JP5718185B2 - ワンプ用紙 - Google Patents
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Description
パルプを主成分とするパルプシート梱包用ワンプ用紙であって、
乾燥紙力剤と湿潤紙力剤とが配合されており、この乾燥紙力剤と湿潤紙力剤との質量比が1対2以上4以下の範囲にあり、
上記パルプに対する湿潤紙力剤の配合率が0.1質量%以上1.0質量%以下であり、
Japan TAPPI紙パルプ試験方法 No.27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準じて測定したマシン縦方向の水中伸度が0.2%以上であることを特徴とする。
上記パルプの原料となる原料パルプとしては、特に限定されず、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、古紙パルプ(DIP)、機械パルプ(TMP)等公知のものを1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
上記パルプの平均繊維断面積は、当該ワンプ用紙を離解した後の離解パルプにおいて、200μm2以上600μm2以下が好ましく、250μm2以上450μm2以下がより好ましい。上記断面積を上記範囲とすることで、ワンプ用紙の引裂強さ等と透湿性等とを共に高めることができる。
上記パルプにおいては、当該ワンプ用紙を離解した後の離解パルプにおいて、フィブリル化率が3%以下であることが好ましい。フィブリル化率が3%を超えるとパルプ繊維同士の絡み合いが多くなり引裂強度は向上するものの、原紙が密に詰まり過ぎて透湿性やクッション性が低下しやすくなるため好ましくない。上記フィブリル化率は、調成工程における叩解条件を適宜変更することなどで調整できる。
上記湿潤紙力剤としては、特に限定されず、ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エポキシ樹脂、ポリビニルアミンなどの公知のものを用いることができる。
当該ワンプ用紙は、湿潤紙力剤に加えて、乾燥紙力剤が配合されており、この乾燥紙力剤と湿潤紙力剤との質量比が1対2以上4以下の範囲にある。当該ワンプ用紙によれば、乾燥紙力剤と湿潤紙力剤とを特定割合で併用しているため、これらの薬剤の使用量を抑えつつ、湿潤強度を高め、水中伸度の低下を最小限に抑えることができる。湿潤紙力剤の比が2を下回ると、湿潤紙力剤の量が少なく、湿潤紙力剤が効果的に定着できない。逆に、湿潤紙力剤の比が4を超えると、湿潤紙力剤の比率が高まり、未定着の湿潤紙力剤が増加し、非効率的で、抄紙系内を汚し、欠陥トラブルの原因となるだけでなく、水中伸度とクッション性が低下しすぎて、風雨にさらされた後クランプリフト等で移動させると、番線の瘤の部分を起点して破れやすくなる。また、この比を1対2〜4とすることで、理由は定かではないが、紫外線に対する耐性を高め、紫外線照射後の引裂強さの低下を抑えることができる。
当該ワンプ用紙は、サイズ剤が更に配合されていることで、湿潤紙力剤の含有量が最小限であっても耐水性及び湿潤紙力が高くなり、水中伸度の低下を最小限に抑えることができる。上記サイズ剤としては、特に限定されず、ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤、アルケニルコハク酸無水物、アルキルテケンダイマーなどの公知のものを1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(坪量)
当該ワンプ用紙の坪量としては、80g/m2以上500g/m2以下が好ましく、100g/m2以上300g/m2以下がより好ましい。坪量が80g/m2を下回ると、剛度及び引張強さが低下しやすく、搬送時などに紙詰りや割けが発生しやすくなる。逆に、坪量が500g/m2を超えると、剛度が高くなりすぎて搬送時などに紙詰りが発生しやすくなる。
当該ワンプ用紙のJIS−P8122に準拠したステキヒトサイズ度が好ましくは200秒以上410秒以下であり、250秒以上380秒以下がより好ましい。当該ワンプ用紙は、ステキヒトサイズ度が上記範囲であると、水濡れに対する抵抗度がより高く、屋外等でも好適に使用することができる。このステキヒトサイズ度が200秒未満の場合、水濡れに対する抵抗度が低く、水が染み込みやすく湿潤強度の低下を促進しやすい。一方、このステキヒトサイズ度を410秒より高くするためにはサイズ剤の添加量を増やす必要が有り、抄紙系内で未定着となったり、他の薬品と凝集したりし、欠陥トラブルの原因となる可能性がある。
当該ワンプ用紙は、乾燥紙力剤と湿潤紙力剤との質量比が1対2以上4以下の範囲にあり、パルプに対する湿潤紙力剤の配合率が0.1質量%以上1.0質量%以下であるため、湿潤紙力剤を含有しているにも関わらず、Japan TAPPI紙パルプ試験方法 No.27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準じて測定したマシン縦方向の水中伸度が0.2%以上である。このため、風雨にさらされ水を含み寸法変化を起こしたワンプ用紙であっても、番線による結束応力を緩和でき裂けや破れが発生することはない。つまり、屋外で数ヶ月から半年程度、長いもので1年間放置してもワンプ用紙の裂けや破れを防止できる。また、パルプシートの保管場所を移動させるためにクランプリフト等でパルプシートを掴み移動させるなど、ワンプ用紙に荷重を掛けたとしても裂けたり破れたりすることはない。この水中伸度としては、上記特性をより効果的に発揮させるため、0.3%以上が好ましく、0.4%以上がさらに好ましい。一方、この水中伸度の上限としては、特に制限されないが、例えば、1.0%である。
当該ワンプ用紙のJIS−P8143に準拠したマシン縦方向の剛度は400以上800以下が好ましく、500以上がより好ましく、600以上がさらに好ましい。また、マシン横方向の剛度は200以上400以下が好ましく、250以上がより好ましい。積層されたパルプシートの下側を包装する際は、当該ワンプ用紙はバキュームにより自動給紙される場合があり、剛度が必要になる。縦方向の剛度が400未満の場合は、バキュームで吸引する際、端の部分が垂れ、紙詰りが発生しやすくなる。逆に、縦方向の剛度が800より高くなると紙が固くなりすぎ、ワンプ用紙を折り畳んで梱包する際、折りにくくなり、自動梱包できなくなる場合がある。また、横方向の剛度が200未満の場合、ワンプ用紙が垂れ下がり、自動給紙されず、詰りトラブルが発生しやすくなる。逆に、横方向の剛度が400より高くなると、紙が固くなりすぎ、ワンプ用紙を折り畳んで梱包する際、折りにくくなり、自動梱包できなくなる場合がある。
当該ワンプ用紙のJIS−P8116に準拠したマシン縦方向の引裂強さは、2,000mN以上4,000mN以下が好ましく、2,500mN以上がより好ましい。縦方向の引裂強さが2,000mN未満の場合、当該ワンプ用紙で梱包したパルプシートをワイヤーで固定する際、ワンプ用紙が裂ける場合がある。逆に、縦方向の引裂強さを4,000mNより高くすると、ワンプ用紙の裂けの問題は発生し難いが、坪量を高くする必要が有り、その結果剛度が高くなり、ワンプ用紙を折り畳む工程でうまく折れなくなる場合がある。
当該ワンプ用紙のフェードメーターで紫外線を照射した前後のマシン縦方向の引裂強さの低下率としては、5%未満が好ましく、3%未満がより好ましい。上記照射量は、屋外で1年間放置したときに受ける紫外線量に相当する。当該ワンプ用紙はパルプシートを包装した状態で、数ヶ月から半年程度、屋外で保管されることがある。当該ワンプ用紙に配合される湿潤紙力剤等はポリマーであり、これらポリマーは太陽からの紫外線により分子鎖が切れて劣化して脆くなりやすい。すなわち、屋外に置かれた一般的なワンプ用紙は引裂強さが低下しやすいという問題がある。加えて、パルプシートは在庫状態により保管場所を移動することがあり、脆くなったワンプ用紙に移動による荷重が掛かると、ワンプ用紙に裂けが発生する可能性がある。しかし、当該ワンプ用紙によれば、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤とを特定割合で併用しているため、上述のとおり使用量を減らすことができ、その結果、紫外線による劣化を抑制されている。当該ワンプ用紙によれば、上記の低下率が5%未満であることで、屋外で1年程度保管した後、保管場所変更のために再移動したとしても、引裂強さの低下が少ないため破れが発生しにくく、保管性に優れる。
当該ワンプ用紙のJIS−P8117に準拠した透気度としては、20秒以上70秒以下が好ましく、25秒以上55秒以下がさらに好ましい。本発明においては、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を含有するため、ワンプ用紙が硬化しやすく、透気度が低下しやすいが、上述のとおり湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の割合を所定範囲内にすることで、透気度を少なくとも70秒以下と透気性を高めることができる。ワンプ用紙で梱包された状態のパルプシートは、上述のとおり、屋外で半年程度保管されることがある。パルプシートは水分を20.0〜50.0質量%程度含有しているため、半年程度保管すると腐敗が発生する可能性がある。しかし、当該ワンプ用紙によれば、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の使用量が抑えられている結果、透気度を上記範囲に高めることができる。従って、当該ワンプ用紙によれば、ワンプ内部にこもった空気が外に出やすく、また外気がワンプ内部に入りやすいため、ワンプ内部のパルプが腐敗しにくく、屋外で1年以上と長期の保存にも用いることができる。
当該ワンプ用紙に40kg/m2の圧力を掛けた場合の紙厚の減少率としては、3%以上が好ましく、5%以上がさらに好ましい。本発明においては、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を含有するため、ワンプ用紙が硬化しやすく、クッション性が低下しやすいが、上述のとおり湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の割合を所定範囲内にすることで、クッション性の低下を防止でき、3%以上を維持することができる。パルプシートを梱包した状態のワンプ用紙は番線で固定される。この際、番線は始端と終端を撚り合わせて留めるため、終端部は番線による瘤ができる。ここで、梱包体を積み重ねた場合や隙間なく隣接させて置いた場合、ワンプ用紙にクッション性がないと、瘤の大きさの分だけワンプ用紙がパルプシートに喰い込みやすく、ワンプ用紙の繊維の一部がパルプシートに転移(混入)してパルプシートの品質を低下させるおそれがある。しかし、当該ワンプ用紙によれば、上記範囲のクッション性を有するため、瘤による圧縮を吸収できる。
当該ワンプ用紙は、公知の製紙方法により得ることができる。すなわち、上記原料パルプのスラリーに、各薬剤(湿潤紙力剤、乾燥紙力剤等)を配合したものを抄紙することで得ることができる。
JIS−P8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
JIS−P8122:2004「紙及び板紙−サイズ度試験方法−ステキヒト法」に準じて測定した。
JIS−P8143:1996「紙−こわさ試験方法−クラークこわさ試験機法」に準じて測定した。
JIS−P8117:1998「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準じて測定した。
スタンダード紫外線ロングライフ・フェードメーター(スガ試験機社製、型番:FAL−3D)を用いて、出力2,160W(放電電流16A、放電電圧135V)で、光源からの距離23cmで、紫外線を4時間(屋外放置12ヶ月相当)照射した前後のマシン縦方向の引裂強さを、JIS−P8116:2000「紙−引裂強さ試験方法−エルメンドルフ形引裂試験機法」に準じて測定した。また、この前後の値から強度の低下率を算出した。
ワンプ用紙をJIS−P8220:1998「パルプ−離解方法」に準じて離解し、繊維長測定試験機(型番:FiberLab、メッツォ社製)を用いて、パルプ繊維の平均繊維断面積を測定した。
坪量160g/m2のワンプ用紙を36枚重ね、1m2あたり40kgの重しを均一に載せた前後の高さ(紙厚)を測定し、次式によりクッション性を算出した。
クッション性(%)=(W0−Wt)/W0×100
W0:重りを載せる前の紙厚
Wt:重りを載せた時の紙厚
欠陥検出器(コグネックス社製、型番:スマートビュー、条件:閾値100、16mm)を用いて、次のとおり欠陥発生個数を評価した。
◎:10万m抄造当り0〜1個
○:10万m抄造当り2〜3個
△:10万m抄造当り4〜5個
×:10万m抄造当り6個以上
得られたワンプ用紙を下ワンプとして1,450×1,200mm、上ワンプとして1,600×1,450mmに断裁し、下ワンプをパルプ梱包体生産機(滝川工業社製、型番TBM−2170)にセットし、自動給紙し、以下の指標で紙詰りがないか評価した。
◎:紙詰り回数が100枚中0枚
○:紙詰り回数が100枚中1枚
△:紙詰り回数が100枚中2枚
×:紙詰り回数が100枚中3枚以上
上述の紙詰り回数試験において、さらにワンプをワイヤーで固定して、以下の指標でワンプ用紙の裂けがないか評価した。
◎:裂けが100枚中0枚
○:裂けが100枚中1枚
△:裂けが100枚中2枚
×:裂けが100枚中3枚以上
パルプ梱包体を屋外で2ヶ月保管し、風雨に曝した後、クランプリフトで100m移動させた後の紙破れを以下の指標で評価した。
◎:破れが100枚中0枚
○:破れが100枚中1枚
△:破れが100枚中2枚
×:破れが100枚中3枚以上
Japan TAPPI紙パルプ試験方法 No.27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準じて、マシン縦方向について測定した。0.4%以上であれば伸びやすさに特に優れ、0.3%以上であれば伸びやすさが良好であり、0.2%以上であれば伸びやすく、0.2%未満であれば伸びにくく風雨に晒された場合に破れやすいものである。
原料パルプとして針葉樹未晒クラフトパルプ(スギ:NUKP)100質量部を用いフリーネスが580ccとなるよう叩解し、原料パルプスラリーを調整した。この原料パルプスラリーに湿潤紙力剤(星光PMC社製 WS−4024)を固形分換算で0.40質量%(原料パルプ比、以下同様)、乾燥紙力剤(星光PMC社製 DS4366)を固形分換算で0.133質量%、サイズ剤(ロジンエマルジョン、ハリマ化成社製、型番:NES555)を固形分換算で0.35質量%、硫酸バンド(大明化学工業社製 液体硫酸アルミニウム)を固形分で0.75質量%を配合し、多筒ツインワイヤー抄紙機に供給し、坪量160g/m2のワンプ用紙を得た。
パルプの種類、樹種及び配合比、乾燥及び湿潤紙力剤、サイズ剤の種類及び配合量を表1のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様の操作をし、実施例2〜22及び比較例1〜5のワンプ用紙を得た。
<湿潤紙力剤>
・エピクロロヒドリン系(エピクロ系):ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、星光PMC社製、型番:WS−4024
・メラミン系:メラミン樹脂、田岡化学工業社製、型番:スミレーズレジン8%AC
・アミン系:ポリビニルアミン、星光PMC社製、型番:ルレデュアVD
<乾燥紙力剤>
・ポリアクリルアミド系樹脂、星光PMC社製、型番:DS4366
Claims (6)
- パルプを主成分とするパルプシート梱包用ワンプ用紙であって、
乾燥紙力剤と湿潤紙力剤とが配合されており、この乾燥紙力剤と湿潤紙力剤との質量比が1対2以上4以下の範囲にあり、
上記パルプに対する湿潤紙力剤の配合率が0.1質量%以上1.0質量%以下であり、
Japan TAPPI紙パルプ試験方法 No.27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準じて測定したマシン縦方向の水中伸度が0.2%以上であることを特徴とするワンプ用紙。 - 離解後のパルプの平均繊維断面積が200μm2以上600μm2以下である請求項1に記載のワンプ用紙。
- 上記湿潤紙力剤がエピクロロヒドリン系樹脂である請求項1又は請求項2に記載のワンプ用紙。
- 上記乾燥紙力剤及び湿潤紙力剤が共にアミド構造を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のワンプ用紙。
- JIS−P8143に準拠したマシン縦方向の剛度が400以上800以下、マシン横方向の剛度が200以上400以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワンプ用紙。
- JIS−P8116に準拠したマシン縦方向の引裂強さが2,000mN以上4,000mN以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワンプ用紙。
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