JP4352819B2 - 巻取装置用ピンチロール - Google Patents

巻取装置用ピンチロール Download PDF

Info

Publication number
JP4352819B2
JP4352819B2 JP2003306527A JP2003306527A JP4352819B2 JP 4352819 B2 JP4352819 B2 JP 4352819B2 JP 2003306527 A JP2003306527 A JP 2003306527A JP 2003306527 A JP2003306527 A JP 2003306527A JP 4352819 B2 JP4352819 B2 JP 4352819B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
roll
pinch roll
coating layer
less
rolled
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003306527A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005074455A (ja
Inventor
裕二 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2003306527A priority Critical patent/JP4352819B2/ja
Publication of JP2005074455A publication Critical patent/JP2005074455A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4352819B2 publication Critical patent/JP4352819B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Winding, Rewinding, Material Storage Devices (AREA)

Description

本発明は、金属帯を巻取装置で巻き取る際に使用する、巻取装置用ピンチロールに関する。
例えば鋼帯の熱間圧延ラインでは、被圧延材(鋼帯)を巻取装置で巻き取る際に、巻取装置の上流に設置した上、下のピンチロールにより被圧延材を挟持(ピンチ)しつつ、該上、下のピンチロールを回転させることで、被圧延材のばたつきを抑制し、被圧延材に適正張力を作用させながら、巻き取っている。この熱間圧延ラインにおける巻取装置用ピンチロールは、被圧延材との接触による熱、冷却水や水蒸気による腐食、被圧延材先端噛込時の衝撃、被圧延材搬送速度とピンチロール周速との不一致によるスリップ(摺)等を受ける過酷な条件下で使用されており、このため、焼付、腐食、摩耗等により使用できる期間に限度があり、製造コストの点で問題となっている。
帯鋼の熱間圧延ライン以外で用いられるピンチロールでも、腐食(冷却水によるものとは限らない)、摩耗は問題になる。一般に、巻取装置用ピンチロールには、組成が質量%で、C:0.4%以上、Cr:5.0%以下を含有するFe系材料が使用されているが、それらへの対策を取った種々のロール材料が提案されている。
例えば、クロム鋳鉄材料を熱間圧延ラインにおける巻取装置用ピンチロールとして使用することが知られている。特許文献1記載のクロム鋳鉄材料は、組成が質量%で、C:2.8〜3.5%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1%以下、S:0.08%以下、Ni:3.5〜4.5%(4.5%を除く)、Cr:3.5〜5.0%(5.0%を除く)、Mo:0.3〜1.0%を含有し、残部実質的にFeからなる。
上記のFe系材料やクロム鋳鉄材料を使用したロールは、中空である場合もあるし、ロール半径方向に異種の組成の金属を積層あるいは被覆させた場合もあるが、ロール長手方向に組成は均一である。
特開平1−278906号公報
しかしながら、上記特許文献1の組成のクロム鋳鉄材料を帯鋼の熱間圧延ラインのピンチロールに使用した場合、高温の被圧延材とピンチロールの接触、その状態でのスリップに起因した焼付は防止できるものの、何日か使用していくうちに、ピンチロールの長手方向両クォータ部にプロフィール段差ができ、両プロフィール段差間よりも広幅の被圧延材をピンチすると被圧延材側に筋模様が入るようになる、という問題があった。
本発明者は、この原因を鋭意究明した結果、腐食により、ピンチロールの両端部における直径の減少量が中央部における直径の減少量を上回り、これによりピンチロールの長手方向両クォータ部に形成された両プロフィール段差が、両プロフィール段差間よりも広幅の被圧延材表面に転写され、筋模様となることがわかった。
すなわち、巻取装置により挟幅の被圧延材(以下、狭幅材)を巻き取っている時、回転するピンチロールの両端部は、狭幅材と接触せず、水蒸気に曝されている。このため、狭幅材と接触しているピンチロールのロール長手方向中央部に比べ、同両端部では腐食がより進行する。何mm以上を広幅材といい、何mm未満を狭幅材というかは、その熱間圧延ラインで製造する被圧延材(何日かで数千本に及ぶ)の幅構成によるため、一概には言えないが、大体、700〜1300mmが両者の境目である。何日間かの継続使用により狭幅材と接触しないピンチロールの両端部と、狭幅材と接触している中央部との間に図6(b)中に矢印で示すような腐食によるピンチロールの長手方向のプロフィール段差が形成される。プロフィール段差のできる位置は、これも一概には言えないが、大体、被圧延材相当で700〜1300mmの幅エッジと接触する位置、ピンチロールの長手方向中央振分で350〜650mmのどこかの位置にプロフィール段差ができる。このようなピンチロールで、両プロフィール段差間よりも幅の広い広幅材をピンチすると、広幅材は、狭幅材がピンチロールと接触していた通板部分より両端部側でなおかつ腐食による長手方向のプロフィール段差よりもさらに両端部側のピンチロール表面でもピンチされることがあり得るから、広幅材の表面には腐食によるピンチロールの長手方向のプロフィール段差が転写される。
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題を改善することにあり、狭幅材を継続して巻き取った場合でも腐食によるピンチロールの長手方向のプロフィール段差がピンチロールの中央部と両端部の間に形成され難く、しかも高温の被圧延材とピンチロールの接触、その状態でのスリップに起因した焼付も抑制でき、長期間使用することができる巻取装置用ピンチロールを提供することにある。
本発明は、巻取装置用ピンチロールであって、ロール母材に金属を被覆してなり、該ピンチロールの長手方向中央部に被覆した金属は、組成が質量%で、C:0.4%以上、Cr:5.0%以下を含有し、かつCr/Cが12.5以下であり、該ピンチロールの長手方向両端部に被覆した金属は、C:0.3%以下、Cr:5.0%以上を含有し、かつCr/Cが16以上であり、かつ該ピンチロールの長手方向中央部および両端部に被覆した金属とも、Ni:0.5%以下、Mo、Nb、V、Wのうちから選ばれた1種または2種以上の合計:2〜6%を含有し、残部、鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする巻取装置用ピンチロールである。
本発明によれば、狭幅材を継続して巻き取った場合でも、金属帯と非接触となるピンチロールの両端部の耐食性を向上することができるため、腐食によるピンチロールの長手方向のプロフィール段差が形成され難く、しかも金属帯とピンチロールのスリップに起因した焼付が抑制でき、長期間使用することができる。このため、手入れ研磨や切削あるいは肉盛溶接などの補修費の削減の効果もある。
上述の例でいうところの熱間圧延ラインにおける巻取装置用ピンチロール(以下、単にロールともいう)は、例えば図1(a)に示すような外形形状を有し、図1(b)に示す内部構造を有するのが好ましい。図1中、符号1は、金属を被覆するロール母材を示し、中実でも中空でもよく、中空の場合は内部を水冷することができる。符号2、3は、金属の被覆層を示す。
発明を実施するための最良の形態のロールは、両端部がテーパ状で、中央部がフラットとされ、フラットな中央部の長さAに相当するロール母材1表面に金属を被覆してなる被覆層2と、テーパ状の両端部の長さBに相当するロール母材1表面に金属を被覆してなる被覆層3とを有する。このロールの使用時、中央部の長さAよりも幅の狭い被圧延材は、フラットな中央部の長さAに相当する部分の範囲内、すなわち、被覆層2の部分にのみ接触して、ピンチされるようになっており、一方、中央部の長さAよりも幅の広い被圧延材は、フラットな中央部の長さAの範囲を超えた、テーパ状の両端部の長さBに相当する部分の範囲とも接触して、ピンチされるようになっている。
なお、このようなロール形状は、中央部の長さAよりも幅の広い被圧延材を挟持(ピンチ)したとき、もしも被圧延材が蛇行しようとすると、それを熱間圧延ラインの幅中央に引き戻すセンタリング作用を発揮することができるので好ましいのであるが、本発明はこれに限るものではない。
なお、図1(a)、図1(b)中、符号4は、ロール軸芯を示す。
次いで、図1(b)に示す中央部の被覆層2の金属組成および両端部の被覆層3の金属組成の限定理由について説明する。
中央部の被覆層2の金属組成の限定理由(%は質量%)
C:0.4%以上
Cは、Cr、Feと結合して高硬度Cr炭化物およびセメンタイトを形成し、耐摩耗性の向上に寄与するが、0.4%未満では、使用時、例えば高温の金属帯をピンチするに際し、短期間の使用により、中央部の被覆層2に焼付が生じやすくなる。そこで、中央部の被覆層2の金属組成は、被圧延材とピンチロールのスリップによる焼付を防止するため、C:0.4%以上と限定した。
ここで、図2を参照しつつ、さらに好適な態様について説明する。
図2は、後述する実施例で得た、Cr/Cが耐焼付性および耐食性に及ぼす影響を例示するグラフである。図2中、符号(イ)は、耐焼付性に優れる領域を示し、符号(ロ)は、耐食性に優れる領域を示す。図2(耐焼付性(左目盛り)の変化を示すマル印を参照)からわかるように、摺動試験後の試験片の摺動面の幅方向に測定した表面粗さRy(JIS B0601:2001にいう輪郭曲線の最大高さRz(3 ))が60μm 以下となる範囲を耐焼付性の好適範囲とすると、Cr/Cが12.5未満を満たすような組成とするのがさらに好適ということになる。
例えば、Cr含有量を一定とし、C含有量が増えた場合には、Cr/Cが小さくなり、図2からわかるように耐焼付性が向上する。しかしながら、Cr/Cが小さくなり過ぎると、今度は一方で、同図2(耐食性(右目盛り)の変化を示す四角部を参照)からわかるように、酸化後の試験片の重量変化量が増大する、すなわち耐食性が悪くなる傾向がある。但し、Cr/C≧6では、酸化後の試験片の重量変化が0.20μg/cm2 以下であり、これを満たせば耐食性の点から中央部の被覆層2として好適なことがわかっている。すなわち、例えばCr含有量を耐焼付性から規定される上限の5.0%とし、C含有量を0.83%を超えて増やした場合、Cr/C(Cr=5.0%、C=0.83%で、Cr/C=5.0/0.83=6.0)が6未満となってしまい、中央部の被覆層2の耐食性が比較的劣るようになる可能性が出てくる。そこで、中央部の被覆層2のC含有量は、耐食性の点から0.83%以下とするのが好ましい。
Cr:5.0%以下
Crは、Cと結合してHv1350程度の高硬度Cr炭化物を形成し、耐摩耗性向上に寄与する。一方、5.0%を超えて含有させた場合、耐焼付性が顕著に低下する。そこで、中央部の被覆層2の金属組成は、高温の被圧延材とピンチロールの接触、その状態でのスリップによる焼付を防止するため、Cr:5.0%以下と限定した。なお、中央部の被覆層2のCr含有量が、1.5%未満となると、高硬度Cr炭化物が不足し、耐摩耗性が不十分となる。そこで、ロール中央部被覆層2のCr含有量は、1.5%以上とするのが好ましい。
Ni:0.5%以下
Niは、基地組織を微細にし、靭性を向上させる元素である。靭性を向上させることにより被圧延材先端の噛込時の衝撃によっても欠け落ちたりしにくくなる。すなわち、耐衝撃性を向上することができる。絶対不可欠の成分というわけではないが、この効果を十分発揮するためには、0.1%以上含有させるのが好ましい。一方、0.5%を超えた場合、残留オーステナイトγが増大し、耐焼付性が悪くなる。そこで、0.5%以下とする。
Mo、Nb、V、Wのうちから選ばれた1種または2種以上の合計:2〜6%
上記の各元素は、基地組織を強化し、耐衝撃性、耐摩耗性を向上する。これらの効果を発揮するため、上記の各元素のうちから選ばれれた1種または2種以上を合計で2〜6%含有させる。上記の各元素のうちから選ばれた1種または2種以上の合計が2%未満では、それらの効果が不十分となり、一方、上記の各元素のうちから選ばれた1種または2種以上の合計が6%を超えると、偏析しやすくなり、この偏析の生じた部分を起点とする表層の欠け落ちが生じやすくなる。そこで、上記の各元素は、1種または2種以上を合計で2〜6%含有するようにした。
また、P、Sは、脆化を抑制する観点から含有量が少ないほど望ましく、P:0.1%以下、S:0.08%以下とするのが望ましい。また、Si、Mnは、脱酸を促進したい観点から、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%とするのが望ましい。
上記中央部の被覆層2の金属組成は、残部、鉄および不可避的不純物からなる。
両端部の被覆層3の金属組成の限定理由(%は質量%)
ロールの両端部は、中央部に比べて高温の被圧延材と接触する頻度が低くなる。ロールの長手方向中央部を含め、そのラインで製造する製品金属帯の最小幅の金属帯(被圧延材)と接触する領域は、全ての被圧延材と接触するのに対し、両端部にいくほど被圧延材幅よりも両端の非接触部分に該当する頻度が増えるからである。このことから、両端部の被覆層3には、中央部の被覆層2ほどの耐焼付性は必要とされず、耐焼付性よりもむしろ、狭幅材を継続して巻き取った際に、腐食によるロール長手方向のプロフィール段差が形成され難くする必要があることから、耐食性を高める組成とすることが必要となる。
C:0.3%以下
Cは、Cr、Feと結合して高硬度Cr炭化物およびセメンタイトを形成し、耐摩耗性の向上に寄与するが、0.3%を超えた場合、耐食性が不十分となる。そこで、両端部の被覆層3の金属組成はC:0.3%以下とした。
ここで、図2を参照しつつ、さらに好適な態様について説明する。図2(耐食性(右目盛り)の変化を示す四角印を参照)からわかるように、酸化後の試験片の重量変化量が0.1μg/cm2 以下となる範囲を耐食性の好適な範囲とすると、Cr/Cが16以上を満たすような組成とするのがさらに好適ということになる。
例えば、Cr含有量を一定とし、C含有量を減らした場合には、Cr/Cが大きくなり、図2からわかるように、酸化後の試験片の重量変化が小さくなって耐食性が向上する。しかしながら、Cr/Cが大きくなり過ぎると、今度は一方で、同図2(耐焼付性(左目盛り)の変化を示すマル印を参照)からわかるように、摺動試験後試験片の摺動面の表面粗さRyが増大する、すなわち耐焼付性が悪くなる傾向がある。但し、Cr/Cが26(Cr=5.0%、C=0.19%で、Cr/C=5.0/0.19=26)までは、摺動試験後試験片の摺動面の先述と同じ表面粗さRyが200μm を超えないので、これを満たせば、耐焼付性の点から両端部の被覆層3として好適なことがわかっている。すなわち、両端部の被覆層3に、被圧延材が接触した場合でも、高温の被圧延材とピンチロールの接触、その状態でのスリップに起因した焼付が抑制できる。そこで、両端部の被覆層3のC含有量は、耐焼付性の観点から0.19%以上とするのが好ましい。
Cr:5.0%以上
Crは、上述したとおり耐摩耗性向上に寄与する。しかし、含有量が5.0%未満になると、耐食性が不十分となる。そこで、両端部の被覆層3の金属組成はCr:5.0%以上と限定した。なお、Cr含有量を増やすほど、耐摩耗性は向上するものの、ロールの製造コストが高くなるため、ロールコストに見合った耐食性向上すなわち使用できる期間の延長効果がある8.0%を両端部の被覆層3のCr含有量の上限とするのが好ましい。
Ni:0.5%以下
Niは、上述した中央部の被覆層2の金属組成の限定理由と同じ理由により、両端部の被覆層3においてもNi含有量:0.5%以下とした。また、基地組織を微細にし、靭性を向上させる元素であり、被圧延材先端の噛込時の衝撃によっても欠け落ちにくくなるため、両端部の被覆層3においても0.1%以上含有させるのが好ましい。
Mo、Nb、V、Wのうちから選ばれた1種または2種以上の合計:2〜6%
この限定理由は、中央部の被覆層2の金属組成の限定理由と同じであるので説明を省略する。また、P、Sは、脆化を防ぐ観点から、含有量が少ないほど望ましく、P:0.1%以下、S:0.08%以下とするのが望ましい。また、Si、Mnは、脱酸を促進したい観点から、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%とするのが望ましい。
以上説明した両端部の被覆層3の金属組成は、残部、鉄および不可避的不純物からなる。
上述した中央部の被覆層2および両端部の被覆層3は、溶接金属を肉盛溶接することで形成することができる。例えばバンド法による肉盛溶接を適用することができる。
バンド法による肉盛溶接は、バンド厚よりバンド幅が広い溶接用バンド材を溶接電極として使用する方法で、溶接条件を適宜設定して溶接金属を肉盛溶接したのち切削および/又は研磨することにより、例えば図1に示したような形状のロールを得ることができる。バンド法による肉盛溶接は、公知の溶接方法であって、溶接電極として使用したバンド材を溶接アークにより溶融しつつ、溶接電極をロール軸方向に沿って移動させるとともに、ロールをロール軸回りに回転させ、回転するロール母材に溶接金属をスパイラル状に肉盛する方法である。その際、ロールの中央部の長さAの部分に使用する溶接用バンド材と、ロールの両端部の長さBの部分に使用する溶接用バンド材を異なる組成の材料とすることにより、上述したような中央部と両端部で異なる組成の被覆層を形成できる。
金属をロール母材1表面に肉盛する肉盛溶接方法によれば、組成の境界がロール長手方向のどこにくるか、そのロール軸方向位置を、製造する被圧延材の幅構成に応じて簡単に変更できる。例えば、被覆層2のロール軸方向の長さAを、700mmとすれば、それに相当するロール長手方向中央部の長さA以下の幅の狭幅材を巻取装置により巻き取る際には、被圧延材を被覆層2のみでピンチすることになり、それに相当するロール長手方向中央部の長さAを超える幅の広幅材を巻取装置により巻き取る際には、被圧延材を被覆層2および被覆層3の両方でピンチすることになる。
被覆層2はロール長手方向中心振分どこまでとするのが好適で、それに対応して被覆層3は中心振分どこからとするのが好適か。それは、その工場特有のプロダクトミックスの違いによる幅構成の違いからプロフィール段差のできる位置のロール長手方向位置の違いになって現れるその経験的な値を基にプロダクトミックスの多少の変動が起こった場合でも、プロフィール段差が被覆層3に完全にかかるように中心振分両方とも50mm程度余裕を見越して決めるのが好ましい。その条件も考慮して、結局、被覆層2のロール軸方向長さAを中心振分300〜700mmずつとし、それよりもロール軸方向両端寄りの部分に相当する範囲の長さBについてはロールの軸方向長さの全長からAを差し引いた値をさらに、2分して、この値をBとするのが好ましいことになる。
なお、以上の説明では、フラットな中央部とテーパ状の両端部をもつピンチロールを例に説明したが、本発明はこれに限るものではなく、サインカーブ、べき関数、あるいは完全にフラットなプロフィールその他のプロフィールをもつ形状のものであってもよい。
また、本発明は熱間圧延ラインの巻取装置用ピンチロール以外にも、摩耗や腐食などが問題となる、例えば冷間圧延ラインや酸洗ライン、連続焼鈍ラインやリコイリングライン、スキンパスラインなどの巻取装置用ピンチロールにも同様に適用できる。
さらに、帯鋼に限らず、そして、圧延された直後の被圧延材に限らず、その他の金属帯を巻き取るのに用いられる巻取装置用ピンチロールにも同様に適用できる。
〔実施例1〕
組成を変えた試験片を用い、熱間圧延ラインにおけるピンチロールの使用条件に対応させて、以下の耐食性評価試験および耐焼付性評価試験を行った。
(耐食性評価試験)
耐食性評価用試験片の寸法:厚み2mm、幅20mm、長さ20mm
耐食性評価用試験片の組成:C:0.4%以上、Cr:5.0%以下を含有するものから、C:0.3%以下、Cr:5.0%以上を含有するものまで広範囲に変え、各試験片は、それぞれ、Ni:0.5%以下、Mo、Nb、V、Wのうちから選ばれた1種または2種以上の合計:2〜6%を含有し、残部、鉄および不可避的不純物からなる。
耐食性評価試験方法:図3に示す耐食性評価試験装置を用い、酸化試験片39の水蒸気雰囲気中での酸化試験を行った。酸化後の試験片重量の変化は、次のようにして測定した。酸化試験片39をトレイ38に載置し、水蒸気雰囲気の石英管37内に挿入し、管状電気炉36により600℃×96hの加熱を行い、冷却した後に酸化後の試験片重量を、トレイ38内の剥離酸化物も含めて測定した。そして単位表面積当たりの酸化後の試験片重量の変化を下記式により求めた。
単位表面積当たりの酸化後の試験片重量の変化=(酸化後の試験片重量−酸化前の試験片重量)/酸化前の試験表面積
なお、図3中、符号31はエアポンプを示し、流量計32により流量を500ml/minとした空気が水槽34内の50℃の温水35中に吹き出され、飽和空気集合器33により集められ、管状電気炉36内の石英管37に供給される。
(耐焼付性評価試験)
耐焼付性評価用試験片41の寸法:厚さ20mm、幅20mm、長さ50mm(但し、図4に示すように下記溶接金属を肉盛した被覆層43を有する。)
耐焼付性評価用試験片の被覆層43の溶接金属組成:耐食性評価用試験片の組成と同じ
耐焼付性評価試験方法:上記摺動試験片41を用い、厚さ15mm、幅100mm、長さ200mmのSUS430製の相手材42と接触させ、図4に示ように繰り返し摺動させた後、摺動試験片41の摺動面の表面粗さRyを測定した。
相手材3の表面温度(下面を誘導コイルにより加熱):500℃
接触面圧:0.49MPa(錘Wにより設定)
往復摺動回数:700回
合計摺動距離:42000mm
表面粗さRyはJIS B0601:2001にいうRz(3) の幅方向に測定し、カットオフ値λc は1mm、基準長さは試験片幅の両端を除いた中央域の18mmとした。
表面粗さRyの測定方向:摺動方向に対して直角な試験片幅方向(図4で紙面の法線方向)
上述した耐食性評価用試験片の組成、および耐焼付性評価用試験片の被覆層43の溶接金属組成における、Cr/C(質量比)を横軸に取り、縦軸に試験値を取って図2に示した。
図2中、領域イは、摺動試験後試験片の摺動面の表面粗さRyが60μm 以下と小さく、耐焼付性に優れる領域を示す。この耐焼付性に優れる領域の組成を有する金属でロールの中央部を被覆し、上ピンチロールとして使用した場合、中央部には焼付が生じないことが別途、図5の上ピンチロール125に適用して確認されている。
一方、領域ロは、単位表面積当たりの酸化後の試験片重量変化が0.10μg/cm2 以下と小さく、耐食性に優れる領域を示す。耐食性に優れる領域の組成を有する溶接金属でロールの両端部を被覆し、ピンチロールとして使用した場合、両端部に腐食段差が生じないことが別途、図5の上ピンチロール125に適用して確認されている。
図2に示す結果から、中央部の被覆層の溶接金属中のCr/C(質量比)を12.5以下とすることにより、ピンチロールとして使用した場合、中央部には焼付が生じないことがわかった。また、同図2から、両端部の被覆層の溶接金属中のCr/C(質量比)を16以上とすることにより、ピンチロールとして使用した場合、両端部に腐食段差が生じないこともわかった。
またさらに、Cr/C(質量比)が小さくなるほど、単位表面積当たりの酸化後の試験片の重量変化が増えるものの、Cr/C(質量比)=6までの範囲内とすることで、前記試験片の重量変化を0.20μg/cm2 以下とすることができ、ロールの中央部の被覆層の溶接金属として好適に使用できることが別途、図5の上ピンチロール125に適用して確認されている。これとは逆にCr/C(質量比)が大きくなるほど、摺動試験後試験片の摺動面の表面粗さRyが粗くなるが、Cr/C(質量比)=26までの範囲内とすることで、前記表面粗さRyを200μm 以下とすることができ、ロール両端部の被覆層の溶接金属として好適であることも別途、図5の上ピンチロール125に適用して確認されている。
このことから、ピンチロールの被覆層の溶接金属は、組成が上記を満足し、Cr/C(質量比)が、中央部では耐焼付性の観点から12.5以下を満たし、両端部では耐食性の観点から16以上を満たすのが好ましいことがわかったのである。
〔実施例2〕
組成が表1に示す発明例と比較例のロールを、図5に示すような公知の熱間圧延ライン100の上ピンチロール125に適用し、その試験結果を表2にまとめて示した。
実機試験は、通常の使用期間(1ヶ月)より短い14日間、通常の使用期間(1ヶ月)、通常の使用期間より長い45日の3段階とし、ロールの中央部長さAは900mm、中央部直径は650mm、ロールの端部長さBは650mmで、テーパ量は直径当たり2.5mm/650mmとした。
但し、表2中、耐焼付性×のものは、14日間の使用により焼付が発生しそれ以上使用できないロールであることを示し、耐焼付性△のものは、14日間を超えて継続使用した場合、1ヶ月に至る以前に焼付が発生するロールであることを示す。
耐焼付性○のものは、通常の使用期間(1ヶ月)より長く使用した場合でも、焼付が発生しないロールであることを示す。また、耐焼付性が◎とは、組成に鑑みて耐焼付性が○のものより焼付が発生し難いロールであることを示す。耐食性については、腐食段差を対象として、上述した焼付と同様にして評価した。なお、比較例のロールは、ロール長手方向に組成を変化させていないものである。
Figure 0004352819
Figure 0004352819
なお、上記した図5に示す帯鋼の熱間圧延ライン100には、加熱炉110、粗圧延機112、クロップシャ114、デスケーリング装置116、仕上圧延機118,冷却ゾーン122、巻取装置124が上流側から順に配設されている。符号190はビジネスコンピュータを示し、符号170はプロセスコンピュータを示す。プロセスコンピュータ170は制御装置150を介して、各装置を制御している。符号111は、仕上圧延機118のワークロール119により仕上げ圧延を施され、冷却ゾーン122で水冷され、巻取装置124で巻き取られて熱延鋼板とされる被圧延材を示す。
表2に示す結果から、ロール長手方向に組成を変化させず、かつ本発明の組成の範囲を外れた比較例の場合には、通常の使用期間(1ヶ月)より短い14日間で、すでに、ピンチロールの中央部に焼付が発生するか、もしくは、ロールの両端部に腐食段差が発生した。これに対して、ロール長手方向に組成を変化させた本発明の組成の範囲内の発明例の場合は、ピンチロールの中央部および両端部のどちらにも焼付が発生せず、ピンチロールの両端部に腐食段差も発生しないという良好な結果が得られた。
本発明の実施の形態の一例に係るピンチロールを説明する模式図である。 溶接金属中のCr/C(質量比)が耐焼付性および耐食性に及ぼす影響を示すグラフである。 耐食性評価試験方法を説明する模式図である。 耐焼付性評価試験方法を説明する模式図である。 本発明を適用する帯鋼の熱間圧延ラインの模式図である。 従来技術の問題を説明する模式図である。
符号の説明
1 ロール母材
2、3 被覆層
4 ロール軸芯
A 中央部の長さ
B 両端部の長さ
イ 耐焼付性に優れる領域
ロ 耐食性に優れる領域
31 エアポンプ
32 流量計
33 飽和空気発生器
34 水槽
35 温水
36 管状電気炉
37 石英管
38 トレイ
39 酸化試験片
41 摺動試験片
42 相手材
43 被覆層
100 熱間圧延ライン
124 巻取装置
125 上ピンチロール

Claims (1)

  1. 巻取装置用ピンチロールであって、ロール母材に金属を被覆してなり、該ピンチロールの長手方向中央部に被覆した金属は、組成が質量%で、C:0.4%以上、Cr:5.0%以下を含有し、かつCr/Cが12.5以下であり、該ピンチロールの長手方向両端部に被覆した金属は、C:0.3%以下、Cr:5.0%以上を含有し、かつCr/Cが16以上であり、かつ該ピンチロールの長手方向中央部および両端部に被覆した金属とも、Ni:0.5%以下、Mo、Nb、V、Wのうちから選ばれた1種または2種以上の合計:2〜6%を含有し、残部、鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする巻取装置用ピンチロール。
JP2003306527A 2003-08-29 2003-08-29 巻取装置用ピンチロール Expired - Fee Related JP4352819B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003306527A JP4352819B2 (ja) 2003-08-29 2003-08-29 巻取装置用ピンチロール

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003306527A JP4352819B2 (ja) 2003-08-29 2003-08-29 巻取装置用ピンチロール

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005074455A JP2005074455A (ja) 2005-03-24
JP4352819B2 true JP4352819B2 (ja) 2009-10-28

Family

ID=34409583

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003306527A Expired - Fee Related JP4352819B2 (ja) 2003-08-29 2003-08-29 巻取装置用ピンチロール

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4352819B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5182640B2 (ja) * 2008-12-01 2013-04-17 新日鐵住金株式会社 コイル精整ラインにおける先端通板方法
JP5724426B2 (ja) * 2011-02-08 2015-05-27 Jfeスチール株式会社 熱延鋼帯巻取装置用ロール
JP5724435B2 (ja) * 2011-02-18 2015-05-27 Jfeスチール株式会社 鋼帯の巻きずれ防止方法
JP3184707U (ja) * 2013-04-30 2013-07-11 日鉄住金ハード株式会社 ピンチロール及びラッパーロール
CN110241418A (zh) * 2019-07-18 2019-09-17 泰尔(安徽)再制造技术服务有限公司 一种卷取机夹送辊及其激光熔覆方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005074455A (ja) 2005-03-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6760425B2 (ja) スケール密着性に優れた熱延鋼板およびその製造方法
JP6256184B2 (ja) 高強度鋼板の製造方法
JP2001181798A (ja) 曲げ加工性に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法ならびに冷延鋼板の製造方法
JP4352819B2 (ja) 巻取装置用ピンチロール
JP5320084B2 (ja) デスケーリング性のよい高Cr含有鋼材の製法
EP3556895A1 (en) High-carbon hot-rolled steel sheet having excellent surface quality and manufacturing method therefor
JP5458654B2 (ja) 熱間圧延機用ワークロールとその製造方法
JP6433493B2 (ja) 熱延工場巻取り設備のロール
JP5724426B2 (ja) 熱延鋼帯巻取装置用ロール
JP6292362B1 (ja) 熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロール
JP3438336B2 (ja) 高速度鋼系圧延用ロール外層材
JP2848646B2 (ja) 熱間圧延設備に於けるコイラ用ロールの製造法
JP5458655B2 (ja) 熱間仕上圧延機用ワークロール、熱間仕上圧延機列と圧延方法
TW201600187A (zh) 熱軋工廠捲繞設備的輥子
JPH05337690A (ja) 耐摩耗性及び耐ビードマーク性に優れたサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ
KR20180084108A (ko) 열간 압연 프로세스용 롤 및 그 제조 방법
JPH08121464A (ja) 熱延工場巻取機用ロール
JP4913536B2 (ja) 熱間圧延巻取り設備用のロール及びその調整方法
JPH0192319A (ja) 熱間圧延設備におけるコイラ用ロールの製造法
CN114799420B (zh) 一种热轧层流冷却辊的修复方法
JP2873129B2 (ja) 耐摩耗性、耐食性及び耐ビードマーク性に優れた肉盛ロールの製造方法
JP2000160283A (ja) 耐摩耗性と耐熱亀裂性に優れた圧延用ロール
CN113166864B (zh) 热轧用辊外层材料和热轧用复合辊
JP4214334B2 (ja) ステンレス鋼の熱間圧延方法
JP5142324B2 (ja) Cr−Ni系ステンレス鋼帯の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060526

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20061129

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090331

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090527

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090707

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090720

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120807

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees