JP6385775B2 - 創傷治癒用パッチ - Google Patents

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Description

本発明は、創傷治癒用パッチに関し、特に、簡便に、高い安全性及び低いコストで、電気による創傷治癒を施すことが可能な創傷治癒用パッチに関する。
生体組織に生じた創傷部位に電流を流すと、創傷部位の治癒が早まるという現象が知られている(非特許文献1、2参照)。かかる現象を利用した治療は、一般的に、医療用電気刺激装置を用いて施されている。
Caig, C. D. M. C., Rajnicek, A. N. N. M., Song, B., & Zhao, M. I. N. (2005). Controlling Cell Behavior Electrically: Current Views and Future Potential, (198), 943-978. doi:10.1152/physrev.00020.2004. Zhao, M., Song, B., Pu, J., Wada, T., Reid, B., Tai, G., Penninger, J. M. (2006). Electrical signals control wound healing through phosphatidylinositol−3−OH kinase−gamma and PTEN. Nature, 442(7101), 457-60. doi:10.1038/nature04925.
しかしながら、上記の医療用電気刺激装置を用いた治療では、治療場所が患者のベッドサイド等に限定されたり、装置及びその配線が物理的に邪魔になり治療上の操作が煩雑になったりするという問題があった。また、装置の出力によっては患者が疼痛を感じる虞があった。更には、治療コストが比較的高くなってしまうという問題もあった。
そこで、本発明は、簡便に、高い安全性及び低いコストで、電気による創傷治癒を施すことを可能にする創傷治癒用パッチを提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明の創傷治癒用パッチは、酸化還元反応を触媒する酵素が担持された正極(カソード)又は負極(アノード)を少なくとも1つ含む複数の電極と、前記複数の電極を電気的に接続する電子伝導性の導電性部材と、前記複数の電極に対して接触した状態で設けられるイオン伝導性の導電層とを含み、前記導電層のうち前記複数の電極と接触している部分における前記導電層の厚さが、前記導電層のうち前記複数の電極と接触していない部分における前記導電層の厚さと比較して大きいことを特徴とする。
また、本発明の創傷治癒用パッチでは、前記導電層は、前記酵素の基質を含むことが好ましい。
更に、本発明の創傷治癒用パッチでは、前記複数の電極は、実質的に水を含まないことが好ましい。
更に、本発明の創傷治癒用パッチでは、前記複数の電極及び前記導電性部材を封止するための外面カバーを更に含むことが好ましい。
更に、本発明の創傷治癒用パッチでは、前記複数の電極は、正極がその両側を負極に挟まれるように設けられることが好ましい。
更に、本発明の創傷治癒用パッチでは、前記複数の電極間の距離を変更するための電極間距離変更手段を備えることが好ましい。
更に、本発明の創傷治癒用パッチでは、前記複数の電極及び前記導電性部材が前記導電層に包埋されていることが好ましい。
本発明によれば、簡便に、高い安全性及び低いコストで、電気による創傷治癒を施すことを可能にする創傷治癒用パッチを提供することができる。
(a)、(b)は、使用前の状態における本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある指と共に示す図である。(a)に、パッチを斜視図で示し、(b)に、(a)に示す線I−Iに沿う面による本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。 (a)、(b)は、使用している状態における本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある指と共に示す図である。(a)に、パッチを斜視図で示し、(b)に、(a)に示す線II−IIに沿う面による本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。 (a)、(b)は、使用前の状態における本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある指と共に示す図である。(a)に、パッチを斜視図で示し、(b)に、(a)に示す線III−IIIに沿う面による本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。 使用前の状態における本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチの変形例を示す図である。 (a)、(b)は、使用前の状態における本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある眼と共に示す図である。(a)に、パッチを斜視図で示し、(b)に、(a)に示す線IV−IVに沿う面による本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。 (a)、(b)は、使用している状態における本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある眼と共に示す図である。(a)に、パッチを斜視図で示し、(b)に、(a)に示す線V−Vに沿う面による本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。 (a)は、(試験2)において測定した、図1、2に示す本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチのタイプの創傷治癒用パッチ(負極:FDH担持負極)における、セル電圧と電流密度及び電力密度との関係(出力性能評価の結果)を示すチャートを示し、(b)は、(試験3)において測定した、図1、2に示す本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチ(負極:FDH担持負極)における、経過時間とパッチの電流値との関係(耐久性能評価の結果)を示すチャートを示す。 (a)は、(試験4)において構築したインビトロ創傷治癒アッセイ系を示し、(b)は、(a)に示すインビトロ創傷治癒アッセイ系における細胞遊走の傾向の評価方法の説明図を示す。 (a)は、正常ヒト角膜上皮細胞の培養を行っていないインビトロ創傷治癒アッセイ系を示し、(b)は、チャネルの断面積を0.025mm2とした場合のチャネルを流れる電流の電流密度(μA/cm2)の経時的変化を表すチャートを示す。 (a)(i)〜(iii)は、インビトロ創傷治癒アッセイの結果を示し、(b)は、(a)に示す結果のまとめを示す。 (a)(i)に、(試験1)「D1.」において作製した図3、4に示す本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチのタイプの創傷治癒用パッチ(絆創膏タイプ)の写真を示し、(a)(ii)に、(a)(i)に示す創傷治癒用パッチを指に貼り付けた様子の写真を示す。(b)(i)に、(試験1)「D2.」において作製した図5、6に示す本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチのタイプの創傷治癒用パッチ(コンタクトレンズタイプ)の写真を示し、(b)(ii)に、(b)(i)に示す創傷治癒用パッチをガラス球に貼り付けた様子の写真を示す。
以下、図面を参照して、本発明の創傷治癒用パッチの実施形態について詳細に例示説明する。
本発明の創傷治癒用パッチは、酵素反応によって発生させた電流を創傷部位に流し、創傷治癒の効果を得るためのパッチである。このパッチは、創傷部位に貼り付けて用いられる。
図1(a)、(b)に、使用前の状態における本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある指と共に示す。図1(a)に、パッチを斜視図で示し、図1(b)に、図1(a)に示す線I−Iに沿う面による本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。
図2(a)、(b)に、使用している状態における本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある指と共に示す。図2(a)に、パッチを斜視図で示し、図2(b)に、図2(a)に示す線II−IIに沿う面による本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。
本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチは、主として皮膚の創傷部位に貼り付けて使用される絆創膏タイプのものである。
本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチ60(以下、「パッチ60」ともいう)は、1つの正極(カソード)2a、及び2つの負極(アノード)2b(2b1、2b2)からなる3つの電極2と、正極2aと負極2b1とを電気的に接続する導電性部材4x、及び正極2aと負極2b2とを電気的に接続する導電性部材4yからなる導電性部材4と、3つの電極2(2a、2b)に対して接触した状態で設けられる導電層5を含む。ここで、正極2aには、還元反応を触媒する酵素3aが担持され、負極2b(2b1、2b2)には、酸化反応を触媒する酵素3b(3b1、3b2)が担持されている。また、導電層5は、酵素3(3a、3b)の基質を含む。
なお、このパッチ60では、導電層5は、電解質、水を更に含んでいる。また、導電層5は、正極2a及び負極2b(2b1、2b2)の両方に接触している。
特に、この第一実施形態のパッチ60では、1つの正極(カソード)2aと2つの負極(アノード)2b(2b1、2b2)とが、その延在方向を揃えて並列され、ここで、正極2aがその延在方向に直交する方向に関して2つの負極2(2b1、2b2)に挟まれている。
ユーザーは、パッチ60を、創傷部位1の周囲の生体組織50に、貼り付けることによって、パッチ60を使用することができ、特に、図2(a)、(b)に示すように、パッチ60を、電極2のうちの特に正極2aが生体組織50(図2では、指51)の創傷部位1に位置するように、貼り付けることによって、パッチ60を使用することが好ましい。
以下、本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチ60の作用効果について記載する。
前述の通り、第一実施形態のパッチ60では、導電層5が、酵素3(3a、3b)の基質を含む。負極2b(2b1、2b2)において酵素3b(3b1、3b2)による酸化反応により発生した電子は、導電性部材4(4x、4y)を通って、正極2aに送達され、正極2aにおいて酵素3aによる還元反応に用いられる。ここで、電極2(2a、2b)が、導電層5を介して生体組織50に接触しているため、正極2a−負極2b1間にある生体組織50部分、及び正極2a−負極2b2間にある生体組織50部分に電流が流れる。
ここで、創傷治癒のメカニズムについて記載する。
生体組織50においては、表面と深層との間に電位差がある。特に、上皮細胞は、ナトリウムイオンを深層に輸送し、塩化物イオンを表面に輸送するイオンチャネルを有し、このイオンチャネルの働きにより、イオン分布の動的平衡を保っている。このときの表面と深層との間の電位差は約25〜40mVであるとされている。生体組織50に創傷部位が生じた場合、上記イオン分布の動的平衡が崩れ、創傷部位50の周囲でイオン流が生じ、これに伴って電流が流れる。このときの電流は約10〜100μA/cm2であるとされている。一方、分子メカニズムは未解明であるものの、ヒト等の動物細胞の表皮細胞は、負極2b(2b1、2b2)側から正極2a側に遊走する電気走性を有することが知られている。そのため、創傷部位1に流れる電流により、上記の細胞の遊走が生じ、細胞が、創傷部位1の周囲の生体組織50から創傷部位1に集まり、そして、創傷が治癒していく。
第一実施形態のパッチ60を創傷部位1の周囲の生体組織50に貼り付けた場合、前述の細胞の遊走が創傷部位1の周囲で促進され、細胞が、創傷部位1の周囲の生体組織50から創傷部位1に集中する。この作用により、創傷治癒の効果を高めることができる。
細胞は、負極2b(2b1、2b2)側から正極2a側に向かって遊走する特性があるため、パッチ60を用いて創傷を治癒する場合、正極2aを創傷部位1に位置させることが好ましい。
ここで、特に、この第一実施形態のパッチ60では、前述の通り、ユーザーは、図2(a)、(b)に示すように、パッチ60を、電極2のうちの特に正極2aが生体組織50(図2では、指51)の創傷部位1に位置するように、貼り付けることによって、使用することができる。
そのため、第一実施形態のパッチ60によれば、正極2aを創傷部位1に位置させつつ、負極2bを創傷部位1の周囲の生体組織50のうち創傷部位1を挟む2箇所に位置させることが可能となり、創傷部位1の周囲の生体組織50から創傷部位1に向かう細胞の遊走を促進させることができる。そのため、パッチ60による創傷治癒の効果を特に高めることができる。
また、電気による創傷治癒を施すために一般的に用いられるデバイスとして、医療用電気刺激装置が挙げられるところ、医療用電気刺激装置を用いた場合、治療場所が患者のベッドサイド等に限定されたり、装置及びその配線が物理的に邪魔になり治療上の操作が煩雑になったりするという問題がある。
第一実施形態のパッチ60によれば、治療場所や治療操作の点で制約がある大がかりな装置を用いることなく、簡便に、電気による創傷治癒を施すことが可能となる。
更に、一般的に、生体に電流を流した際の電流密度が一定以上(例えば、500μA/cm2以上)になった場合、患者は疼痛を感じることがわかっており、前述の医療用電気刺激装置を用いた場合、装置の出力によっては患者が疼痛を感じる虞がある。
第一実施形態のパッチ60によれば、特に制御等を必要とすることなく、患者が疼痛を感じない程度の電流密度で創傷部位に電流を流すことができる。そのため、高い安全性で、電気による創傷治癒を施すことが可能となる。
更に、特に、創傷が軽度であり、自然治癒も見込まれる場合に、前述の医療用電気刺激装置を用いた場合、治療コストが比較的高くなってしまうという問題もある。
第一実施形態のパッチ60は、酵素3(3a、3b)やその基質といった人体に無害な物質を用いて電気を発生させるため、金属性の電極や電解液等の高価な材料の必要性が低い。そのため、第一実施形態のパッチ60によれば、低コストで、電気による創傷治癒を施すことが可能となる。
前述の効果の他、パッチ60を創傷部位1に用いれば、パッチ60を酵素反応に適した温度条件下に置くことができるため、酵素3(3a、3b)の酸化還元反応を利用して電流を発生させるバイオ発電を効率的に行うことができる。
また、パッチ60は金属性の電極等を使用しないため、廃棄処理を容易にして、環境負荷を低減することもできる。
更に、第一実施形態のパッチ60では、2つの電極2(2a、2b)に対して接触した状態で設けられる導電層5を含むため、パッチ60を創傷部位1の周囲の生体組織50に貼り付けた場合、生体組織50と電極2(2a、2b)との間に導電層5が存在することとなる。
そのため、電極2(2a、2b)が直接的に創傷部位1に接触することを防ぎ、創傷部位1の周囲にある細胞に対する損傷を低減することができる。また、導電層5が存在することにより、パッチ60の電極(2a、2b)を創傷部位1の周囲の所望の位置に正確に貼り付けられなかった場合であっても、導電層5を介して創傷部位1に電流を流すことができ、パッチ60による創傷治癒の効果を得ることができる。
また、第一実施形態のパッチ60では、酵素3(3a、3b)が担持された電極2(2a、2b)は、凍結乾燥等により乾燥されている。この構成によれば、パッチ60の製造時から使用時までの間に酵素3が失活することを防ぐことができる。
ここで、第一実施形態のパッチ60では、電極2(2a、2b)は、滅菌洗浄されていることが好ましい。この構成によれば、創傷部位1の周囲にある細胞が細菌に侵され、死滅することを防ぐことができる。そのため、本発明の創傷治癒の効果を更に高めることができる。
なお、滅菌洗浄の手法としては、特に限定されることなく、例えば、滅菌したバッファを用いた洗浄等が挙げられる。
特に、第一実施形態のパッチ60では、正極2aの平面視における面積は、創傷部位1の平面視における面積と比較して小さくなるように、定めてよい。正極2aの面積を創傷部位1の面積と比較して小さくすれば、正極2a−負極2b間を流れる電流全てが、創傷部位1において細胞の遊走を促進させる作用に寄与することができ、パッチ60による創傷治癒の効果を特に高めることができる。
特に、第一実施形態のパッチ60では、正極2a−負極2b1間の距離、及び正極2a−負極2b2間の距離は、負極2b1及び負極2b2が、平面視において創傷部位1の外縁に位置することができるように、定めてよい。負極2b1及び負極2b2を創傷部位1の外縁に位置させれば、創傷部位1により直接的に電流を流すことができ、パッチ60による創傷治癒の効果を特に高めることができる。
この点、例えば、パッチ60は、正極2a−負極2b1間の距離、及び正極2a−負極2b2間の距離を変更するための電極間距離変更手段を備えることが好ましい。
正極2a及び負極2b(2b1、2b2)の平面視形状としては、図1、2に示すパッチ60では、長方形としているが、本発明では、これに限定されることなく、例えば、円形、楕円形、多角形等としてもよい。
特に、この第一実施形態のパッチ60は、導電層5が、電解質を含むため、導電層5の抵抗値を低減し、導電性を高めることができる。
ここで、パッチ60における導電層5の厚さとしては、創傷部位1近傍及び生体組織50表面を流れる電流を十分に得る観点から、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることが更に好ましく、また、創傷部位1近傍及び生体組織50表面を流れる電流よりも導電層5を流れる電流の方が支配的になってしまうことを防ぐ観点から、5.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることが更に好ましく、0.5mmであることが特に好ましい。
導電層5の厚さは、導電層5に含めることが可能な酵素3の基質の量を十分にする観点から、正極2a及び/又は負極2bに接触している部分において(例えば、正極2aをBOD担持正極(後述)、負極2bをFDH担持負極(後述)とした場合には、特に負極2bに接触している部分において)比較的厚く、例えば、0.5mm〜2mmとし、また、創傷部位1近傍及び生体組織50表面を流れる電流を効率的に得る観点から、正極2a−負極2b間等の正極2a及び負極2bに接触していない部分において比較的薄く、例えば、0.1mm〜1mmとすることが好ましい。
なお、図1、2に示すパッチ60では、導電層5が、正極2a及び負極2b(2b1、2b2)の両方に接触しているが、本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチでは、導電層5が、正極側導電層(図示せず)と負極側導電層(図示せず)とに隔離されていても、創傷治癒用パッチによる創傷部位1に電流を流す効果が得られる。
特に、第一実施形態のパッチ60は、図1、2に示すように、2つの電極2(2a、2b)、導電性部材4、導電層5を封止する外面カバー7を含む。なお、「封止する」とは、少なくとも、パッチ60を創傷部位1に貼り付けて使用している状態で封止することを意味する。外面カバー7は、2つの電極2(2a、2b)、導電性部材4、導電層5を一体化させると共に、パッチ60の創傷部位1への貼り付けを可能にする。
パッチ60には、2つの電極2の生体組織50に貼り付ける側に貼り付けられる内面カバー(図示せず)が更に設けてられていてもよい。内面カバーは、パッチ60の生体組織50に貼り付けられる面を保護することができる。
パッチ60には、パッチ60の全体形状を整えるための部材(フレーム等)(図示せず)が更に設けてられていてもよい。
特に、導電層を含むパッチ60には、電極2(2a、2b)の乾燥状態を保持するため、電極2(2a、2b)と導電層5とを隔離する隔離部材(図示せず)を更に含んでもよい。この隔離部材は、着脱可能に設けることができる。
図3(a)、(b)に、使用前の状態における本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある指と共に示す。図3(a)に、パッチを斜視図で示し、図3(b)に、図3(a)に示す線III−IIIに沿う面による本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。
本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチは、主として皮膚の創傷部位に貼り付けて使用される絆創膏タイプのものである。
以下では、図1、2に示す本発明の第一実施形態の創傷治癒用パッチと同様の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチ70(以下、「パッチ70」ともいう)は、1つの正極(カソード)2a、及び1つの負極(アノード)2bからなる2つの電極2と、正極2aと負極2bとを電気的に接続する導電性部材4と、2つの電極2(2a、2b)に対して接触した状態で設けられる導電層5とを含む。パッチ70の他の要素は、パッチ60の場合のものと同様である。
特に、この第二実施形態のパッチ70では、負極2b(アノード)が正極(カソード)2aの周囲に設けられている、言い換えれば、正極2aは負極2bに囲繞されるように設けられている。
ここで、特に、この第二実施形態のパッチ70では、ユーザーは、図示しないが、パッチ70を、電極2のうちの特に正極2aが生体組織50(図2では、指51)の創傷部位1に位置するように、貼り付けることによって、使用することができる。
そのため、第二実施形態のパッチ70によれば、正極2aを創傷部位1に位置させつつ、負極2bを創傷部位1の周囲の生体組織50に位置させることが可能となり、創傷部位1の全外縁において細胞の遊走を促進させることができる。そのため、パッチ70による創傷治癒の効果を特に高めることができる。
なお、本発明の創傷治癒用パッチでは、正極2aがその両側を負極2bに挟まれるように設けられることが好ましく、第一実施形態のパッチ60の電極の構成、及び第二実施形態のパッチ70の電極の構成に限定されることはない。具体的には、本発明の創傷治癒用パッチでは、正極2aを通る任意の方向の直線上に負極2b部分が2つ存在することが好ましい。
かかる構成によれば、前述の通り、パッチ60による創傷治癒の効果を特に高めることができる。
特に、第二実施形態のパッチ70では、正極2a及び負極2b(2b1、2b2)の平面視形状は、創傷部位1の平面視形状に合わせて、定めてもよい。図4に、使用前の状態における本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチの変形例を示す。正極2a及び負極2bの平面視形状を創傷部位1の平面視形状(図3等参照)に合わせれば、創傷部位1の全外縁において細胞の遊走を効果的に促進させることができる。そのため、パッチ70による創傷治癒の効果を特に高めることができる。
この点、例えば、パッチ70では、正極2a及び負極2b(2b1、2b2)は、可撓性や伸縮性を有する等、変形可能であることが好ましい。
特に、図3、4に示すに示すパッチ70では、正極2aの周囲に負極2bが設けられることから、正極2aのサイズが負極2bのサイズと比較して小さいことが、好ましい。そのため、正極2aは、本発明の創傷治癒の効果を高める観点から、比較的小さいサイズであっても十分な出力性能を有するものであることが好ましい。
図5(a)、(b)に、使用前の状態における本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある眼と共に示す。図5(a)に、パッチを斜視図で示し、図5(b)に、図5(a)に示す線IV−IVに沿う面による本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。
図6(a)、(b)に、使用している状態における本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチを創傷部位のある眼と共に示す。図6(a)に、パッチを斜視図で示し、図6(b)に、図6(a)に示す線V−Vに沿う面による本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチの断面図を示す。
本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチは、主として眼の創傷部位に貼り付けて使用されるコンタクトレンズタイプのものである。
以下では、図3、4に示す本発明の第二実施形態の創傷治癒用パッチと同様の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
本発明の第三実施形態の創傷治癒用パッチ80(以下、「パッチ80」ともいう)は、1つの正極(カソード)2a、及び1つの負極(アノード)2bからなる2つの電極2と、正極2aと負極2bとを電気的に接続する導電性部材4と、2つの電極2(2a、2b)を包埋する導電層5とを含む。そして、パッチ80では、負極2bが正極2aの周囲に設けられている。パッチ80の他の要素は、パッチ70の場合のものと同様である。
パッチ80の使用時の作用効果としては、前述の第二実施形態の創傷治癒用パッチ70による作用効果と同様のものが得られる。
ユーザーは、図6(a)、(b)に示すように、パッチ80を、創傷部位1の周囲の生体組織50(図6では、眼52)に、貼り付けることによって、パッチ80を使用することができる。
特に、第三実施形態のパッチ80では、電極2(2a、2b)が導電層5に包埋されているため、電極2(2a、2b)が直接的に創傷部位1に接触することを防ぎ、創傷部位1の周囲にある細胞に対する損傷を低減することができる。
なお、包埋の手法としては、特に限定されることなく、例えば、導電層5としてヒドロゲルが用いられる場合、電極2(2a、2b)をゲル溶液に含浸した後にゲルを固化させる手法等が挙げられる。
なお、本発明の創傷治癒用パッチでは、導電層5を含まなくてもよい。
生体組織50には生体排液が付着している場合(例えば、皮膚には汗や血液が、眼には涙が、付着している場合)があり、この場合、生体排液に含まれる物質が、電極2(2a、2b)に担持された酵素3(3a、3b)の基質となる場合がある。酵素3(3a、3b)に基質が供給された場合、負極2bにおいて酵素3bによる酸化反応により発生した電子は、導電性部材4を通って、正極2aに送達され、正極2aにおいて酵素3aによる還元反応に用いられる。このとき、電極2(2a、2b)が、生体組織50に対して接触可能であるため、正極2a−負極2b間にある生体組織50部分に電流が流れる。
このように、本発明の創傷治癒用パッチは、導電層5を含まないものであっても、本発明の創傷治癒の効果を得ることができる。
以下、本発明の実施形態に係る創傷治癒用パッチ(以下、「本実施形態のパッチ」ともいう。なお、パッチ60、70、80を含む)に含まれる各要素について詳細に記載する。
−電極−
電極2(2a、2b)の素材としては、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラッシーカーボン、グラフェン、フラーレン、カーボンファイバ、カーボンファブリック、カーボンエアロゲル等の炭素材料;ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)等の導電性ポリマー;シリコーン、ゲルマニウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化チタン、酸化銅、酸化銀等の半導体;金、白金、チタン、アルミニウム、タングステン、銅、鉄、パラジウム等の金属等が挙げられ、特に、柔軟性や電気化学的な安定性等の観点から、カーボンファブリック、カーボンナノチューブ等の炭素材料が好ましく、更に特に、電極に酵素を高い密度で固定する観点から、カーボンファブリックにカーボンナノチューブを修飾したものが好ましい。
−−酵素−−
正極(カソード)2aに担持される還元反応を触媒する酵素3aとしては、例えば、ビルリビンオキシダーゼ(Bilirubin Oxidase、BOD)、ラッカーゼ、Cu efflux oxidase(Cueo)、アスコルビン酸オキシダーゼ等が挙げられ、特に、pHや塩化物イオン等に対する耐性を高める観点から、ビリルビンオキシダーゼ(BOD)が好ましい。
負極(アノード)2bに担持される酸化反応を触媒する酵素3bとしては、例えば、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(Glucose Dehydrogenase,GDH)、フルクトースデヒドロゲナーゼ(D−Fructose Dehydrogenase,FDH)、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ等が挙げられ、特に、メディエーター(補酵素)を必要としないために酵素反応系をシンプルなものとすることができるという理由から、フルクトースデヒドロゲナーゼ(FDH)が好ましい。
特に、BODとFDHとの組み合わせは、生体組織50の外表面におけるpHと同等のpH5の条件下で高い活性を発揮することができるため、好ましい。
なお、これらの還元反応を触媒する酵素3a及び酸化反応を触媒する酵素3bは、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
なお、酵素3が担持された電極2の複数個を直列化することによって、電圧を昇圧させる、又は、酵素3が担持された電極2の複数個を並列化することによって、電流の安定性を向上させることもでき、これにより、望ましい電流を安定して確保することができる。
酵素3及び電極2を凍結乾燥する条件としては、特に、酵素3を担持させた電極2を、1Mトレハロース水溶液に含浸した後に、この含浸させた電極2を凍結乾燥することが好ましい。この条件とすれば、酵素3の凍結時及び融解時に、高次構造が破壊されてしまい、触媒活性を失うことを防ぐことができる。
なお、図1〜6に示す本発明の実施形態に係る創傷治癒用パッチ60、70、80では、酵素3が担持された電極2は、凍結乾燥等により乾燥されているが、本発明の創傷治癒用パッチでは、これに限定されることなく、電極2を、実質的に水を含まないものとすれば、パッチ60、70、80の製造時から使用時までの間に酵素3が失活することを防ぐという効果を得ることができる。「実質的に水を含まない」とは、水の電極に対する重量割合が、10%未満であることを指す。因みに、上記割合は、5%未満であることが好ましく、2%未満であることが更に好ましい。
−導電性部材−
導電性部材4の素材としては、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラッシーカーボン、グラフェン、フラーレン、カーボンファイバ、カーボンファブリック、カーボンエアロゲル等の炭素材料;ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)等の導電性ポリマー;シリコーン、ゲルマニウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化チタン、酸化銅、酸化銀等の半導体;金、白金、チタン、アルミニウム、タングステン、銅、鉄、パラジウム等の金属が挙げられ、特に、柔軟性や生体適合性等の観点から、導電性ポリマーが好ましい。
なお、例えば、導電性部材4は、導電層5の表面に印刷技術を用いて導電性ポリマーからなる回路を作製したものとすることもできる。
導電性部材4の抵抗値は、10Ω〜18MΩであることが好ましく、30kΩ〜200kΩであることが更に好ましい。酵素3による酸化還元電位の差は、0.3V〜0.7V程度であるため、抵抗値を上記範囲とすれば、本発明の創傷治癒の効果を十分に得ることができる。
−導電層−
導電層5としては、柔軟性を有し、生体組織50の外表面に対する適合性を有するものが好ましい。
より具体的には、導電層5は、ヒドロゲルであることが好ましく、特に、一定の定型性を有するヒドロゲルが好ましい。かかるヒドロゲルを用いれば、本実施形態のパッチを貼り付けた際の導電層5の生体組織50への密着性を高めることができる。
本実施形態のパッチに含まれる導電層5に用いられるヒドロゲルとしては、例えば、寒天、ゼラチン、アガロース、キサンタンガム、ジェランガム、スクレロチウガム、アラビヤガム、トラガントガム、カラヤガム、セルロースガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、キトサン、カラギーナン、クインスシード、ガラクタン、マンナン、デンプン、デキストリン、カードラン、カゼイン、ペクチン、コラーゲン、フィブリン、ペプチド、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸塩、ヒアルロン酸(ムコ多糖類)及びヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸塩、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、及びアルギン酸カルシウム等のアルギン酸塩、並びにこれらの誘導体等の天然高分子を含むゲル;メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体及びこれらの塩を含むゲル;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー等のポリ(メタ)アクリル酸類及びこれらの塩を含むゲル;ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、無水マレイン酸コポリマー、ポリアルキレンオキサイド系樹脂、N−ビニルアセトアミド架橋体、アクリルアミド架橋体、デンプン・アクリル酸塩グラフトコポリマー架橋物等の合成高分子を含むゲル;シリコーンヒドロゲル;相互侵入網目構造ヒドロゲル及びセミ相互侵入網目構造ヒドロゲル;これらの2種以上の混合物等が挙げられ、特に、耐荷重、生体親和性の観点から、コラーゲン、グルコマンナンを含むゲル;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含むゲル;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムを含むゲル;相互侵入網目構造ヒドロゲル及びセミ相互侵入網目構造ヒドロゲル等が好ましい。なお、ヒドロゲルとしては、特に限定されないが、通常、ポリマーを含むヒドロゲルが用いられる。
なお、これらのヒドロゲルは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
相互侵入網目構造ヒドロゲルとは、ベースとなる網目構造に他の網目構造が均一に絡みつき、結果としてゲル全体で複数の網目構造が形成されているようなゲルを指し、また、セミ相互侵入網目構造ヒドロゲルとは、ベースとなる網目構造に他の直鎖構造が均一に絡みつき、結果としてゲル全体で複数の網目構造が形成されているようなゲルを指す。ここで、網目構造及び/又は直鎖構造は、複数種のポリマーから形成され、特に、網目構造及び/又は直鎖構造の数が2である場合の(セミ)相互侵入網目構造ヒドロゲルは、ダブルネットワークゲル(DNゲル)と称される。これらのゲルは、極めて高い機械的強度を有するヒドロゲルとして知られている(国際公開第2003/093337号参照)。
ここで、上記(セミ)相互侵入網目構造ヒドロゲルは、第一のモノマー成分の10モル%以上が、電荷を有するモノマーであり、第二のモノマー成分の60モル%以上が、電気的に中性であるモノマーである点、ヒドロゲル中の第一のモノマー成分の量と第二のモノマー成分の量とのモル比が、1:2〜1:100(好適には、1:3〜1:50、更に好適には、1:3〜1:30)である点、第二のモノマー成分を重合し架橋する際の架橋度が、第一のモノマー成分を重合し架橋する際の架橋度よりも小さい点が肝要となる。
第一のモノマー成分としては、酸性基(例えば、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基)や塩基性基(例えば、アミノ基)を有するオレフィン等が挙げられ、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メ夕クリル酸、これらの塩等が挙げられる。第二のモノマー成分としては、例えば、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、スチレン、メチルメタクリレート、フッ素含有オレフィン(例えば、トリフルオロエチルアクリレート)、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。
(セミ)相互侵入網目構造ヒドロゲルの製造方法の一例は以下の通りである。まず、第一のモノマー成分を重合し架橋することによって、電荷を有する基(例えば、カルポキシル基)が一定量以上存在している網目構造(第一の網目構造)を形成し、その後、電気的に中性である第二のモノマー成分を重合し架橋することによって、電気的に中性である第二のモノマー成分を第一の網目構造に導入する。
更に、ヒドロゲルの引張破断応力は、1kPa〜100MPaであることが好ましく、10kPa〜20MPaであることが更に好ましい。
引張破断応力を上記範囲とすれば、導電層5の機械的強度を高めることができる。そして、本実施形態のパッチを皮膚に貼り付ける場合や、本実施形態のパッチのユーザーが体を動かした場合にも、ヒドロゲルの破壊が防がれ、パッチの定型性を保ちつつ、本実施形態のパッチを創傷部位1の周囲の生体組織50に密着させ続けることができる。
なお、「引張破断応力」とは、引張荷重によりヒドロゲルが破断する応力を、ロードセルを用いて計測することによって、測定することができる。測定装置としては、例えば、
インストロン社製の引張試験機5960シリーズ等が挙げられる。
更に、導電層5に用いられるヒドロゲルの含水率は、10%〜99.99%であることが好ましく、80%〜99.99%であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、本実施形態のパッチについて、発電性能の向上や、酵素の基質、薬剤等の包含量の増加といった効果を得ることができる。
更に、導電層5に用いられるヒドロゲルのpHは、3〜9であることが好ましく、4〜8であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、酵素の至適pHとすることができ活性を高めることができ、また、生体組織50の導電層5との接触による炎症を抑制することができる。
前述の通り、導電層5は、酵素3(3a、3b)の基質、電解質、水を含んでよい。
以下、それぞれの詳細について更に記載する。
−−基質−−
酵素3(3a、3b)の基質は、用いられる酵素3(3a、3b)に従って定めることができる。
−−水−−
水としては、例えば、超純水等が挙げられる。
−−電解質−−
電解質としては、導電層5の導電性を高める効果を有する限り、特に限定されることはなく、有機酸及び/又は無機酸並びにその誘導体並びそれらの塩が挙げられる。
電解質を構成するアニオン種としては、例えば、アミノ酸イオン(天然アミノ酸イオン、非天然アミノ酸イオン)、塩化物イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、コハク酸イオン、リン酸イオン、リンゴ酸イオン、ピロリドンカルボン酸イオン、スルホ石炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン等が挙げられ、ここで、天然アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、セリン、プロリン、トリプトファン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジンが挙げられ、非天然アミノ酸としては、ヒドロキシプロリン、シスチン、チロキシン等が挙げられる。
電解質を構成するカチオン種としては、例えば、K+、Na+、Ca2+、Mg2+等が挙げられる。
電解質の具体例としては、例えば、アミノ酸のナトリウム塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、スルホ石炭酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられ、特に、生体適合性の観点から、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウムが好ましい。
なお、これらの電解質は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
電解質の導電層5における濃度としては、1mM以上であることが好ましく、50mM以上であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、導電層5の抵抗を(例えば、3kΩ以下に)低減し、電流を増大させることができる。
−外面カバー−
外面カバー7は、防水性を有することが好ましい。
防水性を有する外面カバー7を設ければ、創傷部位1を保護することができると共に、創傷部位1における水分の蒸発を防ぐことができるため、本実施形態のパッチの系内において、酵素3(3a、3b)による酸化還元反応の条件を確保することができ、パッチの使用寿命を長くすることができる。
外面カバー7としては、防水性スプレーのり、防水性テープ、防水性包帯等が挙げられる。
外面カバー7は、通気性も有することが好ましい。通気性を有する外面カバー7を設ければ、大気に含まれる物質を基質とする酵素(例えば、酸素を還元反応の基質とするBOD)を正極2aに担持される酵素3aに用いることができ、酵素3の基質に係るコストを低減することができる。
−内面カバー−
内面カバーの素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチック、エラストマー、ゴム、セルロースからなるセロハン、ポリマー樹脂、石英やガラス等が挙げられ、特に、防水性や柔軟性の観点から、セロハンやプラスチックが好ましい。
本実施形態の創傷治癒用パッチを貼り付けることができる生体組織50としては、顔、指51、眼52、腕、身体等の皮膚、毛髪、爪、口唇、口腔内面等のケラチンを主成分とするケラチン含有組織等が挙げられるが、これに限定されることなく、生体の外表面をなすあらゆる組織とすることができる。
なお、図1、2に示すパッチ60は、1つの正極(カソード)2a、及び2つの負極(アノード)2b(2b1、2b2)からなる3つの電極2を含み、図3、4に示すパッチ70、及び図5、6に示すパッチ80は、1つの正極2a、及び1つの負極2bからなる2つの電極2を含むが、本発明の創傷治癒用パッチは、酸化還元反応を触媒する酵素が担持された正極又は負極を少なくとも1つ含む複数の電極を含んでいればよい。
また、図1〜図6に示す本実施形態の創傷治癒用パッチでは、正極2aに酵素3aが担持され、負極2bに酵素3bが担持されているが、本発明の創傷治癒用パッチでは、これに限定されない。
例えば、負極2bのみに、酸化反応を触媒する酵素3bが担持されていてもよい。この場合、正極2aとしては、白金、白金合金、金、銅等の無機触媒、及びナノ微粒子化したこれらの無機触媒を活性炭を固めてなる炭素電極に担持したもの等とすることができる。また、例えば、正極2aのみに、還元反応を触媒する酵素3aが担持されていてもよい。この場合、負極2bとしては、白金、白金合金、金、銅等の無機触媒、及びナノ微粒子化したこれらの無機触媒を活性炭を固めてなる炭素電極に担持したもの等とすることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(試験1)創傷治癒用パッチの作製
A.電極の作製
A−1.電極の素材
本実施例では、電極の素材として、カーボンナノチューブを修飾させるカーボン繊維織物(品番:TCC−3250、Toho Tenax社製)を用いた。
負極(アノード)には、グルコース脱水素酵素(グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、Microorganism由来、EC番号:1.1.1.47、250U/mg、Mw:約101,000、東洋紡社製)、又は、フルクトース脱水素酵素(D−フルクトースデヒドロゲナーゼ(FDH)、Gluconobacter由来、EC番号:1.1.99.11、20U/mg、Mw:約140000、東洋紡社製)を用いた。
正極(カソード)には、ビリルビンオキシダーゼ(BOD、Myrothecium由来、EC番号:1.3.3.5、Mw:約68000、2.39U/mg、天野エンザイム社製)を用いた。
A−2.カーボンナノチューブの前処理
カーボンナノチューブ(品番:C 70 P、Bayer MaterialScience社製)(以下、CNTともいう。)を、オーブンを用いて、11時間かけて400℃にまで加熱し、その後、自然冷却することによって、CNTを熱処理した。この熱処理により、CNTに欠損部を生じさせた。
ビーカーに蒸留水、硝酸、硫酸を体積比1:3:1で混合し、混合溶液を数十分放冷した。その後、この酸性の混合溶液にCNTを加え、超音波槽を用いて、約30分間超音波処理することによって、CNT表面を酸化した。
CNT混合溶液を約5時間放冷し、その後、この溶液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和することで,酸化処理を停止した。中和後のCNT混合溶液を減圧条件下で濾過することによって、CNTを回収した。回収したCNTを−80℃の条件で1時間凍結させ、その後、凍結乾燥機を用いて、室温、10Paの条件で乾燥させた。これにより、粉末状の酸化CNTを得た。
A−3.酵素の担持、及び酵素担持電極の凍結乾燥
A−3−1.負極(アノード)の作製
A−3−1−1.FDH担持負極の作製
10mg/mLに調整されたCNT懸濁液を0.5%Triton X−100水溶液を用いて精製した。CNTの分散性を向上させるために、超音波ホモジナイザーを用いて5分間、このCNT懸濁液を超音波処理した。10μLのCNT懸濁液を5mm×5mmのカーボン繊維織物上に滴下し、70℃で約5分間乾燥させた。この滴下及び乾燥の操作を繰り返し、合計で40〜50μLのCNT懸濁液をカーボン繊維織物上に加えた。
CNTで修飾されたカーボン繊維織物を50mMクエン酸緩衝液に含浸し、減圧条件下で撹拌しながら1時間以上洗浄した。この電極を5mg/mLに調整されたFDH溶液中に4℃で8時間以上浸漬し、FDHを電極に固定した。FDH電極を、50mMクエン酸緩衝液に常温で5分間浸漬し、未吸着のFDHを除去した。FDH電極を、1Mのトレハロースを溶解させた50mMクエン酸緩衝液に浸漬した.液体窒素に浸漬することで、FDH電極を瞬間凍結させた.最後に、凍結乾燥機(品番:ALPHA 2−4 LSC、CHRiST社製(久保田商事))に入れ、乾燥されたFDH電極を作製した。
A−3−1−2.GDH担持負極の作製
10mg/mLに調整されたCNT懸濁液を0.5%Triton X−100水溶液を用いて精製した。CNTの分散性を向上させるために、超音波ホモジナイザーを用いて10分間、このCNT懸濁液を超音波処理した。12.5μLのCNT懸濁液を5mm×5mmのカーボン繊維織物上に滴下し、70℃で約10分間乾燥させた。この滴下及び乾燥の操作を繰り返し、合計で50μLのCNT懸濁液をカーボン繊維織物上に加えた。
CNTで修飾されたカーボン繊維織物を蒸留水に含浸し、撹拌しながら1時間程度洗浄した。この電極を、100mMリン酸緩衝液中で100μMに調製したナイルブルー溶液中に浸漬し、減圧条件下において4℃で1時間以上撹拌した。
その後、電位掃引速度100mVs-1で−0.8〜1.2Vの電圧範囲を10サイクルするCVを行うことによって、ナイルブルーを電極上に電解重合させた。電解重合後、電極を、蒸留水で10時間程度洗浄し、リン酸緩衝液中で1mg/mLに調製したグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)溶液中に、撹拌しながら4℃で3時間以上含浸し、GDHを電極上に担持させた。
なお、負極のサイズは、図1、2に示すパッチ60のタイプの場合、幅1.5mm、長さ10mmとし、図3、4に示すパッチ70及び図5、6に示すパッチ80の場合、内径8mm、外径10mmとした。
A−3−2.正極(カソード)の作製
前処理したCNTを、1.0%Triton X−100水溶液、及びエタノールに加えて、それぞれ、10mg/mLのCNT懸濁液(水)、4mg/mLのCNT懸濁液(エタノール)を調製した。CNTの分散性を向上させるために、超音波ホモジナイザーを用いて10分間、このCNT懸濁液を超音波処理した。5mm×5mmのカーボン繊維織物に、上記CNT懸濁液(水)を12.5μL滴下し、70℃で約10分間乾燥させた。この滴下及び乾燥の操作を4回繰り返し、合計で50μLのCNT懸濁液(水)をカーボン繊維織物上に加えた。この電極をエタノールの溶液中で撹拌洗浄した。
10mg/mLに調整されたBOD溶液1mLを電極上に滴下し、減圧条件下、35℃で約6時間乾燥させた。BODを電極上に担持させた。なお、BODを溶解させる溶液として、50mM PBS(pH7.0)、又は1Mのトレハロースを加えた50mM PBS(pH7.0)を用いた。
なお、正極のサイズは、図1、2に示すパッチ60のタイプの場合、幅1.5mm、長さ10mmとし、図3、4に示すパッチ70及び図5、6に示すパッチ80の場合、径1mmとした。
B.導電性部材の作製
本実施例では、導電性部材として、市販の導電性ポリマーシート(品番:ORGACON(登録商標) EL350/630、Agfa社製)を用いた。
C.導電層の作製
C−1.創傷治癒用パッチ(絆創膏タイプ)の場合の導電層の作製
特に、FDH担持負極用の導電層を作製では、MESを500mM、フルクトースを500mM、低融点アガロース(317−01182、和光純薬工業社製)を2重量%で含むアガロースゲルを作製した。ゲルの厚さは、0.5mmとした。
また、特に、GDH担持負極用の導電層の作製についても、フルクトースの代わりにグルコース及びβ−NAD+を用いた点以外は同様とした。
C−2.創傷治癒用パッチ(コンタクトレンズタイプ)の場合の導電層の作製
後述の「E2.」に記載の通り、正極及び負極をゲルに包埋させた。
D.外面カバーの作製
本実施例では、外面カバーとして、市販のメディカルテープ(3M、Nexcare社製)を用いた。
E.創傷治癒用パッチの作製
E1.創傷治癒用パッチ(絆創膏タイプ)の作製
図1に示すように、メディカルテープをその粘着面を上にして置き、粘着面上に、正極及び負極、導電性部材、導電層を載せて、絆創膏タイプの創傷治癒用パッチを作製した。
E2.創傷治癒用パッチ(コンタクトレンズタイプ)の作製
前述の「A−3−2.」において作製した(BOD担持)正極、及び「A−3−1−2.」において作製したGDH担持負極を、滅菌済みの50mM PBS(pH7.0)で洗浄した。
洗浄した陽極及び陰極を、グルコースを5mM、β−NAD+を5mM、低融点アガロースを2重量%で含む水溶液に含浸させ、その後、ゲルを冷却して固化させることによって、洗浄した陽極及び陰極を、アガロースゲル中に包埋させた。
こうして、図5、6に示すように、コンタクトレンズタイプの創傷治癒用パッチを作製した。
「A−3−1−1.」において作製したFDH担持負極を用いた場合についても同様とした。
なお、図11(a)(i)に、(試験1)「D1.」において作製した図3、4に示すパッチ70のタイプの創傷治癒用パッチ(絆創膏タイプ)の写真を示し、図11(a)(ii)に、図11(a)(i)に示す創傷治癒用パッチを指に貼り付けた様子の写真を示す。
また、図11(b)(i)に、(試験1)「D2.」において作製した図5、6に示すパッチ80のタイプの創傷治癒用パッチ(コンタクトレンズタイプ)の写真を示し、図11(b)(ii)に、図11(b)(i)に示す創傷治癒用パッチをガラス球に貼り付けた様子の写真を示す。
(試験2)出力性能測定
試験2は、(試験1)「E2.」において作製した図1、2に示すパッチ60のタイプの創傷治癒用パッチ(負極:FDH担持負極)を用いて行った。
作製した創傷治癒用パッチ(絆創膏タイプ)を平板上に貼り付けて、パッチの正極−負極間の電位差(セル電圧)を、ポテンシオスタットを用いて測定した。結果を図7(a)に示す(縦軸に、パッチの電流密度(μA/cm2)(黒丸)及び電力密度(μW/cm2)(黒三角)を示し、横軸に、セル電圧を示す。)。
パッチの開回路電圧は0.7V、最大出力密度は1000μW/cm2であった。導電層が0.5mm厚の場合、正極−負極間に約80μAの電流を流すことができることがわかった。この電流の大きさは、創傷部位における細胞の遊走を促進するのに十分な強さであった。
(試験3)耐久性能測定
試験3は、(試験1)「E2.」において作製した図1、2に示すパッチ60のタイプの創傷治癒用パッチ(負極:FDH担持負極)を用いて行った。
作製した創傷治癒用パッチ(絆創膏タイプ)を平板上に貼り付けて、パッチの正極−負極間の電位差を、ポテンシオスタットを用いて、時間経過と共に測定した。結果を図7(b)に示す(縦軸に、パッチの電流値(μA)を示し、横軸に、経過時間(時間)を示す)。作製したパッチでは、24時間の時点においても約70%の出力を保持することができた。
(試験4)インビトロ創傷治癒アッセイ
前述の(試験1)「A.」において作製した正極及び負極を含む本発明の創傷治癒用パッチのモデル系が、創傷治癒の効果をもたらすか否かを確かめる試験を行った。
図8(a)に、(試験2)において構築したインビトロ創傷治癒アッセイ系を示し、図8(b)に、図8(a)に示すインビトロ創傷治癒アッセイ系における細胞遊走の傾向の評価方法の説明図を示す。
このアッセイ系では、コラーゲンで被覆した外側ディッシュと、正極を含浸させる正極側培地槽と、負極を含浸させる負極側培地槽と、これらを連通するチャネルとを備える、ポリジメチルシロキサン製の内側ディッシュとからなるデバイスを用いた。また、チャネルの所定領域を観察するための顕微鏡を併用した(図8(a)参照)。
アッセイの手順は、下記の通りとした。
初めに、チャネルに、約6万個の正常ヒト角膜上皮細胞(KC−4009、倉敷紡績社製)を、細胞培養用培地(OcuLife(登録商標) CompKit(LCC−LL0032)、倉敷紡績社製)中において培養した。
次いで、正極側培地槽に正極を負極側培地槽に負極を含浸させ、バイオ発電を行った。
そして、チャネルの所定領域に、図8(b)に示すように、xy座標を設定し、チャネルに培養された各細胞について、電流を流し始めた時点(t=0)における細胞の位置座標を(0,0)としたときの、電流を流し始めてから3時間後の時点(t=3h)における細胞の位置座標を(x,y)を、検出し、カソード側をマイナス、アノード側をプラスとした場合のx方向の変位(Δx)、及びy方向の変位(Δy)を算出した。特に、各細
胞におけるx方向の変位(Δx)の平均値(A(Δx))を算出し、細胞遊走の傾向を評
価した。評価基準としては、A(Δx)の値が小さい(その絶対値は大きい)ほど、細胞
が正極側に向かう遊走性が高いことを示す。
アッセイ系を構築するため、更に下記の試験も行った。
図9(a)に、正常ヒト角膜上皮細胞の培養を行っていないインビトロ創傷治癒アッセイ系を示し、図9(b)に、チャネルの断面積を0.025mm2とした場合のチャネルを流れる電流の電流密度(μA/cm2)の経時的変化を表すチャートを示す。
チャネル(微小流路)のその延在方向に垂直な断面による断面積は、創傷治癒用パッチが創傷部位に貼り付けられた際に、創傷部位とパッチとの間の極めて薄い領域において、電流が生じることを想定して、適切に定める必要がある。そこで、図9(a)に示すように、チャネルの断面積を所定の大きさとした場合のこのモデル系の出力性能を、正常ヒト角膜上皮細胞の培養を行っていないアッセイ系において測定する最適化試験を行った。
その結果、チャネルの断面積を0.025mm2とした場合に、チャネルを流れる電流の電流密度(μA/cm2)の経時的変化を、バイポテンショスタット(モデル2323、BAS社製)を用いて、測定したところ、図9(b)に示すように、数時間に亘って電流密度:300μA/cm2であることがわかった。電流密度:300μA/cm2は、ヒトが疼痛を感じるときの電流密度:500μA/cm2と比較して小さく、創傷治癒用パッチのモデル系における電流密度は、電気による創傷部位の治療に適切なものであった。
この結果から、アッセイ系におけるチャネルの断面積を0.025mm2程度と定めることとした。
また、前述のアッセイ系を用いて、正常ヒト角膜上皮細胞を用いて、上記インビトロ創傷治癒アッセイを行ったところ、細胞が、電極と共にアッセイ系に混入したと思われる細菌に侵され、死滅した。そこで、細胞に影響を与えることがない、インビトロ創傷治癒アッセイに適した電極を以下の通り作製した。
前述の(試験1)「A.電極の作製」において作製した正極及び負極を、滅菌済みの50mM PBS(pH7.0)で洗浄した。
洗浄した正極及び負極を、5mM グルコース水溶液、2重量%アガロース水溶液、5mM β−NAD+を含む水溶液に含浸させ、その後、ゲルを冷却して固化させることによって、洗浄した正極及び負極を、アガロースゲル中に包埋させた(図示せず)。
調製したゲルに包埋させた電極を用いた場合のこのモデル系の開回路電圧は0.82Vであった。この開回路電圧は、電気による創傷部位の治療に適切なものであった。
そして、正常ヒト角膜上皮細胞を用いて、上記インビトロ創傷治癒アッセイを行った。試験条件は、コントロール(電流密度:0μA/cm2)(N=125)、電流密度:200μA/cm2(N=92)、電流密度:400μA/cm2(N=44)とした。
図10(a)(i)〜(iii)に、インビトロ創傷治癒アッセイの結果を示し、図10(b)に、図10(a)に示す結果のまとめを示す。
図10(a)(i)〜(iii)、(b)に示される結果から、本発明の創傷治癒用パッチのモデル系を、電流密度:200μA/cm2の試験条件で用いた場合、細胞が正極側に向かう遊走性が高く、電流密度:400μA/cm2の試験条件で用いた場合、細胞が正極側に向かう遊走性が一層高いことがわかった。
本発明によれば、簡便に、高い安全性及び低いコストで、電気による創傷治癒を施すことを可能にする創傷治癒用パッチを提供することができる。本発明の創傷治癒用パッチは、特に、美容・医療分野において好適に用いられる。
1 創傷部位
2 電極
2a 正極(カソード)
2b 負極(アノード)
2b1 負極
2b2 負極
3 酵素
3a 還元反応を触媒する酵素
3b 酸化反応を触媒する酵素
3b1 酸化反応を触媒する酵素
3b2 酸化反応を触媒する酵素
4 導電性部材
4x 導電性部材
4y 導電性部材
5 導電層
7 外面カバー
50 生体組織
51 指
52 眼
60 第一実施形態の創傷治癒用パッチ
70 第二実施形態の創傷治癒用パッチ
80 第三実施形態の創傷治癒用パッチ

Claims (7)

  1. 酸化還元反応を触媒する酵素が担持された正極(カソード)又は負極(アノード)を少なくとも1つ含む複数の電極と、前記複数の電極を電気的に接続する電子伝導性の導電性部材と、前記複数の電極に対して接触した状態で設けられるイオン伝導性の導電層とを含み、前記導電層のうち前記複数の電極と接触している部分における前記導電層の厚さが、前記導電層のうち前記複数の電極と接触していない部分における前記導電層の厚さと比較して大きい、創傷治癒用パッチ。
  2. 前記導電層は、前記酵素の基質を含む、請求項1に記載の創傷治癒用パッチ。
  3. 前記複数の電極は、実質的に水を含まない、請求項1又は2に記載の創傷治癒用パッチ。
  4. 前記複数の電極及び前記導電性部材を封止するための外面カバーを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の創傷治癒用パッチ。
  5. 前記複数の電極は、正極がその両側を負極に挟まれるように設けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の創傷治癒用パッチ。
  6. 前記複数の電極間の距離を変更するための電極間距離変更手段を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の創傷治癒用パッチ。
  7. 前記複数の電極及び前記導電性部材が前記導電層に包埋されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の創傷治癒用パッチ。
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