本発明を以下で詳細に説明する前に、本明細書中で説明する特定の方法論、プロトコル及び試薬は変動し得るので、本発明はこれらに限定されないと理解すべきである。本明細書中で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、添付した特許請求の範囲のみによって限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことも理解すべきである。他に規定のない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
好ましくは、本明細書中で使用される用語は、"A multilingual glossary ofbiotechnological terms: (IUPACRecommendations)", H.G.W. Leuenberger, B.Nagel, and H. Koelbl, Eds., Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように規定される。
以下の本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通じて、文脈上他に必要な場合以外は、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変化形は、記載された整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を包含することを示唆するが、任意の他の整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を除外することを示唆しないと理解される。
複数の文書が、本明細書の文章全体を通じて引用される。本明細書中で引用される文書の各々(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の仕様書、取扱説明書等を含む)が、上記又は下記に関わらず、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書のどの記載も、本発明が従来の発明に基づくこのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈すべきではない。
「ポリペプチド断片」という用語は、単一のアミノ酸鎖から構成されるタンパク質の一部分を表す。「タンパク質」という用語は、二次構造及び三次構造を回復するポリペプチド断片を含み、複数のアミノ酸鎖、すなわち複数のサブユニットから構成され、四次(quartenary)構造を形成するタンパク質をさらに表す。「ペプチド」という用語は、アミノ酸数が最大50であり二次構造又は三次構造を必ずしもとる必要はない短いアミノ酸鎖を表す。「ペプトイド(peptoid)」は、N−置換グリシンのオリゴマー集合化から得られるペプチド模倣物質(peptidomimetic)である。
2つ以上のポリペプチドにおける残基は、その残基がポリペプチド構造における類似の位置を占有する場合、互いに「対応する(correspond)」と言う。当該技術分野では既知であるように、2つ以上のポリペプチドにおける類似の位置は、アミノ酸配列又は構造的類似性に基づきポリペプチド配列を整列させることにより確定することができる。このようなアライメントツールは当業者に既知であり、例えば、ワールドワイドウェブ、例えば標準的な設定(好ましくはAlignに関してはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5)を使用するClustalW(www.ebi.ac.uk/clustalw)又はAlign(http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.html)において、得ることができる。当業者は、満足なアライメントを生成するためにいずれかの配列にギャップを導入することが必要な場合があることを理解する。例えば、インフルエンザAウイルスPB2サブユニットにおける220位〜510位の残基は、インフルエンザBウイルスPB2サブユニットにおける222位〜511位の残基、及びインフルエンザCウイルスPB2サブユニットにおける227位〜528位の残基に、それぞれ対応する。したがって、3つの(thrre)PB2サブユニットに関して生成されたアライメントを、図10に示す。2つ以上のインフルエンザウイルスPB2サブユニットにおける残基が最良の配列アライメントにおいて整列する場合、それらの残基が「対応する」と言う。2つのポリペプチドの間の「最良の配列アライメント」は、同一残基の整列数が最大となるアライメントと定義される。2つの整列させた配列の間の配列類似性、好ましくは配列同一性が、10個、20個又は30個のアミノ酸の長さにわたり30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満に低下した場合には、より好ましくは10個、20個又は30個のアミノ酸の長さにわたり30%未満に低下した場合には、「最良の配列アライメントの領域」は途切れ、それにより類似性スコアの確定のための比較配列の長さの境界及び範囲(metesand bounds)を確定する。インフルエンザA(アミノ酸位置315〜498)、インフルエンザB(アミノ酸位置317〜499)及びインフルエンザC(アミノ酸位置327〜516)のPB2サブユニットのアミノ酸配列に関する最良の配列アライメントの一部分を、図9及び図10に示す。
本発明は、RNAキャップ又はその類似体と結合することができる、可溶性インフルエンザウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼPB2サブユニット断片を含む。「RNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2」という用語は、好ましくは配列番号1、配列番号2又は配列番号3に示されたアミノ酸配列を有する、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス及びインフルエンザCウイルスのPB2を表すことが好ましい。「RNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2変異体」は、配列番号1、配列番号2又は配列番号3に示すアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有する。天然のPB2変異体を配列番号1、配列番号2又は配列番号3によるPB2サブユニットと整列させる場合、そのアライメントが2つのタンパク質の全長にわたり、したがってアライメントスコアをこれに基づき確定することが好ましい。しかし、天然の変異体が、例えばN末端又はC末端の融合を通じて、C末端/N末端の又は内部の欠失又は付加を含み得ることも考え得る。この場合には、それぞれ類似性及び同一性の評価のために、最も良く整列した領域のみが使用される。
好ましくは、また以下でより詳細に示すように、これらの変異体由来の可溶性断片は、好ましくはRNAキャップ結合に必要とされる領域内において、それぞれ表示した類似性及び同一性を示す。したがって、配列番号1、配列番号2又は配列番号3とPB2変異体との間の任意のアライメントが、好ましくはRNAキャップ結合ポケットを含むはずである。したがって、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のそれぞれとの上記の配列類似性及び同一性が、好ましくはRNAキャップ結合ポケットを含む、少なくとも100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、165個、170個、180個、190個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、300個又はそれ以上のアミノ酸の長さにわたり生じる。したがって、好ましい一実施形態では、RNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2変異体は、100個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、110個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、120個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、130個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、140個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、150個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、160個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、165個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、170個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、180個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、190個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、200個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、210個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、220個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、230個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、240個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、250個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、又は300個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号1との配列類似性、好ましくは配列同一性を有する。
好ましい一実施形態では、RNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2変異体は、100個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、110個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、120個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、130個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、140個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、150個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、160個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、165個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、170個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、180個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、190個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、200個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、210個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、220個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、230個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、240個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、250個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、又は300個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号2との配列類似性、好ましくは配列同一性を有する。
好ましい一実施形態では、RNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2変異体は、100個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、110個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、120個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、130個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、140個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、150個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、160個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、165個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、170個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、180個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、190個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、200個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、210個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、220個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、230個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、240個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、250個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有するか、又は300個のアミノ酸の長さにわたり、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列番号3との配列類似性、好ましくは配列同一性を有する。
配列番号1、配列番号2又は配列番号3による配列の多数の天然のPB2変異体が既知であり、文献で説明されている。これらのPB2変異体の全てが含まれ、本発明の可溶性断片の基礎であり得る。配列番号1が参照配列として使用される場合には、インフルエンザAに関する好ましい例は、Val227、Arg251、Ile255、Ser271、Gln288、Ile338、Val344、Arg355、Ile373、Leu374、Asn456、Val461及び/又はSer497の1つ又は複数での突然変異を含む。好ましい一実施形態では、上記変異体は以下の突然変異:Val227Met、Arg251Lys、Ile255Val、Ile255Thr、Ser271Ala、Gln288Leu、Ile338Val、Ile338Thr、Val344Leu、Arg355Lys、Ile373Thr、Leu374Ile、Asn456Ser、Val461Ile及び/又はSer497Asnの1つ又は複数を含む。インフルエンザAウイルスPB2サブユニットの好ましい変異体は、上述の突然変異の1つ又は複数と任意に組み合わせて、アルギニンからリジンへのアミノ酸交換をもたらす389位での突然変異を含む(例えば、配列番号11)。配列番号2が参照配列として使用される場合には、インフルエンザBウイルスPB2サブユニットの好ましい変異体は、以下のアミノ酸位置:Thr254、Met261、Ile269、Thr301、Ile303、Leu319、Ile346、Lys380、Arg382、Met383、Lys385、Lys397、Asn442、Ser456、Glu467、Leu468及び/又はThr494の1つ又は複数での突然変異を含む。好ましい一実施形態では、PB2サブユニット変異体は以下の突然変異:Thr254Ala、Met261Thr、Ile269Val、Thr301Ala、Ile303Leu、Leu319Gln、Ile346Val、Lys380Gln、Arg382Lys、Met383Leu、Lys385Arg、Lys397Arg、Asn442Ser、Ser456Pro、Glu467Gly、Leu468Ser及び/又はThr494Ileの1つ又は複数を含む。配列番号3が参照配列として使用される場合には、インフルエンザBウイルスPB2サブユニットの好ましい変異体は、以下のアミノ酸位置:Leu311、Pro330及び/又はSer436の1つ又は(ore)複数での突然変異を含む。好ましい一実施形態では、上記突然変異は、以下の通りである:Leu311Pro、Pro330Gln及び/又はSer436Thr。
本発明の可溶性断片は、したがって、上で規定したようなRNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2又はその変異体に基づく。したがって以下の本明細書では、「可溶性ポリペプチド断片(複数可)」及び「PB2ポリペプチド断片」という用語は、配列番号1、配列番号2又は配列番号3に示したようなPB2タンパク質由来のこのような断片、及び上で示したようなそのPB2タンパク質変異体由来の断片の両方であって、RNAキャップ又はその類似体と結合することができる断片を常に含む。しかし、本明細書は、RNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2変異体由来のRNAキャップ又はその類似体と結合することができる可溶性PB断片を具体的に表すために、「PB2ポリペプチド断片変異体」又は「PB2断片変異体」という用語も使用する。したがって本発明の可溶性PB2断片は、好ましくは、天然のインフルエンザウイルスサブユニットPB2の配列を含むか、それから本質的に成るか、又はそれから成る。しかし、PB2断片変異体が、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個又はそれ以上のアミノ酸位置でのアミノ酸置換をさらに含有し、且つ配列番号1、配列番号2又は配列番号3に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有することも想定される。本発明のPB2断片が、PB2由来でない付加的なアミノ酸(例えばタグ、酵素等)を含むことがあり、このような付加的なアミノ酸はこのようなアライメントにおいては考慮されない(すなわち、アライメントスコアの算出から除外される)ことが理解される。好ましい一実施形態では、上で示したアライメントスコアは、少なくとも100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、165個、170個、180個、190個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、260個又は270個のアミノ酸の長さにわたり、断片の配列を配列番号1、配列番号2又は配列番号3(ここで配列番号1、配列番号2又は配列番号3のそれぞれの配列は、RNAキャップ結合ポケットを含むことが好ましい)と整列させると得られる。
好ましい一実施形態では、可溶性PB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザAウイルスPB2の323位〜404位(配列番号13)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含むか、又はそれから成り、且つ配列番号13に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも80%、81%、82%、83%、(%m)84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザAウイルスPB2の318位〜483位(配列番号11)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号11に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザAウイルスPB2の235位〜496位(配列番号4)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号4に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも60%、より好ましくは65%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザAウイルスPB2の220位〜510位のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号1に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも60%、より好ましくは65%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有する。好ましい実施形態では、本発明のインフルエンザAウイルスPB2ポリペプチド断片変異体は、配列番号1と比較して以下のアミノ酸残基:Val227、Arg251、Ile255、Ser271、Gln288、Ile338、Val344、Arg355、Ile373、Leu374、Lys389、Asn456、Val461及び/又はSer497の1つ又は複数での突然変異等の、突然変異、好ましくは天然の突然変異を含む。好ましい一実施形態では、上記突然変異は、以下の通りである:Val227Met、Arg251Lys、Ile255Val、Ile255Thr、Ser271Ala、Gln288Leu、Ile338Val、Ile338Thr、Val344Leu、Arg355Lys、Ile373Thr、Leu374Ile、Lys389、Asn456Ser、Val461Ile及び/又はSer497Asn。インフルエンザAウイルスPB2サブユニット断片の好ましい変異体は、上述の突然変異の1つ又は複数と任意に組み合わせて、アルギニンからリジンへのアミノ酸交換をもたらす389位での突然変異を含む(例えば、配列番号11)。
好ましい一実施形態では、PB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザBウイルスPB2の325位〜406位(配列番号2由来)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含むか、又はそれから成り、且つ配列番号2に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザBウイルスPB2の320位〜484位(配列番号2由来)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号2に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザBウイルスPB2の237位〜497位(配列番号2由来)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号2に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも60%、より好ましくは65%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザBウイルスPB2の222位〜511位(配列番号2由来)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号2に示したアミノ酸配列と、最良の配列アライメントを使用する断片の全長にわたり、及び/又は最良の配列アライメントの領域にわたり(ここで最良の配列アライメントは、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignのような当該技術分野で既知のツールを用いて取得可能である)、少なくとも60%、より好ましくは65%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列類似性、好ましくは配列同一性を有する。好ましい実施形態では、本発明のインフルエンザBウイルスPB2ポリペプチド断片変異体は、配列番号2と比較して以下のアミノ酸位置:Thr254、Met261、Ile269、Thr301、Ile303、Leu319、Ile346、Lys380、Arg382、Met383、Lys385、Lys397、Asn442、Ser456、Glu467、Leu468及び/又はThr494の1つ又は複数での、突然変異、好ましくは天然の突然変異を含む。好ましい一実施形態では、上記断片変異体は、以下の突然変異:Thr254Ala、Met261Thr、Ile269Val、Thr301Ala、Ile303Leu、Leu319Gln、Ile346Val、Lys380Gln、Arg382Lys、Met383Leu、Lys385Arg、Lys397Arg、Asn442Ser、Ser456Pro、Glu467Gly、Leu468Ser及び/又はThr494Ileの1つ又は複数を含む。
好ましい一実施形態では、PB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザCウイルスPB2の335位〜416位(配列番号3由来)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含むか、又はそれから成り、且つ配列番号3に示したアミノ酸配列と、断片の全長にわたり、少なくとも80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%の配列類似性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザCウイルスPB2の330位〜501位(配列番号3由来)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号3に示したアミノ酸配列と、断片の全長にわたり、少なくとも70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、最も好ましくは90%の配列類似性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザCウイルスPB2の242位〜514位(配列番号3由来)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号3に示したアミノ酸配列と、断片の全長にわたり、少なくとも60%、より好ましくは65%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、最も好ましくは90%の配列類似性を有し、より好ましくはPB2ポリペプチド断片変異体は、インフルエンザCウイルスPB2の227位〜528位(配列番号3由来)のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み、且つ配列番号3に示したアミノ酸配列と、断片の全長にわたり、少なくとも60%、より好ましくは65%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、最も好ましくは90%の配列類似性を有する。好ましい実施形態では、本発明のインフルエンザCウイルスPB2ポリペプチド断片変異体は、配列番号3と比較して以下のアミノ酸残基:Leu311、Pro330及び/又はSer436の1つ又は複数における突然変異等の、突然変異、好ましくは天然の突然変異を含む。好ましい一実施形態では、上記断片変異体は、以下の突然変異:Leu311Pro、Pro330Gln及び/又はSer436Thrの1つ又は複数を含む。
「配列類似性」という用語は、最良の配列アライメントの同じ位置でのアミノ酸が同一又は類似である、好ましくは同一であることを意味する。「類似のアミノ酸」は、類似の特性、例えば極性、溶解性、親水性、疎水性、電荷又はサイズを有する。類似のアミノ酸は好ましくは、ロイシン、イソロイシン及びバリン;フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン;リジン、アルギニン及びヒスチジン;グルタミン酸及びアスパラギン酸;グリシン、アラニン及びセリン;トレオニン、アスパラギン、グルタミン及びメチオニンである。当業者には、例えばワールドワイドウェブ(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/similarity.html)上で利用可能な、配列類似性検索ツールが十分に明らかである。
本明細書中で使用する場合の「可溶性(soluble)」という用語は、有効濃度のグアニジン又は尿素等の変性剤の非存在下における、5mg/mlものタンパク質濃度での、例えば0.14M塩化ナトリウム又はスクロースのような生理学的等張条件下での、水性緩衝液中における100000×gでの30分間の遠心分離後にポリペプチド断片が上清中に残存する状態を表す。その溶解性に関して試験されるタンパク質断片は、以下で示される細胞発現系の1つにおいて発現されることが好ましい。このようなタンパク質断片の発現と、好ましくは精製とが、実施例2において以下でより詳細に示すように実施されることが特に好ましい。
ポリペプチドに関して「精製(purified)」という用語は、均質調製物のように絶対的に純粋であることを要求せず、むしろそのポリペプチドが自然環境中の状態よりも相対的に純粋であることを表す。概して、精製したポリペプチドは、好ましくは機能的に顕著なレベルで、例えば少なくとも85%の純度(pure)、より好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度で、該ポリペプチドが自然状態で会合する他のタンパク質、脂質、炭水化物又は他の材料を実質的に有しない。「結晶化に適切な程度まで精製されている」という表現は、純度が85%〜100%、好ましくは90%〜100%、より好ましくは95%〜100%であり、沈殿することなく3mg/ml超、好ましくは10mg/ml超、より好ましくは18mg/ml超まで濃縮され得るタンパク質を表す。当業者は、タンパク質精製のための標準的な技法を使用して、ポリペプチドを精製することができる。実質的に純粋なポリペプチドは、非還元ポリアクリルアミドゲル上に単一の主バンドを生じる。
本発明の方法で化合物を同定する文脈において使用されるところの「会合する(associate)」という用語は、或る分子部分(moiety)(すなわち、化学的分子若しくは化合物又はその一部分(portions)若しくはその断片)とPB2の結合ポケットとの間の近接状態を表す。会合は、非共有的であり得る(すなわち、例えば水素結合性相互作用、ファンデルワールス相互作用、静電的相互作用又は疎水的相互作用により、近接位置(juxtaposition)がエネルギ的に有利である場合には)か、又は共有的であり得る。
「RNAキャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端に見出され、異常な5’間(5' to 5')三リン酸結合を介してmRNAと連結したグアニンヌクレオチドから成るキャップ構造を表す。このグアノシンは、7位がメチル化されている。さらなる修飾は、mRNAの5’末端の最初の3つのリボース糖の2’ヒドロキシ基の起こり得るメチル化を含む。「RNAキャップ類似体」は、RNAキャップ構造に類似する構造を表す。RNAキャップ類似体の例は、7−メチル−グアノシン(m7G)、7−メチル−グアノシン一リン酸(m7GMP)、7−メチル−グアノシン三リン酸(m7GTP)、5’間三リン酸架橋を介してグアノシンと連結した7−メチル−グアノシン(m7GpppG)、リボースの2’位のOHがメチル化されたグアノシンと5’間三リン酸架橋を介して連結した7−メチル−グアノシン(m7GpppGm)、5’間三リン酸架橋を介してアデノシンと連結した7−メチル−グアノシン(m7GpppA)、リボースの2’位のOHがメチル化されたアデノシンと5’間三リン酸架橋を介して連結した7−メチル−グアノシン(m7GpppAm)、5’間三リン酸架橋を介してシチジンと連結した7−メチル−グアノシン(m7GpppC)、リボースの2’位のOHがメチル化されたシチジンと5’間三リン酸架橋を介して連結した7−メチル−グアノシン(m7GpppCm)、5’間三リン酸架橋を介してウリジンと連結した7−メチル−グアノシン(m7GpppU)、リボースの2’位のOHがメチル化されたウリジンと5’間三リン酸架橋を介して連結した7−メチル−グアノシン(m7GpppUm)を含む。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、キャップ類似体は、m7G、m7GMP、m7GTP、m7GpppN、m7GpppNm(ここでNはヌクレオチド、好ましくはG、A、U又はCである)から成る群から選択される。別の好ましい実施形態では、RNAキャップ類似体は、例えば1個〜15個(すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個又は15個)のさらなるヌクレオチドを含み得る(ここでヌクレオチドは好ましくは、A、C、G、U及び/又はTから成る群から独立して選択される)。これらのさらなるヌクレオチドは、ホスホエステル結合、ホスホジエステル結合若しくはホスホトリエステル(phosphotrieester)結合、又はその非加水分解性の類似結合(analog)を介して、m7GpppN又はm7GpppNm中の最初のヌクレオチドNと連結されるのが好ましい。
本明細書中で使用する場合の「ヌクレオチド」という用語は、例えばKornberg and Baker, DNAReplication, 2nd Ed.(Freeman, San Francisco,1992)において説明されるように、1’位でペントースと連結した、例えばアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、デアザアデニン、デアザグアノシン等のプリン、デアザプリン又はピリミジンヌクレオシド塩基から成る化合物(2’−デオキシ型及び2’−ヒドロキシル型を含む)を表し、例えばScheit,Nucleotide Analogs (John Wiley, N.Y., 1980)により概説される修飾塩基分子部分及び/又は修飾糖分子部分を有する合成ヌクレオシドをさらに含むがこれらに限定されない。
「結合ポケット」という用語は、本発明のポリペプチド断片により形成される三次元構造、すなわちPB2のRNAキャップ結合ドメインを表し、これはRNAキャップと直接接触するアミノ酸、又はRNAキャップと直接接触するアミノ酸残基を位置決めするアミノ酸残基(第2層のアミノ酸残基)(例えばArg332及びSer337)が並んでいる。その形状のために、結合ポケットはRNAキャップ又はその類似体を収容することができる。PB2のRNAキャップ結合ポケットは、RNAキャップ結合部位を含むPB2ポリペプチド断片と、RNAキャップ類似体との間の複合体の結晶構造データの分析から得られる構造座標により規定される。「結合ポケット」という用語は、PB2ポリペプチド断片変異体の結合ポケットも含む。
「PB2のRNAキャップ結合ドメイン」という用語は、その未変性の三次元構造中にRNA結合ポケットを含むPB2の最小のポリペプチド断片を表す。
「単離(isolated)ポリヌクレオチド」という用語は、(i)その自然環境から単離した、(ii)ポリメラーゼ連鎖反応により増幅した、又は(iii)全体的に若しくは部分的に合成したポリヌクレオチドを表し、デオキシリボヌクレオチド塩基又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖のポリマーを意味し、DNA分子及びRNA分子、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含む。この用語は、cDNA、ゲノムDNA及び組換えDNAを含む。ポリヌクレオチドは、遺伝子全体又はその一部分から成り得る。
本明細書中で使用する場合の「組換えベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージ等のファージベクター、アデノウイルスベクター若しくはバキュロウイルスベクター等のウイルスベクター、又は細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)若しくはP1人工染色体(PAC)等の人工染色体ベクターを含む当業者に既知の任意のベクターを含む。上記ベクターは、発現ベクター及びクローニングベクターを含む。発現ベクターは、プラスミド及びウイルスベクターを含み、概して、所望のコード配列と、特定の宿主生物(例えば細菌、酵母、植物、昆虫若しくは哺乳動物)又はin vitro発現系における操作可能に連結したコード配列の発現に必要な適当なDNA配列とを含有する。クローニングベクターは概して、或る特定の所望のDNA断片を操作し(engineer)増幅するために使用され、所望のDNA断片の発現に必要とされる機能的配列を欠くことがある。
本明細書中で使用する場合の「組換え宿主細胞」は、対象のポリペプチド断片、すなわち本発明によるPB2ポリペプチド断片又はその変異体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を表す。このポリヌクレオチドは、(i)それ自体が自由に分散して、(ii)組換えベクター中に取り込まれて、又は(iii)宿主細胞ゲノム若しくはミトコンドリアDNA中に組み込まれて、宿主細胞内に見出され得る。組換え細胞は、対象のポリヌクレオチドの発現のために、又は本発明のポリヌクレオチド若しくは組換えベクターの増幅のために、使用することができる。「組換え宿主細胞」という用語は、本発明のポリヌクレオチド又は組換えベクターで形質転換するか、トランスフェクトするか、又は感染させた元の細胞の子孫を含む。組換え宿主細胞は、大腸菌細胞等の細菌細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)若しくはピキア・パストリス(Pichiapastoris)等の酵母細胞、植物細胞、SF9細胞若しくはHi5細胞等の昆虫細胞、又は哺乳動物細胞であり得る。哺乳動物細胞の好ましい例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、アフリカミドリザル腎臓(COS)細胞、ヒト胚腎臓(HEK293)細胞、HELA細胞等である。
本明細書中で使用する場合の「結晶(crystal)」又は「結晶性(crystalline)」という用語は、平面が一定の角度で交差し(facesintersect)、構成要素である化学種の規則的な構造(内部構造等)が存在する、構造(三次元固体集合体(aggregate)等)を意味する。「結晶」という用語は、以下のいずれか1つを含み得る:実験的に調製した結晶等の固体の物理的結晶形態、結晶から誘導可能な結晶構造(二次構造要素及び/又は三次構造要素及び/又は四次構造要素を含む)、結晶構造に基づく2Dモデル及び/又は3Dモデル、その略式表示若しくはその図式表示等のその表示、又はコンピュータ用のそのデータ組。一態様では、結晶はX線結晶学技法において使用可能である。ここで、使用する結晶は、X線ビームへの曝露に耐えることができ、X線結晶学的構造を解くのに必要な回折パターンデータを作製するために使用される。結晶は、T.L. Blundell and L. N. Johnson, "ProteinCrystallography", AcademicPress, New York(1976)に示される結晶形態の1つにより規定されるパターンで、X線を回折することができることを特徴とし得る。
「単位格子(unit cell)」という用語は、基本的な平行六面体形状のブロックを表す。結晶の全体積は、このようなブロックの規則的な集合化により構築され得る。各単位格子は、その繰り返しが結晶を構築するパターンの単位の完全な表示を含む。
「空間群」という用語は、結晶の対称要素の配置を表す。空間群の指定においては、大文字は格子形を示し、他の記号は、その外観を変化させることなく非対称単位の内容(contents)に関して実施され得る対称操作を表す。
「構造座標」という用語は、複数軸(axes)の系との関連で1つ又は複数のアミノ酸残基の位置を規定する一組の値を表す。この用語は、分子(単数又は複数)の三次元構造を規定するデータ組(例えば、デカルト座標、温度因子及び占有率)を表す。構造座標は、わずかに修正してもよいが、それでもほぼ同一の三次元構造をもたらす。構造座標の特有の一組の尺度は、得られた構造の二乗平均平方根偏差(root mean square deviation)である。3Å、2Å、1.5Å、1.0Å又は0.5Å未満の二乗平均平方根偏差で互いに離れる三次元構造(特に結合ポケットの特定の三次元構造)をもたらす構造座標は、当業者により非常に類似のものとみなされ得る。
「二乗平均平方根偏差」という用語は、平均からの偏差の二乗の算術平均の平方根を意味する。これは、傾向又は目標(object)からの偏差又は変動を表現する方法である。本発明の目的のために、「二乗平均平方根偏差」は、図18によるPB2−m7GTP複合体の構造座標により規定されるような、PB2又はその中のRNAキャップ結合ポケットの骨格からの、PB2ポリペプチド断片の変異体又はその中のRNAキャップ結合ポケットの骨格の変動を規定する。
本明細書中で使用する場合の「コンピュータモデルを構築すること」という用語は、原子構造情報及び相互作用モデルに基づく分子の構造及び/又は機能の定量的分析及び定性的分析を含む。「モデリング」という用語は、従来の数値基準の分子動的モデル及びエネルギ最小化モデル、相互作用的コンピュータグラフィックモデル、改変(modified)分子力学モデル、距離幾何学法、並びに他の構造基準制約モデルを含む。
「フィッティングプログラム操作」という用語は、化学的分子を結合ポケット、分子若しくは分子複合体又はその一部分と会合させるために、化学的分子、結合ポケット、分子若しくは分子複合体又はその一部分の構造座標を利用する操作を表す。これは、化学的分子を結合ポケット中で位置決め、回転又は平行移動し、結合ポケットの形状及び静電的相補性を適合させることにより、達成することができる。共有的相互作用と、水素結合、静電的相互作用、疎水的相互作用、ファンデルワールス相互作用等の非共有的相互作用と、反発的な電荷−電荷相互作用、双極子−双極子相互作用及び電荷−双極子相互作用等の非相補的な静電的相互作用とが、最適化され得る。代替的に、化学的分子と結合ポケットとの結合の変形エネルギを最小化することができる。
本明細書中で使用する場合の「試験化合物」という用語は、対象のポリペプチド断片、すなわち本発明のPB2ポリペプチド断片、又はRNAキャップ結合ポケットを含むその変異体と結合するその能力に関して試験される化合物、分子又は複合体を含む薬剤を表す。試験化合物は、ペプチド、ペプトイド、ポリペプチド、タンパク質(抗体を含む)、脂質、金属、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ヌクレオシド、核酸、有機小分子若しくは無機小分子、化学的化合物、元素、糖類、同位体、炭水化物、造影剤、リポタンパク質、糖タンパク質、酵素、分析プローブ、ポリアミン並びにその組合せ及び誘導体を含むがこれらに限定されない任意の薬剤であり得る。「小分子」という用語は、50〜約2500ダルトンの分子量、好ましくは200〜800ダルトンの範囲の分子量を有する分子を表す。加えて、本発明による試験化合物は、検出可能な標識を任意に含み得る。このような標識は、酵素標識、放射性同位体又は放射性化合物若しくは放射性元素、蛍光化合物又は蛍光金属、化学発光化合物及び生物発光化合物を含むがこれらに限定されない。このような検出可能な標識を試験化合物に結合するために、既知の方法が使用され得る。本発明の試験化合物は、天然生成物、又は混合コンビナトリアル合成の生成物を含有する抽出物等の、物質の複雑な混合物も含み得る。これらも試験することができ、標的ポリペプチド断片と結合する成分を、その後の工程で混合物から精製することができる。試験化合物は、合成又は天然の化合物のライブラリから抽出する(derived)か、又は選択することができる。例えば、合成化合物ライブラリは、MaybridgeChemical Co.(Trevillet,Cornwall, UK)、ChemBridge Corporation(San Diego, CA)又はAldrich(Milwaukee, WI)から市販されている。天然化合物ライブラリは、例えば、TimTecLLC(Newark, DE)から入手可能である。代替的に、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞及び動物細胞並びに組織抽出物の形態の天然化合物のライブラリを使用することができる。さらに、試験化合物を、個々の化合物として、又は混合物としてコンビナトリアルケミストリを使用して、合成的に製造することができる。コンビナトリアルケミストリを使用して作製した化合物のコレクションは、本明細書中でコンビナトリアルライブラリと称される。
「ハイスループット設定において」という用語は、対象のポリペプチド断片と結合する能力に関して試験化合物のライブラリをスクリーニングするために使用される、ハイスループットスクリーニングアッセイ、及び様々な種類の技法を表す。典型的には、ハイスループットアッセイは多ウェル形式で行われ、無細胞アッセイ及び細胞基準アッセイを含む。
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の両方、すなわち、抗原又はハプテン、すなわちPB2又はそのペプチドのRNAキャップ結合ドメインを認識することができる任意の免疫グロブリンタンパク質又はその一部分を表す。抗原結合部分は、組換えDNA技法により、又は無傷抗体の酵素的切断若しくは化学的切断により作製され得る。幾つかの実施形態では、抗原結合部分は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片及び相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、ヒト化抗体等のキメラ抗体、ダイアボディ(diabodies)、及びポリペプチドとの特異的抗原結合をもたらすのに十分な抗体を少なくとも一部分含有するポリペプチドを含む。
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本発明の方法により同定可能な化合物、又は本発明の化合物の塩を表す。適切な薬学的に許容可能な塩は、例えば、本発明の化合物の溶液を、薬学的に許容可能な酸(例えば、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸又はリン酸)の溶液と混合することにより形成することができる酸付加塩を含む。さらに、化合物が酸性分子部分を保有する場合には、その適切な薬学的に許容可能な塩は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩又はマグネシウム塩);及び適切な有機リガンド(例えば、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、アルキルスルホン酸イオン及びアリールスルホン酸イオン等の対陰イオンを使用して形成した、アンモニウム陽イオン、四級アンモニウム陽イオン及びアミン陽イオン)で形成される塩を含み得る。薬学的に許容可能な塩の例示的な例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ(camphorate)、スルホン酸ショウノウ(camphorsulfonate)、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩(estolate)、エシル酸塩(esylate)、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩(glycolylarsanilate)、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオナート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩(embonate))、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド(triethiodide)、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等を含むがこれらに限定されない(例えば、S.M. Berge et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci.,66, pp. 1-19(1977)を参照されたい)。
本明細書中で使用される場合の「添加物」という用語は、例えば担体、結合剤、滑剤、増粘剤、界面活性剤、保存料、乳化剤、緩衝液、香料又は着色料等の、活性成分ではない、薬学的製剤中の全ての物質を示すことが意図される。
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等を含む。
本発明者らは、可溶性であり且つRNAキャップ又はその類似体と結合することができ、それ故に結晶化して構造情報を取得するのに、また組換えタンパク質での結合研究を実施するのに適切な、インフルエンザウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2由来の断片が存在することを見出した。(i)インフルエンザウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2由来であり、且つ(ii)RNAキャップ又はその類似体と結合することができる、可溶性ポリペプチド断片を提供することが、本発明の一態様である。本発明の可溶性断片が得られるRNA依存性RNAポリメラーゼサブユニットPB2は、好ましくはインフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス又はインフルエンザCウイルス由来である。本発明の可溶性断片の最小の長さは、RNAキャップ又はその類似体と結合するその能力により確定される。したがって、本発明のPB2ポリペプチド断片は、配列番号1の323位〜404位若しくは320位〜483位のアミノ酸残基、又は例えばPB2ポリペプチド断片変異体におけるそれに対応するアミノ酸を少なくとも含むか、又はそれから成ること;配列番号2の325位〜406位若しくは320位〜484位のアミノ酸残基、又は例えばPB2ポリペプチド断片変異体におけるそれに対応するアミノ酸を少なくとも含むか、又はそれから成ること;又は配列番号3の335位〜416位若しくは330位〜501位のアミノ酸残基、又は例えばPB2ポリペプチド断片変異体におけるそれに対応するアミノ酸を少なくとも含むか、又はそれから成ることが好ましい。一方で、断片の長さが或る特定のC末端及び/又はN末端の境界を超えて伸張する場合には、断片の溶解性が減少することが観察されている。インフルエンザA型由来の可溶性断片に関しては、これらの境界は、配列番号1との関連で、好ましくは、N末端に関しては220位のアミノ酸、又は変異体におけるそれに対応するアミノ酸であり、C末端に関しては510位のアミノ酸、又は変異体におけるそれに対応するアミノ酸である。インフルエンザB型由来の可溶性断片に関しては、これらの境界は、配列番号2との関連で、好ましくは、N末端に関しては222位のアミノ酸、又は変異体におけるそれに対応するアミノ酸であり、C末端に関しては511位のアミノ酸、又は変異体におけるそれに対応するアミノ酸である。インフルエンザC型由来の可溶性断片に関しては、これらの境界は、配列番号3との関連で、好ましくは、N末端に関しては227位のアミノ酸、又は変異体におけるそれに対応するアミノ酸であり、C末端に関しては528位のアミノ酸、又は変異体におけるそれに対応するアミノ酸である。この文脈における「可溶性」という用語は、溶媒1ml当たり少なくとも0.1mg、より好ましくは少なくとも0.5mg/ml、より好ましくは少なくとも1mg/ml、より好ましくは5mg/ml以上の濃度で溶解可能なポリペプチド断片を表す。適切な溶媒は、0.01M〜3M、好ましくは0.05M〜2M、より好ましくは0.1M〜1Mの範囲の濃度のTris・HCl(pH3〜pH9、好ましくはpH4〜pH9、より好ましくはpH7〜pH9)と、任意に1mM〜20mMの濃度のジチオスレイトール(DTT)又はTCEP.HCl(Tris(2−カルボキシエチル)ホスフィンヒドロキシクロリド)等の還元剤とを含む緩衝系である。
好ましい一実施形態では、上記ポリペプチド断片は、結晶化に適切な程度まで精製されている。好ましくは少なくとも95%、96%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%の純度を有する。タンパク質の純度は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及び銀染色法による染色、又はHPLC及び280nmでの検出を含む標準的な方法により評価することができる。
別の好ましい実施形態では、
(i)上記ポリペプチド断片のN末端は、配列番号1によるPB2のアミノ酸配列の、アミノ酸位置220以上、例えば225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320若しくは323と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、例えば505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置220と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510、505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置225以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置230以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置235以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置240以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置245以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置250以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置255以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置260以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置265以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置270以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置275以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置280以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置280以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置285以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置290以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置295以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置300以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置305以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置310以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置315以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置320以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;又はより好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置323以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置510以下、特に505、500、495、490、489、488、487、486、485、484若しくは483と同一であるか若しくはそれに対応し;
(ii)上記ポリペプチド断片のN末端は、配列番号2によるPB2のアミノ酸配列の、アミノ酸位置222以上、例えば225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325と同一であるか若しくはそれに対応し(orresponds)、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置222以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに(to to)対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置225以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置230以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置235以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置240以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置245以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置250以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置255以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置260以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置265以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置270以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置275以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置280以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置285以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置290以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置295以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置300以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置305以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置310以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置315以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置320以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;又はより好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置325以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置511以下、例えば510、505、500、499、498、497、496、495、494、493、492、491、490、489、488、487、486、485若しくは484と同一であるか若しくはそれに対応し;又は
(iii)上記ポリペプチド断片のN末端は、配列番号3によるPB2のアミノ酸配列の、アミノ酸位置227以上、例えば230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330若しくは335と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置227以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置230以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置235以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置240以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置245以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置250以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置255以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置260以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置265以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置270以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置275以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置280以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置285以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置290以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置295以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置300以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置305以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置310以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置315以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置320以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置325以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;より好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置330以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応し;又はより好ましくは上記ポリペプチド断片のN末端は、アミノ酸位置335以上と同一であるか若しくはそれに対応し、C末端は、アミノ酸位置528以下、例えば525、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502若しくは501と同一であるか若しくはそれに対応する。
別の実施形態では、上記ポリペプチド断片は、配列番号4〜配列番号13によるアミノ酸配列の群から選択されるアミノ酸配列から成るか、それから本質的に成るか、又はそれに対応するポリペプチド断片、及びRNAキャップ又はその類似体と会合する能力を保持し且つ可溶性であるその変異体である。好ましい実施形態では、上記ポリペプチド断片は、上で示したように、アミノ酸の置換、挿入又は欠失、好ましくは天然の突然変異を含む。好ましくは本発明のPB2ポリペプチド断片は、235位〜496位(配列番号4)、241位〜483位(配列番号5)、268位〜483位(配列番号6)、277位〜480位(配列番号7)、281位〜482位(配列番号8)、290位〜483位(配列番号9)、295位〜482位(配列番号10)、318位〜483位(配列番号11)、320位〜483位(配列番号12)又は323位〜404位(配列番号13)のアミノ酸残基を有するか、又はそれに対応する。
別の態様では、本発明は、上で説明したようなPB2ポリペプチド断片とRNAキャップ又はその類似体とを含む複合体を提供する。好ましくはキャップ類似体は、m7G、m7GMP、m7GTP、m7GpppG、m7GpppGm、m7GpppA、m7GpppAm、m7GpppC、m7GpppCm、m7GpppU及びm7GpppUmから成る群から選択される。本発明の一実施形態では、複合体におけるポリペプチド断片は配列番号11によるアミノ酸配列から成り、キャップ類似体はm7GTPであり、複合体は図18に示すような構造座標により規定される構造を有する。好ましい一実施形態では、任意の本発明の複合体は、好ましくは空間群C2221と、a=9.2nm、b=9.4nm;c=22.0nm±0.3nmの単位格子寸法とを有する結晶形態を含む。好ましくは上記結晶は、3.0Å以上、好ましくは2.8Å以上、より好ましくは2.6Å以上、最も好ましくは2.4Å以上の分解能までX線を回折する。
一実施形態では、結晶化に適切なタンパク質溶液は、水溶液中において、5mg/ml〜20mg/ml、好ましくは8mg/ml〜18mg/ml、より好ましくは11mg/ml〜15mg/mlの濃度のPB2ポリペプチド断片又はその変異体と、2mM〜10mM、好ましくは3mM〜8mM、より好ましくは4mM〜6mMの濃度のRNAキャップ類似体と、任意に0.01M〜3M、好ましくは0.05M〜2M、より好ましくは0.1M〜1Mの範囲の濃度のTris・HCl(pH3〜pH9、好ましくはpH4〜pH9、より好ましくはpH7〜pH9)等の緩衝系と、任意に1mM〜20mMの濃度のジチオスレイトール(DTT)又はTCEP.HCl(Tris(2−カルボキシエチル)ホスフィンヒドロキシクロリド)等の還元剤とを含み得る。PB2ポリペプチド断片若しくはその変異体、又はPB2ポリペプチド断片若しくはその変異体とRNAキャップ若しくはその類似体とを含む複合体は、結晶化溶液中において、好ましくは純度が85%〜100%であり、より好ましくは純度が90%〜100%であり、さらにより好ましくは純度が95%〜100%である。結晶を作製するために、結晶化に適切なタンパク質溶液は、ギ酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、様々なサイズのポリエチレングリコール等の等量の沈殿剤溶液と、混合される。好ましい一実施形態では、結晶化媒体は、1.5M〜2Mギ酸ナトリウム及び0.05M〜0.15Mクエン酸を含む(pH4〜pH5)同様の好ましくは等しい量の沈殿剤溶液と混合した、0.05μl〜2μl、好ましくは0.8μl〜1.2μlの結晶化に適切なタンパク質溶液を含む。別の実施形態では、沈殿剤溶液は、7% PEG6000、1M LiCl、0.1M クエン酸(pH5.0)、10mM TCEP.HClを含む。
結晶は、ハンギング−シッティングドロップ(hanging and sitting drop)法と、サンドイッチドロップ法と、透析法と、マイクロバッチ又はマイクロチューブバッチデバイスとを含む(がこれらに限定されない)当業者に既知の任意の方法により成長させることができる。単独での又は化合物との複合体での、本発明のPB2ポリペプチド断片又はその変異体の結晶を作製する他の結晶化条件を特定するために、上で開示した結晶化条件を変更することが、当業者には容易に明らかであろう。このような変更は、pH、タンパク質濃度及び/又は結晶化温度を調整すること、使用する塩及び/又は沈殿剤の特性又は濃度を変化させること、結晶化のための様々な方法を使用すること、又は結晶化に役立つ洗浄剤(例えば、TWEEN20(モノラウリル酸塩)、LDOA、Brij 30(4ラウリルエーテル:4はエーテル結合の数))、糖(例えば、グルコース、マルトース)、有機化合物(例えば、ジオキサン、ジメチルホルムアミド)、ランタニドイオン若しくは多価イオン性(poly-ionic)化合物等の添加剤を導入することを含むがこれらに限定されない。ハイスループット結晶化アッセイが、結晶化条件を見出すか、又は最適化するのを支援するために使用されることもある。
マイクロシーディング(Microseeding)を、結晶のサイズ及び質を増大させるために使用することができる。簡潔には、微結晶を粉砕し、ストックシード(stockseed)溶液を得る。ストックシード溶液を段階希釈する。ニードル、ガラスロッド又は一本の髪の毛(strand of hair)を使用して、各希釈溶液からの小量の試料を、シードの存在なしに結晶を創出するのに必要とされる濃度以下のタンパク質濃度を含有する一組の平衡化した液滴に添加する。目的は、液滴中での結晶成長の核となる働きをする単一シード結晶を最終的に得ることである。
本明細書中で説明したような、図18に示すような構造座標を取得する方法、座標の解釈、及びタンパク質構造を理解する際のその有用性は、当業者により、及びJ. Drenth, "Principles of protein X-ray crystallography",2ndEd., Springer Advanced Texts in Chemistry, New York (1999)、及びG.E.Schulz and R. H. Schirmer, "Principles of Protein Structure",SpringerVerlag, New York(1985)等の標準的なテキストを参照して、一般的に理解されている。例えば、100Kまで凍結して凍結保護した結晶(例えば、20%〜30%グリセロールで)を多くの場合使用し、例えばX線源としてシンクロトロン施設でビームライン又は回転陽極を使用して、X線回折データを初めに取得する。その後位相問題を一般的に既知の方法(例えば、多波長異常回折(MAD)、重原子同形置換(multipleisomorphous replacement)(MIR)、単一波長異常回折(SAD)又は分子置換(MR)により解決する。部分構造(sub-structure)を、SHELXD(SchneiderandSheldrick, 2002)を使用して解明し、SHARP(Vonrhein et al., 2006)で位相を算出し、溶媒平坦化(solventflattening)及び非結晶学的対称平均化(例えば、RESOLVE(Terwilliger,2000)で)で改良することができる。モデル自動構築を例えばARP/wARP(Perrakiset al.,1999)で、精密化を例えばREFMAC(Murshudov, 1997)で、行うことができる。さらに、本発明により提供されるPB2断片の構造座標(図18)は、分子置換法を使用する、他のオルトミクソウイルス科の属のPB2ポリペプチド、又はアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入を有するPB2ポリペプチド変異体の構造決定に有用である。
上で言及したPB2ポリペプチド断片及びその変異体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供することは、本発明の別の態様である。このような単離ヌクレオチド断片を取得するために適用される分子生物学的方法は、概して当業者に既知である(標準的な分子生物学的方法に関しては、Sambrook et al., Eds., "Molecular Cloning: A LaboratoryManual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(1989)(これは参照により本明細書に援用される)を参照されたい)。例えば、RNAを、インフルエンザウイルスに感染した細胞から単離することができ、ランダムプライマー(例えば、ランダムな六量体若しくは十量体)、又は対象の断片の生成に特異的なプライマーを使用する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を適用して、cDNAを生成することができる。その後対象の断片を、断片特異的プライマーを使用する標準的なPCRにより増幅することができる。
好ましい一実施形態では、好ましい実施形態の可溶性PB2ポリペプチド断片をコードする単離ポリヌクレオチドは、配列番号23(インフルエンザA)、配列番号26(インフルエンザB)又は配列番号27(インフルエンザC)由来である。好ましい一実施形態では、可溶性のインフルエンザAウイルスPB2ポリペプチド断片又はその変異体をコードする単離ポリヌクレオチドは配列番号25由来であり、配列番号1と比較して389位でのアルギニンからリジンへのアミノ酸交換を含む。さらにより好ましい実施形態では、インフルエンザAウイルスPB2ポリペプチド断片又はその変異体をコードする単離ポリヌクレオチドは配列番号26由来であり、大腸菌コドン使用に関して最適化したDNA配列である。この文脈では、「由来(derived)」は、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26又は配列番号27が全長PB2ポリペプチドをコードし、したがって、好ましいPB2ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドが、それぞれコードされるPB2ポリペプチド断片による要求に応じて、ポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端に欠失を含むことを表す。
一実施形態では、本発明は、上記単離ポリヌクレオチドを含む組換えベクターに関する。当業者には、対象のポリヌクレオチド配列のベクター中への取り込みに使用される技法は、十分に明らかである(Sambrook et al., 1989も参照されたい)。このようなベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージ等のファージベクター、アデノウイルスベクター若しくはバキュロウイルスベクター等のウイルスベクター、又は細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)若しくはP1人工染色体(PAC)等の人工染色体ベクターを含む、当業者に既知の任意のベクターを含む。上記ベクターは、原核生物発現又は真核生物発現に適切な発現ベクターであり得る。上記プラスミドは、複製開始点(ori)、多重クローニング部位、及びプロモーター(構成的な又は誘導性の)等の調節配列、転写開始部位、リボソーム結合部位、転写終結部位、ポリアデニル化シグナル、及び突然変異又は欠失の相補性に基づく抗生物質耐性マーカー又は栄養要求性マーカー等の選択マーカーを含み得る。一実施形態では、対象のポリヌクレオチド配列は、調節配列と操作可能に連結している。
別の実施形態では、上記ベクターは、対象のポリペプチド断片の精製を容易にするエピトープタグ、ペプチドタグ又はタンパク質タグをコードするヌクレオチド配列を含む。このようなエピトープタグ、ペプチドタグ又はタンパク質タグは、ヘマグルチニンタグ(HAタグ)、FLAGタグ、mycタグ、ポリHisタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼタグ(GSTタグ)、マルトース結合タンパク質タグ(MBPタグ)、NusAタグ及びチオレドキシンタグ、又は(高感度)緑色蛍光タンパク質((E)GFP)、(高感度)黄色蛍光タンパク質((E)YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)(イソギンチャクモドキ(Discosoma)の種由来の赤色蛍光タンパク質(DsRed)、若しくは単量体赤色蛍光タンパク質(mRFP))、シアン蛍光タンパク質(CFP)等の蛍光タンパク質タグ等を含むがこれらに限定されない。好ましい一実施形態では、エピトープタグ、ペプチドタグ又はタンパク質タグを、例えばトロンビン、第Xa因子、PreScission、TEVプロテアーゼ等のようなプロテアーゼを使用して、対象のポリペプチド断片から切断することができる。このようなプロテアーゼに関する認識部位は、当業者に既知である。別の実施形態では、ベクターは、組換え宿主細胞の培養培地中への、又は細菌の細胞膜周辺腔中への、対象のポリペプチド断片の分泌をもたらす機能的配列を含む。シグナル配列断片は、通常、細胞からのタンパク質の分泌に関する疎水性アミノ酸を含むシグナルペプチドをコードする。タンパク質は、増殖培地中に(グラム陽性細菌)、又は細胞の内膜と外膜との間に位置する細胞膜周辺腔中に(グラム陰性細菌)分泌される。好ましくは、in vivo又はin vitroで切断され、シグナルペプチド断片と外来遺伝子との間でコードされ得るプロセシング部位(processing sites)が存在する。
別の態様では、本発明は、上記単離ポリヌクレオチド又は上記組換えベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。組換え宿主細胞は、古細菌細胞及び細菌細胞等の原核生物細胞、又は酵母、植物、昆虫若しくは哺乳動物細胞等の真核生物細胞であり得る。好ましい一実施形態では、宿主細胞は、大腸菌細胞等の細菌細胞である。当業者には、上記単離ポリヌクレオチド又は上記組換えベクターを上記宿主細胞中に導入する方法は、十分に明らかである。例えば、細菌細胞は、例えば化学的形質転換(例えば、塩化カルシウム法)又はエレクトロポレーションを使用して、容易に形質転換することができる。酵母細胞は、例えば、酢酸リチウム形質転換法又はエレクトロポレーションを使用して、形質転換することができる。他の真核生物細胞は、例えば、Lipofectamine(商標)(Invitrogen)等の市販のリポソーム系トランスフェクションキット、Fugene(RocheDiagnostics)等の市販の脂質系トランスフェクションキット、ポリエチレングリコール系トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃(微粒子銃)、エレクトロポレーション又はウイルス感染を使用して、トランスフェクトすることができる。本発明の好ましい一実施形態では、組換え宿主細胞は、対象のポリヌクレオチド断片を発現する。さらにより好ましい実施形態では、上記発現は、本発明の可溶性ポリペプチド断片をもたらす。これらのポリペプチド断片は、上で言及したエピトープタグ、ペプチドタグ又はタンパク質タグを任意に利用して、当業者に既知のタンパク質精製法を使用して、精製することができる。
別の態様では、本発明は、PB2のRNAキャップ結合ポケット、又はPB2ポリペプチド変異体の結合ポケットの全部又は一部と会合する化合物を同定する方法であって、(a)図18に示すような複合体の構造座標により規定される上記結合ポケットのコンピュータモデルを構築する工程、(b)有望な結合化合物を選択する工程であって、
(i)分子断片を集合化させ上記化合物とすること、
(ii)小分子データベースから化合物を選択すること、及び
(iii)上記化合物の新規リガンド設計から成る群から選択される方法により有望な結合化合物を選択する工程、
(c)演算手段を使用する工程であって、結合ポケットにおける上記化合物のエネルギを最小化した立体配置を提供するために、上記化合物と上記結合ポケットとのコンピュータモデル間のフィッティングプログラム操作を行う、演算手段を使用する工程、並びに(d)上記フィッティング操作の結果を評価する工程であって、上記化合物と結合ポケットモデルとの間の会合を定量化し、それにより上記結合ポケットと会合する上記化合物の能力を評価する、結果を評価する工程を含む、同定する方法に関する。
初めて、本発明は、図18による上記結合ポケットの構造座標に基づき、PB2のRNAキャップ結合ポケット、又はPB2のポリペプチド変異体のRNAキャップ結合ポケットに対する有望な結合パートナー、好ましくはRNAキャップ結合の阻害剤を同定、選択又は設計する分子設計技法の使用を可能とする。このような予測モデルは、上記結合ポケットと結合する可能性を有する多数の多様な化合物の調製及び試験に関連する費用が高いという観点から貴重である。RNAキャップ類似体との複合体でのPB2ポリペプチド断片に関して生成した構造座標を使用するために、構造座標を三次元形状に変換することが必要である。これは、一組の構造座標から分子又はその一部分の三次元グラフ表示を生成することができる市販のソフトウェアの使用により達成される。このようなコンピュータプログラムの例は、Insight IIホモロジーソフトウェアパッケージ(Insight II(97.0)、Molecular Simulations Incorporated, San Diego, CA))中で実行されるMODELER(A.Sali and T. L. Blundell, J. Mol. Biol., 234, pp. 779-815(1993))である。
当業者は、PB2又はPB2ポリペプチド変異体のRNAキャップ結合ポケットと結合する能力に関して、化学的分子又は断片をスクリーニングする複数の方法を使用することができる。このプロセスは、例えば、図18による構造座標に基づくPB2のRNAキャップ結合ポケットの三次元コンピュータモデルの目視検査により、開始し得る。選択した断片又は化学的化合物は、その後様々な配向で位置づけられ、又は結合ポケット内にドッキングし得る。Cerius、Quanta及びSybyl(Tripos Associates, St. Louis, MO)等のソフトウェアを使用してドッキングを達成することができ、その後OPLS−AA、CHARMM及びAMBER等の標準的な分子動力学力場を用いてエネルギ最小化及び分子動力学的検討を行う。適切な化合物又は断片を選択するプロセスにおいて当業者を支援することができるさらなる特定のコンピュータプログラムは、例えば、(i)AUTODOCK(D.S. Goodsell et al., "Automated Docking of Substrates toProteins bySimulated Annealing", Proteins: Struct., Funct., Genet., 8, pp.195-202(1990);AUTODOCKはTheScrippsResearch Institute(La Jolla, CA)から入手可能である)、及び(ii)DOCK(I. D. Kuntz etal., "A Geometric Approach toMacromolecule-Ligand Interactions", J.Mol. Biol., 161, pp. 269-288(1982);DOCKは、カリフォルニア大学(San Francisco, CA)から入手可能である)を含む。
適切な化合物又は断片が選択されると、それらをを設計するか、又は集合化させ単一の化合物又は複合体とすることができる。この手動のモデル構築は、Quanta又はSybyl等のソフトウェアを使用して行われる。個々の化合物又は断片を連結する際に当業者を支援する有用なプログラムは、例えば、(i)CAVEAT(P. A. Bartlett et al., "CAVEAT: A Program to FacilitatetheStructure-Derived Design of Biologically Active Molecules", in MolecularRecognitionin Chemical and Biological Problems", Special Publication,Royal Chem.Soc., 78, pp. 182-196(1989), G.Lauri and P. A. Bartlett,"CAVEAT: A Program to Facilitate the Design ofOrganic Molecules", J.Comp. Aid. Mol. Des., 8, pp. 51-66(1994);CAVEATはカリフォルニア大学(Berkley, CA)から入手可能である)、(ii)ISIS(MDLInformationSystems(San Leandro, CA),Y. C.Martin, "3D Database Searchingin Drug Design", J. Med. Chem., 35, pp.2145-2154(1992)中で概説されている)等の3Dデータベースシステム、及び(iii)HOOK(M.B. Eisen et al., "HOOK: A Program for Finding NovelMolecularArchitectures that Satisfy the Chemical and Steric Requirements of aMacromoleculeBinding Site", Proteins: Struct., Funct., Genet., 19, pp.199-221(1994);HOOKはMolecularSimulationsIncorporated(San Diego, CA)から入手可能である)を含む。
本発明により可能となる別のアプローチは、PB2のRNAキャップ結合ポケット、又はPB2ポリペプチド変異体の結合ポケットと全体的に又は部分的に結合することができる化合物に関する小分子データベースの演算によるスクリーニングである。このスクリーニングでは、このような化合物の結合ポケットへの適合(fit)の質は、形状相補性により、又は推定相互作用エネルギにより、判断することができる(E.C. Meng et al., J.Comp. Chem., 13, pp. 505-524(1992))。
代替的に、PB2のRNAキャップ結合ポケットに対する有望な結合パートナー、好ましくはRNAキャップ結合の阻害剤は、図18によるRNAキャップ類似体との複合体でのPB2ポリペプチド断片の3D構造をもとに新規に設計され得る。当業者が利用可能な、様々な新規のリガンド設計方法が存在する。このような方法は、(i)LUDI(H.-J. Bohm, "The Computer Program LUDI: A New Method for theDeNovo Design of Enzyme Inhibitors", J. Comp. Aid. Mol. Des., 6, pp. 61-78(1992);LUDIはMolecularSimulations Incorporated(San Diego, CA)から入手可能である)、(ii)LEGEND(Y.Nishibata andA. Itai, Tetrahedron, 47, pp. 8985-8990(1991);LEGENDはMolecular SimulationsIncorporated(San Diego,CA)から入手可能である)、(iii)LeapFrog(Tripos Associates(St.Louis, MO)から入手可能)、(iv)SPROUT(V. Gillet etal., "SPROUT: A Program for StructureGeneration", J. Comp. Aid. Mol.Des., 7, pp. 127-153(1993);SPROUTはリーズ大学(UK)から入手可能である)、(v)GROUPBUILD(S.H. Rotsteinand M. A. Murcko "GroupBuild: A Fragment-Based Method for DeNovo DrugDesign", J. Med. Chem., 36, pp. 1700-1710(1993))、及び(vi)GROW(J.B. Moon and W. J. Howe, "Computer Design of BioactiveMolecules: A Methodfor Receptor-Based De Novo Ligand Design", Proteins,11, pp 314-328(1991))を含む。
加えて、RNAキャップ結合ポケットと相互作用し得る化合物の新規の設計及びモデリングの際に当業者を支援することができる複数の分子モデリング技法(参照により本明細書に援用される)が説明されており、例えば、N. C. Cohen et al., "Molecular Modeling Software and MethodsforMedicinal Chemistry", J. Med. Chem., 33, pp. 883-894(1990)、 M. A.Navia and M. A. Murcko,"The Use of Structural Information in DrugDesign", Curr. Opin.Struct. Biol., 2, pp. 202-210(1992)、L. M. Balbes etal., "A Perspective in Modern Methods inComputer-Aided Drug Design",Reviews in Computational Chemistry, Vol. 5, K.B. Lipkowitz and D. B. Boyd,Eds., VCH, New York, pp. 37-380(1994)、W. C. Guida, "SoftwareforStructure-Based Drug Design", Curr. Opin. Struct. Biol., 4, pp. 777-781(1994)を含む。
PB2のRNAキャップ結合ポケット、又はPB2変異体の結合ポケットと結合するものとして設計又は選択された分子は、その結合状態において好ましくは標的領域との反発的な静電的相互作用を欠くように、さらに演算的に最適化することができる。このような非相補的な(例えば、静電的な)相互作用は、反発的な電荷−電荷相互作用、双極子−双極子相互作用及び電荷−双極子相互作用を含む。具体的には、結合状態における結合化合物と結合ポケットとの間の全静電的相互作用の合計は、好ましくは結合のエンタルピに対する中和的な又は好ましい寄与をもたらす。化合物変形エネルギ及び静電的相互作用を評価することができる特定のコンピュータプログラムが、当業者に利用可能である。適切なプログラムの例は、(i)Gaussian 92、revision C(M. J. Frisch, Gaussian, Incorporated(Pittsburgh,PA))、(ii)AMBER、4.0版(P.A. Kollman, カリフォルニア大学(San Francisco, CA))、(iii)QUANTA/CHARMM(MolecularSimulationsIncorporated(San Diego, CA))、(iv)OPLS−AA(W. L. Jorgensen,"OPLS Force Fields", Encyclopedia ofComputational Chemistry,Schleyer, Ed., Wiley, New York(1998)Vol. 3, pp. 1986-1989)、及び(v)Insight II/Discover(BiosysmTechnologies Incorporated(San Diego,CA))を含む。これらのプログラムは、例えば、Silicon Graphicsワークステーション、IRIS 4D/35又はIBM RISC/6000ワークステーションモデル550を使用して、実行することができる。他のハードウェアシステム及びソフトウェアパッケージが、当業者に既知である。
上で説明したように、対象の分子が選択又は設計されると、その後、その結合特性を改善又は修正するために、その原子又は側基の幾つかにおいて置換が為され得る。概して、初期置換は保存的であり、すなわち、置換基は元の基とほぼ同じサイズ、形状、疎水性及び電荷である。勿論、立体構造を変化させることが当該技術分野で既知の成分は避けるべきであると理解すべきである。このような置換した化学的化合物は、その後、上で詳細に説明した同様の演算(computer)方法により、PB2のRNAキャップ結合ポケット、又はPB2変異体の結合ポケットへの適合の効率に関して分析することができる。
上記で説明される本発明の方法の一実施形態において、PB2のRNAキャップ結合ポケット又はPB2ポリペプチド変異体の結合ポケットは、配列番号1によるPB2のアミノ酸Phe323、His357及びPhe404、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、Phe404、Phe325、Phe330及びPhe363、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330及びPhe363、又はそれに対応するアミノ酸を含む。さらに別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376、又はそれに対応するアミノ酸を含む。さらに別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361及びLys376、又はそれに対応するアミノ酸を含む。さらに別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406、又はそれに対応するアミノ酸を含む。さらに別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404及びMet431、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363及びMet431、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376及びMet431、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406及びMet431、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429、His432及びMet431、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Glu361及びLys376、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe363、Glu361及びLys376、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361及びSer337、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸His357、Phe404、Phe325、Glu361、Lys376、Arg332、Ser337及びMet431、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸His357、Phe404、Phe325、Glu361、Lys376、Arg332、Ser337、Met431、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404及びPhe325、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404及びGlu361、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404及びLys376、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325及びGlu361、又はそれに対応するアミノ酸を含む。別の実施形態では、上記結合ポケットが配列番号1によるアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325及びLys376、又はそれに対応するアミノ酸を含む。さらに、他の実施形態では、上で規定した結合ポケットは任意に、配列番号1によるアミノ酸Met431に対応するアミノ酸、又はそれに対応するアミノ酸を含み得る。
上記で説明される本発明の方法のさらなる一態様において、PB2のRNAキャップ結合ポケットは、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357及びPhe404の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、Phe404、Phe325、Phe330及びPhe363の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330及びPhe363の構造座標により規定される。さらに別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361及びLys376の構造座標により規定される。さらに別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406の構造座標により規定される。さらに別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404及びMet431の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363及びMet431の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376及びMet431の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406及びMet431の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429、His432及びMet431の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Glu361及びLys376の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe363、Glu361及びLys376の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361及びSer337の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸His357、Phe404、Phe325、Glu361、Lys376、Arg332、Ser337及びMet431の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸His357、Phe404、Phe325、Glu361、Lys376、Arg332、Ser337、Met431、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404及びPhe325の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404及びGlu361の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404及びLys376の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325及びGlu361の構造座標により規定される。別の実施形態では、上記結合ポケットが、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325及びLys376の構造座標により規定される。さらに、他の実施形態では、上で規定したような結合ポケットは任意に、図18による配列番号1のPB2のアミノ酸Met431の構造座標によりさらに規定され得る。
一態様では、本発明は、図18によるPB2のRNAキャップ結合ポケットに対する変異体である結合ポケットと会合することができる化合物に関する、上記で説明される方法による演算によるスクリーニング方法を提供する。一実施形態では、上記結合ポケットの上記変異体は、アミノ酸Phe323、His357及びPhe404の;アミノ酸Phe323、Phe404、Phe325、Phe330及びPhe363の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330及びPhe363の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361及びLys376の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337及びGln406の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の;アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404及びMet431の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363及びMet431の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376及びMet431の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406及びMet431の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361、Lys376、Ser320、Arg332、Ser337、Gln406、Lys339、Arg355、Asn429、His432及びMet431の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Glu361及びLys376の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe363、Glu361及びLys376の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325、Phe330、Phe363、Glu361及びSer337の、アミノ酸His357、Phe404、Phe325、Glu361、Lys376、Arg332、Ser337及びMet431の、アミノ酸His357、Phe404、Phe325、Glu361、Lys376、Arg332、Ser337、Met431、Lys339、Arg355、Asn429及びHis432の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404及びPhe325の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404及びGlu361の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404及びLys376の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Glu361及びLys376の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325及びGlu361の、アミノ酸Phe323、His357、Phe404、Phe325及びLys376の骨格原子由来の二乗平均平方根偏差を有し、上記のアミノ酸の組合せが任意に3Å以下の図18によるアミノ酸Met431を含む。別の実施形態では、上記の二乗平均平方根偏差が2.5Å以下である。別の実施形態では、上記の二乗平均平方根偏差が2Å以下である。別の実施形態では、上記の二乗平均平方根偏差が1.5Å以下である。別の実施形態では、上記の二乗平均平方根偏差が1Å以下である。別の実施形態では、上記の二乗平均平方根偏差が0.5Å以下である。
好ましい一実施形態では、m7GTPは、溶媒側のHis357と、タンパク質側の5つのフェニルアラニンのクラスター(主としてはPhe323及びPhe404であるが、Phe325、Phe330及びPhe363も含まれる)とに挟まれている。この好ましい実施形態では、グアノシン塩基の特異的な認識は主に、グアニンのN2位置及びN1位置へのGlu361水素結合により達成され、このことはまたm7GTPの非局在化した正電荷が中和するのを助ける。また、Lys376はO6との長い水素結合を作製する。Glu361、Lys376及びGln406と相互作用するが、リガンドとは直接的に相互作用しないリガンドポケットには、2つの規則的に並んだ(well-ordered)埋没水分子が存在する。重要な第2層の残基は、His357と水素結合するArg332及びSer337が好ましい。水分子又はSer320のいずれかが塩基のN2の水素結合距離内にある。N7メチル基は、Gln406の側鎖とファンデルワールス力で接触しており(3.4Å)、Phe404のカルボニル酸素はMet431の側鎖とさらにわずかに離れて接触している(3.4Å)。この実施形態では、三リン酸は塩基に向かって円型に曲がっている。α−ホスファートはHis432及びAsn429と相互作用し、γ−ホスファートは塩基性残基His357、Lys339及びArg355と相互作用する。
本明細書中の上で説明される方法によるコンピュータモデリングが、化合物とPB2のRNA結合ポケット又はPB2ポリペプチド変異体の結合ポケットとの結合を示す場合、上記化合物を合成することができ、また任意に上記結合ポケットと結合する上記化合物の能力をin vitro又はin vivoで試験することができ、上記PB2ポリペプチド断片と、上記RNAキャップ又はその類似体との結合を阻害する上記化合物の能力を確定するために、(e)上記化合物を合成する工程と、任意に(f)PB2ポリペプチド断片若しくはその変異体、又は本発明の組換え宿主細胞及びRNAキャップ若しくはその類似体に上記化合物を接触させる工程とをさらに含む。かかる化合物と結合ポケットとの適合の質を形状の相補性又は推定相互作用エネルギのいずれかにより判断してもよい(E. C. Meng et al., J. Comp. Chem., 13, pp. 505-524 (1992))。上記化合物を合成する方法が当業者に既知であり、又はかかる化合物は市販され得る。同定した化合物の上記RNAキャップ結合阻害効果を確定する方法の例は本明細書中の上で説明される。
上記で説明される方法により同定可能な化合物であって、ただし、m7G、m7GMP、m7GTP、m7GpppG、m7GpppGm、m7GpppA、m7GpppAm、m7GpppC及びm7GpppCm、m7GpppU及びm7GpppUmから成る群から選択されるRNAキャップ類似体、又はRNAキャップ結合の小分子阻害剤、2-アミノ−7−ベンジル−9−(4−ヒドロキシ−ブチル)−1,9−ジヒドロ−プリン−6−オン(RO0794238、Hooker etal., 2003)、又はT−705(Furuta et al.,2005)のいずれでもなく、且つPB2のRNAキャップ結合ポケットと結合することができる、化合物を提供することは本発明の別の態様である。別の態様では、本発明は、上記で説明される方法により同定可能な化合物であって、ただし、m7G、m7GMP、m7GTP、m7GpppG、m7GpppGm、m7GpppA、m7GpppAm、m7GpppC及びm7GpppCm、m7GpppU及びm7GpppUmから成る群から選択されるRNAキャップ類似体、又はRNAキャップ結合の小分子阻害剤、2-アミノ−7−ベンジル−9−(4−ヒドロキシ−ブチル)−1,9−ジヒドロ−プリン−6−オン又はT−705のいずれでもなく、且つPB2ポリペプチド断片とRNAキャップ又はその類似体との結合を阻害することができる、化合物を表す。本発明の化合物は、ペプチド、ペプトイド、ポリペプチド、タンパク質(抗体を含む)、脂質、金属、ヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸、有機小分子又は無機小分子、化学的化合物、元素、糖類、同位体、炭水化物、造影剤、リポタンパク質、糖タンパク質、酵素、分析プローブ、ポリアミン及びそれらの組合せ及び誘導体を含むが、これらに限定されない任意の薬剤であり得る。「小分子」という用語は、分子量が50〜約2500ダルトン、好ましくは200〜800ダルトンの範囲である分子を表す。加えて、本発明による試験化合物は任意に、検出可能な標識を含み得る。かかる標識としては、酵素標識、放射性同位体又は放射性の化合物又は元素、蛍光性の化合物又は金属、化学発光化合物及び生物発光化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる一態様では、本発明は、PB2のRNAキャップ結合ポケット、又はPB2ポリペプチド変異体の結合ポケットと会合する化合物を同定する方法であって、(i)PB2ポリペプチド断片、又は本発明の組換え宿主細胞と試験化合物とを接触させる工程、及び(ii)PB2ポリペプチド断片又はその変異体と結合する試験化合物の能力を分析する工程を含む、同定する方法を提供する。
一実施形態において、PB2ポリペプチド断片又はその変異体と試験化合物との相互作用をプルダウンアッセイ形態で分析してもよい。例えば、PB2ポリペプチド断片は精製され、ビーズ上で固定され得る。一実施形態では、ビーズ上で固定されたPB2ポリペプチド断片は、例えば(i)別の精製タンパク質、ポリペプチド断片若しくはペプチド、(ii)タンパク質、ポリペプチド断片若しくはペプチドの混合物又は(iii)細胞若しくは組織の抽出物と接触させてもよく、タンパク質、ポリペプチド断片又はペプチドの結合が、クーマシー染色若しくはウェスタンブロッティングと組み合わせて、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により検証してもよい。未知の結合パートナーが、質量分光分析により同定され得る。
別の実施形態において、PB2ポリペプチド断片又はその変異体と試験化合物との相互作用を酵素結合免疫吸着法(ELISA)基準の実験形態で分析してもよい。一実施形態では、本発明によるPB2ポリペプチド断片又はその変異体はELISAプレート表面上に固定され、試験化合物と接触させられ得る。例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド及びエピトープタグ付け化合物に対する試験化合物の結合が、試験化合物に特異的な抗体又はエピトープタグにより検証され得る。これらの抗体は酵素と直接的に結合し得るか、又は適切な基質と組み合わせて、化学発光反応(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ)又は比色反応(例えばアルカリホスファターゼ)を実施する上記酵素と結合した二次抗体によって検出され得る。別の実施形態では、抗体では検出することができない化合物の結合は、試験化合物と直接的に結合する標識により検証され得る。かかる標識には、酵素標識、放射性同位体又は放射性の化合物若しくは元素、蛍光性の化合物又は金属、化学発光化合物及び生物発光化合物が含まれ得る。別の実施形態では、試験化合物は、ELISAプレート表面上に固定され、本発明による可溶性のPB2のポリペプチド断片又はその変異体と接触させられ得る。上記ポリペプチドの結合はPB2ポリペプチド断片特異的抗体と、上で説明されるような化学発光反応又は比色反応とにより検証され得る。
さらなる一実施形態において、精製された可溶性PB2ポリペプチド断片をペプチドアレイと共にインキュベートし、PB2ポリペプチド断片と、特異的なペプチド配列に対応する特異的なペプチドスポットとの結合は、例えばPB2ポリペプチド特異的抗体、PB2ポリペプチド断片と融合したエピトープタグを対象とする抗体により、又はPB2ポリペプチド断片と結合した蛍光タグから放出された蛍光シグナルにより分析され得る。
別の実施形態において、本発明による組換え宿主細胞を試験化合物に接触させる。これは、試験タンパク質又はポリペプチドの共発現と、例えば蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)又は免疫共沈降による相互作用の検証とにより達成され得る。別の実施形態では、直接的に標識された試験化合物は組換え宿主細胞の培地に添加され得る。試験化合物が膜に浸透し、PB2ポリペプチド断片と結合する可能性は、例えば上記ポリペプチドの免疫沈降と標識の存在の検証とにより検証され得る。
好ましい一実施形態において、上で説明される、PB2のRNAキャップ結合ポケット又はPB2ポリペプチド変異体の結合ポケットと会合する化合物を同定する方法は、RNAキャップ又はその類似体を添加するさらなる工程を含む。上記方法の別の実施形態では、上記RNAキャップ又はその類似体の存在下でPB2と結合する上記試験化合物の能力又は上記RNAキャップ又はその類似体とPB2との結合を阻害する上記試験化合物の能力が分析される。RNAキャップ又はRNAキャップ類似体と同じモル濃度の化合物により、結合が20%超、30%超、40%超、50%超、好ましくは60%超、好ましくは70%超、好ましくは80%超、好ましくは90%超低減した場合、この化合物がRNAキャップ又はRNAキャップ類似体結合を阻害したとみなす。好ましい実施形態では、上で説明されるプルダウンアッセイ、ELISA、ペプチドアレイ、FRET及び免疫共沈降実験は、試験化合物の存在下又は非存在下で、RNAキャップ構造又はその類似体、好ましくは標識RNAキャップ構造又はその類似体の存在下で実施され得る。一実施形態では、RNAキャップ又はその類似体を、上記試験化合物を添加する前に添加する。さらなる一実施形態では、RNAキャップ又はその類似体を、上記試験化合物を添加すると同時に添加する。さらに別の実施形態では、RNAキャップ又はその類似体を、添加の上記試験化合物を添加した後に添加する。
好ましい一実施形態において、本発明のPB2ポリペプチド断片とRNAキャップ又はその類似体との相互作用を妨げる、同定可能な試験化合物の能力は、上記化合物の存在下又は非存在下で上記ポリペプチド断片を7−メチル−GTP Sepharose 4B樹脂(GE Healthcare)とインキュベートし、例えばクーマシー染色したSDS PAGEゲル上で、又はウェスタンブロット分析を使用することにより、上記化合物を用いて及び用いずに結合したPB2ポリペプチド断片の量を比較、好ましくは定量化することにより試験され得る。
試験化合物の存在下又は非存在下で本発明によるPB2断片又はその変異体と会合するRNAキャップ又はその類似体の能力を評価する。一実施形態では、これは、Natarajan et al. (2004)により説明されるような蛍光分極アッセイにおいて、蛍光標識RNAキャップ類似体、蛍光標識7−メチル−グアノシン一リン酸(m7GMP)を使用することにより達成され得る。代替的に別の実施形態では、リボースをジオール修飾した蛍光キャップ類似体であるアントラニロイル−m7GTPが、Renet al. (1996)により示されるような蛍光分光アッセイに使用され得る。さらなる一実施形態では、放射性標識したRNAキャップを、試験化合物の存在下又は非存在下でPB2ポリペプチド断片又はその変異体と共にインキュベートしてもよく、ここではRNAキャップを、試験化合物の添加の前に、添加と同時に、又は添加の後に添加してもよい。キャップ結合反応は、Hookeret al. (2003)により説明されるようにUV架橋し、変性してゲル電気泳動により分析する。別の実施形態では、本発明のPB2ポリペプチド断片は、マイクロタイタープレート上で固定され、試験化合物の存在下又は非存在下で、標識RNAキャップ又はその類似体と共にインキュベートされ、ここではRNAキャップ又はその類似体を、試験化合物の添加の前に、添加と同時に、又は添加の後に添加してもよく、キャップ結合は、プレートを完全に洗浄した後に標識の存在を検証することにより分析される。試験化合物を用いた、ウェルにおけるRNAキャップ又はRNAキャップ類似体の標識のシグナル強度と、試験化合物を用いない、上記標識のシグナル強度とを比較し、上で説明されるように、結合が50%超、好ましくは60%超、好ましくは70%超、好ましくは80%超、好ましくは90%超低減した場合、化合物がRNAキャップ又はRNAキャップ類似体の結合を阻害したとみなす。
好ましい一実施形態において、上で説明される、PB2のRNAキャップ結合ポケット又はPB2ポリペプチド変異体の結合ポケットと会合する、好ましくはRNAキャップ又はその類似体の結合を阻害する化合物を同定する方法は、ハイスループット設定において行う。好ましい一実施形態では、上記方法を、固定化した本発明によるPB2ポリペプチド断片又はその変異体と、標識RNAキャップ又はその類似体とを使用して、上で説明されるように多ウェルマイクロタイタープレートで実施する。好ましい一実施形態では試験化合物は、合成化合物又は天然化合物のライブラリに由来する。例えば、合成化合物ライブラリは、Maybridge Chemical Co.(Trevillet, Cornwall,UK)、ChemBridge Corporation(SanDiego,CA)又はAldrich(Milwaukee, WI)から市販されている。天然化合物ライブラリは例えば、TimTec LLC(Newark,DE)より利用可能である。代替的に、細菌、真菌、植物及び動物抽出物形態の天然化合物のライブラリを使用することができる。さらに、試験化合物を、個々の化合物又は混合物のいずれかとして、コンビナトリアルケミストリを使用して合成的に作製することができる。RNAキャップ又はその類似体を、ライブラリ化合物の添加の前に、添加と同時に、又は添加の後に添加してもよい。RNAキャップ結合を阻害する化合物の能力を上で説明されるように評価してもよい。
別の実施形態において、同定した化合物のインフルエンザウイルスのライフサイクルに対する阻害効果をin vivo設定で試験してもよい。293Tヒト胚腎臓細胞、Madin−Darbyイヌ腎臓細胞又はトリ胚線維芽細胞等のインフルエンザウイルスに感染しやすい細胞株を、同定した化合物の存在下又は非存在下でインフルエンザウイルスに感染させ得る。好ましい一実施形態では、同定した化合物を、様々な濃度で細胞の培養培地に添加し得る。ウイルスプラーク形成は、インフルエンザウイルスの感染能に関する読出し情報(read out)として使用され、同定した化合物で処理している細胞と処理していない細胞とで比較され得る。
本発明のさらなる一実施形態において、上で説明される方法のいずれかで適用される試験化合物は小分子である。好ましい一実施形態では、上記小分子は、ライブラリ、例えば小分子阻害剤ライブラリに由来する。別の実施形態では、上記試験化合物はペプチド又はタンパク質である。好ましい一実施形態では、上記ペプチド又はタンパク質はペプチド又はタンパク質ライブラリに由来する。
上で説明される、本発明によるPB2ポリペプチド断片又は変異体のRNAキャップ結合ポケットと会合する、及び/又は上記結合ポケットとのRNAキャップ結合を阻害する化合物を演算及びin vitroで同定する方法の別の実施形態において、上記方法は、同定可能な化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、1つ又は複数の薬学的に許容可能な添加物(複数可)及び/又は担体(複数可)と共に処方する工程をさらに含む。別の態様では、本発明は、上述の方法により製造可能な薬学的組成物を提供する。本発明による化合物を単独で投与することができるが、ヒト療法では概して、意図される投与経路及び標準的な薬務に関して選択される、適切な薬学的な添加物、希釈剤又は担体と混合して投与する(以下を参照されたい)。
PB2のRNAキャップ結合ポケット又はPB2変異体の結合ポケットに関する結合パートナーの演算によるモデリング又はスクリーニングの態様において、調合薬として投与される分子に有益であり得る化学的分子部分を対象の分子に導入することが可能であり得る。例えば、分子と標的領域との結合には直接影響し得ないが、例えば薬学的に許容可能な担体における分子の溶解度全体、分子のバイオアベイラビリティ、及び/又は分子の毒性に寄与する化学的分子部分を対象の分子に導入する、又は化学的分子部分を対象の分子から除外することが可能であり得る。対象の分子の薬理を最適化するための検討事項及び方法は、例えば"Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis ofTherapeutics",8th Edition, L. S. Goodman, A. Gilman, T. W.Rall, A.S. Nies, &P. Taylor, Eds., Pergamon Press (1985)、W. L. Jorgensen & E. M. Duffy,Bioorg. Med. Chem. Lett, 10, pp.1155-1158 (2000)に見出され得る。さらに、対象の有機分子の物理的に重要となる記載及び薬学的に関連する特性に関する迅速な予測を提供するのに、コンピュータプログラム「Qik Prop」を使用することができる。新たに合成された化合物の経口吸収を推測するのに、「5の法則(Ruleof Five)」見込み法を使用することができる(C. A. Lipinskiet al., Adv. Drug Deliv. Rev., 23, pp. 3-25(1997))。ファーマコフォア(pharmacophore)選択及び設計に適したプログラムとしては、(i)DISCO(AbbotLaboratories,Abbot Park, IL)、(ii)Catalyst(Bio-CADCorp., Mountain View, CA)及び(iii)Chem DBS−3D(ChemicalDesignLtd., Oxford, UK)が挙げられる。
本発明で考慮される薬学的組成物は、当業者にとって既知の様々な方法で処方され得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、錠剤、ピル、カプセル(軟ゲルカプセルを含む)、カシェ剤、ロゼンジ、腔坐剤、粉末、顆粒若しくは坐剤形態のような固体形態、又はエリキシル、溶液、エマルション若しくは懸濁液形態のような液体形態であり得る。
固体投与形態は、微小結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、グリシン及びデンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカのデンプン)等の添加物、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及び或る特定のケイ酸錯体等の崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアカシア等の造粒結合剤を含有し得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルク等の平滑剤が含まれ得る。類似の型の固体組成物をゼラチンカプセルにおける充填剤として利用してもよい。これに関する好ましい添加物としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖又は高分子量のポリエチレングリコールが挙げられる。
経口投与に適した水性の懸濁液、溶液、エリキシル及びエマルションに関して、化合物を、様々な甘味料又は香料、着色物質又は染料、乳化剤及び/又は懸濁化剤、及び水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリン等の希釈剤、並びにそれらの組合せと組み合わせてもよい。
本発明の薬学的組成物は例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、カルボマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、硬化ヒマシ油、カルナバワックス、パラフィンワックス、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー及びそれらの混合物を含む放出速度調整剤を含有し得る。
本発明の薬学的組成物は、即時分散性又は溶解性の剤形製剤(fast dispersing ordissolving dosage formulations)(FDDF)形態であり、以下の成分を含有し得る:アスパルテーム、アセスルファムカリウム、クエン酸、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ジアスコルビン酸、アクリル酸エチル、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、メタクリル酸メチル、ミントフレバー、ポリエチレングリコール、フュームドシリカ、二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ソルビトール、キシリトール。
坐剤を調製するために、初めに脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物等の低融点ワックスを融解させ、撹拌等により、活性成分をこの中に均一に分散させる。それから融解された均一混合物を手頃な大きさのモールドに入れ、冷却することにより、固体化させる。
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、滅菌水溶液形態で使用することが最良とされ、これには他の物質、例えばこの溶液を血液と等張にするのに十分な塩又はグルコースが含有されていてもよい。必要に応じて、水溶液を好適に緩衝させる必要がある(好ましくは3〜9のpH)。
鼻腔内投与及び吸入による投与に適した薬学的組成物は、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A.TM.)若しくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA.TM.)等のヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素、又は別の適切なガス等の好適な推進剤を使用して、加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザから、乾燥粉末吸入剤又はエアロゾル噴霧剤形態で送達されることが最良とされる。加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザは、例えば溶媒としてエタノールと推進剤との混合物を使用して、活性化合物の溶液又は懸濁液を含有させてもよく、平滑剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンをさらに含有してもよい。
別の実施形態において本発明は、本発明のPB2ポリペプチド断片若しくはPB2ポリペプチド断片変異体、又は本発明の組換え宿主細胞と試験化合物とを接触させる工程を含む、上で説明される方法により同定可能な化合物を提供し、これはm7G、m7GMP、m7GTP、m7GpppG、m7GpppGm、m7GpppA、m7GpppAm、m7GpppC、m7GpppCm、m7GpppU及びm7GpppUmから成る群から選択されるRNAキャップ類似体、及びキャップ結合の小分子阻害剤2−アミノ−7−ベンジル−9−(4−ヒドロキシ−ブチル)−1,9−ジヒドロ-プリン−6−オン(RO0794238、Hooker et al., 2003)及びT−705(Furuta et al., 2005)とは異なり、PB2と結合することができる。好ましい一態様では本発明は、本発明のPB2ポリペプチド断片若しくはその変異体、又は組換え宿主細胞と試験化合物とを接触させる工程を含む、上で説明される方法により同定可能な化合物に関し、これはm7G、m7GMP、m7GTP、m7GpppG、m7GpppGm、m7GpppA、m7GpppAm、m7GpppC、m7GpppCm、m7GpppU及びm7GpppUmから成る群から選択されるRNAキャップ類似体、及びキャップ結合の小分子阻害剤2−アミノ−7−ベンジル−9−(4−ヒドロキシ−ブチル)−1,9−ジヒドロ-プリン−6−オン及びT−705とは異なり、PB2とRNAキャップ又はその類似体との結合を阻害することができる。
別の態様において、本発明は、PB2のRNAキャップ結合ドメインを対象とする抗体を提供する。好ましい一実施形態では、上記抗体は、上で示される、特に配列番号14〜配列番号22により規定されるポリペプチド群から選択されるポリペプチド断片又は断片の変異体のRNAキャップ結合ドメインを認識する。特に、上記抗体は、結合ポケットを規定する、上で示されるアミノ酸を1つ又は複数含むエピトープと特異的に結合する。これに関して、エピトープという用語は、当該技術分野で認識される意味を有し、好ましくは4個〜20個のアミノ酸、好ましくは5個〜18個、6個〜16個、又は7個〜14個のアミノ酸のストレッチを表す。したがって好ましいエピトープは、4個〜20個、5個〜18個、好ましくは6個〜16個、又は7個〜14個のアミノ酸の長さを有し、配列番号1のSer320、Phe323、Phe325、Phe330、Arg332、Ser337、Lys339、Arg355、His357、Glu361、Phe363、Lys376、Phe404、Gln406、Met431及び/又はHis432、又は対応するアミノ酸を1つ又は複数含む。本発明の抗体は、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、又はその一部分であり得る。抗原結合部分は、組換えDNA技法、又は無傷抗体の酵素切断若しくは化学的切断により作製され得る。幾つかの実施形態では、抗原結合部分としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、ヒト化抗体等のキメラ抗体、ダイアボディ、並びにポリペプチドとの特異的な抗原結合をもたらすのに十分な抗体を少なくとも一部分含有するポリペプチドが挙げられる。本発明の抗体を標準的なプロトコルに従って生成する。例えば、ポリクローナル抗体は、当業者に既知の標準的な方法に従って、任意にフロインド完全又は不完全アジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)、又はISCOM(免疫刺激複合体)等のアジュバントと組み合わせて、対象の抗原を用いて、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ又はウマ等の動物に免疫付与することによって生成され得る。PB2又はその断片のRNAキャップ結合ドメインを対象とするポリクローナル抗血清は、免疫付与動物を採血(bleeding)又は屠殺することにより動物から得られる。(i)動物から得られる血清を使用することができ、(ii)免疫グロブリン画分は血清から得ることができ、又は(iii)PB2又はその断片のRNAキャップ結合ドメインに特異的な抗体は血清から精製することができる。モノクローナル抗体を当業者に既知の方法により生成することができる。要するに、免疫付与後、動物を屠殺し、リンパ節及び/又は脾臓のB細胞を当該技術分野で既知の任意の手段により不死化される。細胞を不死化する方法は、細胞を癌遺伝子とトランスフェクトすること、細胞に腫瘍ウイルスを感染させること、不死化細胞に関して選択する条件下で細胞を培養すること、細胞を発癌性化合物又は突然変異化合物に曝露すること(subjecting)、細胞を不死化細胞、例えば骨髄腫細胞と融合させること、並びに腫瘍抑制遺伝子を不活性化させることを含むが、これらに限定されない。不死化細胞は、PB2又はその断片のRNAキャップ結合ドメインを使用してスクリーニングされる。PB2又はその断片のRNAキャップ結合ドメインを対象とする抗体を産生する細胞、例えばハイブリドーマが選択され、クローニングして、さらに堅固な成長、高い抗体産生及び所望の抗体特性を含む所望の特性に関してスクリーニングする。ハイブリドーマを、(i)in vivoでは同系動物で、(ii)免疫系を失った動物、例えばヌードマウスで、又は(iii)in vitroでは細胞培養液で増殖することができる。ハイブリドーマを選択、クローニング及び増殖する方法は当業者に既知である。当業者は、抗体の生成に関する支持のために、"Antibodies:A Laboratory Manual", E. Harlow and D. Lane, Eds.,ColdSpring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1990)(これは参照により本明細書中に援用される)のような標準テキストを参照することができる。
別の態様において、本発明は、マイナスセンス一本鎖RNAウイルスによるウイルス感染により引き起こされる疾患状態を治療、改善又は予防する薬物の製造のための、PB2のRNAキャップ結合ポケット又はPB2ポリペプチド変異体の結合ポケットと結合することができる、及び/又はRNAキャップ又はその類似体と、上記結合ポケット、上で説明される薬学的組成物、又は本発明の抗体との結合を阻害することができる、上で説明される方法により同定可能な化合物の使用に関する。好ましい一実施形態では、上記疾患状態が、セグメントされていないマイナスセンス一本鎖RNAウイルス、すなわちボルナウイルス科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科及びラブドウイルス科を含むモノネガウイルス目によるウイルス感染により引き起こされる。より好ましい一実施形態では、上記疾患状態は、オルトミクソウイルス科(インフルエンザAウイルス属、インフルエンザBウイルス属、インフルエンザCウイルス属、トゴトウイルス属及びイサウイルス属を含む)、アレナウイルス科及びブニヤウイルス科(ハンタウイルス属、ナイロウイルス属、オルトブニヤウイルス属、フレボウイルス属及びトスポウイルス属を含む)を含む、セグメントするマイナスセンス一本鎖RNAウイルスにより引き起こされる。さらに好ましい好ましい一実施形態では、上記疾患状態は、ボルナ病ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、センダイウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、ヒト呼吸器多核体ウイルス、七面鳥鼻気管炎ウイルス、水疱性口内炎インディアナウイルス、ニパーウイルス、ヘンダウイルス(Henda virus)、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、伝染性造血器壊死症ウイルス、トゴトウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、ハンタンウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ラクロスウイルス、好ましくはインフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、トゴトウイルス又はハンタンウイルス、より好ましくはインフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、最も好ましくはインフルエンザAウイルスから成る群から選択されるウイルス種による感染により引き起こされる。
上記疾患状態を治療、改善又は予防するために、本発明の薬物を、動物患者、好ましくは哺乳動物患者、好ましくはヒト患者に、経口、口腔、舌下、鼻腔内、吸入等により肺経路を介して、直腸経路を介して、又は非経口、例えば洞内(intracavernosally)、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、尿道内、胸骨内、脳内、筋肉内、又は皮下に投与することができ、本発明の薬物は融合法又は無針注射法により投与してもよい。
本発明の薬学的組成物は、当業者にとって既知の様々な方法で処方され得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、錠剤、ピル、カプセル(軟ゲルカプセルを含む)、カシェ剤、ロゼンジ、腔坐剤、粉末、顆粒若しくは座剤形態のような固体形態、又はエリキシル、溶液、エマルション若しくは懸濁液形態のような液体形態であり得る。
固体投与形態は、微小結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、グリシン及びデンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカのデンプン)等の添加物、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及び或る特定のケイ酸錯体等の崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアカシア等の造粒結合剤を含有し得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルク等の平滑剤が含まれ得る。類似の型の固体組成物をゼラチンカプセルにおける充填剤として利用してもよい。これに関する好ましい添加物としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖又は高分子量のポリエチレングリコールが挙げられる。
経口投与に適した水性の懸濁液、溶液、エリキシル及びエマルションに関して、化合物を、様々な甘味料又は香料、着色物質又は染料、乳化剤及び/又は懸濁化剤、及び水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリン等の希釈剤、並びにそれらの組合せと組み合わせてもよい。
本発明の薬学的組成物は例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、カルボマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、硬化ヒマシ油、カルナバワックス、パラフィンワックス、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー及びそれらの混合物を含む放出速度調整剤を含有し得る。
本発明の薬学的組成物は、即時分散性又は溶解性の剤形製剤(FDDF)形態であり、以下の成分を含有し得る:アスパルテーム、アセスルファムカリウム、クエン酸、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ジアスコルビン酸、アクリル酸エチル、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、メタクリル酸メチル、ミントフレバー、ポリエチレングリコール、フュームドシリカ、二酸化ケイ素、グリコール酸ナトリウムデンプン、ステアリルフマル酸ナトリウム、ソルビトール、キシリトール。
坐剤を調製するために、初めに脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物等の低融点ワックスを融解させ、撹拌等により、活性成分をこの中に均一に分散させる。それから融解された均一混合物を手頃な大きさのモールドに入れ、冷却することにより、固体化させる。
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、滅菌水溶液形態で使用することが最良とされ、これには他の物質、例えばこの溶液を血液と等張にするのに十分な塩又はグルコースが含有されていてもよい。必要に応じて、水溶液を好適に緩衝させる必要がある(好ましくは3〜9のpH)。
鼻腔内投与及び吸入による投与に適した薬学的組成物は、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A.TM.)若しくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA.TM.)等のヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素、又は別の適切なガス等の好適な推進剤を使用して、加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザから、乾燥粉末吸入剤又はエアロゾル噴霧剤形態で送達されることが最良とされる。加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザは、溶媒としてエタノールと推進剤との混合物を使用して、活性化合物の溶液又は懸濁液を含有してもよく、平滑剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンをさらに含有してもよい。
薬学的調製物は単位投薬形態であるのが好ましい。かかる形態では、調製物を適当な量の活性成分を含有する単位用量にさらに分割する。単位投薬形態は、パッケージングされた調製物、別々の量の調製物を含有するパッケージ、例えばバイアル又はアンプル中に入れられた錠剤、カプセル及び粉末であり得る。また、単位投薬形態自体がカプセル、錠剤、カシェ剤又はロゼンジであってもよく、又は単位投薬形態はパッケージング形態である適当な数のこれらのいずれかであってもよい。
本発明の使用において投与される単位投薬調製物における活性成分の量は、特定の用途及び活性成分の効力に応じて約1mg/m2〜約1000mg/m2、好ましくは約5mg/m2〜約150mg/m2に変更又は調整してもよい。
本発明の医学的使用に利用される化合物を、1日で約0.05mg/kg〜約20mg/kgの初期投薬量で投与する。約0.05mg/kg〜約2mg/kgの範囲の1日用量が好ましく、約0.05mg/kg〜約1mg/kgの範囲の1日用量が最も好ましい。しかしながら投与量は、患者の要件、治療される状態の重症度、及び利用される化合物に応じて変わり得る。特定の状況に対する適切な投与量の決定は実践者の技術内である。概して、治療は化合物の最適用量よりも少ない投与量から始める。その後、或る環境下で最適な効果が達成されるまで、投与量を少しずつ増大させる。所望であれば便宜的に、1日の総投与量を分割し、1日の間で何回かに分けて(portion)投与してもよい。
実施例は、本発明をさらに説明するために設計され、より良い理解に役立つ。実施例は、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるものではない。
実施例1:PB2発現構築物の生成
インフルエンザA/Victoria/3/1975(H3N2)PB2のアミノ酸配列に基づく(de IaLuna et al., 1989)大腸菌コドン最適化PB2遺伝子(Geneart)配列番号25を、指向性エキソヌクレアーゼIII切断のために5’AatII/AscI及び3’NsiI/NotI制限部位対を導入するように修飾したベクターpET9a(Novagen)にクローニングし、C末端ビオチンアクセプタペプチドGLNDIFEAQKIEWHEをコードする3’配列を与える。第1の単向性切断プラスミドライブラリを3’末端から生成し(Tarendeauet al., 2007)、プールして、5’欠失反応に対する基質として使用した。150個〜250個のアミノ酸挿入をコードする線状化プラスミドをアガロースゲルから単離し、再ライゲーションをして、Alexa488ストレプトアビジン(Invitrogen)とコロニーブロット(Tarendeauet al., 2007)とのハイブリダイゼーションを使用する発現スクリーニングのために、RILプラスミド(Stratagene)を含有する大腸菌BL21 AIを形質転換させるのに使用した。クローンをそれらの蛍光シグナルでランク付けし、初めの36個のクローンをNi2+アフィニティクロマトグラフィにより精製可能なタンパク質の発現に関して試験した。13個のクローンを同定し、シーケンシングして、対象の領域で7個の特有の構築物を明らかにした(図1を参照されたい):
ヌクレオチド703〜1488(アミノ酸235〜496)、
ヌクレオチド721〜1449(アミノ酸241〜483)、
ヌクレオチド802〜1449(アミノ酸268〜483)、
ヌクレオチド829〜1440(アミノ酸277〜480)、
ヌクレオチド841〜1446(アミノ酸281〜482)、
ヌクレオチド868〜1449(アミノ酸290〜483)、
ヌクレオチド883〜1446(アミノ酸295〜482)。
これらのPB2ポリヌクレオチド断片を、鋳型として合成遺伝子を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により生成し、NcoI部位とXhoI部位との間の発現ベクターpETM11プラスミド(EMBL)にクローニングした。pETM11発現ベクターが、His6タグ付け融合タンパク質の発現を可能にする。His6タグは、TEVプロテアーゼを使用して融合タンパク質を切断することができる。
実施例2:最小のキャップ結合断片の同定
PB2ポリペプチド断片235〜496、241〜483、268〜483及び290〜483を、実施例1で説明されるプラスミド構築物と、実施例3で説明される一般的な発現及び精製プロトコルとを使用して大腸菌で発現させた。精製PB2断片235〜496は低濃度でしか可溶性ではないが、断片241〜483、268〜483及び290〜483はより可溶性であり、m7GTP sepharoseカラムに特異的に結合することができ、このことがキャップ結合活性を示していることが分かった。これらのアッセイのために、0.2mgのタンパク質を50μLの7−メチル−GTP Sepharose 4B樹脂(GE Healthcare)に入れ、結合させるために4℃で3時間インキュベートした。50mMのTris・HCl(pH8.0)、200mMのNaCl、2mMのDTTを含有する緩衝液で洗浄した後、タンパク質を、1mMのm7GTPを含有する同じ緩衝液と共に遠心分離により溶出し、SDS−PAGEで分析した。これらの実験中、より小さい分解断片をm7GTPと結合させることもでき、これがN末端シークエンシング及び質量分析により残基318〜483であると同定され、さらにこの断片がタンパク質分解的に安定であったことは留意すべきことであった。対応するポリヌクレオチド断片(ヌクレオチド952〜1449)を、実施例1で説明されたようにpETM11にクローニングした。
実施例3:PB2断片の発現及び精製
上記プラスミドを、化学的形質転換を使用して大腸菌細胞に形質転換した。タンパク質は、LB培地中の大腸菌株BL21−CodonPlus−RIL(Stratagene)において発現した。0.2mMのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)との25℃での16時間〜20時間(h hours)のインキュベーションの後、細胞を採取し、溶解緩衝液(50mMのTris・HCl(pH8.0)、300mMのNaCl、5mMの2−メルカプトエタノール)中で再懸濁し、超音波処理した。遠心分離後、透明な溶解物をニッケルアフィニティカラム(Ni2+イオンが充填されたChelating sepharose、GEHealthcare)に直接入れた。Ni−sepharose樹脂を、50mMのTris・HCl(pH8.0)、1MのNaCl、15mMのイミダゾール、5mMの2−メルカプトエタノール緩衝液で、その後50mMのTris・HCl(pH8.0)、200mMのNaCl、50mMのイミダゾール、5mMの2−メルカプトエタノール緩衝液で広範に洗浄した。それから、タンパク質を50mMのTris・HCl(pH8.0)、200mMのNaCl、0.5Mのイミダゾール、5mMの2−メルカプトエタノール緩衝液で溶出した。精製タンパク質をTEVプロテアーゼ切断のために10℃で一晩インキュベートした。50mMのTris・HCl(pH8.0)、200mMのNaCl、15mMのイミダゾール、5mMの2−メルカプトエタノール緩衝液に対する透析の後に、2回目のニッケルアフィニティ工程を行い、Hisタグ標識TEVプロテアーゼを取り除いた。非結合タンパク質を回収し、純度を改善するためのSuperdex75カラム(GEHealthcare)でのゲル濾過のために5mg/ml〜8mg/mlに濃縮した。PB2ポリペプチド断片(アミノ酸318〜483)に関するゲル濾過の結果を図2Aに示す。この断片(アミノ酸318〜483)を最高24mg/mlまで濃縮することができる。タンパク質の純度をSDS PAGE及びクーマシー染色により評価した(図2Bを参照されたい)。典型的な収率は、細菌培養液1リットル当たり120mgの純粋なタンパク質である。
実施例4:PB2とm7GTPとの共結晶化
結晶化試験のために、50mMのTris・HCl(pH8.0)、200mMのNaCl、2mMのジチオスレイトール(DTT)、5mMのm7GTP(Sigma)中、11mg/ml〜15mg/mlのPB2断片318〜483のタンパク質溶液を使用した。自動装置(robot)(Cartesian)を使用して、100μlのタンパク質溶液を0.1μlの異なる沈殿剤溶液と混合することによりシッティングドロップ蒸気拡散法を用いて576個の結晶化条件をスクリーニングした。結晶を2つの異なる条件で同定した。これらの条件は、1μlの沈殿剤溶液と混合した1μlのタンパク質溶液によってハンギングドロップ蒸気拡散法を用いて手動で最適化した。最良の結晶は、0.1Mのクエン酸(pH4.6)、1.6M〜1.8Mのギ酸ナトリウムを含む沈殿剤溶液を用いて得られた。これらの結晶は空間群C2221であり、単位格子の寸法はa=9.2nm、b=9.4nm;c=22.0nm±0.3nmÅであった。小さい結晶の幾つかが、分解能が少なくとも2.4ÅであるX線回折をもたらした。大きい結晶は、単結晶ではないという点で不安定であることを見出した。見出された第2の結晶化条件では、沈殿剤溶液は、7% PEG6000、1MのLiCl、0.1Mのクエン酸(pH5.0)、10mMのTCEP HClを含む。この条件が、少なくとも3.3Åの分解能に対する回析の痕跡を示す、空間群が未確定の薄板状の結晶を与えたが、回折の精度(quality)はかなり低く、これらの結晶は追及しなかった。
実施例5:セレノ−メチオニン標識タンパク質の調製
セレノ−メチオニン化(methionated)タンパク質を、以前に説明されたように(Van Duyne, 1993)、M9最小培地で産生した。完全にセレノ−メチオニン化されたタンパク質が結晶化されなかったので、60mg/lのセレノメチオニンの代わりに50mg/Lのセレノメチオニン及び5mg/Lのメチオニンを使用して、部分的に標識されたタンパク質を産生した。発現、溶解及び精製の条件は未変性のタンパク質と同様のものとした(実施例3)。エレクトロスプレー質量分析は、完全にセレノ−メチオニン化されたタンパク質が、置換される11/11メチオニンに対応する19654ダルトンの分子量を有していたのに対し、部分的に標識されたタンパク質は19578の平均分子量を有していたことを示し(9.4/11、すなわち85%置換)、個々のピークが7個〜11個のセレニウムを有するタンパク質種で得られた。
実施例6:構造決定及び精密化
実施例5で説明されたように、部分的にセレノ−メチオニル化されたタンパク質を使用する単一波長異常分散(SAD)法によって構造を決定した。部分的にセレノ−メチオニル化されたタンパク質は実際には、野生型よりも大きい単結晶を生じた。天然タンパク質のデータを、ESRFでのベースラインBM14上で空間群C2221の小さい結晶(サイズ15×15×50μm3)及び格子寸法a=92.2、b=94.4、c=220.4Åに関して2.4Åの分解能で収集した(図4)。部分的にセレノ−メチオニン標識されたタンパク質結晶を、構造決定のために2.9Åの分解能でID29で、その後構造精密化のためにより大きい結晶において2.3Åの分解能でID14−EH1で測定した。構造をAUTOSHARPを使用するSAD方法により解析した(solved)(Vonrheinet al., 2006)。50/55のセレニウム原子位置を見出した。位相及びマップを、セレニウム位置から確定される非結晶学的な4回対称を利用するRESOLVE(Terwilliger,2000)を用いて改良したが、実際に非対称ユニットで5つの分子が存在することが分かっている(溶媒含量55%)。これらは通常とは異なって配置される。A〜Dで表される、4つの規則的に並んだ分子(平均B因子 約30Å2)は、4回点対称で配置される。5番目の分子は、結晶学的なc方向での五量体の封入を媒介するが、部分的に無秩序である(平均B因子 約51Å2)。位相を天然タンパク質のデータに移した後、ARP/wARP(Perrakis etal., 1999)は、ほとんどの構造を自動的に構築することができた。はっきりした残留電子密度が、各分子と結合したm7GTPで観察された。各分子の大部分で密接なNCSレストレイント(restraints)と、各分子全体としてTLSパラメータとを使用するREFMAC(Murshudov,1997)で精密化を行った。最終R因子(R−free)は、293個の水分子で0.186(0.235)である。MOLPROBITY(Lovell et al.,2003)によれば、構造の精度は、このサーバ出力によって示されるように優れている:
REMARK 40
REMARK 40 MOLPROBITY STRUCTURE VALIDATION
REMARK 40 MOLPROBITY OUTPUT SCORES:
REMARK 40 ALL−ATOM CLASHSCORE:8.40
REMARK 40 BAD ROTAMERS:3.4% 24/708(TARGET 0%〜1%)
REMARK 40 RAMACHANDRAN OUTLIERS:0.0% 0/795(TARGET 0.2%)
REMARK 40 RAMACHANDRAN FAVORED:97.7% 777/795(TARGET 98.0%)
PB2のキャップ結合ドメインはコンパクトに整列された混合α−βフォールドを有し、突出した逆並行型βシートがα1、α2、α3及びα4を含むへリックス束上に封入されたβ1鎖、β2鎖、β5鎖、β6鎖及びβ7鎖を含み、最長のα1ヘリックス及びα3へリックスがおおよそ逆並行に整列する。β2とβ5との連結が、β3鎖とβ4鎖と348ループを含む長いβヘアピンに広がり、これは分子のへリックス側を越える。α2とα3との間で、規則性が低い(poorly ordered)ループが溶媒への420ループの突出を設計した(図4及び図5)。インフルエンザAのPB2キャップ結合ドメインでは、m7Gは、Phe323(リボースに対してより積層されたβ1から)及びPhe404(塩基に対してより積層されたへリックスα1のC末端から)により主に形成される疎水性プラットフォーム上にあるが、いずれも塩基とは正確には並行ではない。これらの2つの芳香族残基は、5つのフェニルアラニン(Phe325、Phe330及びPhe363も含む)の顕著なクラスターの一部である。リガンドの溶媒側で、サンドウィッチが、この役割ではこれまでに見られなかった種類の残基であるHis357(β4のC末端から)によって完成される。重要な酸性残基は、水素がグアニンのN1位置及びN2位置に結合するGlu361であり、またLys376は、O6との相互作用を介して塩基特異的な認識に関与する(図6、図7及び図10)。キャップ結合タンパク質では通常とは異なり(unusually)、いずれのリボースヒドロキシルとも直接的には相互作用しない。三リン酸は塩基に向かって円型に曲がる。α−ホスファートはHis432及びAsn429と相互作用し、γ−ホスファートは塩基性残基His357、Lys339及びArg355と相互作用する。
実施例7:キャップ結合部位の突然変異解析
構造的に観察されたタンパク質−リガンド相互作用がin vitroキャップ結合に重要であることを検証するために、本発明者らは、QuickChangeの部位特異的な突然変異誘発キット(Stratagene)を使用して、7つのm7GTP接触残基(F323、F325、E361、F363、F404、H357、K376)のアラニン突然変異を行った。これらの単一の点突然変異体は、キャップ結合活性の低減を示すことが期待され、この活性は、4℃でのm7GTP−Sepharose樹脂との結合能によって評価した(表4、図12)。野生型PB2に関して、突然変異体を実施例3で説明されたように精製した。突然変異体F363Aは発現が乏しく、おそらくはミスフォールディングのために、大腸菌における可溶性が低かったので、さらなる追跡は行わなかった。突然変異体H357A、E361A、K376A及びF404Aは、可溶性の形態で十分に発現したが、アッセイ条件下ではm7GTP−Sepharoseと結合することはなく、F323Aは弱い結合活性を有していた(図12)。驚くべきことに、突然変異体F325Aは発現が乏しいにもかかわらず、野生型とほとんど同様に樹脂と結合した。本発明者らは、この突然変異体の活性が強い温度依存性であることを示している(表3)。またH357W置換体も作製し、これは期待される塩基との積層の改善を伴い、この突然変異体ドメインは、m7GTP結合の増強を示していた。結果を図12及び表4に示す。
実施例8:表面プラズモン共鳴測定を使用するキャップ結合アフィニティの定量分析
様々な突然変異体の結合アフィニティのより定量的な比較を提供するために、本発明者らは、被分析物として固定されたキャップ結合ドメイン及びm7GTPを用いて表面プラズモン共鳴(SPR)測定を行った。SPR分析を、CM5センサーチップを備えたBiacoreのT100機(Biacore AB, Uppsala, Sweden)で行った。野生型及び突然変異体のPB2キャップ結合ドメインを10mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)中で50μg/mLまで希釈し、標準的なアミンカップリング化学を使用してセンサー表面に固定した。活性化/不活性化センサー表面は参照として役目を果たした。0.47mM〜1mMの範囲のm7GTP、m7GpppG及びGTPの2倍段階希釈液を、30μL/分の流速で固定されたPB2タンパク質及び参照表面に注入した。泳動緩衝液は、150mMのNaCl及び1mMのDTTを含有する10mMのHepes(pH7.4)であった。結合の際の温度の影響を試験するために、実験を5℃、15℃、25℃及び37℃で行った。得られたセンサーグラムを全て、二重参照を用いて処理し、平衡解離定数を、BiacoreのT100 Evaluation Softwareを用いた安定状態のアフィニティ評価によって確定した。これらは、固定化に関連する表面化学及び分子配向が値に影響し得るため、「見掛けの(apparent)」解離定数とも呼ばれる。誤差は、ソフトウェアによって報告されたようなフッティングに関連するものである。タンパク質の様々な固定化による実験の間の変動は25%未満であった(データ図示せず)。25℃で得られた見掛けの平衡解離定数KDの結果(表1)は、m7GTP−Sepharose結合結果と一致する傾向を示し、最も高いアフィニティは、H357W突然変異体であり(KD=24±3μM)、野生型が続き(KD=177±34μM)、E361A及びK376A突然変異体が最も低いアフィニティを有する(KD>1500μM)。
表1:25℃でのSPRにより確定された、m
7GTPとPB2キャップ結合ドメインの異なる点突然変異体との間の相互作用に関する見掛けの平衡解離定数(K
D)
まとめると、上記のデータにより、in vitroでのPB2ドメインによるm7GTPとのこれらの接触残基の機能的重要性が確認される。野生型キャップ結合ドメインとのジヌクレオチドキャップ類似体、m7GpppG及びGTP結合に関するさらなる結果を表2に示す。
表2:キャップ類似体によるキャップを有するRNAの架橋の阻害により測定されたIC50の値(Hooker etal. 2003)と比較した、25℃でのSPRにより確定された、PB2の野生型キャップ結合ドメインと異なるキャップ類似体との間の相互作用に関する見掛けの平衡解離定数(KD)
キャップ結合ドメインとm7GTPとの結合の温度依存性を調べるために、本発明者らは、37℃までの様々な温度で野生型及び選択された突然変異体のドメインに関して、KDのSPR測定を行った(表3)。試験した全てのタンパク質のキャップ結合アフィニティは温度が増大するにつれて有意に減少した。しかしながら、野生型の見掛けのKDが5℃〜37℃で2.7倍増大したのに対し、F325A突然変異体の見掛けのKDは20倍超増大した。また野生型ドメインとは異なり、F325A突然変異体の結合活性は、37℃でのインキュベーション後に不可逆的に失われ(データ図示せず)、これは熱変性によるためと思われる。そのためこの温度感受性は、ドメイン及び三量体の両方で4℃でF325A突然変異体の観察された正常に近いキャップ結合活性と、37℃でのF325A突然変異体ポリメラーゼの機能障害とに関して一貫した理論的解釈を与える(実施例10を参照されたい)。
表3:m7GTPとキャップ結合ドメインの異なる点突然変異体との間の相互作用に関する解離定数(KD)の温度依存性
実施例9:野生型及び突然変異体のポリメラーゼ複合体のキャップ結合活性
キャップ結合部位とインフルエンザRNPの生物活性との関連性を調べるために、本発明者らは、インフルエンザA/Victoria/3/75の全長PB2に同じ突然変異を導入し、得られた三量体ポリメラーゼ又は組換えRNPの活性を試験した。突然変異体はいずれもポリメラーゼ複合体に関して発現された場合にはPB2の蓄積を変えず、また三量体ポリメラーゼ複合体を形成するPB2の能力を変えなかった(表4)。
三量体ポリメラーゼのキャップ結合のために、HEK293T細胞を、インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼのPB1サブユニットをコードするプラスミドpCMVPB1、PB2野生型サブユニットをコードするプラスミドpCMVPB2His又はその突然変異体、及びPAサブユニットをコードするプラスミドpCMVPAと同時トランスフェクトし、細胞抽出物をトランスフェクションの24時間後に調製した。抽出物を、pH7.5で50mMのTris−HCl、100mMのNaCl、5mMのEDTA、1mMのDTT、0.2% NP40、タンパク質阻害剤(Roche、Completeカクテル)を含有する緩衝液中で調製し、4℃で3時間、m7GTP−Sepharose(GEHealthcare)と共にインキュベートした。100容量の同じ緩衝液で洗浄した後、保持タンパク質を、1mMのm7GTPを含有する同じ緩衝液で溶出し、PA特異的抗体を使用するウェスタンブロットにより分析した(図13)。これらの条件下で、野生型ポリメラーゼは、対照のSepharose樹脂上には保持されなかった。突然変異体H357Wが野生型として働く一方で、他の突然変異は、依然として結合していたF325Aを除いて全て結合がなく、このことは単離ドメインに関して得られた結果(the results the results)を反映していた。
実施例10:野生型及び突然変異体の組換えmini−RNPの複製活性及び転写活性
野生型又は突然変異体のポリメラーゼの複製活性を、in vivoで組換え系におけるRNPの蓄積を測定することにより試験した(Ortega et al., 2000;Martin-Benito et al.,2001)。RNP再構築のために、HEK293T細胞を、リン酸カルシウム沈殿プロトコルを使用して、プラスミドpCMVPB1、pCMVPB2His、pCMVPA、pCMVNP及びpHHクローン23と同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、抽出物を調製し、RNPを、説明されるようにNi2+−NTA−アガロース樹脂上でのクロマトグラフィにより精製した(Areaet al., 2004)。ウェスタンブロット法を、PA及びNPに特異的な抗体を使用して実施した。子孫RNPを抽出し、精製して、それらの蓄積を抗PA抗体及び抗NP抗体を使用してモニタリングした。ほとんどの突然変異はRNPの複製活性を実質的に変えなかった(図14及び表4)。突然変異F325A及びK376AだけがRNPの蓄積を一部低減した。
精製された野生型又は突然変異体のRNPの転写活性を、プライマーとしてApG又はβ−グロブリンのmRNAのいずれかを使用してin vitroで試験し、それぞれキャップ非依存性又はキャップ依存性の転写を明らかにした。in vitroでのRNA合成のために、ウェスタンブロットにより確定されるように、等量の精製RNPを、30℃で60分間、50mMのTris−HCl(pH8.0)、2mMのMgCl2、100mMのKCl、1mMのジチオスレイトール、各0.5mMのATP、CTP及びUTP、10μMのα−32P−GTP(0.5μCi/nmol)、10μg/mlのアクチノマイシンD、1U/mlのヒト胎盤RNase阻害剤、及び100μMのApG又は10μg/mlのβ−グロブリンのmRNAのいずれかを含有する、20μlの反応混合物中でインキュベートした。合成RNAをTCA沈殿し、ドットブロット機器における濾過により回収した。取り込みをphosphorimagerで定量化した。ほとんどの突然変異体RNPはApGで初回刺激した(primed)場合、完全に活性であった(図15及び表4)。突然変異H357A及びF404Aは、野生型よりも転写効率的にRNPをもたらし、突然変異体F325Aだけが強い欠損を示した。
これに対して、β−グロブリンmRNA依存性転写が、それぞれ完全に及び部分的に活性であった突然変異H357W及びH357Aを除くほとんどの突然変異体で大きな影響を与えた(図16及び表4)。β−グロブリン初回刺激転写活性とApG初回刺激転写活性との比(図17及び表4)は、H357Wを除く全ての突然変異体が、転写のためのプライマーとしてβ−グロブリンのmRNAを使用するその能力に強く影響したことを示している。
キャップ結合活性を低減するように設計された突然変異の1つを除く全てが、タンパク質ドメイン及び突然変異体ポリメラーゼ複合体の両方としてm7GTP−Sepharoseとの相互作用を破壊した(表4、図12及び図13)。例外であるF325Aは、ドメインに対して弱く発現し、37℃でポリメラーゼ又はRNPレベルでほとんどの機能的アッセイにおいて大きな影響を与えた(表4)。しかしながら、F325Aは、4℃で適度なキャップ結合アフィニティを保持しており(図12及び図13)、これは温度感受性表現型の可能性を示唆していた。
表4:PB2のキャップ結合部位突然変異体の生化学的及び生物学的活性の概要
実施例11:キャップ依存性転写は、424ループの完全性を必要とする
本発明者らは、その配列がインフルエンザAとインフルエンザBとの間で比較的十分に保存される(図9)、目立って露出された420ループに注目した(図5及び図6)。このループの考え得る機能を調べるために、本発明者らは、Val421〜Gln426の残基を3つのグリシンで置換することによりこのループを短縮した(突然変異体ΔVQ)。この突然変異を保有する単離キャップ結合ドメインは、m7GTP−Sepharose結合活性(図12)及び見掛けのKD(データ図示せず)に関して野生型として働いた。三量体ポリメラーゼ及び組換えRNPに関して、この突然変異体は、程度は低減したが、キャップ類似体樹脂との結合能を保持し、野生型レベルの複製及びApG初回刺激転写活性を生じた(図14及び図15)。これに対して、突然変異体は、in vitroでβ−グロブリン依存性の転写を行うことはできなかった(図16、図17及び表4)。したがってΔVQ突然変異体はキャップ依存性転写を欠いているが、キャップ結合は欠いていない。本発明者らは、このループがPB1サブユニットの活性を調節するのにアロステリックな役割を果たし得ると推測している。
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