JP5724372B2 - エンジンの燃料噴射制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンに対して燃料噴射を行う電子制御式の燃料噴射装置を備えた車両において、このエンジンの空燃比の適正化を図る燃料噴射装置の制御方法に関する。
従来、自動車、自動二輪車等の車両に用いられるエンジンには吸気管を介して燃料噴射装置が接続されており、この燃料噴射装置からエンジンの吸気ポート側に向けて燃料を噴射することで、エンジンの燃焼室に燃料を供給できるようになっている。
このような燃料噴射装置の制御方法において、例えば車両が減速中であるときに、一時的に燃料噴射を停止して燃料の節減を図る所謂燃料カット制御が知られている。この燃料カット制御は、燃料を節減する方法としては高い効果を有する。
ところで、燃料噴射装置は、上記のような燃料カット制御中で無い限り、クランクシャフトの回転周期と同期した短い周期で、エンジンの吸気ポート側に向けて燃料を噴射するように制御されている。このような同期噴射制御において、燃料噴射装置から噴射された燃料の一部は吸気ポートの壁面に付着し、次の吸気時に噴射された燃料と共に燃焼室内に送られる。従って、燃料噴射装置は、この吸気ポートに付着する燃料の量をあらかじめ予測して燃焼室内で理想的な空燃比となるよう、燃料噴射量を調整している。
ところが、長時間にわたって燃料カット制御が継続されると、吸気ポートが乾燥することがある。このような状態で燃料カット制御から復帰すると、燃料がわずかに不足するため、燃焼室内の空燃比が適切にならない問題がある。このような空燃比の異常により不適切な燃焼が発生すると、運転者に不快な振動をもたらすだけでなく、エンジンから排出された未燃焼のガスが排気管内で爆発する所謂アフターバーンが発生して、排気管に収納された触媒を加熱又は損傷させ、その機能を低下させる虞がある。
この問題に対し、特許文献1に開示されるように、燃料カット制御からの復帰が判定されると、クランクシャフトの回転周期とは独立して燃料噴射装置からエンジンに燃料を噴射する非同期噴射を、燃料カット制御の時間に応じて噴射量を変化させて実行する制御方法が知られている。
特開平5−141293号公報
しかしながら、上記のような制御方法では、燃料カット制御からの復帰の判定が成された後に非同期噴射が実行されるように制御されている。そのため、実際上のエンジンにおいては、非同期噴射が実行される前にクランクシャフトが燃料噴射位置に到達して同期噴射が実行され、これに伴って、燃料が不足した状態で燃焼が行われる問題があった。
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、燃料カット制御からの復帰時において、エンジンに対して確実に燃料を供給し、常に適切な燃焼状態を保つことができるエンジンの燃料噴射制御方法を提供することを目的とする。
本願第1発明は、エンジンに対して燃料噴射を行う燃料噴射装置と、複数のギアポジションの間でシフトされる変速装置と、該変速装置のギアポジションを検出するギアポジションセンサと、を備えた車両におけるエンジンの燃料噴射制御方法であって、前記エンジンの回転に同期した前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に実行させる同期噴射制御と、前記エンジンの回転とは独立した前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に実行させる非同期噴射制御と、前記車両の減速中又は停車時に前記同期噴射制御による前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に停止させる燃料カット制御と、を実行するステップを含み、前記燃料カット制御中に、前記ギアポジションセンサが検出した前記変速装置のギアポジションが予め設定されたギアポジションより低いことを条件に、前記非同期噴射制御による燃料噴射を実行することを特徴とする。
このような構成を採用することにより、燃料カット制御中であってもエンジンに燃料を供給することができ、燃料カット制御からの復帰時には、確実に適切な燃焼状態を保つことができる。また、燃料カット制御からの復帰時における発生トルクが大きいギア領域においてのみ非同期噴射制御を行うことが可能となり、燃料カット制御からの復帰時における燃焼状態を適切に保つと共に、従来の燃料噴射制御と比較して、燃料消費量を減少させることができる。
本願第2発明は、エンジンに対して燃料噴射を行う燃料噴射装置と、複数のギアポジションの間でシフトされる変速装置と、を備えた車両におけるエンジンの燃料噴射制御方法であって、前記エンジンの回転に同期した前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に実行させる同期噴射制御と、前記エンジンの回転とは独立した前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に実行させる非同期噴射制御と、前記車両の減速中又は停車時に前記同期噴射制御による前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に停止させる燃料カット制御と、を実行するステップを含み、前記燃料カット制御中に、所定の設定時間が燃料噴射後に経過することを条件に前記非同期噴射制御による燃料噴射を実行し、前記設定時間は、前記変速装置のギアポジションと前記エンジンの回転数とのテーブルマップから求められ、前記非同期噴射制御時の燃料噴射量は、前記変速装置のギアポジション毎に設定されていることを特徴とする。
このような構成を採用することにより、燃料カット制御中であってもエンジンに燃料を供給することができ、燃料カット制御からの復帰時には、確実に適切な燃焼状態を保つことができる。また、ギアポジション毎に定められた噴射間隔及び噴射量で非同期噴射制御による燃料噴射を行うことができるため、エンジンに燃料が過度に供給されるのを防止することができる。
本発明によれば、燃料カット制御からの復帰時において、エンジンに対して確実に燃料を供給し、常に適切な燃焼状態を保つことができるエンジンの燃料噴射制御方法を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。 本発明の一実施形態に係る自動二輪車において、燃料噴射制御システムの構成図である。 本発明の一実施形態に係る自動二輪車において、燃料噴射制御システムに設けられる制御ユニットの構成図である。 本発明の一実施形態に係る自動二輪車において、燃料噴射制御のフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る自動二輪車において、燃料噴射制御に含まれる非同期噴射制御のフローチャートである。
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、車両としての自動二輪車1に本発明に係る制御方法を適用した場合について説明する。以下、上下、左右、前後の方向は、自動二輪車1に乗車する運転者から見た方向を示す。
まず、図1を用いて、自動二輪車1の概要について説明する。
自動二輪車1には、骨組を構成する車体フレーム2が設けられ、車体フレーム2の前方から下方にかけて設けられたカウリング3により、自動二輪車1の前部が覆われている。車体フレーム2は、例えばツインチューブ型であり、車体フレーム2の前部上端に配置されたヘッドパイプ4と、ヘッドパイプ4から後下方に向かって延設された左右一対のメインフレーム5と、メインフレーム5の後部から後上方に向かって延設された左右一対のシートレール6と、を主体として構成されている。
ヘッドパイプ4には、左右一対のフロントフォーク7が左右に回転可能に支持されている。フロントフォーク7の下端には前輪8が軸支され、フロントフォーク7の上端にはハンドルバー10が左右方向に固定され、ハンドルバー10の左右両端部にはハンドルグリップ11が設けられている。
左右一対のメインフレーム5の間には燃料タンク12が設けられ、燃料タンク12の後方には、シートレール6の上方に運転者シート13が設けられ、燃料タンク12の下方にはエンジン14が搭載されている。左右一対のメインフレーム5の後下部にはピボット軸15が架設され、ピボット軸15にはスイングアーム16の前端部が上下方向揺動可能に支持されている。スイングアーム16の後端部には後輪17が軸支されている。
次に、主に図2、図3を用いて、自動二輪車1に設けられた燃料噴射制御システム18の構成について説明する。
燃料噴射制御システム18は、前記したエンジン14と、このエンジン14の一側面(本実施形態では後面)に接続された吸気系配管20と、吸気系配管20を接続した側とは反対側のエンジン14の側面(本実施形態では前面)に接続された排気系配管21と、自動二輪車1内に配置された制御ユニット22と、で構成される。
エンジン14は、例えば直列四気筒のエンジン14であって、図2ではそのうちの1気筒の断面が表示されている。このエンジン14は、クランクケース23(図1参照)と、このクランクケース23の前部から上前方に延設されるシリンダアッセンブリ24と、を備えており、シリンダアッセンブリ24は、シリンダ25と、シリンダ25の上方に設けられるシリンダヘッド26と、シリンダヘッド26の上面を覆うヘッドカバー27と、を備えている。
シリンダ25には、ピストン28が上下動可能に収容されている。ピストン28には、クランクケース23内に収納されたクランクシャフト(図示せず)がコンロッド30を介して接続されている。そして、ピストン28の上下動がコンロッド30を介してクランクシャフトに伝達されてクランクシャフトが回転し、このクランクシャフトの回転が変速装置(図示せず)を介して後輪17に伝達されることで、自動二輪車1の走行が可能となっている。
変速装置は、複数のギアポジション(1速〜6速及びニュートラル。以下、ギアポジションPと称す。)の間でシフトされるように構成されており、ギアポジションPを適宜選択することで、エンジン14の動力を所望の出力に減速できるように構成されている。以下、本明細書中では、1速〜3速を低速ギアと称し、4速〜6速を高速ギアと称す。
シリンダヘッド26は、その下部にピストン28とシリンダ25とシリンダヘッド26とで囲まれた燃焼室31が形成される。この燃焼室31の片側(本実施形態では後側)には吸気ポート32が形成される一方、反対側(本実施形態では前側)には排気ポート(図示せず)が形成される。燃焼室31と吸気ポート32との連通部には吸気バルブ33が配置され、燃焼室31と排気ポートとの連通部には排気バルブ(図示せず)が配置されている。シリンダヘッド26の上部には、吸気バルブ33及び排気バルブを駆動させる動弁機構(図示せず)が収容されている。シリンダヘッド26には、燃焼室31内に先端部が挿入された状態で、スパークプラグ34が設けられている。
吸気系配管20は、吸気ポート32に下流端が接続された吸気管35と、吸気管35の上流側に接続されたスロットルボディ36と、スロットルボディ36の更に上流側に接続されたエアクリーナ37と、により構成されている。
吸気管35には、吸気ポート32とスロットルボディ36との間の管路中に、燃料噴射装置38が配置されている。燃料噴射装置38は、自動二輪車1に搭載された燃料タンク12(図1参照)と接続されており、燃料タンク12から燃料噴射装置38に加圧された燃料が供給されるようになっている。燃料噴射装置38の噴射口は、吸気ポート32側へ向けて配置されており、燃料タンク12から供給された燃料を、所定のタイミングで吸気ポート32に対して噴射できるように構成されている。
スロットルボディ36には、運転者のアクセル操作によって開閉するスロットルバルブ40が設けられている。エアクリーナ37は、吸気系配管20の上流端に設けられており、エアクリーナ37から吸入された空気が、スロットルボディ36を介して吸気管35に導入され、燃料噴射装置38から噴射された燃料と混合された後に、吸気ポート32を介して燃焼室31内に導入されるように構成されている。
排気系配管21は、シリンダヘッド26の排気ポートに一端が接続された排気管41と、この排気管41の他端に接続されたチャンバー42と、チャンバー42に接続されたマフラー43(図1参照)とにより構成されており、シリンダヘッド26からの排出ガスが、排気管41、チャンバー42及びマフラー43を介して、自動二輪車1の後方に排出されるように構成されている。チャンバー42の内部には触媒44が設けられ、この触媒44によって排出ガスが浄化されるように構成されている。
制御ユニット22は、スロットルボディ36に組み付けられてスロットルバルブ40の開度位置を検出するスロットルポジションセンサ45と、エンジン14の回転数(以下、「エンジン回転数N」と称する。)を検出するエンジン回転数センサ46と、前記した変速装置のギアポジションPを検出するギアポジションセンサ47と、これら各センサとワイヤーハーネス(図示せず)を介して電気的に接続されるECU48(エンジンコントロールユニット)と、ECU48に接続された電源部49と、により構成されている。
図3に示されるように、ECU48は、前記した各センサ45〜47とインターフェース50を介して接続されるCPU51と、このCPU51に接続される記憶部(RAM52、ROM53)と、により構成されており、各センサ45〜47の入力値に基づきECU48が演算を行い、燃料噴射装置38に信号を出力できるように構成されている。
RAM52には、例えば、後述するカウンタCのカウント値を記憶するカウンタ記憶エリアが確保されている。ROM53には、例えば、エンジン回転数Nの数値領域毎にギアポジションPに応じたカウンタCの設定値が定められたテーブルマップが格納されている。
上述の如く構成された燃料噴射制御システム18を用いてエンジン14の燃料噴射制御を行う方法の概要について、図4を用いて説明する。なお、明細書中及び図4におけるS101〜S106は燃料噴射制御プログラムにおける各ステップを示している。
エンジン14が駆動されて燃料噴射制御プログラムが開始されると、同期噴射制御がスタートし(S1)、エンジン14の回転に同期したエンジン14への燃料噴射(以下、「同期噴射」と略称する。)を、ECU48が燃料噴射装置38に実行させる。
上記の如く同期噴射制御がスタートすると(S101)、エンジン回転数センサ46がエンジン回転数Nを検出し、このエンジン回転数Nが予め設定された回転数α以上であるか否かの判断をECU48が行う(S102)。これは、エンジン回転数Nが低い状態で後述する燃料カット制御が実行されることで、いわゆるエンストが起こるのを防止するためである。このS102の判断がNOの場合には、同期噴射制御のスタート(S101)に戻って、エンジン回転数Nの検出及びエンジン回転数Nが回転数α以上であるかの判断(S102)を繰り返しながら、同期噴射制御を継続する。
上記したS102の判断がYESの場合には、スロットルポジションセンサ45がスロットルバルブ40の開度位置を検出し、スロットルバルブ40が全閉状態であるか否かの判断をECU48が行う(S103)。これは、自動二輪車1が減速中又は停車時であることを確認するためである。このS103の判断がNOの場合には、同期噴射制御のスタート(S101)に戻って、同期噴射制御を継続する。
上記したS103の判断がYESの場合には、ECU48が燃料噴射装置38に同期噴射を停止させることで、燃料カット制御を実行する(S104)。これにより、燃料の節減が図られるとともに、触媒44の温度を低下させて、触媒44を保護することができる。
このように燃料カット制御が実行されると(S104)、この燃料カット制御中に非同期噴射制御が実行される(S105)。なお、この非同期噴射制御の詳細については後述する。
非同期噴射制御の実行(S105)が終了すると、予め設定された燃料カット制御からの復帰条件が成立しているかを、ECU48が判断する(S106)。この燃料カット制御からの復帰条件とは、例えば、スロットルポジションセンサ45によってスロットルバルブ40の開放(全閉状態の停止)が検出されることである。上記したS106の判断がNOの場合には、燃料カット制御が継続されるとともに、非同期噴射制御の実行(S105)と、燃料カット制御からの復帰条件の判断(S106)が繰り返される。一方で、上記したS106の判断がYESの場合には、燃料カット制御から復帰して、同期噴射制御がスタートする(S101)。
次に、上記した非同期噴射制御(S105)の詳細について、主に図5を用いて説明する。なお、明細書中及び図5におけるS201〜S211は、非同期噴射制御における各ステップを示す。
非同期噴射制御がスタートすると(S201)、ギアポジションセンサ47がギアポジションPを検出するとともに、エンジン回転数センサ46がエンジン回転数Nを検出する(S202)。そして、ギアポジションセンサ47が検出したギアポジションPが、予め設定されたギアポジション(本実施形態では4速)より低いか否かの判断をECU48が行う(S203)。換言すれば、ギアポジションPが、ニュートラル又は低速ギア(1〜3速)であるか否かの判断をECU48が行う。このS203の判断がNOの場合には、非同期噴射制御は終了し、メインフローチャートに戻って、燃料カット制御からの復帰条件の判断(S106)が行われる(図4参照)。
上記したS203の判断がYESの場合には、前記したカウンタCを、現在のカウンタに1を加算した値に更新する(S204)。
次に、ギアポジションP毎に予め設定された上限エンジン回転数Nhと下限エンジン回転数Nlの読み込みを行い(S205)、S202において検出されたエンジン回転数Nが、Nl以上で、且つ、Nh以下であるか否かの判断をECU48が行う(S206)。このS206の判断がNOの場合には、非同期噴射制御は終了し、メインフローチャートに戻って、燃料カット制御からの復帰条件の判断(S106)が行われる(図4参照)。
上記したS206の判断がYESの場合には、S202において検出されたギアポジションP及びエンジン回転数Nにより、前記したテーブルマップからカウンタCの設定値を補間して決定し、Cの設定値の読み込みを行う(S207)。そして、S204において更新されたカウンタCの値をS207において読み込まれたCの設定値と比較して、カウンタCの値がCの設定値以上であるか否かの判断を行う(S208)。このS208の判断がNOの場合には、非同期噴射制御は終了し、メインフローチャートに戻って、燃料カット制御からの復帰条件の判断(S106)が行われる(図4参照)。
上記したS208の判断がYESの場合には、ギアポジションP毎に予め設定された燃料噴射量Fの読み込みを行う(S209)。そして、この燃料噴射量Fにより、エンジン14の回転とは独立したエンジン14への燃料噴射(以下、「非同期噴射」と称す。)をECU48が燃料噴射装置38に実行させる。
本実施形態では上記のように、カウンタ制御によって、設定時間の条件が設けられている。例えば、全制御の1周期が10msecであり、前述のテーブルマップCから補間されたCの設定値が10である場合には、ある燃料噴射から10msec×10=100msec後に、Cの値が設定値以上となって、非同期噴射が実行される。即ち、100msecの設定時間が燃料噴射後に経過することを条件に、非同期噴射が実行される。
この非同期噴射の実行(S210)が完了したら、カウンタCをリセットする(S211)。これにより、非同期噴射制御が終了し、メインフローチャートに戻って、燃料カット制御からの復帰条件の判断(S106)が行われる(図4参照)。
本実施形態では上記の如く、燃料カット制御中に非同期噴射制御を実行しているため、燃料カット制御中であってもエンジン14に燃料を供給することができる。従って、燃料カット制御が長時間に亘って実行されたとしても、吸気ポート32の壁面に燃料が付着した状態を確実に維持することができる。そのため、燃料カット制御から復帰した時には、燃料を即座に燃焼室31に供給することができ、再加速や発進の際に燃料の追従が遅れて不適切な燃焼状態が起こる虞も無く、確実に適切な燃焼状態を保つことができる。これに伴って、不適切な燃焼に伴う振動を低減させて、運転時の操作感を良好に保つことができるとともに、排気系配管21におけるアフターバーンを防止して、アフターバーンによる触媒44の加熱又は損傷を抑制することが可能となる。
また、例えば変速装置が高速ギアに位置しているときに燃料カット制御からの復帰が行われた場合、吸気ポート32の乾燥に伴い不適切な燃焼状態となったとしても、発生するトルクが小さいため、運転者に感じられる振動も小さい。このような状態において非同期噴射を行うと、却って燃料消費量を増加させる。そこで、本実施形態では、ギアポジションセンサが検出した変速装置のギアポジションPが予め設定されたギアポジション(4速)より低いことを条件に、非同期噴射を実行するように制御されている。これにより、ニュートラル又は低速ギア領域においてのみ非同期噴射を行うことが可能となり、発生トルクが大きい領域において、燃料カット制御からの復帰時における燃焼状態を適切に保つことができる。
また、上記のような制御を実行することで、高速ギア領域では非同期噴射を行わず、通常の燃料カット制御を行うことができる。そのため、燃料カット制御により触媒44の温度上昇を抑制する効果を高めることができ、触媒44の温度を適正に保って触媒44の劣化を抑制することが可能となる。また、高速ギア領域で非同期噴射を行わない分、従来の燃料噴射制御と比較して燃料消費量を減少させることが可能となる。
また、本実施形態では、ギアポジションPとエンジン回転数Nのテーブルマップから求められる設定時間が燃料噴射後に経過することを条件に非同期噴射を実行し、この非同期噴射の燃料噴射量Fは、変速装置のギアポジションP毎に設定されている。そのため、ギアポジションP毎に定められた噴射間隔及び噴射量で非同期噴射を行うことができ、これに伴って、各ギアポジションPにおいて吸気ポート32のウェット状態(吸気ポート32の壁面に燃料が付着した状態)を維持するための必要最小限の噴射間隔及び噴射量に、非同期噴射を適合させることができる。これにより、エンジン14に燃料が過度に供給されて吸気ポート32の壁面に燃料が過度に付着することを防止できる。また、触媒44の温度が極端に上昇することを防止することができ、触媒44の劣化を抑制することが可能となる。
更に、本実施形態では、ギアポジションPごとに非同期噴射を行う回転数が指定されているため(S205、S206参照)、ギアポジションP毎に、吸気ポート32の壁面の乾燥が顕著に発生する領域のみに、非同期噴射を行うことができる。
また、燃料噴射装置38からの燃料の噴射のみによって吸気ポート32のウェット状態を維持することが可能となるため、吸気ポート32のウェット状態を維持するために別部材を追加する必要が無く、省スペース化及び省コスト化を図ることが可能となる。
なお、本実施形態では、6段変速の変速装置を用いるとともに、ギアポジションPが4速より低いことを条件に非同期噴射を行っているが、他の異なる実施形態では、ギアポジションPが3速又は他の異なる変速段より低いことを条件に、非同期噴射を行っても良い。また、本実施形態では、ギアポジションPがニュートラルの場合にも非同期噴射を行っているが、他の異なる実施形態では、ギアポジションPがニュートラルの場合には非同期噴射を行わなくても良い。更に、他の異なる実施形態では、例えば2段変速、3段変速等、6段変速以外の変速装置を用いても良い。
本実施形態では、本発明に係る制御方法を自動二輪車1のエンジン14に適用したが、他の異なる実施形態では、自動車その他の車両のエンジンに本発明に係る制御方法を適用することも可能である。また、本実施形態では、多気筒エンジンに本発明に係る制御方法を適用したが、他の異なる実施形態では、単気筒エンジンに本発明に係る制御方法を適用することも可能である。
1 自動二輪車(車両)
14 エンジン
38 燃料噴射装置
47 ギアポジションセンサ

Claims (2)

  1. エンジンに対して燃料噴射を行う燃料噴射装置と、複数のギアポジションの間でシフトされる変速装置と、該変速装置のギアポジションを検出するギアポジションセンサと、を備えた車両におけるエンジンの燃料噴射制御方法であって、
    前記エンジンの回転に同期した前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に実行させる同期噴射制御と、前記エンジンの回転とは独立した前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に実行させる非同期噴射制御と、前記車両の減速中又は停車時に前記同期噴射制御による前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に停止させる燃料カット制御と、を実行するステップを含み、
    前記燃料カット制御中に、前記ギアポジションセンサが検出した前記変速装置のギアポジションが予め設定されたギアポジションより低いことを条件に、前記非同期噴射制御による燃料噴射を実行することを特徴とするエンジンの燃料噴射制御方法。
  2. エンジンに対して燃料噴射を行う燃料噴射装置と、複数のギアポジションの間でシフトされる変速装置と、を備えた車両におけるエンジンの燃料噴射制御方法であって、
    前記エンジンの回転に同期した前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に実行させる同期噴射制御と、前記エンジンの回転とは独立した前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に実行させる非同期噴射制御と、前記車両の減速中又は停車時に前記同期噴射制御による前記エンジンへの燃料噴射を前記燃料噴射装置に停止させる燃料カット制御と、を実行するステップを含み、
    前記燃料カット制御中に、所定の設定時間が燃料噴射後に経過することを条件に前記非同期噴射制御による燃料噴射を実行し、前記設定時間は、前記変速装置のギアポジションと前記エンジンの回転数とのテーブルマップから求められ、
    前記非同期噴射制御時の燃料噴射量は、前記変速装置のギアポジション毎に設定されていることを特徴とするエンジンの燃料噴射制御方法。
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