JP4421763B2 - 金属製パイプ内面のブラスト加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製パイプ内面のブラスト加工方法に係り、さらに詳しくは、ナトリウム−硫黄電池用陽極容器に用いられる金属製パイプ内面のブラスト加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ナトリウム−硫黄電池は、一方に陰極活物質である溶融金属ナトリウム、他方には陽極活物質である溶融硫黄を配し、両者をナトリウムイオンに対して選択的な透過性を有するβ−アルミナ固体電解質で隔離し、300〜350℃で作動させる高温二次電池である。
【0003】
このようなナトリウム−硫黄電池の構造は、例えば図3に示すように、カーボンフェルト等に含浸された溶融硫黄Sを収納する有底円筒状の陽極容器1と、溶融金属ナトリウムNaを収納するカートリッジ(ナトリウム保護管)6と、このカートリッジ6を内部に収納し、ナトリウムイオンNa+を選択的に透過させる機能を有する有底円筒状の固体電解質管5と、カートリッジ6と固体電解質管5の間の間隙部に、そのカートリッジ6及び固体電解質管5からそれぞれ所定の間隔をおいて配設された有底円筒状の隔壁管11からなる。
【0004】
固体電解質管5はその開口端にガラス接合されたα−アルミナ製の絶縁リング4及び陽極筒状金具3を介して陽極容器1と結合されている。また、絶縁リング4の上端面には陰極金具8が熱圧接合され、この陰極金具8に陰極蓋9が溶接固定されている。陽極容器1の外周上部と陰極蓋9の上面には、それぞれ陽極側端子2と陰極側端子10が設けられている。カートリッジ6の上部空間には、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスGが所定の圧力で封入され、この不活性ガスGによりカートリッジ6内のナトリウムNaがカートリッジ6底部に設けられた小孔7から流出する方向へ加圧されている。
【0005】
このような構造を有するナトリウム−硫黄電池において、放電時にはカートリッジ6の小孔7から供給されるナトリウムNaが、隔壁管11とカートリッジ6との間隙内で上方に移動した後、隔壁管11の上端を乗り越えて、隔壁管11と固体電解質管5との間隙内で下方に移動し、更に、固体電解質管5をナトリウムイオンNa+となって透過して、陽極容器1内の硫黄S及び外部回路を通ってきた電子と反応し多硫化ナトリウムを生成する。充電時には放電とは逆にナトリウムNa及び硫黄Sの生成反応が起こる。
【0006】
ナトリウム−硫黄電池に使用される陽極容器は図4に示すように、円筒状胴部15と底蓋16とからなり、円筒状胴部15の開口端部17には底蓋16が嵌合固定されており、その材質は主としてアルミニウムやアルミニウム合金製である。ここで、放電による生成物である多硫化ナトリウムは腐食性が強く、多硫化ナトリウムが陽極容器に直接接触すると、陽極容器1が腐食により損傷を受けるため、耐久性が低下するおそれがある。そこで従来から、陽極容器1の内面に耐腐食性の溶射皮膜(耐食皮膜18)を形成することが行われている(例えば、特開平4−284371号公報、特開平5−166534号公報など参照)。
【0007】
通常、陽極容器となるアルミニウムパイプの内面に耐食皮膜を溶射形成するための前処理工程として、所定の硬度と形状、及び粒径を有する砥粒をブラスト用ガンから噴射して陽極容器の内面(被溶射面)に吹き付けるといった、ブラスト処理が必要とされる。ブラスト処理の主たる目的は、被溶射面の粗面化、清浄化、活性化であり、特に耐食皮膜の形成を強固なものとするための粗面化が最も重要な目的である。したがって、被溶射面の粗面化状態が良好でない場合においては耐食皮膜の密着が弱く、剥離等の欠陥を生ずるおそれがある。
【0008】
ここで、図5は、従来の金属製パイプ内面へのブラスト処理の一実施態様を示す模式図であり、(a)は全体図、(b)はブラスト用ガンのノズル部拡大図である。棒状のブラスト用ガン25の先端にはノズル部26を有し、ノズル部26の側面には、内部に砥粒噴出用の穴が設けられた1個のブラスト加工用チップ27が被溶射面に対して所定の角度を有して装着されており、このブラスト加工用チップ27から所定の圧力によって、ホワイトアルミナグリッド(Al2O3)等からなる砥粒28が金属製パイプ29の内面30に噴出されるといった仕組みになっている。このとき、ブラスト加工用チップ27は砥粒28によって磨耗されることを想定し、適度な硬度を有する金属、例えばタングステン(W)等からなる場合が多い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来のブラスト処理方法においては図5(a)に示すように、金属製パイプ29内へのブラスト用ガン25の挿入時と抜出し時、すなわち往復させながらブラスト処理を行っていた。したがって、ブラスト処理に要する時間が長くなると共に、砥粒の消費量や製造に要する時間も余計にかかるために製造コストが高くなり、量産にも対応できなくなるといった問題が生じていた。また、ブラスト用ガンを往復させながらブラスト処理を行った場合、一度粗面化した後に再度粗面化が行われるため、一度目の粗面化状態が崩れ、面粗度の低下と局部的な不均一が生ずることに起因して、その後に形成した耐食皮膜の局部的な剥離が発生した。また、ブラスト処理に要する時間が長いため、ブラスト加工用チップの磨耗が速く、そのためにブラスト加工用チップの交換回数が多くなるといった問題を有していた。
【0010】
1個のブラスト加工用チップからの噴出によってブラスト処理を施すため、被溶射面の粗面化状態が全方位的方向性とならずに一方向性となり、皮膜との密着性が方向性を有するものとなる。なお、ここでいう全方位的方向性とは、被溶射面の粗面化状態が一方向のみではなく、様々な方向性が混在している状態のことである。したがって、耐食皮膜の密着性が良好でない場合が多く、剥離等の欠陥を引き起こす危険性があった。
【0011】
さらに、1個のブラスト加工用チップからの噴出によってブラスト処理を施した場合においては、凹凸のない平坦な面に対しては一様にブラスト処理を施すことが可能であるが、くびれ部を有する場合においては、くびれ部の片側、すなわち砥粒の噴射の影になる面には適切に砥粒の噴射がなされず、ほとんどブラスト処理されない部分が生じてしまうといった問題があった。
このような状況の対策としては、金属製パイプの設置方向を変更して2回のブラスト処理を行うことが挙げられるが、工程数の増加はひいては陽極容器の製造コストにも影響を与えてしまうために好ましくない。
【0012】
また、アルミニウムパイプへのブラスト用ガン挿入時にはブラスト処理を行わず、抜出し時にのみブラスト処理を行う場合、ブラスト加工用チップ出口(噴出口)付近に微細なゴミや粉塵が多く付着している。よって、挿入時においてそれらの粉塵等が被溶射面に付着して清浄化が失われるために、耐食皮膜との密着性が低下するおそれがある。
【0013】
一方、図7はブラスト加工用チップの形状を示す断面図であり、(a)はブラスト処理前、(b)はブラスト処理により磨耗された状態を示す。このように、砥粒との磨耗によって、ブラスト加工用チップの内径は広がるために、次第にブラスト処理によって砥粒が散乱されると共に、砥粒噴出のための圧力が損失される。また、砥粒の形状が丸みを帯びてくるために、充分な粗面化が行われない部分等が生じ、粗面化が不均一になる場合があった。したがって、このような事態を解消すべく、通常は常に新しい砥粒を補給していくと共に砥粒噴出圧力を正確に調整しながら所定の面粗度に仕上げるといった、極めて複雑かつ困難な技術が要求されていた。
【0014】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属製パイプの内面全域にわたって良好な粗面状態を形成することが可能なブラスト用ガンを使用する金属製パイプ内面のブラスト加工方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、一方の端部付近にくびれ部を有する金属製パイプを回転させながら、該金属製パイプの一方の端部から、棒状のブラスト用ガンを挿入する工程と、該ブラスト用ガンを該金属製パイプの他方の端部へと移動するとともに、該金属製パイプの内面に該ブラスト用ガンから砥粒を噴射することにより該金属製パイプ内面を粗面化する工程と、を備え、該ブラスト用ガンとして、先端のノズル部に少なくとも2個のブラスト加工用チップが嵌め込まれることにより構成されているとともに、前記少なくとも2個のブラスト加工用チップが、該ブラスト用ガンの長手方向に直交する方向と、前記少なくとも2個のブラスト加工用チップのブラスト噴射方向とのなす角度がそれぞれ45〜65°となるように、かつ、前記少なくとも2個のブラスト加工用チップのブラスト噴射方向が、該ブラスト用ガンの長手方向で互いに別方向となるように嵌め込まれているものを使用することを特徴とする金属製パイプ内面のブラスト加工方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明においては、金属製パイプの円周方向と、少なくとも2個のブラスト加工用チップのブラスト噴射方向とのなす角度が、それぞれ45〜65°の範囲で可変であることが好ましく、ブラスト加工用チップの材質がSiC、Si3N4のいずれかであることが好ましく、また、金属製パイプがナトリウム−硫黄電池用陽極容器に用いられることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0019】
図1は本発明の金属製パイプ内面のブラスト加工方法の一実施態様を示す模式図であり、(a)は全体図、(b)はブラスト用ガンのノズル部拡大図である。本発明に用いるブラスト用ガンは、図1(b)に示すように、砥粒28が噴射される2個のブラスト加工用チップ27がブラスト用ガン25のノズル部26に嵌め込まれているとともに、ブラスト用ガン25の長手方向に直行する方向と、2個のブラスト加工用チップ27のブラスト噴射方向とのなす角度θがそれぞれ45〜65°であり、かつ、2個のブラスト加工用チップ27のブラスト噴射方向が、ブラスト用ガン25の長手方向で互いに別方向となっている。以下、さらにその詳細について説明する。
【0020】
前述のブラスト用ガン25に嵌め込まれた少なくとも2個のブラスト加工用チップ27は、ブラスト噴射方向が、ブラスト用ガン25の長手方向で互いに別方向となっており、このブラスト用ガン25を金属製パイプ29に挿入すると、金属製パイプ29の長手方向で互いに別方向となる。このため、金属製パイプ29の内面30の粗面化状態が一方向性とはならずに、全方位的方向性を有することになる。したがって、その後金属製パイプの内面に耐食皮膜を溶射形成する場合において、耐食皮膜を良好な密着性を有する状態で形成することができる。
【0021】
図2は本発明による金属製パイプのくびれ部周辺への砥粒の噴射状態を説明する模式図である。本発明において使用するブラスト用ガンは、少なくとも2個のブラスト加工用チップからブラスト噴射を行うために、くびれ部19に対してブラスト処理を施す場合においては、砥粒28が噴射されない影の部分が生ずることがない。したがって、図5(b)に示すような従来のブラスト用ガンを使用する際には、金属製パイプの設置方向を変更して2回のブラスト処理を要していたのに対し、本発明において使用するブラスト用ガンによれば、1回のブラスト処理によって、金属製パイプの内面全域にわたって粗面化を行うことが可能である。
【0022】
また、本発明において用いるブラスト用ガン25は、図1(b)に示すように、その長手方向に直行する方向と、2個のブラスト加工用チップ27のブラスト噴射方向とのなす角度θがそれぞれ45〜65°であり、47〜62°であることがさらに好ましく、50〜60°であることが特に好ましい。角度θを前記の数値範囲に設定することにより、適度な角度を有する粗面状態を金属製パイプ29の内面30に形成することができる。したがって、このような粗面状態を有する金属製パイプの内面に、より密着性に優れ、剥離等の欠陥が生じ難い耐食皮膜を溶射形成することが可能である。
【0023】
さらに、本発明において使用するブラスト用ガンは、その長手方向に直行する方向と、2個のブラスト加工用チップのブラスト噴射方向とのなす角度θが各々可変であること、すなわちブラスト加工用チップが当該角度範囲内で可変・可動であることが好ましい。また、このときの可変角度θは45〜65°であることが好ましく、47〜62°であることがさらに好ましく、50〜60°であることが特に好ましい。角度θを前記の数値範囲に設定することにより、適度な角度を有する粗面状態を金属製パイプの内面に形成することができる。したがって、このような粗面状態を有する金属製パイプの内面に、より密着性に優れ、剥離等の欠陥が生じ難い耐食皮膜を溶射形成することが可能である。また、ブラスト加工用チップを固定せずに可変・可動とすることにより、くびれ部の形状や大きさ等によってその都度角度θを適当な値に設定することができ、また、金属パイプ全体の大きさ等に対してもより柔軟に対応することが可能となる。
【0024】
また、本発明に係るブラスト加工方法において使用するブラスト用ガンのノズル部に嵌め込まれるブラスト加工用チップの材質は、SiC、Si3N4のいずれかであることが好ましい。図7はブラスト加工用チップの形状を示す断面図であり、(a)はブラスト処理前、(b)はブラスト処理により磨耗された状態を示す。このように、ブラスト加工用チップ27はブラスト処理に供することにより、噴射出口31付近が磨耗され、定期的に交換する必要性がある。したがって、SiC、またはSi3N4等の材質からなる本発明のブラスト加工用チップは、充分に硬度が高いといった特性を有する他、耐磨耗性に優れるといった特性をも有している。従来、ブラスト加工用チップを構成する材質として用いられてきたタングステン(W)からなるブラスト加工用チップに比して、砥粒との磨耗によるブラスト加工用チップ内径の広がりを極力減少させることができ、ブラスト加工用チップの長寿命化がなされるためにその交換回数も減少される。
【0025】
なお、ブラスト加工用チップを構成する材質のすべてをSiC、Si3N4とするほかに、ステンレス、タングステン(W)等の金属材料の表面にSiC、Si3N4を溶射等によるコーティングで設けてもよく、また、ブラスト加工用チップが特に磨耗される部分、例えば、図7(a)において示す噴射出口31付近にのみコーティングにより設けてもよい。
【0026】
本発明のブラスト加工方法によって、その内面が加工される金属製パイプは、ナトリウム−硫黄電池用陽極容器に用いられることが好ましい。本発明においては、粗面化状態が全方位的方向性を有し、また、粗面化状態の局部的な不均一が発生し難いことから、剥離等の不具合が発生し難い密着性の高い耐食皮膜を溶射形成することができるからである。さらには、1回のブラスト処理によって、金属製パイプの内面全域にわたって粗面化を行うことが可能であるとともに、ブラスト加工用チップの交換回数も低減されているために、ナトリウム−硫黄電池用陽極容器の製造コスト削減等にも配慮のなされたブラスト加工方法である。
【0027】
一方、本発明に係る金属製パイプ内面のブラスト加工方法おいては、図1(a)に示すように、一方の端部付近にくびれ部19を有する金属製パイプ29を所定の回転速度で回転させながら、金属製パイプ29の一方の端部から前述のブラスト用ガン25を挿入し、次いで、ブラスト用ガン25を他方の端部へと移動するとともに金属製パイプ29の内面30に砥粒28を噴射することにより金属製パイプ29の内面30にブラスト処理を施すことを特徴としている。すなわち、ブラスト用ガンの挿入時のみブラスト処理を施すために、従来の方法に比して処理に要する時間の短縮がなされ、また、砥粒の消費量を削減することも可能である。また、金属製パイプの内面に形成される粗面の状態に関しても、粗面化状態の局部的な不均一が発生し難いといった利点を有している。
【0028】
さらに、ブラスト用ガンの抜き出し時のみブラスト処理を施す従来方法に比しても、金属製パイプ内に砥粒や粉塵が存在しない状態、すなわちフレッシュな面(活性化面)にブラスト処理を施すことができる。また、ブラスト処理に要する時間が短縮されているために、残留砥粒が減少されているといった特徴を有している。なお、ここでいう残留砥粒とは、アルミニウム製パイプの内面に食い込んで落下せずに残留した砥粒のことである。
【0029】
次に、ブラスト用ガンからブラスト処理用の砥粒を噴出し、金属製パイプの内面にブラスト処理を施す工程を詳述する。
まず、図1(a)に示すように、金属製パイプ29を例えば100〜500rpmの等速で回転させ、一方の端部からブラスト用ガン25を挿入する。ここで用いる、金属製パイプ29は、そのサイズは、外径が50〜180mmで、長さが200〜500mmのものまで適用可能であり、また、材質はアルミニウムやアルミニウム合金等が好適に採用される。そして、ブラスト用ガンは前述のような特徴を有するもの、例えば、図1(b)に示すような構造を有するものを使用する。当該ブラスト用ガンの挿入に際しては、例えば6〜20mm/secの等速度でブラスト用ガンを移動し、それと同時に、ブラスト処理用の砥粒28の噴射を開始する。このとき使用する砥粒はホワイトアルミナグリッド(Al2O3)等が好ましく、その粒径は♯30〜120程度が好ましい。また、砥粒を噴出するための空気吐出圧力(ゲージ圧力)は3〜5kg/mm2程度が好ましい。
その後、ブラスト用ガン25が金属製パイプの他方の端部を通過すると同時に、砥粒28の噴出を停止し、金属製パイプ29内を、もう一方の端部方向へと前記砥粒噴射時の移動よりも速い速度で、例えば200〜400mm/secの速度で戻ればよい。
以上のような操作によって、金属製パイプのくびれ部付近も含めた内面全域にわたって、全方位的方向性を有する粗面化を行うことができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施結果を説明する。
(実施例1)
図1(a)に示すように、外径が90mm、長さが450mmであるアルミニウム製パイプを設置し、300rpmの等速度で回転させた。引き続き、一方の端部から、図2(b)に示すようなノズル部26の構造を有するブラスト用ガン25を、12mm/secの等速度で挿入・移動し、それと同時に、ブラスト処理用の砥粒28(ホワイトアルミナグリッド:♯60)を、空気吐出圧力(ゲージ圧力)を4kg/mm2として噴射を開始した。その後、ブラスト用ガン25がアルミニウム製パイプの他方の端部を通過すると同時に、アルミニウム製パイプ内を、もう一方の端部方向(逆方向)へと12mm/secの等速度で移動して引抜いた。同様の操作を600本のアルミニウム製パイプを使用して行った(実施例、試料No.1〜600)。
【0031】
(比較例1)
図5(a)に示すように、外径が90mm、長さが450mmであるアルミニウム製パイプを設置し、300rpmの等速度で回転させた。引き続き、一方の端部から、図5(b)に示すようなノズル部26の構造を有するブラスト用ガン25を、12mm/secの等速度で挿入・移動し、それと同時に、ブラスト処理用の砥粒28(ホワイトアルミナグリッド:♯60)を、空気吐出圧力(ゲージ圧力)を4kg/mm2として噴射を開始した。その後、ブラスト用ガン25がアルミニウム製パイプの他方の端部を通過した後、砥粒28噴出は停止せずにアルミニウム製パイプ内を、もう一方の端部方向(逆方向)へと12mm/secの等速度で移動してブラスト処理を行い、引抜いた。同様の操作を600本のアルミニウム製パイプを使用して行った(比較例、試料No.1〜600)。
【0032】
(パイプ内表面の面粗度測定)
実施例1および比較例1において内面粗面化処理を行ったアルミニウム製パイプから100本ごとに1本ずつ抜き取り、各々の中央部を表面粗さ計を使用し、長手方向に沿って面粗度Raを測定し、標準偏差を算出した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例の場合においては、比較例の場合に比して標準偏差の数値が小さく、すなわち、個体間のバラツキが少ないことを確認することができた。したがって、その後、この粗面上に耐食皮膜を溶射形成した場合、個体間でその耐食皮膜の密着性に差が生じ難く、均一な物理特性を有する陽極容器が製造可能であることが予測される。
【0035】
(残留砥粒数の測定)
実施例1および比較例1において内面粗面化処理を行ったアルミニウム製パイプから各3本ずつ抜き取り、アルミニウム製パイプを長手方向に20mmの範囲を切り出した粗面化された内面を、光学顕微鏡を用いて残留砥粒数の測定(倍率:×200)を行った。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
実施例の場合においては、比較例の場合に比して残留砥粒数が著しく減少することを確認することができた。これは、実施例においては、ブラスト処理の時間が短縮されているためと考えられる。
【0038】
(曲げによる耐食皮膜の密着性試験)
実施例1および比較例1において内面粗面化処理を行ったアルミニウム製パイプから各3本ずつ抜き取り、特開平7−105972号公報の実施例の記載にしたがって耐食皮膜を溶射形成した。次に、図6(a)に示すように、アルミニウム製パイプの中央部付近A、B面における切片35を採取し、図6(b)に示すように、当該切片35を治具36で固定して所定の圧力を加えた後、皮膜の剥離状態を判定した。結果を表3に示す。
なお、耐食皮膜の溶射形成は、特開平7−105972号公報の実施例の記載にしたがって行い、このときの耐食皮膜の厚さは68μm、材質はCr73重量%−Fe合金であった。
また、このときの判定基準は、剥離が認められなかった場合を○、極少量の剥離が認められた場合を△とした。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例の場合においては、耐食皮膜の剥離を確認することができず、極少量の耐食皮膜の剥離が確認された比較例に比して、優位性を確認することができた。これは、実施例においては粗面化状態が全方位的方向性を有しており、耐食皮膜の密着性に優れているためであると考えられる。
【0041】
(ブラスト加工用チップの磨耗状態(内径変化)の測定)
SiC製、Si3N4製、タングステン(W)製の各ブラスト加工用チップをノズル部に嵌め込んだ3種類のブラスト用ガンを用意し、砥粒にホワイトアルミナグリッド(♯60)を使用し、空気吐出圧力(ゲージ圧力)を4.5〜5.2kg/mm2とする他は、実施例1と同様にして、各1200本ずつのアルミニウム製パイプに対してブラスト処理をおこなった。このとき、各々200本ごと処理経過ごとに図7(b)に示す噴射出口31付近の内径を測定し、ブラスト処理本数に対するブラスト加工用チップ内径をプロットしたグラフを図8に示す。
【0042】
従来用いられているタングステン(W)製に比して、SiC製、Si3N4製ブラスト加工用チップは耐磨耗性に優れており、本発明に使用するブラスト用ガンの優れた特性を確認することができた。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る金属製パイプ内面のブラスト加工方法において使用するブラスト用ガンは、所定の材質からなる2個以上のブラスト加工用チップを使用しているため、ブラスト加工用チップの耐久性・耐磨耗性に優れている。また、前記ブラスト加工用チップが所定の配置でノズル部に嵌め込まれたブラスト用ガンを用いるために、金属製パイプの内面全域にわたって全方位的方向性を有する粗面化状態を形成することができる。また、この粗面化状態はその後金属製パイプの内面に耐食皮膜を溶射形成した場合、その密着性を良好とするため、特に、ナトリウム−硫黄電池用陽極容器に用いられる金属製パイプ内面のブラスト加工方法として好適に採用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金属製パイプ内面へのブラスト加工方法の一実施態様を示す模式図であり、(a)は全体図、(b)はブラスト用ガンのノズル部拡大図である。
【図2】 本発明による金属製パイプのくびれ部周辺への砥粒の噴射状態を説明する模式図である。
【図3】 ナトリウム−硫黄電池の構造を示す断面図である。
【図4】 陽極容器の製造方法の一例を示す模式図であり、(a)は円筒状胴部、(b)は底蓋、(c)は組み立てられた陽極容器を示す。
【図5】 従来の金属製パイプ内面へのブラスト処理の一実施態様を示す模式図であり、(a)は全体図、(b)はブラスト用ガンのノズル部拡大図である。
【図6】 平板曲げ試験の実施態様を説明する模式図であり、(a)は金属製パイプの切断様式、(b)は具体的な試験実施方法、(c)は耐食皮膜の剥離状態を示す。
【図7】 ブラスト加工用チップの形状を示す断面図であり、(a)はブラスト処理前、(b)はブラスト処理により磨耗された状態を示す。
【図8】 ブラスト加工用チップの材質を選択し、ブラスト処理本数に対するブラスト加工用チップ内径をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
1…陽極容器、2…陽極側端子、3…陽極筒状金具、4…絶縁リング、5…固体電解質管、6…カートリッジ、7…小孔、8…陰極金具、9…陰極蓋、10…陰極側端子、11…隔壁管、15…円筒状胴部、16…底蓋、17…開口端部、18…耐食皮膜、19…くびれ部、20…嵌合部、25…ブラスト用ガン、26…ノズル部、27…ブラスト加工用チップ、28…砥粒、29…金属製パイプ、30…内面、31…噴射出口、32…固定用治具、35…切片、36…治具、37…剥離部。
Claims (4)
- 一方の端部付近にくびれ部を有する金属製パイプを回転させながら、該金属製パイプの一方の端部から、棒状のブラスト用ガンを挿入する工程と、
該ブラスト用ガンを該金属製パイプの他方の端部へと移動するとともに、該金属製パイプの内面に該ブラスト用ガンから砥粒を噴射することにより該金属製パイプ内面を粗面化する工程と、を備え、
該ブラスト用ガンとして、
先端のノズル部に少なくとも2個のブラスト加工用チップが嵌め込まれることにより構成されているとともに、
前記少なくとも2個のブラスト加工用チップが、該ブラスト用ガンの長手方向に直交する方向と、前記少なくとも2個のブラスト加工用チップのブラスト噴射方向とのなす角度がそれぞれ45〜65°となるように、かつ、前記少なくとも2個のブラスト加工用チップのブラスト噴射方向が、該ブラスト用ガンの長手方向で互いに別方向となるように嵌め込まれているものを使用する
ことを特徴とする金属製パイプ内面のブラスト加工方法。 - 金属製パイプの円周方向と、少なくとも2個のブラスト加工用チップのブラスト噴射方向とのなす角度が、それぞれ45〜65°の範囲で可変である請求項1記載の金属製パイプ内面のブラスト加工方法。
- ブラスト加工用チップの材質がSiC、Si3N4のいずれかである請求項1又は2に記載の金属製パイプ内面のブラスト加工方法。
- 金属製パイプがナトリウム−硫黄電池用陽極容器に用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属製パイプ内面のブラスト加工方法。
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