JP2014141773A - 印刷用塗工紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】オフセット印刷適性を損なうことなく水性グラビア印刷においても十分なインク定着性やインク吸収性を有し、顔料インクを採用する水性グラビア印刷において印刷部分の印刷ムラが十分に抑制された印刷用塗工紙を提供する。
【解決手段】原紙の少なくとも一方の面に顔料とバインダーを主成分とする塗工層を設けた印刷用塗工紙において、塗工層中の顔料として無機顔料100質量部に対して有機顔料を0.1〜12.0質量部含有し、緊度0.75g/cm2以上とし、更に無機顔料100質量部に対してバインダーを8.0〜23.0質量部含有する印刷用塗工紙。
【選択図】図1

Description

本発明は、オフセット印刷適性を損なうことなく、水性グラビア印刷においても良好な適性を有する印刷用塗工紙に関する。
水性グラビア印刷は、広範囲な色調と高精細な再現性を備え、細かな文字も潰さずに再現することができる。また従来の油性グラビア印刷において困難だったハイライト部やグラデーションの安定したドットの再現性が可能になる。
水性グラビア印刷は、油性グラビア印刷では多色印刷しなければならない印刷領域をプロセスカラー5色を用いて印刷することができ、インキ総使用量の削減、揮発性有機化合物(VOC)の排出量の削減が可能になり環境負荷の低減が可能となる。
しかし水性グラビア印刷に用いる水性グラビアインキは水の含有率が50%以上であるためインキが乾燥しにくく、濡れ性が悪いなどの問題がある。
そのため従来のオフセット印刷用塗工紙を水性グラビア印刷に採用すると、水性グラビアインクの定着性や吸収性が悪いために、印刷ムラや印刷滲み(吸収されなかったインクが塗工紙面上を流れるインク泳ぎ)が発生するなどの問題があった。
また印刷速度が高い時には印刷用塗工紙のインク吸収性にバラツキが発生し、インクが乾燥した後の最終的な印刷画像において定着したインクの濃度が不均一となる印刷ムラが顕著となり易いという問題がある。
一方、紙器用原紙は、通常、印刷、製函等の加工をされて使用される。そのため要求される基礎特性は、印刷適性、製函適性などの加工適性が要求される。中でも剛度すなわちコシの強さは、一般的に重要な特性の一つであり、他の特性に悪い影響を及ぼさない限り、できるだけ剛度は高い方が望ましい。
特許文献1はグラビア印刷用紙として優れた水性グラビア印刷適性、特にインク乾燥性およびインク発色性に優れたキャストコ−ト紙を開示した。
特許文献2はオフセット印刷用コート紙の様な外観を示し、かつ優れたインクジェット適性を有する低コストで製造可能なインクジェット用記録紙を提供することを課題として、シート状基材の少なくとも片面に無機顔料とバインダーを主体とした塗工層を設けた記録紙であり、表面近傍の塗工層の熱重量測定にて求めた無機分/有機分の比がいずれも97/3〜70/30の範囲にあることを特徴とするインクジェット用記録紙を開示した。
特許文献3は、低密度であり、剛度が高く、ひじわの抑制などの印刷適性に優れた印刷用塗工紙を提供することにある。また、操業性に優れ、優れた印刷適性などを有する印刷用塗工紙を効率よく製造することを課題として、原紙上に、顔料及び接着剤を含有する塗工層を有す印刷用塗工紙において、原紙中に、パルプの繊維間結合を阻害する有機化合物、あるいは無定型シリケートを含有し、乾燥後シューカレンダーで処理することを特徴とする印刷用塗工紙及び前記印刷用塗工紙の製造方法を開示した。
特許文献4は原紙と塗工量が同レベルの従来の塗工紙に比べ、低密度でありながら、不透明度、白紙光沢度、印刷光沢度に優れ、剛度が改善され、印刷作業に適した印刷用塗工紙として原紙上に顔料及び接着剤を含有する塗工層を設けてなる印刷用塗工紙において、填料として軽質炭酸カルシウム粒子の表面をシリカで被覆した軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を含有した原紙上に、顔料粒子の粒径分布が体積基準で0.1〜1.0μmの範囲に60%以上含まれる顔料を有する塗工層を設けることを特徴とする印刷用塗工紙を開示した。
特許文献5は低密度、高剛直度で、高光沢、良好な白紙面質、印刷面質を持つ印刷用塗工紙を得ることを課題として、塗被組成物中に合成樹脂ラテックスを特定量以上含む塗層を基紙上に設け、乾燥後の表面光沢度を30%以上とし、その乾燥直後の塗工面を特定硬度以上の弾性ロールを持つ熱ソフトカレンダーで処理した印刷用塗工紙を開示した。
さらに特許文献6は低密度で不透明度、剛度が良好であり、更に低白紙光沢にもかかわらず高い印刷光沢度を有する印刷用塗工紙として、原紙上に顔料及び接着剤を含有する塗工層を設けてなる印刷用塗工紙において、填料として軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を含有した原紙上に、顔料粒子の粒径分布が体積基準で0.4〜4.2μmの範囲に65%以上含まれる顔料を有する塗工層を設けることを特徴とする印刷用塗工紙を開示した。
特開平8−199495 特開2010−100039 特開2006−132030 特開2006−97162 特開平6−294100 特開2006−70413
特許文献1のキャストコ−ト紙は塗工層の顔料、接着剤の配合を専ら検討したものであり、また特許文献2のインクジェット用記録紙は塗工層の熱重量測定にて求めた無機分/有機分の比を調整したものであって、いずれも十分なインク定着性やインク吸収性の水性グラビア印刷適性を有するものではなく、特に十分に満足できるレベルに印刷ムラを抑制するものではない。
一方、特許文献3〜特許文献6はいずれも印刷用塗工紙の剛度を向上することを課題としている。しかし、近年、印刷打ち抜き機は高速化しており、ただ単に印刷用塗工紙の剛度を向上するだけでは高速化した印刷打ち抜き機を用いて円滑な生産を行い効率を向上することは困難になっている。この点に関し図4に印刷打ち抜き機によって製品の打ち抜きを行う態様を示して具体的に説明する。図4に示されるようにA方向に進行する製品1の所要の打ち抜き部分にピン2を刺して、製品1から取り除かれたニック(抜き粕)3がB方向に排出される。しかし、前述したように、ただ単に印刷用塗工紙の剛度を向上するという一方向の取り組みだけではこの図4に示す様な高速化した印刷打ち抜き機を用いる場合、加工時のニック(抜き粕)3の抜けが悪く、抜き粕3が異物として製品1に混入するという問題が生じる。したがってこの様な問題を解消するためには、加工時のニック(抜き粕)3の抜けが良好である性質、すなわち抜き適性やピン刺し適性という観点からの検討が必要となる。
また印刷用塗工紙を用いて紙器用原紙を作製する際には、製函前には所定のサイズと形状とに対応した罫入れと打ち抜きを行って、所定の形状の紙容器となす。したがって罫入れ適性(板紙に罫入れを行ったとき、所定の罫の形状、位置、深さが適性に板紙に入るかどうか)が印刷用塗工紙の重要な特性項目となる。また製函時には曲げが悪いと加工速度を上げることができないことや割れが生じたりするなど曲げ適性が印刷用塗工紙の重要な特性項目となる。
これに対し特許文献3〜特許文献6はいずれも印刷用塗工紙の剛度を向上することを課題とし、罫入れ適性や曲げ適性に関する検討は特には行われていない。特に印刷用塗工紙は嵩高紙であるため、原紙層に空隙が多く罫線を入れたときに空隙があるため、つぶれやすく、剛度を向上するという一方向の検討では良好な罫入れ適性を得ることはできない。
図3にこの様な従来の印刷用塗工紙を罫入れ部分で曲げた状態の断面写真を示す。図に示すように罫入れ部分で曲げた状態で層厚方向に均一に空隙は入らず、2カ所の大きな空隙が生じており、この部分に力が集中し、クラックが生じていることが分かる。
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、印刷用塗工紙において、オフセット印刷適性を損なうことなく水性グラビア印刷においても十分なインク定着性やインク吸収性を有し、顔料インクを採用する水性グラビア印刷において印刷部分の印刷ムラが十分に抑制された印刷用塗工紙を提供することを目的とする。
すなわち本発明の印刷用塗工紙は、原紙の少なくとも一方の面に顔料とバインダーを主成分とする塗工層を設けた印刷用塗工紙において、塗工層中の顔料として無機顔料100質量部に対して有機顔料を0.1〜12.0質量部含有し、緊度0.75g/cm以上であることを特徴とする。
また選択的に無機顔料100質量部に対してバインダーを8.0〜23.0質量部含有させ、またカオリンを含む無機顔料100質量部中に20〜40質量部の軽質炭酸カルシウムを含み、さらにはカオリンを含む無機顔料100質量部中に20〜40質量部の重質炭酸カルシウムを含むようにすることができる。
さらに選択的に原紙が表裏層と中層とからなり、表層が中層よりも低いフリーネスを有する様にして、特には表層のフリーネスを390〜470mlCSF、中層のフリーネスを430〜530mlCSFとし、また表層への嵩向上剤の添加量を0.3〜1.3重量%、中層への嵩向上剤の添加量を0.7〜1.7重量%とすることができる。なお嵩向上剤に代えて嵩高填料を用いる場合には、その添加量は嵩向上剤の10倍相当とし、表層では3.0〜13.0重量%、中層では7.0〜17.0重量%とされる。また中層に針葉樹パルプ(NBKP)を5.0〜15.0重量%配合してもよい。
加えて全層のNパルプ配合量が1.0〜10.0質量部とされ、中層に針葉樹パルプ(NBKP)が5.0〜15.0重量%配合されるように制御することができる。
印刷用塗工紙の製造加工工程における加熱時の引裂強度と、製函後における使用時における引裂強度に対する仕様を区別するという観点から、使用時における引裂強度が充分である範囲で、製造加工工程における加熱時の引裂強度を低くすることで製品としての使用時における必要な剛度を備えると同時に製造加工工程における加熱時の引裂強度を最適化して抜き適性やピン刺し適性を向上するために105℃、30秒加熱した時の引裂強度が1500mN以下であり、常温引裂強度が1000mN以上であるようにしてもよい。
また吹付け澱粉添加量を1.0〜1.5%とし、一方、内添澱粉添加量を0.2〜0.6%としてもよい。表裏層と中層との層間強度を200〜500mN/cmに調整するのがよい。
これによって印刷用塗工紙の用途としては不足のない剛度を備えかつ高速打ち抜き時における製品と抜き粕の円滑な分離が可能で高効率な生産を行うことが可能となる。
また罫入れ適性及び曲げ適性を向上することが可能となる。
本発明により、オフセット印刷適性が良好であり、且つ水性グラビア印刷においても良好なインク定着性とインク吸収性を有する印刷用塗工紙を得ることができる。特に、水性グラビア印刷における印刷ムラが抑えられた印刷用塗工紙を得ることができる。
本発明の印刷用塗工紙で用いられる原紙の印刷表面、断面写真及びその模式図を、従来の原紙の断面写真及びその模式図と比較して示す説明図。 本発明の実施例の印刷用塗工紙を罫入れ部分で曲げた状態の断面写真 従来の印刷用塗工紙を罫入れ部分で曲げた状態の断面写真 印刷打ち抜き機によって製品の打ち抜きを行う態様を示す模式図。
以下、本発明の印刷用塗工紙について詳細に説明する。
本発明の印刷用塗工紙は、原紙上に顔料およびバインダーを主成分とする塗工層を有する。塗工層を設けることによって、印刷品質および外観の点で未塗工紙と差別化することができる。
本発明における塗工層はバインダーとしてラテックスバインダーを主に含有することが好ましい。水分散性バインダーであるラテックスバインダーは、塗工層に用いると塗層強度の発現に優れる。塗工層におけるバインダーの総含有量は、塗工層の強度、インク吸収性の観点から、塗工層中の顔料の総和100質量部に対して8.0〜23.0質量部含有させる。バインダーによって無機材料を囲んだ態様の構造を有する塗工層が得られる。これによって無機材料間の空隙構造が確定し、固定化される。その結果塗工層に伸びを与え、塗工層のクラックを防止して強度が向上し、水性グラビア印刷適性も得られる。
バインダーの総含有量が8.0質量部未満では塗工層の強度が不足する。23.0質量部を超えると光沢が過度に低下する。
さらに好ましくは塗工層中の顔料の総和100質量部に対して12.8〜18.5±5質量部含有させるのが良く、最も好ましくは13.0〜19.0質量部、特にコスト的な観点からは16.0質量部含有させるのが良い。
本発明において、塗工層は顔料として無機顔料100質量部に対して有機顔料を0.1〜12.0質量部含有する。
この有機顔料としてはポリスチレン系プラスチックピグメント、ポリアクリル系プラスチックピグメント、スチレン−アクリル系プラスチックピグメント、スチレン−ブタジエン系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。有機顔料を含有させることで塗工板紙の光沢・白色度を向上させる。印刷適性、後加工適性(ニス引き、糊付け、ブリスターパック適性)の向上に効果がある。
前項のバインダーによって低下した光沢は、有機顔料を含有することで補うことができる。有機顔料含有量が0.1質量部未満では有機顔料添加による塗工層の光沢向上が充分ではなく、12.0質量部を超えて含有させる場合には過剰な有機顔料によって、コストに見合う特性の向上は認められない。さらに好ましくは有機顔料を2.0〜7.0質量部含有するのが良く、コスト的な観点からは2.0質量部含有するのが最善である。
本発明の印刷用塗工紙は、片面塗工では緊度0.75g/cm以上である。一般に軽量化することによってコストダウンを図り、輸送・持ち運びの効率を向上することができる。その観点から緊度は低い方が好ましい。反面、嵩向上剤を用い、過度に軽量化した場合には、塗工層の平滑度が低下し、印刷適性が悪化する。本発明の印刷用塗工紙は、片面塗工では緊度0.75g/cm以上とすることができる。緊度0.75g/cm 以上であれば印刷適性の悪化はない。
本発明における塗工層は20〜40質量部の軽質炭酸カルシウムを含む。軽質炭酸カルシウムが20質量部未満の場合には、水性グラビアインクの定着性や吸収性が悪く、印刷ムラや印刷滲み(吸収されなかったインクが塗工紙面上を流れるインク泳ぎ)が発生する。
40質量部を超える場合にはコストに見合う特性の向上は認められない。軽質炭酸カルシウムは30質量部程度含有するのが良い。
本発明における塗工層はさらに20〜40質量部の重質炭酸カルシウムと30〜50質量部のカオリンによって総顔料100質量部を得る。
塗工層が20〜40質量部の重質炭酸カルシウムと、20〜40質量部の軽質炭酸カルシウムとを含有することによって、炭酸カルシウムの粒子間に形成される空隙によって、水性グラビアインクを吸収することができ、オフセット印刷適性を損なわず、水性グラビア印刷適性を有することができる。塗工層中の炭酸カルシウムが重質炭酸カルシウムのみ含有の場合には塗工層の空隙の形成が不十分となり、水性グラビア印刷適性が得られない。
重質炭酸カルシウムは30質量部程度含有するのが良い。
また30〜50質量部のカオリンによって光沢感を調整することができる。カオリン30質量部未満では光沢感が不足し、50質量部を超えて含有させる場合には相対的に炭酸カルシウムの含有量が低下し、塗工層の空隙の形成が不十分となり、水性グラビア印刷適性が得られない。カオリンは40質量部程度含有するのが良い。
本発明の印刷用塗工紙に用いられる原紙としては、広葉樹パルプ(LBKP)及び針葉樹パルプ(NBKP)などの化学パルプを用いる。その原紙の特性を検討し、製品としての使用時における必要な剛度を備え、高速印刷打ち抜き適性、すなわち抜き適性やピン刺し適性が向上した印刷用塗工紙を提供することができた。
かかる本発明の印刷用塗工紙では、原紙が表裏層と中層とからなり、全層のNパルプ配合量が1.0〜10.0質量部とされ、中層のNパルプ配合量が5.0〜15.0質量部にされると共に、吹付け澱粉濃度が1.0〜1.5%、内添澱粉添加量が0.2〜0.6%とされる。
全層のNパルプ配合量を1.0〜10.0質量部とすることによって、印刷の表面性、再現性、印刷ムラ等の印刷適性を保ち、製品としての使用時における必要な剛度を備えることができる。
中層のNパルプ配合量を5.0〜15.0質量部にすることによって紙の引裂強度のバランスが図られ、製品としての使用時における必要な印刷適性を備え、かつ抜き適性やピン刺し適性を向上することができる。また中層の繊維の密度を低くし、同量の繊維でより厚みを出し、軽量化によるコストダウンが輸送・持ち運びの効率を向上する。
中層のNパルプ配合量が5.0質量部未満では、充分な引裂強度が確保できなく、一方15質量部以上では、Nパルプ配合量が過剰となり、製造加工工程における加熱時の引裂強度が過剰となり、抜き適性やピン刺し適性が悪化する。さらに好ましくは中層に繊維の粗い針葉樹パルプ(NBKP)を10.0重量%配合する。
また吹付け澱粉濃度が1.0〜1.5%であることによって、表裏層と中層とからなる原紙の層間に膜となる澱粉の添加量を最適化し、製造加工工程における加熱時の引裂強度、層間強度を最適化し、抜き適性やピン刺し適性を向上することができる。
吹付け澱粉濃度が1.0%未満であると、使用時における引裂強度、層間強度が不足する。
吹付け澱粉濃度が1.5%を超えると製造加工工程における加熱時の引裂強度、層間強度が過剰となり、抜き適性やピン刺し適性が悪化する。
さらに内添澱粉添加量、すなわち抄紙薬品におけるパルプに対する澱粉の配合量を0.2〜0.6%とすることによって、繊維間の結合を強める澱粉量を最適化し、抜き加工時の切れを良くして、製品としての使用時における必要な引裂強度を備え、かつ抜き適性やピン刺し適性を向上することができる。
内添澱粉添加量が0.2%未満であると、繊維間の結合が過度に弱まり、使用時における引裂強度、層間強度が不足する。
内添澱粉添加量が0.6%を超えると繊維間の結合が過剰になり、抜き適性やピン刺し適性が悪化する。
以上の本発明の印刷用塗工紙は、原紙が表裏層と中層とからなり、105℃、30秒加熱した時の引裂強度が1500mN以下であり、常温引裂強度が1000mN以上であるという特徴を備える。かかる特徴によって、特殊用途を除く、例えば小箱パッケージなどの一般的な印刷用塗工紙の用途としては不足のない強度とされている。
また本発明の印刷用塗工紙は、片面塗工では緊度0.75g/cm以上である。一般に軽量化することによってコストダウンを図り、輸送・持ち運びの効率を向上することができる。その観点から緊度は低い方が好ましい。反面、嵩向上剤を用い、過度に軽量化した場合には、塗工層の平滑度が低下し、印刷適性が悪化する。本発明の印刷用塗工紙は、片面塗工では緊度0.75g/cm以上とすることができる。緊度0.75g/cm 以上であれば印刷適性の悪化はない。
さらに本発明の印刷用塗工紙では、表裏層と中層との層間強度が200〜500mN/cmに調整されるのが好ましい。これによって製品としての使用時における必要な引裂強度を備え、かつ抜き適性やピン刺し適性を向上し、しかも罫入れ適性及び曲げ適性を向上することができる。
層間強度が200mN/cm未満ではオフセット印刷時に表裏層と中層との層間剥離が生じる。層間強度が500mN/cmを超えると抜き適性、ピン刺し適性、罫入れ適性及び曲げ適性が悪化する。
さらに表層が中層よりも低いフリーネスを有する様にすることができる。
その場合、表層のフリーネスを390〜470ml、中層のフリーネスを430〜530mlとする。表裏層に叩解を進めた細かい繊維を配合し、引裂強度が高くなるのを抑え、原紙の塗工面側の表層部を緻密な構造とすることで印刷適性の向上にも繋がる。一方中層は表裏層より叩解を粗くすることで適度な引裂強度を備え、抜き適性やピン刺し適性の最適化が可能となる。
表層のフリーネスが390ml未満では引裂強度が低下する。
表層のフリーネスが470mlを超えると緻密な表層を得ることができなく、印刷適性も低下する。
表層のフリーネスはさらに好ましくは420〜435ml、最も好ましくは430mlとする。
これに応じて中層のフリーネスをさらに好ましくは480〜500ml、最も好ましくは480mlとする。
また表層への嵩向上剤の添加量を0.3〜1.3質量部、中層への嵩向上剤の添加量を0.7〜1.7質量部とする。嵩高填料を用いる場合、添加量は嵩向上剤の10倍相当とする。これによって、中層よりも表裏層を空隙の少ない緻密な層とする。また中層への嵩向上剤の添加量を相対的に多くして中層の密度を低くし、同量の繊維でより厚みを出し、軽量化によるコストダウンが輸送・持ち運びの効率を向上する。表層への嵩向上剤の添加量が0.3質量部未満では嵩高効果が不十分となる。一方、表層への嵩向上剤の添加量が1.3質量部を超えると緻密な表層を得ることができない。さらに好ましくは表層への嵩向上剤の添加量を0.2〜0.8重量%、最も好ましくは0.8重量%とする。
中層への嵩向上剤の添加量が0.7重量%未満では嵩高が不十分となる。中層への嵩向上剤の添加量が1.7重量%を超えると強度低下を生じる。さらに好ましくは中層への嵩向上剤の添加量を1.2重量%程度とする。
以上のようにして得られる本発明の印刷用塗工紙で用いられる原紙の印刷表面、断面写真及びその模式図を、従来の原紙の断面写真及びその模式図と比較して図1に示す。
図1に示すように従来の原紙ではその断面写真及び断面模式図に示されるように全体として空隙が多い。その結果として表面性状を階調80%(一定の面積の80%にインキが乗っている)で観察すると吸収されなかったインクが塗工紙面上を流れるインク泳ぎが発生していることが表面写真に示されている。
これに対して本発明の印刷用塗工紙で用いられる原紙では、その断面写真及び断面模式図に示されるように、表面と空隙が多い層との間に緻密な層が有り、ただ単に全体として空隙が多い従来の原紙とは異なる。その結果として表面性状を階調80%で観察するとインク泳ぎは発生しない。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。また、実施例において示す「質量部」は、乾燥固形分あるいは実質成分の質量部および質量部を示す。また、塗工量も乾燥固形分の塗工量を示す。
(1)原紙の製作
本発明に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とする。広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ等の化学パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプや古紙パルプを任意に組合せて、または単独で用いられる。紙料は、嵩向上剤、澱粉、カチオン澱粉、ポリアクリルアマイド等の紙力増強剤、ロジンサイズ、アルキルケテンダイマー、合成サイズ等のサイズ剤、タルク、炭酸カルシウム、チタン等の填料、コロイダルシリカ、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド等の歩留向上剤、濾水剤等の抄紙薬品が含まれる。
表裏層、中層の各層毎に原料の配合を調整したパルプスラリーを指定のフリーネスに調整する。内添抄紙薬品として、指定の添加量の嵩向上剤、または嵩高填料、カチオン化タピオカ澱粉を添加し、抄造する。
サイズプレス装置で両面あたり澱粉を塗布し、カレンダー処理を行い、坪量215〜235g/mの原紙1を製作した。原紙の構造を表1に示す。
(2)塗工層とする塗工液の調製
本発明に用いられる塗料は、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリンを組合せた無機顔料、有機顔料、ラテックスなどで構成され、その他に澱粉、カルボキシメチルセルロース(CMC)、潤滑剤、消泡剤、分散剤、保水剤、pH調整剤、蛍光染料、染料、防腐剤等を含む。
また選択的に無機顔料100質量部に対してバインダーを8.0〜23.0質量部含有させ、またカオリンを含む無機顔料100質量部中に20〜40質量部の軽質炭酸カルシウムを含み、さらにはカオリンを含む無機顔料100質量部中に20〜40質量部の重質炭酸カルシウムを含むようにすることができる。
塗工層の塗工液における無機顔料、有機顔料、バインダーの配合部数は表2に記載したものとして調整した。顔料は重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製)、軽質炭酸カルシウム(矢橋工業社製)、カオリン(カダム社、白石カルシウム社製)とし、バインダーとしてラテックス(JSR社製)を使用した。有機顔料としては(日本ゼオン社製)を使用した。
(3)印刷用塗工紙の製作及び評価
以上の原紙及び塗工液を用い、実施例1〜4および比較例1〜4の印刷用塗工紙を以下の手順により製作した。
A〜Fの原紙の表面に、湿式重質炭酸カルシウムとカオリンを配合した下塗りの塗工量を10.5g/m塗工した上にa〜gのいずれかの塗工液の塗工量を11.5g/mとして片面塗工し、乾燥させた後、カレンダー処理をして印刷用塗工紙を製作した。
実施例1および比較例1〜2の印刷用塗工紙に対して105℃、30秒加熱した時の加熱引裂強度と常温下における常温引裂強度とを測定した。加熱引裂強度の測定結果が1500mN以下であれば加熱引裂強度が良好であり高速印刷打ち抜き機を用いる際の加工時の抜き適性やピン刺し適性が良好であると評価できる。また常温引裂強度の測定結果が1000mN以上であれば常温引裂強度が良好であり、特殊用途を除く、例えばタバコパッケージなどの一般的な印刷用塗工紙の用途としては不足のない剛度であると評価できる。
その測定結果を表3に示す。
表3より、実施例1で示される印刷用塗工紙は、加熱引裂強度の測定結果が1500mN以下に抑制されており、加熱引裂強度が良好であり高速印刷打ち抜き機使用時における抜き適性が改善されていることがわかる。また実施例1で示される印刷用塗工紙は、常温引裂強度の測定結果がいずれも100mNを超えており、一般的な印刷用塗工紙の用途としては不足のない剛度であることがわかる。これに対し本発明の条件を満足しない比較例1〜2では加熱引裂強度の測定結果が1500mNを超え、高速印刷打ち抜き機使用時における抜き適性の改善がみられない。
さらに実施例1〜4および比較例1の印刷用塗工紙に対して常温下における表裏層と中層との層間強度を測定した。その測定結果が200〜500mN/cmの範囲にあれば表裏層と中層との層間強度が最適化され、特殊用途を除く、一般的な印刷用塗工紙の用途としては不足のない層間強度を備えてオフセット印刷時に表裏層と中層との層間剥離が生じる様なことはなく、かつ良好な抜き適性やピン刺し適性を有し、また良好な罫入れ適性及び曲げ適性を有すると評価した。その測定結果を表4に示す。なお表4において「表層−中層間」は本実施例及び比較例の5層の印刷用塗工紙における表層−中層間の層間強度、「中層−中層間」は中層−中層間の層間強度を示す。
表4より、実施例1〜4で示される印刷用塗工紙は、常温下における表層−中層間及び中層−中層間の層間強度の測定結果がいずれも200〜500mN/cmの範囲にあり、一般的な印刷用塗工紙の用途としては不足のない層間強度を備え、かつ抜き適性やピン刺し適性が十分で、しかも良好な罫入れ適性及び曲げ適性を有することがわかる。これに対し本発明の条件を満足しない比較例1では層間強度の測定結果がいずれも200〜500mN/cmの範囲にはなく、そのため、抜き適性やピン刺し適性が不十分で、しかも罫入れ適性及び曲げ適性が不十分であることがわかる。
図2に実施例の印刷用塗工紙を罫入れ部分で曲げた状態の断面写真を示す。図に示すように罫入れ部分で曲げた状態で層厚方向に図3に示す従来のものに比べ、多数の空隙がバランス良く形成されており、2カ所の大きな空隙が生じる図3に示す従来のものに比べ、この部分で強度が極端に低下することはなく、潰れやすさを解消していることが分かる。
実施例1〜4および比較例1〜4の印刷用塗工紙に対してオフセット印刷適性、インク吸収性、インク定着性、印刷ムラ及び相対単位価格について下記の方法により評価した。
その結果を表5に示す。
なおオフセット印刷適性の評価以外は水性グラビア印刷機を用い、水性グラビア印刷機としてクラボウ社製印刷機GP−10を用いた。また、インクはDIC株式会社製ディックセーフWH(水性)を用いた。印刷速度は30m/分に設定し、行った。
(i)オフセット印刷適性マンローランド社製オフセット印刷機R200印刷速度:5,000枚/分、使用インク:DIC株式会社製フュージョンGの印刷を行い、印刷後印刷サンプルの状態について目視評価で判定した。実用上に問題はない。
(ii)グラビア印刷再現性クラボウ社製印刷機GP−10印刷速度:30m/分、使用インク:DIC株式会社製ディックセーフWH(水性)10%間隔の階調とグラデーション版を用い、網点が30%以下のハイライト部やグラデーションの再現とミスドットの状態を目視評価で判定した。
5:色のミスドットがない。
4:色のミスドットがほとんどない。
3:色のミスドットがあるものの、少ない。
2:色のミスドットがやや多い。
1:色のミスドットが多い。
(iii))ベタ部のインキ泳ぎ(印刷ムラ)クラボウ社製印刷機GP−10印刷速度:30m/分、使用インク:DIC株式会社製ディックセーフWH(水性)10%間隔の階調とグラデーション版を用い、ベタ部やシャドー部(60〜95%の網点)の印刷ムラを目視評価で判定した。
5:印刷ムラが認められない。
4:僅かに印刷ムラが認められる。
3:軽度な印刷ムラが認められる。
2:印刷ムラが認められる。
1:明瞭な印刷ムラが認められる。

表5より、実施例1〜4で示される印刷用塗工紙は、オフセット印刷適性、印刷再現性、印刷ムラに優れる。
また表5に示されるように本発明の印刷用塗工紙は、片面塗工ではいずれも緊度0.75g/cm以上であり、軽量化による効率向上が図られると同時に過度の軽量化による印刷適性の悪化が防止されていることが分かる。
しかも表5に示されるように、実施例1〜4及び比較例1〜4のそれぞれについて特に大きな単位価格の違いはなく、本発明の実施例1〜4では特に大きなコストをかけることなく特性の大幅な向上を実現することができたことがわかる。








Claims (15)

  1. 原紙の少なくとも一方の面に顔料とバインダーを主成分とする塗工層を設けた印刷用塗工紙において、塗工層中の顔料として無機顔料100質量部に対して有機顔料を0.1〜12.0質量部含有し、緊度0.75g/cm以上であることを特徴とする印刷用塗工紙。
  2. 無機顔料100質量部に対してバインダーを8.0〜23.0質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の印刷用塗工紙。
  3. カオリンを含む無機顔料100質量部中に20〜40質量部の軽質炭酸カルシウムを含む請求項1または請求項2に記載の印刷用塗工紙。
  4. さらにカオリンを含む無機顔料100質量部中に20〜40質量部の重質炭酸カルシウムを含む請求項1〜請求項3のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  5. 30〜50質量部のカオリンを含む請求項1〜請求項4に記載のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  6. 原紙が表裏層と中層とからなり、パルプの叩解度は表層が中層よりも低いフリーネス(CSF)を有する請求項1〜請求項5のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  7. 表層のパルプの叩解度はカナダ標準濾水度(CSF)でフリーネスが390〜470mlCSFとされる請求項6に記載の印刷用塗工紙。
  8. 中層のパルプの叩解度はカナダ標準濾水度(CSF)でフリーネスが430〜530mlCSFとされる請求項6または請求項7に記載の印刷用塗工紙。
  9. 表層への嵩向上剤の添加量が0.3〜1.3重量%又は嵩向上剤に代えて嵩高填料の添加量が3.0〜13.0重量%とされる請求項6〜請求項8のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  10. 中層への嵩向上剤の添加量が0.7〜1.7重量%又は嵩向上剤に代えて嵩高填料の添加量が7.0〜17.0重量%とされる請求項6〜請求項9のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  11. 全層のNパルプ配合量が1.0〜10.0質量部とされ、中層に針葉樹パルプ(NBKP)が5.0〜15.0重量%配合される請求項6〜請求項10のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  12. 105℃、30秒加熱した時の引裂強度が1500mN以下であり、常温引裂強度が1000mN以上である請求項6〜請求項11のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  13. 吹付け澱粉添加量が1.0〜1.5%とされた請求項6〜請求項12のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  14. 内添澱粉添加量が0.2〜0.6%とされた請求項6〜請求項13のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。
  15. 表裏層と中層との層間強度が200〜500mN/cmに調整される請求項6〜請求項14のいずれか一に記載の印刷用塗工紙。

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