JP5741368B2 - ショットブラスト装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ショットブラスト装置に係り、特に、内面に凹凸形状を有する鋼管の研掃処理に好適なショットブラスト装置に関する。
塗装、溶射等の下地処理、スケール除去または表面粗さの調整等を目的として、鋼材の表面にショットブラスト装置を用いた研掃処理が行われる。鋼管の内面に対してショットブラスト装置を用いた研掃処理を行う場合、大きく分けて以下の2つの方法が用いられている。
1つは、被研掃体である鋼管の内径よりも小さいノズルを鋼管内に挿入し、そのノズルのヘッドから圧縮空気を用いて研掃材を噴射することによって研掃処理を行うものであり、もう1つは、ノズルを使用せずに、鋼管内面を研掃材が通る管路とすることによって、研掃材が鋼管内面上を滑るように衝突させ研掃処理を行うものである。
特許文献1には、複数の鋼管の各々にノズルを挿入し、管内面を同時に研掃処理することが可能なショットブラスト装置が開示されている。また、特許文献2には、鋼管の一端より空気を吸引して、研掃材を鋼管内に通過させることによって管内面を研掃する研掃装置が開示されている。
特開昭61−82924 特開昭63−22271
特許文献1および2に記載の方式のショットブラスト装置は、平滑な内面を有する鋼管の研掃処理には効果を発揮する。しかし、内面に凹凸形状を有する鋼管の研掃処理を行う場合、従来のショットブラスト装置では、図1に示すように、凹部の底面または側面において、ノズル1から噴射された研掃材30が衝突しない、研掃材衝突不可領域(図中の符号A参照)が生じる問題がある。
内面に凹凸形状を有する鋼管として、例えば、油井管の雌ねじ部等が挙げられる。近年、高腐食環境での油井管の使用が求められており、それに伴って、耐腐食性に優れた高合金鋼が油井管に用いられるようになってきた。高合金鋼は、従来油井管に用いられてきた低合金鋼または炭素鋼と比較して、耐焼き付き性が劣る。
鋼管同士を管端の雄ねじおよび雌ねじで締結する際に、潤滑密封剤として潤滑油が用いられるが、焼き付き防止の対策として、雄ねじ部に研掃処理を施すことによって表面粗さを整え、潤滑油の保油性を向上させていた。そして、さらなる焼き付き防止策として、雄ねじ部に加えて、雌ねじ部にも研掃処理を施すことが求められている。
しかし、上述のように、雌ねじ部の研掃処理を行うに際して、研掃材衝突不可領域が発生すると、その領域の研掃処理が不十分となり、保油性の十分な向上が望めないといった問題が生じる。
そこで、本発明は、凹凸形状を有する鋼管内面の研掃処理を行う場合においても、研掃材衝突不可領域が生じず、全面を一様に研掃することが可能なショットブラスト装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、凹凸形状を有する鋼管内面の研掃処理に好適なショットブラスト装置について、種々の検討を行った結果、以下の知見を得た。
ノズルを使用せずに、鋼管内面を研掃材が通る管路とすることによって、研掃処理を行う方式では、凹凸形状を有する鋼管の内面を一様に研掃することは極めて難しいので、ノズルを鋼管内に挿入し、そのノズルのヘッドから研掃材を噴射することによって研掃処理を行う方式とする必要がある。しかし、ノズルを使用した場合でも、1方向のみの噴射では、前述のように、凹部の底面および側面を完全に研掃することは困難である。
研掃材衝突不可領域を生じさせないためには、鋼管軸上のノズル挿入方向に対して鋭角をなす方向および鈍角をなす方向の少なくとも2方向に研掃材を噴射できる2つ以上のヘッドを用いる必要がある。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記の(1)〜(3)に示すショットブラスト装置を要旨とする。
(1)鋼管内にノズルを挿入し、該鋼管を回転させながら該ノズルに備え付けられたヘッドから研掃材を噴射することによって、凹凸形状を有する鋼管内面の研掃処理を行うショットブラスト装置であって、該ノズルが鋼管軸上のノズル挿入方向に対して鋭角をなす方向に研掃材を噴射する第1ヘッドと、鈍角をなす方向に研掃材を噴射する第2ヘッドとを備え、さらに、ノズルを挿入する側の管端部から研掃材を吸引して回収する手段と、ノズルより鋼管の奥側に研掃材の拡散を抑制するための中栓と、中栓より鋼管の奥側に鋼管内に残留した研掃材を排出するためのエアーブローノズルとを有することを特徴とするショットブラスト装置。
(2)第2ヘッドが、第1ヘッドより鋼管の奥側まで到達できる構成であることを特徴とする上記(1)に記載のショットブラスト装置。
(3)第1ヘッドおよび第2ヘッドの研掃材噴射方向がそれぞれ周方向に異なることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のショットブラスト装置。
本発明によれば、凹凸形状を有する鋼管内面の研掃処理において、研掃材衝突不可領域が生じないため、鋼管内面を一様に研掃することが可能となる。したがって、本発明のショットブラスト装置は、内面にねじまたはリブ等の凹凸形状が形成された鋼管の研掃処理を行う際に最適である。
従来のショットブラスト装置によって生じる研掃材衝突不可領域を模式的に示した図である。 本発明に係るショットブラスト装置の一例を模式的に示した図である。 噴出角度と蟻溝側面に衝突する角度との関係を説明する図である。
図2は、本発明に係るショットブラスト装置を模式的に示した図である。本発明のショットブラスト装置は、鋼管内に1つ以上(図2に示す例では2つ)のノズル1を挿入し、鋼管を回転させながらノズル1に備え付けられたヘッド1a、1bから研掃材を噴射することによって鋼管内面の研掃処理を行うものである。この際、ノズル1は、鋼管軸上のノズル挿入方向に対して鋭角(図中符号22a参照)をなす方向および鈍角(図中符号22b参照)をなす方向の少なくとも2方向に研掃材を噴射できる2つ以上のヘッド1a、1bを有する。
また、本発明のショットブラスト装置は、上記に加えて、研掃材の拡散を制限するための中栓2またはさらに管内に残留した研掃材を排出するためのエアーブローノズル3を有する構成としても良い。各構成要素について、以下に詳細を示す。
1.ノズル
本発明に係るノズル1は、少なくとも鋼管軸上のノズル挿入方向に対して鋭角をなす方向、すなわち鋼管の奥方向に研掃材を噴射できる第1ヘッド1a、および鈍角をなす方向、すなわち鋼管の手前方向に研掃材を噴射できる第2ヘッド1bを有する。鋼管の手前および奥の双方向から研掃処理を行うことによって、凹凸形状を有する鋼管内面の研掃処理を行うに際しても、研掃材衝突不可領域を生じさせないようにすることが可能となる。本発明においては、少なくとも第1ヘッドおよび第2ヘッドを有しておれば良く、これらのヘッドとは別のヘッドを有していても良い。
この際に、2つ以上のヘッドを備える1つのノズルを用いても良いし、それぞれに1つのヘッドを備えるノズルを2つ用いても良いが、全てのヘッドから噴射される研掃材の量および噴射速度を均一にするためには、1つのヘッドを備えるノズルを2つ用いるのが好ましい。
本発明のショットブラスト装置を用いた研掃処理の対象となる鋼管は、内径が140mm程度のものも含まれるため、限られたスペースに効率良くノズル1を配置する必要がある。そのため、図2に示すように、第1ヘッド1aおよび第2ヘッド1bを1つずつ備えた2つのノズル1を用いる構成とするのが好ましい。
また、研掃範囲の全ての領域において、鋼管の手前および奥の双方向からの研掃処理を施すためには、図2に示すように、第2ヘッド1bが、第1ヘッド1aより鋼管の奥側まで到達できる構成とするのが好ましい。
上記のような配置とした際に、それぞれのヘッドの研掃対象部分が重なると研掃材同士が衝突し、その部分で十分な研掃処理が施せなくなる。そのため、それぞれのヘッドの噴射方向を周方向にずらし、研掃材同士が干渉し合わないようにするのが望ましい。
圧縮空気を用いた研掃材の噴射方式には、吸引式(重力式、サイフォン式)および直圧式(加圧式)の2通りある。前者の方式は、ノズルから噴射される圧縮空気の流れによって、研掃材が流れる管路を負圧にし、その負圧で生じた空気の流れによって研掃材を運搬し、ノズルの中で圧縮空気と研掃材とを混合させ噴射する方法であり、広範囲の研掃処理に向く。一方、後者の方式は、噴射機内で圧縮空気と研掃材を混合し、研掃材を管路に送り込み噴射する方式であり、吸引式より強力に噴射できる特徴がある。
本発明のショットブラスト装置においては、管内面に多くの噴射ノズルを設置することは困難であることから、研掃材を噴射する力の強い直圧式を用いるのが好ましい。
また、研掃材の噴射量について特に制限はないが、ノズル1つあたり、5〜10kg/min程度に設定することができる。
ヘッドから噴射される研掃材の広がり角度(図中符号21参照)については、広すぎると衝突の力が弱まり、狭すぎると均一な研掃処理が困難になることを考慮に入れ適宜選択すれば良いが、例えば、5〜10°の範囲とすることができる。
ヘッドの噴射角度についても、特に制限はない。しかし、表1に示すように、噴射角度の増加に伴い、平均粗さRaが大きくなる傾向があり、噴射角度が20°以上でほぼ一定の値となる。一方、本発明のショットブラスト装置は、図3に示すような蟻溝形状(逆ハの字)を呈する溝に対しても研掃処理を行う場合があることから、噴射角度が65°を超えると、研掃材が溝の側面に衝突する角度が小さくなり好ましくない。したがって、第1ヘッド1aの噴射角度(図中符号22a参照)は、20〜65°とすることが好ましく、40〜45°とすることがより好ましい。また、第2ヘッド1bの噴射角度(図中符号22b参照)は、115〜160°とすることが好ましく、135〜140°とすることがより好ましい。
2.中栓
噴射された研掃材は、通常、ノズルを挿入する側の管端部から圧縮空気を流入させ、もう一方の管端部から空気と一緒に研掃材を吸引することで回収される。しかし、この方法では、回収部を鋼管の長さに応じて移動させる必要が生じる等、回収装置が大型化しさらに構造が複雑になるため、設置スペースおよびコストの大幅な増大を招く結果となる。そのため、図2に示すように、ノズルを挿入する側の管端部に吸引部11aを有する研掃室11を設置し、噴射された研掃材を吸引して回収することが、装置の小型化および簡素化の観点から望ましい。
この際、ノズルを挿入する側の反対側は、研掃材が流出しないように中栓2を用いて密閉するのが良い。中栓2を配置することによって、研掃材の拡散領域を制限することが可能となり、特に研掃範囲が鋼管の一部に限られている場合、研掃材の拡散を最小限に留めることができるので研掃材の回収を非常に容易に行うことができる。
中栓2は、図2に示すように中空の円盤型を呈しており、中の空気を出し入れすることで膨張収縮を行うことができる構造とすることが好ましい。中栓2に用いる材質については、伸縮可能なものであれば特に制限はないが、例えば、ウレタンゴムまたは天然ゴムを低温加硫したゴム等を用いることができる。上記の2種類のゴムを用いて、膨張収縮の繰り返し耐久性および耐摩耗性の試験を実施した結果、研掃材の衝突に対する耐摩耗性は、両者に差異は認められなかった。しかし、ウレタンゴムの中栓では、接着剤で接合している箇所において、膨張収縮の繰り返しで剥離が発生するおそれがあるため、天然ゴムを低温加硫したゴムを用いる方がより好ましい。また、中栓2の直径については、特に制限はなく、研掃処理を行う鋼管の内径に応じて適宜選択すれば良い。
中栓2は、鋼管内の研掃範囲に応じた位置まで挿入後、圧縮空気を送り込むことによって膨張させて、鋼管内面に密着させるのが良い。また、鋼管との摩擦による摩耗を生じさせないため、鋼管の回転に同調させて回転できるようにするのが好ましい。すなわち、中栓を支持する軸部2aは、中栓を鋼管の奥まで運搬し、中栓の中に圧縮空気を送り込むことができると同時に、軸上で中栓の円盤部2bが回転できるような機構を有していることが望ましい。研掃処理の終了後、中栓2は収縮状態とし、鋼管内から引き出す。
3.エアーブローノズル
図2に示すように、本発明に係るショットブラスト装置は、鋼管内の中栓2より奥側にエアーブローノズル3を有するのが良い。エアーブローノズル3は、研掃処理終了後、中栓を引き出した後または同時に鋼管の奥に挿入し、鋼管の手前側に圧縮空気を噴射することによって、鋼管内に残留した研掃材を研掃室11に排出させることができる。エアーブローノズル3は、中栓2と同じ軸上に設置するのが好ましい。
4.その他
本発明の鋼管内面の研掃処理を目的としたショットブラスト装置は、従来の鋼管外面用のショットブラスト装置を改造し、同じ装置内で鋼管の雄ねじ部および雌ねじ部の双方の研掃処理を行える構成とすることが可能である。まず、一方の管端の雄ねじ部に対して、図2に示した外面ノズル12を用いて、外面の研掃処理を行う。その後、もう一方の管端の雌ねじ部に対して、ノズル1を挿入して内面の研掃処理を行う。この時に、鋼管の外径および肉厚によってはシール部13を手作業で交換する必要があるが、雄ねじおよび雌ねじの研掃処理を自動かつ連続で行うことが可能であり、鋼管1本当たりの処理時間は3分以内である。
なお、外面ノズル12の構成については特に制限はないが、ノズルを多く設置できることから、前述の吸引式の噴射方式として、例えば、研掃室11の上部に噴射量1.5kg/minのノズル12を12台配備することができる。このような構成とすることによって、ねじの形状が異なる場合でも、一様に研掃可能な噴射角度を任意に調整可能であるので好ましい。また、外面ノズル12は、鋼管の外径に応じて高さを自動で調整する機能およびねじ部の長さに応じて自動で移動できる機能を付与することが望ましい。さらに、研掃室11自体も鋼管の外径によって自動で高さを調整する機能を有しているのが好ましい。
ノズルから噴射された研掃材は、ねじ部に衝突した後、研掃室11下部の吸引部11aから吸引される機構を有するのが好ましい。この場合、吸引された研掃材は、サイクロンセパレーターで選別された後、粉化したものは集塵機に送られて捕捉され、粒径の大きいものは、外面供給槽に送られ再利用される。
鋼管と研掃室の間には隙間が生じるため、ゴム製のシール部13を配備し、開口部をできる限り小さくするのが良い。そうすることによって、吸引によるシール部の制御風速を確保し、噴射された研掃材が研掃室外に流出するのを防止することができる。また、鋼管内に研掃材が流入するのを防止するため、鋼管内径に応じた中栓を鋼管端面に装着するのが良い。中栓は、外面研掃処理前に手作業で装着しても良いし、内面の研掃処理に用いられる中栓を自動で装着させても良い。
以上、図2に示した構造を例に詳しく説明したが、本発明に係るショットブラスト装置は、これに限定されるものではない。
本発明によれば、凹凸形状を有する鋼管内面の研掃処理において、研掃材衝突不可領域が生じないため、鋼管内面を一様に研掃することが可能となる。したがって、本発明のショットブラスト装置は、内面にねじまたはリブ等の凹凸形状が形成された鋼管の研掃処理を行う際に最適である。
1.ノズル
1a.第1ヘッド
1b.第2ヘッド
2.中栓
2a.軸部
2b.円盤部
3.エアーブローノズル
11.研掃室
11a.吸引部
12.外面ノズル
13.シール部
21.広がり角度
22a.鋼管軸上のノズル挿入方向に対するヘッドの噴射角度
22b.鋼管軸上のノズル挿入方向に対するヘッドの噴射角度
30.研掃材
A.研掃材衝突不可領域

Claims (3)

  1. 鋼管内にノズルを挿入し、該鋼管を回転させながら該ノズルに備え付けられたヘッドから研掃材を噴射することによって、凹凸形状を有する鋼管内面の研掃処理を行うショットブラスト装置であって、該ノズルが鋼管軸上のノズル挿入方向に対して鋭角をなす方向に研掃材を噴射する第1ヘッドと、鈍角をなす方向に研掃材を噴射する第2ヘッドとを備え、さらに、ノズルを挿入する側の管端部から研掃材を吸引して回収する手段と、ノズルより鋼管の奥側に研掃材の拡散を抑制するための中栓と、中栓より鋼管の奥側に鋼管内に残留した研掃材を排出するためのエアーブローノズルとを有することを特徴とするショットブラスト装置。
  2. 第2ヘッドが、第1ヘッドより鋼管の奥側まで到達できる構成であることを特徴とする請求項1に記載のショットブラスト装置。
  3. 第1ヘッドおよび第2ヘッドの研掃材噴射方向がそれぞれ周方向に異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のショットブラスト装置。
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