この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
実施の形態1.
図1から図4は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は冷蔵庫の構成概略を示す側方断面図、図2は冷蔵庫の冷蔵室の構成概略を示す側方断面図、図3は冷蔵庫内外差圧による扉開閉検知結果を示す実測データの一例、図4は冷蔵庫の冷蔵室の構成概略を示す側方断面図である。
図1において、冷蔵庫1000は、発泡ウレタン等の断熱部材からなる断熱筐体内において、断熱部材により仕切られて区画されて設けられた複数の異なる温度帯の貯蔵室を備えている。これらの貯蔵室とは、具体的にここでは、冷蔵室100、切替室300、製氷室(図示せず)、冷凍室400及び野菜室500である。これらの貯蔵室は、冷蔵庫1000において上下方向に4段構成となって配置されている。
冷蔵室100は、冷蔵庫1000の最上段に配置されている。冷蔵室100の前面部には扉が開閉自在に設けられている。冷蔵室100の内部の最下段には、チルド室200が配設されている。
冷蔵室100の1つ下段、すなわち、冷蔵庫1000の上から2段目には、切替室300及び製氷室が配置されている。これらの切替室300及び製氷室は、冷蔵庫1000の上から2段目において左右に並べて配置されている。このため、図1においては、これらの切替室300及び製氷室が図面に向かって奥行き方向に重なっており、これらのうちの一方である切替室300しか表われていない。切替室300は、使用者が図示しない操作パネルを操作することにより、予め定められた複数の設定温度のうちから所望の温度を選択し、室内の温度を切り替えることができる。
切替室300及び製氷室の1つ下段、すなわち、冷蔵庫1000の上から3段目には、冷凍室400が配置されている。冷凍室400は、主に貯蔵対象を比較的長期にわたって冷凍保存する際に用いるためのものである。
冷凍室400の1つ下段、すなわち、冷蔵庫1000の最下段には、野菜室500が配置されている。野菜室500は、主に野菜や容量の大きな(例えば2L等)の大型ペットボトル等を収納するためのものである。
切替室300、製氷室、冷凍室400及び野菜室500の各貯蔵室は、引出し状に構成されている。すなわち、これらの貯蔵室は、冷蔵庫1000内に収容された状態から、それぞれの前面に設けられた前板部を持って手前側へと引き出すことができるようになっている。また、冷蔵庫1000内に収容した際には、前板部により密閉され、内部の冷気が外部へと漏出することがないようになっている。
冷蔵庫1000は、各貯蔵室へ供給する空気を冷却する冷凍サイクル回路、及び、この冷凍サイクル回路によって冷却された空気を各貯蔵室へ供給するための風路を備えている。
冷凍サイクル回路は、圧縮機1001、圧縮機1001から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器(図示せず)、凝縮器から流出した冷媒を膨張させる絞り装置(図示せず)、及び、絞り装置で膨張した冷媒によって各貯蔵室へ供給する空気を冷却する冷却器1002等によって構成されている。圧縮機1001は、例えば、冷蔵庫1000の背面側の下部に配置される。
冷凍サイクル回路によって冷却された空気を各貯蔵室へ供給するための風路は、冷却風路1010、主戻り風路1020、冷蔵室戻り風路110、及び、野菜室戻り風路510等から構成されている。
冷凍サイクル回路が備える冷却器1002は、冷却風路1010内に設置される。冷却風路1010内には、冷却器1002で冷却された空気を各貯蔵室へ送るための例えば送風ファンからなる空気搬送装置1003も設置される。この空気搬送装置1003は、換言すれば、冷蔵庫1000内で空気を循環させるためのものである。
冷却風路1010は、冷却器1002にて冷却された空気が、冷蔵室100、チルド室200、切替室300及び冷凍室400へと搬送される通風路である。この冷却風路1010は、例えば冷蔵庫1000内の背面側に形成されている。
主戻り風路1020は、各貯蔵室を冷却した空気が、冷却器1002へと搬送される通風路である。冷蔵室戻り風路110は、冷蔵室100及びチルド室200を冷却した空気が、野菜室500へと搬送される通風路である。冷蔵室100及びチルド室200を冷却した空気は、野菜室戻り風路510において野菜室500を冷却した空気と混合され、冷却器1002に搬送される。
次に、図2を参照しながら、冷蔵庫1000が備える冷蔵室100の詳細について説明する。
図2において、冷蔵室100の前面側には、冷蔵室扉101が開閉自在に設けられている。冷蔵室100の内部には、複数の冷蔵室棚板102が上下方向に並べられて設置されている。冷蔵室100の内部は、これらの冷蔵室棚板102により、複数の空間(棚)に仕切られている。
こうして、冷蔵室棚板102に仕切られた複数の空間のうち、最下段の冷蔵室棚板102と冷蔵室100内壁底面との間の空間にチルド室200が形成される。チルド室200の内部には、図示しないレール等の案内具に沿って、冷蔵室扉101側へ引き出すことができるチルドケース201が設置されている。
冷蔵室棚板102によって仕切られた複数の棚の背面部には、それぞれ冷蔵室吹出口103が設けられている。また、チルド室200の背面部には、チルド室吹出口202が設けられている。これらの冷蔵室吹出口103及びチルド室吹出口202は、冷却風路1010と繋がっている。
冷却風路1010内における冷却器1002から冷蔵室吹出口103及びチルド室吹出口202へと通じる中途の箇所には、冷却風路1010を開閉する冷蔵室ダンパ105が設けられている。冷却器1002によって冷却された冷却空気は、冷蔵室ダンパ105の開閉によって風量を調整された上で、冷蔵室吹出口103及びチルド室吹出口202からチルド室200内を含む冷蔵室100内へと供給される。チルド室200を含む冷蔵室100を冷却した冷却空気は、冷蔵室100の底面部に設けられた冷蔵室吸込口104から流出し、冷蔵室戻り風路110を経由して野菜室500に搬送される。
冷蔵室100内の天井面には、庫内(冷蔵室100内)の空気圧を検出する庫内圧力検出装置1aが設置されている。また、冷蔵庫1000の動作を制御するための図示しない制御基板等には、庫内外差圧検知手段2、扉開閉検知手段3及び扉開閉時制御手段4aが実装されている。
庫内外差圧検知手段2は、庫内圧力検出装置1aにより検出された庫内(冷蔵室100内)の空気圧に基づいて、庫内(冷蔵室100内)と庫外(冷蔵室100外)との空気圧差(以下「差圧」という)を算出する。扉開閉検知手段3は、庫内外差圧検知手段2により算出された差圧に基づいて、冷蔵室扉101の開閉状態を判定する。そして、扉開閉時制御手段4aは、扉開閉検知手段3による冷蔵室扉101の開閉状態の判定結果に基づいて、圧縮機1001及び/又は冷蔵室ダンパ105に制御信号を送信する。
以上のように構成された冷蔵庫1000の動作の一例について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1において、冷蔵庫1000の内部では、冷却器1002で冷却された庫内空気が空気搬送装置1003によって冷却風路1010を経由して各貯蔵室へ搬送される。そして、各貯蔵室を冷却した後の戻り空気が主戻り風路1020を経由して再度冷却器1002に戻る周回風路が形成される。
このような冷却風路1010を介し、冷却器1002で例えば−30℃〜−25℃にまで冷却された空気を各貯蔵室へと分配することにより各貯蔵室の冷却が行われる。この際に、図2に示す冷蔵室ダンパ105をはじめとする複数の流入ダンパの開閉量を制御することによって、各貯蔵室への冷却空気の分配量・流入量を調節することにより、各貯蔵室に対する個別的な温度調整を実現している。
具体的に例えば、最も低温な設定となる冷凍室400(例えば−22℃〜−16℃)の流入ダンパはほぼ全開とし、最も高温な設定となる野菜室500(例えば5℃〜9℃)の流入ダンパはほぼ全閉とする。そして、野菜室500より温度設定の低い冷蔵室100(例えば3℃〜6℃)及びチルド室200(例えば−1℃〜1℃)を冷却した戻り空気により野菜室500を間接冷却する等といった調整が行われる。
冷蔵室100においては、冷却器1002によって冷却された冷却空気が、冷蔵室吹出口103から冷蔵室棚板102によって仕切られた複数の棚にそれぞれ供給され、冷蔵室100内を冷却した後、チルド室200を冷却した空気と共に、冷蔵室吸込口104から流出する。
冷蔵室100(及びチルド室200)への冷却空気の流入量は、冷蔵室ダンパ105によって調節される。具体的に例えば、冷蔵室100内の温度が6℃以上になったときは冷蔵室ダンパ105の開度を大きくして流入量を増加させ、3℃以下になったときは冷蔵室ダンパ105の開度を小さく、あるいは閉じて流入量を減少させることにより、冷蔵室100内を設定温度に維持している。
この際、冷蔵室ダンパ105の開閉状態の変化による冷蔵室100内への冷却空気の流入量の増減に伴い、冷蔵室100内の空気圧も増減する。したがって、庫内圧力検出装置1aによる庫内(冷蔵室100内)の空気圧の検出結果は、冷蔵室吹出口103及びチルド室吹出口202から庫内(冷蔵室100内)への空気の流入量の変動が反映される。
さらに、冷蔵室扉101を含む各貯蔵室の扉の開閉によっても、冷蔵室100内の空気圧は増減する。したがって、庫内圧力検出装置1aによる庫内(冷蔵室100内)の空気圧の検出結果は、冷蔵室扉101を含む各貯蔵室の扉の開閉によって変動する。ここで、前述したように、各貯蔵室は、冷却風路1010及び主戻り風路1020等により繋がっている。このため、冷蔵室扉101のみならず、冷凍室400又は野菜室500等を開閉した場合であっても、その際の空気圧の変動が冷蔵室100内にまで伝播する。
このような事情を、図3に示す具体的なデータを参照しながら説明する。図3は、各貯蔵室の扉を開閉した際における、図2に示す冷蔵室100に設置した庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2によって検知した庫内外差圧の実測結果である。なお、計測時における扉の開閉動作は、どの貯蔵室に対しても、まず約1秒かけて開扉し、その後約10秒間開状態を維持した後、約1秒かけて閉扉するというサイクルで統一している。
図3の(a)は冷蔵室100の冷蔵室扉101の開閉時、(b)は冷凍室400の開閉時、(c)は野菜室500の開閉時の結果である。これらの(a)〜(c)には、それぞれ、3つの曲線が描かれている。これらの3つの曲線は、冷蔵室100内に模擬負荷として収納物を設置し、この際の収納物の容積占有率を変更した場合の差圧の実測値を示している。具体的には、収納容積占有率0%における扉開閉時差圧11a、収納容積占有率40%における扉開閉時差圧11b及び収納容積占有率70%における扉開閉時差圧11cの3つである。
図3のグラフより、冷蔵室100、冷凍室400及び野菜室500のどの貯蔵室の扉開閉に対しても、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2により検出した差圧について、開扉時にはマイナス(負圧)に、閉扉時は逆にプラス(正圧)に大きく変化することが判る。これは、開扉時には庫内の空気が庫外に瞬間的に漏洩する一方、閉扉時は逆に庫外の空気が庫内に瞬間的に流入するためである。
また、収納容積占有率に対して見ても、収納容積占有率0%における扉開閉時差圧11a、収納容積占有率40%における扉開閉時差圧11b及び収納容積占有率70%における扉開閉時差圧11cのいずれに対しても、同様の傾向が認められる。
さらに、いずれの収納容積占有率においても、扉を開閉してから差圧の変化が検出されるまでの時間遅れ(タイムラグ)は、(a)冷蔵室100が最も短く、次いで(c)の野菜室500であり、最も長いのが(b)の冷凍室400である。これは、冷蔵室100と野菜室500とは、冷蔵室戻り風路110及び冷却風路1010により連通されているのに対し、冷蔵室100と冷凍室400とは冷却風路1010でしか連通されていないという事情が反映されたものと考えられる。
また、差圧変化の絶対値について見てみると、(a)冷蔵室100が最も大きく、(b)冷凍室400と(c)野菜室500の扉開閉時は比較的小さい。このように、収納容積占有率に関わらず、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2により検知される差圧変化の時間遅れ及び変化量の絶対値は、どの貯蔵室が開閉されたかに応じて異なるものとなる。
したがって、扉開閉検知手段3は、庫内外差圧検知手段2により検出された差圧の変化に基づいて、冷蔵庫1000のどの貯蔵室が開閉されたのかを検知することができる。この際、冷蔵庫1000の少なくとも1つの貯蔵室に対して庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2を一式設置すれば、当該貯蔵室と冷却風路1010等を介して連通された他の貯蔵室の開閉も、扉開閉検知手段3によって検知することができる。そして、この扉開閉検知手段3による検知の可否は、庫内の収納物の収納量によらない。
扉開閉時制御手段4aは、このような原理により扉開閉検知手段3において検知された各貯蔵室の開閉状態に基づいて、圧縮機1001及び/又は冷蔵室ダンパ105を制御する。具体的には、扉開閉検知手段3によって扉開閉が検知された場合、扉開閉時制御手段4aは、圧縮機1001の運転周波数を増加させて供給する冷却空気の温度を下げるように制御する。又は、扉開閉時制御手段4aは、扉開閉が検出された貯蔵室への冷却空気流入量を調節するダンパ(図2の例では、冷蔵室100への流入量を調節する冷蔵室ダンパ105)の開度を大きくして、冷却空気の供給量を増加させる。あるいは、圧縮機1001とダンパの制御を同時に行ってもよい。
なお、庫内圧力検出装置1aとして、ゲージ圧力(すなわち絶対圧力と大気圧との差)を検出する装置を用いることで、庫内圧力検出装置1aにより庫内の絶対圧力と庫外の大気圧との差圧を検出することができる。したがって、この場合、庫内外差圧検知手段2は不要となり、より簡易でかつ低コストな構成とすることができる。
また、図4に示すように、庫内圧力検出装置1aに庫内の絶対圧力を検出する装置を用いた上で、さらに庫内圧力検出装置1aとは別に、庫外の絶対圧力すなわち大気圧を検出できる位置に庫外圧力検出装置1bを設けるようにしてもよい。この場合には、庫内外差圧検知手段2は、庫内圧力検出装置1a及び庫外圧力検出装置1bの両方の検出結果に基づいて、庫内外の差圧を算出する。
庫内外の差圧は、図3にも例示するように、扉開閉時の最も圧力変化が大きい時でも数十Pa程度と小さい。このため、図4に示すように庫内圧力検出装置1aと庫外圧力検出装置1bとにより、個別に庫内及び庫外の絶対圧力を正確に検出し、庫内外差圧検知手段2にて差圧を算出することにより、より精度の高い差圧検知が可能となる。
なお、以上に説明した構成では、庫内圧力検出装置1aを冷蔵室100の内壁の天井面に設置している。しかし、庫内圧力検出装置1aの設置位置は、冷蔵室100内の圧力を検出でき、かつ、電気配線が確保できる位置であれば、冷蔵室100内の天井面には限られない。具体的には、冷蔵室100内の底面、背面あるいは冷蔵室棚板102の上等でもよい。庫内圧力検出装置1aの設置の位置や方向によって、静圧だけでなく動圧を含む全圧を検出する可能性があることから、庫内圧力検出装置1aの設置の位置や方向によって検出される差圧の絶対値は変化する可能性はあるものの、扉開閉時の差圧変化の検知には支障はない。
また、以上においては、庫内圧力検出装置1aを冷蔵室100内に設置する構成を例に説明した。しかし、庫内圧力検出装置1aを設置する貯蔵室は任意である。これは、前述したように、庫内圧力検出装置1aが設置された貯蔵室と風路等により連通されている他の貯蔵室における開閉も、当該庫内圧力検出装置1aを用いることで検知することが可能なためである。具体的に例えば、庫内圧力検出装置1aを冷凍室400に設置した場合においても、当該庫内圧力検出装置1aを用いて冷蔵室100及び野菜室500の開閉を検知することが可能であり、また、庫内圧力検出装置1aを野菜室500に設置した場合においても、当該庫内圧力検出装置1aを用いて冷蔵室100及び冷凍室400の開閉を検知することが可能である。
以上のように構成された冷蔵庫は、断熱的に区画された複数の貯蔵室を有する筐体と、複数の貯蔵室の開口部をそれぞれ開閉する複数の扉と、空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段と、冷却手段により生成された冷却空気をそれぞれの貯蔵室へと供給するための冷却風路と、冷却風路内の冷却空気を貯蔵室へと搬送する空気搬送手段と、冷却風路内に設けられ、貯蔵室のそれぞれへの冷却空気の供給量を調節する風量調節手段と、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段と、差圧検知手段により検知された差圧に基づいて、扉の開閉を検知する扉開閉検知手段と、を備えたものである。
冷蔵庫1000に食品を保管する場合、食品の品質を維持するためには、なるべく庫内を低温に維持する必要がある。ここで、扉を開閉した際の高温空気の流入による庫内の温度上昇は食品の品質劣化の最大の要因である。そこで、従来の冷蔵庫には、各貯蔵室に扉の開状態を検出するための開閉スイッチが設置されている。そして、この開閉スイッチにより扉の開状態の継続が検出された場合にはアラーム等により使用者に報知を行うものが多い。しかし、従来において用いられる一般的な開閉スイッチは、例えば、扉に埋め込まれたマグネット(磁石)の近接を、冷蔵庫本体側に設置された一対のリードスイッチにより検出するマグネット方式がほとんどである。このマグネット方式の開閉スイッチを採用した場合、各貯蔵室及び扉にスイッチを設置する必要があるためコストがかかるという課題があった。
これに対し、以上で説明したこの発明の実施の形態1に係る冷蔵庫によれば、特に、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段である庫内圧力検出装置1a、庫外圧力検出装置1b及び庫内外差圧検知手段2と、この差圧検知手段により検知された差圧に基づいて、扉の開閉を検知する扉開閉検知手段である扉開閉検知手段3と、を備えたことで、簡潔な構成で瞬時に扉の開閉を検知することができる。
また、扉開閉検知手段により、差圧の変化の大きさ及び/又は時間遅れに基づいて、差圧を検知した貯蔵室及び当該貯蔵室と風路により連通された他の貯蔵室のうちいずれの貯蔵室の扉が開閉されたのかを判定することで、複数の貯蔵室の扉の開閉を一式の差圧検知手段で検知することができ、複数の貯蔵室における扉の開閉を低コストで高精度に検知することが可能となる。
さらに、扉開閉検知手段による扉の開閉の検知結果に基づいて、冷却手段が備える圧縮機1001及び/又は風量調節手段である冷蔵室ダンパ105等の動作を制御する制御手段(扉開閉時制御手段4a)を備えることで、扉の開閉に応じた適切な冷却制御を実施することができ、庫内の温度上昇を抑制し、収納された食品の品質を維持することが可能となる。
実施の形態2.
図5から図8は、この発明の実施の形態2に係るもので、図5は冷蔵庫の冷蔵室の構成概略を示す側方断面図、図6は冷蔵庫内外差圧による冷蔵室の密閉度検知結果(隙間:1mm)を示す実測データの一例、図7は冷凍庫内外差圧による冷凍室の密閉度検知結果(隙間:1mm)を示す実測データの一例、図8は冷凍庫内外差圧による冷凍室の密閉度検知結果(隙間:5mm)を示す実測データの一例である。
前述した実施の形態1は、検出した冷蔵庫の内外の差圧に基づいて冷蔵庫の貯蔵室の開閉動作を検出するものであった。これに対し、ここで説明する実施の形態2は、冷蔵庫の内外の差圧を検出する点は実施の形態1と同様であるが、検出した冷蔵庫の内外の差圧に基づいて貯蔵室の密閉度を判定するようにしたものである。
この実施の形態2においては、図5に示すように、冷蔵室100内の天井面には、庫内(冷蔵室100内)の空気圧を検出する庫内圧力検出装置1aが設置されている。また、冷蔵庫1000の動作を制御するための図示しない制御基板等には、庫内外差圧検知手段2、扉密閉度検知手段5及び扉密閉度報知手段6aが実装されている。
このうち、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2、は実施の形態1と同様である。扉密閉度検知手段5は、庫内外差圧検知手段2により算出された差圧に基づいて、貯蔵室の密閉度を判定する。そして、扉密閉度報知手段6aは、扉密閉度検知手段5による貯蔵室の密閉度の判定結果に基づいて、貯蔵室の密閉度不足を使用者へと報知する。
なお、他の構成は実施の形態1と同様であり、その詳細説明は省略する。
次に、図6を参照しながら、扉密閉度検知手段5における、庫内外差圧検知手段2により算出された差圧に基づく貯蔵室の密閉度の判定について説明する。図6は、24時間のうちの一定時間について冷蔵室100の扉を全閉し、他の時間について冷蔵室100の扉を半開とした場合の実測データの一例である。ここで、扉が半開である状態とは、扉に例えば庫内に収容された食品包装用の袋等の一部が挟まった状態、いわゆる「半ドア状態」を模擬した状態である。
具体的には、半開状態において、冷蔵室100の冷蔵室扉101の隙間を1mm程度に設定した。そして、24時間の運転期間中、最初の0:00〜3:00及び17:00〜24:00の間は冷蔵室扉101を半開状態とし、残りの3:00〜17:00の間は冷蔵室扉101を全閉状態とした。
図6において、(a)は冷蔵室100内の主要温度と消費電力、(b)は冷蔵室100内の棚温度、(c)は冷蔵室100内の扉棚(冷蔵室扉101に設けられた棚)の温度、(d)は庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2による冷蔵室100の内外差圧である。
そして、図6(a)においては、冷蔵室天井面平均温度12、冷蔵室背面平均温度13、冷蔵室吹出平均温度14、及び、冷蔵庫1000の全消費電力15が示されている。また、図6(b)においては、冷蔵室棚最上段マス温度16a、冷蔵室棚2段目マス温度16b、冷蔵室棚3段目マス温度16c及び冷蔵室棚最下段マス温度16dが示されている。
図6(c)においては、冷蔵室扉101に設けられた扉棚の温度が示されており、具体的には、冷蔵室扉棚上段マス温度17a、冷蔵室扉棚中段マス温度17b及び冷蔵室扉棚下段マス温度17cが示されている。そして、図6(d)においては、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2により検出された冷蔵室内外差圧18が示されている。
この図6の(a)〜(c)に示された庫内温度の時系列変化を見ると、まず、0:00〜3:00の半開時に不安定になった庫内温度が、3:00〜17:00の全閉時において一旦は安定に向かっている様子が伺える。しかし、17:00〜24:00に再び冷蔵室扉101が半開状態にされると、各種の庫内温度が急激に上昇することが示されている。
特に、冷蔵室100内の上方の温度である冷蔵室天井面平均温度12、冷蔵室棚最上段マス温度16a、冷蔵室扉棚上段マス温度17aは、17:00の半開状態開始後6〜7時間程度で、おおよそ20℃程度まで上昇している。一般的に冷蔵温度帯とは10℃以下とされており(JAS法)、冷蔵室扉101が半開となると、食品の劣化を促進させる温度環境に到達してしまうことが判る。
ここで、図6(d)の冷蔵室内外差圧18に着目すると、冷蔵室扉101が全閉状態であるか半開状態であるかに関わらず、増減を繰り返して振動していることが判る。これは、実施の形態1で前述したように、冷蔵庫1000の運転により冷蔵室ダンパ105が開閉されることで冷蔵室100内への冷却空気の流入量の増減し、この流入量の増減に伴って冷蔵室100内の圧力が変化することに起因する。
このような冷蔵室内外差圧18の増減幅を見てみると、冷蔵室扉101の半開時における増減幅の方が、冷蔵室扉101の全閉時における増減幅よりも小さくなっていることが判る。これは、冷蔵室扉101の半開状態においては、冷蔵室100内への冷却空気流入量が増加した時には流入した冷却空気の一部が庫外へ漏洩するとともに、冷蔵室100内への冷却空気流入量が減少した時には庫外から冷蔵室100内へと空気が流入するためである。
そこで、扉密閉度検知手段5において、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2により検出された冷蔵室内外差圧18の増減幅の変化を監視することで、冷蔵室扉101が半開であるのか全閉であるのか、すなわち、冷蔵室扉の密閉度を検出することができる。具体的に例えば、図6(d)のような冷蔵室内外差圧18の実測値に基づいて適切な閾値を設定することで、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2により検出された差圧の増減幅が閾値以下である場合に冷蔵室扉101が半開状態であると判定することができる。
扉密閉度報知手段6aは、このような原理に基づいて扉密閉度検知手段5により冷蔵室扉101が半開状態であると判定された場合に、冷蔵室扉101が半ドア状態であって、冷蔵室100の密閉度が不足している旨を使用者へと報知する。この扉密閉度報知手段6aによる報知は、ブザー音やメッセージ等の鳴動、LEDランプの点灯・点滅等により行われる。
なお、他の動作は実施の形態1と同様であり、その詳細説明は省略する。
また、以上においては、庫内圧力検出装置1aを冷蔵室100内に設置し、冷蔵室100の密閉度を検知する構成を例に説明した。この点については、冷蔵室100以外の任意の貯蔵室の密閉度を検知するために、密閉度検知の対象である貯蔵室内に庫内圧力検出装置1aを設置するようにしてもよい。
図7及び図8は、冷凍室内外差圧に基づく冷凍室の密閉度検知結果を示す実測データの例である。これらの図7及び図8は、冷凍室400の扉を全閉又は「半ドア状態」を模擬して半開して24時間運転した際における、庫内各位置の温度、消費電力、並びに、冷凍室400の天井面に設置した庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2によって庫内外差圧の実測値を例示するものである。
なお、これらの図7及び図8における条件の差異は、「半ドア状態」を模擬する半開における扉の隙間及び半開とする継続時間である。図7は、この隙間を1mm程度に設定し、24時間の運転期間中17:00〜24:00を半開とした場合の数値例である。これに対し、図8はこの隙間を5mm程度に設定し、24時間の運転期間中15:00〜24:00を半開とした場合の数値例である。
これらの図7及び図8において、(a)は冷凍室400内の温度と消費電力の実測結果、(b)は冷凍室400の内外差圧の実測結果である。(a)においては、全消費電力15、冷凍室上段ケースマス温度19a、冷凍室下段ケースマス温度19b、及び、冷凍室吹出温度20が示されている。また、(b)には、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2により検知された冷凍室内外差圧21が示されている。
図7及び図8の(a)における冷凍室上段ケースマス温度19a及び冷凍室下段ケースマス温度19bを見ると、半開状態においては庫内の温度は徐々に上昇している。そして、隙間1mmの図7では、半開状態開始後3時間で−16℃程度まで上昇した後、その温度が維持されている。また、隙間5mmの図8では、半開状態開始後9時間で−10℃以上、特に冷凍室上段ケースマス温度19aは−5℃以上まで上昇している。
ここで、一般的に冷凍温度帯とは−15℃以下とされており(JAS法)、アイスクリームや冷凍食品は−18℃以下での保存が推奨されている。したがって、特に半開隙間を5mmとした場合(図8)には、冷凍保存が維持できない温度環境に到達してしまい、さらに着霜の発生や、その霜や氷が溶けて庫外に漏水する可能性が示されている。また、半開隙間を1mmとした場合(図7)であっても推奨温度を維持することができない可能性が示唆されている。
この際、図7及び図8の(b)に示すように、冷蔵室100に庫内圧力検出装置1aを設置した場合と同様に、冷凍室400に庫内圧力検出装置1aを設置した場合においても、扉の全閉、半開状態に関わらず、冷却空気の流入量の増減に伴って、冷凍室内外差圧21も増減を繰り返す。そして、半開時においては、全閉時に対して冷凍室内外差圧21の増減幅が小さくなっていることが判る。したがって、冷凍室内外差圧21の変動幅に対して適切な閾値を設定することで、変動幅が閾値になった場合に冷凍室の扉が半開状態であると判定することができる。
また、図7及び図8において、全消費電力15は、全閉時には大きくても50W程度で推移しており、時々ほぼ0Wとなっている。この全消費電力15が0Wとなるのは、圧縮機1001の運転を停止して空気搬送装置1003のみの運転が行われている時である。これが半開状態となると、図7及び図8のいずれにおいてもほぼ0Wとなる時がなくなり、圧縮機1001の運転停止が行われなくなることが判る。さらに、図7の半開隙間1mmの場合には、全期間において全消費電力15が50W程度で推移し、図8の隙間5mmの場合では、圧縮機1001の運転周波数の増加により、全消費電力15が100W以上にまで増加していることが判る。
以上のように構成された冷蔵庫は、断熱的に区画された複数の貯蔵室を有する筐体と、複数の貯蔵室の開口部をそれぞれ開閉する複数の扉と、空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段と、冷却手段により生成された冷却空気をそれぞれの貯蔵室へと供給するための冷却風路と、冷却風路内の冷却空気を貯蔵室へと搬送する空気搬送手段と、冷却風路内に設けられ、貯蔵室のそれぞれへの冷却空気の供給量を調節する風量調節手段と、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と、筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段と、差圧検知手段により検知された差圧に基づいて、貯蔵室の密閉度を検知する密閉度検知手段と、を備えている。
実施の形態1で前述したような従来の冷蔵庫で一般的に用いられているマグネット式の開閉スイッチでは、袋などの薄い物体が扉に挟まったような微小な開扉状態、いわゆる「半ドア状態」でも、スイッチが反応してしまい、扉の開状態を検出できないという課題があった。この「半ドア状態」を放置しておくと、庫外の高温空気が庫内に流入して冷却され、大量の結露が発生して食品の品質をさらに劣化させ、また冷凍室400においては、着霜の発生や、その霜や氷が溶けて庫外に漏水する等、より大きな問題となる可能性がある。
なお、図6を参照すればわかるように、扉の半開時には庫内温度が上昇するため、例えば冷蔵室100内上方の温度を検出していれば、微小な開扉状態を判別することは可能である。しかし、全閉時(3:00〜17:00)であっても、食品を収納するために扉を開閉した後などは庫内温度が変動するため、この庫内温度を用いた手法では扉の半開/全閉の判別は困難である。
また、半開時(17:00〜24:00)においても、庫内温度の上昇は徐々に起こるため、全閉状態と確実に判別する温度閾値を設定した場合(例えば15℃)、半開状態を検知するのに数時間を要するため、食品の劣化を抑制することができない。
これに対し、この発明の実施の形態2に係る冷蔵庫によれば、特に、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と、筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段である庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2と、差圧検知手段により検知された差圧に基づいて、貯蔵室の密閉度を検知する密閉度検知手段である扉密閉度検知手段5と、を備えたことで、既存のマグネット式開閉スイッチでは検知できない微小な開扉状態を、数秒あるいは数分単位という短時間で検知することが可能である。
また、密閉度検知手段により検知された密閉度が基準値以下である場合に、密閉度の不足を使用者に報知する報知手段である扉密閉度報知手段6aを備えることで、扉密閉度検知手段5により短時間で検知した扉の半開状態を、瞬時に使用者に報知して閉扉を促すことにより、食品の劣化を未然に防ぐことができる。
なお、扉が半開状態の場合には、庫外の高温空気が継続的に庫内へ流入することになるため、圧縮機1001の運転周波数を増加させて供給される冷却空気の温度を下げても、あるいは、半開状態にある貯蔵室への冷却空気流入量を調節するダンパの開度を大きくして冷却空気の供給量を増加させても、庫内の空気温度の上昇を抑制することはできない。
そこで、扉密閉度報知手段6aにより使用者に報知して閉扉を促すことで、無駄な冷却運転を回避して他の貯蔵室の冷却能力が損なわれたりすることを未然に防ぐことが省エネルギーの観点から特に有効である。
実施の形態3.
図9から図12は、この発明の実施の形態3に係るもので、図9は冷蔵庫の冷蔵室の構成概略を示す側方断面図、図10は冷蔵庫内外差圧による冷蔵室における収納物の収納容積占有率検知結果(収納容積占有率:0%)を示す実測データの一例、図11は冷蔵庫内外差圧による冷蔵室における収納物の収納容積占有率検知結果(収納容積占有率:40%)を示す実測データの一例、図12は冷蔵庫内外差圧による冷蔵室における収納物の収納容積占有率検知結果(収納容積占有率:70%)を示す実測データの一例である。
ここで説明する実施の形態3は、冷蔵庫の内外の差圧を検出する点は実施の形態1又は実施の形態2と同様であるが、検出した冷蔵庫の内外の差圧に基づいて貯蔵室の収納容積占有率を判定するようにしたものである。
この実施の形態3においては、図9に示すように、冷蔵室100内の天井面には、庫内(冷蔵室100内)の空気圧を検出する庫内圧力検出装置1aが設置されている。また、冷蔵庫1000の動作を制御するための図示しない制御基板等には、庫内外差圧検知手段2、収納容積占有率検知手段7及び多量収納容積時報知手段6bが実装されている。
このうち、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2は実施の形態1又は実施の形態2と同様である。収納容積占有率検知手段7は、庫内外差圧検知手段2により算出された差圧に基づいて、貯蔵室内における収納物の容積占有率、すなわち「詰め過ぎ状態」を判定する。多量収納容積時報知手段6bは、収納容積占有率検知手段7による貯蔵室内における収納物の容積占有率の判定結果に基づいて、貯蔵室内の収納物の容積占有率が過多である旨を使用者へと報知する。
なお、他の構成は実施の形態1又は実施の形態2と同様であり、その詳細説明は省略する。
次に、図10から図12を参照しながら、収納容積占有率検知手段7における、庫内外差圧検知手段2により算出された差圧に基づく貯蔵室内における収納物の容積占有率の判定について説明する。図10から図12は、いずれも、冷蔵庫内外差圧による冷蔵室における収納物の収納容積占有率の検知結果を示す実測データの例である。ただし、図10は収納容積占有率を0%とし、図11は収納容積占有率を40%し、図12は収納容積占有率を70%とした場合の実測値である。
これらの図10から図12は、まず冷蔵室扉101を1分間全開にした後、24時間運転した際における各種の実測値を示している。各図の(a)には、冷蔵室天井面平均温度12、冷蔵室背面平均温度13、冷蔵室吹出平均温度14、及び、全消費電力15が示されている。各図の(b)には、冷蔵室棚最上段マス温度16a、冷蔵室棚2段目マス温度16b、冷蔵室棚3段目マス温度16c、及び、冷蔵室棚最下段マス温度16dが示されている。各図の(c)には、冷蔵室扉棚上段マス温度17a、冷蔵室扉棚中段マス温度17b、及び、冷蔵室扉棚下段マス温度17cが示されている。そして、各図の(d)には、冷蔵室内外差圧18が示されている。
なお、収納物は袋入りインスタントラーメンで模擬し、(b)に示される冷蔵室棚のマス温度16a〜16dの測定位置は、収納物より背面側に配置されている。
図10から図12の(a)〜(c)の庫内温度を見ると、収納容積占有率が高いほど、冷蔵室棚のマス温度16a〜16dはより低温に、冷蔵室扉棚のマス温度17a〜17cはより高温になっていることが判る。前述したように冷蔵室棚のマス温度16a〜16dの測定位置は収納物より背面側すなわち冷蔵室吹出口103側であり、冷蔵室扉棚のマス温度17a〜17cの測定位置は収納物より扉側である。したがって、この結果は、収納物の容積占有率が高くなるほど、収納物により冷却空気の扉側への供給が阻害されて庫内温度の不均衡が生じることを示している。
特に、図12の収納容積占有率が70%の場合は、冷蔵室100内下方の棚温度である、冷蔵室棚3段目マス温度16c及び冷蔵室棚最下段マス温度16dが0℃以下まで低下し、一方の冷蔵室100内上方の扉棚温度である、冷蔵室扉棚上段マス温度17aは13〜14℃を維持しており、冷蔵温度帯から外れ、食品の劣化を促進させる温度環境となっていることが示されている。
また、(a)の全消費電力15を見てみると、収納容積占有率が0〜70%の全てにおいて、最大値は50W程度を維持している。しかし、圧縮機1001の運転を停止して空気搬送装置1003のみで運転されている期間が、収納容積占有率が高いほど減少しており、消費電力量としては増加していることが判る。
ここで、各図の(d)の冷蔵室内外差圧18に着目すると、収納容積占有率に関わらず、増減を繰り返して振動していることが判る。これは、実施の形態1及び実施の形態2で前述したように、冷蔵庫1000の運転により冷蔵室ダンパ105が開閉されることで冷蔵室100内への冷却空気の流入量が増減し、この流入量の増減に伴って冷蔵室100内の圧力が変化することに起因する。
このような冷蔵室内外差圧18の増減幅を見てみると、収納容積占有率が高いほど増減幅が大きくなっていることが判る。具体的な数値として、図10の収納容積占有率が0%の場合では0.5〜0.8Pa(変動幅Δ0.3Pa)、図11の収納容積占有率が40%の場合では0.1〜1.1Pa(変動幅Δ1.0Pa)、図12の収納容積占有率が70%の場合では−0.4〜1.5Pa(変動幅Δ1.9Pa)である。
このように、収納容積占有率が高いほど(換言すれば冷蔵室100内の余剰容積が小さいほど)、冷却空気供給時における差圧の最大値が増加し、逆に冷却空気停止時における差圧の最小値が減少している。したがって、収納容積占有率検知手段7において、冷蔵室内外差圧18の変動幅及び/又は絶対値に対して適切な閾値を設定することで、収納容積占有率が過多である状態を判別することができる。具体的に例えば、変動幅の閾値をΔ1.5Pa以上、最小値の閾値を0Pa以下(負圧)と設定することにより、冷蔵室100内の温度が冷蔵温度帯を外れる可能性がある収納容積占有率70%以上の状態を判別することができる。
多量収納容積時報知手段6bは、このような原理に基づいて収納容積占有率検知手段7による冷蔵室100内の収納容積占有率が過多であると判定された場合に、その旨を使用者へと報知する。この扉密閉度報知手段6aによる報知は、ブザー音やメッセージ等の鳴動、LEDランプの点灯・点滅等により行われる。
なお、他の動作は実施の形態1又は実施の形態2と同様であり、その詳細説明は省略する。
図12に示したように、収納容積占有率が高い場合には、冷却空気が扉側に到達せず、背面側が集中的に冷却されてしまう。このため、圧縮機1001の運転周波数を増加させて供給される冷却空気の温度を下げても、あるいは、収納容積占有率の高い貯蔵室への冷却空気流入量を調節するダンパ(図9の例では、冷蔵室100への流入量を調節する冷蔵室ダンパ105)の開度を大きくして、冷却空気の供給量を増加させても、扉側の温度は低下せず、逆に背面側がさらに低下し、食品が凍結してしまう可能性がある。
そこで、収納容積占有率検知手段7にて短時間で検知した収納過多状態を、瞬時に使用者に報知して収納状況の改善を促すことにより、食品の劣化を未然に防ぐことが可能となる。また、収納過多状態において、圧縮機1001の運転周波数を増加させたり、収納過多状態の貯蔵室に冷却空気を集中的に供給することにより、他の貯蔵室の冷却能力が損なわれたり、消費電力量が増加することを未然に防ぐことができるので、無駄な冷却運転を回避することによる省エネルギー効果が得られる。
また、以上においては、庫内圧力検出装置1aを冷蔵室100内に設置し、冷蔵室100内の収納容積占有率を検知する構成を例に説明した。この点については、冷蔵室100以外の任意の貯蔵室の収納容積占有率を検知するために、収納容積占有率の対象である貯蔵室内に庫内圧力検出装置1aを設置するようにしてもよい。
以上のように構成された冷蔵庫は、実施の形態1の構成において、断熱的に区画された複数の貯蔵室を有する筐体と、複数の貯蔵室の開口部をそれぞれ開閉する複数の扉と、空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段と、冷却手段により生成された冷却空気をそれぞれの貯蔵室へと供給するための冷却風路と、冷却風路内の冷却空気を貯蔵室へと搬送する空気搬送手段と、冷却風路内に設けられ、貯蔵室のそれぞれへの冷却空気の供給量を調節する風量調節手段と、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と、筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段と、差圧検知手段により検知された差圧に基づいて、貯蔵室の内部に収納された収納物の容積占有率を検知する容積占有率検知手段と、を備えている。
従来の冷蔵庫においては、貯蔵室の扉が完全に密閉されていても、庫内の収納物が多い場合、いわゆる「詰め過ぎ」の状態になると、例えば図9に示すような背面に冷蔵室吹出口103が配置された冷蔵室100では、冷蔵室吹出口103から供給された冷却空気が、収納物に阻害されて前面の冷蔵室扉101側まで到達せず、特に冷蔵室扉101の裏面に設置されている扉棚及び冷蔵室棚板102の扉側に収納された食品の温度が上昇し、品質劣化の原因となる。
また、同時に、冷却空気は背面側に集中的に供給されるため、冷蔵室棚板102の背面側に収納された食品が凍結してしまう可能性もある。このとき、冷蔵室扉101側の温度を検出することにより、温度の上昇傾向からある程度収納量を予測できるが、実施の形態2でも前述したように、扉開閉を加味したうえで庫内の温度上昇から収納量を判別するには数時間を要するため、食品の劣化や凍結を抑制することは難しい。
これに対し、この発明の実施の形態3に係る冷蔵庫によれば、特に、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と、筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段である庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2と、差圧検知手段により検知された差圧に基づいて、貯蔵室の内部に収納された収納物の容積占有率を検知する容積占有率検知手段である収納容積占有率検知手段7と、を備えたことで、簡潔な構成で貯蔵室の内部に収納された収納物の容積占有率を短時間で正確に検知することが可能である。
実施の形態4.
図13は、この発明の実施の形態4に係るもので、冷蔵庫の冷蔵室を示す概略構成図(側面断面図)である。
ここで説明する実施の形態4は、前述した実施の形態1から実施の形態3の構成において、庫内外差圧と貯蔵室内の扉側上方温度とから貯蔵室内の収納物の冷却負荷を推定するようにしたものである。さらに、貯蔵室内の扉側へと冷却空気を扉側へ搬送するバイパス風路を設け、推定した冷却負荷に基づいて、バイパス風路からも冷却空気を供給するようにしたものである。
すなわち、図13に示すように、冷蔵室100内の天井面には、庫内(冷蔵室100内)の空気圧を検出する庫内圧力検出装置1aが設置されている。また、冷蔵室扉101の裏面(内面)の上寄りの位置に、冷蔵室100内の扉側上方温度を検出する扉温度検出装置8が設置されている。そして、冷蔵庫1000の動作を制御するための図示しない制御基板等には、庫内外差圧検知手段2、収納負荷推定手段9、多量収納負荷時制御手段4b及び過剰収納負荷時報知手段6cが実装されている。
さらに、また、冷蔵室100の天井面の上方には、冷却空気を扉側へ搬送するため冷蔵室バイパス風路120が形成されている。この冷蔵室バイパス風路120は、冷却風路1010と連通されている。そして、冷却風路1010と冷蔵室バイパス風路120への連通部分には、バイパス風路ダンパ121が開閉自在に設けられている。バイパス風路ダンパ121の開閉状態(開度)を調整することで、冷却風路1010から冷蔵室バイパス風路120へと流れる冷却空気の風量を調節することができる。
庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2は、実施の形態1から実施の形態3と同様である。収納負荷推定手段9は、庫内外差圧検知手段2により算出された差圧と、扉温度検出装置8により検出された扉側上方温度とに基づいて、冷蔵室100内の収納物の冷却負荷を推定する。
多量収納負荷時制御手段4bは、収納負荷推定手段9による収納物の冷却負荷の推定結果に基づいて、圧縮機1001、冷蔵室ダンパ105、及び/又は、バイパス風路ダンパ121に制御信号を送信する。過剰収納負荷時報知手段6cは、収納負荷推定手段9による収納物の冷却負荷の推定結果に基づいて、収納物の冷却負荷が過多である場合に、その旨を使用者に報知する。
収納負荷推定手段9における冷蔵室100内の収納物の冷却負荷の推定は次の表1に示すような対応表に従って行う。すなわち、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2によって検知された庫内外差圧の変動幅ΔP[Pa]と、扉温度検出装置8によって検出された扉側上方温度T[℃]の組み合わせによって、4段階の負荷レベルI〜IV(I:最小、IV:最大)が決定される。
具体的には、まず、庫内外差圧の変動幅ΔPについて、実施の形態3の図10から図12に示されているように、収納容積占有率が高いほど変動幅ΔPが大きくなる。そこで、収納容積占有率の条件としては、ΔP≦0.5Pa(収納容積占有率が20%以下を想定)、0.5Pa<ΔP≦1.5Pa(収納容積占有率が20〜60%を想定)、ΔP>1.5Pa(収納容積占有率が60%以上を想定)の3段階に分類する。
次に、扉側上方温度Tについては、上限温度Tmaxを例えば冷蔵温度帯の上限温度=10℃に設定した上で、庫内温度の上昇を判別するために上限温度との温度差ΔT=T−Tmaxを用いる。そして、この温度差ΔTについて、ΔT≦2℃(T≦12℃)、2℃<ΔT≦5℃(12℃<T≦15℃)、ΔT>5℃(T>15℃)の3段階に分類する。
こうして分類されたΔP及びΔTそれぞれの段階の組み合わせによって、収納物の冷却負荷の推定結果が負荷レベルI〜IVのいずれであるのかが決定される。具体的に表1の例でいえば、
・ΔT≦2℃かつΔP≦1.5Paの場合に負荷レベルI
・ΔT≦2℃かつΔP>1.5Paの場合、又は、2℃<ΔT≦5℃かつΔP≦1.5Paの場合に負荷レベルII
・2℃<ΔT≦5℃かつΔP>1.5Paの場合、又は、ΔT>5℃かつΔP≦1.5Paの場合に負荷レベルIII
・ΔT>5℃かつΔP>1.5Paの場合に負荷レベルIV
である。
なお、実施の形態3で説明した図10から図12の実測値に基づいて収納物の冷却負荷を推定する場合、冷蔵室扉棚上段マス温度17aが扉側上方温度T、冷蔵室内外差圧18が庫内外差圧Pに相当する。したがって、図10の実測例では、ΔP=0.3Pa、ΔT=−1〜2℃であるため負荷レベルIとなる。また、図11の実測例では、ΔP=1.0Pa、ΔT=1〜3℃であるため負荷レベルII、図12の実測例では、ΔP=1.9Pa、ΔT=3〜4℃であるため負荷レベルIIIとなる。
このとき、例えば、図12の収納容積占有率が70%の場合であっても、収納物の熱容量が小さく、仮にΔTが2℃以下となった場合には、負荷レベルIIと推定される。この負荷レベルIIは、図11の収納容積占有率が40%と同等の負荷レベルである。
このように、庫内外の差圧による収納容積占有率の判定結果と、庫内温度の検出結果の双方を用いて庫内環境を推定することにより、収納容積が大きくても冷却負荷が小さい場合、あるいは、収納容積が小さくても冷却負荷が大きい場合等、差圧又は温度だけでは検知することが難しい収納物の冷却負荷を推定することが可能となる。
収納負荷推定手段9により推定された負荷レベルがI〜IVのいずれであるのかに応じて、多量収納負荷時制御手段4bは圧縮機1001、冷蔵室ダンパ105及びバイパス風路ダンパ121を制御し、過剰収納負荷時報知手段6cは報知を行う。具体的に例えば、負荷レベルIの場合は、冷却負荷が小さいと判断し、通常の冷却運転を継続する。
また、負荷レベルIIの場合は、収納容積占有率が大きい、又は、庫内の温度上昇が若干大きいと判断し、多量収納負荷時制御手段4bにより、圧縮機1001の運転周波数を増加させて供給される冷却空気の温度を下げるか、又は、冷蔵室ダンパ105の開度を大きくして、冷却空気の供給量を増加させることにより、冷蔵室100内の冷却を促進する。
負荷レベルIIIの場合は、収納容積占有率が大きい、又は、庫内(特に扉側)の温度上昇が大きいと判断し、多量収納負荷時制御手段4bにより、バイパス風路ダンパ121を開ける、又は、バイパス風路ダンパ121の開度を大きくして、冷蔵室バイパス風路120を介して冷却空気を扉側に供給し、冷蔵室100内の温度分布の改善を図る。
そして、負荷レベルIVの場合は、収納容積占有率及び庫内の温度上昇がともに過大であると判断し、過剰収納負荷時報知手段6cにより、ユーザーに過剰負荷を報知する。この過剰収納負荷時報知手段6cによる報知は、ブザー音やメッセージ等の鳴動、LEDランプの点灯・点滅等により行われる。
他の動作は実施の形態1から実施の形態3と同様であり、その詳細説明は省略する。
なお、収納負荷推定手段9で用いる表1は、冷却負荷の推定基準の一例であって、差圧や温度の段階の数及び負荷レベルの段階の数はこれに限定されない。また、収納負荷推定手段9により推定された負荷レベルに基づく多量収納負荷時制御手段4bによる制御内容も1つの例として挙げたものである。
例えば、負荷レベルIIにおいて、多量収納負荷時制御手段4bは、圧縮機1001及び冷蔵室ダンパ105のいずれかではなく、これらの双方を制御してもよい。また、負荷レベルIIをさらにIIa(低)とIIb(高)の2つに分け、負荷レベルIIaでは、多量収納負荷時制御手段4bは冷蔵室100内の冷蔵室ダンパ105のみを制御し、負荷レベルIIbでは、冷蔵庫1000全体に影響を及ぼす圧縮機1001の動作を変更するようにしてもよい。
また、以上においては、扉温度検出装置8を冷蔵室扉101の裏面(内面)の上方に配置する例について説明した。しかし、扉温度検出装置8の設置位置は、冷蔵室100内の天井面の扉側、冷蔵室棚板102上の扉側等、温度上昇の傾向が出やすい位置であれば図13に示す位置には限られない。
さらに、冷蔵室バイパス風路120の形成位置についても、天井面の上方に限定されるものではない。冷蔵室バイパス風路120の形成位置は、冷却風路1010と連通し冷却空気を扉側へ搬送することができる位置であれば、例えば、冷蔵室100の側面側、底面側、又は、冷蔵室棚板102に配置してもよい。
加えて、以上においては、庫内圧力検出装置1a及び扉温度検出装置8冷蔵室100内に設置し、冷蔵室100の冷却負荷を推定する構成を例に説明した。この点については、冷蔵室100以外の任意の貯蔵室の冷却負荷を推定するために、負荷推定の対象である貯蔵室内に庫内圧力検出装置1a及び扉温度検出装置8を設置するようにしてもよい。また、その場合に、負荷推定の対象である貯蔵室において、当該貯蔵室の扉側へと冷却空気を搬送するバイパス風路を設けるようにしてもよい。
以上のように構成された冷蔵庫は、断熱的に区画された複数の貯蔵室を有する筐体と、複数の貯蔵室の前面側に設けられた開口部をそれぞれ開閉する複数の扉と、空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段と、複数の貯蔵室の背面側に設けられ、冷却手段により生成された冷却空気をそれぞれの貯蔵室へと供給するための冷却風路と、冷却風路内の冷却空気を貯蔵室へと搬送する空気搬送手段と、冷却風路内に設けられ、貯蔵室のそれぞれへの冷却空気の供給量を調節する風量調節手段と、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と、筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段と、差圧検知手段により差圧が検知される貯蔵室の内部における扉側の空気の温度を検出する扉側温度検出手段と、差圧検知手段により検知された差圧及び扉側温度検出手段により検出された温度に基づいて、貯蔵室の内部に収納された収納物の冷却負荷を推定する収納負荷推定手段と、を備えたものである。
前述した実施の形態3は、貯蔵室内の収納物の容積占有率を検知し、基準値以上の容積占有率であれば使用者にこれを報知するものであったが、収納容積が大きくても冷却負荷が小さい場合(例えば、収納物の熱容量が小さい場合)又は既に冷却されていて初期温度が低い場合等では、冷却空気の温度や風量の変更により、保存温度環境が改善され、報知の必要がない場合も考え得る。また、逆に収納容積が小さくても冷却負荷が大きい場合(例えば、収納物の熱容量が大きい場合)又は、調理直後の食品など初期温度が高い場合等では、放置しておくと庫内温度が上昇し、他の収納物へ影響を及ぼす可能性がある。
そこで、この実施の形4においては、特に、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と、筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段である庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2と、差圧検知手段により差圧が検知される貯蔵室の内部における扉側の空気の温度を検出する扉側温度検出手段である扉温度検出装置8と、差圧検知手段により検知された差圧及び扉側温度検出手段により検出された温度に基づいて、貯蔵室の内部に収納された収納物の冷却負荷を推定する収納負荷推定手段である収納負荷推定手段9と、を備えることで、簡潔な構成で貯蔵室内の収納物の冷却負荷を推定し、この推定された冷却負荷に基づいて、より正確な報知及び/又は冷却運転制御を実現することが可能である。
また、この際、差圧検知手段により差圧が検知される貯蔵室内の扉側へと冷却空気を搬送するためのバイパス風路(冷蔵室バイパス風路120)と、バイパス風路への冷却空気の流入量を調節するバイパス風量調節手段(バイパス風路ダンパ121)と、収納負荷推定手段による冷却負荷の推定結果に基づいて、バイパス風量調節手段の動作を制御する制御手段(多量収納負荷時制御手段4b)と、を備えることで、より効果的に貯蔵室内の温度分布の不均一を改善することができる。
また、収納負荷推定手段9によって推定される冷却負荷を複数の負荷レベルに区分し、負荷レベルのそれぞれに対応した冷却制御及び報知等を行うことで、より効率的な冷却制御を実現し食品の品質を維持することができるとともに、無駄な冷却運転を抑制して省エネルギー効果を得ることが可能である。
実施の形態5.
図14は、この発明の実施の形態5に係るもので、冷蔵庫の冷蔵室を示す概略構成図(側面断面図)である。
ここで説明する実施の形態5は、冷蔵庫の内外の差圧を検出する点は実施の形態1又は実施の形態2と同様であるが、検出した冷蔵庫の内外の差圧と空気搬送装置及び冷蔵室ダンパの運転情報とに基づいて、機器の劣化を検知するようにしたものである。
この実施の形態5においては、図14に示すように、冷蔵室100内の天井面には、庫内(冷蔵室100内)の空気圧を検出する庫内圧力検出装置1aが設置されている。また、冷蔵庫1000の動作を制御するための図示しない制御基板等には、庫内外差圧検知手段2、劣化検知手段10及び劣化時報知手段6dが実装されている。
このうち、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2は実施の形態1から実施の形態4と同様である。劣化検知手段10は、庫内外差圧検知手段2により算出された差圧と空気搬送装置1003及び冷蔵室ダンパ105の運転情報とに基づいて、機器の劣化を検知する。劣化時報知手段6dは、劣化検知手段10による機器の劣化の検知結果に基づいて、機器の劣化を使用者へと報知する。
劣化検知手段10による機器の劣化の判定について説明する。まず、例えば、実施の形態3の説明で用いた図10の(d)を見ると、収納容積占有率が0%の場合における冷蔵室内外差圧18は、初期の冷却課程(0:00〜3:00)を除き、0.5〜0.8Pa(変動幅Δ0.3Pa)の範囲で増減を繰り返していることが判る。
これは、前述したように、冷蔵庫1000の運転により冷蔵室ダンパ105が開閉されることで冷蔵室100内への冷却空気の流入量の増減し、この流入量の増減に伴って冷蔵室100内の圧力が変化するためである。すなわち、空気搬送装置1003が一定の回転数で運転している際において、冷蔵室ダンパ105を全開にして冷却空気が冷蔵室100内に供給されているときには冷蔵室内外差圧18は0.8Paとなり、逆に冷蔵室ダンパ105を全閉して冷蔵室100内への冷却空気の供給が停止されているときには冷蔵室内外差圧18は0.5Paとなるということである。
逆に言えば、空気搬送装置1003及び冷蔵室ダンパ105に劣化が生じていなければ、空気搬送装置1003及び冷蔵室ダンパ105の運転状態・動作状態に応じて冷蔵室内外差圧18がとる値の範囲は概ね定まる。
このことを利用して、劣化検知手段10は、空気搬送装置1003がある一定の回転数で運転し、かつ、冷蔵室ダンパ105が全開である場合に、冷蔵室内外差圧18の最大値が0.8Paより明確に小さいときには、冷却空気風量が不足しており空気搬送装置1003に劣化の可能性があると判断することができる。
また、劣化検知手段10は、空気搬送装置1003がある一定の回転数で運転し、かつ、冷蔵室ダンパ105が全閉である場合に、冷蔵室内外差圧18の最小値が0.5Paより明確に大きいときには、冷蔵室ダンパ105から冷却空気が漏洩しており冷蔵室ダンパ105に劣化の可能性があると判断することができる。
劣化時報知手段6dは、このような原理に基づいて劣化検知手段10により機器の劣化が検知された場合に、その旨を使用者へと報知する。この劣化時報知手段6dによる報知は、ブザー音やメッセージ等の鳴動、LEDランプの点灯・点滅等により行われる。これにより、空気搬送装置1003及び/又は冷蔵室ダンパ105の劣化による冷却不足を予測し、食品の劣化を未然に防ぐことが可能となる。
なお、他の動作については実施の形態1から実施の形態4と同様であって、その詳細説明は省略する。
また、図6を参照して実施の形態2で説明したように、冷蔵室内外差圧18の変動幅は、扉の密閉度によっても異なる。このため、例えば、冷蔵室100内が空の状態すなわち冷蔵室扉101に何も挟まる要素がなく、冷蔵室扉101の全閉状態が確認できる条件下において、庫内圧力検出装置1a及び庫内外差圧検知手段2によって検知された冷蔵室内外差圧18の変動幅に基づいて、冷蔵室扉101のパッキンの劣化を検知することもできる。
劣化検知手段10により冷蔵室扉101のパッキンの劣化を検知した場合には、その旨を劣化時報知手段6dにより使用者に報知するようにしてもよいし、圧縮機1001の運転周波数を増加させたり、扉パッキンが劣化した貯蔵室に冷却空気を集中的に供給したりする等の運転制御を行うようにしてもよい。このようにすることで、食品の劣化を未然に防ぐことができるとともに、扉パッキンの劣化が生じた状態においても、他の貯蔵室の冷却能力が損なわれたりすることを未然に防ぐことができるので、無駄な冷却運転を回避することによる省エネルギー効果が得られる。
なお、以上においては、庫内圧力検出装置1aを冷蔵室100内に設置し、空気搬送装置1003、冷蔵室ダンパ105及び/又は冷蔵室扉101のパッキンの劣化を検知する構成を例に説明した。この点については、冷蔵室100以外の任意の貯蔵室に係る機器(ダンパ、パッキン等)の劣化を検知するために、機器劣化検知の対象である貯蔵室内に庫内圧力検出装置1aを設置するようにしてもよい。
以上のように構成された冷蔵庫は、断熱的に区画された複数の貯蔵室を有する筐体と、複数の貯蔵室の開口部をそれぞれ開閉する複数の扉と、空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段と、冷却手段により生成された冷却空気をそれぞれの貯蔵室へと供給するための冷却風路と、冷却風路内の冷却空気を貯蔵室へと搬送する空気搬送手段と、冷却風路内に設けられ、貯蔵室のそれぞれへの冷却空気の供給量を調節する風量調節手段と、複数の貯蔵室のうちの少なくとも1つの貯蔵室の内部の空気圧と、筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段と、差圧検知手段により検知された差圧と空気搬送手段及び/又は風量調節手段の動作状態とに基づいて、空気搬送手段、風量調節手段及び扉のパッキンの少なくともいずれかの劣化を検知する劣化検知手段と、を備えたものである。
このため、冷蔵庫の分解等を行うことなく、簡潔な構成で、冷却運転に不可欠な機器の劣化を検知することができ、これらの機器の劣化による冷却不足を予測し、食品の劣化を未然に防ぐことが可能である。