JP4149092B2 - 易離解性多層紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、易離解性多層紙、特にリサイクルが容易なマルチパック用原紙として好適な易離解性多層紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルチパック(ジャケットパックともいう)とは、製函機により例えば2列×3本に並んだ缶ビール等の商品に合わせて予め打ち抜き及び罫線を入れた原紙を、両サイドから最大限に絞り込み底部をロックし、商品をぴったりした状態にパックし、天面に形成された指穴に指を挿入して運搬可能にパックするカートンである。このような用途に使用される原紙は、製函時、原紙を絞り込み底部をロックするため、引張強度が強いことが要求される。また、ロックの際、内部結合強度が弱いと層内で剥離が発生するので、内部結合強度が強いことも要求される。さらに、マルチパックした状態においては、天面指穴部からの破れを防ぐためには引き裂き強度が強いことも要求される。さらにまた、ビール等の要冷蔵品のマルチパックの場合は、冷蔵庫から出されると結露し、スリーブが濡れてしまう恐れがあるため、水に濡れたときの引き裂き強度が強くなければならない。
【0003】
従来、マルチパック用原紙として多層紙が採用され、サイズ剤、定着剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤等の内部添加剤を添加して上記の要求を満たすように紙質の改善を図っている。特に、湿潤強度を向上させるためには、湿潤紙力増強剤が使用されているが、湿潤紙力増強剤は、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(PAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、メラミン−ホルマリン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等の水溶性で加熱により架橋反応する熱硬化性樹脂が採用されている。また、多層紙において例えば特公平1−35960号公報等に見られるように、引張強度、耐屈曲性等を高めるための手段として、サーモメカニカルパルプを抄造してなる湿潤マットの両面にクラフトパルプ、綿繊維、合成繊維、グラスウール等の単独又は混合物からなる長繊維材料を主体とする繊維スラリーを抄き合わせ積層マットを形成し、該積層マットを乾燥することなく、複数枚積層して加熱圧縮して一体化したもの等が建材、家具用材、梱包用資材等に提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近時、省資源、地球環境保全の観点から包装容器全体のリサイクルが求められており、上記のマルチパックも古紙として回収再生が要求されている。ところが、マルチパック用紙は、上記のような要求、特に耐水性を増強するために熱硬化性樹脂の湿潤紙力増強剤が使用されているため、離解性が悪く、紙原料としてリサイクルできないという問題点がある。湿潤紙力増強剤は熱硬化性樹脂であるため、それを使用することによって水に濡れても繊維間の結合が弱くなりにくく、強度低下を押さえることができるが、反面離解性が悪くなり、リサイクル適性を消失させている。そのため、従来、製紙工場でのマルチパック用原紙の製造工程において生じる切断耳片等の損紙も原料として再利用することができず、産業廃棄物として処理しているのが実情である。当然、該原紙から製造された使用済みマルチパックも、再生紙の原料としてリサイクルすることができず、一般の可燃ゴミとして処理されている。また、従来提案されている上記のような引張強度、耐屈曲性等を高めた多層紙も、繊維原料として湿潤マットの両面にクラフトパルプ、綿繊維、合成繊維、グラスウール等の繊維スラリーを抄き合わせてあるので、離解性が悪くリサイクル特性に欠けている問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、マルチパック原紙として要求される実用上の強度、特に水に濡れた時の引裂強度を維持し、しかも離解が容易でリサイクル適性に優れ、省資源・地球環境保全に寄与することができる易離解性多層紙を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者は種々研究した結果、従来は湿潤強度を得るために湿潤紙力増強剤を紙層全体に均一にしかも多量に添加しているが、引張・引裂強度に影響を及ぼす平均繊維長や、内部添加剤として使用されるサイズ剤との調整を図ることによって、湿潤紙力増強剤を少なくすることができ、しかも必ずしも紙層全体への添加を必要としないことが判明し、離解性と湿潤強度とのバランスを図る手段を知得し、本発明に到達したものである。
【0007】
即ち、本発明の易離解性多層紙は、内部添加剤に湿潤紙力増強剤が添加されてなる三層以上の多層紙であって、パルプ材の平均繊維長が1.5mm以上であり、且つ各層に含まれる前記湿潤紙力増強剤が0.1重量%以下であることを特徴とするものである。平均繊維長を1.5mm以上、望ましくは3mm以上の繊維を少なくとも10重量%含み、且つ針葉樹と広葉樹との混合パルプで針葉樹の配合比率を50重量%以上にすることによって、従来の広葉樹を多く含む難離解性多層紙よりも強い引裂強度が得られ、2次加工性及び製品物性についても従来の難離解性多層紙と比較して同等若しくはそれ以上に優れた原紙が抄造できる。
【0008】
前記湿潤紙力増強剤は、紙層全体でなく表裏層を除く表下層と中層のみに添加することによって、湿潤強度を得ながらより効果的に湿潤紙力増強剤を削減することができる。また、前記内部添加剤にサイズ剤が全層に0.1重量%以上添加することが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る易離解性多層紙は、マルチパック用原紙として3層以上の多層抄きにより製造され、表層、表下層、中層、裏層からなり、中層を3層、裏層を2層にし、合計7層構造にした。本発明の易離解性多層紙は、それに限定されるものではないが、少なくと3層以上であるのが望ましい。また、用途もマルチパック用原紙に限るものでなく、上記品質が要求されるその他の包装紙等の原紙にも適用できるものである。
【0010】
本発明の易離解性多層紙に使用されるパルプは、針葉樹と広葉樹の混合からなり、針葉樹の配合比率が50重量%以上、望ましくは針葉樹と広葉樹の比率が75〜90%:25〜10%の範囲が良い。そして、平均繊維長が1.5mm以上であり、且つ3mm以上の繊維を少なくとも10重量%以上含むのが望ましい。上記条件を満たすことにより、強度特に引張・引裂強度が向上し、マルチパックにした場合、天面指穴部からの破れを防ぐことができる。しかしながら、必ずしも針葉樹と広葉樹のみの混合に限らず、上記要求を満たすものであれば、他の非木材パルプとの混合又は単独パルプでも可能である。
【0011】
また、内部添加剤として、サイズ剤、定着剤、乾燥紙力増強剤、浸潤紙力増強剤を添加し、且つそれらの量を調整することにより、マルチパック用紙として要求される強度(乾燥時及び湿潤時の引張強度、引裂強度、内部結合強度)を保ちつつ、離解性が得られるようにして、強度と離解性のバランスを取った。
【0012】
サイズ剤としては、ロジン、石油樹脂サイズ剤、AKD(アルキルケテンダイマー)、ASA(アルケニル無水こはく酸)、無水ステリアン酸等従来のサイズ剤が採用できる。また、定着剤としては、硫酸アルミニウム、カチオン性ポリマー、アルミン酸ナトリウム等が採用できる。
【0013】
乾燥紙力増強剤としては、PAM(ポリアクリルアミド)、澱粉等が採用でき、湿潤紙力増強剤としては、PAE(ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂)、DAS(ジアルデヒドでんぷん)、UF(尿素ホルムアルデヒド樹脂)、MF(メラミンホルムアルデヒド樹脂)、PEI(ポリエチレンイミン)、グリオキサニル変性PAM等が採用できる。
【0014】
上記内部添加剤の添加量は、サイズ剤が全層に0.1重量%以上、定着剤が全層に1重量%以上、乾燥紙力増強剤が全層に0.1重量%以上、そして湿潤紙力増強剤が全層、望ましくは表裏層を除く中層に0.1重量%以下とする。湿潤紙力増強剤は、水に濡れた時の強度を強くするために添加するものであるが、サイズ剤及びクレーコート剤も耐水性・疎水性を高める機能を果たすので、本実施形態ではこれらと紙力増強剤との調整をうまく図ることによって、湿潤紙力増強剤を従来より減少させながら、従来と同様な耐水強度を保つことができ、耐水強度を大幅に低下させることなく、離解性を向上させることができる。本実施形態では、易離解性多層紙を多層抄きで抄造後に、表層の表面にクレーコーティングを施した。
【0015】
【実施例】
実施例1
表層、表下層、中層(3層)、裏層(2層)を構成する紙料を、何れも針葉樹パルプと広葉樹パルプの比率を重量比で8:2とし、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、平均繊維長1.8mmのパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーにそれぞれに表1に示す内部添加剤を添加して、各層の紙料を得た。得られた紙料を抄き合わせ、7層の360g/m2のマルチパック原紙を得た。
【0016】
【表1】
Figure 0004149092
【0017】
実施例2
表層、表下層、中層(3層)、裏層(2層)を構成する紙料を、何れも針葉樹パルプと広葉樹パルプの比率を重量比で8:2とし、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、平均繊維長1.8mmのパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーにそれぞれに表2に示す内部添加剤を添加して、各層の紙料を得た。得られた紙料を抄き合わせ、7層の360g/m2のマルチパック原紙を得た。
【0018】
【表2】
Figure 0004149092
【0019】
実施例3
表層、表下層、中層(3層)、裏層(2層)を構成する紙料を、何れも針葉樹パルプと広葉樹パルプの比率を重量比で8:2とし、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、平均繊維長1.8mmのパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーにそれぞれに表3に示す内部添加剤を添加して、各層の紙料を得た。得られた紙料を抄き合わせ、7層の360g/m2のマルチパック原紙を得た。
【0020】
【表3】
Figure 0004149092
【0021】
比較例1
表層、表下層、中層(3層)、裏層(2層)を構成する紙料を、何れも針葉樹パルプと広葉樹パルプの比率を重量比で8:2とし、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、平均繊維長1.8mmのパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーにそれぞれに表4に示す内部添加剤を添加して、各層の紙料を得た。得られた紙料を抄き合わせ、7層の360g/m2のマルチパック原紙を得た。
【0022】
【表4】
Figure 0004149092
【0023】
比較例2
比較例として、表層、表下層、中層(3層)、裏層(2層)を構成する紙料を、何れも針葉樹パルプと広葉樹パルプの比率を重量比で8:2とし、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、平均繊維長1.8mmのパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーにそれぞれに表5に示すような内部添加剤を添加して、各層の紙料を得た。得られた紙料を抄き合わせ、実施例と同様に7層の360g/m2のマルチパック原紙を得た。
【0024】
【表5】
Figure 0004149092
【0025】
以上のようにして得られた実施例1〜3及び比較例1〜2の多層紙について、乾燥状態(常態)及び湿潤状態において、縦方向、横方向について、JISに基づいて引張強度、伸び率、エレメンドルフ引裂強度、剥離強度試験を行った。なお、湿潤状態での試験は、20℃蒸留水中に10分間浸漬後、水を拭取り測定した。その結果を表6に示す。
【0026】
【表6】
Figure 0004149092
【0027】
また、上記各多層紙について、次のようにして離解試験をおこなった。離解試験は、パルパーを使用して離解温度常温、紙濃度3重量%で離解時間20分、薬品なしで行った。また、離解試験方法は、上記条件で離解したものを開口0.7mmのフラットスクリーンに通しスクリーン残留率を測定し、スクリーン残留率7%以下を離解性良好と判定した。その結果を表7に示す。
【0028】
【表7】
Figure 0004149092
【0029】
以上の実施例及び比較例における紙力試験結果及び離解度試験結果によれば、表6、表7に示すように、湿潤紙力増強剤が全く添加されていない比較例1は、易離解性であるが、特に湿潤状態における引張強度及びエレメンドルフ引裂強度が弱く、マルチパック原紙としての強度的要求を満たしてない。一方、湿潤紙力増強剤を各層に0.16重量%づつ添加した比較例2の場合は、強度的要求は満たしているが、離解試験でのパルプのスクリーン残留率が49%と非常に高く離解できなかった。
【0030】
これに対し、本発明の実施例1〜3の場合は、何れもマルチパック原紙に要求される湿潤強度を満たし、しかも離解試験でのスクリーン残率が1〜5%であり、離解性に優れていることが確認された。特に、湿潤紙力増強剤を表層及び裏層には添加しないで、内部の表下層、中層のみに添加した実施例2の場合は、マルチパック原紙としての強度的を要求を十分に満たしながらスクリーン残率が2%で、離解性も非常に優れていることが判る。従って、本発明によれば、従来リサイクルができなかったマルチパック原紙のリサイクルが可能となり、省資源及び環境保全を図ることができることが確認された。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明によればマルチパック原紙として要求される実用上の強度(紙力)、特に水に濡れた時の引裂強度を得ることができ、しかも離解が容易でリサイクル適性に優れ、従来リサイクルができなかったマルチパック原紙のリサイクルを可能にし、省資源・地球環境保全に寄与することができる易離解性多層紙を得ることができる。

Claims (4)

  1. 内部添加剤に湿潤紙力増強剤が添加されてなる三層以上の多層紙であって、パルプ材の平均繊維長が1.5mm以上であり、且つ各層に含まれる前記湿潤紙力増強剤が0.1重量%以下であることを特徴とする易離解性多層紙。
  2. 前記湿潤紙力増強剤が、表下層と中層のみに添加されてなる請求項1記載の易離解性多層紙。
  3. パルプ材が針葉樹と広葉樹からなり、針葉樹の配合比率が50重量%以上である請求項1〜2の何れかに記載の易離解性多層紙。
  4. 前記内部添加剤にサイズ剤が全層に0.1重量%以上添加されてなる請求項1〜3何れかに記載の易離解性多層紙。
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