(実施例1)
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、インライン方式(4ドラム系)のカラー画像形成装置の構成図である。画像形成装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部1aと、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部1bと、シアン色の画像を形成する画像形成部1cと、ブラック色の画像を形成する画像形成部1dの4つの画像形成部(画像形成ユニット)を備えている。これらの4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されている。
各画像形成部1a、1b、1c、1dには、それぞれ像担持体である感光ドラム2a、2b、2c、2dが配置されている。感光ドラム2a、2b、2c、2dは、本実施例では負帯電の有機感光体でアルミニウム等のドラム基体(不図示)上に感光層(不図示)を有しており、駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで回転駆動される。
各感光ドラム2a、2b、2c、2dの周囲には、帯電部材である帯電ローラ3a、3b、3c、3d、現像装置4a、4b、4c、4dがそれぞれ配置されている。さらに、各感光ドラム2a、2b、2c、2dの周囲には、ドラムクリーニング装置6a、6b、6c、6dがそれぞれ設置されている。さらに、各感光ドラム2a、2b、2c、2dの上方には、露光装置7a、7b、7c、7dがそれぞれ設置されている。各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロートナー、シアントナー、マゼンタトナー、ブラックトナーが収納されている。
各画像形成部の対向する位置に、中間転写体であって、回転可能な無端状の中間転写ベルト8が設置されている。中間転写ベルト8は、駆動ローラ11、2次転写対向ローラ12、テンションローラ13によって張架されている(以上の3本のローラを、「張架部材」とする。)モータ(不図示)が接続された駆動ローラ11の駆動によって、中間転写ベルト8は、矢印方向(反時計方向)に回転(移動)される。以下、中間転写ベルト8の回転方向を中間転写ベルト8の周方向とする。駆動ローラ11は、中間転写ベルト8を駆動するために表層に高摩擦のゴム層を設け、ゴム層を体積抵抗率が105Ωcm以下の導電性を有する。2次転写対向ローラ12は、中間転写ベルト8を介して2次転写ローラ15と当接して2次転写部を形成している。2次転写対向ローラ12は、表層にゴム層を設け、ゴム層を体積抵抗率が105Ωcm以下の導電性とした。テンションローラ13は、金属ローラからなり、総圧約60Nの張力を中間転写ベルト8に付与し、中間転写ベルト8に従動して回転する。
駆動ローラ11、2次転写対向ローラ12、テンションローラ13は、各々同じ抵抗値の電気的な抵抗部材を介して接地している。本実施例では、抵抗部材の抵抗値は1GΩ、100MΩ、10MΩと3種類を使用している。駆動ローラ11、2次転写対向ローラ12の各ゴム層の抵抗は、1GΩ、100MΩ、10MΩに比べて十分小さいため、電気的影響を無視することができる。
2次転写ローラ15としては、体積抵抗率が107〜109Ωcm、ゴム硬度が30°(アスカーC硬度計)の弾性ローラを用いた。又、2次転写ローラ15は、中間転写ベルト8を介して2次転写対向ローラ12に対し、総圧約39.2Nで押圧される。又、2次転写ローラ15は、中間転写ベルト8の回転に伴い、従動して回転する。更に、2次転写ローラ15には、電源部である高圧電源19から、−2.0〜7.0kVの電圧の印加が可能となっている。後述するが、この2次転写ローラ15は、中間転写ベルト8の周方向に電流を供給するための電流供給部材を兼ねている。
中間転写ベルト8の外側には、中間転写ベルト8表面に残った転写残トナーを除去して回収するベルトクリーニング装置75が設置されている。また、中間転写ベルト8の回転方向において、2次転写対向ローラ12と2次転写ローラ15とが当接する2次転写部の下流側には、定着ローラ17aと加圧ローラ17bを有する定着装置17が設置されている。
次に、画像形成動作について説明する。
コントローラから画像形成動作を開始するための開始信号が発せられると、カセット(不図示)から転写材(記録媒体)が一枚ずつ送り出され、レジストローラ(不図示)まで搬送される。その時、レジストローラ(不図示)は停止されており、転写材の先端は2次転写部の直前で待機している。一方、各画像形成部1a、1b、1c、1dでは、開始信号が発せられると、各感光ドラム2a、2b、2c、2dが、所定のプロセススピードで回転し始める。各感光ドラム2a、2b、2c、2dは、それぞれ帯電ローラ3a、3b、3c、3dによって一様に、本実施例では負極性に帯電される。各帯電ローラには、負極性の電圧を印加する帯電用の電圧電源が接続されている。そして、露光装置7a、7b、7c、7dは、レーザ光を各感光ドラム2a、2b、2c、2d上にそれぞれ走査露光して静電潜像を形成する。
そして、先ず感光ドラム2a上に形成された静電潜像に、感光ドラム2aの帯電極性(負極性)と同極性である現像電圧が印加された現像装置4aによりイエローのトナーを付着させて、トナー像として可視像化する。感光ドラムの電位は、帯電ローラにより帯電された後の電位が―500V、露光装置により露光された後の電位(画像部)が―100Vとなるよう帯電量、露光量を調整し、現像バイアスを―300Vとしている。また、プロセススピードを250mm/secとする。搬送方向(回転方向)と垂直方向の長さである画像形成幅は215mm、トナー帯電量は―40μC/g、画像ベタ部の感光ドラム上のトナー量は0.4mg/cm2となるよう設定している。
このイエローのトナー像は、回転している中間転写ベルト8上に1次転写される。ここで、各感光ドラムに対向して、各感光ドラムからトナー像が転写される部を、1時転写部とする。この1次転写部は、複数の像担持体に対応する形で中間転写ベルト上に複数ある。本実施例におけるイエローのトナー像を中間転写ベルト8上に1次転写するための構成については、後述する。尚、図1では中間転写ベルト8を介して、各画像形成部の対向する位置に対向部材5a、5b、5c、5dを有する。対向部材5a、5b、5c、5dによってニップを形成することで、ニップ幅を広く安定させることが可能である。本実施例では対向部材5a、5b、5c、5dは、1次転写専用の電圧電源に接続される被印加部材ではなく、電気的にフロートになるようにしている。
イエローのトナー像が転写された領域は、中間転写ベルト8の回転によって画像形成部1b側に移動する。そして、画像形成部1bにおいても、同様にして感光ドラム2bに形成されたマゼンタのトナー像が、中間転写ベルト8上のイエローのトナー像上に重ね合わせて転写される。以下、同様にして中間転写ベルト8上に重畳転写されたイエロー、マゼンタのトナー像上に、画像形成部1c、1dの感光ドラム2c、2dで形成されたシアン、ブラックのトナー像を、順次重ね合わせてフルカラーのトナー像を中間転写ベルト8上に形成する。
そして、中間転写ベルト8上のフルカラーのトナー像先端が2次転写部に移動されるタイミングに合わせて、レジストローラ(不図示)により転写材をこの2次転写部に搬送する。中間転写ベルト8上のフルカラーのトナー像が、2次転写電圧(トナーと逆極性(正極性)の電圧)が印加された2次転写ローラ15により転写材に一括して2次転写される。フルカラーのトナー像が形成された転写材は定着装置17に搬送される。定着ローラ17aと加圧ローラ17bによって形成される定着ニップ部で、フルカラーのトナー像は加熱加圧され、転写材P表面に熱定着された後に外部に排出される。
本実施例は、各感光ドラム2a、2b、2c、2dから中間転写ベルト8にトナー像を転写する1次転写を、図4で示す1次転写ローラ55a、55b、55c、55dに電圧を印加して行う構成を採用せずに実行することを特徴とする。以下に、本実施例の特徴を説明するために、中間転写ベルト8の体積抵抗率、表面抵抗率、周方向抵抗について説明する。尚、周方向抵抗の定義と測定方法については後述する。
[本実施例で使用される中間転写ベルト8の体積抵抗率、表面抵抗率]
本実施例の中間転写ベルト8は、厚み100μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂にカーボンを分散させて電気抵抗を調整したものを基層としている。尚、使用される樹脂は、ポリイミド(PI)、PVdF、ナイロン、PET、PBT、ポリカーボネート、PEEK、PEN等でもよい。さらに、中間転写ベルト8は多層構成である。具体的には基層の外面には、厚み0.5〜3μmで高抵抗のアクリル樹脂の表層を設けている。表層の高抵抗層は、2次転写部の長手方向で通紙域と非通紙領域の電流差を少なくして小サイズ紙の2次転写性が良化する効果を得るためである。
次にベルトの製造方法について説明する。本実施例では、インフレーション成形法による製造方法を用いている。基材となるPPSと、導電体粉であるカーボンブラックなどの配合成分を二軸混練機により溶融混練する。得られた混練物を環状ダイスによって押出し成形することによりベルトを製造している。
表面コート層は、成形したエンドレスベルトの表面に紫外線硬化樹脂をスプレーコーティングし、乾燥後、紫外線照射により硬化させて形成している。コート層は厚すぎると、割れやすくなるため0.5〜3μmの範囲となるよう塗布量を調整している。
本実施例では、導電体粉としてカーボンブラックを用いている。中間転写ベルト8の電気抵抗値を調節するために混合する添加剤は特に制限されるものではない。例えば、抵抗を調整する導電性フィラーとしてはカーボンブラックや各種の導電性金属酸化物等がある。また、非フィラー系抵抗調整剤としては各種金属塩やグリコール類等の低分子量のイオン導電材やエーテル結合や水酸基等を分子内に含んだ帯電防止樹脂または電子導電性を示す有機高分子化合物等である。
添加するカーボン量を増やすとベルトは低抵抗化するが、増やしすぎるとベルト自体の強度が不足し、割れやすくなってくる。本実施例では、ベルト強度が画像形成装置に使用できる範囲内に収まる範囲内で、ベルトを低抵抗化している。本実施例の中間転写ベルトのヤング率は3000MPa程度である。ヤング率E測定は、JIS−K7127の引張弾性率測定方法に準拠し、測定試料の厚みは100μmとした。
表1に、基体に対するカーボン量の相対比率を変更したベルトを示す。
表1には、添加したカーボン量と表層コート層の有無を示している。例えば、ベルトBはベルトAに対してカーボン量が1.5倍、ベルトCはベルトAに対してカーボン量が2倍であることを示している。また、ベルトA、ベルトB、ベルトCには表層を設けており、ベルトD、ベルトEは単層のベルトである。ベルトBとベルトDのカーボン量の相対比率は同じで、ベルトCとベルトEのカーボン量の相対比率も同じである。
また比較用のベルトとしてカーボン量の相対比率を変えて、抵抗調整したポリイミドの比較例ベルトを製法した。比較例ベルトは、カーボン量の相対比率が0.5であり、体積抵抗率も1010〜1011Ωcmである。この比較例ベルトは、中間転写ベルトに採用されるベルトとしては一般的な抵抗値を有するベルトである。
以下に、比較例ベルトと、ベルトA〜Eの体積抵抗率、表面抵抗率の測定結果を示す。
まず、前述の比較例ベルトおよびベルトA〜Eに対して、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計ハイレスタUP(MCP−HT450)を用いて測定した。測定した体積抵抗率、表面抵抗率(ベルトの外側表面)を表2に示す。測定方法は、JIS−K6911に準拠し、導電性ゴムを電極とすることで電極とベルトの表面の良好な接触性を得た上で測定した。測定条件は、印加時間を30秒間で、印加電圧を10V、100Vとしている。
比較例ベルトは、印加電圧は100Vを印加した場合に、体積抵抗率が1.0×1010Ωcm、表面抵抗率が1.0×1010Ω/□である。しかしながら、比較例ベルトは印加電圧を10Vにすると流れる電流が小さすぎて体積抵抗率を測定できず、「over」と表示される。
一方、ベルトB、C、Dは100V印加では、ベルトの抵抗が低いため流れる電流値が大きすぎて、体積抵抗率の測定不能を表すunderが表示される。ベルトBは、100V印加で表面抵抗率は2.0×108Ω/□であったが、ベルトC、Dは、100V印加した場合は、underと表示された。
表2中で、ベルトAの印加電圧10Vの各体積抵抗率、表面抵抗率は測定不能である。また、100Vを印加した場合のベルトAと比較例ベルトの表面抵抗率を比較すると、ベルトAの方が高い。これはコート層の影響によるもので、高抵抗の表層コートを有するベルトAのほうが、表層コートを有していない比較例ベルトより抵抗が高いことが分かる。
また、ベルトBとベルトD、ベルトCとベルトEを比較することで、コート層があることで、抵抗値が高くなっていることがわかる。また、ベルトBとベルトC、ベルトDとベルトEを比較することで、カーボン量を増やすと、抵抗値が低くなっていることがわかる。ベルトEでは抵抗が低すぎて、全ての項目が測定不能となっている。
本実施例では、表2でunderと表示される範囲の中間転写ベルトを使用する必要がある。そこで、上記体積抵抗率、表面抵抗率以外で規定される中間転写ベルトの抵抗を測定した。その別の規定による中間転写ベルト8の抵抗が、上述の中間転写ベルトの周方向の電気抵抗である。
[中間転写ベルトの周方向抵抗の求め方]
本実施例では、低抵抗化したベルトの抵抗値を図2で示す方法で測定している。図2(a)では、高圧電源19から外面ローラ15Mに一定電圧を印加した時に、画像形成部1dの感光ドラム2dMに繋いだ電流計へ流れる電流を検知する。この検知した電流値から、外面ローラ15Mが接触する位置から感光ドラム2dMが接触する位置の間の中間転写ベルト8の電気抵抗を求める方法を用いている。即ち、この方法によって中間転写ベルト8の周方向(回転方向)に流れる電流を測定することで、ベルトの抵抗を算出している。このとき中間転写ベルト以外の抵抗の影響を無くすため、外面ローラ15M、感光ドラム2dMは金属のみからなるものを用いる。図中では、金属ローラであることを示すために符号にM(Metal)を付加している。本実施例では、外面ローラ15Mの当接部−感光ドラム2dM間の距離は中間転写ベルト上面側が370mm、中間転写ベルト下面側が420mmである。
以上の測定方法で、印加電圧を変更してベルトA〜Eを測定した結果が図3(a)である。この測定方法では中間転写ベルトの回転方向である周方向の抵抗を測定している。よって、本実施例では、この測定方法で測定した中間転写ベルトの抵抗を周方向抵抗[Ω]と称している。
全てのベルトで印加電圧を上げていくと周方向抵抗が少しずつ低下していく傾向があるが、これは樹脂にカーボンを分散したベルトの特徴である。
尚、図2(b)は図2(a)に対して、電流計の位置のみを変えただけである。この時の抵抗測定結果は、図3とほぼ同じ結果であり、本実施例の測定方法は、電流計の位置によって変動しない。尚、図2では金属ローラをベルトの外面に接触させて中間転写ベルトの周方向の抵抗を測定したが、金属ローラをベルトの内面に接触させる構成であってもよい。この場合は、中間転写ベルト8を構成する基層の周方向の抵抗を測定することが可能である。
ベルトA〜Eでは、図2で示す方法で周方向抵抗測定できるが、比較例ベルトでは周方向抵抗測定できなかった。この理由は、比較例ベルトは、図4で示すような各1次転写ローラ55a、55b、55c、55dに夫々電圧電源が接続された構成の画像形成装置で使用されるベルトであるためである。
図4の構成の画像形成装置では、隣り合う電圧電源が中間転写ベルトを介してお互いに流れ込む電流によって影響を受けないように(干渉しないように)、中間転写ベルトの体積抵抗、表面抵抗は高く設計されている。比較例ベルトは、各1次転写ローラ55a、55b、55c、55に専用の電圧電源9a〜9dから電圧を印加しても各1次転写部間で干渉しない程度の抵抗を持つベルトであり、周方向に電流が流れにくい性能を持つベルトとして設計されている。比較例ベルトのようなベルトを高抵抗ベルト、ベルトA〜Eのような周方向に電流が流れるベルトを、低抵抗のベルトである導電性ベルトと定義する。
図3(b)は、図2(a)の測定方法で測定した電流をそのままプロットしたものである。前述の図3(a)の縦軸(抵抗[Ω])は、図3(b)の測定された電流値を印加電圧で割ることで換算した値である。
図3(b)に示すように、比較例ベルトでは2000V印加しても周方向に電流は流れなかった。しかしながら、図3(b)に示すように、ベルトA〜Eでは、500v以下で50μA以上流れていることがわかる。本実施例で、中間転写ベルトとして使用するベルトは、上記周方向抵抗で104〜108Ωである。
次に、上記周方向抵抗が104〜108Ωである中間転写ベルト8のベルト表面電位について説明する。図5(a)にベルト表面電位の測定方法を示している。図中では4つの表面電位計で、4箇所の電位測定をしている。尚、図中の5dM、5aMは測定用の金属ローラである。
表面電位計37aおよび測定プローブ38aは画像形成部1aの1次転写ローラ5aM(金属ローラ)の電位を測定している。測定器はトレック・ジャパン株式会社製表面電位計MODEL344を使用した。金属ローラは中間転写ベルト内面と同電位となるため、本方法で中間転写ベルト内面電位を測定することができる。同じく、表面電位計37dおよび測定プローブ38dは画像形成部1dの1次転写ローラ5dM(金属ローラ)の電位により中間転写ベルト内面の電位を測定している。
また、表面電位計37eおよび測定プローブ38eは駆動ローラ11Mを対向にして中間転写ベルト外面電位を測定しており、表面電位計37fおよび測定プローブ38fはテンションローラ13を対向にして中間転写ベルト外面電位を測定している。また、駆動ローラ11M、2次転写対向ローラ12、テンションローラ13には各々電気的な抵抗部材であるRe、Rf、Rgを接続している。
本測定方法で中間転写ベルトの電位を測定したところ、測定箇所による差はほぼ無く、ベルト電位は中間転写ベルト内でほぼ同電位であることがわかった。つまり本実施例で用いたベルトは、ある程度抵抗値を持つものの、導電性を有するベルトと考えて差し支えない。
図6に中間転写ベルト電位の測定結果を示す。図6(a)はRe=Rf=Rg=1GΩの抵抗素子を用いた場合の結果である。横軸は転写用の電圧電源19に印加した電圧、縦軸は中間転写ベルトの電位であり、ベルトA〜Eでの結果を示している。
また同様に、図6(b)はRe=Rf=Rg=100MΩ、図6(c)はRe=Rf=Rg=10MΩの場合の結果を示している。
どのベルトも印加電圧を上げていくと、ベルト電位も上昇する。また、抵抗値を1GΩ、100MΩ、10MΩと下げていくと、ベルト電位は下降する。ここではRe、Rf、Rgの抵抗値を全て同じにしているが、どれか1つの抵抗値を下げると、その抵抗に従ってベルト電位が下がることが分かっている。
また、比較例ベルトのように周方向に電流がほぼ流れない抵抗値の中間転写ベルトでは、上述のような方法でベルト電位を測定することはできない。図4で示すような各1次転写ローラに専用の転写電源9により電圧を印加する構成では、電位測定プローブを配置することができない。またベルト周方向の位置で電位が異なるため、張架ローラ(張架部材)を対向にして電位測定プローブを配置して測定しても意味が無いからである。次に、図7に基づき本実施例の構成で、感光ドラムから中間転写ベルトにトナー像を転写することができる理由を説明する。
図7(a)は、1次転写部の電位関係を説明した図である。感光ドラムの電位は、トナー部(画像部)で―100V、中間転写ベルトの表面電位として+200Vの例を示している。感光ドラム上に現像された帯電量qをもつトナーは、感光ドラム電位と中間転写ベルト電位とにより形成された電界Eにより、中間転写ベルト方向の力Fを受けて1次転写される。
次に、図7(b)は多重転写を説明した図である。多重転写とは、1度中間転写ベルト上に1次転写されたトナーの上に、さらに他色のトナーを重ねて1次転写することである。図7(b)では、トナーはマイナスに帯電されており、この1度転写されたトナーによりトナー表面の電位が+150Vとなっている例を示している。この場合、感光ドラム上のトナーは、感光ドラム電位とトナー表面電位とにより形成された電界E’により、中間転写ベルト方向の力F’を受けて1次転写される。
図7(c)は、多重転写が終了したことを示している。
このように、トナーを1次転写するにはトナーの帯電量と、感光ドラムと中間転写ベルトの電位差が関係しており、1次転写性を確保するには中間転写ベルト電位が一定以上必要であることがわかる。
本実施例の前述の条件で、感光ドラム上に現像されたトナーを1次転写するのに必要な中間転写ベルト電位を検討すると、200V以上必要であることがわかった。
図7(d)は、横軸に中間転写ベルト電位、縦軸に転写効率をプロットしたグラフである。転写効率とは、感光ドラム上に現像されたトナーが何%中間転写ベルト上に転写されたかを示す転写性の指標であり、通常95%以上あれば問題無く転写できていると判断する。図は中間転写ベルト電位200V以上で98%以上の良好な転写をしていることを示している。
このとき、各画像形成部1a、1b、1c、1dでの感光ドラムと中間転写ベルトの電位差は全て同じである。つまり、感光ドラム電位―100Vと中間転写ベルト電位+200Vの電位差300Vが、各画像形成部1a、1b、1c、1dの1次転写部に形成されている。この電位差は、上記トナー3色分(単色ベタを100%として300%分)の多重転写に必要な電位差であり、従来の1次転写構成で各1次転写ローラに各々1次転写電圧を印加した場合とほぼ同等である。通常の画像形成装置は4色備えていても400%の画像形成することは無く、最大トナー量として、210〜280%程度で十分なフルカラー画像形成を行うことができている。
よって、本実施例では、中間転写ベルトの表面電位が所定電位になるように中間転写ベルトの周方向に電流を流すことで、1次転写を可能としている。本実施例では、2次転写部材である2次転写ローラ15を、中間転写ベルト8の周方向に電流を供給するための転写部材(電流供給部材)として使用している。転写部材に電圧を印加する電圧電源19は、1次転写と2次転写を行うための共通の電源部である。
2次転写は、中間転写ベルト8上に1次転写されたトナーを、1次転写と同様にクーロン力によって転写材上へ移動させることである。本実施例の条件で、転写材として上質紙(坪量75g/m2)を用い、2次転写するのに必要な2次転写電圧は2kV以上である。
図8(a)(b)(c)は、図6の中間転写ベルト電位に1次転写と2次転写の成立の条件を付加したものである。図8(a)は抵抗部材に1GΩ、図8(b)は抵抗部材に100MΩ、図8(c)は抵抗部材に10MΩの抵抗素子を使用した場合の結果を示す。図8の点線Aは、1次転写するのに必要な中間転写ベルト電位のラインである。図8のBは、2次転写設定範囲を示す。図8(a)、(b)のように、1GΩ、100MΩの場合は、一定以上の2次転写電圧を印加することで、1次転写、2次転写がOKとなっている。図8(c)のように、10MΩの場合は、より多くの2次転写電圧が必要となることがわかる。10MΩでも印加電圧を上げれば、2次転写OKとなるが、実際は張架ローラに電流を流しているので、より大容量の電源が必要となってしまう。また、2次転写部に転写材が有る場合は、無い場合に比べて、中間転写ベルトの表面電位が下がる傾向にある。よって、2次転写部に転写材がある場合に合わせて印加電圧の大きさを決定すれば、中間転写ベルト8の表面電位を1次転写が可能な電位(ここでは、200V以上)にすることが可能である。
また、1次転写部と2次転写部が十分離れている場合、必要であれば1次転写時は1次転写に最適な電圧を転写部材である2次転写ローラ15に印加する。1次転写が終了し2次転写のタイミングになったら2次転写に最適な電圧に切り替えることも可能である。
本実施例の画像形成装置は、中間転写ベルト8が感光ドラム2a、2b、2c、2dと当接および離間が可能な構成となっており、モードに応じて切換え可能である。像担持体全てが中間転写ベルトと接触する第1のモードと、第1のモードより中間転写ベルトに接触する像担持体の数が少ない第2のモードを、入力された画像信号に応じて切り替えられるようになっている。本実施例では、第1のモードで4色全て転写されるカラーの画像形成モード(カラーモード)を実行し、第2のモードで、1色のみ転写される画像形成モード(モノモード)を実行している。図9にて、中間転写ベルト8と各感光ドラム2の当接及び離間状態を変更するための機構を説明する。本実施例では、各画像形成部を中間転写ベルト8に対して当接及び離間させる構成であり、具体的には、切換え部材である押し上げコロ41a、41b、41c、41dを有する。押し上げコロ41a、41b、41c、41dは、偏芯した状態で両端側の離間カム軸受(不図示)によって回動可能に支持される。離間カム軸受(不図示)の回動によって押し上げコロ41a、41b、41cが昇降可能に支持されており、又、離間カム軸受の回動によって押し上げコロ41dが昇降可能に支持されている。即ち、各画像形成ユニットは、離間カム軸受けが半回転するごとに、昇状態および降状態になる。本実施例においては、押し上げコロ41a、41b、41c、41dはそれぞれ画像形成ユニット2a、2b、2c、2dと接続して設置されている。よって、図9(b)、(c)に示すように、画像形成部2a、2b、2cと画像形成部2dは独立して中間転写ベルトに当接離間させることが可能である。なお、離間カム軸受けの回転制御に関しては、欠歯ギアとソレノイドの構成や、ステッピングモータによる回転角度制御や、電磁クラッチなどの駆動制御手段を用いても同等の機能を実現することができる。
本実施例の画像形成装置は、図9(a)に示す中間転写ベルトと全ての画像形成部が接触する状態でカラーモードを実行し、図9(c)に示す中間転写ベルトと画像形成部1dのみが接触する状態で画像形成を行うモノモードを実行する。一次転写部におけるベルト表面電位は転写性能に大きく影響してしまうので、不適正な転写条件の場合、転写不足や転写部放電による再帯電、さらにトナー像を乱す等の不具合を生じることになる。従って、モードに関わらず安定した画像出力を行う為には、適正な転写電界の状態を維持する必要がある。
図10は、感光体ドラムを1個だけ当接させたモノモード状態で全白画像形成動作を行った時の中間転写ベルト8電位の測定結果を示すグラフ図である。図中のAは、転写材が2次転写部を通過中の期間を示す。この測定は2次転写部材19に+1.0KVの転写電圧を印加した場合であり、中間転写ベルト8電位の測定方法は、図5に示す通りである。
図10において、2次転写部に記録材Pが存在しないときの中間転写ベルト8の電位は270Vであるが、2次転写部に記録材Pが存在する、即ち2次転写を行っているときの中間転写ベルト8の電位は250Vと10%程度低下している。これは、電圧電源19から2次転写ローラ15に流れ込む電流が、転写材Pにも流れ込んで減少する為、中間転写ベルト8の電位が電圧降下することによる。しかしながら、実際の画像形成時には、中間転写ベルトの表面電位の低下が10%程度に抑えられれば、画像品位にはほとんど影響しない事が判っている。
図11(a)、(b)は、2次転写ローラに印加する電圧を+1.0〜3.0KV迄変化させた時の中間転写ベルト表面電位を測定した結果を示す。図11(a)は感光体ドラムを1個だけ当接させたモノモード時であり、11(b)は感光体ドラムを3個当接させたカラーモード時での測定結果である。 図11に示すように、導電性ベルトにおいては、2次転写部材に同一の電圧を印加した場合でも、当接する感光体ドラムの個数により対向部での表面電位が異なる。
図11(a)に示すように、2次転写部材に電圧を+1.0KVの転写電圧を印加した場合、1次転写部に+270Vの電位が発生し、一次転写部で転写が可能となる。
一方、図11(b)に、感光体ドラムの当接個数を3個にした場合における2次転写部材に電圧を+1.0〜3.0KV迄印加した場合の、中間転写ベルト電位の測定結果を示す。図11(b)に示すように、2次転写部材に電圧を+1.0KVの電圧を印加した場合、1次転写部に+170Vの電位が発生しており、これは、感光体ドラムの当接が1本の場合よりも40%程度弱い転写電界となってしまっている。
この原因については、以下のように考えられている。本発明の実施例で用いられた導電性ベルトは、従来用いられる高抵抗ベルトに比べて抵抗が低い為に、電流供給部材となる2次転写部材への電圧印加によりベルト周方向には略等電位となっている。この為、当接している感光体ドラムと中間転写ベルトの間の電位差は略同等となり、各感光体ドラムへ流れ込むこと一次転写電流も略同等となる。従って、複数の感光体ドラムが中間転写ベルトに当接している場合には、1個の感光体が当接している場合に比べて電流が分割されるので、各感光体ドラムに流れ込む電流量が少なくなる。この結果、一次転写部の電位が減少し、転写部電界が弱くなってトナーを感光体ドラムから中間転写ベルトに移動させる力が減少してしまうので転写性が低下する。
この為、本実施例の導電性ベルトを使用する場合には、ベルトに当接する感光体ドラムの個数に応じて電流供給部材への印加電圧を変更する。
例えば、感光体ドラムが1本だけ当接した条件、即ちモノモードでの一次転写条件が、2次転写部材に+1.0KV印加した条件が最適値(転写効率が最も高い条件)であった場合、中間転写ベルト表面電位は図11(b)に示すように+300Vとなっている。そこで感光体ドラムが3つ中間転写ベルトに当接した条件では、図11(b)の結果から中間転写ベルト表面電位が+270Vとなるように、2次転写部材への印加バイアスを+1.7KVに設定する。この設定により全ての画像形成部1a、1b、1cの一次転写部において適正な一次転写条件を維持することができる。
このような原理により本実施例のような中間転写ベルトを用いた場合ベルトに当接する感光体ドラムの個数に応じて電流供給部材に流す電流量を変えることで、どのような画像形成モードにおいても安定した転写条件で一次転写を行うことが出来るようになる。即ち、電圧電源19は、第1のモードを実行する場合に電流供給部材15に印加する電圧よりも、同極性で絶対値が大きな電圧を、第2のモードを実行する場合に電流供給部材15に印加する。
第2のモードは、図9(c)のように中間転写ベルトと感光ドラムを一つのみ接触させる以外に、複数の感光ドラムを中間転写ベルトと接触させてもよい。第2のモードは、第1のモードに対して、中間転写ベルト8に接触する像担持体の数が少なければよい。
以上説明した実施例1は、下記の構成に変更することが可能である。中間転写ベルト8を張架する張架ローラを、二本にして本体をさらに小型化することも可能である。さらに、中間転写ベルト8を介して、各感光ドラムと1次転写部を形成する対向部材5a〜5dを無くすことが可能である。図1の対向部材5a〜5dは、少なくとも、各感光ドラム2a〜2dと中間転写ベルト8が接触する領域に設けられている。対向部材5a〜5dを無くす場合は、上記領域以外に中間転写ベルト8を内面から外面に押し上げるコロや、中間転写ベルト8のテンションによって中間転写ベルト8は各感光ドラム2a〜2dに接触する構成であればよい。
また、電流供給部材として二次転写部材でなく、中間転写ベルトの内面又は外面に接触する接触部材を用いてもよい。電流供給部材を二次転写部材と兼用した場合は、1次転写と2次転写の双方を一つの電圧電源で実行することが可能になる。
また、単層および2層の中間転写ベルトを用いたが、弾性層を設けるなどした3層以上のベルトでも前記周方向抵抗であれば、同様の効果を期待することができる。2層の中間転写ベルトは、基層を成形したあとコートすることで製造しているが、一体成型する等、抵抗値が前述の条件を満たしていれば製造方法はこれに限るものではない。
尚、本実施例では、画像形成部1を中間転写ベルトに対して移動させる切換え部材を用いているが、他の構成でもよい。例えば、中間転写ベルト8の内面で各画像形成部に対向する位置で中間転写ベルト8に当接する対向部材を、中間転写ベルト8に対して移動させることで、中間転写ベルト8と各感光ドラムの接触状態を切換えてもよい。