JP5742689B2 - 電解処理装置、及び該処理装置を用いたモールドの製造方法 - Google Patents
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Description
基材の表面を処理する際は、例えば図12に示すように、直方体状の処理槽70の下部に設置された供給管71から電解液等の処理液L’を処理槽70に供給し、多孔板72によって処理槽70内の処理液L’の流動を調整しつつ、処理槽70の上部から処理液L’をオーバーフローさせながら、円柱状の基材Aを処理槽70内の処理液L’に浸漬させて表面処理を行うのが一般的である。
このめっき処理装置によれば、ポンプによってめっき液をめっき槽へ導入させ、多孔管の吐出口よりめっき槽上方へ吐出させることで、めっき槽内のめっき液に流動が与えられるとともに、多孔間の上部の多孔板によってめっき液の流動を均一化できるとしている。
このような傾向は、図12に示すように、基材Aが長尺な形状の場合に起こりやすく、長手方向の長さが長くなるほど顕著であった。かかる理由は以下のように考えられる。
このインプリント法で用いるモールドを製造する方法としては、例えば円柱状のアルミニウム基材を電解液中で陽極酸化し、アルミニウム基材の周面に複数の細孔(凹部)を有する陽極酸化アルミナを形成する方法が知られている。
陽極酸化によって基材表面に形成される細孔の深さは、処理中の温度に影響を受けやすい。従って、電解液や基材表面に温度斑が生じると、場所によって細孔の深さにバラツキがあるモールドが得られる場合がある。こうしたモールドを用い、該モールドの表面に形成された微細凹凸構造をインプリント法にて転写すると、場所によって凸部の高さにバラツキがある、すなわち、反射率にバラツキがある物品となってしまう。
または、前記電極板は、前記処理槽本体に浸漬された基材を介して、前記オーバーフロー部に対向する位置にのみ配置されてもよく、該電極板の電解液に接触している面積と、前記基材の電解液に接触している面積との比が1:1以下であることが好ましい。
さらに、前記基材の中心軸を回転中心として、該基材を回転させる回転手段を具備することが好ましい。
また、前記回転手段は、電解液供給部から供給された電解液がオーバーフロー部へ流れる方向とは反対方向に、前記基材を回転させることが好ましい。
さらに、前記電解液を加熱または冷却して電解液の温度を調節し、電解処理直前および電解処理中には電解液を冷却する温度調節手段をさらに具備することが好ましい。
また、本発明のモールドの製造方法は、上述の電解処理装置を用いて、アルミニウム基材を陽極酸化処理してモールドを製造することを特徴とする。
また、本発明の電解処理装置は、長尺な基材を処理する場合でも電解液の滞留を防止し、さらに電解液の使用量も抑制できる。
[処理槽]
本発明の処理槽は、円柱状の基材を電解液中で電解処理するためのものである。
図1は、本実施形態に係る処理槽10の一例を示す図であり、後述する電解液供給部側から見た側面図である。図2は、図1のI−I’線に沿う断面図である。
なお、図2には、図1に示す処理槽10を収容する外槽40を追加した。
また、本発明において、電解処理の対象となる基材の形状は円柱状であるが、図1,2に示すような中空状(円筒状)でもよいし、中空状でなくてもよい。本発明において、円柱状とは、円筒形状などの形状を含めて、全体としての形状が略円柱状のものをいう。
この処理槽10は、図2に示すように外槽40に収容されている。
処理槽本体11は、電解液Lを収容するものであり、該電解液L中に基材Aが浸漬する。
この例の処理槽本体11の底部11aの内面11a’は、処理槽本体11に浸漬された基材Aの周面(外周面)A’に沿うように、円弧状に湾曲している。底部11aの内面11a’が円弧状に湾曲していることで、後述する電解液供給部12から供給された電解液Lがオーバーフロー部13へとスムーズに流動できる。
なお、本発明において「円弧状」は真円状に限定されない。また、本発明において「湾曲している」とは、処理槽本体の底部の内面が、該処理槽本体の外側に突出するように湾曲していることである。
なお、底部11aの内面11a’の形状が半円形状の場合は、この半円の直径上の中心と基材Aの中心軸Pとが重なるように、基材Aを処理槽本体11内に配置するのが好ましい。
電解液や基材表面の温度斑は、主に電解液が処理槽内で滞留することで生じるが、基材と処理槽の内面の間隔が狭いと温度斑が生じる場合がある。これは、陽極酸化を行うと発熱により処理槽が加熱されやすく、この処理槽の熱によって処理槽近傍の基材表面が直接かつ不均一に温められ、温度斑が生じるものと考えられる。この傾向は、基材と処理槽の内面との距離が近いほど起こりやすいと考えられる。
なお、距離Dは、基材Aの半径(r)の2倍以下であることが好ましい。距離Dが基材Aの半径(r)の2倍を超えても、温度斑の防止効果は頭打ちとなるばかりか、処理槽本体11が大型となるため、電解液Lの使用量が多くなる。
電解液供給部12は、処理槽本体11に電解液Lを供給するものであり、図1に示すように、処理槽本体11の長手方向に沿うように、処理槽本体11の一方の側面11b上方に設けられている。これにより、処理槽本体11の上方から供給された電解液Lは、この処理槽本体11の内面形状に沿って後述するオーバーフロー部13へとスムーズに移動できる。よって、電解液Lが部分的に滞留するのを防止できる。
供給管12a内には、ポンプ(図示略)等によって電解液が送り込まれる。そして、供給管12a内に充満した電解液が、供給管12aの吐出口121aから吐出部12bに供給される。
吐出口121bは、吐出部12bの長手方向に沿って連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。
なお、基材Aの長手方向における電解液の流れが均一であれば、吐出部12bの長さW12bは長くする必要はない。
なお、図3(c)に示すように、吐出部12bの吐出口121bの延長線上に基材Aが位置していると、吐出部12bから吐出された電解液Lが基材Aの表面に当たり、該基材Aの表面付近で滞留が発生してしまい、循環効率が低下し、処理槽内の温度斑が発生しやすくなる傾向にある。
ここで、図3においては外槽40を省略した。
図2、3に示すオーバーフロー部13は、処理槽本体11から溢れる電解液Lを処理槽本体11の外へ排出するものであり、処理槽本体11の長手方向に沿うように、処理槽本体11の他方の側面11c上部に設けられている。
図示例のオーバーフロー部13は、処理槽本体11の一方の側面11bと他方の側面11cの高さを異ならせる、具体的には他方の側面11cを一方の側面11bよりも低くすることで形成されている。
以上説明した本発明の処理槽10は、電解液Lを処理槽本体11の一方の側面11b上方から供給し、他方の側面11cの上部から排出する。このとき、処理槽本体11の底部11aの内面11a’が円弧状に湾曲しているため、電解液Lが滞留することなくスムーズにオーバーフロー部13へと移動できる。
なお、電解液供給部12へ電解液Lを送り込む際はポンプ(図示略)等を用いるが、電解液Lは重力に従って電解液供給部12から送り出される。従って、本発明の処理槽10は、図12に示す従来の処理槽70のように、この処理槽70の下部に設けられた供給管71から、ポンプ73によって電解液L’を処理槽70の上方へ(すなわち、重力に逆らって)吐出させる場合に比べて、ポンプの圧力の影響を受けにくい。そのため、電解処理する基材Aが長くなり、処理槽本体11の長手方向の長さや電解液供給部12が長くなっても、電解液供給部12の両端において、ポンプから受ける電解液の圧力差が小さい。
特に、アルミニウム基材を陽極酸化処理する場合は、電解液や基材表面の温度斑を抑制することが重要となるが、本発明の処理槽10を用いれば、処理槽本体11内での電解液Lの滞留部が発生しにくいので、温度斑が生じにくい。よって、基材Aの外周面A’に形成される細孔の深さのバラツキが抑えられる。
なお、本発明の処理槽10を用いれば、電解液Lがスムーズに処理槽本体11内を流動するので、多孔板などの流動を調整する部材を設ける必要がない。
本発明の処理槽は図1,2に示す処理槽10に限定されない。例えば図1,2に示す処理槽10の電解液供給部12は一重の供給管12aと吐出部12bから構成されているが、供給管12aは多重管でもよい。また、処理槽本体11の長手方向に均一に電解液Lを供給できる形状であれば、電解液供給部12は管状の構造であってもよい。
孔13’は図4に示すように連続的でもよいし、断続的でもよい。
なお、図4においては処理槽本体11と孔13’と基材Aのみを示し、電解液供給部は省略した。
そのような場合には、図5に示すように、電解液Lが電解液供給部12側へと戻る流れを抑制するための邪魔板15をオーバーフロー部13近傍に設置するのが好ましい。電解液Lが電解液供給部12側へと戻るときは、主に処理槽本体11の液面近傍を流れるため、邪魔板15は液面から20〜30mm程度浸漬させればよい。
邪魔板15の材質は電解液Lによって腐食しにくいもので、かつ電解液Lの流れで邪魔板が変形しないような多少の剛性を有することが好ましく、例えばステンレスやポリ塩化ビニル(PVC)などが挙げられる。
なお、図5においては外槽40を省略した。
本発明の電解処理装置は、円柱状の基材を電解液中で電解処理する装置である。
図6は、本実施形態に係る電解処理装置1の一例を示す側断面図であり、図7(a)は図6のII−II’線に沿う断面図であり、図7(b)は図6示す電解処理装置に備わる処理槽10と電極板20の斜視図である。
電解処理装置1には、上述した本発明の処理槽10が備えられており、図7(a),(b)に示すように、電極板20は、この処理槽10の処理槽本体11の底部11aの内面11a’形状に沿うように湾曲した形状となっている。電極板20が湾曲した形状であることにより、電解液Lの流動が妨げられにくくなるため、電解液Lが滞留することなく、よりスムーズにオーバーフロー部13へと移動できる。
なお、図7(a)においては外槽40を省略した。また、図7(b)においては処理槽10の処理槽本体11およびオーバーフロー部13と、電極板20と、基材Aのみを示し、これ以外の電解処理装置1の構成部材は省略した。
さらに、端面11d,11eの下部側には、図6,図7(a)に示すように、回転手段30として、水平方向に軸方向を沿わせて基材Aを支持する支持軸31が設けられている。
支持軸31は、図6,図7(a)に示すように処理槽本体11の端面11d,11eにそれぞれ水平方向に並んで一対設けられ、各支持軸31は、処理槽本体11の端面11d,11eを貫通し、これら処理槽本体11の端面11d,11eに対して回転可能に支持されている。
特に、回転手段30は、図7(a)に示すように、処理槽10の電解液供給部12から処理槽本体11へ供給された電解液Lが、オーバーフロー部13へ流れる方向とは反対方向に、基材Aを回転させるのが好ましい。電解液Lの流れる方向と基材Aの回転方向が反対になることで、基材Aに対する表面付近での電解液Lの流れは相対的に速くなり、電解処理時に基材Aから発生した熱の移動が効率よく行える。電解液Lの流れる方向と基材Aの回転方向が同じである場合、基材A表面付近での電解液Lの流れは相対的に遅く、速度が無い状態では熱の移動が悪いため、処理槽10全体での電解液Lの温度上昇に繋がってしまう。
このような構造とすることにより、接触面積が大きく、また、回転した際の滑りの影響や摩耗の影響も軽減されるため、安定した電流供給が可能となる。
貯留槽50には電解液Lを加熱または冷却して電解液Lの温度を調節し、電解処理直前および電解処理中には電解液Lを冷却する温度調節手段53が設けられている。この例の温度調節手段53は、電解液Lを冷却する熱交換器53aと、電解液Lを加熱するヒータ53bとからなり、貯留槽50内で調温された電解液Lは、ポンプ52によって返送流路51を通って処理槽10の電解液供給部12から、処理槽本体11へ返送される。
なお、熱交換器53aとしては水、オイル等を熱媒とした熱交換器等が挙げられ、ヒータ53bとしては電気ヒータ等が挙げられる。どちらも電解液Lに浸漬させていても腐食などの問題が生じないよう、コーティングされたものが好ましい。
以上説明した本発明の電解処理装置1は、本発明の処理槽10を備える。よって、処理槽10の処理槽本体11内で電解液Lが滞留しにくい。
なお、貯留槽50から電解液Lを電解液供給部12へ返送する際はポンプ52を用いるが、電解液Lは重力に従って電解液供給部12から処理槽本体11へ送り出される。従って、本発明の電解処理装置1は、図12に示す従来の処理槽70のように、この処理槽70の下部に設けられた供給管71から、ポンプ73によって電解液L’を処理槽70の上方へ(すなわち、重力に逆らって)吐出させる場合に比べて、ポンプの圧力の影響を受けにくい。そのため、電解処理する基材Aが長くなり、処理槽本体11の長手方向の長さや電解液供給部12が長くなっても、電解液供給部12の両端において、ポンプから受ける電解液の圧力差が小さい。
特に、アルミニウム基材を陽極酸化処理する場合は、電解液や基材表面の温度斑を抑制することが重要となるが、本発明の電解処理装置1であれば、処理槽本体11内での電解液Lの滞留部が発生しにくいので、温度斑が生じにくい。よって、基材Aの外周面に形成される細孔の深さのバラツキが抑えられる。
なお、本発明の電解処理装置1であれば、電解液Lがスムーズに処理槽本体11内を流動するので、多孔板などの流動を調整する部材を処理槽10内に設ける必要がない。
本発明の電解処理装置は図6,7に示す電解処理装置1に限定されない。例えば図6,7に示す電解処理装置1では、電極板20が基材Aを挟むように配置され、かつ処理槽本体11の底部11aの内面形状に沿うように湾曲しているが、例えば図8に示すように、電極板20は前記処理槽本体11に浸漬された基材Aを介して、オーバーフロー部13に対向する位置にのみ配置されていてもよい。このとき、電極板20の電解液Lに接触している面積(接触面積)と、基材Aの電解液Lに接触している面積(処理面積)との比(接触面積:処理面積)が1:1以下となるように、電極板20が処理槽本体11中の電解液Lに浸漬されるのが好ましい。
電解処理時に基材Aと電極板20に流れる電流値は、基材Aの処理面積と電極板20の接触面積の比に比例する。電極板20の接触面積が基材Aの処理面積より大きいほど電流がより流れる。電流が多く流れると処理槽10内に発生するジュール熱(電流×電圧)が大きくなり、発熱量が増えてしまう。そのため、除熱するための装置の冷却能力が増大する。処理槽10内を均一な温度に保つのであれば、発生するジュール熱は低い方が好ましい。
電極板20の接触面積は基材Aの処理面積より小さくても問題ないが、小さくしすぎても最終的な電流値は基材Aの処理面積によって決まるため、電極板20を小さくしても電流値抑制の効果は頭打ちになる。そのため、流れる電流量を抑えるためには電極板20の接触面積と基材Aの処理面積との比は1:1以下が好ましい。
なお、図8においては外槽40を省略した。
また、上述した実施形態では、基材Aの両端部の内径側角部を面取りして、テーパ面aを形成し、通電部材34の外径側角部を面取りして、テーパ面34aを形成したが、基材Aの両端部の外径側角部を面取りし、通電部材34の内径側角部を面取りしてテーパ面を形成してもよい。
さらに、それぞれの通電部材34に形成されるテーパ面34aは、同一の形状である必要はなく、異なる形状であっても構わない。また、テーパ面34aは、通電部材34の少なくとも一方に形成される構成であっても構わない。
本発明の電解処理装置は、陽極酸化等の化成処理や、めっき等の皮膜処理など、基材の表面を電解処理する装置として用いることができるが、特にアルミニウム基材を陽極酸化する陽極酸化処理装置として好適である。
以下、本発明の電解処理装置を用い、アルミニウム基材を陽極酸化してモールドを製造する方法の一例について説明する。
なお、底部11aの内面11a’の形状が半円形状の場合は、この半円の直径上の中心と基材Aの中心軸Pとが重なるように、基材Aを設置するのが好ましい。
基材Aを回転させながら通電用シャフト33、通電部材34を介して、陽極となる基材Aと陰極となる電極板20に電圧を印加し、基材Aの陽極酸化を行う。
このとき、処理槽本体11の底部11aの内面11a’が円弧状に湾曲しているため、電解液Lのほぼ均一な流れが形成され、電解液Lが滞留することなくスムーズにオーバーフロー部13へと移動できる。
なお、電界液Lの流れる方向とは反対方向に基材Aを回転させるのが好ましい。
ここで、「PID制御」とは、制御対象の出力値と目標との偏差量を用い、比例制御、積分制御、微分制御の3つの制御を組み合わせることにより、出力値が短時間で目標値に到達するように調整する方法のことである。
しかし、処理槽本体11内が発熱し、貯留槽50で調温された電解液Lが処理槽本体11に届くまではタイムラグが発生してしまい、その間に処理槽本体11内では不要な温度上昇が発生し、基材Aの表面に形成する酸化皮膜の生成速度が変わり、均一な電解処理が行えなくなる場合がある。
基材Aとして用いられるアルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上がさらに好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した際に、不純物の偏析により可視光線を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で形成される細孔61の規則性が低下したりする。電解液としては、シュウ酸、硫酸等が挙げられる。
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
ある所定の周期で規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得るには、所定の周期に合った化成電圧をかける必要がある。例えば周期が100nmの陽極酸化アルミナの場合、化成電圧は30〜60Vが好ましい。所定の周期に合った化成電圧をかけない場合、規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
ある所定の周期で規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得るには、所定の周期に合った化成電圧をかける必要がある。例えば周期が63nmの陽極酸化アルミナの場合、化成電圧は25〜30Vが好ましい。所定の周期に合った化成電圧をかけない場合、規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
陽極酸化は、上述した電解処理装置1を用いて行う。条件は、図9(b)に示した酸化皮膜62を形成した際と同様な条件であればよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
陽極酸化は、上述した電解処理装置1を用いて行う。条件は、上述と同様な条件であればよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を転写して製造され光学フィルムの反射率低減効果は不十分である。
さらに、基材Aの外周面と処理槽本体の底部の内面との間に特定の大きさの空隙が形成されるように基材Aを処理槽本体11内に設置すれば、基材Aと処理槽本体11の間に位置する電解液Lが緩衝材の役割を十分に果たすことができる。その結果、陽極酸化時の発熱により処理槽本体11が加熱されても、基材Aが処理槽本体11によって直接温められるのを抑制できる。従って、基材の外周面の温度斑をより効果的に防止でき、深さのバラツキがより抑えられたロール状のモールドを製造できる。
図6に示す電解処理装置1を用い、中空円柱状のアルミニウム基材(純度:99.99%、長さ:1000mm、外径:200mm、内径:155mm)を陽極酸化処理した。
なお、電解処理装置1には、図2に示す処理槽10が備わり、中心軸Pから底部11aの内面11a’までの距離Dは400mmであった。
また、電解液Lの循環回数が3分に1回となる流量、かつ16℃に温度調節した電解液Lを処理槽10の処理槽本体11に供給した。
図10のグラフには、処理槽壁面から50mm離れた箇所の電解液温度を処理槽全域にて数点測定したときの、電解処理した時間(処理時間)と上昇温度との関係を示す。
一方、図11のグラフには、基材表面付近の電解液温度を基材の長手方向の数点にて測定したときの、温度差の最大値(最大温度差)と電解処理した時間(処理時間)との関係を示す。
図2に示す処理槽10の代わりに、図12に示す直方体状の処理槽70を用いた以外は、実施例1と同様にして中空円柱状のアルミニウム基材を陽極酸化処理した。図10,11に陽極酸化処理した際の電解液温度を示す。
しかし、本発明の処理槽および電解処理装置であれば、処理槽本体の底部の内面が基材の周面に沿うように円弧状に湾曲しているので、電解液の滞留部が発生しにくく、温度斑が生じにくい。
しかし、本発明の処理槽および電解処理装置であれば、処理槽本体の底部の内面が基材の周面に沿うように円弧状に湾曲しているので、電解液の滞留部が発生しにくく、基材表面の電解液温度が高くなるのを抑制できる。
このように、本発明の処理槽であれば、電解液の滞留を防止できるばかりか、電解液の使用量をも抑制できることが確認できた。
10 処理槽
11 処理槽本体
11a 底部
11a’ 内面
11b,11c 側面
12 電界液供給部
13 オーバーフロー部
20 電極板
30 回転手段
53 温度調節手段
A 基材
A’ 周面(外周面)
L 電解液
Claims (7)
- 円柱状の基材を電解液中で電解処理する電解処理装置において、
電解液を収容し、前記基材が浸漬する長尺な処理槽本体、処理槽本体に電解液を供給する電解液供給部、および処理槽本体から電解液を排出するオーバーフロー部を備えた処理槽と、前記処理槽本体に浸漬された電極板とを具備し、
前記処理槽本体の底部の内面は円弧状に湾曲し、
前記電解液供給部は、処理槽本体の長手方向に沿うように、処理槽本体の一方の側面上方に設けられ、
前記オーバーフロー部は、処理槽本体の長手方向に沿うように、処理槽本体の他方の側面上部に設けられていることを特徴とする電解処理装置。 - 前記電極板は、前記処理槽本体に浸漬された基材を介して、前記オーバーフロー部に対向する位置にのみ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電解処理装置。
- 前記電極板の電解液に接触している面積と、前記基材の電解液に接触している面積との比が1:1以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解処理装置。
- 前記基材の中心軸を回転中心として、該基材を回転させる回転手段を具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解処理装置。
- 前記回転手段は、電解液供給部から供給された電解液がオーバーフロー部へ流れる方向とは反対方向に、前記基材を回転させることを特徴とする請求項4に記載の電解処理装置。
- 前記電解液を加熱または冷却して電解液の温度を調節し、電解処理直前および電解処理中には電解液を冷却する温度調節手段をさらに具備することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電解処理装置。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の電解処理装置を用いて、アルミニウム基材を陽極酸化処理してモールドを製造する、モールドの製造方法。
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