JP5740766B2 - 時計用デテント脱進機、及び機械式時計 - Google Patents

時計用デテント脱進機、及び機械式時計 Download PDF

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Description

この発明は、時計用デテント脱進機、及びこれを用いた機械式時計に関するものである。
従来から、機械式時計の歩度を維持するための脱進機としてデテント脱進機が知られている。このデテント脱進機は、がんぎ車と、てん真を中心に自由振動するてんぷと、作動レバーとを備えている。
てんぷは、がんぎ車の歯部と接触可能な振り石、及び作動レバーに取り付けられている片作動ばねと接触可能な外し石を有している。
作動レバーは復帰ばねを介し、がんぎ車に対して接離可能に支持されている。復帰ばねは、作動レバーを原位置に復帰するように付勢している。また、作動レバーには、がんぎ車の歯部と接触可能な止め石が設けられている。
そして、てんぷの自由振動により、外し石が作動レバーをがんぎ車から離間する方向に回転すると、がんぎ車から作動レバーが離間され、がんぎ車の歯部に接触していた止め石が外れてがんぎ車が1歯分回転する。
続いて、がんぎ車が1歯分回転する間に、作動レバーに復帰ばねの付勢力が作用し、作動レバーが原位置に復帰する。これにより、がんぎ車の歯部に止め石が再び接触し、がんぎ車の回転が停止する(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献1参照)。
特開2010−40461号公報 特開2010−190855号公報 特開2010−181223号公報
ジョージ・ダニエル著、「The Practical Watch Escapement」、Premier Print Limited、1994年(第1版発行)、第39〜47頁
ところで、上述の従来技術にあっては、デテント脱進機の作動時にがんぎ車の歯部と止め石との接触状態が変化し、がんぎ車が安定して動作しなくなる虞があるという課題がある。すなわち、例えば、がんぎ車の歯部と止め石との接触が浅い場合、小さな衝撃を受けただけでがんぎ車の歯部から止め石が外れる虞がある。一方、がんぎ車の歯部と止め石との接触が深い場合、てんぷの自由振動により、がんぎ車の歯部から止め石が外れなくなる虞がある。
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、がんぎ車を確実に安定動作させることができる時計用デテント脱進機、及び機械式時計を提供するものである。
上記の課題を解決するために、本発明に係る時計用デテント脱進機(例えば、デテント脱進機1)は、がんぎ車(例えば、がんぎ車2)と、このがんぎ車の歯部(例えば、歯部2a)と接触可能な振り石(例えば、振り石3)、及び外し石(例えば、外し石4)を有し、てん真(例えば、てん真9)を中心に自由振動するてんぷ(例えば、てんぷ5)と、前記がんぎ車の歯部と接触可能な止め石(例えば、止め石6)を有し、前記がんぎ車に対して接離可能に支持されている作動レバー(例えば、作動レバー23)とを備え、前記止め石は、前記歯部における前記止め石との接触面(例えば、接触面71)側の端面(例えば、停止面6a,62a)に、前記接触面側に向かって突出する凸部(例えば、凸部61,65)が形成され、この凸部を、前記歯部の歯先(例えば、歯先端面2a1)よりも前記がんぎ車の径方向内側で前記歯部と前記止め石とを接触させる接触部として機能させ、且つ、前記凸部の前記歯部に接触する部位には、曲面部(例えば、曲面部81a)が形成され、前記歯部は、前記止め石との接触面のうち、少なくとも前記凸部に対応する部位に傾斜面(例えば、傾斜面71a)を形成し、この傾斜面は、前記がんぎ車の歯部と、前記止め石とが接触した状態において、前記がんぎ車の回転中心と前記歯部の歯先とを結ぶ径方向の直線(例えば、径方向の直線KL)に対し、前記がんぎ車の回転中心から離れるように傾斜していることを特徴とする。
このように構成することで、がんぎ車の歯部に止め石が接触すると、歯部の傾斜面ががんぎ車の回転中心側に向かって傾斜している分、止め石にがんぎ車側に向かう力が作用する。このため、止め石ががんぎ車側に向かって引き込まれ、この歯部と止め石との接触状態を安定させることができる。これに加え、止め石は、歯部の歯先よりもがんぎ車の径方向内側で歯部と接触する接触部を有しているので、接触部を有していない場合と比較して、止め石をがんぎ車側に引き込み易い。よって、がんぎ車を確実に安定動作させることが可能になる。
また、止め石における歯部の歯先に対応する部位を、この歯先との接触を避けるように容易に形成することができる。また、歯部と止め石との接触面積を減少させて両者の間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。このため、より容易に、がんぎ車側に止め石を引き込むことができる。
さらに、歯部に対する止め石の接触状態を線接触とすることができる。このため、さらに歯部と止め石との接触面性を減少させることができ、両者の間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。よって、さらに容易に、がんぎ車側に止め石を引き込むことができる。
本発明に係る時計用デテント脱進機は、がんぎ車と、このがんぎ車の歯部(例えば、歯部63a)と接触可能な振り石、及び外し石を有し、てん真を中心に自由振動するてんぷと、前記がんぎ車の歯部と接触可能な止め石を有し、前記がんぎ車に対して接離可能に支持されている作動レバーとを備え、前記止め石は、前記歯部における前記止め石との接触面側の端面に、前記接触面側に向かって突出する凸部が形成され、この凸部を、前記歯部の歯先よりも前記がんぎ車の径方向内側で前記歯部と前記止め石とを接触させる接触部として機能させ、且つ、前記凸部の前記歯部に接触する部位には、曲面部が形成され、前記歯部は、前記止め石との接触面のうち、少なくとも前記凸部に対応する部位に弧状面(例えば、弧状面64a)を形成し、この弧状面上の任意の接線(例えば、接線SL)は、前記がんぎ車の歯部と、前記止め石とが接触した状態において、前記がんぎ車の回転中心と前記歯部の歯先とを結ぶ径方向の直線に対し、前記がんぎ車の回転中心から離れるように傾斜していることを特徴とする。
このように構成することで、がんぎ車の歯部に止め石が接触すると、歯部の弧状面における接線ががんぎ車の回転中心側に向かって傾斜している分、止め石にがんぎ車側に向かう力が作用する。このため、止め石ががんぎ車側に向かって引き込まれ、この歯部と止め石との接触状態を安定させることができる。これに加え、止め石は、歯部の歯先よりもがんぎ車の径方向内側で歯部と接触する接触部を有しているので、接触部を有していない場合と比較して、止め石をがんぎ車側に引き込み易い。よって、がんぎ車を確実に安定動作させることが可能になる。
また、止め石における歯部の歯先に対応する部位を、この歯先との接触を避けるように容易に形成することができる。また、歯部と止め石との接触面積を減少させて両者の間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。このため、より容易に、がんぎ車側に止め石を引き込むことができる。
さらに、歯部に対する止め石の接触状態を線接触とすることができる。このため、さらに歯部と止め石との接触面性を減少させることができ、両者の間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。よって、さらに容易に、がんぎ車側に止め石を引き込むことができる。
本発明に係る時計用デテント脱進機は、がんぎ車と、このがんぎ車の歯部と接触可能な振り石、及び外し石を有し、てん真を中心に自由振動するてんぷと、前記がんぎ車の歯部と接触可能な止め石を有し、前記がんぎ車に対して接離可能に支持されている作動レバーとを備え、前記止め石には、前記歯部における前記止め石との接触面側の端面に、前記接触面側に向かって突出する凸部が形成され、この凸部を、前記歯部の歯先よりも前記がんぎ車の径方向内側で前記歯部と前記止め石とを接触させる接触部として機能させると共に、前記凸部の前記歯部とは反対側で、且つ前記歯部の歯先に対応する箇所に、突起部(例えば、凸部83)が形成され、この突起部を、前記止め石と前記歯部とが接触した状態で、前記作動レバーの前記がんぎ車の回転中心側に向かう変位を規制する規制部として機能させたことを特徴とする。
このように構成することで、デテント脱進機に、作動レバーのがんぎ車への変位を規制するストッパを設けることなく、作動レバーのがんぎ車側への変位を規制することができる。このため、がんぎ車の歯部と止め石との接触が深くなってしまうことを防止でき、てんぷの自由振動により、がんぎ車の歯部から止め石が外れなくなることを防止できる。よって、がんぎ車を確実に安定動作させることが可能になる。
また、簡素な構造でがんぎ車を確実に安定動作させることができる。
上記に記載の時計用デテント脱進機と、動力源を構成するぜんまい(例えば、ぜんまい111)と、このぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列(例えば、表輪列105)とを備え、この表輪列の回転を前記時計用デテント脱進機により制御することを特徴とする。
このように構成することで、がんぎ車を確実に安定動作させることができ、高品質な機械式時計を提供することが可能になる。
本発明によれば、がんぎ車の歯部に止め石が接触すると、歯部の傾斜面ががんぎ車の回転中心側に向かって傾斜している分、止め石にがんぎ車側に向かう力が作用する。このため、止め石ががんぎ車側に向かって引き込まれ、この歯部と止め石との接触状態を安定させることができる。これに加え、止め石は、歯部の歯先よりもがんぎ車の径方向内側で歯部と接触する接触部を有しているので、接触部を有していない場合と比較して、止め石をがんぎ車側に引き込み易い。よって、がんぎ車を確実に安定動作させることが可能になる。
また、止め石における歯部の歯先に対応する部位を、この歯先との接触を避けるように容易に形成することができる。また、歯部と止め石との接触面積を減少させて両者の間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。このため、より容易に、がんぎ車側に止め石を引き込むことができる。
さらに、歯部に対する止め石の接触状態を線接触とすることができる。このため、さらに歯部と止め石との接触面性を減少させることができ、両者の間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。よって、さらに容易に、がんぎ車側に止め石を引き込むことができる。
また、がんぎ車の歯部に止め石が接触すると、歯部の弧状面における接線ががんぎ車の回転中心側に向かって傾斜している分、止め石にがんぎ車側に向かう力が作用する。このため、止め石ががんぎ車側に向かって引き込まれ、この歯部と止め石との接触状態を安定させることができる。これに加え、止め石は、歯部の歯先よりもがんぎ車の径方向内側で歯部と接触する接触部を有しているので、接触部を有していない場合と比較して、止め石をがんぎ車側に引き込み易い。よって、がんぎ車を確実に安定動作させることが可能になる。
さらに、デテント脱進機に、作動レバーのがんぎ車への変位を規制するストッパを設けることなく、作動レバーのがんぎ車側への変位を規制することができる。このため、がんぎ車の歯部と止め石との接触が深くなってしまうことを防止でき、てんぷの自由振動により、がんぎ車の歯部から止め石が外れなくなることを防止できる。よって、がんぎ車を確実に安定動作させることが可能になる。
本発明の第一参考例における機械式時計のムーブメントを裏蓋側からみた平面図である。 本発明の第一参考例におけるデテント脱進機の斜視図である。 本発明の第一参考例におけるデテント脱進機の平面図である。 図3のA部拡大図である。 図4の作用説明図である。 本発明の第一参考例におけるデテント脱進機の動作説明図である。 本発明の第一参考例におけるデテント脱進機の動作説明図である。 本発明の第一参考例におけるデテント脱進機の動作説明図である。 本発明の第二参考例における止め石の平面図である。 本発明の第実施形態における止め石の平面図である。 本発明の第三参考例における止め石の平面図である。 図11のB部拡大図である。 本発明の第実施形態における止め石の平面図である。
(第一参考例
(機械式時計)
次に、この発明の第一参考例を図1〜図8に基づいて説明する。
図1は、機械式時計のムーブメントを裏蓋側からみた平面図である。
同図に示すように、機械式時計100は、ムーブメント101を備えている。ムーブメント101は、このムーブメント101の基板を構成する地板102を有している。地板102には巻真案内孔103が形成されており、ここに巻真104が回転可能に組み込まれている。
また、ムーブメント101の裏側(図1における紙面奥側)には、おしどり、かんぬき、及びかんぬき押さえを含む切換装置(不図示)が配置されている。この切換装置により、巻真104の軸方向の位置が決定するようになっている。
一方、ムーブメント101の表側(図1における紙面手前側)には、表輪列105を構成する四番車106、三番車107、二番車108、及び香箱車110が配置されていると共に、表輪列105の回転を制御するデテント脱進機1が配置されている。
香箱車110は、ぜんまい111を有しており、巻真104を回転させると不図示のつづみ車が回転し、さらにきち車、丸穴車、及び角穴車(何れも不図示)を介してぜんまい111が巻き上げられるようになっている。そして、ぜんまい111が巻き戻される際の回転力により香箱車110が回転し、さらに二番車108が回転するように構成されている。
二番車108は、香箱車110の不図示の香箱歯車に噛合う二番かなと、二番歯車(何れも不図示)とを有している。二番車108が回転すると、三番車107が回転するように構成されている。
三番車107は、二番車108の二番歯車に噛合う不図示の三番かなと、三番歯車(何れも不図示)とを有している。三番車107が回転すると、四番車106が回転するように構成されている。
四番車106は、三番車107の三番歯車に噛合う不図示の四番かなと、四番歯車(何れも不図示)とを有している。四番車106が回転することによりデテント脱進機1が駆動する。このデテント脱進機1が駆動することにより、四番車106が1分間に1回転するように制御されると共に、二番車108が1時間に1回転するように制御される。
(デテント脱進機)
図2は、デテント脱進機の斜視図、図3は、デテント脱進機の平面図である。
図2、図3に示すように、デテント脱進機1は、四番車106が回転することにより回転するがんぎ車2と、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な止め石6を有するデテント7と、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な振り石3、及びデテント7と接触可能な外し石4を有するてんぷ5とを備えている。
がんぎ車2は不図示の四番歯車に噛合されるがんぎかな8を有しており、軸部19を介し、地板102(図1参照)と輪列受(不図示)によって回転可能に枢支されている。また、がんぎ車2の歯部2aは、がんぎ車2の外周部に複数(例えば、この第一参考例では15個)形成されている。
このように構成されたがんぎ車2は、表輪列105によって図3における時計回り方向(矢印CW1参照)に向かって回転力が付与されている。
てんぷ5は、回転軸であるてん真9を中心にして自由振動するものであって、てん真9の他に、てん真9と同心円上に配置されたてん輪10と、略円板状の大つば11と、不図示のひげぜんまいとを有している。そして、不図示のてんぷ受けにてん真9の上軸部が回転可能に支持されると共に、地板102にてん真9の下軸部が回転可能に支持されることにより、地板102、及びてんぷ受けに、てんぷ5が回転可能に枢支される。
また、大つば11に、振り石3と外し石4とが設けられている。振り石3は、この断面形状が大つば11の径方向に沿って長くなるように直方体状に形成されており、断面短手方向で対向する2面のうち、がんぎ車2の歯部2aと接触する接触面3aが他の面よりも大つば11から突出するように形成されている。
外し石4は、デテント7に設けられている後述の片作動ばね24と接触可能になっている。外し石4によってデテント7が作動する。
デテント7は、地板102に固定ワッシャ12を介して固定されている。固定ワッシャ12は、大径ワッシャ12aと、小径ワッシャ12bとにより構成されており、大径ワッシャ12aを地板102側(図2における下側)に配置した状態で、各ワッシャ12a,12bによりデテント7を挟持している。そして、この状態で一対の固定ピン13a,13bを介してデテント7を固定するようになっている。
また、固定ワッシャ12は、地板102を挟んで反対側に設けられている回転レバー14と調整ボルト15を介して連結されている。調整ボルト15は、固定ワッシャ12の径方向中央を貫通するように設けられている。回転レバー14は、デテント7の取り付け角度を調整するためのものであって、デテント7の取り付け角度を調整した後、取り外せるようになっている。
(デテント)
デテント7は、固定ワッシャ12の大径ワッシャ12aと小径ワッシャ12bとにより挟持されている円板状のデテント固定部21と、デテント固定部21に復帰ばね22を介して支持されている作動レバー23と、外し石4と接触可能な片作動ばね24とが一体成形されたものである。
ここで、一体成形を行う方法として、例えば電鋳加工によりデテント7を形成したり、フォトリソグラフィーのような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスやDRIE、MIMによりデテント7を形成したりすることが可能である。
デテント固定部21の直径は、固定ワッシャ12を構成する小径ワッシャ12bの直径と略同一に設定されている。デテント固定部21の径方向中央には、調整ボルト15を挿通可能な不図示のボルト挿通孔が形成されており、このボルト挿通孔を挟んで両側に、一対の固定ピン13a,13bを挿通可能な2つのピン挿通孔26a,26bが形成されている。2つのピン挿通孔26a,26bのうち、一方のピン挿通孔26bは、各部品の製作誤差を吸収できるように長円形状に形成されている。
また、デテント固定部21の外周部には、てんぷ5側(図3における上側)に凹部27が形成され、ここに復帰ばね22が立設されている。復帰ばね22は、この基端22aとてんぷ5のてん真9の中心(軸心)とを結ぶ直線Lに沿うように板状に形成されている。復帰ばね22は、例えば、ニッケルなどの弾性材料により形成されていることが望ましい。
復帰ばね22の先端に設けられている作動レバー23は、直線L上に沿う直方体状のアーム部28と、このアーム部28の先端側に配置され、アーム部28よりも幅広の止め石取付部29と、止め石取付部29よりも先端側に配置され、アーム部28よりも細い直方体状の先端部30とが一体成形されている。
アーム部28の基端側に、片作動ばね24の一端が一体成形されている。一方、作動レバー23の先端部30は、この中心が直線Lからがんぎ車2とは反対側(図3における右側)に向かって僅かにオフセットするように配置されている。このようにオフセットされた先端部30のがんぎ車2側の当接面30aに片作動ばね24の先端が当接されている。
片作動ばね24は、平面視略6字状に形成されたものであって、アーム部28の基端部から延出する円弧部31と、円弧部31の先端から作動レバー23の先端部30に向かって延出する直線部32とにより構成されている。そして、直線部32が作動レバー23に対する接離方向に沿って弾性変形するようになっている。
円弧部31は、アーム部28の基端部からがんぎ車2とは反対側(図3、図4における右側)に向かって、且つ直線Lと略直交する方向に沿って延出し、この後、デテント固定部21の周囲の約3/4を取り囲むように円弧状に形成されている。
一方、直線部32は、円弧部31の先端から直線Lに対して緩やかに傾斜するように延出された緩傾斜部32aと、緩傾斜部32aの先端から、この緩傾斜部32aよりも直線Lに対して急傾斜するように延出され、先端が先端部30に当接された急傾斜部32bと、急傾斜部32bから先端部30に沿って延出された舌片部32cとにより構成されている。
緩傾斜部32aは、円弧部31の先端から止め石取付部29に対応する位置に至るまで延出されている。すなわち、直線部32は、作動レバー23の止め石取付部29との干渉を避けるように円弧部31の先端から作動レバー23の先端部30に向かって延出形成された状態になっている。
また、舌片部32cは、この先端が作動レバー23の先端部30から僅かに突出するように延出形成されている。この舌片部32cの先端部30から突出した部位に、てんぷ5の外し石4が接触するようになっている。
このように構成されたデテント7の作動レバー23は、復帰ばね22の基端22aを支点23aとし、この支点23aを中心にしてがんぎ車2に対して接離可能になっている。すなわち、復帰ばね22が基端22aを中心にしてしなるように弾性変形することにより、作動レバー23ががんぎ車2に対して接離方向に沿って変位する。
なお、片作動ばね24は、復帰ばね22と同様に、例えばニッケルなどの弾性材料により形成されていることが望ましい。
復帰ばね22は、作動レバー23を原位置に復帰するように付勢している。つまり、図3に示すように、復帰ばね22は、作動レバー23のアーム部28の長手方向が直線L上となる位置に復帰するように付勢している。一方、片作動ばね24は、この片作動ばね24の舌片部32cが常に作動レバー23の先端部30と当接可能な程度のばね力に設定されている。
片作動ばね24の舌片部32cに接触可能な外し石4は、舌片部32cの先端部30とは反対側の面に接触する接触面4aが舌片部32cに沿うように形成されている。一方、外し石4の接触面4aとは反対側には、平面取りすることにより傾斜面4bが形成されている。これにより、外し石4は、この断面形状が台形状のように大つば11の径方向外側に向かうに従って先細りになっている。そして、外し石4は、てんぷ5の自由振動時における先端の軌跡が作動レバー23に接触不能な位置となるように、且つ片作動ばね24の舌片部32cに接触可能な位置となるように配置される。
このように外し石4やデテント7を構成することにより、てんぷ5の自由振動に伴って作動レバー23をがんぎ車2から離間させたり、接近させたりすることができる(詳細は後述する)。
ここで、作動レバー23の止め石取付部29には、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な止め石6が設けられている。
(止め石)
図4は、図3のA部拡大図である。
図2〜図4に示すように、止め石6は、例えば人工ルビー等により、角柱状で、且つその断面形状が作動レバー23の先端部30に向かうに従って漸次幅広となるように略台形状に形成されたものである。
より具体的には、止め石6は、作動レバー23のアーム部28が直線Lに沿っている状態で、直線Lに略直交し、且つ先端側(図4における上側)に位置する停止面6aと、この停止面6aに対向する下面6bと、停止面6a、及び下面6bのがんぎ車2とは反対側(図4における右側)に位置し、且つ直線Lに沿う側面6cと、停止面6a、及び下面6bのがんぎ車2側(図4における左側)に位置し、直線Lに対して傾斜している背面6dとを有している。
そして、止め石6の停止面6aには、がんぎ車2側に凸部61が形成されている。凸部61は、止め石6の背面6dから停止面6aに略平行、つまり、直線Lに略直交するように延出する端面61aと、端面61aから止め石6の停止面6aに向かって斜めに延出する斜面61bとを有している。
ここで、がんぎ車2の歯部2aは、このがんぎ車2の回転方向(図3における矢印CW1方向)側の面が止め石6に接触する接触面71となっている。接触面71は、この接触面71と歯先端面2a1とが接続する角部2a2と、がんぎ車2の軸部19の軸心とを結ぶ径方向の直線KL(以下、単に「径方向の直線KL」という)に対して傾斜した傾斜面71aにより構成されている。より具体的には、傾斜面71aは、径方向の直線KLに対して、がんぎ車2の軸部19側に向かって傾斜した状態になっている。
また、止め石6には、凸部61が形成されているので、がんぎ車2の歯部2aの接触面71(傾斜面71a)には、歯先端面2a1よりも径方向内側に止め石6が接触する。すなわち、止め石6は、歯部2aの歯先端面2a1との接触を避けるように形成された状態になっており、凸部61が歯部2aの歯先端面2a1よりも径方向内側で歯部2aと接触する接触部として機能することになる。
ここで、止め石6に形成されている凸部61の端面61aは、直線Lに対して略直交している一方、がんぎ車2の歯部2aの傾斜面71aは、径方向の直線KLに対して、がんぎ車2の軸部19側に向かって傾斜している。このため、歯部2aの接触面71では、この接触面71と、凸部61の端面61aと斜面61bとの間の稜線部61cとが線接触した状態になっている。
このように構成されたがんぎ車2の歯部2aと止め石6の凸部61とが接触したとき、止め石6に、がんぎ車2側に向かう力が作用し、作動レバー23ががんぎ車2側に向かって接近するように変位しようとする(詳細は後述する)。
図2、図3に示すように、地板102には、作動レバー23のがんぎ車2に接近する方向に向かう変位を規制するストッパ40が設けられている。ストッパ40は、ストッパアーム41とストッパアーム41の先端に立設されたストッパピン42とを有している。そして、ストッパアーム41の基端側が、固定ピン43を介して地板102に固定されている。
ストッパピン42は、作動レバー23のアーム部28に、がんぎ車2側から当接するようになっている。これにより、作動レバー23のがんぎ車2に接近する方向に向かう変位が規制される。
また、ストッパアーム41は、固定ピン43を中心にして回転可能に設けられており、これによってストッパピン42の位置が調整できるようになっている。このストッパピン42の位置を調整することにより、作動レバー23の移動規制位置が、がんぎ車2の歯部2aに止め石6が接触可能、且つアーム部28の長手方向が直線L上となる位置に設定される。
(デテント脱進機の動作)
次に、図3、図5〜図8に基づいて、デテント脱進機1の動作について説明する。
図5は、図4の作用説明図、図6〜図8は、デテント脱進機の動作説明図である。
まず、図3、図5に示すように、デテント7の作動レバー23が直線Lに沿う位置に存在している状態では、がんぎ車2の歯部2aにおける接触面71(傾斜面71a)と、作動レバー23に設けられている止め石6の凸部61とが接触し、両者2,6が係合してがんぎ車2が停止した状態になっている。
より詳しくは、図5に示すように、がんぎ車2には、表輪列105より回転力F1が付与されている。この回転力F1は、がんぎ車2の歯部2aの接触面71から止め石6の凸部61の稜線部61cを押圧する力として作用する。ここで、歯部2aの接触面71は、がんぎ車2の軸部19側に向かって傾斜する傾斜面71aにより構成されているので、止め石6に、回転力F1の分力F2が、がんぎ車2の軸部19側に向かって作用する。
さらに、歯部2aの接触面71では、この接触面71と、凸部61の端面61aと斜面61bとの間の稜線部61cとが線接触した状態になっているので、歯部2aと凸部61との間に生じる摩擦抵抗が、接触面71と凸部61とが面接触する場合と比較して低減される。このため、がんぎ車2の歯部2aによって、止め石6が歯部2aの根元側にスムーズに引き込まれる。すなわち、がんぎ車2に接近する方向に向かって作動レバー23がスムーズに変位する(図5における矢印Y1参照)。
このとき、止め石6の凸部61は、歯部2aの歯先端面2a1よりも径方向内側で歯部2aと接触するようになっているので、止め石6に凸部61が形成されておらず、止め石6の停止面6a全体が歯部2aの傾斜面71aに接触してしまう場合と比較して、止め石6を歯部2aの根元側に引き込み易い。
また、図3に示すように、地板102には、作動レバー23のがんぎ車2に接近する方向に向かう変位を規制するストッパ40が設けられている。このストッパ40に作動レバー23のアーム部28が当接し、作動レバー23が直線Lに沿う位置で停止する。そして、がんぎ車2が回転力F1に抗して停止する。
この状態から、図6に示すように、てんぷ5が自由振動することにより、大つば11が矢印CCW1方向(図6における反時計回り方向)に向かって回転すると、この大つば11に設けられている外し石4の接触面4aと片作動ばね24の舌片部32cの先端とが当接する。そして、外し石4により、舌片部32cを介して作動レバー23が押圧され、がんぎ車2から離間する方向に向かって変位する(図6における矢印Y2参照)。
作動レバー23ががんぎ車2から離間する方向に向かって変位することにより、これに設けられている止め石6ががんぎ車2の歯部2aから離脱し、両者2,6の係合が解除される。これにより、がんぎ車2が矢印CW1方向(図6における時計回り方向)に向かって回転する。
また、大つば11が矢印CCW1方向に向かって回転することにより、がんぎ車2が矢印CW1方向に向かって回転し始めるのとほぼ同時に、がんぎ車2の歯部2aに振り石3の接触面3aが接触する(図6における2点鎖線参照)。そして、がんぎ車2の回転力が振り石3を介しててんぷ5に伝達される。このとき、てんぷ5は、矢印CCW1方向に向かって回転力が付与される。
図7に示すように、大つば11が矢印CCW1方向(図7における反時計回り方向)に向かって所定角度回転すると、片作動ばね24の舌片部32cの先端から外し石4が離間する。すると、復帰ばね22の復元力により、作動レバー23ががんぎ車2に接近する方向(図7における矢印Y3参照)に向かって変位する。このとき、作動レバー23の変位がストッパ40によって規制され、作動レバー23が原位置に戻る。
作動レバー23が原位置に戻ることにより、止め石6の凸部61に歯部2aの接触面71が再び当接し、がんぎ車2の回転力F1により、作動レバー23が確実にがんぎ車2側に引き込まれる。このため、確実にがんぎ車2と止め石6とが係合され、がんぎ車2の回転が停止される。ここで、がんぎ車2と止め石6との係合が解除されてから再び係合するまでの間に、がんぎ車2は1歯分だけ回転する。
一方、がんぎ車2によって矢印CCW1方向に向かう回転力が付与されたてんぷ5は、このてんぷ5に設けられているひげぜんまいが巻き上げられる。そして、ひげぜんまいが所定量巻き上げられると、ひげぜんまいの復元力とてんぷ5の回転力とが逆転し、大つば11の回転方向が矢印CW2方向(図7における時計回り方向)に転じる。
図8に示すように、大つば11が矢印CW2方向に向かって回転すると、外し石4の傾斜面4bが片作動ばね24の舌片部32cの先端に接触する。そして、さらに大つば11が回転することにより、片作動ばね24の舌片部32cが作動レバー23から離間する方向、つまり、がんぎ車2に向かう方向(矢印Y4参照)に向かって押圧される。すると、片作動ばね24は、直線部32を押し広げるように弾性変形する。
さらに、大つば11が矢印CW2方向に向かって回転し、所定角度に達すると、片作動ばね24の舌片部32cから外し石4が離間する。すると、片作動ばね24の復元力により、舌片部32cが作動レバー23側に向かって変位し(図8における矢印Y5参照)、原位置に戻る。
一方、大つば11が矢印CW2方向に向かって回転している間、てんぷ5に設けられているひげぜんまいが巻き戻される。そして、ひげぜんまいが所定量巻き戻されると、ひげぜんまいの復元力とてんぷ5の回転力とが逆転し、再び大つば11の回転方向が矢印CCW1方向(図8における反時計回り方向)に転じる。
これを繰り返すことにより、てんぷ5がてん真9を中心にして自由振動すると共に、デテント7が図3、図6〜図8に示す状態を繰り返す。このため、がんぎ車2が常に一定速度で回転する。
(効果)
したがって、上述の第一参考例によれば、がんぎ車2の歯部2aの接触面71が、径方向の直線KLに対し、がんぎ車2の軸部19側に向かって傾斜した状態になっているので、歯部2aと止め石6とが接触した際、止め石6にがんぎ車2の軸部19側に向かう力F2(図5参照)を作用させることができる。
これに加え、止め石6に凸部61を形成することにより、歯部2aの接触面71の歯先端面2a1よりも径方向内側で止め石6と歯部2aとが接触するので、止め石6に凸部61が形成されていない場合と比較して、止め石6を歯部2aの根元側に容易に引き込むことができる。
さらに、歯部2aの接触面71では、この接触面71と、凸部61の端面61aと斜面61bとの間の稜線部61cとが線接触した状態になっているので、歯部2aと凸部61との間に生じる摩擦抵抗が、接触面71と凸部61とが面接触する場合と比較して低減される。
このため、がんぎ車2の歯部2aと作動レバー23の止め石6との係脱動作を確実に安定させることができ、この結果、がんぎ車2の動作を安定させることができる。
なお、上述の第一参考例では、がんぎ車2の歯部2aの接触面71は、がんぎ車2の径方向の直線KLに対して傾斜した傾斜面71aにより構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、少なくとも接触面71における止め石6の凸部61に対応する部位に傾斜面71aが形成されていればよく、この傾斜面71a以外の接触面71の形状は、例えば凹凸形状や湾曲形成されていてもよい。
(第二参考例
次に、この発明の第二参考例を図1を援用し、図9に基づいて説明する。なお、第一参考例と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する(以下の参考例、実施形態についても同様)。
図9は、第二参考例における止め石の平面図であって、前述の第一参考例の図4に対応している。
この第二参考例において、機械式時計100は、ムーブメント101を備えている点、ムーブメント101の表側に、表輪列105の回転を制御するデテント脱進機1が配置されている点、デテント脱進機1は、四番車106が回転することにより回転するがんぎ車2と、がんぎ車2に対して接離可能に支持されている作動レバー23を有するデテント7と、がんぎ車2と接触可能な振り石3、及びデテント7と接触可能な外し石4を有するてんぷ5とを備えている点等の基本的構成は、前述した第一参考例と同様である(以下の参考例、実施形態についても同様)。
ここで、図9に示すように、前述した第一参考例と、この第二参考例との相違点は、第二参考例のがんぎ車2の歯部63aの形状、及び止め石62の形状が前述の第一参考例のがんぎ車2の歯部2aの形状、及び止め石6の形状と異なる点にある。
すなわち、第二参考例のがんぎ車2の歯部63aは、この接触面64が弧状面64aにより構成されている。
一方、止め石62の停止面62aには、がんぎ車2側(図9における左側)に凸部65が形成されている。凸部65は、がんぎ車2の歯部63aの歯先端面63a1を避け、この歯先端面63a1よりも径方向内側(図9における左側)に接触するように形成されている。
すなわち、止め石62の凸部65は、歯部63aの歯先端面63a1よりも径方向内側で止め石62と歯部63aとを接触させる接触部として機能することになる。
ここで、接触面64を構成する弧状面64aは、止め石62の凸部65が接触している位置での接線SLが、径方向の直線KLに対し、がんぎ車2の軸部19側(図9における左側)に向かって傾斜するように形成されている。
このような構成のもと、がんぎ車2の歯部63aと止め石62の凸部65とが接触したとき、止め石62に、がんぎ車2側に向かう力F3が作用する。この結果、作動レバー23にがんぎ車2側に向かう力が作用する。
(効果)
したがって、上述の第二参考例によれば、前述の第一参考例と同様の効果を奏することができる。さらに、歯部63aの接触面64を弧状面64aにより構成することで、止め石62の凸部65が接触している位置における接線SLは、径方向の直線KLに対する傾斜が大きくなる。このため、止め石62に作用するがんぎ車2の軸部19側に向かう力F3を前述の第一参考例の力F2(図5参照)よりも大きく設定することができる。よって、さらに確実に作動レバー23をがんぎ車2側に向かって引き込むことが可能になる。
なお、上述の第二参考例では、がんぎ車2の歯部63aの接触面64は、弧状面64aにより構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、少なくとも接触面64における止め石62の凸部65に対応する部位に弧状面64aが形成されていればよく、この弧状面64a以外の接触面64の形状は、例えば凹凸形状や平坦状に形成されていてもよい。
(第実施形態)
次に、この発明の第実施形態を図10に基づいて説明する。
図10は、第実施形態における止め石の平面図であって、前述の第一参考例の図4に対応している。
同図に示すように、第一参考例と、第実施形態との相違点は、第一参考例の止め石6の停止面6aに形成されている凸部61と、第実施形態の止め石82の上面82aに形成されている凸部81の形状とが異なる点にある。
すなわち、止め石82の凸部81には、先端側に断面略弧状の曲面部81aが形成されている。この曲面部81aが、がんぎ車2の歯部2aに接触するようになっている。
したがって、この第実施形態によれば、止め石82の凸部81に曲面部81aを形成することにより、歯部2aの接触面71と、止め石82の凸部81とを確実に線接触させることができる。このため、前述の第一参考例の歯部2aの接触面71と、止め石6の凸部61とが接触する状態と比較して、歯部2aの接触面71と、止め石82の凸部81との接触抵抗を低減できる。よって、よりスムーズに、作動レバー23をがんぎ車2側に向かって引き込むことが可能になる。
(第三参考例
次に、この発明の第三参考例を図11、図12に基づいて説明する。
図11は、第三参考例における止め石の平面図であって、前述の第一参考例の図4に対応している。図12は、図11のB部拡大図である。
図11、図12に示すように、第一参考例と、第三参考例との相違点は、第一参考例の止め石6に形成されている凸部61の機能と、第三参考例の止め石84に形成されている凸部83の機能とが異なる点にある。以下に詳述する。
ここで、止め石84の外形状は、前述の第一参考例の止め石6の外形状と同一である。つまり、止め石84は、作動レバー23のアーム部28が直線Lに沿っている状態で、直線Lに略直交し、且つ先端側(図11における上側)に位置する上面84aと、この上面84aに対向する下面84bと、上面84a、及び下面84bのがんぎ車2とは反対側(図11における右側)に位置し、且つ直線Lに沿う側面84cと、上面84a、及び下面84bのがんぎ車2側(図4における左側)に位置する斜面84dとを有している。
そして、止め石84の上面84aには、がんぎ車2の歯部2aと接触する部位を避けるように、がんぎ車2とは反対側(図11における右側)の大部分に凸部83が形成されている。凸部83は、止め石84の側面84cから上面84aに略平行、つまり、直線Lに略直交するように延出する端面83aと、端面83aから止め石84の上面84aに向かって斜めに延出する斜面83bとを有している。
このような構成のもと、がんぎ車2の歯部2aと止め石84とが接触した状態では、止め石84に形成されている凸部83の斜面83bに、歯部2aの歯先端面2a1が当接するようになっている。これにより、作動レバー23のがんぎ車2側に向かう変位が規制される。
ここで、凸部83の斜面83bの傾斜角度は、がんぎ車2の歯部2aにおける歯先端面2a1の傾斜角度よりも、がんぎ車2とは反対側(図12における右側)に向かって緩やかに傾斜するように設定されている。すなわち、凸部83の斜面83bは、歯部2aの歯先端面2a1との間に開口部85を有するように形成されており、この開口部85の開口幅は、作動レバー23の先端側(図12における上側)に向かうに従って、漸次大きくなるように設定されている。
一方、止め石84の上面84aは、直線Lに略直交するように形成されており、上面84aと歯部2aの接触面71(傾斜面71a)との間に、がんぎ車2側に向かって漸次開口幅が大きくなる開口部86が形成されている。これにより、がんぎ車2の歯部2aと止め石84は、この止め石84の上面84aと凸部83の斜面83bとの接続部で当接することになる。
したがって、上述の第三参考例によれば、止め石84の凸部83によって、作動レバー23のがんぎ車2側への変位を規制することができる。このため、がんぎ車2の歯部2aと止め石84との接触が深くなってしまうことを防止でき、てんぷ5の自由振動により、がんぎ車2の歯部2aから止め石84が外れなくなることを防止できる。よって、がんぎ車2を確実に安定動作させることが可能になる。
また、凸部83の斜面83bは、歯部2aの歯先端面2a1との間に開口部85を有するように形成されており、この開口部85の開口幅は、作動レバー23の先端側(図12における上側)に向かうに従って、漸次大きくなるように設定されている。このため、歯部2aの歯先端面2a1と止め石84の凸部83との間の接触抵抗が大きくなってしまうことを防止でき、歯部2aと止め石84との係脱動作をよりスムーズに行うことが可能になる。
さらに、図1に示すように地板102にストッパ40を設ける必要がなくなり、デテント脱進機1の部品点数を減少させることができる。
なお、上述の第三参考例では、止め石84の上面84aは、直線Lに略直交するように形成されており、上面84aと歯部2aの接触面71(傾斜面71a)との間に、がんぎ車2側に向かって漸次開口幅が大きくなる開口部86が形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、歯部2aの接触面71に沿うように止め石84の上面84aが形成されており、これら歯部2aの接触面71と止め石84の上面84aとが面接触してもよい。このような場合であっても、止め石84に形成されている凸部83は、作動レバー23の変位を規制する機能を十分発揮することができる。
また、上述の第三参考例では、凸部83の斜面83bが、歯部2aの歯先端面2a1との間に開口部85を有するように形成されている場合について説明した。しかしながら、凸部83の斜面83bの傾斜角度は、特に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。すなわち、凸部83に歯部2aの歯先端面2a1が当接し、作動レバー23の変位が規制される構成になっていればよい。
(第実施形態)
次に、この発明の第実施形態を図13に基づいて説明する。
図13は、第実施形態における止め石の平面図であって、前述の第一参考例の図4に対応している。
ここで、この第実施形態の止め石92には、第一参考例に示す凸部61と第三参考例に示す凸部83とが形成されている。
したがって、この第実施形態によれば、前述の第一参考例と同様の効果に加え、第三参考例と同様の効果を奏することができる。
なお、上述の第三参考例、及び第実施形態では、それぞれ止め石84,92に凸部83を形成し、この凸部83によって作動レバー23の変位を規制する場合について説明した。しかしながら、止め石84,92に設けられ、作動レバー23のがんぎ車2側への変位を規制するものであればよく、凸部83に限定されるものではない。例えば、止め石84,92にピンを突設し、このピンに作動レバー23の変位を規制する役割を持たせてもよい。
1 デテント脱進機(時計用デテント脱進機)
2 がんぎ車
2a,63a 歯部
2a1,63a1 歯先端面
2a2 角部(歯先)
3 振り石
4 外し石
5 てんぷ
6,62,82,84,92 止め石
6a 停止面(端面)
9 てん真
19 軸部
23 作動レバー
61,65,81 凸部
64 接触面
64a 弧状面
71 接触面
71a 傾斜面
81a 曲面部
83 凸部(突起部)
105 表輪列
111 ぜんまい
KL 径方向の直線
SL 接線

Claims (4)

  1. がんぎ車と、
    このがんぎ車の歯部と接触可能な振り石、及び外し石を有し、てん真を中心に自由振動するてんぷと、
    前記がんぎ車の歯部と接触可能な止め石を有し、前記がんぎ車に対して接離可能に支持されている作動レバーとを備え、
    前記止め石は、前記歯部における前記止め石との接触面側の端面に、前記接触面側に向かって突出する凸部が形成され、この凸部を、前記歯部の歯先よりも前記がんぎ車の径方向内側で前記歯部と前記止め石とを接触させる接触部として機能させ、
    且つ、前記凸部の前記歯部に接触する部位には、曲面部が形成され、
    前記歯部は、前記止め石との接触面のうち、少なくとも前記凸部に対応する部位に傾斜面を形成し、
    この傾斜面は、前記がんぎ車の歯部と、前記止め石とが接触した状態において、前記がんぎ車の回転中心と前記歯部の歯先とを結ぶ径方向の直線に対し、前記がんぎ車の回転中心から離れるように傾斜していることを特徴とする時計用デテント脱進機。
  2. がんぎ車と、
    このがんぎ車の歯部と接触可能な振り石、及び外し石を有し、てん真を中心に自由振動するてんぷと、
    前記がんぎ車の歯部と接触可能な止め石を有し、前記がんぎ車に対して接離可能に支持されている作動レバーとを備え、
    前記止め石は、前記歯部における前記止め石との接触面側の端面に、前記接触面側に向かって突出する凸部が形成され、この凸部を、前記歯部の歯先よりも前記がんぎ車の径方向内側で前記歯部と前記止め石とを接触させる接触部として機能させ、
    且つ、前記凸部の前記歯部に接触する部位には、曲面部が形成され、
    前記歯部は、前記止め石との接触面のうち、少なくとも前記凸部に対応する部位に弧状面を形成し、
    この弧状面上の任意の接線は、前記がんぎ車の歯部と、前記止め石とが接触した状態において、前記がんぎ車の回転中心と前記歯部の歯先とを結ぶ径方向の直線に対し、前記がんぎ車の回転中心から離れるように傾斜していることを特徴とする時計用デテント脱進機。
  3. がんぎ車と、
    このがんぎ車の歯部と接触可能な振り石、及び外し石を有し、てん真を中心に自由振動するてんぷと、
    前記がんぎ車の歯部と接触可能な止め石を有し、前記がんぎ車に対して接離可能に支持されている作動レバーとを備え、
    前記止め石には、前記歯部における前記止め石との接触面側の端面に、前記接触面側に向かって突出する凸部が形成され、この凸部を、前記歯部の歯先よりも前記がんぎ車の径方向内側で前記歯部と前記止め石とを接触させる接触部として機能させると共に、
    前記凸部の前記歯部とは反対側で、且つ前記歯部の歯先に対応する箇所に、突起部が形成され、この突起部を、前記止め石と前記歯部とが接触した状態で、前記作動レバーの前記がんぎ車の回転中心側に向かう変位を規制する規制部として機能させたことを特徴とする時計用デテント脱進機。
  4. 請求項1〜請求項の何れかに記載の時計用デテント脱進機と、
    動力源を構成するぜんまいと、
    このぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列とを備え、
    この表輪列の回転を前記時計用デテント脱進機により制御することを特徴とする機械式時計。
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