JP5724746B2 - 複数の磁気記録媒体をuv処理する方法 - Google Patents

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Description

本発明は複数の磁気記録媒体をUV処理する方法に関し、この複数の磁気記録媒体の各々は例えばコンピュータの外部記憶装置に用いられる。
磁気記録媒体の保護膜と磁気ヘッドとの間に生ずる摩擦力を減少させ、耐久性および信頼性を向上させる目的のため、これまで磁気記録媒体、特に磁気ディスクに用いられる潤滑剤が開発されてきた。
例えば、磁気ディスクの表面層の潤滑特性を改良するために、従来、表面層にダイヤモンド状カーボン(DLC)保護膜を形成し、その保護膜上に水酸基などの有極性末端基または環状トリホスファゼン末端基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑膜を形成することが行われてきた。
保護膜上の潤滑膜は、2種の層に分けられる。一方の層は保護膜と結合した層(以下、ボンド潤滑層という)であり、他方の層は保護膜と結合していない層(以下、自由潤滑層という)である。特性の向上の観点から、潤滑膜として自由潤滑層が薄くボンド潤滑層が厚いものが適しているとされている。
しかしながら、近年の磁気ディスクの高密度化傾向に伴い、潤滑膜特性に対する厳しい要求に応えるには、今後、ボンド潤滑層の膜厚の上限をさらに引き上げることが必要とされる。
加えて、近年のハードディスクドライブの用途は、これまでの屋内で使用されるパソコン用途から、屋外で使用される携帯機器またはカーナビゲーションシステムなどの用途に拡大している。特に、高温高湿環境において、高湿度空気に含まれる水分の凝着現象により、ハードディスクドライブの磁気ヘッドスライダが浮上しにくくなる現象が存在する。そのため、磁気ディスク表面へ、より緻密に潤滑膜を形成することが大きな課題となっている。
この課題を解決する1つの手法として、ボンド潤滑層の膜厚を増加することが提案されており、ボンド潤滑層の膜厚を増加するためには、ボンド潤滑層の形成工程でUV処理を行うことが効果的とされている。このUV処理においては、処理効率の改善と前後工程との関係から、磁気ディスク1枚ずつの処理ではなく磁気ディスクを収納するカセットごと(例えば25枚の磁気ディスクごと)の処理が要求されている。
WO2007/020723
しかしながら、カセットごとの処理を行う場合、装置でUV処理を行うためのUVランプハウス下で待機する時間がカセットの場所で異なるため、カセット内でのボンド潤滑層の膜厚のバラつきが出てしまうことが問題となっていた。直接UV光は、全ての磁気ディスク(例えば全25枚の磁気ディスク)に対してすべて同じ条件で照射されるが、間接UV光は、カセット送りをしてUVランプハウス下のカーテン部分のリフター部にディスクの場所を合わせた状態で照射されるので、カセット内の最後周辺でUV処理される磁気ディスク(例えば全25枚中23枚目〜25枚目の磁気ディスク)に対して間接UV光の照射量が少なくなってしまい、ボンド率が下がってしまうという現象が起きていた。そのため、特にカセット内の最後周辺でUV処理される磁気ディスクにおいても、ボンド潤滑層の膜厚が他の磁気ディスクの膜厚と同等となるような処理方法が必要とされる。
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数の磁気記録媒体間の潤滑層の膜厚のバラつきを抑制し、均一な潤滑層の膜厚の磁気記録媒体を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明の複数の磁気記録媒体をUV処理する方法は、複数の磁気記録媒体の各々が、非磁性基体上に磁性膜、保護膜、および潤滑膜を含み、複数の磁気記録媒体をUVランプで照射する第1の照射工程を含み、複数の磁気記録媒体のうちの一部の磁気記録媒体をUVランプで追加的に照射する第2の照射工程を含む。
ここで、第2の照射工程が、一部の磁気記録媒体を所定の滞留時間滞留させながら照射する工程であり、所定の滞留時間が、第1の照射工程の1〜1.5倍の時間であることが好ましい。
本発明によれば、複数の磁気記録媒体間の潤滑層の膜厚のバラつきが抑制され、均一な潤滑層の膜厚の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
本発明の方法に使用される装置の一例を示す。 磁気記録媒体として直径95mmの磁気ディスクを用いた場合のカセット内のボンド率のバラつき測定結果を示す。 磁気記録媒体として直径65mmの磁気ディスクを用いた場合のカセット内のボンド率のバラつき測定結果を示す。
本発明の複数の磁気記録媒体をUV処理する方法は、複数の磁気記録媒体の各々が、非磁性基体上に磁性膜、保護膜、および潤滑膜を含む。非磁性基体、磁性膜、および保護膜は、通常用いられている非磁性基体、磁性膜、および保護膜を用いることができる。
本発明の方法は、複数の磁気記録媒体をUVランプで照射する第1の照射工程を含み、複数の磁気記録媒体のうちの一部の磁気記録媒体をUVランプで追加的に照射する第2の照射工程を含む。第1の照射工程で使用されるUVランプと、第2の照射工程で使用されるUVランプとは、同じ装置および出力であると装置および工程を単純化でき好ましいが、本発明は例えば第1の照射工程で使用されるUVランプと、第2の照射工程で使用されるUVランプとを異なる装置とし、または異なる出力とする構成も含むものである。第1の照射工程と第2の照射工程が連続していると時間短縮化でき好ましいが、本発明は第1の照射工程と第2の照射工程が間隔を空けている構成も含むものである。
好ましくは、第2の照射工程が、一部の磁気記録媒体を所定の滞留時間滞留させながら照射する工程であり、所定の滞留時間が、第1の照射工程の1〜1.5倍の時間である。所定の滞留時間が、第1の照射工程の1〜1.5倍(直接光の照射時間と同じ以上直接光の照射時間の1.5倍以下)の時間であると磁気記録媒体のカセットポジション内のボンド率のバラつきが最小限に抑えられるという効果が得られる。
図1に本発明の方法に使用される装置の一例を示す。図1は、装置10においてUV処理時の磁気ディスク12(磁気記録媒体の典型例)、カセット14、カーテン16、UVランプ(図示せず)を収納したUVランプハウス18の位置を示している。磁気ディスク12、カセット14、カーテン16、UVランプハウス18の位置は、直接UV光照射前、照射中、照射後は常にこの状態になっている。直接UV光で磁気ディスク12を処理するため、カセット14をUVランプハウス18下で待機させ、リフター(図示せず)の位置にカセット14を送りながらカセット14の下からリフターで1枚ずつピックアップしている。直接UV光の照射(第1の照射工程)は、UVランプハウス18内に磁気ディスク12を1枚ずつ入れて行っている。間接UV光の照射は、待機中にUVランプハウス18から光が漏れてくるために起こっている。滞留時の間接UV光の照射(第2の照射工程)は、直接UV光の照射終了後にリフターが磁気ディスク12をカセット14に戻した状態でカセット送りをせずに留めておき間接UV光を照射することで行われている。
磁気記録媒体の好ましい潤滑剤としては、潤滑剤の主鎖部分に化学式1と化学式2のようにパーフルオロポリエーテルを含み、末端部分R1、R2、R3の少なくとも1つが複数の官能基を有しており、分子量が500〜10,000の間で規定されるものである。
Figure 0005724746
(ただし式中pおよびqはそれぞれ正の整数である。)
Figure 0005724746
(ただし式中rは正の整数である。)
上記記載の末端構造において、官能基が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、1級および2級アミン基、ニトロ基、ニトリル基、イソニトリル基、イソシアナート基、チオール基、スルホ基、複素環のうちいずれか1つまたは複数から選択されることが好ましい。なお、潤滑剤に添加剤を加える場合もあるが、その場合でも本願発明の効果は得られることになる。
こうして、例えば、間接UV光によるボンド潤滑層形成の制御方法として、通常の処理ではボンド層膜厚が低くなってしまうカセットの最後周辺(例えば23枚目〜25枚目)で滞留させてボンド層膜厚を上昇させることでカセット内ボンド潤滑剤膜厚のバラつきを低減させることが可能となる。
以下本発明の実施例を説明する。なお、実施例は本発明の代表例に過ぎず、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
潤滑剤として末端基に−OHを持つZ−Tetraol(ソルベイ・ソレクシス社製)を用いた。従来通りのUV処理を行った場合(第1の照射工程のみを行った場合)と、カセットの最後周辺(23枚目〜25枚目)で滞留させた場合(第1の照射工程および追加の第2の照射工程を行った場合)とで、ボンド潤滑層の膜厚のバラつきを調査した。
[磁気記録媒体への塗布および特性評価]
1、サンプル作製‐潤滑剤塗布
プラズマCVD法で作成した膜厚2.0nmの非晶質カーボン保護膜で覆われた直径65mm(2.5”)、95mm(3.5”)の磁気ディスク基板に対し、上記の潤滑剤混合体をDip法により塗布した。具体的には、溶媒としてVertrel XF(三井デュポンフロロケミカル社製)を用いた潤滑剤混合体に磁気ディスク基板を72秒時間浸漬させ、1.5mm/secの速度で引上げ、その後乾燥させて磁気ディスクを作成した。測定するポジションに磁気ディスクを入れ、その他の場所にはダミーディスクを入れ常に25枚でUV処理ができるような状態にした。塗布後の磁気ディスクのサンプルに対し、185nm/254nmの波長を持つ200WのUVランプを用いて95mmの磁気ディスクには10秒間、65mmの磁気ディスクには9秒間UV処理を行った。
上記手法により作製したサンプルについて、潤滑層の膜厚をフーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)により測定した。潤滑層の標準膜厚については、トータル膜厚が8.00Å、ボンド潤滑層の膜厚が6.00Å、ボンド率が75.0%になるように、磁気ディスクを作製した。
ここで、前述に示した「トータル膜厚」、「ボンド潤滑層の膜厚」、「ボンド率」について説明する。
一般に、カーボン表面に存在する官能基と潤滑剤との結合割合は、フッ素系溶媒による洗浄前の潤滑層の膜厚に対するフッ素系溶媒による洗浄後の潤滑層の膜厚の割合として表され、その百分率値が「ボンド率」と呼ばれる。
Figure 0005724746
ここで、洗浄前の潤滑層の膜厚が「トータル膜厚」であり、洗浄後の潤滑層の膜厚が「ボンド潤滑層の膜厚」である。「ボンド潤滑層の膜厚」は、実際にカーボン表面と結合している潤滑層の膜厚(量)を表している。
フッ素系溶媒としては、Vertrel XF(三井デュポンフロロケミカル社製)を用いることが一般的であるため、本評価においてもこの溶媒を用いている。
2、ボンド潤滑層の膜厚評価
前記プロセスにより作製したサンプルにUV処理を行い、ボンド率(カセット内でのボンド潤滑層の膜厚のバラつき)を測定した。最後周辺(23枚目〜25枚目)の磁気ディスクの滞留は、直接UV光照射後にUVランプハウスの下で所定時間(3.5”では10秒間、2.5”では13.5秒間)放置し、間接UV光を照射した。
図2は直径95mm磁気ディスクのボンド率を示すグラフであり、図3は直径65mmの磁気ディスクのボンド率を示すグラフである。図2および図3のデータを第1表〜第5表に示す。
Figure 0005724746
Figure 0005724746
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Figure 0005724746
Figure 0005724746
滞留は、25枚目の磁気ディスクに直接UV光を照射してカセットに戻した直後(カセット排出前)に所定の時間放置させボンド率の低い周辺(23枚目〜25枚目)へ間接UV光を照射し、ボンド率を上昇させる方法で行っている。図2の滞留ありの場合、滞留時間は直接UV光と同じ照射時間(9秒間)とした。図3の滞留1の場合、滞留時間は直接UV光と同じ照射時間(9秒間)とした。図3の滞留2の場合、滞留時間は直接UV光の1.5倍の時間(13.5秒間)とした。
図2のデータでは、最後周辺の磁気ディスクを滞留させることで滞留なしに比べてボンド率のバラつきが約0.3%の改善が見られ、図3ではボンド率のバラつきが滞留なしでは5.2%、滞留1では3.3%、滞留2では1.6%と滞留を入れることでバラつきを低減させる効果が見られる。
これらの結果から、磁気ディスクのサイズに関わらずボンド率の低くなる磁気ディスクの周辺に滞留処理をいれることが間接UV光の照射を促しボンド潤滑層の膜厚の形成に繋がるため、バラつきの改善に有効であると言える。
本発明によって、通常処理ではボンド潤滑層の膜厚が低い一部の磁気記録媒体に対して間接UV光の制御が可能となり、カセット内でのボンド潤滑層の膜厚のバラつきが低減でき均一な磁気ディスクの製造が可能となる。
10 装置
12 磁気ディスク
14 カセット
16 カーテン
18 UVランプハウス

Claims (2)

  1. 複数の磁気記録媒体を処理する方法であって、複数の磁気記録媒体の各々が、非磁性基体上に磁性膜、保護膜、および潤滑膜を含み、
    複数の磁気記録媒体をUVランプで照射する第1の照射工程を含み、
    複数の磁気記録媒体のうちの一部の磁気記録媒体をUVランプで追加的に照射する第2の照射工程を含む方法。
  2. 第2の照射工程が、一部の磁気記録媒体を所定の滞留時間滞留させながら照射する工程であり、所定の滞留時間が、第1の照射工程の1〜1.5倍の時間である、請求項1に記載の方法。
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