JP5739867B2 - 改質天然ゴムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、改質天然ゴムの製造方法に関し、詳しくは、エポキシ化工程後の製造工程を簡略化することのできる改質天然ゴムの製造方法に関する。
従来、様々な分野において、ゴム製品が実用化されている。ゴム製品の原料は、植物由来の天然ゴムと、石油由来の合成ゴムとに分類される。合成ゴムの中でも、耐油性、耐候性、ガス透過性、耐寒性等に優れた様々な合成ゴムが実用化されている。例えば、耐候性、及び耐オゾン性に優れた合成ゴムとして、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)が挙げられる。この種の合成ゴムは、自動車部品、絶縁体等の用途に使用されている。
近年、石油資源の枯渇や地球温暖化等が懸念されている。このため、石油由来材料の代替材料として、植物由来材料への関心が高まっている。植物由来材料には、限りある石油資源の消費を抑制すると共に、植物の生長過程で二酸化炭素を吸収するため地球温暖化を抑制することが期待されている。
植物由来の天然ゴム(ゴム状重合体)は、ゴムの木から重合体として採集される。天然ゴムは、加工性及び強度等に優れている。一方で、天然ゴムは、耐候性や耐オゾン性に劣る。このため、ゴム特性の向上や新たなゴム特性の付与等を目的として、様々な天然ゴムの改質が試みられている。また、適用範囲及び利便性の向上を目的として、種々の改質天然ゴムが開発されている。
特許文献1は、主鎖中の不飽和二重結合を還元して不飽和二重結合を減らすと共に、不飽和二重結合の一部をエポキシ化及び開環して水酸基を付与した改質天然ゴムを開示する。この文献に開示の改質天然ゴムは、不飽和二重結合が減らされているため、耐候性及び耐オゾン性に優れている。更に、この文献に開示の改質天然ゴムは、水酸基が付与されているため、架橋形成能にも優れている。こうした改質天然ゴムは、例えば、ウェザーストリップ等の自動車用の窓枠部品や、ウォーターホース等の水まわりに用いられる部品に適用される。
特開2008−308601号公報
主鎖中の不飽和二重結合を還元して不飽和二重結合を減らすと共に、不飽和二重結合の一部をエポキシ化及び開環して水酸基を付与した改質天然ゴムを上記のゴム状重合体から製造する方法として、以下の方法が用いられる。まず、エポキシ化工程では、ゴム状重合体を水に分散させたラテックス中に有機過酸を添加し、ゴム状重合体の主鎖の不飽和二重結合の一部をエポキシ化して、エポキシ化ゴム状重合体を生成する。次に、還元・開環工程では、水素化触媒の存在下でエポキシ化ゴム状重合体に水素を添加し、主鎖のエポキシ基を開環すると共に残りの不飽和二重結合を還元して、改質天然ゴムを生成する。そして、開環・還元工程後の反応液中の改質天然ゴムを固化して、単離及び精製を行う。こうして、固形状の改質天然ゴムが得られる。
還元・開環工程に際し、エポキシ化工程で添加した有機過酸由来の物質である有機酸及びその有機酸塩が反応系中に多量に存在することがある。この場合、環化や架橋の形成等の不所望な副反応がエポキシ化ゴム状重合体に引き起こされて、ゴム特性が失われるおそれがある。そのため、従来では、エポキシ化工程の後に、ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体を固化して分散媒中から単離することで、エポキシ化ゴム状重合体と、有機過酸由来の物質とを分離していた。そして、固化したエポキシ化ゴム状重合体を分散媒に再分散させたもの、又は有機溶媒に溶解させたものを、還元・開環工程にて処理していた。このように、従来の製造方法では、エポキシ化工程と還元・開環工程との間に、エポキシ化ゴム状重合体の単離処理と再分散処理又は溶解処理との両方を行う必要がある。このため、製造工程が複雑であった。
この発明の目的は、製造工程を簡略化することのできる改質天然ゴムの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の第一の態様によれば、主鎖に複数の不飽和二重結合を有する植物由来のゴム状重合体を、分散媒としての水に分散させたラテックス中にて、ゴム状重合体に有機過酸を反応させて、ゴム状重合体の不飽和二重結合の一部をエポキシ化することにより、エポキシ化ゴム状重合体を得るエポキシ化工程と、エポキシ化工程において有機過酸から生じた有機過酸由来の物質をラテックス中から除去して、ラテックス中における有機過酸由来の物質の含有量をエポキシ化ゴム状重合体100質量部に対して24.3質量部以下にまで低下させる除去工程と、pH7〜8の条件下で、且つ有機酸塩の存在下にて、ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体に残存する不飽和二重結合の一部又は全部を還元すると共に、エポキシ化ゴム状重合体のエポキシ基の一部又は全部を開環する還元・開環工程とを有する改質天然ゴムの製造方法が提供される。
上記の改質天然ゴムの製造方法において、除去工程では、ラテックス中における有機過酸由来の物質が溶解した分散媒の一部を、新たな分散媒と入れ替えることが好ましい。
上記の改質天然ゴムの製造方法において、除去工程では、エポキシ化工程後のラテックスに対して遠心分離処理を行うことにより、ラテックスを、主としてエポキシ化ゴム状重合体が分散した上層と、主として有機過酸由来の物質が溶解した下層とに分離し、更に、下層を除去すると共に、上層に対して新たな分散媒を加えることが好ましい。
上記の各発明の構成では、エポキシ化工程の後、ラテックス中から有機過酸由来の物質を除去して、エポキシ化ゴム状重合体と、有機過酸由来の物質とが分離される。つまり、従来のように、ラテックス中からエポキシ化ゴム状重合体を固化して単離及び精製し、更に、固化したエポキシ化ゴム状重合体を再分散してラテックス状にするといった作業を必要としない。よって、エポキシ化工程と還元・開環工程との間に行われていたエポキシ化ゴム状重合体の単離処理及び再分散処理が省略される。従って、エポキシ化工程後の製造工程を簡略化することができる。また、ラテックス中からエポキシ化ゴム状重合体を単離及び精製することなく、エポキシ化工程及び還元・開環工程をラテックス状態のままで連続して行うことができる。このため、製造時の作業効率が向上する。
上記の改質天然ゴムの製造方法において、除去工程において、有機過酸由来の物質と共にラテックス中の蛋白質を除去することが好ましい。
植物から採集される天然ゴムラテックスには、ゴム状重合体の他に種々の蛋白質が含有されている。こうした蛋白質が混在する天然ゴムラテックスを原料として改質天然ゴムを製造した場合、得られる改質天然ゴムの物性が不安定化したり、品質が低下したりするおそれがある。そのため、蛋白質が混在する天然ゴムラテックスを原料として用いて改質天然ゴムを製造する場合には、蛋白質を除去する脱蛋白処理を行うことが望ましい。
上記構成によれば、除去工程において、有機過酸由来の物質の除去と同時に、蛋白質も除去される。これにより、一連の製造工程中に脱蛋白処理を追加した場合であっても、ゴム成分と蛋白質とを分離するための作業を追加する必要はない。よって、作業量の増加が最小限に抑えられることができる。
上記の改質天然ゴムの製造方法において、還元・開環工程では、エポキシ化ゴム状重合体に残存する不飽和二重結合に水素原子を付加すると共に、エポキシ化ゴム状重合体のエポキシ基を開環して、水酸基を形成することが好ましい。
本発明によれば、改質天然ゴムの製造工程を簡略化することができる。
以下、本発明に係る改質天然ゴムの製造方法を具体化した一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における改質天然ゴムの製造方法では、主鎖に複数の不飽和二重結合を有する植物由来のゴム状重合体を原料として用いる。そして、主鎖中の不飽和二重結合を還元して不飽和二重結合を減らすと共に、不飽和二重結合の一部をエポキシ化及び開環して、水酸基を付与した改質天然ゴムを製造する。本実施形態における改質天然ゴムの製造方法は、エポキシ化工程と、除去工程と、還元・開環工程とを含む。エポキシ化工程では、主鎖に複数の不飽和二重結合を有する植物由来のゴム状重合体の不飽和二重結合の一部をエポキシ化して、エポキシ化ゴム状重合体が得られる。除去工程では、エポキシ化工程において生じた有機過酸由来の物質が除去される。還元・開環工程では、エポキシ化ゴム状重合体に残存する不飽和二重結合の一部又は全部が還元されると共に、エポキシ化ゴム状重合体のエポキシ基の一部又は全部が開環される。
<原料>
原料として、主鎖に複数(2以上)の不飽和二重結合を有する植物由来のゴム状重合体を含有する天然ゴムラテックスを用いることができる。具体的には、天然ゴムの木から得られるフィールドラテックス、及びフィールドラテックスを処理した処理物を用いることができる。処理物として、例えば、フィールドラテックスを濃縮してゴム状重合体濃度を高めたラテックス、フィールドラテックスをアンモニア処理したラテックス、フィールドラテックスを脱蛋白処理したラテックス、及びこれらの混合物が挙げられる。また、原料として、天然ゴムラテックスからゴム状重合体を単離・精製した固形ゴムを用いることもできる。
脱蛋白処理の方法として、例えば、特開平6−56902号公報及び特開2004−99696号公報に記載される公知の方法が挙げられる。脱蛋白処理では、天然ゴムラテックス中の窒素含有量を、ゴム状重合体100質量部に対して0.1質量部以下に設定することが好ましく、0.05質量部以下に設定することがより好ましい。
<エポキシ化工程>
エポキシ化工程は、ゴム状重合体に対して有機過酸を反応させ、ゴム状重合体の主鎖の不飽和二重結合の一部をエポキシ基に置換してエポキシ化ゴム状重合体を得る工程である。具体的には、まず、原料である天然ゴムラテックス又は固形ゴムを分散媒としての水に分散させて、反応系ラテックスを調製する。ここでは、天然ゴムラテックスと区別するため、製造工程で用いられるラテックスを反応系ラテックスとして記載する。このとき、ゴム状重合体の分散状態を安定化させるため、分散媒中に界面活性剤を添加することが好ましい。
分散媒としての水は、水以外の成分、例えば、親水性有機溶媒を少量含有してもよい。界面活性剤として、アニオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムが好適に使用されるが、これに限らず、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系などのアニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール系や多価アルコール系などのノニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、アミノ酸系やベタイン系などの両性界面活性剤、植物由来のバイオベースの界面活性剤等を使用してもよい。
次に、調製された反応系ラテックス中のゴム状重合体に有機過酸を反応させて、エポキシ化を行う。有機過酸として、例えば、過安息香酸、過酢酸、過ギ酸、過フタル酸、過プロピオン酸、トリフルオロ過酢酸、及び過酪酸が挙げられる。これらの有機過酸は、反応系ラテックス中に直接添加してもよい。これとは別の方法として、有機過酸を生成し得る成分を添加して、反応系ラテックス中で有機過酸を生成してもよい。例えば、過ギ酸を生成するには、ギ酸と過酸化水素とを順次添加すればよい。過酢酸を生成するには、無水酢酸と過酸化水素とを順次添加すればよい。
有機過酸を加えてから所定時間経過後、アンモニア水溶液等の塩基を用いて、反応系ラテックスの中和処理を行う。このときの中和反応により、反応系ラテックス中に存在する有機過酸及び有機酸が中和されて、有機過酸及び有機酸の塩が生成される。例えば、有機過酸が過酢酸であり、アンモニア水溶液を用いて中和処理を行った場合には、過酢酸から酢酸が生成され、酢酸を含む反応系ラテックスが中和されることにより、酢酸アンモニウムが生成される。
エポキシ化反応は、生成物であるエポキシ化ゴム重合体のエポキシ化率が1〜25%の範囲となるように行うことが好ましい。エポキシ化ゴム重合体のエポキシ化率は、有機過酸の添加量、及び処理時間などを変更して調整される。エポキシ化ゴム重合体のエポキシ化率は、下記式により算出することができる。式中における「ゴム重合体の二重結合の数」(エポキシ化前の数値)、及び「エポキシ化ゴム重合体のエポキシ基の数」は、例えば、1H−NMRの測定結果から得ることができる。
Figure 0005739867
<除去工程>
除去工程は、エポキシ化工程後の反応系ラテックス中から、有機過酸由来の物質である有機酸及び有機酸塩を除去して、それらの濃度を低下させる工程である。除去工程では、反応系ラテックス中における有機過酸由来の有機酸及びその塩の合計含有量を、エポキシ化ゴム重合体100質量部に対して35質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下にまで低下させる。
反応系ラテックス中から有機過酸由来の物質を除去する方法として、例えば、遠心分離処理が用いられる。具体的には、エポキシ化工程後の反応系ラテックスを遠心分離処理することによって、反応系ラテックスを上層と下層とに分離することができる(分離操作)。上層は、主としてエポキシ化ゴム状重合体が高濃度で分散したラテックス状(クリーム状)の層である。下層は、主として有機過酸由来の物質が溶解した液状の層である。例えば、遠心分離処理を5000〜15000Gで数十分程度行えば、反応系ラテックスを上記のように分離することができる。
次に、上層を回収すると共に、この上層に分散媒を加える(再分散操作)。再分散操作で加えられる分散媒は、エポキシ化工程時の組成と同一であってもよいし、異なっていてもよい。分離操作及び再分散操作によって、反応系ラテックス中の有機過酸由来の物質が溶解した分散媒と、新たな分散媒とが入れ替えられる。こうして、有機過酸由来の物質の濃度が低下する。この場合、再分散操作後の反応系ラテックス中の有機過酸由来の物質の濃度に応じて、分離操作及び再分散操作を2回以上繰り返すことが好ましい。
また、原料として脱蛋白処理を行っていない天然ゴムラテックスを用いた場合は、除去工程において脱蛋白処理を同時に行うこともできる。具体的には、遠心分離処理前の反応系ラテックス中に蛋白質変性剤を添加して、反応系ラテックス中の蛋白質を変性させる。蛋白質が変性した状態で遠心分離処理を行うと、反応系ラテックス中の蛋白質が、有機過酸由来の物質が存在する液状の下層へと移行する。このため、上層と下層とを分離することで、有機過酸由来の物質と共に変性した蛋白質を除去することもできる。蛋白質変性剤として、例えば、下記一般式(1)で表される尿素系化合物(尿素誘導体、尿素複塩)、及び次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。下記一般式(1)で表される尿素系化合物として、例えば、尿素、メチル尿素、エチル尿素、n−プロピル尿素、i−プロピル尿素、n−ブチル尿素、i−ブチル尿素、n−ペンチル尿素が挙げられる。これらのなかでも、特に、尿素、メチル尿素、及びエチル尿素が好ましい。
RNHCONH …(1)
(式中のRは、H又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
脱蛋白処理を行った場合、反応系ラテックス中の窒素含有量を、エポキシ化ゴム状重合体100質量部に対して0.1質量部以下に設定することが好ましく、0.05質量部以下に設定することがより好ましい。
<還元・開環工程>
還元・開環工程は、反応系ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体に残存する不飽和二重結合の一部又は全部を還元すると共に、エポキシ化ゴム状重合体のエポキシ基の一部又は全部を開環する工程である。エポキシ化ゴム状重合体の不飽和二重結合の還元、及びエポキシ基の開環反応(以下、還元・開環反応という。)として、ラテックスの状態で行われる公知の還元方法及び開環方法を用いることができる。
この場合、還元・開環反応時のpHを、所定の範囲内に調整する必要がある。つまり、還元・開環反応時のpHが7〜8の範囲を外れて酸性側又は塩基性側へシフトすると、還元・開環反応時におけるエポキシ化ゴム状重合体の環化等が過度に促進される。そのため、いずれの方法を採用する場合であっても、pH7〜8の条件下で、かつ有機酸塩の存在下において、還元・開環反応を進める必要がある。有機酸塩は、反応系ラテックスの分散媒である水に溶解することで緩衝液として働く。このため、有機酸塩は、還元・開環反応時におけるpHの大きな変化を抑制することができる。
有機酸塩として、例えば、安息香酸、酢酸、ギ酸、フタル酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、及び酪酸等のカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アミン塩(1級〜3級)、及びアンモニア塩が挙げられる。有機酸塩は、除去工程時に除去されずに反応系ラテックス中に残留している有機過酸由来の有機酸塩であってもよいし、還元・開環反応時に新たに添加した有機酸塩であってもよい。還元・開環反応時における有機酸塩の含有量は、エポキシ化ゴム重合体100質量部に対して0.1〜35質量部であることが好ましく、1.7〜25質量部であることがより好ましい。
上述した、ラテックスの状態で行われる公知の還元方法及び開環方法として、例えば、水素化触媒の存在下において、エポキシ化ゴム状重合体に水素を接触させる方法が挙げられる。以下、還元・開環反応として、水素化触媒の存在下でエポキシ化ゴム状重合体に水素ガスを接触させる方法を用いた場合について説明する。
まず、除去工程後の反応系ラテックス中に水素化触媒を添加し、反応系ラテックスのpHを7〜8の範囲に調整する。ここで、除去工程後の反応系ラテックス中に有機過酸由来の有機酸塩が含有されていない場合は、pH調整の前に、反応系ラテックス中に所定量の有機酸塩を添加する。pH調整後、反応系ラテックス中に有機酸塩を添加してもよい。この場合、有機酸塩の添加後の反応系ラテックスのpHを7〜8の範囲の範囲に維持することが条件となる。
一方、除去工程後の反応系ラテックス中に有機過酸由来の有機酸塩が含有されている場合は、水素化触媒を添加後、そのまま反応系ラテックスのpHを7〜8の範囲に調整する。水素化触媒として、均一系触媒及び不均一系触媒を用いることができる。水素化触媒として、具体的には、ニッケル、ルテニウム、白金、パラジウム、ロジウム等の金属触媒が挙げられる。
反応系ラテックスのpHを調整した後、空気雰囲気下、アルゴンや窒素等の不活性気体雰囲気下、又は水素雰囲気下において、反応系ラテックス中に水素を供給する。この場合、高圧水素ガス等の水素ガスを直接供給してもよく、又は、水素を生成し得る成分(水素ドナー)を添加して反応系中にて生成される水素を供給してもよい。そして、水素化触媒の存在下、水素と、反応系ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体とを所定温度にて所定時間接触させる。
その結果、エポキシ化ゴム状重合体の主鎖に残存する不飽和二重結合に水素原子が付加されて不飽和二重結合が還元される。同時に、エポキシ化ゴム状重合体の主鎖のエポキシ基が開環されると共に、酸素原子に水素原子が付加されて水酸基が形成される。これにより、主鎖中の不飽和二重結合を還元して不飽和二重結合を減らすと共に、不飽和二重結合の一部をエポキシ化及び開環して水酸基を付与した改質天然ゴム(以下、単に改質天然ゴムと記載する)が生成される。
還元・開環反応では、生成物である改質天然ゴムの水素添加率が80%以上であることが好ましい。改質天然ゴムの水素添加率は、還元・開環反応における処理温度及び処理時間等を変更して調整することができる。還元・開環反応における処理温度は、0〜100℃の範囲に設定することが好ましく、40〜80℃の範囲に設定することがより好ましい。処理温度が0℃未満であると、反応を十分に進行させることが困難になる。処理温度が100℃を超えると、エポキシ化ゴム状重合体の分子鎖が分断されて低分子量化をまねくおそれがある。
改質天然ゴムの水素添加率は、下記式により算出することができる。式中の「ゴム重合体の二重結合の数」(エポキシ化前の数値)、及び「改質天然ゴムの二重結合の残数」は、例えば、1H−NMRの測定結果から得ることができる。
Figure 0005739867
<回収工程>
回収工程は、反応系ラテックス中の改質天然ゴムを回収する工程である。改質天然ゴムは、ゴム成分が分散したラテックス中からゴム成分を回収する公知の手法を用いて回収される。例えば、反応系ラテックス中にメタノールを添加することにより、反応系ラテックス中の改質天然ゴムを凝縮及び沈殿させる。そして、その沈殿物を回収することによって、改質天然ゴムを単離することができる。その際、メタノールを添加する前に反応系ラテックス中の水素化触媒を除去しておくことが好ましい。水素化触媒を除去する方法として、例えば、ジメチルグリオキシム等の錯形成剤を反応系ラテックス中に添加して水素化触媒を沈殿させて除去する方法が挙げられる。
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)エポキシ化工程後の除去工程において、エポキシ化ゴム状重合体を分散させたラテックスの状態のままで、反応系ラテックス中から有機過酸由来の物質が除去される。そして、有機過酸由来の物質が除去された反応系ラテックスを、続く還元・開環工程にて処理する。そのため、従来のように、反応系ラテックス中からエポキシ化ゴム状重合体を固化して単離及び精製し、固化したエポキシ化ゴム状重合体を再分散させてラテックス状にするための工程を必要としない。よって、エポキシ化工程と還元・開環工程との間に行われていたエポキシ化ゴム状重合体の単離処理及び再分散処理が省略される。従って、エポキシ化工程後の製造工程を簡略化することができる。また、反応系ラテックス中からゴム成分(ゴム状重合体又はエポキシ化ゴム状重合体)を単離及び精製することなく、エポキシ化工程及び還元・開環工程をラテックスの状態のままで連続して行うことができる。このため、製造時の作業効率、及び最終生成物である天然改質ゴムの収率が向上する。
(2)除去工程において、反応系ラテックス中の有機過酸由来の物質が溶解した分散媒の一部は、新たな分散媒と入れ替えられる。これにより、原料である天然ゴムラテックス中に含有される水溶性の夾雑物についても、除去工程において有機過酸由来の物質と共に除去することができる。
(3)除去工程において、有機過酸由来の物質と共に、反応系ラテックス中に存在する蛋白質が除去される。そのため、ゴム成分と蛋白質とを分離するための分離作業を、新たに追加する必要はない。よって、脱蛋白工程の追加に伴う作業量の増加を最小限に抑えることができる。
(4)pH7〜8の条件下で、且つ有機酸塩の存在下にて、還元・開環反応が行われる。これにより、還元・開環反応時におけるエポキシ化ゴム状重合体の環化等を抑制することができる。
(5)改質天然ゴムの分子量が低下すると、改質天然ゴムの強度も低下する。その点、上記実施形態によれば、還元・開環反応時における処理温度が0〜100℃の範囲に設定されるため、還元・開環反応時におけるエポキシ化ゴム状重合体、及びエポキシ化ゴム状重合体から得られる改質天然ゴムの低分子量化を抑制することができる。よって、改質天然ゴムの低分子量化に起因する改質天然ゴムの強度低下も抑制することができる。
本実施形態は、次のように変更してもよい。
・除去工程時における脱蛋白処理を省略してもよい。つまり、除去工程とは別に、例えば、エポキシ化工程前に脱蛋白質処理を行ってもよい。また、脱蛋白処理を全く行わなくてもよい。
・上記実施形態では、エポキシ化工程において反応系ラテックスの中和処理を行っていたが、除去工程内又は除去工程後に中和処理を行ってもよい。
・上記実施形態の改質天然ゴムの製造方法は、天然ゴムの改質方法に応用することができる。
次に、各実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。
<反応系ラテックスの調整>
原料の天然ゴムラテックスとして、GOLDEN HOPE PLANTATION社製のsingleHAラテックス(ゴム成分濃度(ゴム状重合体濃度)60.2質量%、アンモニア分0.7質量%、ゴム粒子の平均粒径約1μm)を使用した。そして、蒸留水を用いて上記原料ラテックスを希釈すると共に、アニオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSと記載する)を添加した。こうして、ゴム成分濃度(ゴム重合体濃度)10質量%、SDS濃度1質量%の反応系ラテックスを調製した。
<エポキシ化工程、及び除去工程(脱蛋白処理を含む)>
天然ゴムのエポキシ化工程として、過酢酸又は過ギ酸による処理が一般的である。この試験において、安全性の観点から過酢酸による処理を採用した。しかしながら、過ギ酸による処理を採用した場合も、上記の場合と同様の結果を得ることができた。以下、具体的に記載する。
反応系ラテックス100gに対して、過酢酸10mlを1ml/秒の速度で滴下した。そして、6℃の条件下で3時間振とうしながら、反応系ラテックスと過酢酸とを反応させた。その後、反応系ラテックスに対して遠心分離処理(15℃、10000G、30分)を行った。これにより、反応系ラテックスを、クリーム状の上層と、液状の下層とに分離した(分離操作)。上層のクリーム状のラテックスを回収すると共に、上層に1質量%SDS水溶液を加えた。こうして、ゴム成分濃度(エポキシ化ゴム状重合体濃度)が10質量%の反応系ラテックスを再調製した(再分散操作)。
次に、28%アンモニア水を用いて、再調製した反応系ラテックスの中和を行った。中和処理後、反応系ラテックス中のゴム成分100質量部に対して、0.1質量部の尿素を添加した。そして、25℃で2時間撹拌して、反応系ラテックス中の蛋白質を変性させた。その後、分離操作及び再分散操作を所定回、繰り返した。中和処理及び蛋白変性処理を行った後の1回目(通算して2回目)の分離操作及び再分散操作において、過酢酸由来の物質である酢酸及び酢酸塩と共に、変性した蛋白質も除去した。通算して2回目以降の再分散操作では、ゴム成分濃度(エポキシ化ゴム状重合体濃度)が30質量%となるように、反応系ラテックスを再調製した。
ここで、1H−NMRを用いて、反応系ラテックス中に存在する酢酸及び酢酸アンモニウムの濃度を定量した。具体的には、1H−NMRに供する反応系ラテックス中に既知量の内部標準(標準物質)を添加して1H−NMRの測定を行い、得られたNMRスペクトル中の内部標準に基づくピークと、酢酸及び酢酸アンモニウムに基づくピークとを比較した。そして、反応系ラテックス中における過酢酸由来の酢酸及び酢酸アンモニウムの合計含有量が、エポキシ化ゴム状重合体100質量部に対して35質量部以下であることを確認した。
<還元・開環工程>
まず、所定量の塩化パラジウムを塩酸に溶解して、水素化触媒を調製した。次に、除去工程で得られた、ゴム成分濃度(エポキシ化ゴム状重合体濃度)30質量%、SDS濃度1質量%の反応系ラテックスを、1質量%SDS水溶液で希釈した。こうして、反応系ラテックス中のゴム成分濃度(エポキシ化ゴム状重合体濃度)を所定の濃度に調整した。反応系ラテックス100ml中に上記の水素化触媒を滴下した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、反応系ラテックスのpHを所定のpH値に調整した。その後、70℃の条件下で十分に攪拌を行いながら、反応系ラテックス中に水素ガスを100ml/分の流量で9時間バブリングした。
続いて、反応系ラテックスの温度を40℃まで冷却し、過酸化水素4mlを加えて1時間攪拌した。更に、ジメチルグリオキシム1gを加えて、48時間攪拌した。そして、反応系ラテックスを、40℃で24時間静置して水素化触媒を沈殿させた。その後、デカンテーションにより、上澄み液を分離した。分離後の上澄み液にメタノールを加えて、ゴム成分を凝縮させた。そして、その沈殿物を回収することにより、改質天然ゴムを得た。
表1及び表2はそれぞれ、実施例及び比較例の製造方法、並びにその製造方法により得られた改質天然ゴムを示す。各実施例では、「分離操作及び再分散操作の繰り返し回数」、「還元・開環工程における反応系ラテックス中のゴム成分濃度(エポキシ化ゴム状重合体濃度)」、及び「還元・開環工程にて用いた触媒量」、「還元・開環工程時のpH」がそれぞれ変更されている。
また、比較例1は、除去工程を省略した例である。比較例1では、中和処理を行った反応系ラテックスを、続く還元・開環工程にてそのまま処理した。比較例2及び3は、還元・開環反応時のpHを7〜8の範囲から外した例である。比較例4は、有機酸塩の非存在下にて還元・開環反応を行った例である。比較例4では、製造過程にて有機酸塩が生成されないように製造方法の一部を変更した。具体的には、エポキシ化工程において、中和処理を行うことなく分離操作及び再分散操作を行い、還元・開環工程にて処理される反応系ラテックスを調製した。分離操作及び再分散操作を繰り返すと共に希釈処理することによって、反応系ラテックスのpHを7とした。そして、還元・開環工程では、単に、pH7の反応系ラテックスを70℃にて9時間加熱するのみとし、水素化触媒の添加、水酸化ナトリウム水溶液によるpH調整、及び水素ガスのバブリングを行わなかった。
Figure 0005739867
Figure 0005739867
表1に示すように、エポキシ化工程の後に除去工程を行った各実施例では、酢酸及びその塩(酢酸アンモニウム)の濃度が1質量%以下であった。この結果から、本発明の除去工程を採用した場合にも、エポキシ化ゴム状重合体と酢酸及びその塩とを効果的に分離できることが確認できた。そして、各実施例では、続く、還元・開環工程においてエポキシ化ゴム状重合体が環化することなく、改質天然ゴムを得ることができた。
表2に示すように、エポキシ化工程に引き続いて還元・開環工程をそのまま行った比較例1では、還元・開環反応時に、反応系ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体が凝縮して粒状物が浮遊する状態となった。その結果、目的の改質天然ゴムを得ることはできなかった。これは、多量に存在する酢酸及びその塩による副反応によって、反応系ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体が環化したためである。
比較例2及び3は、還元・開環反応時のpHをそれぞれ9及び6とした例である。比較例4は、有機酸塩の非存在下にて還元・開環反応を行った例である。これらの場合も、比較例1と同様に、反応系ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体が環化してしまい、目的の改質天然ゴムを得ることはできなかった。比較例1〜3の結果は、還元・開環反応時におけるエポキシ化ゴム状重合体の環化を抑制するには、pHを7〜8の範囲内とし、且つ有機酸塩の存在下にて還元・開環反応を行う必要があることを示唆する。
<改質天然ゴムの分析>
各実施例の製造方法により得られた改質天然ゴムの水素添加率を、1H−NMRを用いた測定結果に基づいて算出した。また、得られた改質天然ゴムに含まれる特に分子量の高い成分(以下、高分子量成分と記載する。)を、下記の方法により測定した。トルエンに細かく刻んだ改質天然ゴムを0.1質量%濃度となるように添加して、一週間浸漬させた。その後、そのトルエン溶液を遠心分離処理(15℃、10000G、30分)することにより、トルエンに可溶なゾル成分と、トルエンに不要なゲル成分とに分離した。トルエンに不要なゲル成分を高分子量成分として回収し、これを50℃にて一週間乾燥させた。乾燥後の上記高分子量成分の重量を測定すると共に、仕込み量との比率から、改質天然ゴムに含まれる高分子量成分の割合を算出した。各実施例の製造方法により得られた改質天然ゴムの水素添加率、及び高分子量成分の割合を表3に示す。
表3に示す参考例1は、従来の方法を用いて改質天然ゴムを製造した例である。参考例1について、特に、除去工程及び還元・開環工程が、各実施例のそれと異なっている。参考例1では、エポキシ化工程における中和処理後、ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体を凝固させて、分散媒中から単離した。そして、単離したエポキシ化ゴム状重合体を乾燥し、更に1ヶ月間静置して、酢酸及び酢酸塩を除去した。また、還元・開環工程では、乾燥させたエポキシ化ゴム状重合体をp−キシレンに溶かし、p−キシレン溶液にパラトルエンスルホニルヒドラジドを添加した。そして、145℃にて6時間還流することにより、還元・開環反応をおこなった。
Figure 0005739867
表3に示すように、各実施例の製造方法により得られた改質天然ゴムは、水素添加率30〜90%の範囲で水素添加されていた。つまり、目的の改質天然ゴムが得られた。また、1H−NMRを用いて、改質天然ゴム中のエポキシ基の割合を測定した。その結果、エポキシ基の数は、計測不能な程度にまで減少していた。このことから、エポキシ化工程において導入されたエポキシ基のほぼ全てが還元・開環工程において開環されて水酸基が形成されたものと推察できる。
また、各実施例の製造方法により得られた改質天然ゴムは、35%以上の割合で高分子量成分を含有していた。これに対して、参考例1の製造方法により得られた改質天然ゴムは、上記のような高分子量成分を含有していなかった。各実施例と参考例との間の高分子量成分の含有量の差は、還元・開環反応時における処理温度の差に起因するものと考えられる。
つまり、還元・開環反応時において反応系ラテックス中のエポキシ化ゴム状重合体及び改質天然ゴムが高温条件下に曝されることにより、分子鎖が分断されて低分子量化が進む。参考例1の製造方法では、145℃という比較的高温で還元・開環反応を行った。このような高温条件により還元・開環反応時におけるエポキシ化ゴム状重合体及び改質天然ゴムの低分子量化が促進されたため、最終的に得られた改質天然ゴム中には高分子量成分が残らなかったものと考えられる。これに対して、各実施例の製造方法では、70℃という比較的低温で還元・開環反応を行った。これにより、還元・開環反応におけるエポキシ化ゴム状重合体及び改質天然ゴムの低分子量化が抑制されたため、最終的に得られた改質天然ゴム中に高分子量成分を残存させることができたと考えられる。
表3に示すように、各実施例の製造方法により得られた改質天然ゴムは、高い割合で高分子量成分を含有していた。このことから、得られた改質天然ゴムの強度は高かったと言える。実際に、実施例5及び参考例1の製造方法により得られた改質天然ゴムの引張強さ(Tb)を測定した。その結果、実施例5及び参考例1における改質天然ゴムの引張強さの測定値は、それぞれ3.99MPa及び0.97MPaであった。つまり、各実施例の製造方法によれば、参考例の製造方法よりも強度の高い改質天然ゴムが得られることが示された。改質天然ゴムの引張強さ(Tb)は、実施例5及び参考例1の製造方法により得られた改質天然ゴムにアジピン酸ヒドラジドを4phr加え、180℃、11Mpaにて20分間加熱プレスしたものをサンプルとし、ISO 37(JIS K6251)に準拠して測定した。

Claims (5)

  1. 主鎖に複数の不飽和二重結合を有する植物由来のゴム状重合体を、分散媒としての水に分散させたラテックス中にて、前記ゴム状重合体に有機過酸を反応させて、前記ゴム状重合体の不飽和二重結合の一部をエポキシ化することにより、エポキシ化ゴム状重合体を得るエポキシ化工程と、
    前記エポキシ化工程において前記有機過酸から生じた有機過酸由来の物質をラテックス中から除去して、ラテックス中における前記有機過酸由来の物質の含有量を前記エポキシ化ゴム状重合体100質量部に対して24.3質量部以下にまで低下させる除去工程と、
    pH7〜8の条件下で、且つ有機酸塩の存在下にて、ラテックス中の前記エポキシ化ゴム状重合体に残存する不飽和二重結合の一部又は全部を還元すると共に、前記エポキシ化ゴム状重合体のエポキシ基の一部又は全部を開環する還元・開環工程とを有することを特徴とする改質天然ゴムの製造方法。
  2. 前記除去工程では、ラテックス中における前記有機過酸由来の物質が溶解した分散媒の一部を、新たな分散媒と入れ替えることを特徴とする請求項1に記載の改質天然ゴムの製造方法。
  3. 前記除去工程では、前記エポキシ化工程後のラテックスに対して遠心分離処理を行うことにより、前記ラテックスを、主として前記エポキシ化ゴム状重合体が分散した上層と、主として前記有機過酸由来の物質が溶解した下層とに分離し、更に、前記下層を除去すると共に、前記上層に対して新たな分散媒を加えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の改質天然ゴムの製造方法。
  4. 前記除去工程において、前記有機過酸由来の物質と共にラテックス中の蛋白質を除去することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の改質天然ゴムの製造方法。
  5. 前記還元・開環工程では、前記エポキシ化ゴム状重合体に残存する不飽和二重結合に水素原子を付加すると共に、前記エポキシ化ゴム状重合体のエポキシ基を開環して水酸基を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の改質天然ゴムの製造方法。
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