JP3849270B2 - 罫線割れを改良した板紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた罫線割れ防止適性を有する板紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
板紙は、抄紙機上で複数の紙層が重ねられたもので、段ボール原紙や表層に顔料塗工した白板紙などに分類され、主として包装用資材として使用されている。
【0003】
たとえば段ボールの場合、コルゲーター(貼合機)でライナーと言われる板紙の上に波状に加工された中芯と言われる板紙を糊付けし、更にその上に別のライナーを糊付けした3層からなる構造体である。この3層構造体(以下「段ボールシート」と略)は更に製函機で印刷、箱形状に切り抜き、折り曲げるための罫線を通常シートの4個所に付け、製函機の折り曲げ部で糊付けと4個の罫線の内2個所が折り曲げられ段ボールケース(箱)となる。
【0004】
この製函折り曲げ時に、またケースを箱に組み立てる際、段ボールシートの表側は相当に伸ばされるため表側のライナーは破断する場合がある。この破断を「罫線割れ」と言い、軽度のものはライナーの表層がひび割れ状となるが、ひどいものはライナーの全層が割れてしまう。
【0005】
この罫線割れは、段ボールシートの含有水分が6%以下になると発生し易い。これはコルゲーターでの過酷な乾燥条件にさらされた場合、或いは冬場の乾燥期に発生する。この罫線割れは、罫線部折り曲げ時に表層にかかる力に対して表層が耐えられなくて発生するものであり、表層強度により左右される。
【0006】
従来からの対策として、ライナーについては、▲1▼針葉樹の多いパルプ配合に変更したり、▲2▼層間強度を弱める等の方策が採られ、また、段ボール加工においても、段ボールシートの過乾燥を防止する目的で▲1▼コルゲーターでの水噴霧や、▲2▼貼合後時間をおかずに製函を行ったり、▲3▼製函する際に蒸気をかけたり、▲4▼製函時にポリエチレングリコールなどの保湿剤を塗布する等の方策がとられているが、満足すべき結果がえられていない。
【0007】
このため例えば、特開昭54−106610号公報にはラノリン系の非イオン性、アニオン性界面活性剤の紙表面へのスプレー、或いはパルプスラリーへ内添することによる紙用罫線割れ防止法が開示されている。
【0008】
しかしながら、前記の方法では、対象となるパルプ繊維の電荷が負であることから非イオン、アニオン系薬品では紙への定着が悪く罫割れへの十分な効果が期待できないし、効果を得るためには過大な添加量を必要とし、特に保湿性による柔軟効果で発現する罫線割れ防止機構となるため、紙強度の大幅な低下をきたすという欠点がある。このため、高湿条件に晒されると最終的に得られたケース(箱)の圧縮強度が低下し、内容物の保護機能が劣る結果となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、紙強度の低下がなく、十分な罫割れ防止効果をえることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明は以下の4つの発明である。
(1)ポリアルキレンポリアミン脂肪酸エピクロルヒドリン重縮合物からなるカチオン性界面活性剤を板紙の少なくとも表層に含有せしめる工程を有することを特徴とする罫線割れを改良した板紙の製造方法。
【0011】
(2)前記カチオン性界面活性剤を板紙の少なくとも表層に含有せしめる工程が、対パルプ当り50〜20,000ppmのポリアルキレンポリアミン脂肪酸エピクロルヒドリン重縮合物からなるカチオン性界面活性剤を添加してなるパルプスラリーを使用して少なくとも板紙の表層に該カチオン性界面活性剤を含有する板紙を抄紙する工程であることを特徴とする(1)記載の罫線割れを改良した板紙の製造方法。
【0012】
(3)前記板紙の表層にカチオン性界面活性剤を含有する板紙を抄紙する工程が、前記カチオン性界面活性剤を添加してなるパルプスラリーを多層抄き板紙の表層を形成するパルプスラリーとして使用する多層抄き板紙を抄紙する工程であることを特徴とする(2)記載の罫線割れを改良した板紙の製造方法。
【0013】
(4)前記カチオン性界面活性剤を板紙の少なくとも表層に含有せしめる工程が、板紙抄紙用パルプスラリーを抄紙する工程から得られる板紙の表層面にポリアルキレンポリアミン脂肪酸エピクロルヒドリン重縮合物からなるカチオン性界面活性剤を含有する水性塗工液を塗布し、乾燥する工程であることを特徴とする(1)記載の罫線割れを改良した板紙の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の対象となる紙は、包装用に使用できる板紙であれば特に制限はなく、中でも段ボール用ライナー原紙、白板紙、貼合紙などが代表的な例である。また、それらに使用されるパルプも特に制限はない。通常、板紙は多層抄きによって製造されるが、カチオン性界面活性剤をパルプスラリーに内添して使用する場合には、全紙層のパルプスラリーに添加してもよいし、曲げ応力が一番強くかかる表層用パルプスラリーのみに添加してもよい。添加は、十分に均一撹拌が出来、定着時間が確保される場所で行えばよい。一方、塗工する場合には、表層側の表面に片面塗工すればよく、塗工方法は従来この分野で公知となっている方法が適宜採用される。
【0015】
本発明でカチオン性界面活性剤として使用するものは、ポリアルキレンポリアミン脂肪酸エピクロルヒドリン重縮合物である。
【0016】
具体例を挙げると、ビスステアロイルジエチレントリアミン・エピクロルヒドリン反応物が例示される。
【0017】
ポリアルキレンポリアミン脂肪酸エピクロルヒドリン重縮合物は、それ自体が撥水型の特性を有し、紙のサイズ度、色相などへの影響もほとんどなく、パルプスラリーに添加して紙に付着させる内添方式での適用では、抄紙工程での起泡性が著しく少ないと言う効果を示すためである。具体的な薬剤としては、東邦化学(株)製:ソフノンP−400がこれに該当する。
【0018】
カチオン性界面活性剤の添加量は、対パルプ当たり50〜20、000ppmが好ましく、特に100〜5、000ppmの範囲が好ましい。添加量が20、000ppmを越えると、紙の引張強度、破裂強度、圧縮強度など強度全般が大幅に低下する場合があり好ましくない。また、50ppm未満ではパルプの種類によっては罫線割れ防止効果が十分でない場合がある。同様に、紙表面に塗工する場合にもカチオン性界面活性剤の塗布量は0.005〜1.0g/m2とすることが好ましく、特に0.01〜0.50g/m2の範囲が好ましい。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
実施例1〜4、比較例1〜3
未晒しクラフトパルプを用いてテーブルで坪量200g/m2のシートを抄紙する際に、1層目(ライナーの下層)100g/m2、2層目(ライナーの中層)50g/m2、3層目(ライナーの表層)50g/m2、の付量として抄合せ、表層用の未晒しクラフトパルプのスラリーにパルプに対してカチオン性界面活性剤〔ソフノンP−400(東邦化学(株)製)〕を500〜10、000ppm添加し、回転ドライヤーにて乾燥してシートを作成する。上記カチオン性界面活性剤を添加しないで抄合せ抄紙したシートを比較例1とした。ラノリン脂肪酸ポリグリセリンエステル/ラノリン脂肪酸ナトリウム石鹸=3/1(固型分比率)に混合したラノリン系非イオン性・アニオン性混合柔軟剤を、表層用パルプに対して1000〜10、000ppm添加した他は実施例1と同様にして比較例2および3のシートを得た。
【0021】
作成した手抄きシートについて下記項目について測定し、その結果を表1にまとめて記載した。
〈破裂強度〉JIS P8131の規定に従い、ミューレン高圧型破裂強さ試験機にて測定した。表示は、破裂強度を坪量で割った比破裂強度(kPa・m2/g)。
【0022】
〈圧縮強度〉JIS P8126の規定に従い、圧縮試験機(ロードセル型)にて測定した。表示は、圧縮強度を坪量で割った比圧縮強度(N・m2/g)。
【0023】
〈罫割れ長さ率〉割れ長さ率については、特にJIS或いはTAPPIにも標準法の規定がなく、簡便法として次の方法を考案して実施した。
乾燥器で絶乾状態まで乾燥したシートを表層面を外側にして半分に折り畳み、所定のクリアランスに設定したラボミニキャレンダーを通過させる。この折った部分の割れ長さを測定し、下の式から割れ長さ率を求める。
割れ長さ率(%)=[割れた長さ(mm)÷シート全体の長さ(mm)]×100
【0024】
【表1】
【0025】
実施例5〜8、比較例4〜6
未晒しクラフトパルプを主体とする坪量280g/m2の段ボール用ライナー(3層抄き)にテーブルでバインダー成分としてPVA〔PVA−105(クラレ製)〕の濃度が1重量%、カチオン性界面活性剤〔ソフノンP−400(東邦化学(株)製)〕の濃度が0.2〜5.0重量%となるように有効成分を混合し、調整した塗工液を表層面に塗布後、回転ドライヤーで乾燥した。上記カチオン性界面活性剤を添加しない(濃度0重量%)他は実施例5と同様に処理して得たシートを比較例4とした。カチオン性界面活性剤の替わりに、比較例2で使用したラノリン系柔軟剤を用いた他は、実施例6、8と同様にして比較例5および6のシートを得た。
作成した塗工シートについて前記実施例と同項目について測定し、その結果を表2にまとめて記載した。
【0026】
【表2】
表中の塗工量(Dry)は界面活性剤の塗工量を示す。
【0027】
【発明の効果】
本発明のカチオン性界面活性剤の適用により、紙、板紙或いは段ボールシートを製函加工する際に罫線割れが大幅に軽減或いは解消する。ラノリン系柔軟剤は内添方式で適用すると紙中への定着が悪く、強度低下は少ないものの罫線割れ防止効果が見られない。塗工方式で適用した場合には、少量では改善効果がなく、塗布量を増やすと強度低下を来たす欠点がある。
Claims (4)
- ポリアルキレンポリアミン脂肪酸エピクロルヒドリン重縮合物からなるカチオン性界面活性剤を板紙の少なくとも表層に含有せしめる工程を有することを特徴とする罫線割れを改良した板紙の製造方法。
- 前記カチオン性界面活性剤を板紙の少なくとも表層に含有せしめる工程が、対パルプ当り50〜20,000ppmのポリアルキレンポリアミン脂肪酸エピクロルヒドリン重縮合物からなるカチオン性界面活性剤を添加してなるパルプスラリーを使用して少なくとも板紙の表層に該カチオン性界面活性剤を含有する板紙を抄紙する工程であることを特徴とする罫線割れを改良した板紙の製造方法。
- 前記板紙の表層にカチオン性界面活性剤を含有する板紙を抄紙する工程が、前記カチオン性界面活性剤を添加してなるパルプスラリーを多層抄き板紙の表層を形成するパルプスラリーとして使用する多層抄き板紙を抄紙する工程であることを特徴とする請求項2記載の罫線割れを改良した板紙の製造方法。
- 前記カチオン性界面活性剤を板紙の少なくとも表層に含有せしめる工程が、板紙抄紙用パルプスラリーを抄紙する工程から得られる板紙の表層側の表面にポリアルキレンポリアミン脂肪酸エピクロルヒドリン重縮合物からなるカチオン性界面活性剤を含有する水性塗工液を塗布し、乾燥する工程であることを特徴とする請求項1記載の罫線割れを改良した板紙の製造方法。
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