以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る両面印刷装置の概略構成図、図2は、貯留部近傍の拡大図、図3、図4は、クランプ部の拡大図、図5〜図7は、ロック機構部の説明図、図8は、両面印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、ユーザから見て、上下左右を上下左右方向とする。また、図1において破線矢印で示す経路が、用紙が搬送される搬送経路Rである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
図1〜図8に示すように、本実施の形態に係る両面印刷装置1は、給紙部2と、第1の印刷部3と、進入部4と、貯留部5と、ロック機構部6と、再給紙部7と、第2の印刷部8と、排紙部9と、基準位置センサ10と、メインモータ11と、エンコーダ12と、用紙検出部13と、表示部14と、制御部15と、各部を収容または保持する筐体16とを備える。
給紙部2は、用紙Pを給紙するものである。給紙部2は、搬送経路Rの最も上流に配置されている。給紙部2は、給紙台21と、ピックアップローラ22と、タイミングローラ23とを備える。
給紙台21は、用紙Pを積載保持する。ピックアップローラ22は、給紙台21に積載された最上位の用紙Pをピックアップする。タイミングローラ23は、ピックアップローラ22によってピックアップされた用紙Pを所定のタイミングで第1の印刷部3に給紙する。ピックアップローラ22、タイミングローラ23は、図示しないモータによって回転駆動される。
第1の印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pの一方の面に印刷を行うものである。第1の印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。第1の印刷部3は、第1のドラム31と、第1のプレスローラ32と、剥取爪33とを備える。
第1のドラム31は、多孔構造によるインク透過性の部材で外周壁が構成され、矢印A方向に回転可能に構成されている。第1のドラム31の外周面には、図示しない製版部において製版された孔版原紙が巻装される。第1のドラム31の内部には、図示しないインク供給機構が設けられている。第1のドラム31が回転して第1のプレスローラ32との間で用紙Pを搬送しつつ、インク供給機構から供給されるインクが、外周壁および孔版原紙の穿孔部分を通過して用紙Pに転写されることで印刷が行われる。
第1のプレスローラ32は、印刷時において、用紙Pを介して第1のドラム31の外周面を押圧するものである。第1のプレスローラ32は、第1のドラム31の下方に配置されている。第1のプレスローラ32は、図示しないプレスローラ移動機構によって、第1のドラム31の外周面を押圧可能な押圧位置と、第1のドラム31の外周面から離間した離間位置との間で移動可能に構成されている。
剥取爪33は、一方の面が印刷された用紙Pを第1のドラム31から剥ぎ取るものである。剥取爪33は、第1のドラム31の下流側に配置されている。
進入部4は、第1の印刷部3で印刷された用紙Pを、印刷された一方の面が下になるように上下反転しつつ、貯留部5に搬送する。進入部4は、第1の印刷部3の下流側に配置されている。進入部4は、4個のプーリ41と、搬送ベルト42と、ファン43とを備える。
4個のプーリ41は、搬送ベルト42を回転駆動させる。4個のプーリ41は、円弧状の軌跡に沿って配置されている。4個のプーリ41は、図示しないモータにより回転駆動される。
搬送ベルト42は、多数の貫通孔が形成された環状のベルトからなり、4個のプーリ41に架け渡されている。搬送ベルト42は、貫通孔を介して空気が吸引されることで発生する吸着力で用紙Pを保持し、4個のプーリ41の回転により円弧状の軌道に沿って用紙Pを搬送する。これにより、用紙Pが、印刷された一方の面が下になるように上下反転される。
ファン43は、搬送ベルト42の貫通孔を介して空気を吸引して搬送ベルト42に吸着力を発生させる。
貯留部5は、一方の面が印刷された用紙Pを乾燥させるために一時的に貯留した後、再給紙部7へと送り出すものである。貯留部5は、搬送経路R上において、第1の印刷部3と第2の印刷部8との間に配置されている。貯留部5は、ユーザがジャム解消の作業を行う場合のために、筐体16から前方に引き出し可能に構成されている。貯留部5は、搬入部51と、クランプ部52と、搬出部53と、移動モータ54とを備える。
搬入部51は、搬入側ガイド板511と、搬入側ベルト搬送部512とを備える。搬入側ガイド板511は、貯留部5に搬入される用紙Pをクランプ部52へとガイドする。搬入側ガイド板511は、進入部4の排出側端部の近傍とクランプ部52の搬入側端部の近傍とに渡って配置されている。搬入側ベルト搬送部512は、進入部4から搬送された用紙Pを吸着保持しつつ、クランプ部52へと搬送する。搬入側ベルト搬送部512は、搬入側ガイド板511の途中部の外側に配置されている。
クランプ部52は、搬入部51により搬送された複数の用紙Pの下端部を一時的に保持して、用紙Pを搬出部53へと搬送するものである。クランプ部52は、請求項の保持部に相当する。クランプ部52は、一対のプーリ521と、クランプ搬送ベルト522と、複数のプレート523と、保持力調整部524と、クランプモータ525とを備える。
一対のプーリ521は、クランプ搬送ベルト522を回転駆動させる。一対のプーリ521は、一方が搬入側ガイド板511の下端部近傍に配置され、他方が後述する搬出側ガイド板531の下端部近傍に配置されている。
クランプ搬送ベルト522は、複数のプレート523間に保持される用紙Pを、搬入部51から搬出部53へと搬送する。クランプ搬送ベルト522は、一対のプーリ521に架け渡されている。
複数のプレート523は、隣接するプレート523との間の凹部526において用紙Pの下端部を保持する。複数のプレート523は、クランプ搬送ベルト522の全外周面に所定間隔で略垂直に立設されている。各プレート523は、隣接するプレート523に向けて延びる弾性変形可能な爪片527を有する。爪片527は、隣接するプレート523との間で用紙Pの下端部を保持する。
搬入側ガイド板511の下端側近傍では、プレート523が一方のプーリ521の周方向を向くことにより、凹部526が広がる。このため、用紙Pの下端部が凹部526に挿入される。凹部526に挿入された用紙Pは、プレート523と爪片527との間で保持され、クランプ搬送ベルト522の回転により他方のプーリ521側に移動される。この移動時間により、用紙Pの印刷面が乾燥される。他方のプーリ521側では、再び凹部526が広がるため、用紙Pの保持が解除される。
保持力調整部524は、クランプ部52における用紙Pの保持力を調整するものである。保持力調整部524は、図3に示すように、プーリ521と同軸上に配置された駆動ギア541と、駆動ギア541と噛み合う従動ギア542と、この従動ギア542と同軸上に配置されたカム543と、一端がカム543に当接し、他端が各プレート523に形成された溝523aに嵌合するレバー544とから構成される。ここで、カム543は、従動ギア542の回転軸542aとワンウェイクラッチ(図示せず)を介して回転可能に支持されている。また、レバー544は、スプリング(図示せず)によってカム543と当接するように、矢印D方向に付勢されている。また、ワンウェイクラッチは、プーリ521の矢印E方向の回転による回転軸542aの回転をカム543に伝達せず、プーリ521の矢印E方向とは逆方向の回転による回転軸542aの回転のみをカム543に伝達する。ここで、矢印E方向は、クランプ部52の通常駆動時におけるプーリ521の回転方向である。
クランプ部52において所定の保持力を用紙に作用させる保持力維持状態では、レバー544が、各プレート523の溝523aを矢印F方向に引っ張り、クランプ搬送ベルト522のレバー544で引っ張られた部分の撓みを取り除き、凹部526が小さくなるように、カム543の姿勢が設定されている。プーリ521が矢印E方向に回転することにより、駆動ギア541および従動ギア542が回転する。ワンウェイクラッチは、前述のとおり、回転軸542aの回転をカム543に伝達しないため、カム543の姿勢は変化しない。これにより、凹部526が小さい状態が維持され、用紙Pの下端部を保持するプレート523と爪片527との間で所定の保持力が維持される。
クランプ部52の保持力が軽減された状態を図4に示す。保持力軽減の局面では、プーリ521が通常駆動時とは逆方向である矢印G方向に回転する。これにより、前述の通り、ワンウェイクラッチが回転軸542aの回転をカム543に伝達し、カム543の姿勢が図4のようになる。これにより、レバー544による各プレート523の溝523aの引っ張りが解除され、爪片527の弾性によりクランプ搬送ベルト522が撓み、凹部526が大きくなる。この結果、クランプ部52の保持力が一斉に軽減される。
上記のような保持力調整部524により、クランプ部52は、所定の保持力を用紙に作用させる保持力維持状態と、保持力維持状態より保持力が小さい保持力軽減状態との間で切り替え可能となっている。ここで、保持力調整部524は、図4に示した保持力軽減状態において、ユーザが容易に用紙Pを取り除ける程度にまでクランプ部52の保持力を軽減させるものであればよい。
クランプモータ525は、プーリ521を回転駆動させるものである。クランプモータ525は、通常駆動時は、図3の矢印E方向にプーリ521を回転駆動させる。クランプモータ525は、用紙Pがクランプ部52に搬入されるごとの所定のタイミングで間欠的にプーリ521を回転させる。また、クランプモータ525は、保持力軽減時において、逆転駆動により、図4に示した矢印G方向にプーリ521を回転させる。
搬出部53は、搬出側ガイド板531と、搬出側ベルト搬送部532とを備える。搬出側ガイド板531は、貯留部5から搬出される用紙Pを再給紙部7へとガイドする。搬出側ガイド板531は、貯留部5の排出側端部の近傍と再給紙部7の搬入側端部の近傍とに渡って配置されている。搬出側ベルト搬送部532は、クランプ部52により搬送された用紙Pを吸着保持しつつ、再給紙部7へと搬送する。搬入側ベルト搬送部512は、搬出側ガイド板531の途中部の外側に配置されている。
移動モータ54は、貯留部5を筐体16から引き出し可能とするため、図2に示す矢印C方向に貯留部5を傾けさせるものである。
ロック機構部6は、貯留部5を筐体16から引き出し不可能なロック状態と、引き出し可能なロック解除状態との間で切り替えるものである。
ロック機構部6について、図5〜図7を参照して説明する。図5〜図7は、両面印刷装置1の左側から見た図である。図5に示すように、貯留部5は、引き出しユニット17に保持される。引き出しユニット17は、貯留部5を収容する収容部171と、収容部171の前面に設けられた前面部172とを備える。
前面部172は、引き出しレバー181と、ロック爪182と、連結板183とを備える。また、前面部172の下部近傍の筐体16内に、ロックピン184と、ロックソレノイド185とが設けられている。引き出しレバー181、ロック爪182、連結板183、ロックピン184、およびロックソレノイド185により、ロック機構部6が構成される。
引き出しレバー181は、ユーザが貯留部5の引き出し操作を行うためのものである。引き出しレバー181は、前面部172の上部に配置されている。引き出しレバー181は、ユーザに把持される取っ手部181aと、連結板183に下方向の力を作用させる押し下げ部181bとを備える。引き出しレバー181は、取っ手部181aと押し下げ部181bとの間の軸181cを中心にして回動可能とされている。
ロック爪182は、引き出しユニット17と筐体16とを連結するためのものである。ロック爪182は、前面部172の下部に配置される。ロック爪182は、前面部172に固定された軸182aを中心にして回動可能で、先端の掛止爪部182bを筐体16内のロックピン184に掛止可能とされている。
連結板183は、引き出しレバー181の動きをロック爪182に伝えるものである。連結板183は、引き出しレバー181の押し下げ部181bの近傍とロック爪182の近傍とに渡って配置されている。連結板183の下部には、ロックソレノイド185のプランジャ185aが挿入されるロック孔183aが形成されている。
ロックピン184は、ロック爪182の掛止爪部182bが掛止されるものである。ロックピン184は、筐体16内に固定されている。
ロックソレノイド185は、連結板183を移動可能な状態と移動不可能な状態との間で切り替えるものである。ロックソレノイド185は、前後方向に移動して連結板183のロック孔183aに挿入可能なプランジャ185aを備える。
ロック状態では、図5のように、ロック爪182の掛止爪部182bがロックピン184に掛止されている。そして、ロックソレノイド185のプランジャ185aが連結板183のロック孔183aに挿入されている。このため、連結板183が移動不可能であり、ユーザが引き出しレバー181を操作しても、ロック爪182の掛止を解除することはできず、引き出しユニット17を引き出すことはできない。
ロック解除状態では、ロックソレノイド185のプランジャ185aが連結板183のロック孔183aから抜かれた状態となる。このとき、連結板183が移動可能となる。引き出しユニット17の引き出しが行われる際は、移動モータ54により図2に示す矢印C方向に貯留部5が傾けられ、図6のように、貯留部5が収容部171内に収められる。そして、図6に示すように、ユーザが引き出しレバー181の取っ手部181aを前方に引くと、押し下げ部181bが連結板183を押し下げる。これにより、連結板183が下端でロック爪182を押し下げ、掛止爪部182bがロックピン184から外れる。この結果、図7に示すように、引き出しユニット17を筐体16から前方に引き出すことが可能となる。
再給紙部7は、貯留部5から搬出された用紙Pを第2の印刷部8へと搬送する。再給紙部7は、貯留部5の下流側に配置されている。再給紙部7は、ピックアップローラ71と、タイミングローラ72とを備える。
ピックアップローラ71は、貯留部5の搬出部53によって搬出された用紙Pをピックアップする。タイミングローラ72は、ピックアップローラ71よってピックアップされた用紙Pを所定のタイミングで第2の印刷部8に搬送する。ピックアップローラ71、タイミングローラ72は、図示しないモータによって回転駆動される。
第2の印刷部8は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pの他方の面に印刷を行うものである。第2の印刷部8は、再給紙部7の下流側に配置されている。第2の印刷部8は、第2のドラム81と、第2のプレスローラ82と、剥取爪83とを備える。
第2のドラム81、第2のプレスローラ82、および剥取爪83は、前述の第1の印刷部3の第1のドラム31、第1のプレスローラ32、および剥取爪33と同様の構成であるため説明を省略する。
排紙部9は、第2の印刷部8で印刷された両面印刷済みの用紙Pを排紙するものである。排紙部9は、搬送経路Rの最も下流に配置されている。排紙部9は、排紙用ベルト搬送部91と、排紙台92とを備える。
排紙用ベルト搬送部91は、第2のドラム81から剥ぎ取られた用紙Pを吸着保持しつつ搬送する。排紙台92は、排紙用ベルト搬送部91により搬送されてきた両面印刷済みの用紙Pが積載されるものである。
基準位置センサ10は、第1のドラム31に設けられた検出片(図示せず)を検出することにより、第1のドラム31の回転の基準位置を検出する。
メインモータ11は、第1のドラム31と第2のドラム81とを同期して、それぞれ図1の矢印A方向、矢印B方向に回転駆動させる。
エンコーダ12は、メインモータ11の回転を検出し、回転角度に応じたパルス信号を出力する。
用紙検出部13は、給紙部2から排紙部9に至る搬送経路Rを搬送される用紙を複数の位置で検出する。用紙検出部13は、請求項の検出部に相当する。用紙検出部13は、用紙センサ131〜137を備える。
用紙センサ131は、給紙部2のピックアップローラ22とタイミングローラ23との間に配置されている。用紙センサ132は、タイミングローラ23と第1のドラム31との間に配置されている。用紙センサ133は、進入部4近傍に配置されている。
用紙センサ134は、図2に示す発光部134aと受光部134bとからなる。発光部134aは、貯留部5の搬入側ガイド板511の左側に配置され、受光部134bは、搬出側ガイド板531の右側に配置されている。発光部134aは、受光部134b側に光を射出する。受光部134bは、発光部134aからの光を受光する。搬入側ガイド板511の発光部134aと向き合う位置、および搬出側ガイド板531の受光部134bと向き合う位置には、適宜貫通孔が設けられ、発光部134aから受光部134bに光が届くようになっている。用紙センサ134は、貯留部5における用紙Pの有無を検出する。
用紙センサ135は、再給紙部7のピックアップローラ71とタイミングローラ72との間に配置されている。用紙センサ136は、タイミングローラ72と第2のドラム81との間に配置されている。用紙センサ137は、排紙用ベルト搬送部91近傍に配置されている。
表示部14は、各種の情報を表示するものである。表示部14は、液晶表示パネル等からなる。
制御部15は、両面印刷装置1の各部の動作を制御するものである。制御部15は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成される。
制御部15には、基準位置センサ10、エンコーダ12、用紙センサ131〜137の出力が導かれている。制御部15は、用紙センサ131〜137の検出出力を用いて、ジャムを検出する。各用紙センサ131〜137における用紙検出のタイミングの理論値は、基準位置センサ10で第1のドラム31の基準位置が検出された時点である基準時点からのエンコーダ12の出力パルス数により規定されている。制御部15は、基準時点からのエンコーダ12の出力パルス数をカウントし、用紙センサ131〜137において、理論値のタイミングから閾値以上の時間が経過しても用紙Pが検出されない等の異常が検出された場合に、ジャムが発生したと判断する。また、制御部15は、どのセンサで異常が検出されたかにより、ジャムの発生位置が、給紙部2、進入部4、貯留部5、再給紙部7、排紙部9のいずれであるかを判断する。制御部15は、ジャムが発生した場合、ジャムの発生位置に応じた処理を実行する。この際、制御部15は、ジャムの発生位置に応じて貯留部5を引き出し可能とするか不可能とするかを切り替えるようロック機構部6を制御する。
次に、両面印刷装置1の動作について説明する。
まず、制御部15は、図示しない製版部において孔版原紙を製版させ、製版された孔版原紙を第1のドラム31および第2のドラム81に着版させる。
次いで、制御部15は、第1のプレスローラ32および第2のプレスローラ82を押圧位置に移動させる。そして、制御部15は、給紙部2、進入部4、貯留部5、再給紙部7、排紙部9、メインモータ11を起動して、用紙Pの搬送を開始させる。
これにより、用紙Pが、給紙部2から第1の印刷部3へと搬送される。用紙Pは、第1の印刷部3によって搬送されつつ、一方の面に画像が印刷される。次いで、用紙Pは、進入部4により上下反転されつつ、貯留部5へと搬送される。
貯留部5では、用紙Pは、搬入側ガイド板511によってガイドされつつ、搬入側ベルト搬送部512によりクランプ部52へと搬送される。クランプ部52では、用紙Pは、搬入側ガイド板511の近傍に位置する2枚のプレート523間に挿入され、プレート523と爪片527との間で下端部が保持される。そして、クランプ搬送ベルト522の回転により、用紙Pは下流側に移動する。この移動の間に用紙Pは乾燥される。用紙Pがクランプ部52の下流端まで達すると、プレート523がプーリ521の周方向を向くことで、凹部526が広がり、用紙Pの保持が解除される。
そして、用紙Pは、搬出側ガイド板531によってガイドされつつ、搬出側ベルト搬送部532によって再給紙部7へと搬送される。この後、用紙Pは、再給紙部7のピックアップローラ71およびタイミングローラ72により、第2の印刷部8へと搬送される。用紙Pは、第2の印刷部8によって搬送されつつ、他方の面に画像が印刷される。そして、両面印刷済みの用紙Pは、排紙用ベルト搬送部91によって排紙台92へと排紙される。以上の両面印刷が、指定された印刷枚数分だけ繰り返される。
上記のような両面印刷動作中、制御部15は、用紙センサ131〜137の検出出力を用いて、ジャムが発生したか否かを判断する。ジャムが発生した場合、制御部15は、ジャムの発生位置に応じた処理を実行する。
図9は、ジャムの発生位置に応じた処理を説明するためのフローチャートである。図9のフローチャートの処理は、両面印刷装置1で両面印刷動作が開始されることにより、開始となる。
図9に示すように、ステップS10では、制御部15は、ジャムが発生したか否かを判断する。
例えば、用紙センサ131,132において理論値のタイミングで検出された用紙Pが、用紙センサ133では理論値のタイミングから閾値以内に検出されない異常が発生すると、制御部15は、給紙部2でジャムが発生したと判断する。また、例えば、用紙センサ134で貯留部5における用紙Pの存在が検出されているが、用紙センサ135で理論値のタイミングから閾値以内に用紙Pが検出されない異常が発生すると、制御部15は、貯留部5でジャムが発生したと判断する。また、例えば、用紙センサ137で検出された用紙Pが、所定時間が経過しても用紙センサ137の検出領域を通過しない異常が発生すると、制御部15は、排紙部9でジャムが発生したと判断する。
ジャムが発生していないと判断した場合(ステップS10:NO)、制御部15は、ステップS20において、指定された印刷枚数の印刷が終了したか否かを判断する。指定された印刷枚数の印刷が終了したと判断した場合(ステップS20:YES)、制御部15は、印刷処理を終了する。指定された印刷枚数の印刷が終了していないと判断した場合(ステップS20:NO)、制御部15は、ステップS10の処理に戻る。
ジャムが発生したと判断した場合(ステップS10:YES)、ステップS30において、制御部15は、ジャム発生位置が給紙部2であるか否かを判断する。ジャム発生位置が給紙部2であると判断した場合(ステップS30:YES)、ステップS40において、制御部15は、給紙部ジャム発生時処理を実行する。給紙部ジャム発生時処理については後述する。
ジャム発生位置が給紙部2ではないと判断した場合(ステップS30:NO)、ステップS50において、制御部15は、ジャム発生位置が進入部4であるか否かを判断する。ジャム発生位置が進入部4であると判断した場合(ステップS50:YES)、ステップS60において、制御部15は、進入部ジャム発生時処理を実行する。進入部ジャム発生時処理については後述する。
ジャム発生位置が進入部4ではないと判断した場合(ステップS50:NO)、ステップS70において、制御部15は、ジャム発生位置が貯留部5であるか否かを判断する。ジャム発生位置が貯留部5であると判断した場合(ステップS70:YES)、ステップS80において、制御部15は、貯留部ジャム発生時処理を実行する。貯留部ジャム発生時処理については後述する。
ジャム発生位置が貯留部5ではないと判断した場合(ステップS70:NO)、ステップS90において、制御部15は、ジャム発生位置が再給紙部7であるか否かを判断する。ジャム発生位置が再給紙部7であると判断した場合(ステップS90:YES)、ステップS100において、制御部15は、再給紙部ジャム発生時処理を実行する。再給紙部ジャム発生時処理については後述する。
ジャム発生位置が再給紙部7ではないと判断した場合(ステップS90:NO)、制御部15は、ジャム発生位置が排紙部9であると判断し、ステップS110において、排紙部ジャム発生時処理を実行する。排紙部ジャム発生時処理については後述する。
次に、図9のステップS40の給紙部ジャム発生時処理について説明する。
図10は、給紙部ジャム発生時処理を説明するためのフローチャートである。給紙部2でのジャムの発生が検出されると、図10のステップS210において、制御部15は、給紙部2の動作を停止させる。制御部15は、他の部分の動作はそのまま続行させる。これにより、ジャム発生時に給紙部2を通過済みの用紙Pは、第1の印刷部3、進入部4、貯留部5、再給紙部7、第2の印刷部8を通過して両面印刷され、排紙部9で排紙される。
ステップS220では、制御部15は、用紙センサ137の検出出力を用いて、ジャム発生時に給紙部2を通過済みのすべての用紙Pの排紙が終了したか否かを判断する。排紙が終了していないと判断した場合(ステップS220:NO)、制御部15は、ステップS220の処理を繰り返す。
排紙が終了したと判断した場合(ステップS220:YES)、ステップS230において、制御部15は、両面印刷装置1全体の動作を停止させる。ここで、制御部15は、印刷動作中から引き続き、ロック機構部6により、貯留部5が引き出し不可能な図5のロック状態を維持させている。また、制御部15は、クランプ部52についても、印刷動作中から引き続き、図3の保持力維持状態を継続させている。
そして、ステップS240において、制御部15は、給紙部2においてジャムが発生したことをユーザに通知するためのエラー情報を表示部14に表示させる。
次に、図9のステップS60の進入部ジャム発生時処理について説明する。
図11は、進入部ジャム発生時処理を説明するためのフローチャートである。進入部4でのジャムの発生が検出されると、図11のステップS310において、制御部15は、給紙部2および進入部4の動作を停止させる。制御部15は、他の部分の動作はそのまま続行させる。これにより、ジャム発生時に進入部4を通過済みの用紙Pは、貯留部5、再給紙部7、第2の印刷部8を通過して両面印刷され、排紙部9で排紙される。
ステップS320では、制御部15は、用紙センサ137の検出出力を用いて、ジャム発生時に進入部4を通過済みのすべての用紙Pの排紙が終了したか否かを判断する。排紙が終了していないと判断した場合(ステップS320:NO)、制御部15は、ステップS320の処理を繰り返す。
排紙が終了したと判断した場合(ステップS320:YES)、ステップS330において、制御部15は、両面印刷装置1全体の動作を停止させる。ここで、制御部15は、印刷動作中から引き続き、貯留部5のロック状態を維持させている。また、制御部15は、クランプ部52についても、印刷動作中から引き続き、保持力維持状態を継続させている。
そして、ステップS340において、制御部15は、進入部4においてジャムが発生したことをユーザに通知するためのエラー情報を表示部14に表示させる。
上記の給紙部ジャム発生時処理および進入部ジャム発生時処理におけるエラー情報の表示の後、ユーザによりジャムを解消する作業が行われる。この際、貯留部5には用紙Pは残っておらず、また、貯留部5の引き出しも不可能である。このため、ジャム解消作業において貯留部5の用紙Pが誤って取り除かれたり汚されたりすることが回避される。
次に、図9のステップS80の貯留部ジャム発生時処理について説明する。
図12は、貯留部ジャム発生時処理を説明するためのフローチャートである。貯留部5でのジャムの発生が検出されると、図12のステップS410において、制御部15は、給紙部2、進入部4、および貯留部5の動作を停止させる。制御部15は、他の部分の動作はそのまま続行させる。これにより、ジャム発生時に貯留部5を通過済みの用紙Pは、再給紙部7、第2の印刷部8を通過して両面印刷され、排紙部9で排紙される。
ステップS420では、制御部15は、用紙センサ137の検出出力を用いて、ジャム発生時に貯留部5を通過済みのすべての用紙Pの排紙が終了したか否かを判断する。排紙が終了していないと判断した場合(ステップS420:NO)、制御部15は、ステップS420の処理を繰り返す。
排紙が終了したと判断した場合(ステップS420:YES)、ステップS430において、制御部15は、両面印刷装置1全体の動作を停止させる。
次いで、ステップS440において、制御部15は、貯留部5を筐体16から引き出し可能なロック解除状態とするとともに、クランプ部52を保持力軽減状態とする。具体的には、制御部15は、ロックソレノイド185を制御して、プランジャ185aが連結板183のロック孔183aから抜かれた状態とする。これとともに、制御部15は、移動モータ54を駆動させ、貯留部5を図2の矢印C方向に傾けさせる。また、制御部15は、クランプモータ525を逆転駆動させ、図4に示した矢印G方向にプーリ521を回転させることで、クランプ部52を保持力軽減状態とする。
そして、ステップS450において、制御部15は、貯留部5においてジャムが発生したことをユーザに通知するためのエラー情報を表示部14に表示させる。
この後、ユーザによりジャムを解消する作業が行われる。この際、ユーザは、貯留部5を筐体16から手前に引き出して作業できる。また、クランプ部52の保持力が軽減されているので、ユーザが貯留部5の用紙を取り除く作業を容易にできる。
次に、図9のステップS100の再給紙部ジャム発生時処理について説明する。
図13は、再給紙部ジャム発生時処理を説明するためのフローチャートである。再給紙部ジャム発生時処理においては、制御部15は、再給紙部7でのジャムが検出されても、すぐには動作の停止は行わない。ステップS510において、制御部15は、用紙センサ131〜133の検出出力を用いて、ジャム発生時において給紙済みで、給紙部2、進入部4にある用紙Pの貯留部5への搬送が終了したか否かを判断する。貯留部5への搬送が終了していないと判断した場合(ステップS510:NO)、制御部15は、ステップS510の処理を繰り返す。
貯留部5への搬送が終了したと判断した場合(ステップS510:YES)、ステップS520において、制御部15は、用紙センサ137の検出出力を用いて、排紙部9にある用紙Pの排紙台92への排紙が終了したか否かを判断する。排紙が終了していないと判断した場合(ステップS520:NO)、制御部15は、ステップS510の処理を繰り返す。
排紙が終了したと判断した場合(ステップS520:YES)、ステップS530において、制御部15は、両面印刷装置1全体の動作を停止させる。ここで、制御部15は、印刷動作中から引き続き、ロック機構部6により、貯留部5のロック状態を維持させている。また、制御部15は、クランプ部52についても、印刷動作中から引き続き、保持力維持状態を継続させている。
次いで、ステップS540において、制御部15は、再給紙部7においてジャムが発生したことをユーザに通知するためのエラー情報を表示部14に表示させる。この後、ユーザによりジャムを解消する作業が行われる。
ステップS550では、制御部15は、ジャムが解消されたか否かを判断する。例えば、制御部15は、ジャム発生時に用紙センサ135で用紙Pの存在が検出されていた場合に、用紙センサ135で用紙Pが検出されなくなったことにより、ユーザがジャム用紙を取り除いてジャムが解消されたと判断できる。ジャムが解消されていないと判断した場合(ステップS550:NO)、制御部15は、ステップS550の処理を繰り返す。
ジャムが解消されたと判断した場合(ステップS550:YES)、ステップS560において、制御部15は、貯留部5に貯留されている用紙Pの両面印刷を再開させる。具体的には、制御部15は、第2のプレスローラ82を押圧位置に移動させる。そして、制御部15は、貯留部5、再給紙部7、排紙部9、メインモータ11を起動させる。これにより、貯留部5において、用紙Pが、搬出側ガイド板531によってガイドされつつ、搬出側ベルト搬送部532によって再給紙部7へと搬送される。この後、用紙Pは、再給紙部7のピックアップローラ71およびタイミングローラ72により、第2の印刷部8へと搬送される。用紙Pは、第2の印刷部8によって搬送されつつ、他方の面(未印刷面)に画像が印刷される。そして、両面印刷済みの用紙Pは、排紙用ベルト搬送部91によって排紙台92へと排紙される。以上の両面印刷が、貯留部5に貯留されていた用紙Pの枚数分だけ繰り返される。
次に、図9のステップS110の排紙部ジャム発生時処理について説明する。
図14は、排紙部ジャム発生時処理を説明するためのフローチャートである。排紙部ジャム発生時処理においても、再給紙部ジャム発生時処理と同様に、制御部15は、排紙部9でのジャムが検出されても、すぐには動作の停止は行わない。ステップS610において、制御部15は、用紙センサ131〜133の検出出力を用いて、ジャム発生時において給紙済みで、給紙部2、進入部4にある用紙Pの貯留部5への搬送が終了したか否かを判断する。貯留部5への搬送が終了していないと判断した場合(ステップS610:NO)、制御部15は、ステップS610の処理を繰り返す。
貯留部5への搬送が終了したと判断した場合(ステップS610:YES)、ステップS620において、制御部15は、両面印刷装置1全体の動作を停止させる。ここで、制御部15は、印刷動作中から引き続き、ロック機構部6により、貯留部5のロック状態を維持させている。また、制御部15は、クランプ部52についても、印刷動作中から引き続き、保持力維持状態を継続させている。
次いで、ステップS630において、制御部15は、排紙部9においてジャムが発生したことをユーザに通知するためのエラー情報を表示部14に表示させる。この後、ユーザによりジャムを解消する作業が行われる。
ステップS640では、制御部15は、ジャムが解消されたか否かを判断する。ジャムが解消されていないと判断した場合(ステップS640:NO)、制御部15は、ステップS640の処理を繰り返す。
ジャムが解消されたと判断した場合(ステップS640:YES)、ステップS650において、制御部15は、貯留部5に貯留されている用紙Pの両面印刷を再開させる。このステップS650の処理は、前述の再給紙部ジャム発生時処理における図13のステップS560と同様である。
再給紙部ジャム発生時処理および排紙部ジャム発生時処理では、ユーザによりジャムを解消する作業が行われる際、貯留部5に用紙Pが貯留されているが、ユーザが貯留部5を引き出すことは不可能なロック状態である。このため、貯留部5の用紙Pが誤って取り除かれたり汚されたりすることが回避される。また、貯留部5のクランプ部52が保持力維持状態を継続しているため、ユーザが作業をしている間も、貯留部5の用紙Pの姿勢が崩れることが抑制される。このため、後に貯留部5の用紙Pの両面印刷を再開したときに、ジャムや印刷画像の乱れが発生することを抑えられる。
以上説明したように、両面印刷装置1では、制御部15は、ジャムの発生位置に応じて、貯留部5を引き出し可能とするか不可能とするかを切り替えるようロック機構部6を制御している。これにより、ユーザがジャム解消作業を行う際に不要に貯留部5が引き出され、内部の用紙Pが誤って取り除かれたり汚されたりすることで生じる用紙の無駄を軽減できる。
制御部15は、ジャムの発生位置が貯留部5である場合のみ、ロック機構部6により貯留部5をロック解除状態とすることで、不要に貯留部5が引き出されることを確実に防止し、用紙の無駄が生じることを防止できる。
また、制御部15は、貯留部5がロック状態のときはクランプ部52を保持力維持状態としておくことで、貯留部5以外のジャム解消作業中に貯留部5の用紙Pの姿勢が崩れることを防止できる。これにより、ジャム解消後に貯留部5の用紙Pの両面印刷を再開したときに、ジャムや印刷画像の乱れが発生することが抑えられる。また、制御部15は、貯留部5がロック解除状態のときはクランプ部52を保持力軽減状態とすることで、貯留部5におけるユーザのジャム解消作業を容易にできる。
なお、本実施の形態では、両面印刷装置1を両面孔版印刷装置として説明したが、これに限定されない。