JP5741941B2 - ゲル構造を利用したバイオ燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、ゲル構造を利用したバイオ燃料電池に関する。詳細には、イオン伝導性を有する物質を介して対向する負極及び正極と、ゲル構造の支持体内に燃料が封入された燃料ゲルとを備えたバイオ燃料電池に関する。
近年、酵素や微生物が持つエネルギー変換システムを利用したバイオ燃料電池の開発が進められている。バイオプロセスを利用するバイオ燃料電池は、緩和な条件かつ高い選択性を有し、燃料として糖やアルコール等の環境中に存在する多様な物質を利用できるという利点を有する。そのため、安全で環境負荷が小さいことから、携帯型機器や体内埋込型機器等の小型電子機器の電源等としての更なる発展が期待されている。近年、バイオ燃料電池の性能向上を目指し、安定性向上、電極素材の最適化、電極/酵素間の電子の移動の効率化等の観点からの研究開発が進められている。また、特にニーズが増加すると思われる小型電子機器への応用を実現するべく、燃料電池システム全体を乾電池サイズにまで小型化及び簡便化する技術の構築が求められている。
例えば、酵素を好適な環境下で安定的に働かせ、かつ電流密度を向上させて十分な出力電流を維持するため、酵素固定化電極の研究が行われている。このような酵素固定化電極としては、電極表面にNADHを酸化するポリマー、基質を酸化しNADHを生成するポリマーの順に配した電極(特許文献1)、酵素を包埋したゲルを備え、当該ゲルを生体表面に直接接触させると糖等の生体由来物質を取り込みゲル内部での酵素分解反応により電気的エネルギーが生じるエネルギー発生装置(特許文献2)、酵素の失活を防ぐため親水性ポリマー内に包埋して酵素を固定したバイオセンサー(特許文献3)が報告されている。しかしながら、上記した技術は、何れも酵素を高分子ゲル等で包埋して電極上に固定化するものであるが、燃料は外部から液体で供給する必要があった。そのため、乾電池のような簡易な構造には出来ずシステム全体の小型化及び簡便化が図れないという問題点があった。また、脂質2分子膜のリポソームとして構築された微小球の内部空間に、酵素、補酵素及び燃料となる酵素基質を封入し、この空間を反応場として効率的に電子を取り出す技術も報告されている(特許文献4)。しかしながら、微小球内部に含まれる燃料は微量であることから継続的な発電は原理上不可能であった。そのため、微小球の脂質2分子膜に外部と流通する貫通孔を形成し、それ通して外部から燃料を液体として供給する必要があった。したがって、かかる技術も上記特許文献1〜3に記載に技術と同様、バイオ燃料電池システムの小型化及び簡便化のニーズに応えるものではなかった。
また、酵素の安定性を保持しつつ、基質以外の反応妨害物質を除外し基質の均一な拡散により電極性能を向上させる技術が報告されている。例えば、電極上に親水性高分子ゲル中に酵素及び電子受容体を包埋して形成された反応層に高分子ゲル粒子層を積層したバイオセンサー(特許文献5)、電極上に酵素に対する基質を含む溶液を保持する電気応答性ゲル、及び前記ゲルと接する位置の多孔性部材上に酵素を担持する粒子等が流れる試薬部を設けたイムノクロマト検査片(特許文献6)等が報告されている。また、高分子薄膜で修飾された電極を有するバイオセンサー(特許文献7)が報告されている。しかしながら、これらの技術はバイオセンサーに関するものであり、しかも外部から液体で基質である検査対象を供給する必要があった。そして、外部から電圧印加を必要とするためバイオ燃料電池にそのまま応用できなかった。
バイオ燃料電池は、燃料が持つ化学エネルギーを取り出し電気エネルギーに変換する発電装置であるため、持続的な発電のためには燃料の供給が必要である。そこで、燃料電池の安全性を含めた取扱い性の向上のため燃料をゲル化する技術(特許文献8、9)も報告されている。特許文献8の技術は、メタノール型燃料電池において、燃料をゲル化し、使用時には燃料を気化して金属触媒で酸化することにより電子を取り出すものである。そして、特許文献9の技術は、燃料をゲル化した燃料ゲルとゲル再液化剤とを分離して具備する燃料カートリッジに関するものである。使用に際しては、前記再液化剤を作用させ燃料を再液化させ、これを気化して金属触媒で酸化することにより電子を取り出すものである。何れの技術も、燃料ゲルを気化することが前提であるため、従来の液体燃料による燃料電池よりも機構が複雑であった。したがって、依然として燃料電池システムの小型化及び簡便化のニーズに応えるものではなかった。
上記技術のようなゲル構造を利用するものとして、酸化皮膜を形成した電極を電解液に接触させ、対向電極との間に電荷を蓄積する電解コンデンサーについても報告されている(非特許文献1)。前記電解液は、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類を主溶媒として電解質を溶解したものであり、常温ではゲル構造を維持せずペースト状である。また、電解コンデンサーは電気を一時蓄えるだけで化学反応及び発電を目的とするものではないため、発電を目的とする燃料電池とは技術的に相違するものであった。他に、多糖類を燃料として、多糖類から単糖への分解を行う酵素と単糖を酸化する酵素を同時に使用することにより発電するバイオ燃料電池が報告され(特許文献10)、この中で、燃料自体を糊化してゲル状の固形燃料とする態様が開示されている。しかしながら、上記技術は高効率な発電を目的とするものであり、燃料電池システムの小型化及び簡便化の市場のニーズに応えるものではなかった。また燃料自体を糊化するものであるから使用状況に応じてはゲル構造を維持できないことが予想され、燃料の取扱い性の観点からも更なる改善の必要があった。
特表2006-508519号公報 特開2006-147472号公報 特表2008-532047号公報 特開2011-18635号公報 特開平8-94574号公報 特開2009-85813号公報 特開2006-153704号公報 特開2004-6335号公報 特許第4371374号公報 特開2006-24555号公報
日本ケミコン株式会社、"「技術Topics」アルミニウム電解コンデンサにおけるアルミニウム電極箔の表面処理技術"、〔online〕、〔平成23年7月1日検索〕インターネット<URL:http://www.chemi-con.co.jp/tech_topics/haku_02.html>
そこで、本発明は、バイオ燃料電池システムにおいて、システム全体の小型化、簡便化、及び取扱い性の向上を図り、携帯型機器等の小型電子機器の電源として応用できるバイオ燃料電池システムの構築を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、燃料供給に際してゲル構造を有する支持体に燃料を封入することにより、バイオ燃料電池システム全体の小型化、簡便化、及び取扱い性の向上を図ることができることを見出した。さらに、このように構成することにより、燃料ゲルが電極に接触し電極表面を押さえるため、電極表面からの酵素の離脱、及び酵素からの補酵素の離脱を抑制でき、液体燃料の場合に比べて電池出力の低下を招かず長期間に亘って安定した出力が得られることをも見出した。本発明者らは、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的を達成するため、以下の[1]〜[8]に示す発明を提供する。
[1]イオン伝導性を有する物質を介して対向する正極及び負極と、ゲル構造の支持体内に燃料が封入された燃料ゲルとを備えたゲル構造を利用したバイオ燃料電池であって、前記支持体は前記燃料とは別個の物質であり、前記正極又は前記負極の何れか一方若しくは双方の少なくとも一部に生体触媒を含むバイオ燃料電池。
上記[1]のように構成することにより、乾電池のような簡易な構造とすることができ、従来の液体燃料を使用したバイオ燃料電池に比べ小型化、及び簡素化を図ることができる。また、燃料ゲルが電極に接触し電極表面を押さえるため、電極表面からの酵素の離脱、及び酵素からの補酵素の離脱を抑制でき、液体燃料の場合に比べて電池出力の低下を招かず長期間に亘って安定した出力が得られる。更に、液体燃料よりも燃料を高濃度に調製できると共に、燃料の拡散性及び触媒との反応性等を考慮してゲル内の燃料濃度を調節でき、これによっても長期間に亘って安定した出力が得られるとの効果を奏することができる。そして、ゲル燃料は液体燃料に比べ燃料の保管及び交換が簡単になることから取扱性が向上する。また、ゲル構造を燃料とは別個の物質で構築したことから、良好なゲル状態を長期にわたって維持することができ安定した出力を得ることができる。したがって、システムの小型化、簡便性及び取扱性が向上したバイオ燃料電池が提供され、卓上電卓等の携帯型機器や心臓ペースメーカー等の体内埋め込み式機器等の小型電子機器の電源等への応用が可能である。
[2]前記支持体が、天然高分子又は合成高分子により構成される。
上記[2]のように構成することにより、支持体は燃料を封入又は包埋するのに好適な三次元構造を形成することができる。
[3]前記支持体が、親水性分子により構成される。
上記[3]のように構成することにより、ゲルは親水性を呈することから燃料と親水性を示す生体触媒等の電極触媒との接触性が向上し電池性能を向上させることができる。
[4]前記支持体が、アガロース、ゼラチン、アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選択される。
上記[4]のように構成することにより、支持体は燃料を封入又は包埋するのに好適な三次元構造を形成することができ、かつ、ゲルは親水性を呈することから燃料と親水性を示す生体触媒等の電極触媒との接触性が向上し電池性能を向上させることができる。
[5]前記支持体のゲル強度が、120〜1200 g/cm2である。
上記[5]のように構成することにより、支持体は、燃料を保持するのに好適な三次元構造を形成及び維持できると共に、燃料の好適な拡散を担保できる。これにより、良好な電池出力を維持でき電池性能を向上させことからできる。
[6]負極、燃料ゲル、正極の順に積層され、前記燃料ゲルの三次元構造内にイオン伝導性を有する物質が燃料と共に封入されている。
上記[6]のように構成することにより、燃料ゲルは、燃料の補給のみならず、電解質を含むことによりイオン伝達媒体としての役割をも果たすことが可能となる。そのため、高価な固体電解質膜等の隔膜を別途設ける必要がなく、更なるコストダウン及びシステム全体の小型化及び簡便化を図ることができる。
[7]前記負極側の生体触媒が、グルコース脱水素酵素である
[8]前記正極側の生体触媒が、ビリルビンオキシダーゼである
上記[7]のように構成することにより、燃料の酸化分解反応により燃料から電子とイオンが取り出されバイオ燃料電池の負極として作動することができる。また、燃料としてグルコースを利用することができる。グルコースは生体内物質であることから安全かつ安価なエネルギー源となる。したがって、このように構成されたバイオ燃料電池は、携帯型機器や体内埋め込み式機器等の電源へ安価且つ安全に利用することができる。
また、上記[8]のように構成することにより、負極側から移動してきた電子及びイオンを利用することにより酸素の還元反応が行われバイオ燃料電池の正極として作動することができる。
そして、上記[7]及び[8]の構成を組み合せることにより、燃料供給性と反応性の観点から有利なバイオ燃料電池を構築することができる。
本発明の好適実施形態のバイオ燃料電池における燃料電池セル(正極|燃料ゲル|負極)を模式的に表した概念図である。 本発明の好適実施形態のバイオ燃料電池における燃料電池セル(正極|隔膜|負極|燃料ゲル)を模式的に表した概念図である。 図1の燃料電池セルの組立例を示す写真である。 図1の燃料電池セルで電池出力を測定した実施例1の結果を示すグラフである。 図2の燃料電池セルで電池出力を測定した実施例1の結果を示すグラフである。 ゲル支持体濃度が電池出力に与える影響を検討した実施例2の結果を示すグラフである。 ゲル支持体種類が電池出力に与える影響を検討した実施例3の結果を示すグラフである。
以下、本願発明について詳細に説明する
本発明のバイオ燃料電池は、基本構成として、発電のためのエネルギー源として燃料ゲルを用い、電子伝導体である電極とイオン伝導体である電解質とを含む。
燃料はゲル構造を利用して調製される。言い換えると、燃料は、適当な支持体の三次元構造内に封入又は包埋しゲルとして調製した。ここで、ゲルとは、分子上の特定部位の架橋により分子同士が互いに部分的に繋がって形成された網目状の三次元構造物である。その三次元構造物の内部に溶媒を保持した存在状態、及び溶媒を吸収し膨張はするが溶解はしない存在状態をも一形態として含む。本発明では、燃料自体によりゲルを形成するのではなく、燃料はゲル構造を有する適当な支持体内に封入又は包埋される。したがって、良好なゲル状態を長期にわたって維持することができる。
支持体としては、電極反応を阻害せず、かつ電極反応中にもゲル状態を維持することができれば、公知の材料の何れをも使用することができる。したがって、電極反応の進行に伴っても分解等されず良好なゲル状態を維持できるものである。つまり、電極触媒と反応する燃料自体とは別個の物質であり、かつ電極触媒に対して反応性を有しない物質であることが好ましい。支持体による網目状の三次元構造物の形成は、物理的反応、化学的反応等の何れにより生じたものでも良く、またそれらの組み合わせによって生じたものをも含む。物理的反応とは、非共有結合による架橋を意味し、水素結合やイオン結合、配位結合、ヘリックス形成又は疎水結合等による架橋を挙げることができる。一方、化学的反応とは、共有結合による架橋を意味し、架橋剤を用いての架橋、放射線架橋、光架橋、又はプラズマ架橋等のラジカル重合等による架橋を挙げることができる。
具体的には、天然高分子である、アガロース、アガロペクチン、アラビアゴム、ペクチン、ヒアルロン酸、セルロース、キトサン、キチン、キサンタンガム、プルラン、デキストラン、ジェランガム、デンプン、カラーギナン、ヘパリン、アルギン酸、フコイダン、グルコマンナン、コンドロイチン硫酸等の多糖類、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、カゼイン、フィブリン、アルブミン、エラスチン、ポリリジン等のタンパク質系、リグニン、およびこれらの人工的な誘導体等を挙げることができる。また、合成高分子である、ポリアクリルアミド系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルエーテル系重合体、ポリビニルアセタール系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリオレフィン系重合体、フッ素樹脂系重合体、ポリアクリル酸系重合体、ポリアクリル酸エステル系重合体、アクリロニトリル系重合体、カルボン酸ビニル系重合体、ポリケトン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリエチレングリコール系重合体、ポリプロピレングリコール系重合体、ポリプタジエン系誘導体、ポリイミド系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリシロキサン系重合体などを挙げることができる。本発明ではこれらを単独で重合したものの他、2種以上の高分子を共重合したものであってもよい。また、有機高分子に限定されるものではなく、その微細孔内に溶媒を保持し得る三次元構造物を形成する限りはゲル化のための支持体として使用することができる。したがって、シリカゲル、ゼオライト等のケイ素化合物をはじめとする無機高分子をも使用することができる。
特に、親水性ゲルとして調製することが好ましい。親水性ゲルとすることで、通常の存在状態では親水性を示す酵素と燃料との接触性を向上させることができる。これにより、酵素反応が円滑に進行して燃料効率及び電極反応効率がより向上する。一方で、電極の片側、特に空気極となる正極の片側は燃料ゲルに接触しないように構成することが好ましい。これにより、疎水性が保て、空気の円滑な供給により電極反応効率が向上する。したがって、このように構成することにより電池性能を向上させることができる。
次に、支持体のゲル強度は、強度が高いと燃料の拡散速度が低下し、一方、強度が低いと三次元構造を形成及び維持できないため、支持体の種類及び燃料の拡散等を考慮して決定される。好ましくは、12000 g/cm2未満、6000 g/cm2未満、若しくは1200 g/cm2となるように調製する。特には120〜6000 g/cm2若しくは120〜1200 g/cm2が好ましい。この範囲にゲル強度を調製することにより、燃料を保持するのに好適な三次元構造を形成及び維持できると共に、燃料の好適な拡散を担保することができる。
燃料ゲルの調製は、支持体がゲル化する際に燃料を共存させることにより行うことができる。例えば、ゲル化する前の支持体を溶解させた溶液と燃料とを混和し、これをゲル化させることにより調製することができる。燃料は支持体と同一の溶液に直接混和させてもよいし、別途調製した燃料の溶解液又は懸濁液として混和させても良い。予めゲル化させた支持体に、燃料の固形物又は溶解液又は懸濁液を接触させてゲルの三次元構造内に拡散させることによっても調製することができる。例えば、燃料の溶解液又は懸濁液内にゲル構造の支持体を浸漬させる、若しくは前記溶解液又は懸濁液をゲル内にシリンジ等を用いて注入することにより調製することができる。
そして、燃料ゲルは、適宜、燃料電池システムの用途に応じた形状に調整することができる。かかる形状としては、直方体、立方体、球状、楕円状等の塊状、板状、シート状、繊維状等の何れの形状に成形してよく、内部構造についても中実及び中空の何れであってもよい。また、電極との接触面の形状についても電極の形状に応じて適宜調製することができ、矩形、台形、円形、半円形、スリット状、その他の複雑な形状であってもよい。
燃料ゲルの大きさ及び含有燃料濃度についても、適宜、燃料電池システムの用途に応じて調整することができる。つまり、電極触媒との反応において好適な大きさ及び含有燃料濃度に燃料ゲルを調製することができる。したがって、燃料のゲル化に際して、ゲル内に含まれる燃料の含有量を調整することが好ましい。特に、燃料をゲル化することによって液体燃料の場合よりも高濃度に調製することができるという利点がある。また、燃料はゲル内に均等に含まれるように調製してもよいが、ゲル内の燃料含有量に濃度勾配を設けて燃料ゲルを構築することもできる。
ここで、電池容量は、燃料ゲルの大きさ及び含有燃料濃度に依存すると考えられる。したがって、燃料ゲルを大きく、そして含有燃料濃度を高くすることにより、理論上は電池容量を大きくすることができる。しかしながら、燃料ゲルが大きくなると燃料拡散の問題が生じ、また高濃度燃料は触媒である酵素の活性を低下させる場合がある等、現実的には期待し得る電池容量を得られない事態が想定される。かかる事態を回避するため、燃料含有量に濃度勾配を設けて酵素電極と接触する面を低濃度とする等の例が挙げられる。これにより、酵素との接触面の燃料濃度を低く設定することにより、上記したような酵素の活性低下による出力低減を防ぐことができる。同時に他の部分については、溶液状態の場合に比べて燃料を高濃度に調製することができるので燃料拡散という問題点も解消できる。したがって、液体燃料に比べて電池容量を向上させることができる。
燃料ゲルは、燃料電池に着脱可能であることから燃料の交換が容易となり燃料の取扱性が向上する。また、燃料の交換に際しては、ゲルを燃料の溶解液又は懸濁液に浸漬することにより、また外部からゲル内部に燃料の溶解液又は懸濁液を注入することによって行うこともできる。
燃料としては、電極上で進められる酸化還元反応により電子を放出可能な物質であれば特に制限はない。したがって、燃料は、電極触媒の種類に応じて適宜選択することができる。好ましくは、バイオマス燃料である。バイオマスとは生物由来の資源を意味し、これら自体でもよいが、これらを加工したものが好ましい。例えば、糖類としては、単糖類、二糖類、多糖類などを使用することができる。単糖類としては、炭素数4のエリトロース、トレオース、エリトルロース、炭素数5のアラビノース、キシロース、リボース、リキソース、リブロース、炭素数6のグルコース、ガラクトース、タロース、マンノース、ソルボース、フルクトース、タガソース、ソルボース等が挙げられる。二糖類としては、マルトース、ラクトース、スクロース等を、また、多糖類としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース等を例示できる。糖類以外にも、ピルビン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、グルコン酸、フタル酸、乳酸、マロン酸、酢酸、プロピオン酸、グルコース−6−リン酸、フルクトース-6-リン酸、フルクトース-1,6-ビスリン酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸、1,3-ビスホスホグリセリン酸、3-ホスホグリセリン酸、2-ホスホグリセリン酸等の有機酸、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、脂肪類、ペプチド、タンパク質等のポリアミノ酸類、アミン類等を用いることができる。
燃料ゲルは、イオン伝導性を有する物質、つまり電解質を含ませて構成してもよい。このように構成することにより、燃料ゲルはイオンを移動させるための媒体としても機能し、高価な固体電解質膜の設置が不要となる。これにより、燃料電池システムの更なる小型化、簡便化及び低価格化を図ることが可能となる。電解質としては、イオン伝導体として公知の化合物の何れを使用でき、電極触媒及び燃料の種類に応じて適宜選択される。電解質としてはイオン伝導性を有するものであれば、特に制限はない。電解質は、液体及び固体の別は問わず、無機物であっても有機物であってもよい。例えば、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム等のナトリウム塩、塩化カリウム等のカリウム塩、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩等の金属塩、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−1−エタン スルホン酸(HEPES)、3−モルフォリノプロパン スルホン酸(MOPS)、イミダゾール等を例示することができる。また、リチウム-ナトリウム系炭酸塩、リチウム-カリウム系炭酸塩等の溶融炭酸塩、イットリア安定化ジルコニア等の固体酸化物等が例示されるがこれに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用することができる
燃料ゲルに電解質を含ませる方法としては、例えば、支持体がゲル化する際に、電解質の溶解液及び懸濁液を燃料と共に共存させることにより調製することができる。また、支持体をゲル化させた後に、電解質の溶解液及び懸濁液を燃料の溶解液又は懸濁液と共に、又は別個にゲル構造の支持体に接触させてゲルの三次元構造内に拡散させることによっても調製することができる。
なお、本発明は、燃料ゲルと固体電解質膜との組み合わせを排除するものではなく、これを組み合わせて構成してもよい。したがって、燃料ゲルとは別個に、正極と負極の間に公知の固体電解質膜を設置してよい。また、固体電解質膜としては、スルホン基、リン酸基、ホスホン基、及びホスフィン基等の強酸基、カルボキシル基等の弱酸基、及び極性基を有する有機高分子等のイオン交換機能を有する固体膜等が例示されが、が、これに限定されるものではない。また、市販のナフィオン膜(Aldrich)等を利用することもできる。
更に、燃料ゲルに、電子メディエーターを含ませて構成してよい。このとき、電子メディエーターは燃料ゲル内に均等になるように含有させてもよいが、電子授受を行わせる電極側に接触する領域若しくはその近傍領域に含ませることが好ましい。したがって、上記領域に電子メディエーターが高濃度に含まれるように調製することが好ましい。また、上記領域に限定して電子メディエーターを含むように調製してもよく、適当な支持体にゲル化した電子メディエーター層を燃料ゲルとは別層として積層してもよい。電子メディエーターとしては、電極触媒による触媒反応と電極との間の電子授受を媒介できるものであれば特に限定されない。例えば、フェロセン、フェリシアン化物、キノン類、シトクロム類、ビオロゲン類、フェナジン類、フェノキサジン類、フェノチアジン類、フェレドキシン類およびその誘導体等が例示されるが、電極触媒の種類に応じて最適な物質を選択すればよい。
また、燃料ゲルは、電極触媒と燃料との酸化還元反応の場として至適な環境を与えるため、また、迅速且つ緩和な条件下でのゲル化を進めるため、緩衝成分を含有して構成されていてもよい。特に、電極触媒として酵素を用いる場合には、緩衝成分により酵素が機能しやすいpH付近に制御することができる。緩衝成分としては、特に制限はなく、水性環境下において酸または塩基と反応する無機および有機化合物であってよい。例えば、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−1−エタン スルホン酸(HEPES)、3−モルフォリノプロパン スルホン酸(MOPS)等を例示することができる。これらは単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記した電解質としても作動するものを含ませて、緩衝機能とイオン伝達機能を同時に行わせるように構成してもよい。
電極は、イオン伝導性を有する物質を介して正極と負極を対向させて構築される。電極としては、燃料のもつ化学エネルギー取出しそれを電子エネルギーに変換し得、かつ、電子伝導性を有するものであれば特に制限はない。具体的には、負極側電極では酸化反応を行い、正極側電極では還元反応を行うように構成する。燃料供給性と反応性の観点から、負極では燃料の酸化反応を行い、正極では酸素の還元反応を行うように電極を選択することが特に好ましい。
電極触媒としては、燃料から生物エネルギーを取り出し電気エネルギーに変換可能な生物電極を利用することができる。生物電極は、適当な導電性基材上の少なくとも一部に生体触媒を含む。ここで、生体触媒とは、生物体内に存在する物質変換能を有する物質である。生体由来の天然物質のほか、それを模した人工の物質をも含む。例えば、酵素、微生物、細胞小器官及び細胞等が含まれる。好ましくは、酵素の触媒反応を利用した酵素電極である。正極、負極の双方を生物電極として構成してもよいし、何れか一方のみを生物電極として、他方を金属の触媒反応を利用する金属電極等として構成しても良い。
酵素電極として使用される酵素は、酵素の触媒反応と電極反応を共役させ得ることができる限り特に制限は無く、何れをも利用することができる。酵素は単独で、若しくは複数組み合わせて利用することができる。したがって、例えば、任意の酵素と、その酵素に共役する他の任意の酵素とを組み合わせて用いることによって、共役系を構築することもできる。例えば、酸化還元酵素、加水分解酵素、転移酵素等を利用することができる。これに限定するものではないが、酸化還元酵素の利用が好ましい。酸化還元酵素としては、脱水素酵素、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ヒロドキシラーゼ、又はオキシゲナーゼ等を含む。具体的には、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ピルビル酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ピルビル酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ヒドロキシ酪酸脱水素酵素、及びピリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ等のマルチ銅酵素等を例示することができる。補酵素及び補因子要求性の有無についても特に制限はない。補酵素及び補因子を要求する酵素については、アポ形態、ホロ形態の別をも問わないが、電極反応に際しては活性を発揮できるように構成する。したがって、アポ形態として電極上に保持された場合には、補酵素及び補因子を燃料ゲルに封入する等、活性型に変換するための手段を設けることが必要となる。
本発明のバイオ燃料電池においては、負極は脱水素酵素等の燃料の酸化反応を行う酵素を、正極ではオキシダーゼ等の酸素の還元反応を行う酵素を選択することが好ましい。特には、負極側触媒としてグルコース脱水素酵素、正極側触媒としてビリルビンオキシダーゼが好ましい。例えば、実施例1で使用した負極側触媒としてアシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)NBRC12552株由来のグルコース脱水素酵素、正極側触媒として市販のビリルビンオキシダーゼ(天野エンザイム)等を挙げることができる。
アシネトバクター・カルコアセティカスNBRC12552株由来のグルコース脱水素酵素の配列情報は、GENBANK ACCESSION No : 15871(配列番号1(塩基配列)及び配列番号2(アミノ酸配列))から取得することができる。詳細は、Cleton-Jansen,A.M., Goosen,N., Vink,K. and van de Putte,P.他著、「Cloning, characterization and DNA sequencing of the gene encoding the Mr 50,000 quinoprotein glucose dehydrogenase from Acinetobacter calcoaceticus(アシネトバクター カルコアセティカス由来のMr 50,000のキノプロテイン グルコース脱水素酵素をコードする遺伝子のクローニング、特徴付け、及びDNAシークエンシング)」、JOURNAL Mol. Gen. Genet.、第217巻、第2〜3巻、第430〜436頁、1989年)に記載されている。この酵素は、Acinetobacte細菌のペリプラズム画分に存在しており、酸化により得られた電子を呼吸鎖に渡すことでエネルギー生産に関与している。活性の発現には、PQQとカルシウムイオンが必須で、カルシウムイオンは触媒反応に関与する他にホモ2量体形成にも関係していることが知られている。この酵素は、他のグルコース酸化酵素に比べ、反応速度が非常に速く、また溶存酸素の影響を受けにくいという特徴があるため酵素電極として利用価値が非常に高い酵素である。
ビリルビンオキシダーゼは、銅イオンを活性中心に持つマルチ銅オキシダーゼであり、ビリルビンからビルベルジンへの酸化反応を触媒する酵素である。基質から取り出した電子を用いて分子状酸素を電子還元し水分子を生成する反応を触媒するという性質を有することから、燃料電池の正極触媒としての利用価値が高い。
また、酵素の由来も特に限定されない。したがって、天然に存在する細菌、酵母、及び動植物等の任意の生物体から適当なタンパク質の単離精製技術により調製された天然由来のものであってもよく、遺伝子工学的手法により組換え体として製造されたもの、あるいは化学的に合成されたものであってもよい。また、当該酵素活性を有する生物体自体をも利用することができる。
遺伝子工学的手法により製造する場合には公知の方法を利用することができる。 具体的には、所望の酵素遺伝子の塩基配列を基にして作成したDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法により、生物体由来のゲノムDNA、全RNAから逆転写反応によって合成したcDNA等から所望の酵素をコードする核酸分子を調製することができる。多くの酵素のアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子の塩基配列は公知であり、GenBank、EMBL、DDBJ等の遺伝子配列データベースから取得することができる。一例として、上述のアシネトバクター カルコアセティカス由来のグルコース脱水素酵素(GENBANK ACCESSION No : 15871)の配列情報を配列表の配列番号1(塩基配列)及び配列番号2(アミノ酸配列)に示す。また、ここで提示する配列番号3(塩基配列)及び配列番号4(アミノ酸配列)をも利用することができる。ここで用いられるプローブは、所望の酵素と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドであり、常法に基づいて調製することができる。例えば、ホスホアミダイト法等に基づく化学合成法、既に標的となる核酸が取得されている場合にはその制限酵素断片等が利用可能である。このようなプローブとしては、所望の酵素をコードする核酸分子の塩基配列に基づき、この塩基配列の連続する10以上、好ましくは15以上、更に好ましくは約20〜50の塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。そして、プローブは必要に応じて適当な標識が付されていてよく、このような標識として放射線同位体、蛍光色素等が例示される。
また、所望の酵素遺伝子の塩基配列を基にして作成したプライマーとして用いるPCRによっても同様に、生物体由来のゲノムDNA、cDNAを鋳型として所望の酵素をコードする核酸分子を調製することができる。PCRを利用する場合に用いられるプライマーは、所望の酵素をコードする核酸配列と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドであり、常法に基づいて調製することができる。例えば、ホスホアミダイト法等に基づく化学合成法、既に標的となる核酸が取得されている場合にはその制限酵素断片等が利用可能である。化学合成法に基づきプライマーを調製する場合には、合成に先立って標的核酸の配列情報に基づいてプライマーの設計を行う。プライマーの設計は、所望の領域を増幅するように、例えばプライマー設計支援ソフト等を利用して設計することができる。プライマーは合成後、HPLC等の手段により精製される。また、化学合成を行う場合には市販の自動合成装置を利用することも可能である。このようなプライマーとしては、所望の増幅領域を挟んで設計され、10以上、好ましくは15以上、更に好ましくは約20〜50の塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。
ここで、相補的とは、プローブ又はプライマーと標的核酸分子とが塩基対合則に従って特異的に結合し安定な二重鎖構造を形成できることを意味する。ここで、完全な相補性のみならず、プローブ又はプライマーと標的核酸分子が互いに安定な二重鎖構造を形成し得るのに十分である限り、いくつかの核酸塩基のみが塩基対合則に沿って適合する部分的な相補性であっても許容される。その塩基数は、標的核酸分子を特異的に認識するために十分に長くなければならないが、長すぎると逆に非特異的反応を誘発するので好ましくない。したがって、適当な長さはGC含量等の標的核酸の配列情報、並びに、反応温度、反応液中の塩濃度等のハイブリダイゼーション反応条件など多くの因子に依存して決定される。
更に、常法のホスホルアミダイト法等のDNA合成法を利用して、所望の酵素をコードする核酸分子を化学的に合成することができる。
そして、得られた核酸分子用いて、当業者に公知の遺伝子組換え技術により所望の酵素を製造することができる。
具体的には、所望の酵素をコードする核酸分子を適当な発現ベクター中に挿入し、これを宿主に導入することによって形質転換体を作製する。ここで、利用可能なベクターとしては、外来DNAを組み込め、かつ宿主細胞中で自律的に複製可能なものであれば特に制限はない。したがって、ベクターは、外来遺伝子を挿入できる少なくとも1つの制限酵素部位の配列を含むものである。例えば、プラスミドベクター(pEX系、pUC系、及びpBR系等)、ファージベクター(λgt10、λgt11、及びλZAP等)、コスミドベクター、ウイルスベクター(ワクシニアウイルス、及びバキュロウイルス等)等が包含される。そして、ベクターは、外来遺伝子がその機能を発現できるように組み込まれ、機能発現に必要な他の既知の塩基配列が含まれていてもよい。例えば、プロモータ配列、リーダー配列、シグナル配列、並びにリボソーム結合配列等が挙げられる。プロモータ配列としては、例えば、宿主が大腸菌の場合にはlacプロモータ、trpプロモータ等が好適に例示される。しかしながら、これに限定するものではなく既知のプロモータ配列を利用できる。更に、宿主において表現型選択を付与することが可能なマーキング配列等をも含ませることができる。このようなマーキング配列としては、薬剤耐性、栄養要求性などの遺伝子をコードする配列等が例示される。具体的には、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が例示される。
ベクターへの外来遺伝子の挿入は、例えば、適当な制限酵素で所望の酵素をコードする核酸分子を切断し、適当なベクターの制限酵素部位、又はマルチクローニング部位に挿入して連結する方法などを用いることができるが、これに限定されない。連結に際しては、DNAリガーゼを用いる方法等、既知の方法を利用できる。また、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社)等の市販のライゲーションキットを利用することもできる。
形質転換体の作製に際して宿主となる細胞としては、外来遺伝子を効率的に発現できる宿主細胞であれば、特に制限はない。原核生物細胞を好適に利用でき、特には大腸菌を利用することができる。その他、枯草菌、バシラス属細菌、シュードモナス属細菌等をも利用できる。大腸菌としては、例えば、E.coli DH5α、E.coli BL21、E.coli JM109等を利用できる。更に、原核生物に限定されず真核生物細胞を利用することが可能である。例えば、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母、Sf9細胞等の昆虫細胞、CHO細胞、COS-7細胞等の動物細胞等を利用することも可能である。形質転換法としては、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソームフェクション法、マイクロインジェクション法等を既知の方法を利用することができる。
続いて、得られた形質転換体を、導入された核酸分子の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養し、所望の酵素を製造する。培養は、常法に準じて行うことができ、宿主細胞の栄養生理学的性質を勘案して、培養条件を選択すればよい。使用される培地としては、宿主細胞が資化し得る栄養素を含み、形質転換体におけるタンパク質の発現を効率的に行えるものであれば特に制限はない。したがって、宿主細胞の生育に必要な炭素源、窒素源その他必須の栄養素を含む培地であることが好ましく、天然培地、合成培地の別を問わない。例えば、炭素源として、グルコース、デキストラン、デンプン等が、また、窒素源としては、アンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、ペプトン、カゼイン等が挙げられる。他の栄養素としては、所望により、無機塩類、ビタミン類、抗生物質等とを含ませることができる。宿主細胞が大腸菌の場合には、LB培地、M9培地等が好適利用できる。また、培養形態についても特に制限はないが、大量培養の観点から液体培地が好適に利用できる。
所望の組換えベクターを保持する宿主細胞の選別は、例えば、マーキング配列の発現の有無により行なうことができる。例えば、マーキング配列として薬剤耐性遺伝子を利用する場合には、薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤含有培地で培養することによって行うことができる。
形質転換体の培養物から、所望の酵素を単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いることができる。精製は、上記形質転換体の培養物から、所望の酵素の存在する画分に応じて、一般的なタンパク質の単離精製方法に準じた手法を適用すればよい。具体的には、所望の酵素が宿主細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離、濾過等の手段により宿主細胞を除去して培養上清を得る。続いて、培養上清に、公知のタンパク質精製方法を適宜選択することにより、単離精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、透析、SDS-PAGE電気泳動、ゲル濾過、疎水、陰イオン、陽イオン、アフィニティークロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー等の公知の単離精製技術を単独、又は適宜組み合わせて適用することができる。特にアフィニティークロマトグラフィーを利用する場合、所望の酵素をヒスチジンタグ(His Tag)等のタグペプチドとの融合タンパク質として発現させて、かかるタグペプチドに対する親和性を利用することが好ましい。また、所望の酵素が宿主細胞内で産生される場合には、培養物を遠心分離、濾過等の手段により宿主細胞を回収する。続いて、リゾチーム処理などの酵素的破砕方法、又は超音波処理、凍結融解、浸透圧ショック等の物理的破砕方法等により、宿主細胞を破砕する。破砕後、遠心分離、濾過等の手段により可溶化画分を収集する。得られた可溶化画分を、前述の細胞外に生産できる場合と同様に処理することにより単離精製することができる。
また、アミノ酸配列が公知である酵素については、化学的合成技術によっても製造することができる。例えば、所望の酵素のアミノ酸配列の全部、又は一部を、ペプチド合成機を用いて合成し、得られるポリペプチドを適当な条件の下で、再構築することにより調製することもできる。
本発明で使用する酵素はさらに、天然由来の酵素に人為的に変異を施した改変体であってもよい。ここで、改変体とは、天然由来の酵素の特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有するアミノ酸配列を含むものを意味する。改変とは、改変の基礎となるタンパク質のアミノ酸配列のうち、1又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および付加の少なくとも1つからなる改変が生じていることを意味する。そして、「1又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び付加の少なくとも1つからなる改変」とは、改変の基礎となるタンパク質をコードする遺伝子に対する公知のDNA組換え技術、点変異導入方法等によって、欠失、置換、挿入又は付加することができる程度の数のアミノ酸が、欠失、置換、挿入又は付加されることを意味し、これらの組み合わせをも含む。例えば、このような改変体は、アミノ酸レベルで70 %以上、好ましくは80 % 以上、更に好ましくは90 %以上の相同性を保持するものとすることができる。
このような改変体は、公知の変異導入技術を利用することにより作製できる。例えば、部位特異的突然変異誘発法、PCR等を利用して点変異を導入するPCR突然誘発法、あるいは、トランスポゾン挿入突然変異誘発法などの公知の変異導入技術を利用することができる。市販の変異導入用キット(例えば、QuikChange(登録商標)Site-directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製)等を利用してもよい。また、常法のホスホルアミダイト法等のDNA合成法を利用して、所望の改変を施した酵素をコードする核酸分子を構築することによって行なうことができ、これを、上記した当業者に公知の遺伝子組換え技術により所望の酵素を製造することができる。
酵素電極とする場合、酵素は導電性基材上に保持される。好ましくは、酵素は導電性基板上に固定化される。酵素の固定化は、公知の方法の何れをも利用して行うことができる。例えば、共有結合、物理的吸着、イオン結合、抗体等の生物化学的特異的結合による担体結合法、2以上の官能基をもつ試薬による架橋法、ゲル内に封入する包括法等によって固定化することができる。また、これらを組み合わせてもよく、各々の酵素に最適化な酵素固定化法を適宜選択することが望ましい。包括法としては、種々の天然高分子や合成系高分子等の網目状の三次元構造を持つゲル内に封入する格子型を利用することができる。ゲル化剤としては、燃料ゲルの支持体として上記で例示したものを好適に利用することができ、親水性のポリマーの利用が好ましい。また。透析膜等の半透性膜によって封入するマイクロカプセル型、リン脂質のような液体膜によって封入するリポソーム型等を利用することができる。更に、酵素は結晶状態で固定化してもよく、予め調製した酵素結晶を導電性基板上に固定化しても、また導電性基板上で酵素結晶を調製することにより固定化してもよい。
導電性基材としては、外部回路に接続可能で電子を伝達できる基材であれば特に制限はない。グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンペーパー等のカーボン材、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、パラジウム等の金属又は合金、SnO2、In2O3、WO3、TiO2等の導電性酸化物等が例示できるが、これらに限定するものではない。従来公知の材質の導電性基材を使用することができる。また、これを単層又は2種以上の積層構造をもって構成してもよい。また、導電性向上のため、市販のケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭粉末等の導電性カーボン微粒子を基材に塗布してもよい。そして、導電性基材の大きさ及び形状等は特に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜調整することができる。特に本発明の酵素結晶固定化電極は、マイクロメートルオーダーに電極面積を小さくした微小電極として構成することができる。
本発明の1の好適実施形態のバイオ燃料電池について、本実施形態の燃料電池セルを模式的に表した概念図である図1を用いて説明する。正極21と負極22は、燃料ゲル11を挟んで対向するように構成し、正極21と負極22は外部回路によって接続されている。燃料ゲル11には、燃料及び電解質が含まれ、必要に応じてメディエーター、及び緩衝剤等を含ませている。次に、本実施形態における発電機構を説明する。負極22側では、燃料の酸化反応に伴い電子とイオンが生じる。生じたイオンは、燃料ゲル11を介して正極21側に移動する。つまり、燃料ゲル11は、燃料の補給のみならず、電解質を含むことによりイオン伝達媒体としての役割をも果たす。そのため、高価な固体電解質膜等の隔膜を別途設ける必要がなく、更なるコストダウン及びシステム全体の簡素化を図ることができる。一方、電子は外部回路を介して正極21側に移動する。かかる構成を採用する場合、燃料ゲルは電子を伝導するものであってはならない。正極21側では、空気中の酸素を取り込み、負極22側から移動してきたイオンと電子による還元反応が行われる。そして一連の電子化学反応により、電子が外部回路を移動する際に電気エネルギーが取り出される。
本発明の別の実施形態について、これを模式的に表した概念図である図2を用いて説明する。本実施形態において、正極21と負極22は、固体電解質膜等の隔膜41を挟んで対向するように構成している。そして、負極22の隔膜41とは反対側に接触させて燃料ゲル11が配置されている。次に、本実施形態における発電機構を説明する。上記した通り、負極22側では燃料の酸化反応に伴い電子とイオンが生じ、イオンは隔膜41を介して正極21側に移動する。一方、電子は外部回路を介して正極21側に移動する。正極21側では、空気中の酸素を取り込み、負極22側から移動してきたイオンと電子による還元反応が行われる。そして一連の電子化学反応により、電子が外部回路を移動する際に電気エネルギーが取り出される。
このように構成することにより乾電池のような簡易な構造とすることができ、従来の液体燃料を使用したバイオ燃料電池に比べ小型化、及び簡素化を図ることができる。また、燃料ゲルが電極に接触し電極表面を押さえるため、電極表面からの酵素の離脱、及び酵素からの補酵素の離脱を抑制でき、液体燃料の場合に比べて電池出力の低下を招かず長期間に亘って安定した出力が得られる。更に、液体燃料よりも燃料を高濃度に調製できると共に、燃料の拡散性及び触媒との反応性等を考慮してゲル内の燃料濃度を調節でき、これによっても長期間に亘って安定した出力が得られるとの効果を奏することができる。そして、ゲル燃料は液体燃料に比べ燃料の保管及び交換が簡単になることから取扱性が向上する。親水性ゲルとして調製することが好ましい。親水性ゲルとすることで、通常の存在状態では親水性を示す酵素と燃料との接触性を向上させることができる。これにより、酵素反応が円滑に進行して燃料効率及び電極反応効率がより向上し、電池性能が更に向上する。したがって、本願発明により、システムの小型化、簡便性及び取扱性が向上したバイオ燃料電池が提供され、卓上電卓等の携帯型機器や心臓ペースメーカー等の体内埋め込み式機器等の小型電子機器の電源等への応用が可能である。
以下、実施例において本発明を詳細に説明する。本実施例においては酵素固定化電極を使用したバイオ燃料電池について例示的に説明するが、正極、負極共に金属触媒電池の使用を排除するものではなく、金属触媒をも好適に使用することができる。
(実施例1)燃料電池セルの作製と電池出力測定
本実施例においては、ビリルビンオキシダーゼ電極を正極、グルコース脱水素酵素電極を負極とし、アガロースゲルに封入したグルコースをゲル燃料とするバイオ燃料電池セルを作製した。燃料電池セルは燃料電池の作動を司る最小単位であり、両極間を繋ぐ外部回路をもって燃料電池が構築できる。そして作製したバイオ燃料電池の電池出力を測定した。
1.正極用酵素溶液の調製
正極用酵素溶液として、ビリルビンオキシダーゼ(Bilirubin Oxidase:天野エンザイム、BOアマノ3、以下「BOD」と略する。)を適当量の1 Mの Sodium phosphate Bufferに溶解し、280 nm吸光度測定から吸光度1=1.0 mg/mlと換算して20 mg/mlとなるように濃度調整した。ここで、水は全てミリポア社製超純水製造装置Direct-Q UVで精製したものを使用した。また、リン酸水素二ナトリウム(無水)(和光純薬197-02865)142 gを水に溶解、1 Lにメスアップして、1 M リン酸水素二ナトリウム水溶液とした。リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬192-02815)156 gを水に溶解、1 Lにメスアップして、1 Mリン酸二水素ナトリウム水溶液とした。これら水溶液を25 ℃でpH 7.0となるよう混合し、その後、蒸気加熱滅菌(121 ℃、20分)処理を行い、1 M Sodium phosphate Bufferとした。
2.正極の調製
カーボンペーパー(東レTGP-H-120)を1.4 cm×1.4 cmにカッターで切断した。活性炭粉末、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を乳鉢で混合の後、適当量をスパチュラでカーボンペーパー両面に塗抹して60 ℃で8時間以上乾燥させた。続いて、カーボンペーパー1枚毎に上記1で調製した正極用酵素溶液0.2 mlを加え、4 ℃で一晩静置して酵素を固定した。使用時には水で軽く洗浄して余分な酵素を落として使用した。
3.負極用酵素溶液の調製
負極用酵素溶液として、グルコース脱水素酵素溶液を調製した。なお、グルコース脱水素酵素としてアシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)NBRC12552株由来のグルコース脱水素酵素を以下の通り調製した。
アシネトバクター・カルコアセティカスNBRC12552株由来のグルコース脱水素酵素(以下、「sPQQGDH」と略する)遺伝子(GeneID:X15871)をベクターpET-22b(+)のマルチクローニング部位(NdeI/BamHI)に挿入した。sPQQGDH遺伝子を挿入したpET-22b(+)ベク
ターを用いて大腸菌BL21(DE3)株をトランスフォーメーションし、コロニーをLB/Amp(含アンピシリン50 μg/mL)培地300 mLに接種し、37 ℃で一晩培養した。つぎにジャーファーメンターにLB/Amp培地を20 L仕込み、前培養液200 mlを加え、37℃で約1時間(O.D.=0.1になるまで)培養し、0.01 mM IPTGを加えてタンパク発現誘導をかけ、28 ℃で一晩振盪培養した。ここで発現させたタンパク質の塩基配列を配列表の配列番号3に、また該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列表の配列番号4に示す。培養液を遠心、上清を除去した沈殿を−80 ℃で凍結保存した。凍結保存されたタンパク質発現菌体5 gをPBSバッファー15 mLに懸濁した。氷上で、超音波破砕機XL2000(MISONIX)を用いて15 Wで15秒間破砕を10回行なった。破砕した液は4 ℃、5000 rpmで20分間遠心分離し、分取した上清をCellulose Acetate 0.45um filter (ADBANTEC)でフィルタリングしたものをサンプルとした。オープンカラム(Bio-Rad)にヒスチジンタグ精製用レジン:TALON(Clontech)を10 mL充填し、ベッドボリュームの5倍量の平衡化バッファー(PBS + 300 mM NaCl)で平衡化した。前処理を行なったサンプルをカラムにアプライし、ベッドボリュームの5倍量の洗浄バッファー(PBS + 300 mM NaCl + 10 mM imidazol)で洗浄後、ベッドボリュームの3倍量の溶出バッファー(PBS + 300 mM NaCl + 150 mM imidazol)で溶出した。回収した溶出液をAmicon Ultra-4 (Millipore)を用いて濃縮し、微量透析装置 低速タイプおよび透析カップMWCO1200(共にBio-Tec)を用いて、透析バッファー(10 mM Tris-HCl(pH 7.5)+ 0.1 mM CaCl2)を一時間ごとに交換し合計に時間透析した。透析サンプルは4 ℃、15000 rpmで5分間遠心分離し、分取した上清を20 mg/mL以上になるように再度濃縮した。
4.負極の調製
上記3で調製した負極用酵素溶液に1 mM CaCl2、1 μm PQQとなるよう添加し4℃でインキュベートした。カーボンフェルト(カーボンマット50 g/m2のもの)を1.4 cm×1.4 cmにカッターで切断した。酵素溶液に更に0.1 M Sodium phosphate Buffer pH 7.0、5 mM mPMSとなるよう添加した溶液0.22 mlをカーボンフェルトに滴下、風乾して使用した。
5.燃料ゲルの調製
1(w/v)% Agarose、60 mM D-Glucose、0.1 M Sodium phosphate Buffer pH 7.0に調製した溶液を電子レンジで溶解、アクリル製型枠に注いで固めた。
6.燃料電池セルの組み立て
本実施例においては、2種類の燃料電池セルを組み立てた。図1の燃料電池セルは、アクリル製型枠31に、正極21|燃料ゲル11|負極22の順番で重ね四方をネジ止めし組み立てた。正極21及び負極22は共に14mm×14mmとした。外枠はアクリル製型枠31とし、厚さ1 mmのアクリル板31b、厚さ2 mmのアクリル板の中央部に1cm×1cmの角穴を開けたもの31cを使用した。角穴の四辺にはネジ止め用に穴を開けた。燃料ゲル11は、アクリル板の中央部に角穴を開けたアクリル製型枠31aに保持し装着した。アクリル板の厚さは、装着する燃料ゲルの厚さに従って適宜2 mm、5 mm、10 mmとした。なお、集電板としてチタンメッシュ32(Alfa Aesar 40921、10mm幅×40mm長に切断して使用)、スペーサーとして0.5 mm厚のシリコンシート33(アズワン等)を使用し、正極21及び負極22と燃料ゲル11の間のシリコンシート33bの中央部には14 mmの角穴を開け、他のシリコンシート33aには角穴は開けなかった。上記手順により組み立てた燃料電池セルの写真を図3に示す。パネルAは側面像、パネルBは正面像である。
もう一つの燃料セルを図2に示す。アクリル製型枠31に、正極21|隔膜41|負極22|燃料ゲル11の順番で重ね四方をネジ止めし組み立てた。正極21及び負極22は共に14mm×14mmとした。外枠はアクリル製型枠31とし、厚さ1 mmのアクリル板31b、厚さ2 mmのアクリル板の中央部に1cm×1cmの角穴を開けたもの31cを使用した。角穴の四辺にはネジ止め用に穴を開けた。燃料ゲル11は、アクリル板の中央部に角穴を開けたアクリル製型枠31aに保持し装着した。アクリル板の厚さは、装着する燃料ゲルの厚さに従って適宜変更した。隔膜41はナフィオン膜(Aldrich Nafion 115)又はセルロース膜(和光純薬工業 生化学用透析膜 047-30941)を使用した。なお、集電板としてチタンメッシュ32(Alfa Aesar 40921、10mm幅×40mm長に切断して使用)、スペーサーとして0.5 mm厚のシリコンシート33(アズワン等)を使用し、正極21及び負極22と隔膜41の間のシリコンシート33bの中央部には14 mmの角穴を開けたが、他のシリコンシート33aには角穴は開けなかった。
6.電池出力測定
電子負荷装置(菊水電子PLZ-164WA、シーケンス作成・制御ソフトウェアWavy for PLZ4W)を使用し、0.1 mAステップで10秒ずつ負荷を上げ、安定値を記録した。図4のグラフは、図1のセルで燃料ゲルの厚みを2 mm、5 mm、10 mmと変えて電池出力を測定し、比較した結果を示す。何れの場合も良好な電池出力が確認されたが、燃料ゲルの厚みを2 mmとして調製すると5 mm及び10 mmの場合と比べて電池出力が大きくなった。図5のグラフは、図4の結果を受けて燃料ゲルの厚みを2 mmとし、図2のセルで隔膜をナフィオン膜又はセルロース膜として両者間における電池出力を比較した結果を示す。何れを隔膜としても図1のセルよりも電池出力は大きくなった。以上の結果から、燃料をゲル形状としても燃料電池として十分稼動できることが判明した。また、システム全体の簡素化、小型化、及び低コスト化の観点からは図1のセルが優れているが、電池出力は図2のセルの方が若干優れていることが確認できた。したがって、何れのシステムを採用するかは用途に応じて決定できる。
(実施例2)ゲル支持体濃度の比較
本実施例においては、ゲル支持体(アガロース)濃度が電池出力に与える影響を検討した。
燃料ゲルの調製においてAgarose濃度を0.10 (w/v)%から10 (w/v)%の範囲で変えて調製したことを除いては、実施例1と同様に燃料電池セルを構築して電池出力を測定した。なお、ここで検討した燃料電池セルは、図1に示す(正極21|燃料ゲル11|負極22)構成で組み立てたものを使用した。電池出力測定した結果を図6に示す。0.10 (w/v)%から1 (w/v)%で出力にほとんど変化が無く、10 (w/v)%では出力が低下した。先行技術の項で特許文献10として示した特開2006-24555号公報の図10と異なり、ゲル支持体は燃料ではないためAgarose濃度が高い方が高出力とはならないことが示された。また、10 (w/v)%で出力が低下したのはゲル中の燃料の拡散速度が低下したためと考えられ、ゲル支持体の濃度は、燃料の拡散速度を考慮して設定することが好ましいことが示された。
以上を鑑みると、アガロース濃度を10 (w/v)%未満、若しくは5 (w/v)%未満となるように調製することが好ましく、特には0.1〜1(w/v)%の範囲で調製することが好ましいことが理解される。これをゲル強度に換算すると、当該アガロースは1 (w/v)%当たり1200 g/cm2であるので、12000 g/cm2未満、若しくは6000 g/cm2未満が好ましく、特には120〜1200 g/cm2が好ましい。
(実施例3)ゲル支持体種類の比較
本実施例においては、ゲル支持体種類(ゼラチン)が電池出力に与える影響を検討した。
燃料ゲルの調製において以下の手順で調製したことを除いては、実施例1及び2と同様に燃料電池セルを構築して電池出力を測定した。ゼラチン燃料ゲルの調製は、5 (w/v)%の Gelatin from Bocine Bone (和光純薬)、60 mM D-Glucose、0.1 M Sodium phosphate Buffer pH 7.0に調製した溶液を電子レンジで加熱・溶解後、アクリル製型枠に注いで固めて行った。なお、ここで検討した燃料電池セルは、実施例2と同様、図1に示す(正極21|燃料ゲル11|負極22)構成で組み立てたものを使用した。電池出力測定した結果を図7に示す。図6との比較により、ゼラチンであってもアガロースと同様の効果が得られた。また、先行技術の項で特許文献10として示した特開2006-24555号公報の図10と異なり、ゲル支持体は燃料ではないため多糖類以外のゲル支持体でも同様の効果を得ることができることが示された。
以上を鑑みると、ゼラチン濃度を5 (w/v)%で調製することが好ましい。これをゲル強度に換算すると、当該ゼラチンは1 (w/v)%当たり210〜250 g/cm2であるので1050〜1250 g/cm2となり、アガロースの結果と一致した。
本発明は、バイオ燃料電池に関し、バイオ燃料電池が要求されるあらゆる分野、特に、電子、医療、食品、環境分野等の産業分野において利用可能である。特に卓上電卓等の携帯型機器や心臓ペースメーカー等の体内埋め込み式機器等の小型電子機器の電源等への応用が可能である。
燃料ゲル 11
正極 21
負極 22

Claims (7)

  1. イオン伝導性を有する物質を介して対向する正極及び負極と、ゲル構造の支持体内に燃料が封入された燃料ゲルとを備えたゲル構造を利用したバイオ燃料電池であって、
    前記負極、前記燃料ゲル、前記正極の順に積層され、前記燃料ゲルの三次元構造内に前記イオン伝導性を有する物質が前記燃料と共に封入され、
    前記支持体は前記燃料とは別個の物質であり、前記正極又は前記負極の何れか一方若しくは双方の少なくとも一部に生体触媒を含むバイオ燃料電池。
  2. 前記支持体が、天然高分子又は合成高分子により構成される請求項1に記載のバイオ燃料電池。
  3. 前記支持体が、親水性分子により構成される請求項1又は2に記載のバイオ燃料電池。
  4. 前記支持体が、アガロース、ゼラチン、アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルアルコールから選択される請求項1〜3の何れか一項に記載のバイオ燃料電池。
  5. 前記支持体のゲル強度が、120〜1200g/cm2である請求項1〜4のいずれか一項に記載のバイオ燃料電池。
  6. 前記負極側の生体触媒が、グルコース脱水素酵素である請求項1〜の何れか一項に記載のバイオ燃料電池。
  7. 前記正極側の生体触媒が、ビリルビンオキシダーゼである請求項1〜の何れか一項に記載のバイオ燃料電池。
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