JP5730674B2 - 鉄塔の腕金メンテナンス方法 - Google Patents
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Description
図1は、鉄塔1を正面方向から見た概略的な模式図である。鉄塔1は、地表面Gに設置された塔体11に、複数個の腕金12が固定されたトラス構造体である。腕金12は、塔体11から横方向に延びて先端部で送電線PLを保持する。
図3は、鉄塔1を正面方向から見た概略的な模式図であり、鉄塔1の腕金12を補強するための想定される従来工法を例示している。既設の鉄塔1において、送電線PLを吊り下げて保持したままの腕金12からその構造部材を取り外してしまうと、強度不足になり、腕金12が破損してしまうことが予想される。腕金12の構造部材を交換するためには、その交換対象となる構造部材を一旦は取り外さなければならないからである。
図4は、鉄塔1を正面方向から見た概略的な模式図であり、鉄塔1の腕金12を補強するための本実施の形態の工法を示している。図5は、鉄塔1を上空から見た概略的な模式図であり、図5(a)は最上位の腕金12を補強する一例を、図5(b)は最上位以外の腕金12を補強する一例を、それぞれ示している。図4及び図5に示すように、本実施の形態では、一対の腕金主材13の先端部分に、ワイヤ51を引っ掛けるための引掛け部材31を固定し、これらの引掛け部材31と塔体11との間に一対のワイヤ51を掛け渡し、一対のワイヤ51で腕金12にかかる荷重を受けるようにしている。こうすることで、送電線PLを仮移線することなく、安全に腕金12の構造部材を一部交換する作業を行なうことができる。以下、本実施の形態の工法を詳しく述べる。
図6は、腕金12の先端部の斜視図であり、腕金12の先端部に引掛け部材31を固定する第1の工程を示している。図6に示すように、一対の腕金主材13の先端部分に、ワイヤ51を引っ掛けるための引掛け部材31を固定する。引掛け部材31は、腕金主材13からその両側方向に水平に飛び出させた形態で固定する。
第1の工程に続く第2の工程では、一対の引掛け部材31に一対のワイヤ51を引掛けて腕金12を吊る。一対のワイヤ51を掛け渡す位置は、引掛け部材31における腕金主材13の両側方向に飛び出した部分のそれぞれと、塔体11における引掛け部材31よりも高所に位置する部分との間の部分である。
第2の工程では、引掛け部材31と塔体11との間に一対のワイヤ51を掛け渡すに際して、これらのワイヤ51のそれぞれに、その張力を手動調節可能な一対の張力調節装置52を介在させる。張力調節装置52としては、例えば、ヒッパラー(登録商標)やレバーブロック(登録商標)を用いることができる。これらの機器は、手動でハンドル(図示せず)を回転させると、二つの作用点を近接させることができ、この際、手動操作力を倍力して作用点に伝える。そこで、二つの作用点にワイヤ51を連結する形態でワイヤ51に介在配置すれば、ハンドルの手動操作によってワイヤ51の張力を調節することが可能となる。
第2の工程に続く第3の工程では、張力調節装置52によってワイヤ51のそれぞれの張力を個々に手動調節しながら、一対の腕金主材13と腕金先端プレート14、一対の腕金吊材15と腕金先端プレート14とをそれぞれ固定する締着ボルトBを抜き取る。
第3の工程に続く第4の工程では、腕金吊材15及び腕金先端プレート14を、より強度に優れた部材と交換する。より高い剛性を持った腕金吊材15及び腕金先端プレート14をセットし、各部の貫通孔(図示せず)に締着ボルトBを貫通させて締着ナットNで締め込み、各部を元通りに強固に固定するわけである。
第4の工程に続く第5の工程では、一対のワイヤ51を一対の張力調節装置52と共に取り外す。
第5の工程に続く第6の工程では、引掛け部材31を腕金主材13から取り外す。こうして、腕金12の構造部材を一部交換するメンテナンス作業が全て完了する。
本実施の形態によれば、引掛け部材31に引掛けた一対のワイヤ51によって腕金12の腕金主材13を吊り、腕金12にかかる荷重を支えることができる。これにより、送電線PLを仮移線することなく、安全に腕金12の構造部材を一部交換する作業を行なうことができる。その結果、鉄塔1の腕金12のメンテナンスに際して必要な労力、時間、及び費用を大幅に削減することができる。具体的に云うと、本出願人の試算によれば、送電線PLを仮移線する場合との比較で、40%程度、作業時間、つまり作業に要する所要日数を短縮することができる。費用に関しては、各種の事情が伴うために一概には云えないが、所要日数の短縮に伴う大幅な節約効果が得られることは明々白々であろう。労力に関しても、その削減効果を定量化して述べることは困難であるが、送電線PLの仮移線が不要という一点のみをとらえても、大幅な削減効果が得られることは想像に難くない。
(1)引掛け部材31は、腕金主材13と腕金先端プレート14との締着部分よりも腕金主材13の根元方向にずれた部分に固定されている。このため、腕金先端プレート14及び腕金吊材15を交換する第3の工程及び第4の工程の作業に際して、ワイヤ51が作業の邪魔にならず、その作業性を良好にすることができる。
(1)本実施の形態に工法において必要なことは、腕金主材13を一対のワイヤ51で吊って支えることができる位置に引掛け部材31を固定することであって、この条件を満たす限り、引掛け部材31は、腕金主材13そのものに固定されるばかりでなく、腕金主材13に固定された別部材に固定されてもよい。
11 塔体
12 腕金
13 腕金主材
14 腕金先端プレート
15 腕金吊材
31 引掛け部材
51 ワイヤ
52 張力調節装置
B 締着ボルト
PL 送電線
Claims (10)
- 鉄塔の塔体から横方向に延びて先端部で送電線を保持する一対の腕金主材を、これらの腕金主材に腕金先端プレートを介して締着ボルトで締め付け固定された一対の腕金吊材で吊る構造の腕金を補強する方法であって、
前記一対の腕金主材の先端部分に当該腕金主材からその両側方向に飛び出させてワイヤを引っ掛けるための引掛け部材を固定する第1の工程と、
前記引掛け部材における前記腕金主材の両側方向に飛び出した部分のそれぞれと前記塔体における前記引掛け部材よりも高所に位置する部分との間に一対のワイヤを掛け渡す第2の工程と、
前記第2の工程において、一対のワイヤのそれぞれに、当該一対のワイヤの張力を手動調節可能な一対の張力調節装置を介在させる第2のサブ工程と、
前記一対の張力調節装置によって前記ワイヤのそれぞれの張力を個々に手動調節し、前記締着ボルトを抜き取る第3の工程と、
前記第3の工程に続き、前記腕金吊材を交換する第4の工程と、
前記第4の工程に続き、前記一対のワイヤを前記一対の張力調節装置と共に取り外す第5の工程と、
を備えることを特徴とする鉄塔の腕金メンテナンス方法。 - 鉄塔の塔体から横方向に延びて先端部で送電線を保持する一対の腕金主材を、これらの腕金主材に腕金先端プレートを介して締着ボルトで締め付け固定された一対の腕金吊材で吊る構造の腕金を補強する方法であって、
前記一対の腕金主材の先端部分に当該腕金主材からその両側方向に飛び出させてワイヤを引っ掛けるための引掛け部材を固定する第1の工程と、
前記引掛け部材における前記腕金主材の両側方向に飛び出した部分のそれぞれと前記塔体における前記引掛け部材よりも高所に位置する部分との間に一対のワイヤを掛け渡す第2の工程と、
前記第2の工程において、一対のワイヤのそれぞれに、当該一対のワイヤの張力を手動調節可能な一対の張力調節装置を介在させる第2のサブ工程と、
前記一対の張力調節装置によって前記ワイヤのそれぞれの張力を個々に手動調節し、前記締着ボルトを抜き取る第3の工程と、
前記第3の工程に続き、前記腕金先端プレートを交換する第4の工程と、
前記第4の工程に続き、前記一対のワイヤを前記一対の張力調節装置と共に取り外す第5の工程と、
を備えることを特徴とする鉄塔の腕金メンテナンス方法。 - 前記第4の工程は、前記腕金吊材の交換作業も含んでいる、ことを特徴とする請求項2に記載の鉄塔の腕金メンテナンス方法。
- 前記第1の工程において、前記引掛け部材を、前記一対の腕金主材と前記腕金先端プレートとの締着部分よりも前記一対の腕金主材の根元方向にずれた部分に固定する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の鉄塔の腕金メンテナンス方法。
- 前記引掛け部材は、前記腕金主材の両側方に飛び出す二つの部分が一体に繋がった鋼材である、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の鉄塔の腕金メンテナンス方法。
- 前記引掛け部材は、山形鋼である、ことを特徴とする請求項5に記載の鉄塔の腕金メンテナンス方法。
- 前記第1の工程において、前記引掛け部材を、前記一対の腕金主材の下部に固定する、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の鉄塔の腕金メンテナンス方法。
- 前記締着ボルトは、前記一対の腕金主材とこれらの腕金主材の間に挟まれた前記腕金先端プレートとを水平方向に貫通している、ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一に記載の鉄塔の腕金メンテナンス方法。
- 前記締着ボルトは、前記一対の腕金吊材とこれらの腕金吊材の間に挟まれた前記腕金先端プレートとを水平方向に貫通している、ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一に記載の鉄塔の腕金メンテナンス方法。
- 前記引掛け部材を取り外す第6の工程を備える、ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一に記載の鉄塔の腕金のメンテナンス方法。
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