JP5728811B2 - 高分子ゲルの接着方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子ゲルの接着方法に関するものである。
高分子ゲルは有機高分子の三次元架橋物が水または有機溶媒を含んで膨潤したものであり、膨潤性やゴム状弾性を有するソフトマテリアルとして、医療・医薬、食品、土木、バイオエンジニアリング、スポーツ関連などの分野で広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
かかる高分子ゲルを実際に使用するにあたっては、他の有機高分子材料や金属材料と同じように、目的に応じて高分子ゲルを接着して用いることが必要であり、そのため、高分子ゲル同士または高分子ゲルと他の基材を簡便に接着できることが強く望まれていた。一般に有機高分子材料や金属材料においては液状の接着剤やそれを塗布した両面接着テープを用いて接着する方法が広く用いられているが、高分子ゲルにおいては、かかる液状接着剤や接着テープでは接着できないのが一般的であり、簡便な方法で高分子ゲル同士、または高分子ゲルと他基材を接着する方法を開発することが望まれていた。更に、好ましくは、接着と脱着を可逆的に、且つ、繰り返し行えるような接着方法が強く望まれていた。これまで、高分子ゲルに対して、これらを満足する簡便にして有効な接着方法は知られていなかった。
また、水溶性有機モノマーの重合体と層状に剥離した水膨潤性粘土鉱物が分子レベルで複合化し、三次元網目を形成している有機ポリマーと水膨潤性粘土鉱物の複合高分子ゲルが知られている(特許文献1)。しかし、特許文献1は高分子ゲルを接着する方法に関しては開示していない。
特開2002−53629号公報
「ゲルハンドブック」p226〜727、長田義仁、梶原莞爾編:エヌ・ティー・エヌ株式会社、1997年
本発明が解決しようとする課題は、簡便にして効果的な高分子ゲルの接着方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究に取り組んだ結果、水溶性有機モノマーから得られる重合体と水膨潤性粘土鉱物とからなる三次元網目を有する高分子ゲルが多孔性材料と極めて良好な接着性を示すこと、また、多孔性材料を介して高分子ゲル同士や高分子ゲルと基材が接着できること、且つ、多孔性材料を制御することにより、それらの接着と脱着が可逆的に行えることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する高分子ゲルの接着方法であって、接着しようとする高分子ゲル間、又は高分子ゲルと基材との間に多孔性材料を介することにより、それらを接着することを特徴とし、前記多孔性材料が、接着面を予め親水化処理したポリテトラフルオロエチレン、コンクリート、または素焼きからなる多孔性フィルムである、高分子ゲルの接着方法を提供するものである。
また、本発明は、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する高分子ゲルの接着方法であって、接着しようとする二つの高分子ゲル面の間に多孔性材料を配置して密着させることにより、高分子ゲル同士を接着することを特徴とし、前記多孔性材料又は前記多孔性の表面を有する基材の接着面に揮発性媒体を含ませておく、高分子ゲルの接着方法を提供するものである。
また、本発明は、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する高分子ゲルの接着方法であって、高分子ゲルと、多孔性の表面を有する基材とを、該多孔性の表面を接着面として密着させることにより、高分子ゲルと基材を接着することを特徴し、前記多孔性材料又は前記多孔性の表面を有する基材の接着面に揮発性媒体を含ませておく、高分子ゲルの接着方法を提供するものである。
更に、本発明は、水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する高分子ゲルと、コンクリート、または素焼きからなる多孔性材料とが、多孔性の表面を接着面として接合されていることを特徴とする高分子ゲル接合体を提供するものである。
本発明における高分子ゲルの接着方法を用いると、高分子ゲル同士または高分子ゲルと他基材を接着して任意の形状に成形することができ、また、可逆的に接着・脱着することが可能となり、液状などの接着剤を用いることなく、簡便にして効果的な高分子ゲルの接着が達成される。かかる高分子ゲルは、各種用途へ適用でき、特に医療材料、医療器具材料、再生医療材料、健康保持・スポーツ用具材料、美容材料、分析器具材料、工業材料、農業用材料、建築土木用材料などに有用である。
実施例2で得られた有機ポリマー/クレイ複合ゲルの切断面と多孔性材料(親水性PTFEメンブレンフィルム)が密着により接着している様子を示す図である。ゲル(下部)の一つの切断面と多孔性材料(上部)との接着の様子を示している。 図1に示したゲルを延伸した図であり、ゲル(右側)と多孔性材料(左側)とが強く接着していることを示す図である。
本明細書では、上記の水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)を以下、水溶性有機モノマー重合体(A)と記載し、水溶性有機モノマー重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)とからなる三次元網目を有する高分子ゲルを有機ポリマー/クレイ複合高分子ゲルと記載する。
本発明における高分子ゲルの接着方法は、水溶性有機モノマー重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)とからなる三次元網目を有する有機ポリマー/クレイ複合高分子ゲルの表面または切断面と多孔性材料が強く接着することを基本とする。
本発明において用いる有機ポリマー/クレイ複合高分子ゲルは、特許文献1に記載の方法で得られるものと同等のものである。具体的には、水溶性有機モノマー重合体と層状に剥離した水膨潤性粘土鉱物が分子レベルで複合化し、三次元網目を形成しているものである。但し、水溶性有機ポリマー重合体と水膨潤性粘土鉱物との結合は、主に水素結合、イオン結合、配位結合のいずれかによるものである必要がある。少量の共有結合を含むものは用いることが可能であるが、共有結合の導入量が増すと比較例において示すように、力学物性が低下して脆くなるだけでなく、高分子ゲルと多孔性材料との接着力も低下する。
本発明における水溶性のラジカル重合性有機モノマー(水溶性有機モノマー)としては、水に溶解する性質を有し、水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物と相互作用を有するものが好ましく、例えば、粘土鉱物と水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等を形成できる官能基を有するものが好ましい。これらの官能基を有する水溶性有機モノマーとしては、具体的には、アミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが挙げられ、なかでもアミド基やエステル基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが好ましい。なお、本発明で言う水には、水単独以外に、水と混和する有機溶媒をとの混合溶媒で水を主成分とするものが含まれる。
アミド基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーの具体例としては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド等のアクリルアミド類、または、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミド等のメタクリルアミド類が挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数が1〜4のものが特に好ましく選択される。またエステル基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーの具体例としては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレートなどがあげられる。
かかる水溶性有機モノマー重合体としては、例えば、ポリ(N−メチルアクリルアミド)、ポリ(N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(アクリロイルモルフォリン)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(N−メチルメタクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−アクリロイルピロリディン)、ポリ(N−アクリロイルピペリディン)、ポリ(N−アクリロイルメチルホモピペラディン)、ポリ(N−アクリロイルメチルピペラディン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メトキシエチルアクリレート)、ポリ(エトキシエチルアクリレート)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(エトキシエチルメタクリレート)が例示される。この内、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)は本発明における接合方法において特に優れた接合効果を示す。また水溶性有機モノマー重合体としては、以上のような単一の重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーからの重合体の他、これらから選ばれる複数の異なる重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーを重合して得られる共重合体を用いることも有効である。また上記水溶性有機モノマーとそれ以外の有機溶媒可溶性重合性不飽和基含有有機モノマーとの共重合体も、本発明にいう一体化した高分子ゲルが達成出来るものであれば使用することができる。
本発明における水溶性有機モノマー重合体(A)は、上記水溶性有機モノマーを重合したものであり、水溶性または水を吸湿する性質を有する親水性(または両親媒性)を有する。さらに、熱、pHや光に応答する等といった機能性や、生体吸収性を含む生体適合性や生分解性などの特性を有しているものは用途に応じてより好ましく用いられる。例えば、水溶液中でのポリマー物性(例えば親水性と疎水性)が下限臨界共溶温度(Lower Critical Solution Temperature:LCST)前後のわずかな温度変化により大きく変化する特性を有する水溶性有機モノマー重合体などであり、具体的にはポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)やポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)などが挙げられる。また生体適合性に優れたものとしては、ポリ(メトキシエチルアクリレート)やポリ(メタクリルアミド)などがあげられる。
本発明における有機ポリマー/クレイ複合高分子ゲルに用いる粘土鉱物(B)としては、水に膨潤性を有するものであり、好ましくは水によって層間が膨潤する性質を有するものが用いられる。より好ましくは少なくとも一部が水中で層状に剥離して分散できるものであり、特に好ましくは水中で1ないし10層以内の厚みの層状に剥離して均一分散できる層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。
本発明における水溶性有機モノマー重合体(A)に対する水膨潤性粘土鉱物(B)の質量比(B/A)は、0.01〜1.0であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.7、特に好ましくは、0.1〜0.5である。この範囲であれば充分な高分子ゲルと多孔質材料の接着強度を得ることができる。
本発明における多孔性材料としては、素材によらず用いることが可能であり、特に、有機高分子、金属、炭素、セラミックからなる多孔質材料は有効に用いられる。また、これらは人工的に合成されたものでも、木材、綿、石材のように天然で産出されたものでも良い。多孔性材料の多孔性としては、ナノメーターからミリメーターレベルまでの広範囲な多孔性を有するものが用いられ、好ましくは、10nm〜1mm、より好ましくは50nm〜100μm、特に好ましくは、100nm〜10μmの範囲の平均孔径を有するものである。孔の形状は特に規定されず、種々の形状・形態の孔または凹凸が用いられる。例えば、シリコン結晶板上に正確に開けられた孔や突起、陽極酸化アルミナにおけるような比較的そろった孔、延伸ポリプロピレンや延伸ポリエチレンテレフタレートのように高分子凝集形態の延伸により開けられた不規則な孔、不織布の極めて不規則な孔などが挙げられる。その他、素焼き、コンクリート、石材などにおける多孔も有効に用いられる。更に、孔としては貫通したものだけでなく、表面の凹凸に相当するもの、例えば、ブラスト処理により梨地表面を有する金属なども有効に用いられる。多孔性材料の表面の性質は、親水性および疎水性のいずれもが用いられるが、より好ましくは親水性のものであり、使用前にプラズマ処理、オゾン処理、薬液処理などにより親水化処理を行ったものは特に有効である。
本発明における多孔性材料としては、フィルム状、シート状、粉末状、繊維状など種々の形状のものが用いられるが、高分子ゲル同士の接着を行う場合は、ゲルに密着しやすく且つ柔軟性を有するものが好ましく用いられる。具体的には、フィルム状、繊維状、粉末状のものである。
本発明においては、高分子ゲル同士の接着の他、他の基材との接着も基材の表面に多孔性部を有するものであれば可能である。この場合、基材そのものが多孔性となっていても良く(つまり、基材そのものが多孔性材料であってもよい)、また、多孔性フィルムなどを基材に接着したものでもよい。
また、本発明では、前記多孔性材料を両面接着性を有するフィルムの片面または両面に配置したものを一つの多孔性材料として用いることができる。これにより、ゲル同士の接着をより長期に安定して行ったり、ゲルと他の基材との接着をより強固に行うことが有効となる。
本発明では、貼り合わせる前の多孔性材料または多孔性部に揮発性の媒体を少量含ませておくことは接着強度を高めるのに好ましく用いられる。用いる揮発性媒体としては、室温で気化することのできる溶媒が好ましく、より好ましくは親水性の揮発性媒体である。具体的には、アセトンやテトラヒドロフランがあげられる。
本発明における高分子ゲル同士の接着方法は、水溶性有機モノマー重合体と水膨潤性粘土鉱物とからなる三次元網目を有する有機ポリマー/クレイ複合高分子ゲルの表面または切断面を用い、二つのゲルの間に多孔性材料を配置して、それらを密着させることにより行われる。また、高分子ゲルと基材との接着においても、それらの間に多孔性材料を配置してそれらを密着させることにより行われる。後者においては、多孔性材料は多孔性を有する基材表面であってもよい。
本発明における接着方法においては、接触する高分子ゲルと多孔性材料または多孔性部の面積は必ずしも同じであることは必要とされない。逆に、高分子ゲルより少ない面積の多孔性材料または多孔性部を用いることにより、適度な接着強度を持ちつつ、外部からの力でそれらを再び剥離することが可能となる。更に、剥離されたものは、再度、密着することにより再接着させることが可能となる場合がある。具体的には、同じ面積を持つ高分子ゲルの接着面に対して、1〜99%の面積を持つ多孔性フィルムを用いて繰り返し接着および脱着が行える。
本発明における接着方法においては、高分子ゲルと多孔質材料または多孔質部とが密着するようにすれば良く、必ずしも圧力や温度を必要としない場合が多い。ただし、高い接着強度を得るためには、密着度合いがより強くなるように加圧したり、界面に気泡が残らないように脱泡したり、更には、加熱したり、水分を部分的に除去したりする方法が有効に用いられる。
有機ポリマー/クレイ複合高分子ゲルの表面または切断面と多孔性材料を密着させるだけでそれらが接合し、それを介して高分子ゲル同士または高分子ゲルと基材を接着させる機構は必ずしも明確ではないが、有機ポリマー/クレイ複合高分子ゲルの表面または切断面に存在する比較的長い(片末端自由な)ダングリング鎖が水分と共に多孔性材料の表面に浸入し、アンカー効果を働かせることで強い接着効果がでる。従来の化学架橋型高分子ゲルは、殆どの場合、このダングリング鎖がないか、あっても極めて短いため、多孔性材料と密着させても効果的に接着されることはない。
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。なお、実施例1、3及び7は参考例である。
(実施例1−3)
水膨潤性粘土鉱物には、[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLG)を、水溶性のラジカル重合性有機モノマーには、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA:興人株式会社製)を用いた。DMAAは精製により重合禁止剤を取り除いてから使用した。
重合開始剤は、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS:関東化学株式会社製)をKPS/水=0.40/20(g/g)の割合で水溶液にして使用した。触媒は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED:和光純薬工業株式会社製)を使用した。
20℃の恒温室において、平底ガラス容器に、純水38.04gとラポナイトXLG1.524gとDMAA3.96gを加えて無色透明溶液を得た。次にKPS水溶液2.0gとTEMED32μlを攪拌しながら加え、この溶液を1cm×1cm×6cmおよび5.5mm直径×6cmの密閉した容器に移した後、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から20時間後に、容器内に有機モノマー重合体と層状剥離した粘土鉱物からなる無色透明で均一な有機ポリマー(PDMAA)/クレイ複合高分子ゲル(以下、高分子ゲルと呼ぶ)が生成した(クレイ/有機ポリマー=0.46)。高分子ゲルを長さ3cmで2等分した。直径5.5mmの高分子ゲルの切断面の間に多孔性材料として、実施例1ではポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブレンフィルム(厚み1μm、平均孔サイズ=約2×10ミクロン)を、実施例2では、プラズマ処理(アルゴン、30W、3分)した親水性PTFEメンブレンフィルムを、実施例3ではセルロース/エステル混合メンブレンフィルム(厚み1μm、平均孔径約0.8ミクロン)を挟んで軽く密着させることにより、切断された高分子ゲルが多孔性材料(メンブレンフィルム)を介して接着すること、またそのゲルを延伸しても容易には剥離されないことが観測された。接着した高分子ゲルのそれぞれの一端を引っ張り試験装置にセットして延伸試験(引っ張り速度100mm/分)を行った結果、実施例1では、破断伸び670%、破断伸び69kPa(断面積は高分子ゲル断面積を使用)、実施例2では破断伸び1350%、破断強度120kPa、実施例3では破断伸び1330%、破断強度117kPaを示した。いずれも最終的には高分子ゲルと多孔性材料の接着部で破断した。
(実施例4)
水溶性有機モノマーとして、N、N−ジエチルアクリルアミド(DEAA:興人株式会社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして有機ポリマー/クレイ複合ゲルの調製、その切断と、多孔性材料(親水性PTFEメンブレンフィルム)を用いた接着、および引き続く、引っ張り試験を行った。その結果、切断された複合ゲルは多孔性材料を介して接着されることが確認された。破断伸び980%、破断強度350kPaを示した。最終的には高分子ゲル部において破断した。
(実施例5−7)
水溶性有機モノマーとして5.94gを用いることを除くと実施例1と同様にして有機ポリマー/クレイ複合ゲルを調製した。得られたゲルの1cm角の表面をコンクリート板(実施例5)、素焼きの焼き物板(実施例6)、ブラスト処理をして表面凹凸を有するSUS板(実施例7)と密着させた所、ゲルと基材を強く接着させることができた。ゲルの上部端を引っ張り試験装置により延伸して、接着面の挙動を観察した結果、実施例5では130kPa、1080%で接着部が破断した。実施例6では、144kPa、1260%でゲルが破断した。実施例7では、50kPa、420%で接着部が破断した。
(実施例8)
有機ポリマー/クレイ複合ゲルと密着させるPTFEメンブレンフィルムを予めテトラヒドロフランに浸漬した後、使用することを除くと実施例1と同様にして、接着試験を行った。切断されたゲルはPTFEメンブレンフィルムを介して接着し、延伸試験での破断伸びは820%、破断伸び95kPaであった。
(実施例9)
1cm×1cm×6cmサイズの有機ポリマー/クレイ複合ゲルの表面(1cm×6cm)上に、0.5cm×1cmの親水性PTFEメンブレンフィルムを予め接着させておき、もう一つの1cm×1cm×6cmサイズの有機ポリマー/クレイ複合ゲルを重ね合わせることで、二つのゲルが接着すること、且つ、引っ張りによりそれらが剥離し、且つ、再度重ね合わせることで再び接着することが確認された。
(実施例10)
両面接着性の高分子フィルム(アクリル系接着剤コート)の上下面に実施例3で用いた混合メンブレンフィルムを貼り付けたものを用いる以外は、実施例3と同様にして高分子ゲルを接着し、高分子ゲルのそれぞれの一端を引っ張り試験装置にセットして延伸試験を行った。その結果、乾燥しないように密封した状態で一ヶ月静置した後も、破断伸び1300%、破断強度115kPaを示した。
(比較例1、2)
多孔性材料の代わりに、ポリエチレンテレフタレートシート(比較例1)、シリコンゴム(比較例2)およびナイロンメッシュ(2mm隙間)(比較例3)を用いる以外は、実施例1と同様にして、有機ポリマー/クレイ複合ゲルの接着試験を行った。しかし、いずれの場合も接着せず、密着させた後も容易に分離した。

Claims (5)

  1. 水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する高分子ゲルの接着方法であって、接着しようとする二つの高分子ゲル面の間に多孔性材料を配置して密着させることにより、高分子ゲル同士を接着することを特徴とし、
    前記多孔性材料が、接着面を予め親水化処理したポリテトラフルオロエチレン、コンクリート、または素焼きからなる多孔性フィルムである、高分子ゲルの接着方法。
  2. 水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する高分子ゲルの接着方法であって、接着しようとする二つの高分子ゲル面の間に多孔性材料を配置して密着させることにより、高分子ゲル同士を接着することを特徴とし、
    前記多孔性材料又は前記多孔性の表面を有する基材の接着面に揮発性媒体を含ませておく、高分子ゲルの接着方法。
  3. 水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する高分子ゲルの接着方法であって、高分子ゲルと、多孔性の表面を有する基材とを、該多孔性の表面を接着面として密着させることにより、高分子ゲルと基材を接着することを特徴とし、
    前記多孔性材料又は前記多孔性の表面を有する基材の接着面に揮発性媒体を含ませておく、高分子ゲルの接着方法。
  4. 水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成された三次元網目構造を有する高分子ゲルと、コンクリート、または素焼きからなる多孔性材料とが、多孔性の表面を接着面として接合されていることを特徴とする高分子ゲル接合体。
  5. 複数の前記高分子ゲルが、前記多孔性材料を介して接合された請求項4記載の高分子ゲル接合体。
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