JP5749614B2 - 金属―空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム―空気電池に関する。
電池の正極活物質として空気中の酸素を利用する空気電池は、電池の高エネルギー密度化に有利である。その空気電池の種類として負極活物質に亜鉛やアルミニウムやリチウム等を用いる金属―空気電池(一次電池及び二次電池)や燃料電池が知られており、一部実用化されている。これらの空気電池の放電時には、正極では酸素の還元反応が起こる。この場合、酸素の還元反応は、水系の電解液中で、さらには、アルカリ性溶液中で速く起こる事が知られており、アルカリ性水溶液が電池の電解液として通常用いられる。アルカリ性の電解液中での正極の放電反応は、反応式(1)に基づき、負極での放電反応は、反応式(2)に基づく。
正極反応: 1/4 O2 + 1/2 H2O + e- → OH- 反応式(1)
負極反応: M → Mn++ ne- 反応式(2)
ここで、MがLiの場合n=1、Znの場合n=2、Alの場合n=3、Hの場合n=1である。
亜鉛―空気電池、アルミニウム―空気電池や、アルカリ形燃料電池(AFC)では、反応式(1)に従い正極反応で生成したOH-イオンがセル内で負極の方向へ移動し、負極表面で、放電生成物である負極元素の水酸化物を形成する。そのため、電解液としては、水酸化イオンの導電性が高い方が好ましい。そのため、これら金属―空気電池の電解液として、高濃度の水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の強アルカリ性水溶液が一般的に用いられる。
しかしながら、強アルカリ性の電解液を用いると、電解液と正極の細孔を透過して入ってくる大気中のCO2とが反応し、水に難溶性で、且つ、電気化学的に不活性な炭酸塩が生成される。炭酸塩が生成されると、充電しても負極活物質の金属を負極に戻すことができないとか、炭酸塩が正極の細孔を詰まらせ空気の供給ができないといった問題が生じる。
炭酸塩が生成されるという問題を解決する方法として、図1に示すように空気極とアルカリ性の電解液の間に陰イオン交換膜を配置して大気中のCO2と電解液との反応を防止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
金属―空気電池の内、負極に金属リチウムを用いるリチウム―空気電池は、非常に高い理論エネルギー密度を有するため、近年非常に注目されている。この場合、負極として用いられるLi金属は、水系の電解液と接すると反応する問題がある。しかしながら、図2に示した様に、リチウム金属負極に、Li1 + x(M, Al, Ga)x(Ge1 - yTiy)2 -x (PO4)3(ここで、X≦0.8と0≦Y≦1.0とを満たし、MがNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybからなる群から選択される元素)および/あるいはLi1+x+y Qx Ti2 - x Siy P3 - y O12 (ここで0 < X≦ 0.4 と0 < Y≦ 0.6とを満たし、QがAlあるいはGaである)で表わされる水不透過性のリチウムイオン導電性ガラスセラミック(以下、LATPとして省略)を積層し、保護することで、水系の電解液を用いることが可能になってきている(例えば、特許文献2参照。)。
水系Li-空気二次電池の場合、放電時に負極では、
負極反応:Li → Li++ e- 反応式(3)
が起こり、正極反応(反応式(1))と合わせた全電池反応は、
全電池反応:Li + 1/4 O2 + 1/2 H2O → LiOH 反応式(4)
で、表わされる。
水系Li―空気二次電池の場合、負極反応(反応式(3))で生成するLi+の移動速度が、正極反応(反応式(1))で生成するOH-イオンの移動速度と比較して高いので、Li+イオンがセル内で正極の方向へ移動し、正極表面で放電生成物であるLiOHを生成する。そのため、電解液として、Li+イオン導電性が高い電解液が好ましい。このような電解液の例として、特許文献2では、HCl、H2SO4、H3PO4、酢酸/酢酸Li、LiOH、海水、LiCl、LiBr、LiI、NH 4 ClNH 4 Br、過酸化水素の酸性〜アルカリ性の電解液が例示されているが、酸性〜中性の電解液を用いた場合でも、反応式(4)に従い、放電反応の進行と共に、LiOHが生成し、電解液は、より強いアルカリ性へと変化していく。そのため、水系Li-空気二次電池の場合も、他の空気電池と同様に電解液と大気中のCO2が反応し、炭酸リチウムを生成すると言う問題点がある。
また、放電生成物であるLiOHは生成と同時に空気極表面に析出し、空気極触媒表面の被覆やガス拡散層の細孔を封止する問題がある。
再公表特許WO2009/104570号 特表2007−513464号
上記のように、電解液に強アルカリ性水溶液を用いる金属―空気電池では、電解液と大気中のCO2が反応して生成される炭酸塩の問題を解決するために、空気極とアルカリ性の電解液の間に陰イオン交換膜を配置することが行われている。
上記の水系Li-空気二次電池の問題に対しても、空気極と電解液の間に陰イオン交換膜を配置することにより、大気中のCO2と電解液との反応を防止し、さらには、電解液中の正の電荷を有したリチウムイオンが陰イオン交換膜を透過できないのでLiOHの生成面を空気極表面から、陰イオン交換膜表面へ少し移動させることが可能になると考えられる。
しかしながら、金属―空気電池に陰イオン交換膜を用いると、陰イオン交換膜が強アルカリ水溶液中で不安定になる問題がある。すなわち、陰イオン交換膜は、正の電位に帯電した官能基により、陰イオンを捕捉・交換を行うが、陰イオン交換膜に含まれる一般的な官能基である、4級アンモニウムは、図3に示すように強アルカリ溶液中で、分解・劣化することが知られている(Christopher G. Arges, Vijay Ramani, and Peter N. Pintauro, "Anion Exchange Membrane Fuel Cells", The Electrochemical Society Interface, Summer, p31-35(2010)参照。)。 そのため、強アルカリ電解液中では、陰イオン交換膜の分解・劣化が起こり、長時間使用できないという問題がある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、陰イオン交換膜の分解・劣化を抑制するリチウム―空気電池を提供することを課題としている。
本発明者は、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。得られた知見に基づいて、次のように推論することで本発明が創出されたものである。
空気電池の電解液として、高OH-イオン導電性を確保する為に、高濃度のKOHやNaOH溶液が一般的に用いられる。KOHやNaOHと同様に強アルカリであるLiOHは、高OH-イオン導電率に関しては、KOHやNaOHに対してやや劣っているのに対して、溶解度に関して、それらとは異なった特徴を有している。 表1は、アルカリ塩の溶解度を比較して示している。表1からLiOHは、強アルカリではあるが、NaOH、KOHと比較するとその溶解度は小さいことがわかる。このことは、水酸化リチウムの結晶構造が安定であり、NaOHやKOHと比較して、電離し難く、水に溶解し難いことを意味している。さらに、LiClやLiNO3等といったリチウム塩は、中性で、且つ、水酸化物(LiOH)よりも溶解度が大きく、ナトリウム塩やカリウム塩とは異なった特徴を有している。その特徴を利用し、LiOHの溶液中にLiClやLiNO3等のLiOHよりも容易に電離して、溶解し易い塩を高濃度に添加すると、
Li++ OH- → LiOH↓ 反応式(5)
とLiOHの溶解平衡がずれ、飽和溶解度以前の濃度でLiOHの沈殿が発生し、溶液が強アルカリ性になることを防止することが可能である。この現象を利用し、空気電池の電解液として、高濃度のLiClやLiNO3等のLiOHよりも電離度が大きい塩を予め添加しておくことで、反応式(1)の正極での放電反応で生成するOH-イオンの増加を防止することができる。すなわち、このような組成の電解液を使用することにより、空気電池の電解液中での陰イオン交換膜の劣化を防止できることを見出した。
Figure 0005749614
電解質として使用できるリチウム塩の好ましい条件として、
(イ)LiOHよりも電離度が大きく、LiOHよりも高濃度の飽和溶液を与えること、
(ロ)リチウム塩を溶解した水溶液のpHが5 < pH < 12、好ましくは、6 < pH <11を与えること、
(ハ)LiOHの飽和溶液(pH >13)にリチウム塩を添加することで、LiOHを沈殿させることが可能で、且つ、pH<12を与えることが出来ること、
(ニ)電気化学的に不活性であること、すなわち、リチウムイオンの対イオン(陰イオン)として、正極での放電時に空気よりも還元され難いこと、
(ホ)二次電池として使用する場合、水よりも酸化され難いこと、
が上げられる。この様な条件を満たすリチウム塩として、LiCl、LiNO3、Li2SO4が例示される。
課題を解決するためになされた本発明のリチウム―空気電池は、負極活物質としてリチウムを用いる負極と、正極活物質として酸素を用いる正極と、前記負極及び前記正極の間に介在する電解液と、前記正極の前記負極に対向する面に配置された陰イオン交換膜と、を有し、前記電解液は、リチウム塩を含有して前記金属―空気電池の充放電動作中にpH12以下、pH5以上の範囲に保持されるように調整されている
リチウム塩は中性で、且つ、水酸化物よりも溶解度が大きいので、リチウム塩が電離して、放電時の正極反応で生じるOH-イオンと反応して溶解度の低い水酸化リチウムが生成される。その結果、水酸化リチウムの沈殿が起こり、充放電動作中に電解液をpH12以下、pH5以上の範囲に保持することができる。その結果、電解液が強アルカリ性になることが防止される。
電解液のpH値が常に5以上、12以下の範囲内の中性域付近とされているので、強アルカリにより陰イオン交換膜が充放電動作中に分解・劣化することが抑制される。
電解液のpH値は、6以上、7以上にできる。さらに、pH値は11以下、10以下にできる。電解液は、充放電動作中に好ましくはpH11以下、pH6以上の範囲に保持される。
電解液のpH値が常に5以上とする理由は、pH値が5未満の強酸性電解液では電池構成部材の劣化が激しいからである。
負極に対向する正極の面に陰イオン交換膜が積層されているので、放電生成物が正極に析出することがない。
上記のリチウム―空気電池において、前記電解液の前記リチウム塩の溶解により生じたリチウムイオン濃度は、好ましくはLiOHの飽和溶液中のリチウムイオン濃度より高濃度であるとよい。
放電時の正極反応により生成されるOH-より常に高濃度のLi+イオンがリチウム塩の電離により生ずるので、そのLi+が放電時の正極反応で生じるOH-と反応して溶解度の低い水酸化リチウムを生成し、沈殿が容易に起こる。
また、前記リチウム塩は、少なくともLiCl、LiNO3、Li2SO4のいずれか一つを含むとよい。
LiCl、LiNO3、Li2SO4の飽和溶液中のLi+イオン濃度は、いずれもLiOHの飽和溶液中のLi+イオン濃度より高いので、放電時の正極反応で生じるOH-と反応して溶解度の低い水酸化リチウムが生成し、沈殿が一層容易に起こる。その結果、放電時の正極反応で生じるOH-イオンの増加を確実に防止することができる。
電解液のpH値が常に5以上、12以下の範囲内の中性域付近とされているので、充放電動作中に陰イオン交換膜が分解・劣化することが抑制される。
従来技術に係り、亜鉛―空気電池の概念を模式的に示す断面図である。 従来技術に係り、水系リチウム―空気電池の概念を模式的に示す断面図である。 陰イオン交換膜の分解・劣化機構を模式的に示す図である。 本発明の実施形態に係る水系リチウム―空気電池の概念を模式的に示す断面図である。 本発明の参考態に係る金属―空気電池の概念を模式的に示す断面図である。 陰イオン交換膜の分解・劣化を評価する試験装置を模式的に示す断面図である。
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を説明する。図4は、リチウム―空気(二次)電池を模式的に示す断面図である。図4に示すように、実施形態のリチウム―空気電池は、放電及び充電可能な二次電池であり、負極活物質として金属であるリチウムを用いる負極1と、空気が供給される正極2と、負極1と正極2との間に介在する電解液3と、正極2の負極1に対向する面に配置された陰イオン交換膜4を有する。負極1の正極2に対向する面にはリチウム保護膜100が配置されている。リチウム保護膜100は、水不透過性リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス(LATP)層101と、反応防止層102からなる。
負極1は、例えば金属リチウムリボンである。正極2は、例えば微細化カーボンと酸化物触媒で形成されている。
LATP層101は、Li1 + x(M, Al, Ga)x(Ge1 - yTiy)2 -x(PO4)3(ここで、X≦0.8と0≦Y≦1.0とを満たし、MがNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybからなる群から選択される元素)および/あるいはLi1+x+y Qx Ti2 - x Siy P3 - y O12 (ここで0 < X≦ 0.4 と0 < Y≦ 0.6とを満たし、QがAlあるいはGaである)で表わされる水不透過性のリチウムイオン導電性ガラスセラミックである。
電解液3は、リチウム塩を含有して充放電動作中にpH12以下、pH5以上の範囲に保持されるように調整されている。電解液3の具体例は以下の通りである。
電解液3は、イオン交換水にリチウム塩としてLiClが添加されたもので、LiClの濃度は6.6mol/Lである。
添加されるリチウム塩はLiClに限らず、LiOHの飽和溶液より高いLi+イオン濃度を与える塩であればよく、LiNO3、Li2SO4、等でもよい。
また、電解液中のリチウム塩濃度は、6.6mol/Lに限らず、LiOHの飽和濃度より高濃度のLi+イオン濃度であればよい。
陰イオン交換膜4としては、陰イオンのOH-を透過し、陽イオンのK+、Na+などを遮蔽することのできる陰イオン交換基を有する高分子膜を使用する。陰イオン交換膜の種類は特に限定されないが、例えば、四級アンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基などの陰イオン交換基を有する炭化水素系樹脂(例えば、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリアリーレンエーテル等)、フッ素系樹脂などの高分子化合物からなる陰イオン交換膜を用いることができる。
本実施形態の電池は、金属としてリチウムを用いたリチウム―空気電池であるが、正極2のうち電解液側に陰イオン交換膜4が配置されているので、放電生成物500であるLiOHは、正極2には生成されず、図4に示すように陰イオン交換膜4の表面に生成される。したがって、放電生成物500によって正極2の表面の被覆やガス拡散層の細孔が封止されることがない。
本実施形態のリチウム―空気電池は、電解液3のLiClの濃度が6.6mol/Lであるので、電解液中で電離したLi+イオンと放電時の正極反応で生じるOH-とが反応してLiOHの沈殿が発生する。その結果、電解液が強アルカリ性になることが抑制される。
電解液3が充放電を繰り返しても強アルカリ性にならないので、強アルカリ性に弱い陰イオン交換膜4が電解液3で分解されたりすることが抑制される。
参考態)
参考態の電池は亜鉛―空気電池又はアルミ―空気電池であり、図5に示すように、負極活物質として亜鉛又はアルミニウムを用いる負極1Aと、空気が供給される正極2Aと、負極1Aと正極2Aとの間に介在する電解液3Aと、正極2Aの負極1Aに対向する面に配置された陰イオン交換膜4を有する。
負極1Aは、例えば亜鉛リボン又はアルミニウムリボンである。正極2Aは、微細化カーボンでできたガス拡散層21Aと空気極触媒21Bとからなる。
電解液3Aは、リチウム塩を含有して充放電動作中にpH11以下、pH6以上の範囲に保持されるように調整されている。電解液3Aの具体例は以下の通りである。
電解液3Aは、飽和水酸化リチウム(LiOH)水溶液にリチウム塩として、LiClが添加されたものであり、LiClの濃度は、LiOHの飽和濃度(5.24 mol/L)以上である。
この場合、LiClの添加により、一部、LiOHの沈殿が生成し、反応式(5)が成立する。それにより、金属―空気電池の充放電反応で電解液3AのOH-濃度が変化しても、電解液3AのpHは、LiOHの溶解、析出の反応式(5)により一定に保たれる。その為、強アルカリ性に弱い陰イオン交換膜4が電解液3Aで分解されたりすることが抑制される。
(試験例1)
電解液にリチウム塩を添加することによる陰イオン交換膜の分解・劣化抑制効果を確認するために、図6に示す試験装置を用いて試験した。
<陰イオン交換膜の劣化試験>
(a)ポリプロピレン製の容器を下記の本発明に係る電解液で満たす。
本発明に係る電解液:4 mol/L LiOH + 6.6 mol/L LiCl
(b)陰イオン交換膜(Neosepta AHA:アストム社製)を35 x 35 mmのサイズに切り取り、濃度1 mol/Lの HClで洗浄した後、本発明に係る電解液で満たされたポリプロピレン製の容器に入れて密閉する。
(c)密閉された容器を3,600時間、60℃で保管することで本発明に係る電解液に長時間浸漬された陰イオン交換膜Aが得られる。
<陰イオン交換膜の劣化比較試験>
(a)ポリプロピレン製の容器を下記の比較電解液で満たす。
比較電解液:4 mol/L LiOH
(b)陰イオン交換膜(Neosepta AHA:アストム社製)を35 x 35 mmのサイズに切り取り、濃度1 mol/Lの HClで洗浄した後、比較電解液で満たされたポリプロピレン製の容器に入れて密閉する。
(c)密閉された容器を3,600時間、60℃で保管することで比較電解液に長時間浸漬された陰イオン交換膜Bが得られる。
<陰イオン交換膜のインピーダンス測定>
(a)A槽300A及びB槽300Bを下記の電解液で満たす。
インピーダンス測定用電解液:1 mol/L LiOH
(b)陰イオン交換膜(Neosepta AHA:アストム社製)を35 x 35 mmのサイズに切り取り、濃度1 mol/Lの HClで洗浄した後、図6に示すようにU字型ガラス容器300内にセットする。
(c)両槽にN2ガスを吹き込みながら白金黒電極間(A電極200AとB電極200B間)の0.1 Hz 〜 10M Hzの周波数領域でのインピーダンスをインピーダンスアナライザー(SI-1260・1287:ソーラートロン社製)を用いて測定する。この測定により、1 mol/L LiOH溶液と陰イオン交換膜のトータルのインピーダンスが測定される。
(d)U字型ガラス容器300から陰イオン交換膜を取り出し、陰イオン交換膜が無い状態で、手順(c)と同様な方法でインピーダンス測定を行う。これにより、1 mol/L LiOH 溶液のみのインピーダンスが測定される。
(e) 手順 (c)で測定した、1 mol/L LiOH 溶液と陰イオン交換膜のトータルのインピーダンスから、手順 (d)で測定した、1 mol/L LiOH 溶液のみのインピーダンスを差し引き、さらに、周波数解析を行うことで、陰イオン交換膜のバルク抵抗と陰イオン交換膜と1 mol/L LiOH 溶液間の界面抵抗とに成分を分離し、陰イオン交換膜の初期インピーダンスとする。
(f)陰イオン交換膜の劣化試験を行った陰イオン交換膜Aを1 mol/Lの HClで洗浄した後、1 mol/L LiOHのインピーダンス測定用電解液を満たしたU字型ガラス容器300にセットして、両槽にN2ガスを吹き込みながら白金黒電極間(A電極200AとB電極200B間)の0.1 Hz 〜10M Hzの周波数領域でのインピーダンスをインピーダンスアナライザー(SI-1260・1287:ソーラートロン社製)を用いて測定する。
(g)陰イオン交換膜の劣化比較試験を行った陰イオン交換膜Bを1 mol/Lの HClで洗浄した後、1 mol/L LiOHのインピーダンス測定用電解液を満たしたU字型ガラス容器300にセットして、両槽にN2ガスを吹き込みながら白金黒電極間(A電極200AとB電極200B間)の0.1 Hz 〜10M Hzの周波数領域でのインピーダンスをインピーダンスアナライザー(SI-1260・1287:ソーラートロン社製)を用いて測定する。
上記の試験手順で試験した結果を表2に示す。なお、本発明に係る電解液を用いた陰イオン交換膜の劣化試験では、電解液にLiOHの沈殿が発生し、電解液の白濁が観測された。それに対して、比較電解液を用いた陰イオン交換膜の劣化比較試験では、沈殿物が確認されず、透明の溶液のままであった。
LiOHの沈殿が発生し、白濁が観測された本発明に係る電解液と、沈殿物が確認されず、透明の溶液のままであった比較電解液のpHをpHメータを用いて測定した結果も表2に示してある。表2から判るように、比較電解液は、pH >13以上のpHメータの測定限界以上のpHを示していたが、本発明に係る電解液は、pH = 10.35の弱アルカリ性のpHを示しており、LiClの添加によりLiOHの電離が防止され、電解液のアルカリ度が低下したことがわかる。
さらに、表2には、本発明に係る電解液と比較電解液に、陰イオン交換膜を3,600時間 浸漬保管した後の、陰イオン交換膜AとBのインピーダンスが示してある。表2から、初期の陰イオン交換膜のインピーダンスより比較電解液中に浸漬保管した後の陰イオン交換膜Bのインピーダンスが増大していることがわかる。特に、比較電解液中に浸漬保管した後の陰イオン交換膜Bの界面抵抗は、初期の陰イオン交換膜の界面抵抗の約10倍に増大していることがわかる。それに対して、本発明に係る電解液中に浸漬した陰イオン交換膜Aは、初期の陰イオン交換膜のインピーダンスの値と比べて、殆ど変化が無いことがわかる。これらの結果から、比較電解液中に浸漬保管した後の陰イオン交換膜Bは、膜の表面から膜の分解劣化が進行しているのに対して、本発明に係る電解液中に浸漬保管した陰イオン交換膜Aは、膜の分解劣化が防止されていることがわかる。
Figure 0005749614
1、1A・・・・・負極
2、2A・・・・・正極
3、3A・・・・・電解液
4・・・・・・・・陰イオン交換膜

Claims (2)

  1. 負極活物質としてリチウムを用いる負極と、正極活物質として酸素を用いる正極と、前記負極及び前記正極の間に介在する電解液と、前記正極の前記負極に対向する面に配置された陰イオン交換膜と、を有し、
    前記電解液は、リチウム塩を含有し、充放電動作中にpH12以下、pH5以上の範囲に保持されるように調整され
    前記電解液の前記リチウム塩の溶解により生じたリチウムイオン濃度は、LiOHの飽和溶液中のリチウムイオン濃度より高濃度であリチウム―空気電池。
  2. 前記リチウム塩は、LiCl、LiNO3、Li2SO4のいずれか一つを含む請求項に記載のリチウム―空気電池。
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