第1の発明は、利用者が第1目標往き温度を設定する第1目標往き温度設定手段を備え、起動時は目標往き温度として第1目標往き温度を設定し、往き温度検知手段で検知される往き温度が、目標往き温度となるように圧縮機の動作周波数を制御するヒートポンプ温水暖房機において、往き温度の時間変化量が往き温度許容変化量以下となり、戻り温度検知手段で検知される戻り温度の時間変化量が戻り温度許容変化量以下となり、往き温度と目標往き温度との差が往き温度許容誤差以下となった場合に、目標往き温度が第1目標往き温度である場合は、目標往き温度として第1目標往き温度よりも低い第2目標往き温度を設定し、目標往き温度が第2目標往き温度である場合は、戻り温度が第2目標往き温度よりも第1所定温度差以上低い目標戻り温度となるように、循環ポンプにより熱媒の流量を調整する。
このため、室内放熱器が設置された部屋が十分に暖まっていると判断した場合には、目標往き温度を、利用者が設定した第1目標往き温度よりも低い温度に変更して、往き温度を低下させ、さらに、水熱媒の循環流量を下げて戻り温度の上昇を抑え、ヒートポンプサイクルの凝縮温度の上昇を確実に防いで、ヒートポンプサイクルの効率の低下を防止すると共に、循環ポンプの運転動力を削減することができる。
また、循環ポンプの制御は、圧縮機の周波数がほぼ一定となった状態で行われるため、
圧縮機の制御の影響を受けることがなく、不安定になることがないという効果を有する。
第2の発明は、第1の発明において、目標往き温度が第2目標往き温度である場合に、第1目標往き温度設定手段により第1目標往き温度が変更された場合には、目標往き温度として、変更された第1目標往き温度を設定するものである。
これにより、利用者が第1目標往き温度を変更した場合は、目標往き温度が第2目標往き温度で、省エネ運転中であっても、即座に目標往き温度として新しい第1目標往き温度を設定するので、利用者の設定変更を優先することができる。
第3の発明は、第2の発明において、第1目標往き温度が第2目標往き温度よりも低い温度に変更された場合には、第2目標往き温度として、変更された第1目標往き温度よりも低く、かつ、目標戻り温度よりも第1所定温度差以上高い温度に変更するものである。
これにより、通常運転から予熱運転に移行する場合のように、第1目標往き温度が40℃以下の比較的低い温度に設定変更された場合でも、第1目標往き温度に応じて、自動的に第2目標往き温度を変更する。
また、通常運転から予熱運転に切り換えられる場合でも、往き温度を低下させ、かつ、戻り温度が往き温度に接近することを抑え、ヒートポンプサイクルの効率低下を防止することができる。また、この場合でも、循環ポンプの運転動力を削減することができる。
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、目標往き温度を第2目標往き温度に変更した後、第2所定時間経過すると、目標往き温度を第1目標往き温度に変更する制御と、目標往き温度を第1目標往き温度に変更した後、第1所定時間経過すると、目標往き温度を第2目標往き温度に変更する制御とを繰り返すものである。
これにより、目標往き温度が第1目標往き温度のときは、利用者が要望する温度の温水を供給し、目標往き温度が第2目標往き温度のときは、往き温度を低下させ、かつ、戻り温度が往き温度に接近することを抑える。
このため、利用者の要望に対応した温水供給が可能となると共に、目標往き温度が第2目標往き温度のときは、ヒートポンプサイクルの凝縮温度を低下させ、効率低下を防止することができる。
第5の発明は、第1〜第4のいずれかの発明において、第1目標往き温度がより高い温度に変更された場合、あるいは、熱媒熱交換器との間で水熱媒を循環させる室内放熱器の数が増加した場合は、水熱媒の流量が最大となるように循環ポンプを制御し、往き温度を最大限に低下させる。
このため、目標往き温度がより高い温度に変更された場合や、水熱媒を循環させる室内放熱器の数が増加した場合のように、室内暖房負荷が急上昇した場合に、圧縮機の周波数の速やかな上昇を促し、利用者の要望に応じて室内放熱器を迅速に暖めることができる。
第6の発明は、第1〜第5のいずれかの発明において、第2目標往き温度と目標戻り温度を、人体の皮膚の温受容器が感受する温覚刺激が優位な、34℃以上45℃以下の第1温度範囲から選択するようにしている。
このため、特に室内放熱器が床暖房パネルの場合に、触って冷たい、あるいは触って熱いと不快を感じることがない範囲で、凝縮温度の上昇を防いで、ヒートポンプサイクルの
効率の低下を防止することができると共に、循環ポンプの運転動力を削減することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図5は、本発明の実施の形態におけるヒートポンプ温水暖房機100の構成図である。
ヒートポンプ温水暖房機100は、ヒートポンプサイクル110、水熱媒サイクル120、そして制御部130とで構成される。
ヒートポンプサイクル110は、気体状態の冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧の冷媒を吐出する圧縮機111、室外空気から採熱する空気熱交換器112、室外空気を強制的に空気熱交換器112に導入する空気熱交換器ファン113、冷媒の流量を調整する冷媒流量調整弁114、そして、冷媒と水熱媒との熱交換を行う水熱媒熱交換器115で構成されている。
一方、水熱媒サイクル120は、水熱媒熱交換器115と接続され、水熱媒サイクル120内の水熱媒を循環させる循環ポンプ121、水熱媒を貯留するバッファタンク122、4台の室内放熱器125a〜125d、そして、個々の室内放熱器125への水熱媒供給を制御する開閉弁123で構成されている。
ヒートポンプサイクル110の冷媒と水熱媒サイクル120の水熱媒とは、互いに独立し、混合することはないが、水熱媒熱交換器115を介して熱交換可能な構成となっている。水熱媒熱交換器115には、二重管式熱交換器やプレート熱交換器が使用される。
また、直流電源によって駆動される循環ポンプ121は羽根車を有し、この羽根車の回転数をPWM制御することで、水熱媒サイクル120内の水熱媒の循環流量を変更することができる。
水熱媒サイクル120において、水熱媒熱交換器115の出口側には、水熱媒熱交換器115から室内放熱器125a〜125dに向かう水熱媒の往き温度Twoを計測する往き温度検知センサ126が設置されている。
また、水熱媒熱交換器115の入口側には、室内放熱器125a〜125dから水熱媒交換器115に戻る水熱媒の戻り温度Twiを計測する戻り温度検知センサ127が設置されている。
制御部130は、マイコン(図示せず)に組み込まれた制御プログラムで、室外温度、圧縮機111の吐出温度(ともに図示しない温度センサにより検知)、往き温度検知センサ126で検知した往き温度Two、戻り温度検知センサ127で検知した戻り温度Twiを取得し、圧縮機111の周波数、空気熱交換器ファン113の回転数、冷媒流量調整弁114の開度、使用する室内放熱器125a〜125dと接続した開閉弁123の開度、および、循環ポンプ121の回転数を制御する。
リモコン124と室内放熱器125a〜125dは、共に暖房対象となる部屋内に設置される。リモコン124は、4台接続して、室内放熱器125a〜125dを個別に制御するようにしても、2〜3台接続して、室内放熱器125a〜125dのうち数台ごとに制御するようにしても、1台接続して、室内放熱器125a〜125dの全てを制御する
ようにしてもよい。
リモコン124の操作により、ヒートポンプ温水暖房機100が稼動し、加熱された水熱媒が循環ポンプ121により室内放熱器125a〜125dに搬送され放熱することにより、部屋の暖房が行われる。
なお、室内放熱器125としては、床に埋め込まれ輻射暖房を行う床暖房パネル、室内壁面に設置され輻射暖房を行うラジエータ、送風機を使い室内放熱器125の熱を強制的に部屋内に供給するファンコンベクターなどを利用する。
ヒートポンプ温水暖房機100の利用者は、リモコン124において第1目標往き温度Twot1を設定する。
あるいは、暖房強度レベル、例えば、室内放熱器125に床暖房パネルを用いる場合は床面温度の高さレベルを設定する。この場合、制御部130は、利用者が設定した暖房強度レベルに応じて、第1目標往き温度Twot1を計算し保持する。
また、ヒートポンプ温水暖房機100の利用者は、リモコン124において、第2目標往き温度Twot2と目標戻り温度Twitを設定する。第2目標往き温度Twot2と目標戻り温度Twitは、必ずしも利用者が設定しなくてもよい。
次に、ヒートポンプ温水暖房機100の動作について説明する。
図1は、本発明の第1に実施の形態における制御部130の圧縮機111と循環ポンプ121に対する制御動作を説明したフローチャートである。
ヒートポンプ温水暖房機100を起動し、加熱した水熱媒を、室内放熱器125a〜125dへ一斉に搬送開始してからの、制御部130の制御動作について説明する。
利用者がリモコン124で運転開始操作(ステップS001)をすると、リモコン124は、運転開始指令とともに、利用者が設定した第1目標往き温度Twotを制御部130に送信する。制御部130は受信した第1目標往き温度Twotを保持する。
リモコン124が暖房強度レベルを制御部130に送信した場合は、制御部130は、受信した暖房強度レベルに応じた第1目標往き温度Twotを計算し、保持する(ステップS002)。
次に、ステップS003において、リモコン124は、利用者が設定した第2目標往き温度Twot2を制御部130に送信する。制御部130は受信した第2目標戻り温度Twot2を保持する。
利用者が、リモコン124において、第2目標往き温度Twot2を設定しない、あるいは、設定できない場合は、制御部130が自動的に第2目標往き温度Twot2を設定する。
さらに、ステップS004において、リモコン124は、利用者が設定した目標戻り温度Twitを制御部130に送信する。制御部130は受信した目標戻り温度Twitを保持する。利用者が、リモコン124において、目標戻り温度Twitを設定しない、あるいは、設定できない場合は、制御部130が自動的に目標戻り温度Twitを設定する。
人間の皮膚には、冷受容器と温受容器とで構成される温度受容器が存在する。一般的に、皮膚が触れる温度が32.5℃〜33.5℃のとき、冷・温受容器が受ける刺激が同程度となり、熱くも冷たくも感じない無感温度となる。34℃〜45℃では、皮膚の温受容器のみが刺激を受けて温かいと感じるが、36℃を超えると、その刺激の強さは温度上昇とともに低下する。また、45℃を越えると、皮膚の冷受容器も刺激されて熱いと感じるようになる(中山昭雄編「温熱生理学」理工学社出版(P.218−220)。
以上の知見を踏まえ、第2目標往き温度Twot2と目標戻り温度Twitの設定範囲について説明する。
室内放熱器125が十分に暖まった場合の往き温度は、室内放熱器125の表面の最も高い温度よりも若干高い程度となる。よって、第2目標往き温度Twot2は、皮膚の温受容器のみが刺激を受けて温かいと感じる34℃〜45℃の間が望ましく、さらに温水暖房機としての機能を考慮すると、43〜45℃とするのが最も望ましい。
一方、室内放熱器125が十分に暖まった場合の戻り温度Twiは、室内放熱器125の表面の最も低い温度よりも若干高い程度である。そこで、目標戻り温度Twitも、人間の皮膚の温受容器のみが刺激を受け、温かいと感じる34℃〜45℃とするのが望ましいが、ヒートポンプサイクルは、凝縮温度を下げたほうが高効率となるため、戻り温度Twiを、できるだけ低くするほうが有効である。
皮膚が触れる温度が36℃を超えると、皮膚の温受容器の刺激の強さは温度上昇とともに低下することも考慮すると、目標戻り温度Twitは、34℃〜36℃とすることが最も望ましい。
また、利用者が部屋を離れる場合などに行う余熱運転では、第1目標往き温度Twot1が低く(40℃以下)に設定される。この場合、最も望ましい第2目標往き温度Twot2である43〜45℃よりも、第1目標往き温度Twot1のほうが低い温度となる。
この場合は、第2目標往き温度Twot2を、第1目標往き温度Twot1よりも低い温度に変更する。例えば、第1目標往き温度Twot1が38℃のときは、第2目標往き温度Twot2を36℃とする。
これに伴い、第2目標往き温度Twotと、34〜45℃の範囲から選択される目標戻り温度Twitとの間の温度差が接近し、余熱運転中のヒートポンプサイクルの効率が悪化する恐れがある。上述にように、第2目標往き温度Twotが36℃と設定されている場合、目標戻り温度Twitの下限値は34℃となり、それらの温度差は2Kしかない。
このような場合は、目標往き温度Twot=36℃から、所定値、たとえば5K低い、31℃を目標戻り温度Twitとする。
なお、この所定値は、第1目標往き温度Twot1、あるいは第2目標往き温度Twot2ごとに予め定めておいてもよいし、リモコン124において、利用者が設定できるようにしてもよい。
第1目標往き温度Twot1、第2目標往き温度Twot2、目標戻り温度Twitを設定すると、制御部130は、まず、目標往き温度Twotを第1目標往き温度Twot1に設定し(ステップS005)、圧縮機111、空気熱交換器ファン113、冷媒流量調整弁114、循環ポンプ121の運転を開始する。
循環ポンプ121の回転数Fsに関しては、Fs=0から段階的に上げる起動時循環流量制御を行う。起動時循環流量制御は、循環ポンプ121の起動開始(ステップS006)から、所定時間、例えば10分経過するまで行われる。一般的には、該所定時間内に、循環ポンプ121の回転数Fsが最大回転数Fsmaxに達するよう、3〜5段階に分けて、回転数Fsを上昇させる(ステップS008)。
起動時循環流量制御を実施する理由は、ヒートポンプサイクル110起動直後に、循環ポンプ121の回転数Fsを急激に上げてしまうと、室内放熱器125に滞留していた冷えた水熱媒が水熱媒熱交換器115に大量に流れて、水熱媒熱交換器115におけるヒートポンプサイクル110側の冷媒凝縮温度の上昇が遅れ、室内放熱器125の温度上昇に時間を要する恐れがあり、これを避けるためである。
上記の起動時循環流量制御と同時に、圧縮機111の周波数Fcの制御も行う。この制御の最も基本的な手法は、往き温度Twoが目標往き温度Twotとなるように、圧縮機111の周波数Fcの調整を行うP制御(比例制御)である。
圧縮機111の周波数FcのP制御(比例制御)では、往き温度Twoと目標往き温度Twotとの温度差Two−Twotに、比例ゲインKp1を乗じたKp1×(Two−Twot)を、圧縮機111の周波数Fcを修正する値とする(ステップS007とステップS008)。
比例ゲインKp1の値は、次のような効果が出るよう、負の値をとる。すなわち、Two−Twot>0のときは、圧縮機111の周波数Fcを低下させて、水熱媒熱交換器115において水熱媒を加熱する熱量QEを低下させる。逆に、Two−Twot<0のときは、圧縮機111の周波数を上昇させ、熱量QEを上昇させる。
圧縮機111の周波数Fcの制御方法としては、P制御の替わりに、いわゆるPI制御を用いてもよい。
PI制御では、往き温度Twoと目標往き温度Twotとの温度差Two−Twotの時間積分に積分ゲインKi1を乗じたKi1×∫(Two−Twot)dtと、P制御(比例制御)のKp1×(Two−Twot)との和を用いて、圧縮機111の周波数を修正する。
P制御では、往き温度Twoの変化がなくなった状態(定常状態)でも、往き温度Twoと目標往き温度Twotとの間に、残留偏差(オフセット)が生じる可能性がある。
しかし、比例ゲインKpと積分ゲインKiとを適切に設定したPI制御を用いると、往き温度Twoを目標往き温度Twotに確実に収束させることができる。
なお、制御部130は、起動時循環流量制御を実施中、空気熱交換器ファン113の回転数と、冷媒流量調整弁114の開度も、それぞれ制御する。
たとえば、空気熱交換器ファン113の回転数は、圧縮機111の周波数Fcに応じて制御し、冷媒流量調整弁114の開度は、目標往き温度Twotに応じて制御する。
さて、起動時循環流量制御が所定時間(たとえば10分)経過して終了すると、循環ポンプ121の回転数Fsは最大回転数に達している。
この時点から、制御部130は、往き温度Twoの変化量ΔTwo、および戻り温度Twiの変化量ΔTwiが、それぞれ、数3、数4を満たしているかどうかの監視を開始する(ステップS013とステップS014)。
なお、数3におけるε1は、往き温度許容変化量、数4におけるε2は、戻り温度許容変化量を示し、それぞれの値は、たとえば、0.5Kとする。
往き温度Twoの変化量ΔTwo、および戻り温度Twiの変化量ΔTwiは、現在の計測値と、現在から所定時間(たとえば5分)前の計測値との差としてもよいし、所定時間内(たとえば5分)の、それぞれの計測値の最大値から最小値を引いた値を用いても良い。
数3と数4とを同時に満たさない場合は、ステップS009とステップS010の処理、すなわち、圧縮機111の周波数Fcの制御を行う。
逆に、数3と数4とを同時に満たす場合には、ヒートポンプ温水暖房機100の運転状態は、定常状態になっているとみなし、ステップS015に移行し、往き温度Twoが目標往き温度Twotに達しているかどうかを判断する。
ステップS015では、往き温度Twoと目標往き温度Twotとの差が数5を満たしているかどうかを調べる。数5において、ε3は往き温度許容誤差であり、この値は、たとえば、0.3Kとする。
ステップS015において、数5を満たさない場合は、室内放熱器125が放熱している部屋が、十分に暖まっていない可能性があるため、ステップS009とステップS010の処理、すなわち、圧縮機111の周波数Fcの制御を継続する。
ステップS013〜S015において、数3〜数5を満たし、室内放熱器125が放熱している部屋が、十分に暖まっていると判断した場合は、ステップS016、S017に移行して、目標往き温度Twotを、第1目標往き温度Twot1よりも低い第2目標往き温度Twot2に変更する。
そして、これ以降、目標往き温度が第2目標往き温度となるよう、ステップS009とステップS010において、圧縮機111の周波数Fcの制御が行われる。
なお、室内放熱器125が放熱している部屋が十分に暖まっているかどうかを判定する(ステップS013〜S015)前に、利用者が第1目標往き温度Twot1を変更したかどうかを監視するステップを設けている(ステップS011)。
もし、第1目標往き温度Twot1が変更された場合は、今の目標往き温度Twotが、第1目標往き温度Twot1であるか、第2目標往き温度Twot2であるかに関わら
ず、目標往き温度Twotは新しい第1目標往き温度Twot1に更新される(ステップS012)。
このため、目標往き温度Twotが、古い第1目標往き温度Twot1、あるいは、第2目標往き温度Twot2となり、数3〜数5を満たしている状態であっても、第1目標往き温度Twot1が変更されると、ステップS015において、数5を満たさないと判断される。
すると、ステップS009とステップS010の処理に移行し、往き温度Twotが新しい第1目標往き温度Twot1となるまで、圧縮機111の周波数Fcの制御が行われる。
さて、制御部130は、目標往き温度Twotが第2目標往き温度Twot2の状態で、ステップS013〜S015で数3〜数5を満たしていると判断すると、戻り温度Twiが目標往き温度Twitとなるように、循環ポンプ121の回転数Fsの制御を行う。この制御の最も基本的な手法は、循環ポンプ121の回転数Fsの調整を行うP制御(比例制御)である。
循環ポンプ121の回転数Fsの調整を行うP制御(比例制御)では、戻り温度Twiと目標戻り温度Twitとの温度差Twi−Twitに、比例ゲインKp2を乗じたKp2×(Twi−Twit)を、循環ポンプ121の回転数Fsを修正する値とする(ステップS018とステップS019)。
比例ゲインKp2の値は、次のような効果が出るよう、負の値をとる。すなわち、Twi−Twit>0のときは、循環ポンプ121の回転数Fsを低下させ、往き温度Twoとの温度差を拡大させることでTwiを下げる。逆に、Twi−Twit<0のときは、循環ポンプ121の回転数Fsを上昇させ、往き温度Twoとの温度差を縮小させることでTwiを上げる。
循環ポンプ121の回転数Fsの制御方法としては、P制御の替わりに、いわゆるPI制御を用いてもよい。PI制御では、戻り温度Twiと目標戻り温度Twitとの温度差Twi−Twitの時間積分に積分ゲインKi2を乗じたKi2×∫(Twi−Twit)dtと、P制御(比例制御)のKp2×(Twi−Twit)との和を用いて、循環ポンプ121の回転数Fsを修正する。
P制御では、戻り温度Twiの変化がなくなった状態(定常状態)でも、戻り温度Twiと目標戻り温度Twitとの間に、残留偏差(オフセット)が生じる可能性がある。しかし、比例ゲインKp2と積分ゲインKi2とを適切に設定したPI制御を用いると、戻り温度Twiを目標戻り温度Twitに確実に収束させることができる。
図2に、ヒートポンプ温水暖房機100が起動後、往き温度Twoと戻り温度Twiとがほぼ一定値になり、かつ、往き温度Twoが目標往き温度Twotに達してからの、圧縮機111の周波数Fcと循環ポンプ121の回転数Fsの制御の様子と、これらの制御に伴う、往き温度Twoと戻り温度Twiの時間変化の概要を示す。
なお、第1目標往き温度Twot1は50℃、第2目標往き温度Twot2は45℃、目標戻り温度Twitは35℃に設定されているものとする。
また、時刻T1では、目標往き温度Twotは第1目標往き温度Twot1(=50℃)であり、往き温度Twoは50℃、戻り温度Twiは43℃に達しており、時刻T1以
降は、室内放熱器125において放熱する熱量(熱負荷)は一定であるものとする。
時刻T1において、制御部130は、往き温度Twoと戻り温度Twiとがほぼ一定値になる定常状態となり、かつ、往き温度Twoが目標往き温度Twotに達したと判断すると(ステップS013〜ステップS015)、目標往き温度Twotを、第1目標往き温度Twot1(=50℃)から第2目標往き温度Twot2(=45℃)に変更する(ステップS016〜ステップS017)。
次いで、ステップS009〜S010に移行し、圧縮機111の周波数Fcの制御を開始する。
目標往き温度Twotが50℃から45℃と低くなったため、制御部130は、時刻T1以降、圧縮機111の周波数Fcを下げ始める。圧縮機111の周波数Fcが低下すると、これに比例して、水熱媒熱交換器115において水熱媒を加熱する熱量QEも減少する。室内放熱器125から戻る水熱媒の戻り温度Twiは、時刻T1後も数分間は、主にバッファタンク122と室内放熱器125が保有する10〜15L程度の水熱媒が戻ってくるため、変化しない。よって、まず往き温度Twoのみが低下する。
往き温度Twoは、目標往き温度Twot(=45℃)まで低下すると、圧縮機111の周波数Fcの低下が止まり、目標往き温度Twotで一度安定する。
一方、戻り温度Twiは、往き温度Twoが低下した水熱媒が、室内放熱器125において放熱し、バッファタンク122を通り、水熱媒熱交換器115に戻ってくるのにあわせて、低下し始める(時刻T2)。
戻り温度Twiが低下し始めると、往き温度Twoも、目標往き温度Twotからさらに低下し始める。制御部130は、低下する往き温度Twoを目標往き温度Twot(=45℃)に戻すため、圧縮機111の周波数Fcを上昇させ始める。
こうして、十分時間が経過した時刻T3では、室内放熱器125において放熱する熱量(熱負荷)が時刻T1以前と等しいため、圧縮機111の周波数Fcは、時刻T1以前と同じとなっている。すなわち、水熱媒熱交換器115において水熱媒を加熱する熱量QEは、時刻T1以前のそれと同じ状態となっている。
また、循環ポンプ121の回転数Fsも時刻T1以前から変化していないため、数1の関係により、時刻T3における往き温度Twoと戻り温度Twiとの温度差Two−Twiは、時刻T1以前の温度差7K(=50℃−43℃)と等しい。
時刻T3では、往き温度Twoが45℃になっているため、戻り温度Twiは38℃になっている。
実際は、水熱媒の流量一定のもとで水熱媒の温度が低下した時刻T3では、時刻T1以前に比べて、水熱媒と、室内放熱器125が暖める部屋の空気温度との温度差が小さくなり、単位面積当たりの放熱量が減ってしまう。
したがって、往き温度Twoを目標往き温度Twotとする制御下では、時刻T3の戻り温度Twiは、時刻T1以前よりも若干上昇することになる。
すなわち、時刻T3では、水熱媒熱交換器115において水熱媒を加熱する熱量QEは、時刻T1以前と比べて少なくてよく、圧縮機111の周波数Fcは時刻T1以前より若
干低い値で落ち着く。
時刻T3にて、制御部130は、往き温度Twoと戻り温度Twiとがほぼ一定値になる定常状態となり、かつ、往き温度Twoが目標往き温度Twotに達したと判断すると(ステップS013〜ステップS015)、目標往き温度Twotが第2目標往き温度(=45℃)となっているため(ステップS016)、循環ポンプ121の回転数Fsの回転数を制御し始める(ステップS018とステップS019)。
時刻T3における戻り温度Twi(=38℃)は、目標戻り温度Twit(=35℃)よりも高いため、戻り温度Twiを下げるために、循環ポンプ121の回転数Fsを下げる。
この時点では、まだ圧縮機111の周波数Fcは制御していないため、水熱媒熱交換器115において水熱媒を加熱する熱量QEは変わらない。
よって、循環ポンプ121の回転数Fsのみが低下し、水熱媒の循環流量MEが低下することになり、数1の関係より、往き戻り温度差Two−Twiは拡大する。10〜15Lの水熱媒を保有する、バッファタンク122と室内放熱器125から戻る水熱媒の温度Twiの変化は遅いため、まずは往き温度Twoが急上昇しはじめる。
なお、この往き温度Twoの急上昇は、循環ポンプ121の回転数Fsの変化量に比例する。この変化量があまり大きいと、往き温度Twoの上昇が2〜3K以上となる。特に室内放熱器125に床暖房パネルを使用する場合、床面の温度の変化が大きくなり、利用者の快適性が損なわれる可能性がある。
したがって、循環ポンプ121の回転数Fsの変化量には上限値を設け、往き温度Twoの上昇を抑えることが望ましい。その上限値は、たとえば、現在の循環ポンプ121の回転数Fsの10〜20%に設定する。
往き温度Twoが急上昇すると、ステップS013で数3を満たさなくなるため、圧縮機111の周波数Fcの制御(ステップS009とS010)に移行する。
そして、制御部130は、往き温度Twoを目標往き温度Twotに戻すために、圧縮機111の周波数Fcを落とす。この結果、往き温度Twoの上昇は止まり、逆に下降に転じる。
ところが、室内放熱器125で放熱する熱量(熱負荷)は一定であるため、圧縮機111の周波数Fcを落とした影響を受けて、往き温度Twoが目標往き温度Twotを下回ってしまうようになる。そこで、制御部130は、往き温度Twoを目標往き温度Twotに戻すために、再度、圧縮機111の周波数Fcを上げる(ステップS007とS008)。
一方、戻り温度Twiは、上述したような、往き温度Twoの急上昇の影響を受けて細かい変化をするが、数分単位のスパンで見ると、循環ポンプ121の回転数Fsが低下したことによる、往き戻り温度差Two−Twiを拡大させようとする効果と、往き温度Twoを目標往き温度Twotに戻そうとする圧縮機111の周波数Fcの制御の影響を受けて、徐々に低下する。
こうして、十分時間が経過した時刻T4では、圧縮機111の周波数Fcは、時刻T3以前と同じとなり、循環ポンプ121の回転数Fsのみが低下している。そして、再び、
往き温度Twoと戻り温度Twiとがほぼ一定値となり、かつ、往き温度Twoが目標往き温度Twot(=45℃)に達した状態となる。
ただし、戻り温度Twiは、時刻T3の38℃よりも目標戻り温度Twit(=35℃)に近い値になる。
制御部130は、時刻T4において、戻り温度Twiが、時刻T4よりもさらに目標戻り温度Twit(35℃)に近い温度となるように、再び、循環ポンプ121の回転数Fsを制御する。
以上のように、制御部130は、ヒートポンプ温水暖房機100が起動して、起動時循環流量制御(ステップS003)で水熱媒の循環流量を徐々に上げて、ヒートポンプサイクル110を安定させた後、まず、往き温度Twoと戻り温度Twiとがほぼ一定値になり、かつ、往き温度Twoが利用者が設定した第1目標往き温度Twot1に達するまで、圧縮機111の周波数Fcの制御のみを行う。
往き温度Twoと戻り温度Twiとがほぼ一定値になり、かつ、往き温度Twoが目標往き温度Twotに達すると、圧縮機111の周波数Fcはほとんど変化しない状態となる。
制御部130は、この状態になると、室内放熱器125が放熱する部屋が十分に暖まったと判断し、目標往き温度Twotを、利用者が設定した第1目標往き温度Twot1よりも低い第2目標往き温度Twot2に変更する。第2目標往き温度は、人体の皮膚の温受容器が感受する温覚刺激が優位な、34℃以上45℃以下の温度範囲から選択するため、利用者が寒くて不快と感じることはない。
そして、目標往き温度Twotが第2目標往き温度Twot2のもとで、再度、往き温度Twoと戻り温度Twiとがほぼ一定値になり、かつ、往き温度Twoが目標往き温度Twotに達し、圧縮機111の周波数Fcはほとんど変化しない状態となると、戻り温度Twiが目標戻り温度Twitとなるように、循環ポンプ121の回転数Fsの制御を行う。目標戻り温度Twitも、人体の皮膚の温受容器が感受する温覚刺激が優位な、34℃以上45℃以下の温度範囲から選択するため、利用者が寒くて不快と感じることはない。
このように、本実施の形態では、往き温度Twoと戻り温度Twiの、それぞれの値と時間変化を監視しながら、室内放熱器125が放熱する部屋が十分に暖まったと判断すると、目標往き温度Twotを、利用者が設定した第1目標往き温度Twot1よりも低い第2目標往き温度Twot2に変更し、往き温度Twoを低下させる。
さらに、循環ポンプ121の回転数Fsの制御を行い、目標戻り温度Twitの上昇も抑える。よって、ヒートポンプサイクルの凝縮温度を確実に低下させ、その効率向上を実現するとともに、循環ポンプの運転動力を削減することができる。
また、制御部130は、循環ポンプ121の回転数Fsの制御を、比較的短い周期で制御する必要のある圧縮機111の周波数Fcがほとんど変化しない状態でのみ行う。したがって、循環ポンプ121の回転数Fsの制御は、圧縮機111の周波数Fcの制御の影響を受けて不安定に陥ることはなく、制御安定性にも優れたヒートポンプ温水暖房機を提供することが可能となる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における、制御部130の、圧縮機111、および、循環ポンプ121に対する制御動作を説明したフローチャート図である。なお、本実施の形態において、ヒートポンプ温水暖房機100の構成は図5と同じであるため、その構成要素の説明は省略する。
以下、第1の実施の形態で説明した、図2における時刻T4の状態以降の動作について、図1のフローチャートからの追加点であるステップS020〜S026の処理と併せて説明する。時刻T4では、目標往き温度Twotは第2目標往き温度Twot2となっており、循環ポンプ121の回転数Fsは、最大回転数Fsmaxよりも低い状態となっている。
本実施の形態では、目標往き温度Twotを第1目標往き温度Twot1に変更すると、目標往き温度Twotが第1目標往き温度Twot1となっている経過時間をカウントする第1タイマTm1が作動する(ステップS024)。
また、目標往き温度Twotを第2目標往き温度Twot2に変更すると、目標往き温度Twotが第2目標往き温度Twot2となっている経過時間をカウントする第2タイマTm2が作動する(ステップS021)。
したがって、目標往き温度Twotを第2目標往き温度Twot2に変更した時刻T1で、第2タイマTm2が作動し(ステップS021)、第1タイマTm1は0リセットされた状態になっている(時刻T1におけるステップS026の処理)。
制御部130は、まず、現在の目標往き温度Twotが第2目標往き温度Twot2かどうかを監視する(ステップS016)。時刻T4では、目標往き温度Twotが第2目標往き温度Twot2となっているため、ステップS021で、第2タイマTm2をカウントし、次いで、ステップS022で、第2タイマTm2が所定時間T2に達していないかどうかを判定する。
もし、第2タイマTm2が所定時間T2に達していない場合は、第1の実施の形態と同じく、往き温度Twoと戻り温度Twiの値と時間変化を調べ(ステップS013〜S015)、圧縮機111の周波数Fcの制御(ステップS009、S010)か、循環ポンプ121の回転数Fsの制御(ステップS018、S019)かを切り換える。
第2タイマTm2が所定時間T2を超えた場合は、目標往き温度Twotを、利用者が設定した第1目標往き温度Twot1に変更し(ステップS023)、第1タイマTm1と第2タイマTm2を共にリセットする(ステップS026)。
さらに、ステップS009、S010に移行し、目標往き温度Twotを第1目標往き温度Twot1に近づけるべく、圧縮機111の周波数Fcの制御を行う。
目標往き温度Twotが第1目標往き温度Twot1に変更された後は、ステップS024にて、第1タイマTm1がカウントされる。
そして、ステップS025において、第1タイマTm1が所定時間T1に達していないかどうかを調べ、第1タイマTm1が所定時間T1に達していない場合は、第1の実施の形態と同じく、往き温度Twoと戻り温度Twiの値と時間変化の状態より、圧縮機111の周波数Fcの制御(ステップS009、S010)を行うか、循環ポンプ121の回転数Fsの制御(ステップS018、S019)を行うかを選択する。
ステップS025において、第1タイマTm1が所定時間T1を超えた場合は、目標往き温度Twotを、再度、第2目標往き温度Twot2に変更し(ステップS017)、第1タイマTm1と第2タイマTm2を共にリセットする(ステップS026)。
さらに、ステップS009、S010に移行し、目標往き温度Twotを第2目標往き温度Twot2に近づけるべく、圧縮機111の周波数Fcの制御を行う。
なお、上述したような、目標往き温度Twotの切り換えの判断を行う前に、利用者が第1目標往き温度Twot1を変更したかどうかを監視するステップを設けている(ステップS011)。
もし、第1目標往き温度Twot1が変更された場合は、今の目標往き温度Twotが、第1目標往き温度Twot1であるか、第2目標往き温度Twot2であるかに関わらず、目標往き温度Twotは新しい第1目標往き温度Twot1に更新し(ステップS012)、第1タイマTm1と第2タイマTm2を共にリセットする(ステップS020)。
利用者が第1目標往き温度Twot1を変更した場合、第1タイマTm1と第2タイマTm2を共にリセットするため、ステップS016、S025、S015を通って、圧縮機111の周波数Fcの制御(ステップS009、S010)に移行する。
また、所定時間T1とT2は、目標往き温度Twotを切り換えてから、圧縮機111の周波数Fcと、循環ポンプ121の回転数Fsとがほとんど変化しない状態に落ち着くまでの時間、たとえば、20〜40分程度が望ましい。この所定時間T1とT2は、リモコン124で利用者が設定できるようにしても構わない。
以上のように、本実施の形態では、目標往き温度Twotを、利用者が設定した第1目標往き温度Twot1とする運転と、第1目標往き温度Twot1よりも低い第2目標往き温度Twot2とする運転とを所定時間ごとに繰り返す。
よって、目標往き温度Twotが第2目標往き温度Twot2のときは、第1の実施の形態と同様に、往き温度Twoを低下させ、戻り温度が往き温度に接近することを抑えて、ヒートポンプサイクルの効率低下を防止することができる。
さらに、所定時間ごとに目標往き温度Twotを第1目標往き温度に戻すので、利用者は、往き温度Twoが低下していることに気が付きにくくなるという効果を有する。
(実施の形態3)
図4は、本発明の第2の実施の形態における、制御部130の、圧縮機111、および、循環ポンプ121に対する制御動作を説明したフローチャート図である。
なお、本実施の形態において、ヒートポンプ温水暖房機100の構成は図5と同じであるため、その構成要素の説明は省略する。
以下、水熱媒を供給する室内放熱器125の数が増加した場合や、利用者が第1目標往き温度Twot1を上げた場合など、熱負荷が増加した場合の動作について、図1のフローチャートからの追加点であるステップS030、S031、S032の処理と併せて説明する。
起動時循環流量制御が所定時間(たとえば10分)経過して終了し、循環ポンプ121
の回転数Fsが最大回転数Fsmaxに達すると、制御部130は、利用者がリモコン124の操作により、水熱媒を供給する室内放熱器125の数を増加させたかどうかを監視し始める(S030)。
利用者が、水熱媒を供給する室内放熱器125の数を増加させたと判断した場合には、ステップS032に移り、循環ポンプ121の回転数Fsを最大回転数Fsmaxとする。
一方、水熱媒を供給する室内放熱器125の数が同じ、あるいは減った場合には、ステップS011に移り、第1目標往き温度Twot1が変更されていないかどうかを判断する。
もし、第1目標往き温度Twot1が変更されている場合は、ステップS012にて、目標往き温度Twotを新しい第1目標往き温度Twot1に置き換える。
さらに、ステップS031にて、変更後の第1目標往き温度Twot1が、変更前の第1目標往き温度Twot1よりも高いと判断した場合は、ステップS032に移り、循環ポンプ121の回転数Fsを最大回転数Fsmaxとする。
ステップS032において、循環ポンプ121の回転数Fsが最大回転数Fsmaxとなると、水熱媒の循環流量が最大となり、往き温度Twoと戻り温度Twiとの温度差は、数1の関係式に基づき、小さくなる。
水熱媒の循環流量が最大となってから数10秒間は、バッファタンク122の水熱媒が水熱媒熱交換器115に流入するため、戻り温度Twiに大きな変化はない。したがって、往き温度Twoのみが低下することになる。
水熱媒を供給する室内放熱器125の数が増える、あるいは、目標往き温度Towtが高く設定変更され、水熱媒の循環流量が最大となると、次の制御ループでは、ステップS013〜S015のいずれかを満たさなくなり、ステップS009およびステップS010の処理に移行する。
往き温度Twoが低下し、目標往き温度Twotと往き温度Twoとの温度差が大きくなっているため、P制御(比例制御)あるいはPI制御を用いれば、圧縮機111の周波数Fcは速やかに上昇する。
なお、ステップS011において、第1目標往き温度Twot1が変更されていないと判断した場合、あるいは、ステップS031において、第1目標往き温度Twot1が低く設定変更されたと判断した場合は、ステップS013〜S015に移行し、往き温度Twoと戻り温度Twiの値と時間変化を調べる。
第1目標往き温度Twot1が低く設定変更されたと判断した場合は、ステップS015において数5の関係が成立しなくなるため、ステップS009およびステップS010の処理に移行し、新しい目標往き温度Twotになるように、圧縮機111の周波数Fcは低下する。
一方、第1目標往き温度Twot1が変更されていないと判断した場合の、ステップS013以降の処理は、実施の形態1と同様である。
以上のように、本実施の形態によれば、利用者が、リモコン124により、水熱媒を供
給する室内放熱器125の数を増加させたり、第1目標往き温度Twot1を高く設定変更させたりして、急に熱負荷が増加した場合には、水熱媒の流量が最大となるように、循環ポンプ121を制御する。
水熱媒の流量を最大にすると、往き温度Twoが最大限に低下するので、圧縮機の周波数の速やかな上昇を促し、利用者の要求に見合うように室内放熱器を迅速に暖めることができる。