JP5739893B2 - フレキソ印刷版を現像するためのポリマーウォッシュアウト溶剤、およびその使用 - Google Patents

Description

本発明は、フレキソ印刷版を現像するためのポリマーウォッシュアウト溶剤、およびその使用に関する。

発明の属する技術分野において、フレキソ印刷版は、印刷する像に対応するレリーフを有する柔軟なポリマー版である。レリーフは、基層の上部に存在している。これらの印刷版（溶剤印刷版、またはクラッチ版とも呼ばれる）の製造は、光の影響下で硬化し得る軟質光重合性材料のシートから始める。最初に、版の背面を、ＵＶ／Ａ光に均一に露光して硬化した基層を得る。その後に版の前面を特定のパターンに従ってＵＶ／Ａ光に露光する。これは通常、印刷するパターンのネガである、開口部をもつマスクを前面に適用することによって行われる。マスクの開口部を通過する光は、従って版の前面の特定の領域を硬化させる。硬化していない領域を様々な方法で除去して、いわゆる現像されたフレキソ印刷版を得ることができる。通常、硬化していないポリマーの除去は、版を溶剤、いわゆるポリマーウォッシュアウト溶剤中で洗浄することによって実施される。この洗浄工程の間に、硬化していないポリマーは除去され、残った硬化領域（すなわち、レリーフ）は、いくらかの溶剤を吸収して膨潤する。特別な乾燥機を使用してレリーフに吸収された溶剤を除去すると、硬化領域は使用できる状態になる。

実際には、Ｋｌｕｔｈｅ社により製造される「Ｈａｋｕ」、およびＢＡＳＦ社により製造される「Ｎｙｌｏｓｏｌｖ Ａ」などのポリマーウォッシュアウト溶剤が公知であり、かつ広く使用されている。両方の溶剤は、多く出回っているにもかかわらず、欠点を有する。Ｎｙｌｏｓｏｌｖ Ａは、ペルクロロエチレン（ＣＦＣ、環境に有害な化合物）に基づく従前の溶剤に置き換えるために１９８８年に導入された。Ｎｙｌｏｓｏｌｖ Ａ（Ｆｌｉｎｔ Ｇｒｏｕｐ ＧｍｂＨ社より入手）中の主な構成成分（２５〜５０重量％）は、鉱油の水和した留出物の重質留分である。同様に、Ｈａｋｕ（Ｋｌｕｔｈｅ社より入手）も、そのような重質留分留出物（５０〜１００重量％、芳香族を含む）を含有する。この成分は、ナフサ（ｎａｐｈｔａ）とも呼ばれ、危険物に分類される。

重質留分留出物のほかに、Ｎｙｌｏｓｏｌｖ Ａは、シクロヘキサノール（２５〜５０重量％）およびｍ−ジイソプロピルベンゼン（１０〜２５重量％）を含有する。第二の主な構成成分として、Ｈａｋｕは、ベンジルアルコール（１０〜２５重量％）を含有する。これらの成分も、危険物に分類される。

別の例は、重質留分留出物およびベンジルアルコールを含有するＢｉｅｓｔｅｒｖｅｌｄ Ｂ．Ｖ．社製のＦｌｅｘｏｓｏｌである。

このように、既知の溶剤は有害な組成物であり、それらが人類および環境に対して脅威を示すという意味において有害である。その理由で、どのような事故も防ぐための厳密かつコストのかかる手段が講じられていない限り、これらの溶剤を大量に在庫に置くことは許容されない。これらの不必要な特性のほかに、これらの溶剤は不快臭を有する。また、この不快臭は、溶剤で洗浄した後に印刷版に伝わり、最終製品の品質を損なう。さらに、種々の軟質光重合性材料のシートは、最良のウォッシュアウト結果を達成するために、異なる種類のウォッシュアウト溶剤を必要とする。

これらの欠点のほかに、例えば洗浄工程および乾燥工程に必要な時間を削減することにより、フレキソ印刷版の洗浄工程および乾燥工程を改良することには、一般的な関心がある。加えて、簡単にかつ経済的に再使用できる溶剤を提供することにも、一般的な関心がある。最後に、かかるウォッシュアウト溶剤は、既知の溶剤と比較した場合に、現像したフレキソ印刷版の外観および特性に関して同様の結果を達成することが可能であるべきである。

従って、本発明の目的は、上記に示された目標の１以上を同時に達成する、より危険性が低く、より無害なポリマーウォッシュアウト溶剤を提供することである。

本発明の目的は、フレキソ印刷版を現像するためのポリマーウォッシュアウト溶剤により達成され、それは、
エステル炭化水素成分、
エーテル炭化水素成分、
アルコール炭化水素成分
を含む。

本ウォッシュアウト溶剤は、既知の溶剤において使用される重質留分留出物（すなわち、ナフサ）を含有しない。代わりに、危険または有害と分類されていない３つの主成分が溶剤中に存在する。従って、本溶剤は、既知の溶剤よりも本質的に危険性が低い。また、悪臭ももはや存在しない。

業界はナフサの欠点を有さない溶剤を配合する方法を長い間研究してきたが、かかる溶剤を提供することには成功しなかった。

さらに、本溶剤は、下記に示されるように、フレキソ印刷版を洗浄および乾燥する際に必要な時間の短縮を達成する。最も驚くべきことに、本発明の溶剤は硬化領域でごく僅かに吸収されるので、洗浄工程中の膨潤がないかまたは非常に少ない。明らかに、これはその後の乾燥時間に必要な時間が短縮されるという点でプラスの効果を有する。本溶剤は、広範な種々の軟質光重合性材料に適しているので、様々なウォッシュアウト溶剤の在庫を持ち続けることはもはや必要ない。本発明のたった１種類のウォッシュアウト溶剤にそれらを置き換えることができるためである。

また、本溶剤は、通常の有効期間の間に沈殿作用が起こらないことを示した、安定した混合物である。

本溶剤は、ウォッシュアウト溶剤として使用した後の、使用した溶剤の留去による再使用（再生）に適している。なぜなら蒸留した溶剤中の成分の特定の比を大きく調整する必要がないためである。さらに、成分の数が比較的少ないので、本溶剤は必要であれば簡単に調整される。

使用中、本溶剤は、再生の必要なく、４０より多くの洗浄サイクルに使用することができることが見出された。対照的に、Ｎｙｌｏｓｏｌｖは、洗い流されたポリマーの粒子の沈殿を示すので、それよりも早期に再生せねばならない。このことは、本発明の溶剤が既知の溶剤よりも、洗い流されるポリマーに対して高い溶解度値を有することを示す。

好ましくは、本発明の溶剤は、
１０〜２５重量％のエステル炭化水素成分
５０〜７５重量％のエーテル炭化水素成分、および
１０〜２５重量％のアルコール炭化水素成分
を含む。

特に効果的なのは、エステル炭化水素成分が、Ｃ１−Ｃ５アルキル、ベンジル（ｂｅｎｚｙｌ）またはベンジル誘導体、およびＣ１−Ｃ５アルカノエートのエステル化合物、ならびにこれらのエステル化合物の混合物の群から選択される化合物を含む溶剤である。Ｃ１−Ｃ５基は、分枝状または直鎖状炭化水素であってよく、好ましくは直鎖状炭化水素である。

その有効性に関して特に好ましいのは、エステル炭化水素成分が、アルカノエートとして酢酸エステル、および好ましくはベンジルまたはベンジル誘導体を含む溶剤である。

好ましくは、本発明のポリマーウォッシュアウト溶剤において、エーテル炭化水素成分は、ジオールから誘導されたＣ１−Ｃ８アルカンのジエーテルであって、２つのＣ１−Ｃ３アルコキシ基を含む。

より好ましくは、本発明のポリマーウォッシュアウト溶剤において、エーテル炭化水素成分は、内部エーテル基、および好ましくは２つのメトキシ基を有するアルカンのジエーテルを含む。特に好ましくは、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのジエーテルである。

さらに、好ましいのは、アルコール炭化水素成分が、Ｃ１−Ｃ１０アルコール化合物、ならびにこれらのアルコール化合物の混合物の群から選択される化合物を含む溶剤である。Ｃ１−Ｃ１０基は、分枝状または直鎖状炭化水素であってよい。この場合も先と同様に、かかる溶剤は、本発明の目標を達成するのに効果的であることが分かる。

好ましくは、アルコール炭化水素成分は、Ｃ３−Ｃ６アルコール化合物またはその混合物の群から選択される化合物を含み、第一級アルコール基が存在し、より好ましくは、炭化水素鎖は直鎖状である。特に好ましくは、ｎ−ブタノールおよび／またはｎ−ペンタノールである。

同様に好ましいのは、アルコール炭化水素成分が、第二級アルコール基を含有し、場合によりエーテル基も含有する化合物を含む本発明の溶剤である。

特に、本発明の溶剤において、アルコール化合物は、プロパノール、好ましくはプロパン−２−オールおよび／または１−メトキシプロパン−２−オールである。

有利には、本発明のウォッシュアウト溶剤は、溶剤の臭気を改良するための添加剤を含有する。例えば、既知の芳香を用いて本溶剤から任意の不必要な臭気を遮蔽する。特に、Ｄ−リモネンを添加剤として使用する。

別の態様では、本発明は、洗浄工程においてフレキソ印刷版を現像するための、本発明のポリマーウォッシュアウト溶剤の使用に関する。下記に示されるように、本発明の溶剤を使用すると、フレキソ印刷版の現像は、洗浄工程ならびにその後の乾燥工程に関して、ますます時間のかからないものとなる。

下記の実施例は、本発明のポリマーウォッシュアウト溶剤、およびフレキソ印刷版を現像するためのその使用を示す。

実施例
以下の成分の混合物を調製した。

本発明のウォッシュアウト溶剤である得られた混合物の沸点は１１６℃、引火点は４８℃、そして密度は０．９２ｋｇ／リットルである。この溶剤は、輸送安全性のためのＡＤＲに従って、クラス３、ＵＮ１１２０、グループ３に分類される。

このウォッシュアウト溶剤を、フレキソ印刷版（Ｆｌｉｎｔ社製）を現像するためのウォッシュアウト装置（ＤｕＰｏｎｔ社製）で使用した。版の前面の領域を、あらかじめ、マスクを用いることによってＵＶ光の下で選択的に光重合させた。

硬化していないポリマーを版（２．８４ｍｍ厚さ）から洗い落とすために必要な時間は、４００〜５００秒であった。これはＮｙｌｏｓｏｌｖ Ａとして既知の溶剤と比較して約半分の時間である。実質的に、洗浄工程を実施した後に膨潤は起こらなかった。

その後の乾燥工程に必要な時間は１５〜３０分であった。これは既知の溶剤を使用することと比較して１．５〜２時間の短縮である。

洗い落とされた非硬化ポリマーとともに使用溶剤を留去して溶剤を回収した。蒸留した溶剤は、使用前の溶剤と同様の成分比を有することを示した。従ってそれは成分の相対量を大きく調整する必要なく再生可能である。対照的に、既知の溶剤は、それらを使用後に留去した後で、成分の相対量を大きく調整する必要がある。再使用のための適した再生ウォッシュアウト溶剤を得るために、成分は特定の量で留出物に添加されねばならない。溶剤を正確に再生するために、特定の表に従って、添加せねばならない量を算出する必要がある。

Claims (2)

1. １０〜２５重量％のエステル炭化水素成分と、
   ５０〜７５重量％のエーテル炭化水素成分と、
   １０〜２５重量％のアルコール炭化水素成分と
   を含む、ポリマーウォッシュアウト溶剤であって、
   前記エステル炭化水素成分が、酢酸ベンジルであり、
   前記エーテル炭化水素成分が、ジプロピレングリコールジメチルエーテルであり、
   前記アルコール炭化水素成分が、ｎ−ブタノールである、フレキソ印刷版を現像するためのポリマーウォッシュアウト溶剤。
2. 洗浄工程においてフレキソ印刷版を現像するための、請求項１に記載のポリマーウォッシュアウト溶剤の使用。