送りに基材1を搬送し、基材1が蒸着面処理部21の前を通過するときに、基材1の蒸着面1a側に前処理を施す。当該前処理は、プラズマ洗浄処理又はコロナ放電照射処理等により実現し得る。これによって、基材1の蒸着面1a側における汚れを分解及び除去し、表面状態を改質できるため、基材1に対する反射防止膜2又は防汚膜3の密着性を向上させることができる。具体的には、基材1上に反射防止膜2を形成する場合には、基材1に対する反射防止膜2の密着性を向上させ、基材1上に防汚膜3を直接形成する場合には、基材1に対する防汚膜3の密着性を向上させることができる。
〔反射防止膜成膜室30〕
反射防止膜成膜室30は、その内部にキャンロール13aを備え、当該キャンロール13aのロール面に対向し、基材1の搬送方向に沿って並ぶように第1スパッタ源32及び第2スパッタ源33が配置されている。第1スパッタ源32は、第1スパッタ源32a及び32bを備え、第2スパッタ源33は第2スパッタ源33a及び33bを備えている。
蒸着面処理室20から反射防止膜成膜室30へと搬入された基材1は、ガイドロール12c、及びガイドロール12dに搬送されつつ、キャンロール13aへと搬送される。蒸着装置100では、第1スパッタ源32a、第2スパッタ源33a、第1スパッタ源32b、第2スパッタ源33bの順で通過するように基材1をキャンロール13aによって搬送し、このとき、基材1の蒸着面1a側に第1無機膜2a、第2無機膜2b、第1無機膜2a及び第2無機膜2bをこの順で形成する。その後、反射防止膜成膜室30において反射防止膜2を形成した基材1は、その後、ガイドロール12d及び12eによって差圧調整室40aに搬送される。
反射防止膜成膜室30内は、各スパッタ源によって基材1上に反射防止膜2を形成することができる圧力に調整されていればよく、当該圧力は10Pa以下であり得、1×10―1Pa以上10Pa以下が好ましい。当該圧力は真空ポンプ(不図示)等を用いて実現される。
(第1スパッタ源32)
第1スパッタ源32は、真空環境下で発生させたプラズマからのイオンを、平板状又は円筒状に形成した元素のターゲットに衝突させ、ターゲット表面から叩き出された元素を基材1上に堆積して、第1無機膜2aを形成する。図1に示すように、第1スパッタ源32は、第1スパッタ源32aと、第1スパッタ源32bとから構成されている。
第1無機膜2aは、第2スパッタ源33によって形成される第2無機膜2bよりも高い屈折率を有する無機化合物によって形成される。第1無機膜2aの屈折率は、第2無機膜2bの屈折率よりも高ければ特に限定されないが、例えば、1.6〜2.6の範囲内であり得る。このような無機化合物としては、例えば、酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化ランタン(La)、酸化タンタル(Ta)、酸化イットリウム(Y)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化タングステン(WO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ジルコニウム(Zr)及び酸化アルミニウム(Al)の少なくとも何れかを含む無機化合物が挙げられる。
(第2スパッタ源33)
第2スパッタ源33は、基材1上に形成された第1無機膜2aの上に真空環境下で発生させたプラズマからのイオンを、平板状又は円筒状に形成した元素のターゲットに衝突させる。これにより、第2スパッタ源33は、第1無機膜2aを堆積した基材1上に、ターゲット表面から叩き出された元素を堆積して第2無機膜2bを形成する。第2スパッタ源33aと、第2スパッタ源33bとのそれぞれは、仕切り板を備えていてもよい。第2スパッタ源33が仕切り板を開閉することによって、反射防止膜成膜室30の圧力を任意で調整することができる。
第2無機膜2bは、第1スパッタ源32によって形成される第1無機膜2aよりも低い屈折率を有する無機化合物によって形成される。第2無機膜2bの屈折率は、第1無機膜2aの屈折率よりも低ければ特に限定されないが、例えば、1.2〜1.6の範囲内であり得る。このような無機化合物としては、例えば、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、フッ化カルシウム(CaF)及びフッ化マグネシウム(MgF)の少なくとも何れかを含む無機化合物が挙げられる。
なお、図1において、蒸着装置100は、まず、搬送方向に沿って第1スパッタ源32と第2スパッタ源33とが交互に配置された状態で、順送りに基材1を搬送する。具体的には、蒸着装置100は、搬送方向に沿って第1スパッタ源32a、第2スパッタ源33a、第1スパッタ源32b及び第2スパッタ源33bがこの順に配置された状態で、順送りに基材1を搬送する。次いで、蒸着装置100は、第1スパッタ源32a、第2スパッタ源33a、第1スパッタ源32b、第2スパッタ源33bの順に第1無機膜2aと、第2無機膜2bとを交互に2層ずつ積層し、反射防止膜2を形成する。
なお、蒸着装置100は、第1無機膜2a及び第2無機膜2bを繰り返し形成し、第1無機膜2a及び第2無機膜2bが2層よりも多く積層された反射防止膜2を形成することもできる。例えば、所望の光学特性を得るために、蒸着装置100は、第1スパッタ源32と、第2スパッタ源33とを、それぞれ3つずつ備え、これらから第1無機膜2a及び第2無機膜2bを3層ずつ積層してもよい。これにより、合計6層の無機膜からなる反射防止膜2を形成することもできる。
また、蒸着装置100は、逆送りに基材1を搬送し、逆送りの搬送中又は搬送後の順送り中に第1無機膜2aと、第2無機膜2bとを形成したり、反射防止膜成膜室30を2部屋以上設けたりしてもよい。これにより、6層以上の無機膜を形成することができる。
〔差圧調整室40〕
差圧調整部の一態様である差圧調整室40は、蒸着装置100において、差圧調整室40a及び差圧調整室40bから構成されている。差圧調整室40aは、当該差圧調整室40aを介して互いに連通する反射防止膜成膜室30の圧力と防汚膜成膜室50の圧力とが、互いの差圧によって変化することを防止することによって各室内の圧力を調整するための部屋である。差圧調整室40bは、当該差圧調整室40bを介して互いに連通する防汚膜成膜室50の圧力と安定化室60の圧力とが、互いの差圧によって変化することを防止し、各室内の圧力を調整する。
図1に示すように、差圧調整室40aは、差圧ロール14a、第1差圧ガイド41a及び第2差圧ガイド42aを備えている。また、差圧調整室40bは、差圧ロール14b、第1差圧ガイド41b及び第2差圧ガイド42bを備えている。
差圧調整室40aにおいて、第1差圧ガイド41aと差圧ロール14aとの隙間の幅は、差圧ロール14aの回転を邪魔しない範囲であれば、できるだけ狭いほうが好ましい。これにより、差圧ロール14aが回転できるようにしつつ隙間を保持しつつ、差圧ロール14aにおける基材1が接触していない面に形成され得る気体の流路をできるだけ狭めることができる。また、差圧ロール14aと第2差圧ガイド42aとの隙間の幅は、搬送される基材1の厚みよりも大きく、反射防止膜成膜室30及び防汚膜成膜室50がお互いの部屋の圧力の影響を受けず、基材1が第2差圧ガイド42aと接触しない範囲であれば、できるだけ狭いほうが好ましい。これにより、差圧ロール14aのロール面との間において基材1を搬送する搬送経路を確保しつつ、反射防止膜成膜室30と防汚膜成膜室50との間の気体の流入をできるだけ防止できる。
差圧調整室40bは、防汚膜成膜室50と安定化室60との間の差圧を調整する部屋であり、差圧ロール14b、第1差圧ガイド41b及び第2差圧ガイド42bを備えている。差圧調整室40bが備えている差圧ロール14b、第1差圧ガイド41b及び第2差圧ガイド42bは、これらは差圧ロール14a、第1差圧ガイド41a及び第2差圧ガイド42aと同じ機能を有しているため、その説明を省略する。
なお、差圧調整室40bと安定化室60との間には、開閉するゲートバルブが設けられていることが好ましい。ゲートバルブを閉じることにより、防汚膜成膜室50及び安定化室60をそれぞれ仕切り、防汚膜成膜室50と安定化室60とを分けることができる。また、蒸着膜を形成した基材4を挟むように差圧調整室40bと安定化室60との間のゲートバルブを閉じた状態で、安定化室60を大気開放してもよい。これにより、差圧調整室40bよりも左側にある各部屋を真空に保ったまま、安定化室60を大気圧に戻し、安定化室60における巻取ロール11bに巻き取られた、蒸着膜を形成した基材4を、蒸着装置100の外部に搬出できる。このように、差圧調整室40bと安定化室60との間にゲートバルブが設けられていれば、安定化室60はロードロック室としての機能を有し、安定化室60における基材1又は蒸着膜を形成した基材4を交換することができる。
〔防汚膜成膜室50〕
蒸着膜成膜室の一態様である防汚膜成膜室50は、蒸発源51及びノズル51aを備え、基材1上に防汚膜3を蒸着膜として形成する高真空槽である。具体的には、防汚膜成膜室50は、反射防止膜成膜室30よりも真空環境下において、ロールトゥロール式の搬送機構によって搬送される基材1上に、蒸発源51のノズル51aから蒸気化された反応性フッ素化合物を蒸着させて、基材1上に防汚膜3を蒸着膜として形成する。
防汚膜成膜室50内の圧力は、防汚膜3を真空蒸着によって形成することができる圧力であればよく、1×10−3Pa以下であり得る。当該圧力は、真空ポンプ(不図示)等を用いて防汚膜成膜室50を高真空にすることによって実現される。
(蒸発源51)
蒸発源51は、基材1上に防汚膜3を蒸着膜として形成するための手段である。蒸着装置100では、基材1の裏面1b側をキャンロール13に接触させた状態で、キャンロール13を回転させながら形成された反射防止膜2における基材1の蒸着面1a側に防汚膜3を蒸着膜として形成する。
蒸発源51では、一例として、反応性フッ素化合物が蒸着膜の材料として採用されてもよい。蒸発源51は、反応性フッ素化合物を加熱し、ノズル51aから基材1の蒸着面1a側に向かって反応性フッ素化合物を蒸発させる。これにより、基材1上に成膜された反射防止膜2の上に防汚膜3が形成される。なお、蒸着装置100では、巻出ロール11aから巻取ロール11bに向かう搬送方向に沿った順送りに反射防止膜2を形成した基材1を搬送し、このときに、防汚膜3を形成する。
蒸発源51としては、例えば、一列又は複数列のライン形状の蒸発源が好ましい。これにより、基材1の蒸着面1a側に形成された反射防止膜2上に防汚膜3を均一な膜厚分布を持つ蒸着膜として好適に形成することができる。
防汚膜3は、反応性フッ素化合物を含む蒸着膜である。防汚膜3は、蒸着膜を形成した基材4の表面に、汗、皮脂及び指紋等が付着することを防止することができる。
反応性フッ素化合物は、反応性フッ素化合物同士が架橋重合することができ、基材1の蒸着面1a(反射防止膜が形成されている場合には反射防止膜の表面)に化学結合できる官能基と、防汚膜3に低汚染性を付与することができる主鎖骨格を有している。
低汚染性を付与することができる主鎖骨格としては、例えばCF=,−CF−,−CFH−、−CFCFO−等の繰り返し単位を有するものが挙げられ、分岐鎖を有していてもよい。好ましくは、−CFCFO−等によって例示されるパーフルオロポリエーテルを主鎖骨格とする化合物が挙げられる。また、反応性フッ素化合物が有する、蒸着面と化学結合できる官能基は、高分子主鎖の末端又は側鎖には、水蒸気(HO)と加水分解等の反応をして、シラノール基(Si−OH)を形成することができる有機シラン基であり、例えば、−SiR3−X(OR’)、ここで、Rは、アルキル基、H及びCl等であり、R’は、アルキル基、及びH等であり、xは1〜3の整数である。このようなシラノール基自身、又はシラノール基(Si−OH)を形成することができる有機シラン基は大気中の酸素及び水蒸気(O及びHO)と反応し、安定化する。このような化合物の商品は、フッ素系防汚コーティング剤として知られ、例えば、オプツール(登録商標)DSX(ダイキン工業株式会社製)及びオプツール(登録商標)DAC−HP(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。
蒸着膜を形成するための化合物には、反応性フッ素化合物が有する主鎖骨格を、例えば、ジメチルシロキサン等のシロキサン骨格に置き換えた化合物を用いてもよい。また、蒸着膜を形成する化合物は、蒸着膜に付与されるべき機能に応じて、主鎖骨格の構成を選択した架橋性官能基として有機シラン基を備えた化合物であってもよい。
反応性フッ素化合物が、高分子主鎖の末端に上述の有機シラン基を有していることにより、加水分解によりシラノール基を形成した後、さらに脱水縮合反応を起こして、より安定なシロキサン結合(Si−O−Si)を形成する。これにより、防汚膜3に対してより好適に安定化処理を施すことができる。
〔安定化室60〕
安定化室60は、防汚膜成膜室50よりも低真空環境下において、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と反応性フッ素化合物とを反応させることによって、防汚膜成膜室50において形成された防汚膜3に安定化処理を施す低真空槽である。また、安定化室60は、防汚膜成膜室50、及び差圧調整室40b内を通過した、蒸着膜を形成した基材4を巻取ロール11bに巻き取り、蒸着装置100の外部に搬出するための搬出室でもある。
ここで、従来のロールトゥロール式の搬送機構を用いた蒸着装置では、真空環境下で防汚膜を基材上に形成し、防汚膜に安定化処理を施す前に、フィルム上に防汚膜を形成した基材を巻き取っていた。このように蒸着膜を形成した基材を巻き取った場合、防汚膜が大気中の成分と反応しないため、防汚膜の性能が低下する虞がある。
このことから、防汚膜に安定化処理を施すために、ロールトゥロール式の搬送機構を用いた蒸着装置から巻き取られた、蒸着膜を形成した基材を取り出した後、大気に蒸着膜を形成した基材における防汚膜を触れさせることがある。しかしながら、これによっても、大気に接触可能な外側の防汚膜と、大気に接触不可能な内側の防汚膜とで、安定化の度合いが異なり、内側の防汚膜の性能が低下する虞がある。そのため、内側の防汚膜の性能の低下を防ぐには、巻き取られた防汚膜を解いて外側から内側の防汚膜まで大気にさらした後、解かれた防汚膜を再び巻き取る必要がある。
これに対し、本実施形態に係る蒸着装置100では、蒸着膜を形成した基材4に、酸素及び水蒸気の少なくとも一方が導入された低真空の安定化室60を搬送させる。これにより、大気環境下で生じる防汚膜3における反応性フッ素化合物と、酸素及び水蒸気の少なくとも一方との反応を低真空環境下で発生させる。安定化室60において蒸着膜を形成した基材4の搬送を機に生じた当該反応により、防汚膜3は、大気にさらされた状態と同じ状態となり、時間をかけて(例えば、蒸着膜を形成した基材4が巻き取られた後に)安定化する。このように、防汚膜成膜室50よりも低真空環境下で基材1上に形成された防汚膜3を内側と外側とで均一に安定化処理を施すことによって、内側であるかどうかに関係なく、防汚膜3の接触角を大きくし、ぬれ性及び密着性等の性能の低下を防ぐことができる。そのため、蒸着膜を形成した基材4を取り出して防汚膜3を大気環境下にさらさなくても、防汚膜3の性能を低下させることなく、防汚膜3に安定化処理を施すことができる。
安定化室60内の圧力は、例えば、1Pa以上10Pa以下である。当該圧力は、真空ポンプ等の減圧部(不図示)によって安定化室60を高真空にした後、酸素及び水蒸気の少なくとも一方を導入すること、及び、上述の差圧調整室40bによって防汚膜成膜室50との差圧を調整することによって達成される。
安定化室60は、その室内に酸素及び水蒸気のうち、少なくとも水蒸気を導入するバルブ及びボンベを備えていることが好ましい。安定化室60を低真空環境下におくことによって、水蒸気を導入し、これにより、巻取ロール11bに巻き取る前の段階において水蒸気に防汚膜3の表面を曝す。これによって、蒸着膜を形成した基材4が巻取ロール11bにて巻き取られた後においても、シラノール基を有する反応性フッ素化合物の加水分解反応、及び脱水縮合反応が好適に進行する。よって、安定化処理が施された蒸着膜を形成した基材4を製造することができる。
差圧調整室40bから搬入された蒸着膜を形成した基材4を搬送するガイドロール12jは、フリーロールに代えて、加熱部又は冷却部と、モータ等の駆動部とを備える駆動ロールであることがより好ましい。蒸着膜を形成した基材4を加熱することによって、防汚膜3と、酸素及び水蒸気の少なくとも一方との反応性を高めることができる。蒸着膜を形成した基材4を冷却することによって、防汚膜3の表面に水蒸気(HO)を凝集し、水蒸気との反応を促進させることができる。また、ガイドロール12jをフリーロールとした場合、ガイドロール12jと巻取ロール11bとの間に配置され、蒸着膜を形成した基材4を裏面1b側から加熱又は冷却することができるキャンロール(不図示)が設けられていてもよい。
巻取ロール11bは、防汚膜成膜室50又は安定化室60の何れかに設けられていることが好ましい。これによって、防汚膜3に安定化処理が施された状態の蒸着膜を形成した基材4をわざわざ外に出すことなく、好適に巻き取ることができる。
また、巻取ロール11bは、安定化室60に設けられていることがより好ましい。巻取ロール11bが安定化室60に設けられていることによって、防汚膜3により安定化処理が施された状態で蒸着膜を形成した基材4を巻き取ることができる。
安定化室60は、酸素及び水蒸気のうち、少なくとも水蒸気を含むことが好ましい。安定化室60が水蒸気を含むことによって、水蒸気と防汚膜3との加水分解反応がより好適に起こり、防汚膜3に対してより好適に安定化処理を施すことができる。
なお、上述の例では、安定化室60は、蒸着膜を形成した基材4を巻取ロール11bに巻き取った後、差圧調整室40bからの搬入口をゲートバルブによって遮断し、大気圧に戻すことによっていわゆるロードロック室として機能する。ただし、蒸着装置100は、搬入室10及び安定化室60の何れもロードロック室としての機能を備えている。そのため、安定化室60に基材1を搬入し、安定化室60から搬入室10へと向かって基材1を逆送りに搬送し、搬入室10において蒸着膜を形成した基材4を巻き取ってもよい。また、減圧下の搬入室10を大気圧に戻し、蒸着膜を形成した基材4を巻き取ったロールを蒸着装置100の外部に搬出してもよい。
このように、蒸着装置100において、搬入室10及び安定化室60の何れの部屋から基材1を搬入するか、何れの部屋から蒸着膜を形成した基材4を搬出するかは、基材1に成膜すべき各膜の構成に基づき適宜選択すればよい。
<別の態様に係る蒸着装置>
本発明に係る蒸着装置は、上記態様に係る蒸着装置100に限定されない。例えば、図1に示す、蒸着装置は、逆送りに基材1を搬送して基材1上に反射防止膜2を形成した後、順送りに基材1を搬送して反射防止膜2上に防汚膜3を形成してもよい。この場合も、防汚膜の性能を低下させずに防汚膜に安定化処理を施すことができる。
別の態様に係る蒸着装置は、キャンロール13aの代わりに非接触の冷却板等の公知の冷却手段を備え、キャンロール13bの代わりに赤外線ヒータ等の公知の加熱手段を備えていてもよい。これによっても、基材を冷却しながら、反射防止膜を基材上に好適に形成し、基材を加熱しながら、防汚膜を反射防止膜上に好適に形成することができる。
また、別の態様に係る蒸着装置は、上述の態様に係る蒸着装置100のように、蒸着面処理室20と、反射防止膜成膜室30と、防汚膜成膜室50とが、互いに連通する基材1の搬送経路を備えた内璧によって3室に分かれている形態でなくてもよい。また、当該態様に係る蒸着装置は、蒸着面処理部21と、第1スパッタ源32及び第2スパッタ源33と、蒸発源51とが当該内璧を挟んで別個に配置されている形態でなくてもよい。当該態様に係る蒸着装置では、蒸着面処理部、スパッタ源及び蒸発源を別々の真空度において制御できれば、例えば、これらの部材全てを1つの部屋にまとめて配置してもよい。
また、別の態様に係る蒸着装置は、第1スパッタ源及び第2スパッタ源の少なくとも一方を備えていなくてもよい。また、別の態様に係る蒸着装置は、反射防止膜等の無機膜を形成することなく、基材上に直接防汚膜を形成してもよい。この場合、別の態様に係る蒸着装置は、上述の態様に係る蒸着装置100のように、順送りに基材を搬送してもよいが、減圧した安定化室から搬入室に逆送りに基材を搬送してもよい。また、搬入室において、蒸着膜を形成した基材を巻取ロールに巻き取った後、搬入口をゲートバルブによって遮断し、大気圧に戻した搬入室から当該基材を外部に搬出してもよい。さらに、別の態様に係る蒸着装置は、予め反射防止膜等の無機膜が形成された基材上に防汚膜を形成してもよい。これらによっても、上述の例と同様に、防汚膜の性能を低下させずに防汚膜に安定化処理を施すことができる。
<蒸着膜を形成した基材4の製造方法>
本発明の一実施形態に係る蒸着膜を形成した基材4の製造方法は、真空環境下において、ロールトゥロール式の搬送機構によって搬送される基材上に、蒸発源から反応性フッ素化合物の蒸気を蒸着させることによって、上記基材上に蒸着膜を形成する蒸着膜成膜工程と、上記蒸着膜成膜工程よりも低真空環境下において、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と上記反応性フッ素化合物とを反応させることによって、上記蒸着膜成膜工程において形成された上記蒸着膜に安定化処理を施す安定化工程と、を包含する。これにより、蒸着膜の性能を低下させずに蒸着膜に安定化処理を施すことができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
<まとめ>
本発明の態様1に係る蒸着装置は、真空環境下において、ロールトゥロール式の搬送機構によって搬送される基材上に、蒸発源から反応性フッ素化合物の蒸気を蒸着させることによって、上記基材上に蒸着膜を形成する蒸着膜成膜室と、上記蒸着膜成膜室よりも低真空環境下において、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と上記反応性フッ素化合物とを反応させることによって、上記蒸着膜成膜室において形成された上記蒸着膜に安定化処理を施す安定化室と、を備える。
本発明の態様2に係る蒸着装置は、上記態様1において、上記蒸着膜成膜室と、上記安定化室との間には、当該蒸着膜成膜室の圧力と、当該安定化室の圧力との差圧を調整する差圧調整部が設けられていてもよい。
本発明の態様3に係る蒸着装置は、上記態様1又は2において、上記蒸着膜成膜室及び上記安定化室の何れかには、安定化処理が施された蒸着膜を形成した基材を巻き取る巻取ロールが設けられていてもよい。
本発明の態様4に係る蒸着装置は、上記態様1〜3の何れか1つにおいて、上記反応性フッ素化合物は、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と反応してシラノール基を形成することができる有機シラン基を有していてもよい。
本発明の態様5に係る蒸着膜を形成した基材の製造方法は、真空環境下において、ロールトゥロール式の搬送機構によって搬送される基材上に蒸発源から反応性フッ素化合物の蒸気を蒸着させることによって、上記基材上に蒸着膜を形成する蒸着膜成膜工程と、上記蒸着膜成膜工程よりも低真空環境下において、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と上記反応性フッ素化合物とを反応させることによって、上記蒸着膜成膜工程において形成された上記蒸着膜に安定化処理を施す安定化工程と、を包含する。
本発明は、パソコン、スマートフォン及び車載等のディスプレイを保護するフィルム等に利用することができる。
1 基材
3 防汚膜(蒸着膜)
4 蒸着膜を形成した基材
11 基材巻出巻取ロール
11a 巻出ロール(搬送機構)
11b 巻取ロール(搬送機構)
12、12a〜12j ガイドロール(搬送機構)
13、13a、13b キャンロール(搬送機構)
14、14a、14b 差圧ロール(搬送機構)
40、40a、40b 差圧調整室(差圧調整部)
50 防汚膜成膜室(蒸着膜成膜室)
51 蒸発源
60 安定化室
100 蒸着装置

Claims (5)

  1. 真空環境下において、ロールトゥロール式の搬送機構によって搬送される基材上に、蒸発源から反応性フッ素化合物の蒸気を蒸着させることによって、上記基材上に蒸着膜を形成する蒸着膜成膜室と、
    上記蒸着膜成膜室よりも低真空環境下において、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と上記反応性フッ素化合物とを反応させることによって、上記蒸着膜成膜室において形成された上記蒸着膜に安定化処理を施す安定化室と、を備えることを特徴とする蒸着装置。
  2. 上記蒸着膜成膜室と、上記安定化室との間には、当該蒸着膜成膜室の圧力と、当該安定化室の圧力との差圧を調整する差圧調整部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着装置。
  3. 上記蒸着膜成膜室及び上記安定化室の何れかには、安定化処理が施された蒸着膜を形成した基材を巻き取る巻取ロールが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着装置。
  4. 上記反応性フッ素化合物は、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と反応してシラノール基を形成することができる有機シラン基を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の蒸着装置。
  5. 真空環境下において、ロールトゥロール式の搬送機構によって搬送される基材上に蒸発源から反応性フッ素化合物の蒸気を蒸着させることによって、上記基材上に蒸着膜を形成する蒸着膜成膜工程と、
    上記蒸着膜成膜工程よりも低真空環境下において、酸素及び水蒸気の少なくとも一方と上記反応性フッ素化合物とを反応させることによって、上記蒸着膜成膜工程において形成された上記蒸着膜に安定化処理を施す安定化工程と、を包含することを特徴とする蒸着膜を形成した基材の製造方法。
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