JP5718185B2 - ワンプ用紙 - Google Patents

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Description

本発明は、パルプシート梱包用のワンプ用紙に関する。
パルプシートは、多段に積層された状態で、ワンプ用紙により梱包されて保管される場合が多い。このような状態のパルプシートは屋外で保管される場合があり、また、パルプシートがそもそも水分を含む。このため、ワンプ用紙には、高い湿潤強度や伸びが要求される。ここで、ワンプ用紙の湿潤強度を確保するため、薬剤(湿潤紙力増強剤)の添加量を単に増やすと、抄紙工程において系内を汚し、得られるワンプ用紙にも欠陥が生じやすくなるだけでなく、ワンプ用紙が硬くなるため伸びも低下するという不都合がある。また、ワンプ用紙により梱包された梱包体はワイヤー(番線)で固定される場合があるため、高い引裂強さも要求される。さらには、上述のようにこの包装体は屋外で保管される場合があるため、紫外線に対する耐性等も要求される。風雨や紫外線にさらされた後にクランプリフト等でパルプシートを移動させると、番線を結んだ瘤の部分を起点してワンプ用紙に破れが発生する問題がある。この破れは湿潤強度や水中伸度とも関係するため、単に引裂強度を向上させることで解決できるものではない。加えて、ワンプ用紙は、バキュームにより自動供給される場合があるため、高い剛度が必要である。このように、パルプシート梱包用のワンプ用紙には、一般的な包装紙とは異なる特性が要求される。
ここで、特開2003−27399号公報には、カルボキシメチルセルロースを用い、高いサイズ性や紙力を有する包装紙が提案されている。しかし、上記包装紙は、37.5〜52.1g/mと坪量の低い製品を対象としており、ワンプ用紙で必要とされる剛度や引裂強さ等を満足できるものではない。また、上記包装紙は、屋外の使用に耐えられるような上記特性を備えるものではない。
特開2003−27399号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、少ない薬剤の使用量で、高い湿潤強度、水中伸度、剛度及び引裂強さを有し、さらに、屋外で長期間放置されても引裂強さの低下が少ないパルプシート梱包用のワンプ用紙を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
パルプを主成分とするパルプシート梱包用ワンプ用紙であって、
乾燥紙力剤と湿潤紙力剤とが配合されており、この乾燥紙力剤と湿潤紙力剤との質量比が1対2以上4以下の範囲にあり、
上記パルプに対する湿潤紙力剤の配合率が0.1質量%以上1.0質量%以下であり、
Japan TAPPI紙パルプ試験方法 No.27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準じて測定したマシン縦方向の水中伸度が0.2%以上であることを特徴とする。
当該ワンプ用紙によれば、乾燥紙力剤と湿潤紙力剤とを特定割合で併用しているため、これらの薬剤の使用量を抑えつつ、湿潤強度を高め、水中伸度の低下を最小限に抑えることができる。また、当該ワンプ用紙は、剛度及び引裂強度も高く、さらには、屋外で長期間放置されても引裂強度の低下が少ない。
当該ワンプ用紙における離解後のパルプの平均繊維断面積としては、200μm以上600μm以下が好ましい。このようなパルプを用いることで、当該ワンプ用紙の引裂強さ等と透湿性等とを共に高めることができる。
上記湿潤紙力剤がエピクロロヒドリン系樹脂であることが好ましい。湿潤紙力剤としてエピクロロヒドリン系樹脂を用いることで、当該ワンプ用紙の引裂強さや紫外線に対する耐性が高まり、また、クッション性も高めることができる。
上記乾燥紙力剤及び湿潤紙力剤が共にアミド構造を有することが好ましい。このような乾燥紙力剤及び湿潤紙力剤を用いることで、湿潤紙力剤のパルプへの定着性が高まり、使用量を抑えつつ、湿潤紙力等を更に高め、伸びの低下を最小限に抑えることができる。
当該ワンプ用紙のJIS−P8143に準拠したマシン縦方向の剛度が400以上800以下、マシン横方向の剛度が200以上400以下であるとよい。上記範囲の高い剛度を有する当該ワンプ用紙は、パルプシートの梱包に好適に用いることができる。
当該ワンプ用紙のJIS−P8116に準拠したマシン縦方向の引裂強さが2,000mN以上4,000mN以下であるとよい。上記範囲の高い引裂強さを有する当該ワンプ用紙は、パルプシートの梱包に好適に用いることができる。
以上説明したように、本発明のワンプ用紙によれば、少ない薬剤の使用量で、高い湿潤強度、剛度及び引裂強度を有し、水中伸度が少なく、さらに、屋外で長期間放置されても引裂強度の低下が少ない。
以下、本発明のワンプ用紙の実施の形態を詳説する。
当該ワンプ用紙は、多段に積層されたパルプシートの梱包に用いられるものである。当該ワンプ用紙は、パルプを主成分とし、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤とが配合されている。当該ワンプ用紙は、さらに、サイズ剤が配合されていることが好ましい。以下、各成分及びワンプ用紙の品質等について説明する。
<原料パルプ>
上記パルプの原料となる原料パルプとしては、特に限定されず、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、古紙パルプ(DIP)、機械パルプ(TMP)等公知のものを1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
これらの中でもNUKPを用いることで、ワンプ用紙として必要な剛度、引裂強度等を高めやすいため好ましい。また、適宜、他のパルプを併用しても良く、LUKPと混合して用いると引裂強度の低下が少ないため好ましい。NUKPとLUKPとの質量比としては、60:40以上が好ましく、70:30以上が更に好ましく、上限は100:0である。NUKPが主となるこのような質量比とすることで、引裂強度等を更に高めることができる。
上記パルプのフリーネスとしては400cc以上700cc以下が好ましい。このようなフリーネスのパルプを用いることで当該ワンプ用紙の引裂強さを高めることができる。
(パルプの平均繊維断面積)
上記パルプの平均繊維断面積は、当該ワンプ用紙を離解した後の離解パルプにおいて、200μm以上600μm以下が好ましく、250μm以上450μm以下がより好ましい。上記断面積を上記範囲とすることで、ワンプ用紙の引裂強さ等と透湿性等とを共に高めることができる。
上記断面積が200μmを下回ると、繊維が細すぎるため繊維同士が絡みやすく引裂強さや剛度は向上しやすいが、原紙が密に詰まり過ぎて透湿性やクッション性が低下しやすくなる。逆に、上記断面積が600μmを超えると、透湿性やクッション性には優れるものの、繊維同士の絡み合いが少なくなり引裂強さや剛度が低下しやすくなる。
このような平均繊維断面積を有するパルプを用いるためには、上記平均繊維断面積を有するパルプ繊維を多く含む樹種をパルプ原料として使用することが好ましい。このような樹種としては、針葉樹であればモミ、エゾマツ、ヒメコマツ、スギ、ヒノキ、ヒバなどが好ましく、スギが更に好ましい。カラマツ、アカマツ、クロマツなどは平均繊維断面積が大きくなりやすく、繊維同士の絡み合いが少なくなり剛度及び引裂強さが低下しやすい。また、ツガは平均繊維断面積が小さくなりやすく、原紙が密になりクッション性及び透湿性が低下しやすい。また、広葉樹であれば、ドロノキ、ミズナラ、アカガシ、シイノキ、ケヤキ、カツラ、シナノキ、ハリギリ、ヤチダモなどが好ましく、ケヤキが更に好ましい。マカンバやキリは平均繊維断面積が大きくなりやすく、ブナは平均繊維断面積か小さくなりやすい。
上記平均繊維断面積を上記範囲内とする方法は、上述のように樹種を選定することに限定されるものではなく、例えばパルプ製造工程における蒸解条件や、調成工程における叩解条件を適宜変更することで平均繊維断面積を調整することも可能である。
(フィブリル化率)
上記パルプにおいては、当該ワンプ用紙を離解した後の離解パルプにおいて、フィブリル化率が3%以下であることが好ましい。フィブリル化率が3%を超えるとパルプ繊維同士の絡み合いが多くなり引裂強度は向上するものの、原紙が密に詰まり過ぎて透湿性やクッション性が低下しやすくなるため好ましくない。上記フィブリル化率は、調成工程における叩解条件を適宜変更することなどで調整できる。
<湿潤紙力剤>
上記湿潤紙力剤としては、特に限定されず、ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エポキシ樹脂、ポリビニルアミンなどの公知のものを用いることができる。
これらの中でも、ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂等のエピクロロヒドリン系樹脂を用いることが好ましい。理由は定かではないが、エピクロロヒドリン系樹脂を用いることで、当該ワンプ用紙の紫外線に対する耐性が高まり、かつクッション性等を高めることができ、水中伸度の低下を最小限に抑えることができる。
上記湿潤紙力剤の配合率は、上記パルプに対して0.1質量%以上1.0質量%以下であり、0.2質量%以上0.8質量%以下が好ましい。上記湿潤紙力剤の配合率が0.1質量%未満では、十分な湿潤強度が得られず、屋外保管時やパルプシートの水分を吸湿した際、当該ワンプ用紙の強度が低下し、破れる問題が発生する。加えて、剛度が低下しやすいため、バキュームを用いた際などに紙詰りが発生しやすくなる。一方、この配合率が1.0質量%を超えると、欠陥が増加するだけでなく、当該ワンプ用紙が硬くなり引裂強さが低下したり、水中伸度が低くなりすぎて、破れが発生しやすくなる。
<乾燥紙力剤>
当該ワンプ用紙は、湿潤紙力剤に加えて、乾燥紙力剤が配合されており、この乾燥紙力剤と湿潤紙力剤との質量比が1対2以上4以下の範囲にある。当該ワンプ用紙によれば、乾燥紙力剤と湿潤紙力剤とを特定割合で併用しているため、これらの薬剤の使用量を抑えつつ、湿潤強度を高め、水中伸度の低下を最小限に抑えることができる。湿潤紙力剤の比が2を下回ると、湿潤紙力剤の量が少なく、湿潤紙力剤が効果的に定着できない。逆に、湿潤紙力剤の比が4を超えると、湿潤紙力剤の比率が高まり、未定着の湿潤紙力剤が増加し、非効率的で、抄紙系内を汚し、欠陥トラブルの原因となるだけでなく、水中伸度とクッション性が低下しすぎて、風雨にさらされた後クランプリフト等で移動させると、番線の瘤の部分を起点して破れやすくなる。また、この比を1対2〜4とすることで、理由は定かではないが、紫外線に対する耐性を高め、紫外線照射後の引裂強さの低下を抑えることができる。
上記乾燥紙力剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ポリアクリルアミド、澱粉、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができるが、これらの中でも湿潤紙力剤の定着性をより高めることができる点から、ポリアクリルアミドが好ましい。
上記乾燥紙力剤及び湿潤紙力剤が共にアミド構造を有することが好ましい。このような乾燥紙力剤及び湿潤紙力剤を用いることで、湿潤紙力剤のパルプへの定着性が高まり、使用量を抑えつつ、湿潤紙力等を更に高め、水中伸度の低下を最小限に抑えることができる。この理由は定かではないが、両紙力剤が同一の構造を有することで、親和性を有し、両紙力剤の会合等により見かけの分子量が大きくなり、パルプへの定着性が高まることなどが考えられる。なお、アミド構造を有する乾燥紙力剤としてはポリアクリルアミド等を、アミド構造を有する湿潤紙力剤としては、ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂等を挙げることができる。
また、上記乾燥紙力剤は、両性又はアニオン性、特に両性であるものが好ましい。湿潤紙力剤は一般にカチオン性であり、パルプ繊維はアニオン性のため、湿潤紙力剤はパルプ繊維に自己定着する。ここで、両性である乾燥紙力剤を更に配合することで、乾燥紙力剤上に湿潤紙力剤を定着させることができ、より剛度や引裂強さ等を向上させることができる。すなわち、パルプ−乾燥紙力剤−湿潤紙力剤と、両性乾燥紙力剤のうちカチオン性基がパルプと定着する一方、アニオン性基が湿潤紙力剤のカチオン性基と結びついて、湿潤力剤の定着量を増やす効果がある。また、両性の湿潤紙力増強剤を用いると、末端の湿潤紙力増強剤にさらに乾燥紙力剤を定着させることができ、より湿潤紙力及び水中伸度を高めることができる。
上記乾燥紙力剤の配合率としては、上記パルプに対して0.025質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.4質量%以下がより好ましい。乾燥紙力剤の配合率が0.025質量%を下回ると湿潤紙力剤の定着性が十分に高まらず、剛度が低下し、紙詰りが発生しやすくなり、破れも発生しやすくなる。逆に、乾燥紙力剤の配合率が0.5質量%を超えると、湿潤紙力剤の定着性が悪くなるとともに、当該ワンプ用紙の剛度が高くなりすぎて紙詰りが発生しやすく、また、当該ワンプ用紙が脆くなり、破れが発生しやすくなる。
また、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の配合量を上記各上限以下とすること等により、当該ワンプ用紙の耐光性、透気度及びクッション性等を高めることができる。
<サイズ剤>
当該ワンプ用紙は、サイズ剤が更に配合されていることで、湿潤紙力剤の含有量が最小限であっても耐水性及び湿潤紙力が高くなり、水中伸度の低下を最小限に抑えることができる。上記サイズ剤としては、特に限定されず、ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤、アルケニルコハク酸無水物、アルキルテケンダイマーなどの公知のものを1種又は2種以上を混合して用いることができる。
上記サイズ剤の配合量としては、上記パルプに対して、0.15質量%以上0.55質量%以下が好ましく、0.25質量%以上0.45質量%以下がより好ましい。上記サイズ剤の配合量が0.15質量%未満の場合、水中伸度が増加しやすいものの、サイズ性が十分に発揮できず、水に濡れやすく、その結果、水に濡れた際の強度低下がおきやすく、ワンプ用紙の破れが発生しやすい。逆に、上記サイズ剤の配合量が0.55質量%より高い場合、未定着のサイズ剤が生じやすく、欠陥トラブルの原因となる可能性がある。
<品質>
(坪量)
当該ワンプ用紙の坪量としては、80g/m以上500g/m以下が好ましく、100g/m以上300g/m以下がより好ましい。坪量が80g/mを下回ると、剛度及び引張強さが低下しやすく、搬送時などに紙詰りや割けが発生しやすくなる。逆に、坪量が500g/mを超えると、剛度が高くなりすぎて搬送時などに紙詰りが発生しやすくなる。
(ステキヒトサイズ度)
当該ワンプ用紙のJIS−P8122に準拠したステキヒトサイズ度が好ましくは200秒以上410秒以下であり、250秒以上380秒以下がより好ましい。当該ワンプ用紙は、ステキヒトサイズ度が上記範囲であると、水濡れに対する抵抗度がより高く、屋外等でも好適に使用することができる。このステキヒトサイズ度が200秒未満の場合、水濡れに対する抵抗度が低く、水が染み込みやすく湿潤強度の低下を促進しやすい。一方、このステキヒトサイズ度を410秒より高くするためにはサイズ剤の添加量を増やす必要が有り、抄紙系内で未定着となったり、他の薬品と凝集したりし、欠陥トラブルの原因となる可能性がある。
(水中伸度)
当該ワンプ用紙は、乾燥紙力剤と湿潤紙力剤との質量比が1対2以上4以下の範囲にあり、パルプに対する湿潤紙力剤の配合率が0.1質量%以上1.0質量%以下であるため、湿潤紙力剤を含有しているにも関わらず、Japan TAPPI紙パルプ試験方法 No.27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準じて測定したマシン縦方向の水中伸度が0.2%以上である。このため、風雨にさらされ水を含み寸法変化を起こしたワンプ用紙であっても、番線による結束応力を緩和でき裂けや破れが発生することはない。つまり、屋外で数ヶ月から半年程度、長いもので1年間放置してもワンプ用紙の裂けや破れを防止できる。また、パルプシートの保管場所を移動させるためにクランプリフト等でパルプシートを掴み移動させるなど、ワンプ用紙に荷重を掛けたとしても裂けたり破れたりすることはない。この水中伸度としては、上記特性をより効果的に発揮させるため、0.3%以上が好ましく、0.4%以上がさらに好ましい。一方、この水中伸度の上限としては、特に制限されないが、例えば、1.0%である。
(剛度)
当該ワンプ用紙のJIS−P8143に準拠したマシン縦方向の剛度は400以上800以下が好ましく、500以上がより好ましく、600以上がさらに好ましい。また、マシン横方向の剛度は200以上400以下が好ましく、250以上がより好ましい。積層されたパルプシートの下側を包装する際は、当該ワンプ用紙はバキュームにより自動給紙される場合があり、剛度が必要になる。縦方向の剛度が400未満の場合は、バキュームで吸引する際、端の部分が垂れ、紙詰りが発生しやすくなる。逆に、縦方向の剛度が800より高くなると紙が固くなりすぎ、ワンプ用紙を折り畳んで梱包する際、折りにくくなり、自動梱包できなくなる場合がある。また、横方向の剛度が200未満の場合、ワンプ用紙が垂れ下がり、自動給紙されず、詰りトラブルが発生しやすくなる。逆に、横方向の剛度が400より高くなると、紙が固くなりすぎ、ワンプ用紙を折り畳んで梱包する際、折りにくくなり、自動梱包できなくなる場合がある。
(引裂強さ)
当該ワンプ用紙のJIS−P8116に準拠したマシン縦方向の引裂強さは、2,000mN以上4,000mN以下が好ましく、2,500mN以上がより好ましい。縦方向の引裂強さが2,000mN未満の場合、当該ワンプ用紙で梱包したパルプシートをワイヤーで固定する際、ワンプ用紙が裂ける場合がある。逆に、縦方向の引裂強さを4,000mNより高くすると、ワンプ用紙の裂けの問題は発生し難いが、坪量を高くする必要が有り、その結果剛度が高くなり、ワンプ用紙を折り畳む工程でうまく折れなくなる場合がある。
(耐光性)
当該ワンプ用紙のフェードメーターで紫外線を照射した前後のマシン縦方向の引裂強さの低下率としては、5%未満が好ましく、3%未満がより好ましい。上記照射量は、屋外で1年間放置したときに受ける紫外線量に相当する。当該ワンプ用紙はパルプシートを包装した状態で、数ヶ月から半年程度、屋外で保管されることがある。当該ワンプ用紙に配合される湿潤紙力剤等はポリマーであり、これらポリマーは太陽からの紫外線により分子鎖が切れて劣化して脆くなりやすい。すなわち、屋外に置かれた一般的なワンプ用紙は引裂強さが低下しやすいという問題がある。加えて、パルプシートは在庫状態により保管場所を移動することがあり、脆くなったワンプ用紙に移動による荷重が掛かると、ワンプ用紙に裂けが発生する可能性がある。しかし、当該ワンプ用紙によれば、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤とを特定割合で併用しているため、上述のとおり使用量を減らすことができ、その結果、紫外線による劣化を抑制されている。当該ワンプ用紙によれば、上記の低下率が5%未満であることで、屋外で1年程度保管した後、保管場所変更のために再移動したとしても、引裂強さの低下が少ないため破れが発生しにくく、保管性に優れる。
(透気度)
当該ワンプ用紙のJIS−P8117に準拠した透気度としては、20秒以上70秒以下が好ましく、25秒以上55秒以下がさらに好ましい。本発明においては、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を含有するため、ワンプ用紙が硬化しやすく、透気度が低下しやすいが、上述のとおり湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の割合を所定範囲内にすることで、透気度を少なくとも70秒以下と透気性を高めることができる。ワンプ用紙で梱包された状態のパルプシートは、上述のとおり、屋外で半年程度保管されることがある。パルプシートは水分を20.0〜50.0質量%程度含有しているため、半年程度保管すると腐敗が発生する可能性がある。しかし、当該ワンプ用紙によれば、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の使用量が抑えられている結果、透気度を上記範囲に高めることができる。従って、当該ワンプ用紙によれば、ワンプ内部にこもった空気が外に出やすく、また外気がワンプ内部に入りやすいため、ワンプ内部のパルプが腐敗しにくく、屋外で1年以上と長期の保存にも用いることができる。
(クッション性)
当該ワンプ用紙に40kg/mの圧力を掛けた場合の紙厚の減少率としては、3%以上が好ましく、5%以上がさらに好ましい。本発明においては、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を含有するため、ワンプ用紙が硬化しやすく、クッション性が低下しやすいが、上述のとおり湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の割合を所定範囲内にすることで、クッション性の低下を防止でき、3%以上を維持することができる。パルプシートを梱包した状態のワンプ用紙は番線で固定される。この際、番線は始端と終端を撚り合わせて留めるため、終端部は番線による瘤ができる。ここで、梱包体を積み重ねた場合や隙間なく隣接させて置いた場合、ワンプ用紙にクッション性がないと、瘤の大きさの分だけワンプ用紙がパルプシートに喰い込みやすく、ワンプ用紙の繊維の一部がパルプシートに転移(混入)してパルプシートの品質を低下させるおそれがある。しかし、当該ワンプ用紙によれば、上記範囲のクッション性を有するため、瘤による圧縮を吸収できる。
上記紙厚の減少率が3%未満の場合は、番線の瘤による圧力をワンプ用紙が吸収できず、パルプシートにワンプ用紙の一部が混入する可能性がある。さらには、ワンプ用紙に穴が空く可能性があり、この穴が梱包体の移動により拡大したり、番線がずれて穴が露出すると雨水が入り込んでパルプシートの品質が劣化したり、特に番線の錆を含む雨水が入り込むと錆異物が混入するおそれもある。
<当該ワンプ用紙の製造方法>
当該ワンプ用紙は、公知の製紙方法により得ることができる。すなわち、上記原料パルプのスラリーに、各薬剤(湿潤紙力剤、乾燥紙力剤等)を配合したものを抄紙することで得ることができる。
なお、抄紙して得られたワンプ用紙の表裏面には、シムサイザー、ゲートロール、2ロールサイズプレスなど公知の塗工機を用いて塗工を行ってもよい。塗工の際は、酸化澱粉、高分子PAM、サイズ剤など公知の薬品を1種類又は2種類以上混合して塗布することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
得られた各ワンプ用紙の品質は以下の方法にて評価した。
<坪量(単位:g/m)>
JIS−P8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
<ステキヒトサイズ度(単位:秒)>
JIS−P8122:2004「紙及び板紙−サイズ度試験方法−ステキヒト法」に準じて測定した。
<剛度(縦・横)>
JIS−P8143:1996「紙−こわさ試験方法−クラークこわさ試験機法」に準じて測定した。
<透気度(単位(秒)>
JIS−P8117:1998「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準じて測定した。
<引裂強さ(単位:mN)>
スタンダード紫外線ロングライフ・フェードメーター(スガ試験機社製、型番:FAL−3D)を用いて、出力2,160W(放電電流16A、放電電圧135V)で、光源からの距離23cmで、紫外線を4時間(屋外放置12ヶ月相当)照射した前後のマシン縦方向の引裂強さを、JIS−P8116:2000「紙−引裂強さ試験方法−エルメンドルフ形引裂試験機法」に準じて測定した。また、この前後の値から強度の低下率を算出した。
<パルプ繊維の平均繊維断面積(単位:μm)>
ワンプ用紙をJIS−P8220:1998「パルプ−離解方法」に準じて離解し、繊維長測定試験機(型番:FiberLab、メッツォ社製)を用いて、パルプ繊維の平均繊維断面積を測定した。
<クッション性(単位:%)>
坪量160g/mのワンプ用紙を36枚重ね、1mあたり40kgの重しを均一に載せた前後の高さ(紙厚)を測定し、次式によりクッション性を算出した。
クッション性(%)=(W−W)/W×100
:重りを載せる前の紙厚
:重りを載せた時の紙厚
<欠陥発生数>
欠陥検出器(コグネックス社製、型番:スマートビュー、条件:閾値100、16mm)を用いて、次のとおり欠陥発生個数を評価した。
◎:10万m抄造当り0〜1個
○:10万m抄造当り2〜3個
△:10万m抄造当り4〜5個
×:10万m抄造当り6個以上
<紙詰り回数>
得られたワンプ用紙を下ワンプとして1,450×1,200mm、上ワンプとして1,600×1,450mmに断裁し、下ワンプをパルプ梱包体生産機(滝川工業社製、型番TBM−2170)にセットし、自動給紙し、以下の指標で紙詰りがないか評価した。
◎:紙詰り回数が100枚中0枚
○:紙詰り回数が100枚中1枚
△:紙詰り回数が100枚中2枚
×:紙詰り回数が100枚中3枚以上
<ワイヤーで固定後のワンプ用紙の裂け>
上述の紙詰り回数試験において、さらにワンプをワイヤーで固定して、以下の指標でワンプ用紙の裂けがないか評価した。
◎:裂けが100枚中0枚
○:裂けが100枚中1枚
△:裂けが100枚中2枚
×:裂けが100枚中3枚以上
<紙破れ>
パルプ梱包体を屋外で2ヶ月保管し、風雨に曝した後、クランプリフトで100m移動させた後の紙破れを以下の指標で評価した。
◎:破れが100枚中0枚
○:破れが100枚中1枚
△:破れが100枚中2枚
×:破れが100枚中3枚以上
<水中伸度>
Japan TAPPI紙パルプ試験方法 No.27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準じて、マシン縦方向について測定した。0.4%以上であれば伸びやすさに特に優れ、0.3%以上であれば伸びやすさが良好であり、0.2%以上であれば伸びやすく、0.2%未満であれば伸びにくく風雨に晒された場合に破れやすいものである。
(実施例1)
原料パルプとして針葉樹未晒クラフトパルプ(スギ:NUKP)100質量部を用いフリーネスが580ccとなるよう叩解し、原料パルプスラリーを調整した。この原料パルプスラリーに湿潤紙力剤(星光PMC社製 WS−4024)を固形分換算で0.40質量%(原料パルプ比、以下同様)、乾燥紙力剤(星光PMC社製 DS4366)を固形分換算で0.133質量%、サイズ剤(ロジンエマルジョン、ハリマ化成社製、型番:NES555)を固形分換算で0.35質量%、硫酸バンド(大明化学工業社製 液体硫酸アルミニウム)を固形分で0.75質量%を配合し、多筒ツインワイヤー抄紙機に供給し、坪量160g/mのワンプ用紙を得た。
(実施例2〜22及び比較例1〜5)
パルプの種類、樹種及び配合比、乾燥及び湿潤紙力剤、サイズ剤の種類及び配合量を表1のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様の操作をし、実施例2〜22及び比較例1〜5のワンプ用紙を得た。
なお、使用した薬剤は次のとおりである。
<湿潤紙力剤>
・エピクロロヒドリン系(エピクロ系):ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、星光PMC社製、型番:WS−4024
・メラミン系:メラミン樹脂、田岡化学工業社製、型番:スミレーズレジン8%AC
・アミン系:ポリビニルアミン、星光PMC社製、型番:ルレデュアVD
<乾燥紙力剤>
・ポリアクリルアミド系樹脂、星光PMC社製、型番:DS4366
Figure 0005718185
得られた各ワンプ用紙に対して、上述の各評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
Figure 0005718185
Figure 0005718185
表3に示されるように、実施例の各ワンプ用紙は、高い湿潤強度、水中伸度、剛度及び引裂強度を有し、さらに、屋外で長期間放置されても引裂強度の低下が少ないことがわかる。一方、比較例1のワンプ用紙は湿潤紙力剤の配合量が小さく、比較例3のワンプ用紙は湿潤紙力剤の配合比が小さいため、いずれも2ヶ月後の破れが生じるなど、性能が十分ではない。また、比較例2のワンプ用紙は、湿潤紙力剤の配合量が多く、比較例4のワンプ用紙は湿潤紙力剤の配合比が高いため、抄紙の際に欠陥が生じやすいなどの評価となった。
本発明のワンプ用紙は、屋外で長期間放置される場合があるパルプシートの梱包に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. パルプを主成分とするパルプシート梱包用ワンプ用紙であって、
    乾燥紙力剤と湿潤紙力剤とが配合されており、この乾燥紙力剤と湿潤紙力剤との質量比が1対2以上4以下の範囲にあり、
    上記パルプに対する湿潤紙力剤の配合率が0.1質量%以上1.0質量%以下であり、
    Japan TAPPI紙パルプ試験方法 No.27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準じて測定したマシン縦方向の水中伸度が0.2%以上であることを特徴とするワンプ用紙。
  2. 離解後のパルプの平均繊維断面積が200μm以上600μm以下である請求項1に記載のワンプ用紙。
  3. 上記湿潤紙力剤がエピクロロヒドリン系樹脂である請求項1又は請求項2に記載のワンプ用紙。
  4. 上記乾燥紙力剤及び湿潤紙力剤が共にアミド構造を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のワンプ用紙。
  5. JIS−P8143に準拠したマシン縦方向の剛度が400以上800以下、マシン横方向の剛度が200以上400以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワンプ用紙。
  6. JIS−P8116に準拠したマシン縦方向の引裂強さが2,000mN以上4,000mN以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワンプ用紙。
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