以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明に係る昇降式足場装置(以下、単に「足場装置」という)を示す正面図である。この足場装置は、例えば建築工事の仮設足場に用いられるものであり、特に作業床が昇降する昇降式のものである。
足場装置は、図1に示すように、2本のタワーを備えている。足場装置は、所定の高さを有する第1タワー1と、所定の間隔を隔てて並設された第2タワー2と、両タワー1,2に支持された昇降移動可能な足場部3とを備えている。第1タワー1及び第2タワー2は、ほぼ同様の構成とされている。なお、以下の説明では、構成が共通する部材については同符号で示す。
各タワー1,2は、これを支持するためのベース部4をそれぞれ有している。ベース部4は、略平板状に形成されており、ベース部4の角部には、複数のジャッキ機構5が設けられている。ジャッキ機構5は、それぞれの高さを調整することにより、ベース部4を水平状態に維持するものである。ベース部4には、アウトリガー機構6が設けられている。アウトリガー機構6は、ベース部4から放射状に延びた複数の部材からなり、各タワー1,2を地盤Gに対して支持するためのものである。ベース部4には、図示しない移動用車輪が設けられ、移動用車輪は、各タワー1,2を建築現場の所定位置に移動させる。
第1及び第2タワー1,2は、外形が略直方体の枠状に形成された枠部材7が複数個連接された構成とされている。具体的には、第1及び第2タワー1,2は、ベース部4の中央部において最下段の枠部材7が取付けられ、その枠部材7の上方に他の枠部材7が積み重ねられて構成される。
第1タワー1の各枠部材7の内部空間には、上下方向に延びた第1ラック8が設けられている。第1ラック8は、長尺状に形成され、図2(b)に示すように、その一方側端面に複数のピニオン(後述)が歯合される歯合部8aが形成されている。同様に、第2タワー2の各枠部材7の内部空間には、上下方向に延びた第2ラック9が設けられている。第2ラック9は、第1ラック8と同様の構成とされている。
第1タワー1には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた第1昇降部11が設けられている。第1昇降部11は、高さ方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。第1昇降部11は、図略のガイドローラを介して枠部材7の外表面に沿って昇降される。また、第2タワー2には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた第2昇降部12が設けられている。第2昇降部12は、第1昇降部11と同様の構成とされている。
第1昇降部11には、図1及び図2に示すように、これを昇降させるための第1モータ13が取付けられている。第1モータ13は、誘導モータとされ、その回転を停止させるブレーキ機構が備えられている。なお、第1モータ13は、実際には並設された2つのモータによって構成され、一方のモータが故障した場合等に他方のモータを使用するといった非常時の安全性を考慮したものとされている。よって、以下の説明では、2つのモータを総称して第1モータ13と呼称する。
一方、第2昇降部12には、これを昇降させるための第2モータ14が取付けられている。第2モータ14は、第1モータ13と同様の構成とされている。
図2に示すように、第1モータ13の回転軸13aには、第1ピニオン15が取付けられている。この第1ピニオン15には、第1ラック8の歯合部8aが歯合されている。第1モータ13が回転駆動されると、第1ピニオン15と第1ラック8とが協動し、第1昇降部11が第1タワー1の枠部材7に沿って昇降移動される。
また、第1ラック8には、第1ピニオン15と所定間隔を隔てて第2ピニオン16が歯合され、この第2ピニオン16の回転軸16aには、第1エンコーダ17が取付けられている。この第1エンコーダ17は、パルスエンコーダとされ、第2ピニオン16の回転数を検出して制御部45(後述)に出力するものである。
すなわち、第1モータ13が回転駆動されると、第1ラック8と第1ピニオン15とが協動するとともに、第1ラック8と第2ピニオン16とが協動し、第2ピニオン16が回転する。第1エンコーダ17は、この第2ピニオン16の回転数を検出する。第2ピニオン16が1回転当りに第1ラック8の歯合部8aに沿って移動する距離(高さ)は予め決まっているので、制御部45は、第1エンコーダ17の出力に基づいて第1昇降部11の移動距離(高さ)を算出することができる。
このように、第1エンコーダ17は、第1モータ13の回転軸13aに接続されるのではなく、第2ピニオン16の回転軸16aに直接的に接続され、第2ピニオン16の回転数、すなわち第1昇降部11の移動距離(高さ)を検出する。そのため、第1エンコーダ17は、高さ位置を検出するための回転速度が低速となり、部品の長寿命化を図ることができる。また、第1モータ13の回転数ではなく、直接的に第2ピニオン16の回転数を検出することにより確実にかつ精度よく高さ位置を検出することができる。
また、図示していないが、同様に、第2タワー2の第2モータ14の回転軸にもピニオンが取付けられ、このピニオンには第2タワー2の第2ラック9の歯合部が歯合されている。さらに、第2ラック9には、他のピニオンが歯合され、このピニオンの回転軸には、第2エンコーダ18(後述)が取付けられている。この第2エンコーダ18も、当該他のピニオンの回転数を検出して制御部45に出力する。
第1昇降部11及び第2昇降部12のそれぞれの上部には、図略の上限リミットスイッチ46(後述)が設けられている。上限リミットスイッチ46は、第1タワー1及び第2タワー2の上限位置にそれぞれ設けられたストッパ19によってオン動作される。上限リミットスイッチ46がオン動作されることにより、第1昇降部11及び第2昇降部12が停止され、それらの上昇が規制される。
また、第1昇降部11及び第2昇降部12のそれぞれの下部には、図略の下限リミットスイッチ47(後述)が設けられている。下限リミットスイッチ47は、第1タワー1及び第2タワー2の下部にそれぞれ設けられたストッパ20によってオン動作される。下限リミットスイッチ47がオン動作されることにより、第1昇降部11及び第2昇降部12が停止され、それらの下降が規制される。なお、この下限リミットスイッチ47における検出位置(下限位置)は、作業者が足場部3に搭乗する際の高さ位置とされている。
図1に戻り、第1昇降部11には、それを覆うようにかつ前後方向(図1において紙面の手前又は奥行き方向)に水平移動自在な第1水平移動部21が設けられている。また、第2昇降部12には、それを覆うようにかつ前後方向に水平移動自在な第2水平移動部22が設けられている。第1及び第2水平移動部21,22は、足場部3を前後方向に移動させるためのものである。第1及び第2水平移動部21,22は、それぞれ前後方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。
足場部3は、第1及び第2水平移動部21,22の間及び第1及び第2水平移動部21,22の側方に略水平方向に延びて設けられている。足場部3は、略直方体の枠状に形成された本体部3aと、本体部3aの上面に配された作業床(図略)と、作業者の転落を防止するための手摺3bとを有している。
より詳細には、足場部3は、第1及び第2水平移動部21,22の間に設けられた中間部24と、第1水平移動部21の左方向に延びた第1側方部25と、第2水平移動部22の右方向に延びた第2側方部26とによって構成されている。第1側方部25には、左方向に進退自在とされた第1進退部27が設けられている。また、第2側方部26には、右方向に進退自在とされた第2進退部28が設けられている(図1は、第1進退部27及び第2進退部28がそれぞれ進出した状態を示している。)。
第1水平移動部21の周囲には、中間部24と第1側方部25とを結ぶ第1補助部31が設けられ、第2水平移動部22の周囲には、中間部24と第2側方部26とを結ぶ第2補助部32が設けられている。これら第1補助部31及び第2補助部32が設けられることにより、足場部3の作業床は、右端に配される第1進退部27から左端に配される第2進退部28にわたってその作業床がほぼ面一とされる。したがって、足場部3に搭乗した作業者は、第1進退部27から第2進退部28に一旦足場部3から降りることなく移動することができる。
ここで、第1及び第2水平移動部21,22は、図3(a)に示す基準位置(ベース部4が設置された位置)と、図3(b)に示す建築物B側に接近した変位位置との間で図略の移動機構によって移動自在とされている。これにより、足場部3は、第1及び第2水平移動部21,22の移動にともなって建築物Bに接近し、足場部3に搭乗した作業者がより作業し易くなるように構成されている。なお、図3は、第1水平移動部21側の移動状態を示しているが、第2水平移動部22側も同様に建築物Bに接近移動する。
図1に戻り、第1及び第2タワー1,2には、足場部3の中間部24、第1側方部25及び第2側方部26を担持支持するための担持機構33が設けられている。上記したように、第1側方部25及び第2側方部26は、それらが旋回されるときにおいても、担持機構33によって担持される。
足場部3の両端部であって建築物B側に敷設される手摺3bには、図1に示すように、上昇時乗り出し検出センサ34が設けられている。上昇時乗り出し検出センサ34は、例えば赤外線センサからなり、互いに対向して配置された、一対の投光器34a及び受光器34bによって構成されている。投光器34aは、第2進退部28の端部に配され、受光器34bは、第1進退部27の端部に配されている。投光器34a及び受光器34bは、それぞれ手摺3bに設けられた支持部材35に取付けられている。上昇時乗り出し検出センサ34は、図4に示すように、例えば作業者M1が建築物Bのベランダ等から足場部3側に乗り出している場合にそれを検出するために設けられたものである。
投光器34aは常時光信号を発しており、受光器34bは、投光器34aからの光信号が例えば作業者M1によって遮られたとき、制御部45に対して遮光信号を出力する。制御部45は、足場部3の上昇時に受光器34bからの遮光信号があると、作業者M1が建築物B側から乗り出しているとして足場部3の上昇動作を即座に停止させる。これにより、建築物B側から乗り出している作業者M1が足場部3と接触することを未然に防止することができる。
足場部3の両端部であって本体3aの下面の建築物B側には、図1に示すように、下降時乗り出し検出センサ36が設けられている。下降時乗り出し検出センサ36は、上昇時乗り出し検出センサ34と同様に、例えば赤外線センサからなり、互いに対向して配置された、一対の投光器36a及び受光器36bによって構成されている。投光器36aは、第2進退部28の端部に配され、受光器36bは、第1進退部27の端部に配されている。投光器36a及び受光器36bは、それぞれ手摺3bに設けられた支持部材35に取付けられている。下降時乗り出し検出センサ36は、図4に示すように、例えば作業者M2が建築物Bのベランダ等から足場部3側に乗り出している場合にそれを検出するために設けられたものである。
投光器36aは常時光信号を発しており、受光器36bは、投光器36aからの光信号が例えば作業者M2によって遮られたとき、制御部45に対して遮光信号を出力する。制御部45は、足場部3の下降時に受光器36bからの遮光信号があると、作業者M2が建築物B側から乗り出しているとして足場部3の下降動作を即座に停止させる。これによっても、建築物B側から乗り出している作業者M2が足場部3と接触することを未然に防止することができる。
図1に戻り、第1側方部25及び第2側方部26の手摺3bには、制御盤37がそれぞれ設けられている。制御盤37には、制御部45(後述)が内装されている。制御盤37の前面には、図5に示すように、モニタ部38及び非常停止ボタン39が設けられている。モニタ部38は、タッチパネルを有する液晶表示器によって構成され、後述するように、足場部3の停止高さ位置を設定する際等に用いられる。非常停止ボタン39は、緊急時に足場部3の昇降を強制的に停止するために押下されるものである。
2つの制御盤37のうちいずれか一方の制御盤37には、操作ボックス40が接続されている。操作ボックス40は、足場部3の上昇及び下降等の昇降動作を作業者が操作入力するためのものである。操作ボックス40は、図5の円内に示すように、上昇スイッチ40a及び下降スイッチ40bを備えている。
上昇スイッチ40aは、足場部3を上昇させるためのものであり、下降スイッチ40bは、足場部3を下降させるためのものである。なお、上昇スイッチ40a及び下降スイッチ40bは、押下した場合にのみ制御部45に操作信号が伝達されるモーメンタリ型のスイッチとされる。
足場部3の下方における地盤G上には、図1及び図6に示すように、車両や作業者等(以下、「車両等」という)の侵入を検出するための例えば三対の侵入検出センサ41が敷設されている。各侵入検出センサ41は、例えば赤外線センサからなり、一対の投光器41a及び受光器41bによって構成されている。投光器41a及び受光器41bは、足場部3の横方向の長さとほぼ同等の長さ分だけ(例えば約40m)隔てて対向するように配置されている(図1参照)。本実施形態では、第1進退部27及び第2進退部28が進出した状態でそれらの端部の下方における地盤G上に配されている。投光器41a及び受光器41bは、例えば支持部材としてのポール42に取付けられている。
投光器41aは、図1及び図6に示すように、第2進退部28の端部であってその下方に、足場装置の奥行き方向に対して等間隔に隔てて配される。受光器41bは、第1進退部27の端部であってその下方に、足場装置の奥行き方向に対して等間隔に隔てて配されている。
投光器41aは、近赤外光を発する発光ダイオードを有し、受光器41bは、近赤外光を受光する受光素子を有している。図6及び図7に示すように、例えば投光器41a及び受光器41bの間に車両C等が侵入されると、受光器41bは、投光器41aからの近赤外光が遮られ受信できなくなる。これにより、受光器41bは、車両C等の侵入を検出する。
受光器41bが取付けられたいずれかのポール42には、無線送信機43が設けられている。無線送信機43は、足場部3上に設けられる制御盤37に対して車両C等の侵入を検出したことを無線で通知するためのものである。無線送信機43は、各受光器41bにそれぞれ接続されている。無線送信機43は、いずれかの受光器41bから発せられた遮光信号に基づいて無線受信機44(後述)にその旨の信号を伝達する。
一方、制御盤37の近傍には、この無線送信機43に対応する無線受信機44が設けられている。無線受信機44は、無線送信機43から伝達された検出信号を受信すると、その旨の信号を制御盤37の制御部45(後述)に出力する。
この足場装置では、制御盤37が足場部3上に搭載されており、足場部3が昇降自在とされているため、制御盤37内の制御部45は、地盤G上に敷設された受光器41bで検出された遮光信号、すなわち車両C等の検出情報を上記のように無線を通じて取得するようにしている。例えば上記検出情報を有線で伝達しようとすると、地盤G上と足場部3上との間を有線ケーブル等によって接続する必要があるが、足場部3が昇降するため、有線ケーブル等の引き回しが困難となる。本実施形態では、無線通信によって車両C等の検出情報が足場部3上に伝達されるため、有線で検出情報が伝達される場合に比べ、足場部3が昇降する場合であっても容易に検出情報を伝達することができる。
さらに、この足場装置では、足場部3が最も高い位置に上昇した場合であっても、その高さ位置と地盤Gとの距離は比較的短距離であるので、短距離通信用の低コストな無線送信機43及び無線受信機44を用いることができる。したがって、足場部3上と地盤G上との間の通信を、低コストで実現することができる。
なお、侵入検出センサ41は、ベース部4や枠部材7が邪魔になって投光器41aからの近赤外光が受光器41bに伝達されない場合には、ベース部4や枠部材7を回避して近赤外光が十分に送受信される位置に配置されることが望ましい。また、侵入検出センサ41は、四対以上で構成されてもよい。また、侵入検出センサ41は、地盤G上の特定された領域(例えば第1タワー1と第2タワー2との間)に配置されてもよい。さらに、侵入検出センサ41は、近赤外光を用いたセンサに限定されず、例えばレーザ光等が用いられてもよい。まは、侵入検出センサ41は、例えば足場部3の本体部3aの下面に設けられ、超音波を発してその反射波の有無や到達時間等を検出することにより侵入体を検出するものであってもよい。
図8は、本足場装置の電気的構成を示すブロック図である。この足場装置では、制御盤37に例えばシーケンサからなる制御部45が備えられている。制御部45には、モニタ部38及び非常停止ボタン39が接続されている。制御部45は、モニタ部38に対して表示すべき表示データを送出するとともに、モニタ部38からのタッチパネルによる操作信号に基づいて各種のデータ処理を行う。制御部45は、非常停止ボタン39からの押下信号が入力されると、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を強制的に停止させるよう制御する。
制御部45には、第1モータ13、第2モータ14、第1エンコーダ17及び第2エンコーダ18が接続されている。制御部45は、第1モータ13及び第2モータ14に対して所定のタイミングで駆動信号をそれぞれ送出する。これにより、第1モータ13及び第2モータ14は、この駆動信号に応じて独立にオン、オフ動作する。
制御部45には、第1エンコーダ17及び第2エンコーダ18からそれらの検出値(パルス数)がそれぞれ入力される。制御部45は、第1及び第2エンコーダ17,18からの検出値が入力されると、その検出値を高さ位置データに変換し、足場部3の高さ位置を算出する。
制御部45には、無線受信機44が接続されている。無線受信機44は、例えば地上側に設置された無線送信機43と無線通信可能とされている。無線送信機43には、受光器41b及び投光器41aからなる複数の侵入検出センサ41が接続されている。車両C等の侵入体が足場部3の下方に侵入し、いずれかの受光器41bが対向する投光器41aからの光信号が遮られたと検出すると、その旨を示す検出信号が無線送信機43から無線受信機44に無線で伝達される。
制御部45は、侵入検出センサ41によって足場部3の下方に侵入した車両C等が検出されたことの検出信号が無線受信機44から入力され、かつ第1及び第2エンコーダ17,18が検出する高さ位置が予め定める高さ位置に達したことを条件として、第1及び第2モータ13,14を駆動制御し、足場部3の昇降を停止させる。すなわち、制御部45は、後述する侵入検出制御(図9参照)に示すように、足場部3の下降中に、侵入検出センサ41によって車両C等の侵入が検出された場合、足場部3が予め定められた高さ位置以下に下降しないよう制御する。
制御部45には、第1及び第2昇降部11,12の上限リミットスイッチ46並びに第1及び第2昇降部11,12の下限リミットスイッチ47がそれぞれ接続される。制御部45は、上限リミットスイッチ46がストッパ19によってオン動作されたことの検出信号が入力されると、足場部3をその高さ位置以上、上昇させないように第1及び第2モータ13,14の駆動を停止させる。また、制御部45は、下限リミットスイッチ47がストッパ20によってオン動作されたことの検出信号が入力されると、足場部3をその高さ位置以下、下降させないように第1及び第2モータ13,14の駆動を停止させる。
制御部45には、上昇時乗り出し検出センサ34及び下降時乗り出し検出センサ36がそれぞれ接続される。制御部45は、上昇時乗り出し検出センサ34によって作業者M1を検出したことの検出信号が入力されると、足場部3を上昇させないように第1及び第2モータ13,14の駆動を停止させる。また、制御部45は、下降時乗り出し検出センサ36によって作業者M2を検出したことの検出信号が入力されると、足場部3を下降させないように第1及び第2モータ13,14の駆動を停止させる。
制御部45には、操作ボックス40が接続され、操作ボックス40から上昇スイッチ40a及び下降スイッチ40bによる操作信号が入力される。制御部45は、それらの操作信号に基づいて第1及び第2モータ13,14をオン、オフ動作させ、これにより、足場部3を昇降動作させる。
次に、制御部45における侵入検出制御について、図9に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。なお、以下の制御においては、足場部3がある程度の高さ位置、すなわち足場部3の下方に例えば車両C等が侵入することのできる高さ位置まで既に上昇していることを前提とする。
制御部45は、作業者が操作ボックス40を介して上昇操作(上昇スイッチ40aを押下)したかあるいは下降操作(下降スイッチ40bを押下)したかの判別を行う(S1)。具体的には、制御部45は、上昇スイッチ40aからの上昇操作信号を受けたか、あるいは下降スイッチ40bからの下降操作信号を受けたかの判別を行う。
制御部45は、下降スイッチ40bによる上昇操作信号を受けると(S1:「下降」)、第1タワー1の第1モータ13及び第2タワー2の第2モータ14に対してそれぞれ逆転方向に駆動するための駆動信号を送出する。これにより、第1モータ13及び第2モータ14は、逆転方向にそれぞれ回転駆動される(S2)。
第1タワー1では、第1モータ13が回転駆動されると、第1モータ13に枢軸された第1ピニオン15が回転する。そして、第1ピニオン15と第1ラック8とが協動することにより、第1昇降部11が第1タワー1に沿って下降する。同様に、第2タワー2では、第2モータ14が回転駆動されると、第2モータ14に枢軸されたピニオシが回転する。そして、ピニオンと第2ラック9とが協動することにより、第2昇降部12が第2タワー2に沿って下降する。このように、第1及び第2昇降部11,12が下降すると、それにともなって第1及び第2昇降部11,12に第1及び第2水平移動部21,22を介して連結された足場部3が下降する。
また、第1タワー1では、第1昇降部11が下降すると、第1ラック8に歯合された第2ピニオン16が回転する。これにより、第2ピニオン16に枢軸された第1エンコーダ17から制御部45に対して検出値が出力される。また、第2タワー2では、第2昇降部12が下降すると、第2ラック9に歯合されたピニオンが回転する。これにより、当該ピニオンに枢軸された第2エンコーダ18から制御部45に対して検出値が出力される。
制御部45は、第1又は第2エンコーダ17,18の出力値(検出値)を監視しており、いずれかの出力値に基づいて、足場部3の高さ位置を算出している。
次いで、制御部45は、足場部3の下方に車両C等が侵入したことを検出したか否かを判別する(S3)。具体的には、制御部45は、地盤G上に敷設された侵入検出センサ41から車両C等の侵入を検出したことの検出信号を、無線送信機43及び無線受信機44を介して伝達されたか否かによってステップS3の判別を行う。
図7に示したように、車両C等が侵入した場合、侵入検出センサ41によってそれが検出される。侵入検出センサ41は、車両C等が侵入したことの検出信号を無線送信機43及び無線受信機44を介して制御部45に伝達する。
制御部45は、ステップS3において車両C等の侵入を検出していると判別すると(S3:YES)、検出フラグを「1」に設定する(S4)。ここで、検出フラグとは、車両C等が侵入したことを示すものであり、「1」で侵入を表し、「0」で未侵入を表す。例えば、この検出フラグが「0」であった場合は「1」に設定し、検出フラグが「1」であった場合にはその状態を維持する。
一方、ステップS3において車両C等を検出していないと判別すると(S3:NO)、検出フラグを「0」に設定する(S5)。例えば、この検出フラグが「0」であった場合はその状態を維持し、検出フラグが「1」の場合には「0」に設定する。
次に、制御部45は、下降時乗り出し検出センサ36が作業者M2を検出したか否かを判別する(S6)。例えば、図4に示したように、作業者M2が建築物B側から乗り出して下方を見下ろし、足場部3の下降時乗り出し検出センサ36の検出領域にその作業者M2が入ると、下降時乗り出し検出センサ36が作業者M2を検出する。
制御部45は、下降時乗り出し検出センサ36が作業者M2を検出したと判別すると(S6:YES)、即座に第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S7)。これにより、足場部3の下降が強制的に停止される。すなわち、作業者M2が建築物Bから乗り出している場合には、足場部3の下降中に作業者M2が足場部3と接触する可能性があるので、このようなときには、足場部3の下降を強制的に停止させ、作業者M2との接触を未然に防止する。
ステップS6において、下降時乗り出し検出センサ36が作業者M2を検出していないと判別すると(S6:NO)、第1エンコーダ17によって検出されて算出される足場部3の高さ位置Hが下降禁止高さD以下であるか否かを検出する(S8)。ここで、下降禁止高さDとは、下限リミットスイッチ47がストッパ20によってオン動作する高さより上方であって、足場部3の下方に車両C等が侵入したときに足場部3の下降動作を停止させるために設定された高さである。下降禁止高さDは、例えば3.5mに設定されている。
ステップS8において、足場部3の高さ位置Hが下降禁止高さD以下であると判別した場合(S8:YES)、検出フラグが「1」であるか否かを判別する(S9)。検出フラグが「1」である場合(S9:YES)、即座に第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S7)。これにより、図10に示すように、足場部3の下降が下降禁止高さDで強制的に停止される。すなわち、この場合には、検出フラグが「1」であるので足場部3の下方に車両C等が侵入しており、このまま足場部3が下降すると、足場部3が車両C等に衝突してしまうので、高さ位置Hが下降禁止高さDに達したとき、足場部3の下降を強制的に停止させる。これにより、侵入している車両C等と足場部3との衝突を防止することができる。
ステップS8において足場部3の高さ位置Hが下降禁止高さD以下でない場合(S8:NO)、あるいはステップS9において検出フラグが「0」である場合(S9:NO)、下限リミットスイッチ47がオン動作したか否かを判別する(S10)。下限リミットスイッチ47がオン動作であると判別すると(S10:NO)、即座に第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S7)。これにより、足場部3の下降が停止される。下限リミットスイッチ47をオン動作させるストッパ20は、作業者の足場装置への乗降位置である最下位位置に設定されているので、下限リミットスイッチ47がオン動作して停止された位置で、作業者は足場装置に乗降することができる。
下限リミットスイッチ47がオン動作しない場合(S10:NO)、制御部45は、下降スイッチ40bからの操作信号が入力されなくなったか否かの判別を行う(S11)。すなわち、作業者が下降スイッチ40bを押下しなくなったか否かが判別され、下降スイッチ40bが押下され続けていると判別した場合(S11:NO)、ステップS3に戻る。一方、下降スイッチ40bが押下されていないと判別した場合(S11:YES)、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S7)。これにより、足場部3の下降が停止される。
このように、足場部3が一旦上昇してある高さ位置から下降する場合、足場部3の下方に車両C等の侵入体が侵入していると足場部3が車両C等に衝突するおそれがあるため、侵入体を検出して足場部3と侵入体とが衝突することのない予め定められた高さ位置に足場部3が達したとき、足場部3の下降を強制的に停止させる。そのため、足場部3と車両C等との衝突を未然に防止することができる。また、足場部3の下降中に、作業者M2が建築物Bから乗り出している場合にも、作業者M2を検出して足場部3の下降を強制的に停止させる。そのため、足場部3と作業者M2との接触を未然に防止することができる。
また、本実施形態に係る足場装置は、2本のタワーによって構成され、足場部3の平面上の領域が比較的広くなっているが、本実施形態では、例えば赤外線センサからなる侵入検出センサ41を用いることにより、比較的広い平面領域を有する足場部3にも対応することができる。
一方、ステップS1において制御部45は、上昇スイッチ40aによる上昇操作信号を受けると(S1:「上昇」)、第1モータ13及び第2モータ14に対してそれぞれ正転方向に駆動するための駆動信号を送出する。これにより、第1モータ13及び第2モータ14は、正転方向にそれぞれ回転駆動される(S12)。
次いで、制御部45は、上昇時乗り出しセンサ36が作業者を検出したか否かを判別する(S13)。例えば、図4に示したように、作業者M1が建築物B側から乗り出し、足場部3の上昇時乗り出しセンサ36の検出領域にその作業者M1が入ると、上昇時乗り出しセンサ36が作業者M1を検出する。
制御部45は、上昇時乗り出しセンサ36がオン動作したと判別すると(S13:YES)、即座に第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S7)。これにより、足場部3の上昇が強制的に停止される。この場合、足場部3の上昇中に作業者M1が例えば建築物Bと接触する可能性があるので、足場部3の上昇を強制的に停止させ、作業者M1との接触を未然に防止する。
上昇時乗り出しセンサ36がオン動作していないと判別すると(S13:NO)、足場部3の高さ位置Hで上限リミットスイッチ46がオン動作したか否かを判別する(S14)。上限リミットスイッチ46がストッパ19によってオン動作されたことを判別すると(S14:YES)、即座に第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S7)。これにより、足場部3の上昇が強制的に停止される。
上限リミットスイッチ46がオン動作していないと判別すると(S14:NO)、制御部45は、上昇スイッチ40aからの操作信号が入力されなくなったか否かの判別を行う(S15)。すなわち、作業者が上昇スイッチ40aを押下しなくなったか否かが判別され、上昇スイッチ40aが押下され続けていると判別した場合(S15:NO)、ステップS13に戻る。一方、上昇スイッチ40aが押下されていないと判別した場合(S15:YES)、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S7)。これにより、足場部3の上昇が停止される。
このように、足場部3の上昇中に、作業者M1が建築物Bから乗り出している場合には、足場部3の上昇を強制的に停止させる。そのため、足場部3と作業者M1との接触を未然に防止することができる。
なお、本足場装置における制御盤37のモニタ部38においては、制御部45が足場部3の高さ位置Hを算出することができるので、例えば図11(a)に示すように、足場部3の高さ位置Hを表示させることができる。そのため、作業者は、足場部3の高さ位置Hを確認することができる。
また、本足場装置においては、モニタ部38がタッチパネルによって構成されていることから、例えば上記した下降禁止高さDを作業者が任意の値に変更することができる。すなわち、例えば作業者がモニタ部38に対して下降禁止高さDの値を修正する旨を入力すると、図11(b)に示すように、制御部36は、モニタ部38に現状の下降禁止高さDの値を表示させるとともに、Dの値を増加させる増加スイッチ38a、Dの値を減少させる減少スイッチ38b、及びDの値を確定させる確定スイッチ38cをそれぞれ表示させる。そして、作業者が各スイッチ38a,38b,38cを操作して下降禁止高さDの値を変更すると、制御部36は変更された下降禁止高さDを記憶し、これを次回の侵入検出制御に用いる。
このように、下降禁止高さDの値を設定することができるので、例えば下降禁止高さDを変更したいときには、下降禁止高さDを任意の高さに容易に変更することができる。従来の構成であれば、所定の高さ位置で足場部3を停止させるには、例えばリミットスイッチが設置されて用いられるが、上記のように高さ位置を変更する際には、リミットスイッチの設置位置を変更しなければならず非常に手間である。本実施形態では、モニタ部38における操作により、任意の高さに容易に変更することができるので、そのような手間をかけることがない。
また、上記実施形態では、足場部3を下降させる場合、侵入検出センサ41によって車両C等を検出し、かつ下降禁止高さDに足場部3が達したとき、足場部3の下降動作を停止させるようにしたが、これに代えて、侵入検出センサ41によって車両C等を検出するしないにかかわらず、足場部3を下降禁止高さDに強制的に停止させるようにしてもよい。
すなわち、例えば建築工事における工事期間(例えば1ケ月)においては、地盤G上では頻繁に作業者等が往来するので、下降する足場部3と作業者等とが接触する可能性が高くなる。そこで、足場部3が下降禁止高さDに達した場合には、強制的に停止させるようにして、当該高さ位置以下に足場部3を移動させることを禁止する。これにより、侵入検出センサ41による検出出力にかかわらず、足場部3を下降禁止高さDで停止させることができるので、下降中の足場部3と作業者等とが接触することをより確実に防止することができる。なお、このような下降禁止高さDで強制的に停止させる制御は、例えば作業者による操作ボックス40を用いた操作により設定可能(あるいは設定解除可能)とすればよい。
また、本足場装置においては、任意の高さ位置に昇降中の足場部3を停止させることができるので、図12に示すように、足場部3を停止させる高さ位置を複数設定して複数の高さ位置で足場部3を停止させるようにしてもよい。
すなわち、例えば作業者がある一定の高さで比較的長時間にわたって作業を行い、休憩のために一旦足場部3を下降させて作業者が地上に降り、再度作業のために同一高さに足場部3を上昇させるような場合がある。このような場合には、建築物Bに対してある一定の高さ(例えば高さ位置H1)で足場部3を停止させ、作業者の休憩のために一旦足場部3を下降させて乗降可能高さH0で作業者を降ろし、再度作業時の同一の高さ位置H1に足場部3を上昇させて停止させるようにする。従来の構成では、再度足場部3の高さ位置を操作ボックス40を用いてその都度手動で設定しながら足場部3を昇降させる必要があるが、本実施形態では、足場部3を上昇させたとき、自動で所望の高さ位置H1で足場部3が停止するので、高所作業において効率的に作業を進めることができる。
また、同様に、高さ位置H0,H1以外に高さ位置H2(図12参照)を設定しておき、例えば高さ位置H0又はH1から高さ位置H2に足場部3を移動させたり、高さ位置H2から高さ位置H0又はH1に足場部3を移動させたりしてもよい。作業者が移動したい高さ位置の設定は、例えば操作ボックス40のモニタ部38に移動先の高さ位置を示すボタン等を表示させ、作業者がいずれかのボタンを押下することにより行わればよい。この場合、作業者の操作ミスを考慮して、上述した侵入検出センサ41による侵入検出制御を補助的に用いてもよい。
この構成によれば、足場部3に搭乗した作業者が任意の高さ位置に自動で移動することができるので、より一層高所作業の短縮化及び効率的を図ることができる。なお、設定可能な高さ位置は、図12に示すH0,H1,H2に限るものではない。
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態では、第1及び第2タワー1,2、足場部3、第1及び第2昇降部11,12、制御盤37並びに侵入検出センサ41等の各種センサ等の構成は、適宜設計変更可能である。また、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置を検出するものとしては、上記した第1及び第2エンコーダ17,18に限るものではない。
また、本実施形態の足場装置では、第1タワー1及び第2タワー2を有していたが、この構成に限らず、例えば一つのタワーで構成されていてもよい。また、上昇時乗り出し検出センサ34及び下降時乗り出し検出センサ36は、例えば建築物Bのベランダ等に設けられ、侵入検出センサ41のように無線装置等によって制御盤37の制御部45に検出信号を送信するようにしてもよい。