JP5742317B2 - 流体噴射装置 - Google Patents

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Description

本発明は、流体噴射装置に関する。
流体噴射装置の一例として、ノズルから液体(例えば水)を連続的に高速噴射して、生体軟組織を切除(切開・剥離:dissect、あるいは破砕:debulk)する液体ジェットメスが医療に用いられている。この液体ジェットメスを用いる切除方式では、熱損傷がなく、組織選択性が高いという特徴があり、細血管や神経を温存できる。よって、この方式の治療は、腹部外科を中心に臨床応用されている。
しかし、上述した液体ジェットメスは、連続流を用いているので、液体の噴射量が多く、術野外への飛沫の飛散を伴う。このため医療従事者が感染の危険にさらされるおそれがあり、また、術野内の気泡発生や水分貯留のために視野の確保が難しい。
そこで、連続流ではなく、液体を間欠的に噴射する液体パルスジェットメスが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。これらの液体パルスジェットメスでは、液体を間欠的に噴射するので、液体が衝突する部分には瞬間的に衝撃圧が発生する。従って、このような液体パルスジェットメスでは少ない流量で、連続流の液体ジェットメスと同等以上の切除効果を得ることが可能である。なお、特許文献1、2は蒸気泡を発生させることによって液体を噴射するものであり、特許文献1では、電極からの放電によって蒸気泡を発生させており、特許文献2では、レーザーによって蒸気泡を発生させている。
特表2003−500098号公報 特開2003−111766号公報
従来の蒸気泡によるパルスジェットの発生手段では、蒸気泡によって押された流体が、ノズル方向に流れるのみでなく、流体の供給方向にも逆流してしまう。このため、ノズルから噴射される流体の速度や量が減少する(つまり噴射強度が低下する)という問題点があった。
そこで、本発明は、流体の噴射強度の向上を図ることを目的とする。
上記目的を達成するための主たる発明は、
流体を収容する流体室と、
前記流体室に収容された流体を噴射するノズルと、
所定方向において前記流体室と接続し、前記流体室に流体を供給する流体供給路と、
前記流体室内に気泡を発生させる気泡発生部材と、
前記流体室と前記流体供給路とを隔て、かつ、前記気泡発生部材を支持し、かつ、前記流体室と前記流体供給路とを連通する孔を少なくとも一つ有する隔壁部と、
を備え、
前記所定方向と直交する断面における前記孔の総断面積を、前記所定方向における前記孔の長さで除算した値が、前記断面における前記ノズルの断面積を、前記所定方向における前記ノズルの長さで除算した値よりも小さい
ことを特徴とする流体噴射装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
第1実施形態におけるウォータージェットメス100の構成を示す概略図である。 第1実施形態におけるウォータージェットメス100の先端部分の長手方向の断面構造を示す図である。 図2におけるA−A断面図である。 図4A及び図4Bは、ウォータージェットメス100の動作についての説明図である。 孔に液体が流れるときの作用を説明するための図である。 第2実施形態におけるウォータージェットメス200の構成を示す概略図である。 第2実施形態におけるウォータージェットメス200の先端部分の長手方向の断面構造を示す図である。 図7におけるA−A断面図である。 ウォータージェットメス200を内視鏡に適用した場合を示す概略図である。 ウォータージェットメス200の隔壁部材240の変形例の説明図である。 ウォータージェットメス200の保護パイプ250の変形例の説明図である。
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
流体を収容する流体室と、
前記流体室に収容された流体を噴射するノズルと、
所定方向において前記流体室と接続し、前記流体室に流体を供給する流体供給路と、
前記流体室内に気泡を発生させる気泡発生部材と、
前記流体室と前記流体供給路とを隔て、かつ、前記気泡発生部材を支持し、かつ、前記流体室と前記流体供給路とを連通する孔を少なくとも一つ有する隔壁部と、
を備え、
前記所定方向と直交する断面における前記孔の総断面積を、前記所定方向における前記孔の長さで除算した値が、前記断面における前記ノズルの断面積を、前記所定方向における前記ノズルの長さで除算した値よりも小さい、
ことを特徴とする流体噴射装置。
このような流体噴射装置によれば、所定方向(流体の流れる方向と略平行な方向)と直交する断面における孔の総断面積を、前記所定方向における孔の長さで除算した値が、前記断面におけるノズルの断面積を、前記所定方向におけるノズルの長さで除算した値よりも小さくなっているため、気泡が発生したとき孔側よりもノズル側に流体が流れやすくなる。すなわち、孔には流体が流れ難くい(逆流が起こりにくい)ため、気泡を発生させるエネルギーをノズルからの流体の噴射に効率的に利用できる。よって、流体の噴射強度の向上を図ることができる。
かかる流体噴射装置であって、前記気泡発生部材は、流体にレーザーを射出することによって気泡を発生させる光ファイバーであり、前記光ファイバーは、レーザーの射出面が前記流体室内に突出するように前記隔壁部に支持されていることが望ましい。
このような流体噴射装置によれば、レーザーの射出面と隔壁部とを離すことができるため、気泡発生時に隔壁部がダメージを受けにくくすることができる。
かかる流体噴射装置であって、前記流体室と前記流体供給路との接続面よりも前記ノズルに近い所定位置から、少なくとも前記隔壁部までの領域を前記レーザーから保護する保護部を有することが望ましい。
このような流体噴射装置によれば、レーザーが照射される領域を保護部によって保護することができるため、流体室を形成する材料として、レーザーによるダメージを受けやすいものを使用することができる。
かかる流体噴射装置であって、前記断面における前記ノズルの断面積を、前記所定方向における前記ノズルの長さで除算した値は、前記断面における前記孔の総断面積を、前記所定方向における値の定数倍よりも大きく、前記定数は100以下の値であることが望ましい。
このような流体噴射装置によれば、流体供給路の流路抵抗を増加しすぎないようにすることができ、安定して流体を流体室に供給できる。
以下の実施形態では、流体噴射装置として、流体の一種である液体(例えば水)を噴射する液体ジェットメス(以下、ウォータージェットメスともいう)を例に挙げて説明する。
===第1実施形態===
<ウォータージェットメスの構成について>
図1は、第1実施形態におけるウォータージェットメス100の構成を示す概略図である。第1実施形態のウォータージェットメス100は、直接把持して患部の切除を行うものである。また、図2は、第1実施形態におけるウォータージェットメス100の先端部分の長手方向の断面構造を示す図であり、図3は、図2におけるA−A断面図である。
図1に示す本実施形態のウォータージェットメス100は、Yコネクター110と、液体供給パイプ120、先端パイプ130、隔壁部材140を有している。
Yコネクター110は、内部が空洞の筒体であり、第一管部111と、第二管部112と、光ファイバー固定部材113と、チューブ固定部材114とを有している。
第一管部111は、Yコネクター110の基部を構成する。
第二管部112は、第一管部111の途中位置から分岐して設けられている。そして、第二管部112の開口には送液ユニット20から柔軟な接続チューブ21が接続されている。なお、接続チューブ21は、チューブ固定部材114によって第二管部112の開口に固定されている。これにより、接続チューブ21内の流路は、Yコネクター110の内部の空洞と連通している。そして、Yコネクター110には、送液ユニット20から接続チューブ21を通して液体(本実施形態では水)が供給される。
また、Yコネクター110の第一管部111の一端側(図の右側)の開口には、例えば石英系の光ファイバー31が光ファイバー固定部材113を貫通して通されている。なお、光ファイバー31と光ファイバー固定部材113の間、及び、光ファイバー固定部材113とYコネクター110の間は、それぞれ液体が漏れないように密封されている。光ファイバー31は、Yコネクター110の外部に延伸してレーザー源30と接続されている。なお、本実施形態では、レーザー源30としてホルミヤグレーザー(Ho−YAGレーザー:波長2.1μm)のパルス光を供給するものを用いている。
Yコネクター110の第一管部111の他端側(図の左側)には液体供給パイプ120が接続されている。図2に示すように、液体供給パイプ120の端部にはフランジ部を持つ隔壁部材140が挿入固定されている。さらに、隔壁部材140は、先端パイプ130と接続されている。なお、液体供給パイプ120、隔壁部材140、先端パイプ130は、それぞれ外周部が溶接されることによって固定されている。
液体供給パイプ120は、Yコネクター110から先端パイプ130に液体を供給するものであり、内部に液体の流路となる供給流路121(流体供給路に相当する)を有している。
隔壁部材140(隔壁部に相当する)は、液体供給パイプ120と先端パイプ130の間を隔てるように設けられ、その中心には光ファイバー31が貫通して通されている。そして、隔壁部材140は、この状態(光ファイバー31の先端31Aが、液体室131内に突出した状態)で、光ファイバー31を支持している。なお、光ファイバー31の先端31Aは、パルスレーザーの射出面に相当する。また、隔壁部材140において光ファイバー31の外側には、液体供給パイプ120の供給流路121と、先端パイプ130の液体室131(後述する)とを連通するキャピラリー流路141(孔に相当する)が設けられている。図に示すように、本実施形態では、キャピラリー流路141は、光ファイバー31の外側(図において光ファイバー31よりも上側と下側)に2つ設けられている。
先端パイプ130は、液体を収容する液体室131(流体室に相当する)を有している。この液体室131には、Yコネクター110から、液体供給パイプ120の供給流路121、隔壁部材140のキャピラリー流路141を介して供給された液体が収容される。さらに、先端パイプ130の端部(先端部)には、液体室131に収容された液体を噴射するノズルNzを有するノズル部材132が固着されている。
<ウォータージェットメスの動作について>
図4A及び図4Bは、ウォータージェットメス100の動作についての説明図である。以下、図4A及び図4Bを参照しつつ、本実施形態におけるウォータージェットメス100の動作について説明する。
まず、送液ユニット20が液体の送液を開始する。これにより液体は、接続チューブ21を経て、Yコネクター110に圧送される。この送液ユニット20からの送液により、図4Aに示すようにYコネクター110の空洞部分、液体供給パイプ120の供給流路121、隔壁部材140のキャピラリー流路141、先端パイプ130の液体室131が順に液体で満たされる。その後、ノズル部材132のノズルNzから液体が流出し始めるが、このとき、ノズルNzから流れる液体の流量は小さく(例えば0.2cc/s)、速度が遅い(例えば1m/s以下)。なお、この流れでは、手術装置として組織を切除することはできないため、ノズルNzから液体が流出していても安全である。
次に、液体室131が液体で満たされた状態で、光ファイバー31の先端31Aからパルスレーザーが液体中に射出されると、そのエネルギーは液体に吸収され、図4Bに示すように、瞬時に液体を気化させる。これにより、光ファイバー31の先端31Aの周りに蒸気泡が生成される。この蒸気泡の生成によって、液体室131の内部圧力は急速に上昇し、この圧力により押された液体は、パルスジェットとして、一気にノズルNzから噴射される。このときノズルNzから噴射されるパルスジェットの噴射速度は10m/sから80m/sと高速であり、組織の切除能力を有する。
パルスジェット発生後、液体室131の一部が空洞になるが、送液ユニット20からの送液によって、短時間で液体が液体室131に充填される。そして、再び図4Aの状態になり、パルスジェットの噴射が可能になる。
なお、本実施形態では、パルスジェットをレーザーのエネルギーで効率的に発生させるために、隔壁部材140にキャピラリー流路141を設けている。キャピラリー流路141は、蒸気泡の生成時に、液体が液体室131から供給流路121に逆流するのを抑制し、ノズルNzから噴射されるパルスジェットの噴射強度を強める効果がある。
<ノズルとキャピラリー流路との関係について>
次に、ノズルNzとキャピラリー流路141との関係について説明する。なお、以下の説明において、供給流路121からノズルNzへの液体の流れを順方向とし、その方向の下流側を前方、上流側を後方ともいう。
ノズルNzは光ファイバー31の先端31Aよりも前方に設けられた孔であり、キャピラリー流路141は、光ファイバー31の先端31Aよりも後方の隔壁部材140に設けられた孔である。そして、液体室131に蒸気泡が発生すると、流体室131の内部圧力が高まるため、ノズルNzに向けた液体の流れと、キャピラリー流路141に向けた液体の流れが生じる。
そこで、孔に液体が流れるときの作用について考える。
図5は、孔に液体が流れるときの作用を説明するための図である。一定断面積の流路を考え、その断面積をS、長さをL、液体の密度をρとする。この流路の両端に差圧ΔP(圧力P)が生じたとする。圧力Pの印加によって、流路内の液体は流れ出す。その流量の単位時間あたりの変化量をΔQとする。
流路内の液体の速度変化をΔuとすると、ΔQ=S・Δuで表される。
したがって、運動方程式は、
P・S=S・L・ρ・Δu・・・・・(1)
の関係が成り立つ。よって、
ΔQ=(P・S)/(L・ρ)・・・・・(2)
となり、Sが小さいほど、またLが大きいほどΔQが小さくなる(つまり、液体が流れ難くなる)。
液体室131で蒸気泡が発生した場合に、供給流路121への逆流を防ぐには、液体室131よりも上流側(キャピラリー流路141)のΔQが小さく、下流側(ノズルNz)のΔQが大きいことが必要となる。ここで、ρおよびPは双方とも同一なので、式(2)より、ノズル断面積をNS、長さをNL、キャピラリー長さをCL、キャピラリーの総断面積(複数の合計)をCSとすると、
NS/NL>A×CS/CL・・・・・(3)
を満たす必要がある。
なお、NS及びCSは、液体の流れる方向と略平行な方向に直交する断面における断面積であり、NL及びCLは、液体の流れる方向と略平行な方向における長さである。ここで、Aは係数(定数)であり、本実施形態ではこの係数Aを少なくとも1以上(望ましくは5以上)にしている。この場合、キャピラリー流路141への流量(逆流)の変化量はノズルNzへの流量の変化量よりも小さくなる。例えば、係数Aが5のときには、キャピラリー流路141への流量の変化量は、ノズルNzへの流量の変化量の1/5になる。このため、蒸気泡が発生することによるエネルギーの大半をジェットの生成に用いることができる。これにより、逆流を防止しつつ、ノズルNzからの液体の噴射強度を強めることができる。
ただし、ノズルNzの直径は切除の目的から、0.1mm〜0.8mm程度と小さい(すなわち断面積NSが小さい)。また、ジェットパルスの直進性のために、ノズルNzの長さNLは、少なくとも直径の1倍から5倍程度の長さを必要とする(仮に、長さNLが前述した範囲よりも短いと、ノズルNzから噴射される液体が直進せず、スプレー状に広がってしまう)。つまり、式(3)において、NS/NLは非常に小さい値である。従って、係数Aの値を大きくしすぎると、CS/CLがさらに小さい値であることが必要になる。すると、キャピラリー流路141において、流路抵抗の増加を招くことになり、供給流路121側から液体室131に液体が流れ難くなる。その結果、必要な送液を行うための送液ユニット20の負荷が大きくなる。このような理由のため、係数Aは100以下であることが望ましい。
<ノズル−光ファイバー先端間距離SDについて>
次に、ノズルNzと光ファイバー31の先端31Aとの間の距離SD(図2参照)について考察する。液体室131内部に発生した蒸気泡がノズルNzから外部に出ると、ジェットの発生が不安定になる。場合によっては、高エネルギーのパルスレーザー光がノズルNzから出ることになり危険である。このため、光ファイバー31の先端31AからノズルNzまでの距離SDは、液体室131内の液体によってレーザー光を吸収するための十分な長さを確保することが必要である。具体的には、距離SDは5mm以上であることが望ましい。ただし、距離SDが長くなりすぎると、先端パイプ130内(液体室131内)部でエネルギーの減衰が生じる。このため、距離SDは200mm以下が望ましい。
<隔壁−光ファイバー先端間距離FDについて>
次に、隔壁部材140と光ファイバー31の先端31Aとの間の距離FD(図2参照)について考察する。光ファイバー31の先端31Aで発生する蒸気泡は、先端31Aの前方のみでなく後方にも広がる。このため距離FDが小さいと、先端31Aからパルスレーザーを射出する時に隔壁部材140にダメージを与えてしまう。そこで、パルスレーザー射出時に隔壁部材140にダメージを与えないようにするため、光ファイバー31の先端31Aは、隔壁部材140よりも0.5mm以上突出させることが望ましい。つまり、隔壁部材140と光ファイバー31の先端31Aとの間の距離FDは0.5mm以上であることが望ましい。ただし、距離FDが長すぎる場合は、蒸気泡発生時に光ファイバー31の先端31Aが振動するため、距離FDは5mm以下であることが望ましい。
以上説明したように、本実施形態のウォータージェットメス100は、液体(水)を収容する液体室131と、液体室131に収容された液体を噴射するノズルNzと、液体室131に液体を供給する供給流路121と、液体の気泡を発生させる光ファイバー31と、液体室131と供給流路121とを隔てる隔壁部材140を備えている。また、隔壁部材140は、液体室131で蒸気泡が発生するように光ファイバー31を支持するとともに、液体室131と供給流路121とを連通するキャピラリー流路141を2つ有している。そして、このような、構成において、2つのキャピラリー流路141の総断面積CSをキャピラリー流路141の長さCLで除算した値が、ノズルNzの断面積NSをノズルNzの長さNLで除算した値よりも小さくなるようにしている。こうすることで、液体の逆流が起こりにくくなり、蒸気泡が発生する際のエネルギーの大半をジェットの生成に用いることができる。よって、ノズルNzからの液体の噴射強度の向上を図ることができる。また、同等の噴射強度を得るためのレーザーのエネルギーを小さくすることができる。
===第2実施形態===
図6は、第2実施形態におけるウォータージェットメス200の構成を示す概略図である。なお、図6において、第1実施形態(図1)と同一構成の部分には同一符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態のウォータージェットメス200は、内視鏡を含み生体の治療や手術に用いられる内視鏡ユニットに備えられ、生体(人間、動物等)の体内に挿入して、内視鏡手術に用いることを前提とした流体噴射装置である。生体の体内に挿入するために、第2実施形態のウォータージェットメス200は、第1実施形態の液体供給パイプ120と先端パイプ130に代えて、柔軟な液体供給チューブ220と先端チューブ230を用いている。
図7は、第2実施形態におけるウォータージェットメス200の先端部分の長手方向の断面構造を示す図であり、図8は、図7におけるA−A断面図である。第2実施形態の、ウォータージェットメス200は、液体供給チューブ220、先端チューブ230、隔壁部材240、保護パイプ250を有している。
液体供給チューブ220は、Yコネクター110側から先端チューブ230側に液体を供給するものであり、内部に液体の流路となる供給流路221を有している。
隔壁部材240は、液体供給チューブ220と先端チューブ230の間を隔てるように設けられ、その中心には光ファイバー31が貫通して通されている。そして、隔壁部材240は、この状態(光ファイバー31の先端31Aが、先端チューブ230側に突出した状態)で、光ファイバー31を支持している。また、隔壁部材240において光ファイバー31の外側には、液体供給チューブ220の供給流路221と、先端チューブ230の液体室231とを連通するキャピラリー流路241が設けられている。図に示すように、本実施形態では、隔壁部材240において、光ファイバー31の外側にキャピラリー流路241が2つ設けられている。
先端チューブ230は、液体を収容する液体室231を有している。この液体室231には、Yコネクター110から、液体供給チューブ220の供給流路221、隔壁部材240のキャピラリー流路241を介して液体が供給される。さらに、先端チューブ230の端部(先端部)には、液体室231に収容された液体を噴射するノズルNzが設けられている。
液体供給チューブ220と先端チューブ230は、双方に保護パイプ250が挿入され熱融着で接続されている。双方のチューブにおいて保護パイプ250の形成部分は、後述する内視鏡の鉗子口43へウォータージェットメス200を入れる時に障害とならないよう、保護パイプ250の外径に合わせて薄く形成されていることが望ましい。
保護パイプ250は、樹脂で形成された先端チューブ230及び液体供給チューブ220をパルスレーザーから保護するためのものである。第2実施形態では、この保護パイプ250を設けているので、液体室231(すなわち先端チューブ230)を形成する材料として樹脂を用いることができる。保護パイプ250内には、隔壁部材240が圧入されて、固定されている。なお、第2実施形態における隔壁部材240も、第1実施形態の隔壁部材140と同様に、中心で光ファイバー31を支持している。また、隔壁部材240において光ファイバー31の外側には、液体供給チューブ220の供給流路221と、先端チューブ230の液体室231とを連通するキャピラリー流路241が設けられている。本実施形態において、保護パイプ250と隔壁部材240は、金属もしくはセラミック等の耐熱性の高い材料で製作されている。
なお、第2実施形態のウォータージェットメス200の動作(液体噴射の動作)については第1実施形態と同様である。よって説明を省略する。
図9は、第2実施形態のウォータージェットメス200を内視鏡に適用した場合の一例を示す概略図である。
内視鏡は操作部(不図示)と、挿入部(不図示)と、先端部40を有して構成される。操作部は、内視鏡の操作者が把持し、操作を行う部分である。挿入部は、操作部から延出して体内に挿入される部分であり、可塑性があり受動的に屈曲する。先端部40は、挿入部の先端に設けられ、操作部からその屈曲を遠隔的に操作できるようになっている。
また、図9に示すように、内視鏡の先端部40には、撮像素子41と、照射部42と、鉗子口43が設けられている。
撮像素子41は、臓器の状態を、例えばカラー映像で撮像するためのものである。
照射部42は、光源(不図示)からの光で、体内を照らし、検査や治療をスムーズに行えるようにするものである。
鉗子口43は、組織採取や処置、異物回収などに用いる処置具を通すための開口である。本実施形態では、鉗子口43にウォータージェットメス200を通している。
なお、前述したように先端部40は、操作部からの操作によって屈曲できるようになっている。それらの屈曲の妨げにならないように(先端部40内で屈曲できるように)、ウォータージェットメス200で用いられる液体供給チューブ220と先端チューブ230は柔軟な樹脂で構成されている。
内視鏡においては、先端部40の曲率が大きくなるので、保護パイプ250は、内視鏡の挿入部(すなわち先端部40よりも奥側)に位置することが望ましい。さらに挿入部も屈曲するので、図7における保護パイプ250の長さPLは、なるべく短いほうが望ましく、その長さは20mm以下(望ましくは10mm以下)である。
一方、保護パイプ250は、樹脂で形成された先端チューブ230及び液体供給チューブ220をパルスレーザーから保護する目的で設けてある。このため、保護距離GDは少なくとも2mm(望ましくは5mm)必要である。
なお、ノズルNzとキャピラリー流路241との関係(すなわちNS/NLとCS/CLの関係)、及び、距離FDの長さの範囲については、第1実施形態と同様である。
以上、説明したように、第2実施形態のウォータージェットメス200は、内視鏡に適用することができる。また、第2実施形態のウォータージェットメス200は、第1実施形態と同様に、蒸気泡が発生する際のエネルギーの大半をジェットの生成に用いることができる。すなわち、逆流を防止でき、ノズルNzからの液体の噴射強度の向上を図ることができる。これにより、血管を温存し、病変部を切除する等の内視鏡手術が実現できる。
<第2実施形態の変形例>
図10A、図10Bは、第2実施形態のウォータージェットメス200の隔壁部材240の変形例の説明図である。
図10Aでは、隔壁部材240を、外周の一部分(上端、下端)を直線的に切り落とした形状にしている。そして、その隔壁部材240と保護パイプ250との間にキャピラリー流路241が形成されている。このため、図10Aに示す変形例のキャピラリー流路241は、断面が円ではなく円弧状である。
図10Bの場合も同様に、隔壁部材240を、外周の一部分(上端、下端)を矩形状に切り落とした形状にしている。このため、図10Bに示す変形例のキャピラリー流路241はその隔壁部材240と保護パイプ250との間に略四角形に形成されている。
これらの変形例においても、前述の実施形態と同様に、キャピラリー流路241の総断面積(CS)と長さ(CL)の関係が、前述した式(3)を満たすようにすればよい。こうすることで、液体の噴射強度の向上を図ることができる。
この変形例のように、隔壁部材240の外周と保護パイプ250の間にキャピラリー流路241を形成すると、前述の実施形態のように隔壁部材240に穿孔して形成する場合と比べて製造の簡易化が可能である。
また、図11は、第2実施形態のウォータージェットメス200の保護パイプ250の変形例の説明図である。
この変形例では、図7の場合よりも、保護パイプ250の長さ(PL)が短くなっている。なお、保護パイプ250は、隔壁部材240の前方側(流路の下流側)の端面(液体室231と供給流路221との接続面)よりもノズルNzに近い位置から、少なくとも隔壁部材240までの領域に設けられていれば良い。これにより、先端チューブ230及び液体供給チューブ220をパルスレーザーから保護することができる。
また、図11に示す変形例では、先端チューブ230と液体供給チューブ220との境界が図7の場合と異なっている。より具体的には、先端チューブ230の液体供給チューブ220との境界が隔壁部材240の端部の位置と異なっている。このように、先端チューブ230の液体供給チューブ220との境界が隔壁部材240の端部の位置と異なっていても良い。
また、保護パイプ250と隔壁部材240とが一体に形成されていてもよい。さらに、本実施形態では隔壁部材240にキャピラリー流路241を設けていたが、これには限られず、例えば保護パイプ250にキャピラリー流路を設けるようにしてもよい。
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
<流体噴射装置について>
前述した実施形態では、ウォ−タージェットメスを例に挙げて説明していたが、これには限られず他の流体噴射装置にも適用することが可能である。
<流体について>
前述した実施形態では、流体として水を用いていたがこれには限られず、生理的食塩水を用いても良い。また、血液などの他の液体や、水蒸気や窒素などの気体を用いても良い。この場合、レーザーとして、流体の種類に応じた吸収バンドを有するものを用いるようにすればよい。
<光ファイバーについて>
前述した実施形態では、光ファイバー31を用いて蒸気泡を発生させていたがこれには限られない。例えば電極からの放電を用いて蒸気泡を発生させても良い。また、例えばヒーターを用いて蒸気泡を発生させても良い。
20 送液ユニット、21 接続チューブ、
30 レーザー源、31 光ファイバー、
40 先端部、41 撮像素子、42 照射部、43 鉗子口、
100 ウォータージェットメス、110 Yコネクター、
111 第一管部、112 第二管部、
113 光ファイバー固定部材、114 チューブ固定部材、
120 液体供給パイプ、121 供給流路、
130 先端パイプ、131 液体室、132 ノズル部材、
140 隔壁部材、141 キャピラリー流路、
200 ウォータージェットメス、
220 液体供給チューブ、230 先端チューブ

Claims (4)

  1. 流体を収容する流体室と、
    前記流体室に収容された流体を噴射するノズルと、
    所定方向において前記流体室と接続し、前記流体室に流体を供給する流体供給路と、
    前記流体室内に気泡を発生させる気泡発生部材と、
    前記流体室と前記流体供給路とを隔て、かつ、前記気泡発生部材を支持し、かつ、前記流体室と前記流体供給路とを連通する連通部を有する隔壁部と、
    を備え、
    前記気泡発生部材は、レーザーを射出する光ファイバーを有し、
    前記光ファイバーは、レーザーの射出面が前記流体室内に突出するように前記隔壁部に支持されており、
    前記隔壁部のうち前記光ファイバーを支持する部分の前記所定方向における端部から、前記射出面までの距離が、0.5mm以上5mm以下であり、
    前記所定方向と直交する断面における前記連通部の総断面積を、前記所定方向における前記連通部の長さで除算した値が、前記断面における前記ノズルの断面積を、前記所定方向における前記ノズルの長さで除算した値よりも小さい、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  2. 請求項1に記載の流体噴射装置であって、
    前記流体供給路が形成された流体供給部と、
    前記ノズルが形成され、前記流体供給部と接続される先端部と、を有し、
    前記所定方向における、前記隔壁部の前記端部の位置と、前記流体供給部と前記先端部との境界部分の位置と、が異なる、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  3. 請求項1または2に記載の流体噴射装置であって、
    前記隔壁部は、前記光ファイバーが挿入される貫通孔を有し、
    前記隔壁部において前記貫通孔と前記連通部とが離間している、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の流体噴射装置であって、
    前記断面における前記ノズルの断面積を、前記所定方向における前記ノズルの長さで除算した値は、前記断面における前記連通部の総断面積を、前記所定方向における前記連通部の長さで除算した値の定数倍よりも大きく、
    前記定数は100以下の値である、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
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