JP5724426B2 - 熱延鋼帯巻取装置用ロール - Google Patents
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Description
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、質量%で、C:2.8〜3.5%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1%以下、S:0.08%以下、Ni:3.5〜4.5%(4.5%を除く)、Cr:3.5〜5.0%(5.0%を除く)、Mo:0.3〜1.0%を含有し、残部実質的にFeで形成され、黒鉛およびベイナイトを主体とした基地からなる黒鉛晶出クロム鋳鉄で使用層が形成されているコイラー用ピンチロールが記載されている。
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、優れた耐食性と優れた耐焼付き性とを兼備し、耐久性に優れた熱延鋼帯巻取装置用ロールを提供することを目的とする。
芯材表面にサブマージアーク溶接法による肉盛溶接により、被覆層を形成した試験材を作成した。なお、使用する溶接ワイヤの組成を変化させ、種々の組成の被覆層とした。
被覆層は、mass%で、C:0.4〜1.02%、Cr:2.5〜12.4%の範囲で変化させ、Cr/Cを3.8〜30の範囲に変化させた、各種組成の被覆層とした。なお、C、Cr以外の成分は、Si:0.3〜1.3%、Mn:0.45〜3.0%、Ni:0.01〜0.16%の範囲でほぼ一定に含有し、さらにMo、Nb、V、Wは合計で4〜6%とほぼ一定で含み、残部Feおよび不可避的不純物とした。
(1)耐食性試験
得られた試験材の被覆層から、耐食性試験片(大きさ:2mm厚×20mm幅×20mm長さ)を採取し、図2に示す試験装置を用いて、耐食性を評価した。
Δm=(酸化後の試験片重量−酸化前の試験片重量)/(酸化前の試験表面積)
得られた、単位表面積当たりの、酸化による重量変化Δm(μg/cm2)に基づき、耐食性を評価した。
得られた試験材から、片面側が被覆層となるように、耐焼付き性試験片(大きさ:20mm厚×20mm幅×50mm長さ)を採取し、図3に示す要領で、耐焼付き性試験を実施し、耐焼付き性を評価した。
耐焼付き性試験は、試験片31を、該試験片31の被覆層33がSUS430製の相手材32(15mm厚×100mm幅×200mm長さ)と接触するように、セットし、相手材の長さ方向に繰り返し摺動させる試験とした。試験条件は次のとおりとした。
・相手材32の表面温度(下面を誘導コイルにより加熱):500℃
・接触面圧:0.49MPa(錘Wにより設定)
・往復摺動回数:700回
・合計摺動距離:42000mm
試験後、試験片31の摺動面の表面粗さを測定した。表面粗さは、試験片の幅方向に、JIS B 0601(2001)に準拠して、最大高さRzを測定した。なお、カットオフ値λc は1mm、基準長さは、試験片幅の両端を除いた中央域(18mm)とした。
図1から、Cr/Cが、19.0以上と大きくなると、Δmは0.025 μg/cm2以下と急激に少なくなり、耐食性が向上し、また、Cr/Cが24.5以上に大きくなると、Rzは40μm以上と急激に増加し、耐焼付け性が低下することがわかる。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、つぎのとおりである。
(1)芯材であるロール表面に、被覆層を形成してなる熱延鋼帯巻取装置用ロールであって、前記被覆層が、肉盛溶接で形成されてなり、かつmass%で、C:0.50〜0.65%、Cr:11.5〜12.5%を、Cr/Cが19.0〜24.5を満足するように含み、さらに、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%、Ni:0.05%以下を含有し、さらにNb、Mo、V、Wのうちの2種以上を合計で4〜6%含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するとともに、厚さが6mm以上であることを特徴とする熱延鋼帯巻取装置用ロール。
C:0.50〜0.65%
Cは、Cr、Fe等の炭化物形成元素と結合し、高硬度のCr炭化物およびセメンタイトを形成し、耐摩耗性、耐焼付き性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、Cは0.50%以上の含有を必要とする。Cが0.50%未満では、本発明におけるように、とくにCr含有量が高くなる場合には、使用時、例えば熱延鋼帯をピンチするような場合に、被覆層に焼付きが生じやすい。一方、0.65%を超えてC含有量が多くなると、Cr/Cが小さくなり、後述するCr含有量の範囲では、Cr/Cが所定の範囲を外れる場合があり、図1に示すように耐食性が低下する。このようなことから、Cは0.50〜0.65%の範囲に限定した。
Crは耐食性を向上させるとともに、Cと結合し高硬度のCr炭化物を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るために、本発明では、11.5%以上含有させる。一方、Crの多量含有は、フェライト相の生成を促進し、耐焼付き性を低下させる。このようなことから、Crは11.5〜12.5%の範囲に限定した。
C,Crは、上記した含有範囲内でかつ、Cr/Cが19.0〜24.5の範囲を満足するように調整する。これにより、優れた耐食性と優れた耐焼付き性を兼備した被覆層とすることができる。Cr/Cが、19.0未満では、溶接肉盛により被覆層を形成するに際し、凝固割れを生じるうえ、図1に示すように、Δmが、0.025μg/cm2を超えて増加し、耐食性が低下する。一方、Cr/Cが、24.5を超えて大きくなると、図1に示すように、Rzが40μmを超えて大きくなり、耐焼付き性が低下する。このようなことから、Cr/Cは、19.0〜24.5の範囲に限定した。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、強度増加にも寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.3%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて含有すると、強度が高くなりすぎて研磨性が低下する。このため、Siは0.3〜1.0%の範囲に限定した。
Mn:0.5〜3.0%
Mnは、脱酸剤として作用するとともに、強度増加にも寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超える含有は、強度が高くなりすぎて研磨性が低下する。このため、Mnは0.5〜3.0%の範囲に限定した。
Niは、オーステナイト形成元素であり、多量に含有すると、残留オーステナイト相の形成が顕著となり、耐焼付き性の低下を招く。このような耐焼付き性の低下は、Ni:0.05%以下の含有であれば許容できる。このため、本発明では、Niは0.05%以下に限定した。
Nb、Mo、V、Wのうちの2種以上:合計で4〜6%
Nb、Mo、V、Wはいずれも、基地組織を強化し、耐摩耗性、耐衝撃性を向上させる作用を有する元素であり、選択して2種以上を含有する。このような効果を得るためには、Nb、Mo、V、Wの合計で4%以上の含有を必要とする。なお、Nb、Mo、V、Wを合計で4%以上含有することにより、フェライト相の生成を抑制でき、耐焼付き性の低下を防止できるという効果もある。一方、合計で6%を超える含有は、これらの元素の偏析が著しくなり、これら偏析部を起点として表層部の欠け落ちが生じやすくなる。このため、Nb、Mo、V、Wのうちの2種以上を合計で4〜6%の範囲に限定した。なお、焼付き性と凝固割れ性の観点から、各元素の含有量は、Nb:1.0〜2.1%、Mo:0.7〜1.3%、V:0.9〜2.1%、W:0.4〜2.0%の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。各元素の含有量が上記した値より少ないと焼付きが、多すぎると凝固割れが発生しやすくなる。
つぎに、芯材であるロール1の表面に形成される被覆層2の、好ましい形成方法について説明する。本発明ロールの被覆層2の形成方法は、とくに限定する必要はないが、簡便さという観点から、肉盛溶接により形成することが好ましい。
肉盛溶接は、公知のサブマージアーク溶接方法を利用し、本発明では、溶接電極である溶接ワイヤを溶接アークにより溶融しつつ、溶接電極を、芯材であるロールの軸方向に移動させるとともに、ロールをロールの軸回りに回転させて、被覆層として、ロール表面に、溶融金属をスパイラル状に肉盛する。なお、肉盛溶接は、複数層、好ましくは3層以上積層して所望の厚さ6mm以上の被覆層を形成する。なお、被覆層の厚さは、用途に応じて所定の使用層(使用厚さ)を確保できるように調整することが好ましい。また、使用するワイヤ(溶接電極)として上記した組成のワイヤを用いることにより、上記した組成の被覆層とすることができる。
使用期間:14日で、ロール表面に焼付きが発生し、それ以上の使用が不可能な場合を「×」、使用期間:14〜30日の間に焼付きが発生した場合を「△」、使用期間:30日で焼付きが発生しない場合を「○」、として耐焼付き性を評価した。また、使用期間:14日で、ロール表面に段差(腐食)が発生し、それ以上の使用が不可能な場合を「×」、使用期間:14〜30日の間に段差(腐食)が発生した場合を「△」、使用期間:30日で、段差(腐食)が発生しない場合を「○」、として耐腐食性を評価した。
2 被覆層
4 ロール軸芯
A 中央部の長さ
B 両端部の長さ
21 エアポンプ
22 流量計
23 飽和空気発生器
24 水槽
25 温水
26 管状電気炉
27 石英管
28 トレイ
29 試験片
31 摺動試験片
32 相手材
33 被覆層
110 加熱炉
111 被圧延材
112 粗圧延機
114 クロップッシャー
115 デスケーリング装置
116 仕上げ圧延機(タンデム)
117 ワークロール
120 冷却ゾーン
124巻取装置
125ピンチロール(上ピンチロール)
Claims (1)
- 芯材であるロール表面に、被覆層を形成してなる熱延鋼帯巻取装置用ロールであって、
前記被覆層が、肉盛溶接で形成されてなり、かつmass%で、C:0.50〜0.65%、Cr:11.5〜12.5%を、Cr/Cが19.0〜24.5を満足するように含み、さらに、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%、Ni:0.05%以下を含有し、さらにNb、Mo、V、Wのうちの2種以上を合計で4〜6%含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するとともに、厚さが6mm以上であることを特徴とする熱延鋼帯巻取装置用ロール。
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JP2011025275A JP5724426B2 (ja) | 2011-02-08 | 2011-02-08 | 熱延鋼帯巻取装置用ロール |
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