JP4876320B2 - マルチパック用紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば缶ビールや清涼飲料などのジュース缶、小瓶ドリンク等の小型飲料缶や飲料瓶等の容器を多数並列に配置した状態で、1枚の紙シートで包み込み、集積包装する際に使用するマルチパック用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記の飲料缶や飲料瓶をまとめ売りするために、それらの容器を1列あるいは2列に整列させて1枚の紙シートでくるみ込み、集積包装したパッケージがマルチパックと呼ばれ広く普及している。
【0003】
このマルチパックは、容器を上からくるみ込んで底部においてロック封緘するボトムロック方式が一般的で広く使われている。ロックの形式には雄ロックと雌ロックを所定位置で重ね合せ突き刺すことにより封緘する押し込みロックと、引っかけ部を差し込んで封緘する差込式ロックが知られている。
【0004】
これらのマルチパックは、運搬時にパッケージが破れ飲料缶や飲料瓶が破損することを防止するためにマルチパック用紙の強度が強いことが要求され、比引裂強度が強い針葉樹未晒クラフトパルプ等の長繊維バージンパルプを使用した、坪量300〜500g/mと高坪量の板紙が使用されている。
【0005】
一般的に、原紙の比引裂強度を高める方法としては、長繊維分が多く平均繊維長の長いパルプを使用する方法が知られている。具体的には、木材パルプの場合は、広葉樹パルプよりも針葉樹パルプが良好であり、晒パルプよりも未晒パルプの方が良好である等、材種の影響や、蒸解、晒の影響を受ける。更に、麻パルプ等の非木材パルプは木材パルプに比べて比引裂強度に優れているが、高価格でありマルチパック用紙のような安価な板紙では採算が合わない。又、長繊維であるがために水への分散性が極めて悪く地合が悪化するため、通常、カナダ標準ろ水度(CSF)で600ml以下に、好ましくは500ml程度に叩解を進め使用する必要がある。板紙の場合は抄合せであり、地合悪化の影響は若干緩和される傾向があるが、地合不良の影響は表面の塗工ムラの原因となったり、又、麻パルプは通気性が極端に良いという特徴を有するため、麻パルプを中層に使用した場合、層によって通気性が異なることにより、プレスパートにおける層間剥離トラブルが発生しやすい等の欠点があり、麻パルプは使用できない状況にある。
【0006】
パッケージ方式においても種々の改良がなされ、特開平10−338266号公報に示されるように、容器を下からくるみ込んで頂部においてロック封緘するトップロック方式を採用することにより、強度が弱くても運搬時のパッケージ破損がないマルチパック用シートが開示されている。しかしながら、この方法でも、原料パルプとして古紙パルプを配合した場合には、十分な強度が得られず、手荒な扱いにえ得るものではなかった。
【0007】
一方、マルチパックは、その特有な取り扱いに起因し、長時間冷蔵庫等の多湿雰囲気下に置かれたり、冷蔵庫保管時に底部が濡れたりすることにより吸湿による強度劣化を生じることがある。又、マルチパックを冷蔵庫から出した際に、飲料缶や飲料瓶表面の結露水により濡れて強度劣化を生じることがある。水分吸湿で原紙強度が低下した場合でも包装形態を維持し、手荒な扱いに対して被包装物を守るために、湿潤時の比引裂強度が高いことが望まれている。
【0008】
しかしながら、一般のマルチパック用紙は、JIS P8116で規定されている比引裂強度に対して、20℃の水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度の割合が40%から80%程度であり、比引裂強度に比べて湿潤時の比引裂強度が弱い。従来から湿潤時の比引裂強度を高めるためには、比引裂強度の強いパルプ原料の選定を行い、比引裂強度の嵩上げによって行う方法が一般的である。この方法では、過剰に比引裂強度が高いことによってマルチパックを開封しづらいという問題があり、又、非常に強い比引裂強度対して湿潤時の比引裂強度が弱いために、湿潤時も比引裂強度が強いという思い込みからマルチパックの扱いが煩雑になり、内容物の破損の原因となっていた。よって、非湿潤時には適度な比引裂強度で、特に湿潤時の比引裂強度をより高めたマルチパック用紙、即ち、JISP8116で規定されている比引裂強度に対して、20℃の水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度の割合が高いマルチパック用紙が望まれていた。
【0009】
他方、一般的な板紙に見られるように、マルチパック用紙においても環境面、リサイクルの観点から古紙パルプの使用が望まれているが、比引裂強度が強い原紙が求められているため、現状のマルチパック原紙では古紙パルプ未配合あるいは古紙パルプ低配合であり、古紙パルプの増配合は進んでいない。従って、古紙を使用しても十分な比引裂強度と同レベルの比湿潤引裂強度があり、且つ安価なマルチパック用紙が求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、現行のマルチパック用紙に比べて、比引裂強度が強く、かつ湿潤時も比引裂強度を維持していることにより、運搬時に被包装物の重量により、あるいは湿潤時の手荒な扱いによってパッケージが破損することのないマルチパック用紙を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる現状に鑑み、マルチパックの使用状態から必要とされる比引裂強度と比湿潤引裂強度について検討し、湿潤時に十分な比引裂強度を維持するためには比引裂強度に対する比湿潤引裂強度の割合が重要であることを見出した。又、比引裂強度と比湿潤引裂強度を高める方法について検討し、ロジンサイズ剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂とワックスエマルジョンサイズ剤あるいはアルキルケテンダイマーを抄紙時の内添薬品として使用することによって、比引裂強度と比湿潤引裂強度を共に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は次の発明を包含する。
(1) JIS P8116で規定されている比引裂強度に対して、20℃の水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度の割合が90%以上であり、かつ、前記比湿潤引裂強度が15.0mN/g/m 以上であって、対パルプ固形分比でロジンサイズ剤を0.05〜0.7%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を0.1〜0.6%、ワックスエマルジョンサイズ剤を0.3〜1.0%含有することを特徴とするマルチパック用紙。
【0013】
(2) JIS P8116で規定されている比引裂強度に対して、20℃の水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度の割合が90%以上であり、かつ、前記比湿潤引裂強度が15.0mN/g/m以上であって、対パルプ固形分比でロジンサイズ剤を0.05〜0.7%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を0.1〜0.6%、アルキルケテンダイマーサイズ剤を0.05〜0.6%含有することを特徴とするマルチパック用紙。
【0016】
【発明の実施の形態】
従来のマルチパック用紙の比引裂強度と20℃の水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度について測定を行った結果、比引裂強度で9〜18mN/g/m、比湿潤引裂強度は60分間水中浸漬後の比湿潤引裂強度で3〜14mN/g/m、比引裂強度に対する比湿潤引裂強度の割合は30%から80%であった。
【0017】
一般的に、比引裂強度には繊維の引き抜き抵抗と繊維の切断抵抗が影響を与える。本発明者らは、繊維の引き抜き抵抗と繊維の切断抵抗を高める方法、及び湿潤時でも維持可能な方法について検討を行い、本発明を完成するに至った。本発明では、JIS P8116で規定されている比引裂強度に対して、水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度の割合が90%以上であることが重要である。(以後、JIS P8116で規定されている比引裂強度に対して、水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度の割合をWET/DRY比率と略す。)WET/DRY比率が90%未満の場合は、比引裂強度に対して比湿潤引裂強度が低いことになり、マルチパック開封時に内容物破損の原因となる。
【0018】
本発明に使用されるパルプ原料としては、広葉樹、針葉樹の木材パルプに加え靭皮繊維である大麻、亜麻、チョ麻、ケナフ(洋麻)、葉繊維であるマニラ麻、サイザル麻等を挙げることができ、古紙パルプとしては、段ボール古紙パルプ、雑誌、新聞等の古紙パルプ、上白古紙パルプ等が使用でき、パルプ原料の種類により制限されるものではないが、本発明の抄紙内添薬品による効果を高めるためには、繊維長が長い針葉樹未晒クラフトパルプ、麻パルプ等の非木材パルプ、古紙パルプでは段ボール古紙パルプ、ミルクカートン古紙パルプ等が好ましい。
【0019】
本発明の原料は、比引裂強度を効果的に高めるために叩解して使用する。フリーネスはカナダ標準ろ水度(CSF)は300〜500mlが好ましい。叩解機は、ビーター、デラックスファイナー等のシリンドリカル型、ダブルディスクリファイナー等のディスク型等使用できるが、比引裂強度をより有効に高めるためには遊離状叩解が好ましい。よって、パルプ処理濃度を低く維持する、あるいはパルプディスク型ではカッティング叩解にならないようにディスクプレートの選択が必要になる。ただし、本発明では、WET/DRY比率を90%以上にすることが重要であり、叩解機や叩解方法によって制限を受けるものではない。
【0020】
本発明では、ロジンサイズ剤とワックスエマルジョンサイズ剤及びポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を併用すること、又はロジンサイズ剤とアルキルケテンダイマーサイズ剤及びポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を併用することが重要である。
【0021】
本発明者らは、繊維の引き抜き抵抗と繊維の切断抵抗を高める観点から、比引裂強度と比湿潤引裂強度について鋭意検討を行った。比引裂強度の向上には、引き抜き抵抗を高めることによりワックスエマルジョン剤が有効に働く。比湿潤引裂強度の向上には、ロジンサイズ剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、又はアルキルケテンダイマーサイズ剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂が有効に働く。本発明のマルチパック用紙は、弱いはっ水性を有しており、水中に60分間浸漬しても紙層内の空隙は湿潤するが、パルプ繊維内部を十分に濡らすことはない。従って、湿潤時もパルプ繊維本来の引裂抵抗を維持したまま、引き抜き抵抗が向上すると考えられる。湿潤時の比引裂強度で15.0mN/g/m2以上あればマルチパックごと冷蔵庫に保管したり、内容物に水滴が付いているような状態でもマルチパック用紙として使用することが可能である。
【0022】
以下に本発明で使用する抄紙内添薬品について説明する。抄紙内添薬品の添加率は全てパルプ固形分に対する固形分重量%で示す。本発明で使用するロジンサイズ剤はロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、強化ロジン等が使用できるが広いpH範囲で使用でき定着性が良いこと、及び他の内添薬品と相互作用からロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。添加率は対パルプ固形分に対して0.05〜0.7%、好ましくは0.1〜0.4%が良い。0.05%よりも少ない場合は効果が不明確であり、0.7%よりも多い場合は効果が頭打ちとなる。
【0023】
本発明で使用するワックスエマルジョンサイズ剤の添加率は、対パルプ固形分に対して0.3〜1.0%、好ましくは0.4〜0.6%である。0.3%よりも少ない場合は比引裂強度は非常に強いが比湿潤引裂強度の向上効果が少なく、WET/DRY比率が低いものとなる。1.0%より多い場合は比湿潤引裂強度は十分高いが、比引裂強度が大幅に低下し使用できない。又、ワックスエマルジョンサイズ剤の替わりにアルキルケテンダイマーサイズ剤を使用する場合は特に中性抄紙が可能になるという特徴を有する。アルキルケテンダイマーサイズ剤の添加率としては対パルプ固形分に対して0.05〜0.6%、好ましくは0.1〜0.5%である。0.05%よりも少ない場合は効果が不明確であり、0.6%よりも多い場合は効果が頭打ちとなる。
【0024】
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加率は、対パルプ固形分に対して0.1〜0.6%であり、好ましくは0.2〜0.5%である。0.1%よりも少ない場合は比湿潤引裂強度の発現が不十分であり、0.6%よりも多い場合は比引裂強度が低下する。
【0025】
他の抄紙内添薬品としては、定着剤、内添薬品の歩留向上を目的として硫酸バンド、ポリアクリルアミド樹脂が使用できる。特にポリアクリルアミド樹脂は原料系のゼータ電位からアニオン性あるいは両性の使い分けにより、内添薬品の削減が可能になる。その他としてはアルケニル無水コハク酸、スチレン系樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂等のサイズ剤、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂等の湿潤紙力増強剤、澱粉、PVA等の乾燥紙力増強剤の併用が可能であり、これらの添加に何等制限されるものではない。又、抄紙方法においても何等制限を受けるものではない。
【0026】
内添の填料としては、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等のあらゆる填料が使用できるが、本発明においてはこれらの填料が内添薬品の留まりを阻害するため、好ましくは含まない方が良い。
【0027】
マルチパック用紙の印刷適性の向上を目的として塗工層を設ける場合、塗料組成物には特に制限はないが、顔料としてはクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、無定形シリカ、スチレン系プラスチックピグメント、尿素系プラスチックピグメント等、バインダーとしては澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール、大豆タンパク、スチレン−ブタジエン系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックス等が使用できる。その他、分散剤、pH調整剤、保水剤、潤滑剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、着色顔料、耐水化剤等も必要に応じて使用できる。塗工する装置としては、特に制限はなくブレードコーター、ロッドコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、サイズプレス、チャンピオンコーター、シムサイザー等が使用できる。
【0028】
本発明で用いた、比引裂強度、比湿潤引裂強度の測定方法、WET/DRY比率の算出方法を示す。
【0029】
(比引裂強度・比湿潤引裂強度)
比引裂強度はJIS P8116に従って測定を行った。比湿潤引裂強度は、20℃の水に60分間浸漬し、水分を軽く拭き取った後に同様にJIS P8116に従って測定を行った。
【0030】
(WET/DRY比率)
次の式に従って算出した。
WET/DRY比率(%)=比湿潤引裂強度/比引裂強度×100
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の%は、全て重量%を示す。
【0032】
実施例1
表層の原料としては広葉樹晒クラフトパルプ(以後LBKP)を70%、針葉樹晒クラフトパルプ(以後NBKP)を30%配合し、表層以外の原料としては、針葉樹未晒クラフトパルプ(以後NUKP)として、それぞれの原料に対絶乾パルプ重量当りとして、硫酸バンドをアルミナ換算で0.16%、ロジンエマルジョン系内添サイズ剤(荒川化学株式会社製SPN−771)を0.3%、ワックスエマルジョンサイズ剤(荒川化学株式会社製HA−541)を0.5%、紙力増強剤ポリアクリルアミド(荒川化学株式会社製ポリストロン−117)を0.5%、湿潤紙力増強剤ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(荒川化学株式会社製AF−255)を0.5%添加して、表層50g/m、表層以外の層の合計付量を285g/mとして抄合せを行い、表層上に二酸化チタン、カオリン、スチレン−ブタジエン系ラテックスからなる塗工層を15g/m塗工し、坪量350g/mのマルチパック用紙を製造した。このマルチパック用紙を23℃、55%RHの環境に48時間以上調湿し、比引裂強度と比湿潤引裂強度の測定、及びWET/DRY比率の算出を行なった。
【0033】
実施例2
内添薬品の添加率をそれぞれ、硫酸バンドをアルミナ換算で0.16%、ロジンエマルジョン系内添サイズ剤(荒川化学株式会社製SPN−771)を0.6%、ワックスエマルジョンサイズ剤(荒川化学株式会社製HA−541)を0.4%、紙力増強剤ポリアクリルアミド(荒川化学株式会社製ポリストロン−117)を0.5%、湿潤紙力増強剤ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(荒川化学株式会社製AF−255)を0.5%添加した以外は実施例1と同様にしてマルチパック用紙を製造し、比引裂強度と比湿潤引裂強度の測定、及びWET/DRY比率の算出を行なった。
【0034】
実施例3
表層以外の原料をミルクカートン古紙パルプにした以外は実施例と同様にしてマルチパック用紙を製造し、比引裂強度と比湿潤引裂強度の測定、及びWET/DRY比率の算出を行なった。
【0035】
実施例4
内添薬品の添加率をそれぞれ、ロジンエマルジョン系内添サイズ剤(荒川化学株式会社製SPN−771)を0.3%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(荒川化学株式会社製SPK−287)を0.5%、紙力増強剤ポリアクリルアミド(荒川化学株式会社製ポリストロン−117)を0.5%、湿潤紙力増強剤ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(荒川化学株式会社製AF−255)を0.5%添加した以外は実施例1と同様にしてマルチパック用紙を製造し、比引裂強度と比湿潤引裂強度の測定、及びWET/DRY比率の算出を行なった。
【0036】
比較例1
内添薬品の添加率をそれぞれ、紙力増強剤ポリアクリルアミド(荒川化学株式会社製ポリストロン−117)を0.5%、湿潤紙力増強剤ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(荒川化学株式会社製AF−255)を0.5%添加した以外は実施例1と同様にしてマルチパック用紙を製造し、比引裂強度と比湿潤引裂強度の測定、及びWET/DRY比率の算出を行なった。
【0037】
比較例2
内添薬品の添加率をそれぞれ、硫酸バンドをアルミナ換算で0.16%、ロジンエマルジョン系内添サイズ剤(荒川化学株式会社製SPN−771)を0.3%、紙力増強剤ポリアクリルアミド(荒川化学株式会社製ポリストロン−117)を0.5%添加した以外は実施例1と同様にしてマルチパック用紙を製造し、比引裂強度と比湿潤引裂強度の測定、及びWET/DRY比率の算出を行なった。
【0038】
比較例3
内添薬品を全く使用しないで調成した以外は実施例1と同様にしてマルチパック用紙を製造し、比引裂強度と比湿潤引裂強度の測定、及びWET/DRY比率の算出を行なった。
【0039】
実施例及び比較例で得られた測定結果を表1に示した。
【0040】
【表1】
Figure 0004876320
【0041】
表1から明らかな通り、抄紙内添薬品としてロジンサイズ剤とワックスエマルジョンサイズ剤及びポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を併用する、又はロジンサイズ剤とアルキルケテンダイマーサイズ剤及びポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を併用する本発明に係わるマルチパック用紙は、比引裂強度と比湿潤引裂強度が強く、WET/DRY比率が90%以上である。
【0042】
本発明は、缶ビールや清涼飲料などのジュース缶、小瓶ドリンク等の小型飲料缶や飲料瓶等の容器を多数並列に配置した状態で、1枚の紙シートで包み込み、集積包装する際に使用するマルチパックに供する。マルチパックは、その特有な取り扱いに起因し、長時間冷蔵庫等の多湿雰囲気下に置かれたり、冷蔵庫保管時に底部が濡れたり、飲料缶や飲料瓶表面の結露水により濡れて強度劣化を生じることがあるが、本発明のマルチパック用紙は、比引裂強度に対する比湿潤引裂強度の割合が高く、水分を吸湿した場合でも包装形態を維持し、手荒な扱いに対して被包装物を守ることが可能なマルチパック用紙を提供するという効果を奏する。

Claims (2)

  1. JIS P8116で規定されている比引裂強度に対して、20℃の水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度の割合が90%以上であり、かつ、前記比湿潤引裂強度が15.0mN/g/m 以上であって、対パルプ固形分比でロジンサイズ剤を0.05〜0.7%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を0.1〜0.6%、ワックスエマルジョンサイズ剤を0.3〜1.0%含有することを特徴とするマルチパック用紙。
  2. JIS P8116で規定されている比引裂強度に対して、20℃の水に60分間浸漬した後の比湿潤引裂強度の割合が90%以上であり、かつ、前記比湿潤引裂強度が15.0mN/g/m以上であって、対パルプ固形分比でロジンサイズ剤を0.05〜0.7%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を0.1〜0.6%、アルキルケテンダイマーサイズ剤を0.05〜0.6%含有することを特徴とするマルチパック用紙。
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