(実施例1)
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、インライン方式(4ドラム系)のカラー画像形成装置の構成図である。画像形成装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部1aと、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部1bと、シアン色の画像を形成する画像形成部1cと、ブラック色の画像を形成する画像形成部1dの4つの画像形成部(画像形成ユニット)を備えている。これらの4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されている。
各画像形成部1a、1b、1c、1dには、それぞれ像担持体である感光ドラム2a、2b、2c、2dが配置されている。感光ドラム2a、2b、2c、2dは、本実施例では負帯電の有機感光体でアルミニウム等のドラム基体(不図示)上に感光層(不図示)を有しており、駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで回転可能である。
各感光ドラム2a、2b、2c、2dの周囲には、帯電部材である帯電ローラ3a、3b、3c、3d、現像装置4a、4b、4c、4dがそれぞれ配置されている。さらに、各感光ドラム2a、2b、2c、2dの上方には、露光装置7a、7b、7c、7dがそれぞれ設置されている。各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロートナー、シアントナー、マゼンタトナー、ブラックトナーが収納されている。
各画像形成部の対向する位置に、中間転写体であって、回転可能な無端状の中間転写ベルト8が設置されている。中間転写ベルト8は、駆動ローラ11、2次転写対向ローラ12、テンションローラ13によって張架されている(以上の3本のローラを、「張架部材」とする。)モータ(不図示)が接続された駆動ローラ11の駆動によって、中間転写ベルト8は、矢印方向(反時計方向)に回転(移動)される。以下、中間転写ベルト8の回転方向を中間転写ベルト8の周方向とする。駆動ローラ11は、中間転写ベルト8を駆動するために表層に高摩擦のゴム層を設け、ゴム層を体積抵抗率が105Ωcm以下の導電性を有する。2次転写対向ローラ12は、中間転写ベルト8を介して2次転写手段である2次転写ローラ15と2次転写部を形成している。2次転写対向ローラ12は、表層にゴム層を設け、ゴム層は、体積抵抗率が105Ωcm以下の導電性を有する。テンションローラ13は、金属ローラからなり、総圧約60Nの張力を中間転写ベルト8に付与し、中間転写ベルト8に従動して回転する。
2次転写ローラ15としては、体積抵抗率が107〜109Ωcm、ゴム硬度が30°(アスカーC硬度計)の弾性ローラを用いた。又、2次転写ローラ15は、中間転写ベルト8を介して2次転写対向ローラ12に対し、総圧約39.2Nで押圧される。又、2次転写ローラ15は、中間転写ベルト8の回転に伴い、従動して回転する。更に、2次転写ローラ15には、転写用の電圧電源19から、−2.0〜7.0kVの電圧の印加が可能となっている。後述するが、この電圧電源19は、中間転写ベルト8の周方向に電流を供給するための電流供給部材を兼ねている。
中間転写ベルト8の外側には、中間転写ベルト8表面に残った残留トナーを除去して回収するベルトクリーニング装置75が設置されている。また、中間転写ベルト8の回転方向において、2次転写対向ローラ12と2次転写ローラ15とが当接する2次転写部の下流側には、定着ローラ17aと加圧ローラ17bを有する定着装置17が設置されている。
次に、画像形成動作について説明する。
コントローラから画像形成動作を開始するための開始信号が発せられると、カセット(不図示)から転写材(記録媒体)が一枚ずつ送り出され、レジストローラ(不図示)まで搬送される。その時、レジストローラ(不図示)は停止されており、転写材の先端は2次転写部の直前で待機している。一方、各画像形成部1a、1b、1c、1dでは、開始信号が発せられると、各感光ドラム2a、2b、2c、2dが、所定のプロセススピードで回転し始める。各感光ドラム2a、2b、2c、2dは、それぞれ帯電ローラ3a、3b、3c、3dによって一様に、本実施例では負極性に帯電される。そして、露光装置7a、7b、7c、7dは、レーザ光を各感光ドラム2a、2b、2c、2d上にそれぞれ走査露光して静電潜像を形成する。
そして、先ず感光ドラム2a上に形成された静電潜像に、感光ドラム2aの帯電極性(本実施例では負極性)と同極性の現像電圧が印加された現像装置4aによりイエローのトナーを付着させて、トナー像として可視像化する。感光ドラムの電位は、帯電ローラにより帯電された後の電位が―500V、露光装置により露光された後の電位(画像部)が―100Vとなるよう帯電量、露光量を調整し、現像バイアスを―300Vとしている。また、プロセススピードを250mm/secとする。搬送方向(回転方向)と垂直方向の長さである画像形成幅は215mm、トナー帯電量は―40μC/g、画像ベタ部の感光ドラム上のトナー量は0.4mg/cm2となるよう設定している。
この感光ドラム上(像担持体上)のイエローのトナー像は、回転している中間転写ベルト8上に1次転写される。ここで、各感光ドラムに対向して、各感光ドラムからトナー像が転写される部を、1時転写部とする。この1次転写部は、複数の像担持体に対応する形で中間転写ベルト上に複数ある。本実施例におけるイエローのトナー像を中間転写ベルト8上に1次転写するための構成については、後述する。
尚、図1では中間転写ベルト8を介して、各画像形成部の対向する位置に対向部材5a、5b、5c、5dを有する。対向部材5a、5b、5c、5dによってニップを形成することで、ニップ幅を広く安定させることが可能である。本実施例では対向部材5a、5b、5c、5dは、1次転写専用の電圧電源に接続される被印加部材ではない。イエローのトナー像が転写された領域は、中間転写ベルト8の回転によって画像形成部1b側に移動する。そして、画像形成部1bにおいても、同様にして感光ドラム2bに形成されたマゼンタのトナー像が、中間転写ベルト8上のイエローのトナー像上に重ね合わせて転写される。以下、同様にして中間転写ベルト8上に重畳転写されたイエロー、マゼンタのトナー像上に、画像形成部1c、1dの感光ドラム2c、2dで形成されたシアン、ブラックのトナー像を、順次重ね合わせてフルカラーのトナー像を中間転写ベルト8上に形成する。
そして、中間転写ベルト8上のフルカラーのトナー像先端が2次転写部に移動されるタイミングに合わせて、レジストローラ(不図示)により転写材をこの2次転写部に搬送する。中間転写ベルト8上のフルカラーのトナー像が、2次転写電圧(トナーと逆極性(正極性)の電圧)が印加された2次転写ローラ15により転写材に一括して2次転写される。フルカラーのトナー像が形成された転写材は定着装置17に搬送される。定着ローラ17aと加圧ローラ17bによって形成される定着ニップ部で、フルカラーのトナー像は加熱加圧され、転写材P表面に熱定着された後に外部に排出される。
本実施例は、各感光ドラム2a、2b、2c、2dから中間転写ベルト8にトナー像を転写する1次転写を、図2で示すように1次転写ローラ55a、55b、55c、55dに電圧を印加して行う構成ではない。以下に、本実施例の特徴を説明するために、中間転写ベルト8の体積抵抗率、表面抵抗率、周方向抵抗について説明する。尚、周方向抵抗の定義と測定方法については後述する。
[中間転写ベルト8の体積抵抗率、表面抵抗率]
本実施例の中間転写ベルト8は、厚み100μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂にカーボンを分散させて電気抵抗を調整したものを基層としている。尚、使用される樹脂は、ポリイミド(PI)、PVdF、ナイロン、PET、PBT、ポリカーボネート、PEEK、PEN等でもよい。さらに、中間転写ベルト8は多層構成である。具体的には基層の外面には、厚み0.5〜3μmで高抵抗のアクリル樹脂の表層を設けている。表層の高抵抗層は、2次転写部の長手方向で通紙域と非通紙領域の電流差を少なくして小サイズ紙の2次転写性が良化する効果を得るためである。
次にベルトの製造方法について説明する。本実施例では、インフレーション成形法による製造方法を用いている。基材となるPPSと、導電体粉であるカーボンブラックなどの配合成分を二軸混練機により溶融混練する。得られた混練物を環状ダイスによって押出し成形することによりベルトを製造している。
表面コート層は、成形したエンドレスベルトの表面に紫外線硬化樹脂をスプレーコーティングし、乾燥後、紫外線照射により硬化させて形成している。コート層は厚すぎると、割れやすくなるため0.5〜3μmの範囲となるよう塗布量を調整している。
本実施例では、導電体粉としてカーボンブラックを用いている。中間転写ベルト8の電気抵抗値を調節するために混合する添加剤は特に制限されるものではない。例えば、抵抗を調整する導電性フィラーとしてはカーボンブラックや各種の導電性金属酸化物等がある。非フィラー系抵抗調整剤としては各種金属塩やグリコール類等の低分子量のイオン導電材やエーテル結合や水酸基等を分子内に含んだ帯電防止樹脂または電子導電性を示す有機高分子化合物等である。
添加するカーボン量を増やすとベルトは低抵抗化するが、増やしすぎるとベルト自体の強度が不足し、割れやすくなってくる。本実施例では、ベルト強度が画像形成装置に使用できる範囲内に収まる範囲内で、ベルトを低抵抗化している。本実施例の中間転写ベルトのヤング率は3000MPa程度である。ヤング率E測定は、JIS−K7127の引張弾性率測定方法に準拠し、測定試料の厚みは100μmとした。
表1に、基体に対するカーボン量の相対比率を変更したベルトを示す。
表1には、添加したカーボン量と表層コート層の有無を示している。例えば、ベルトBはベルトAに対してカーボン量が1.5倍、ベルトCはベルトAに対してカーボン量が2倍であることを示している。また、ベルトA、ベルトB、ベルトCには表層を設けており、ベルトD、ベルトEは単層のベルトである。ベルトBとベルトDのカーボン量の相対比率は同じで、ベルトCとベルトEのカーボン量の相対比率も同じである。
また比較用のベルトとしてカーボン量の相対比率を変えて、抵抗調整したポリイミドの比較例ベルトを製法した。比較例ベルトは、カーボン量の相対比率が0.5であり、体積抵抗率も1010〜1011Ωcmである。この比較例ベルトは、中間転写ベルトに採用されるベルトとしては一般的な抵抗値を有するベルトである。
以下に、比較例ベルトと、ベルトA〜Eの体積抵抗率、表面抵抗率の測定結果を示す。
まず、前述の比較例ベルトおよびベルトA〜Eに対して、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計ハイレスタUP(MCP−HT450)を用いて測定した。測定した体積抵抗率、表面抵抗率(ベルトの外側表面)を表2に示す。測定方法は、JIS−K6911に準拠し、導電性ゴムを電極とすることで電極とベルトの表面の良好な接触性を得た上で測定した。測定条件は、印加時間を30秒間で、印加電圧を10V、100Vとしている。
比較例ベルトは、印加電圧は100Vを印加した場合に、体積抵抗率が1.0×1010Ωcm、表面抵抗率が1.0×1010Ω/□である。しかしながら、比較例ベルトは印加電圧を10Vにすると流れる電流が小さすぎて体積抵抗率を測定できず、「over」と表示される。
一方、ベルトB、C、Dは100V印加では、ベルトの抵抗が低いため流れる電流値が大きすぎて、体積抵抗率の測定不能を表すunderが表示される。ベルトBは、100V印加で表面抵抗率は2.0×108Ω/□であったが、ベルトC、Dは、100V印加した場合は、underと表示された。
表2中で、ベルトAの印加電圧10Vの各体積抵抗率、表面抵抗率は測定不能である。また、100Vを印加した場合のベルトAと比較例ベルトの表面抵抗率を比較すると、ベルトAの方が高い。これはコート層の影響によるもので、高抵抗の表層コートを有するベルトAのほうが、表層コートを有していない比較例ベルトより抵抗が高いことが分かる。
また、ベルトBとベルトD、ベルトCとベルトEを比較することで、コート層があることで、抵抗値が高くなっていることがわかる。また、ベルトBとベルトC、ベルトDとベルトEを比較することで、カーボン量を増やすと、抵抗値が低くなっていることがわかる。ベルトEでは抵抗が低すぎて、全ての項目が測定不能となっている。
本実施例では、表2でunderと表示される範囲の中間転写ベルトを使用する。そこで、上記体積抵抗率、表面抵抗率以外で規定される中間転写ベルトの抵抗を測定した。その別の規定による中間転写ベルト8の抵抗が、上述の中間転写ベルトの周方向の電気抵抗である。
[中間転写ベルトの周方向抵抗の求め方]
本実施例では、低抵抗化したベルトの抵抗値を図3で示す方法で測定している。図3(a)では、高圧電源19から外面ローラ15Mに一定電圧を印加した時に、画像形成部1dの感光ドラム2dMに繋いだ電流計へ流れる電流を検知する。この検知した電流値から、外面ローラ15Mが接触する位置から感光ドラム2dMが接触する位置の間の中間転写ベルト8の電気抵抗を求める方法を用いている。即ち、この方法によって中間転写ベルト8の周方向(回転方向)に流れる電流を測定することで、ベルトの抵抗を算出している。このとき中間転写ベルト以外の抵抗の影響を無くすため、外面ローラ15M、感光ドラム2dMは金属のみからなるものを用い、金属ローラであることを示すために符号にM(Metal)を付加している。本実施例では、外面ローラ15Mの当接部−感光ドラム2dM間の距離は中間転写ベルト上面側が370mm、中間転写ベルト下面側が420mmである。
以上の測定方法で、印加電圧を変更してベルトA〜Eを測定した結果が図4(a)である。この測定方法では中間転写ベルトの回転方向である周方向の抵抗を測定している。よって、本実施例では、この測定方法で測定した中間転写ベルトの抵抗を周方向抵抗[Ω]と称している。
全てのベルトで印加電圧を上げていくと抵抗が少しずつ低下していく傾向があるが、これは樹脂にカーボンを分散したベルトの特徴である。
尚、図2(b)は図2(a)に対して、電流計の位置のみを変えただけである。この時の抵抗測定結果は、図4とほぼ同じ結果であり、本実施例の測定方法は、電流計の位置によって変動しない。
ベルトA〜Eでは、図2で示す方法で抵抗測定できるが、比較例ベルトでは抵抗測定できなかった。この理由は、比較例ベルトは、図2で示すような各1次転写ローラ55a、55b、55c、55dに夫々電圧電源が接続された構成の画像形成装置で使用されるベルトであるためである。
図2の構成の画像形成装置では、隣り合う電圧電源が中間転写ベルトを介してお互いに流れ込む電流によって影響を受けないように(干渉しないように)、中間転写ベルトの体積抵抗、表面抵抗は高く設計されている。比較例ベルトは、各1次転写ローラ55a、55b、55c、55に電圧を印加しても各1次転写部間で干渉しない程度の抵抗を持つベルトであり、周方向に電流が流れにくい性能を持つベルトとして設計されている。比較例ベルトのようなベルトを高抵抗ベルト、ベルトA〜Eのような周方向に電流が流れるベルトを導電性ベルトと定義する。
図4(b)は、図3(a)の測定方法で測定した電流をそのままプロットしたものである。前述の図4(a)の縦軸(抵抗[Ω])は、図4(b)の測定された電流値を印加電圧で割ることで換算した値である。
図4(b)のように、比較例ベルトでは2000V印加しても周方向に電流は流れなかった。しかしながら、図4(b)に示すように、ベルトA〜Eでは、500v以下で50μA以上流れていることがわかる。本実施例で、中間転写ベルトとして使用するベルトは、上記周方向抵抗で104〜108Ωである。
次に、上記周方向抵抗が104〜108Ωである中間転写ベルト8のベルト表面電位について説明する。図5(a)にベルト表面電位の測定方法を示している。図中では4つの表面電位計で、4箇所の電位測定をしている。尚、図中の5dM、5aMは測定用の金属ローラである。
表面電位計37aおよび測定プローブ38aは画像形成部1aの1次転写ローラ5aM(金属ローラ)の電位を測定している。測定器はトレック・ジャパン株式会社製表面電位計MODEL344を使用した。金属ローラは中間転写ベルト内面と同電位となるため、本方法で中間転写ベルト内面電位を測定することができる。同じく、表面電位計37dおよび測定プローブ38dは画像形成部1dの1次転写ローラ5dM(金属ローラ)の電位により中間転写ベルト内面の電位を測定している。
また、表面電位計37eおよび測定プローブ38eは駆動ローラ11Mを対向にして中間転写ベルト外面電位を測定しており、表面電位計37fおよび測定プローブ38fはテンションローラ13を対向にして中間転写ベルト外面電位を測定している。また、駆動ローラ11M、2次転写対向ローラ12、テンションローラ13には各々電気的な抵抗部材であるRe、Rf、Rgを接続している。
本測定方法で中間転写ベルトの電位を測定したところ、測定箇所による差はほぼ無く、ベルト電位は中間転写ベルト内でほぼ同電位であることがわかった。つまり本実施例で用いたベルトは、ある程度抵抗値を持つものの、導電性を有するベルトと考えて差し支えない。
また、比較例ベルトのように周方向に電流が流れない抵抗値の中間転写ベルトでは、上述のような方法でベルト電位を測定することはできない。図2で示すような各1次転写ローラに専用の転写電源9により電圧を印加する構成では、電位測定プローブを配置することができない。またベルト周方向の位置で電位が異なるため、張架ローラを対向にして電位測定プローブを配置して測定しても意味が無いからである。
次に、図6に基づき本実施例の構成で、感光ドラムから中間転写ベルトにトナー像を転写することができる理由を説明する。
図6(a)は、1次転写部の電位関係を説明した図である。感光ドラムの電位は、トナー部(画像部)で―100V、中間転写ベルトの表面電位として+200Vの例を示している。感光ドラム上に現像された帯電量qをもつトナーは、感光ドラム電位と中間転写ベルト電位とにより形成された電界Eにより、中間転写ベルト方向の力Fを受けて1次転写される。
次に、図6(b)は多重転写を説明した図である。多重転写とは、1度中間転写ベルト上に1次転写されたトナーの上に、さらに他色のトナーを重ねて1次転写することである。図6(b)では、トナーはマイナスに帯電されており、この1度転写されたトナーによりトナー表面の電位が+150Vとなっている例を示している。この場合、感光ドラム上のトナーは、感光ドラム電位とトナー表面電位とにより形成された電界E’により、中間転写ベルト方向の力F’を受けて1次転写される。
図6(c)は、多重転写が終了したことを示している。
このように、トナーを1次転写するにはトナーの帯電量と、感光ドラムと中間転写ベルトの電位差が関係しており、1次転写性を確保するには中間転写ベルト電位が一定以上必要であることがわかる。
本実施例の前述の条件で、感光ドラム上に現像されたトナーを1次転写するのに必要な中間転写ベルト電位を検討すると、200V以上必要であることがわかった。
図6(d)は、横軸に中間転写ベルト電位、縦軸に転写効率をプロットしたグラフである。転写効率とは、感光ドラム上に現像されたトナーが何%中間転写ベルト上に転写されたかを示す転写性の指標であり、通常95%以上あれば問題無く転写できていると判断する。図は中間転写ベルト電位が200V以上で98%以上の良好な転写をしていることを示している。
このとき、各画像形成部1a、1b、1c、1dでの感光ドラムと中間転写ベルトの電位差は全て同じである。つまり、感光ドラム電位―100Vと中間転写ベルト電位+200Vの電位差300Vが、各画像形成部1a、1b、1c、1dの1次転写部に形成されている。この電位差は、上記トナー3色分(単色ベタを100%として300%分)の多重転写に必要な電位差であり、従来の1次転写構成で各1次転写ローラに各々1次転写バイアスを印加した場合とほぼ同等である。通常の画像形成装置は4色備えていても400%の画像形成することは無く、最大トナー量として、210〜280%程度で十分なフルカラー画像形成を行うことができている。
よって、本実施例では、中間転写ベルトの表面電位が所定電位になるように中間転写ベルトの周方向に電流を流すことで、1次転写を可能としている。本実施例では、2次転写手段である2次転写ローラ15に電圧を印加することによって、一つの電圧電源19で、1次転写と2次転写を行うことが可能になる。即ち、2次転写ローラ15に電圧を印加する電圧電源19が、中間転写ベルト8の周方向に電流を流すための電流供給部材を兼ねている。2次転写は、中間転写ベルト8上に1次転写されたトナーを、1次転写と同様にクーロン力によって記録材上へ移動させることである。本実施例の条件で、記録材として上質紙(坪量75g/m2)を用い、2次転写するのに必要な2次転写電圧は2kV以上である。
上述の説明のように、本実施例の構成では、複数の1次転写部に専用の1次転写電源を有することなく、中間転写ベルトに接触する2次転写部材から中間転写ベルトの周方向に電流を流すことで1次転写を行うことが可能である。
このような構成で1次転写を各1次転写部で行った際に、従来の構成と同様に、1次転写部で感光ドラム2から中間転写ベルト8に1次転写されず感光ドラム2に残留する残留トナーを回収する必要がある。本実施例は、この残留トナーを清掃部材106a、b、c、dで一次的に回収する。
図1の清掃部材106a、b、c、dは、各感光ドラムの回転方向において、各1次転写部5の下流側かつ帯電手段3の上流側に複数の像担持体に対応して設けられている。本実施例中では固定型の導電性ファーブラシである。導電性ファーブラシはアルミニウムの支持部材上に6デニール・10万本/inch2の繊維密度のブラシを導電性接着剤で接着したものである。清掃能力の観点から、導電性基体に当接させた状態で10V印加した場合の抵抗が、104〜1010Ωの範囲であることが好ましい。本実施例中では約5×106とほぼ中間転写ベルトと同程度である。同様に太さは30デニール以下、密度1万本/inch2以上、より好ましくは、太さは6デニール以下、密度は10万本/inch2以上であるとより清掃能力が高くなる。
清掃部材106の導電性ブラシは、金属の支持部材と図1中の線で表現されている配線部を介し、中間転写ベルト8の内側を張架するテンションローラ13の芯金部分と導通状態にある。すなわち、清掃部材106は、中間転写ベルトと電気的に導通である。ここで、清掃部材106は、テンションローラ13以外の、導電性ゴムが被覆された駆動ローラ11、もしくは対向ローラ12の芯金を経由していても良い。
また、図7は、清掃部材106と中間転写ベルト5を長手方向(中間転写ベルトの回転方向と直交する方向)から見た図である。図7のように、清掃部材106の端部にブラシ状の導通接点107を設け、中間転写ベルト5の表面と直接導通を持たせる方法でもよい。さらに、図8のように中間転写ベルト5の裏面に接触する金属バネ状の導通接点108と清掃部材と、を導通を導通させる方法でもよい。
上記構成にすることで、中間転写ベルト5の周方向に電流が流れた場合の清掃部材106の電位は、中間転写ベルト5の電位と同極性で、ほぼ同電位になる。
次に、図9は本画像形成装置の感光ドラム周辺の装置の動作シーケンスを表す図である。図9(a)は、画像形成時(プリント時)を説明する図であり、中間転写ベルトの電位が1次転写を行うために、200V となる際に、清掃部材の電位も200Vとなっている。図9(b)は、非画像形成時に実行する清掃モードを説明する図であり、中間転写ベルトの電位が清掃のためにー600Vとなる際に、清掃部材の電位も−600Vとなる。
図10(a)は、画像形成時の感光ドラムに現像されたトナーの移動を説明するための図である。感光ドラム上に現像されたトナーは、トナーの正規の帯電極性が負極性であるため、その大半が負極性である。説明図では負極性のトナーがドラム上に記載されている。1次転写部で1次転写が行われると、ドラム上のトナーの大半は中間転写ベルト(図中では、ITBとする)に転写される。しかしながら、感光ドラム2と一次転写ベルト8の電位差によりトナー像が中間転写ベルト8に転写されるが、一部のトナーは残留トナーとして感光体2上に残留してしまう。残留トナーは、1次転写部の電界の影響を受けて、負極性、正極性のトナーが混在した状態である。
仮に残留トナーが、回収されずそのまま全て感光ドラム用の帯電ローラ(図中では、Cローラとする)に接触すると、帯電ローラに付着する残留トナー量が多く、帯電ローラの帯電効率を低減させてしまう。帯電ローラの帯電効率が低下すると、感光ドラム2に対する帯電が不十分になり画像不良の要因となる。
本実施例では、画像不良の発生を抑制するために、帯電ローラよりも上流側にある清掃部材が、画像形成中(プリント中)は残留トナーを回収する。清掃部材は、プリント時は中間転写ベルト8の電位とほぼ同電位であるために、中間転写ベルトと同じ正極性の電位である。残留トナーは、負極性のトナーが多いので、接触することで負極性のトナーの大半を清掃部材が回収することが可能である。また一部回収されず通過するトナーも、清掃部材に接触して崩されているため、清掃部材に回収されず感光ドラム上に残留したトナーの一部が、帯電ローラに付着しても、帯電効率を大きく低下させることはない。
このように、清掃部材に専用電源を用意しなくても、電流供給部材である電圧電源19から中間転写ベルトの周方向に流れる電流によって清掃部材106に電流を供給することが可能になる。よって、本実施例では、高圧電源の数を減らしつつ、各感光ドラムに専用の回収トナー容器を設ける必要がなくなる。
清掃部材106が回収したトナーは、定期的に、清掃部材106から感光ドラムに転移させ、その後、感光ドラムから中間転写ベルト8に転移させることで清掃部材106から除去する。中間転写ベルト8に転移されたトナーは、ベルトクリーニング装置75によって回収される。この清掃部材106からトナーを除去しベルトクリーニング装置75で回収するために、清掃モードを実行可能である。この清掃モードでは、帯電ローラ5に微量ながら付着しているトナーも帯電ローラから除去する。
以下に清掃モードについて説明する。清掃モードは、通常のプリント動作が二次転写も含めて終了した後、現像装置4が感光ドラム2から離間し、現像バイアスがOFFになることで開始される。清掃モードは、第1の清掃モードと、第2の清掃モードの2段階に分けられている。図9(b)の第1の清掃モードにおいて、まず帯電ローラ5に印加される電圧が0Vになり、同時に転写電源19から二次転写ローラ15に印加される電圧が、正極性から負極性に切り替わり、中間転写ベルト8の電位が‐600Vになる。
この時の感光ドラム2の電位はその前の画像形成時の状態に影響されるが、基本的には暗減衰分を含めても−90V以上かつ‐500V以下である。その為、帯電ローラ5に付着していた正極性のトナーは電位差で感光ドラム2上に吐き出され、更に感光ドラム2の回転に伴い一次転写部に到達し、より負極性側に設定されている中間転写ベルト8に吐き出され、最終的にはベルトクリーニング装置75で回収される。
清掃部材106に付着している負極性のトナーは、清掃部材106が中間転写ベルト8と同極性の負極性の電位に維持されるため、電気反発力で感光ドラム2上に吐き出される。更に0Vに維持されている帯電ロール5に一時的に回収される。ここで第1の清掃モードは、最上流の画像形成部1aで中間転写ベルト8に吐き出された全ての正極性のトナーが、最下流の画像形成部1dを通過するまで行われなければいけない。なぜならば、それ以前に中間転写ベルト8の極性を正極性側に戻してしまうと、電位差により画像形成部1b、1c、1dのいずれかに再度回収されてしまう可能性が生じるからである。このようにして、第1の清掃モードを実行すると、帯電ローラ5上の正極性のトナーはベルトクリーニング装置75で回収され、更に清掃部材106に付着していた負極性トナーは帯電ローラ5に付着させることが可能になる。
以上説明した第1の清掃モード時の電位の関係を式として表す。帯電手段の印加電圧をVpc、像担持体の電位をVdrm、中間転写体の電位をVitb、導電性の清掃部材の電位をVclnとして説明する。トナーの正規の帯電極性が負極性の場合、Vitb = Vcln < Vdrm < Vpc となるように電位を設定する。トナーの正規の帯電極性が正極性の場合、Vitb = Vcln > Vdrm > Vpc となるように電位を設定する。
第1の清掃モードの後に、第2の清掃モードを実行する。第2の清掃モードは、第1の清掃モードによって帯電ローラに付着したトナーを除去し、ベルトクリーニング装置75で回収するためのモードである。
図9(b)の第2清掃モードにおいて、帯電ローラ5に負極性の電圧(本例では−1100V)が印加され、同時に転写電源19から二次転写ローラ15に印加される電圧が、負極性から正極性に切り替わり、中間転写ベルト8の電位が200Vになる。感光ドラムの電位は−500V程度に収束するので、帯電ローラ5上の負極性トナーは、電気的反発力で感光ドラム2上に吐き出される。感光ドラム2上に吐き出されたトナーは、1次転写部で中間転写ベルト8側に移動する。中間転写ベルト8側に移動したトナーは、最終的にはベルトクリーニング装置75によって回収される。
以上説明した第2の清掃モード時の電位の関係を、第1の清掃モードと同様に式として表す。トナーの正規の帯電極性が負極性の場合、Vitb = Vcln > Vdrm > Vpc となるように電位を設定する。トナーの正規の帯電極性が正極性の場合、Vitb = Vcln < Vdrm < Vpc となるように電位を設定する。
尚、本実施例では二次転写ローラによって中間転写ベルト8の周方向に電流を流す構成を説明したが、二次転写ローラ以外の部材によって中間転写ベルト8の周方向に電流を流す構成であってもよい。また、中間転写ベルトではなく、転写材を担持搬送する搬送ベルトを用いる画像形成装置に、本実施例を適用してもよい。その場合は、搬送ベルトの外面又は内面に、電流供給部材から電流が供給される接触部材を接触させ、接触部材から搬送ベルトを介して、各清掃部材に電流を供給する構成であってもよい。